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コピーライターを笑え!

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Acrobat Reader 4.0

4.05a

)をご使用の方へ……

2002/6 現在、Acrobat Reader の最新バージョンは、Acrobat

Reader 5.0.5(無償)です。 ※小社の電子書籍は全て、AcrobatReader 4.0(4.05a)あるい は5.0(5.0.5)のどちらでもご覧頂けますが(3.0は不可)、 バージョン5.0.5は軽快なインターフェースに加え、描画品質 がかなり向上しています。 お手持ちのパソコンシステム環境が許せば、5.0.5への無 償バージョンアップをご検討ください。 詳しくは、当サイト http://www.dex-one.com/ の Acrobat Reader ロゴよりリンク先ページをご覧ください。 ■ご覧頂く前に、モニター設定をご確認下さい。 このファイルは、一般的なモニターサイズ 800×600pixels、カ ラー階調は約1670万色を想定し制作されています。  (可能であれば、1024×768pixels 以上を推奨します。) ページは、[Enter(return)]キーで進みます。(上下左右の矢印 キーでも同様です。) ※進む=Enter(return)キーあるいは上 or 右矢印キー  戻る=下 or 左矢印キー ※画面表示速度や色表現は、あなたのパソコンスペック(能力)や モニターに依存されます。 例えばページをめくろうと[Enter(あるいは右矢印キー)]キーを 1回押したのに、次ページがなかなか表示されず、2回・3回と キーを叩いてしまうと、2・3ページ先へ飛んでしまう事がありま す。ご留意ください。 ●小社では、モニター設定、およびパソコンに関するサポートは お受けしておりません。予めご了承ください。 ■表示速度・表示品質のために「環境設定」をご確認下さい。 ●まずは、Acrobat Reader 自体の割当てメモリーを増やしてく ださい。(パソコンマニュアル参照) ●Acrobat Reader の[環境設定]を開いてください。 ここをクリックすると、環境設定が表示されます。 [1]表示速度改善  ●4.0(4.05a)は「オプション(一般)」 ▼「ページキャッシュ使 用」にチェックを入れて下さい。  ●5.0(5.0.5)は「オプション(一般)」 ▼「その他」 ▼「ページ キャッシュ使用」にチェックを入れて下さい。 [2]表示品質改善(5.0−5.0.5のみ)  ●「表示」 ▼「スムージング」の「文字のスムージング・ライン アートのスムージング・画像のスムージング」にチェックを 入れて下さい。 快適にご覧頂くために、ご面倒ですが下記をご一読下さい。

(2)

制作されています。

■全画面を解除するには……

Windows ▼[Ctrl+L]/Macintosh ▼[Command+L]で解除さ れます。 ※但し、一度全画面を解除し再度上記操作を行なうと全画面には なりますが、画像画質が荒れてしまう事があります。全画面を解 除した後、もう一度バック黒でご覧になりたい場合は、一端ファ イルを閉じて再度開いてください。 ご紹介するのはAcrobatReader4.05a(Mac)の操作メニューで す。5.0.5やWindows版など、操作位置が多少異なりますが、操 作自体は基本的に同じです。プリントされたい場合などでご活用 ください。 ■終了するには……

Windows ▼[Ctrl+Alt+Delete]/Macintosh ▼[Command+ Q]で終了します。

お待たせしました。それではごゆっくりどうぞ……▲ ▲ ▲

Acrobat Reader 4.05a

Mac )の例 作品全体を一覧でご覧になれます。     表示倍率を変更できますが、画質が荒れる事があります。          先頭ページに戻ります。             1ページ前に戻ります。       現在のページです。       (直接ページ数を入力できます) ファイルの総ページ数です。 1ページ次に進みます。 最後のページに進みます。 表示ファイルサイズです。 ページの表示方法を変更できます。(現在は単一ページです)

※捕足/2002-7月現在、Acrobat Reader の最新バージョンはW i n・Macとも  5.0.5です。上のツールバーは4.05aの例です。

(3)

ショートショート劇場

SPECIAL 20

連発

!!

short short story of

special 20

コピーライター

!

鬼塚

光一郎

・著

written by kouichirou onizuka

(4)

作品 01  「俺はライターだ」  She is a designer

作品 02  「幽霊はいかが ?」  Do you like ghost ?

作品 03  「ミッドナイトコール」  Midnight call

作品 04  「バトルロワイヤル・レース」  Battleroyal race

作品 05  「アダルト・ビデヲ」  Videotape for adult only

作品 06  「飲酒免許証」  Drinking license

作品 07  「 I am …」  Kentaro's story

作品 08  「幻の蛇と少年」  The snake and boy

作品 09  「別れる理由」  The reason of divorce

作品 10  「悲しい夜を止めて・17歳ナミの物語」  I can't stop sad nights

作品 11  「マイ・スウィートハート」  My sweetheart

作品 12  「 P- girl 」  On the night street

作品 13  「ゴッド・セイブ・ザ・チルドレン」  God save the children

作品 14  「ここにお名前を…」  Please write down your name here … 作品 15  「業界用語の基礎知識」  Basic knowledge of a technical term

作品 16  「未来からの手紙」  A letter from the future

作品 17  「OL 狂詩曲」  Office girl rhapsody

作品 18  「ハイスクールボーイブルース1 ヘイ ! 涼子ちゃん !」  High school boy blues 1

作品 19  「ハイスクールボーイブルース2 エロチックな貝」  High school boy blues 2

作品 20  「ハイスクールボーイブルース3 すけこま女体学講座」  High school boy blues 3

index

SPECIAL

20

!!

f

?

(5)

ター

!

(6)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 俺はライターだ。 そして隣にいる彼女はグラフィック・デザイナーで、 名前は麻里子。 ここは、ある雑誌の編集プロダクション。 物書きやカメラマン、デザイナーなどが集まって、 ガヤガヤとした騒がしい雰囲気の中で働いている。 彼女の仕事は、主に雑誌のレイアウト。 つまり割付で、文章や写真、ときには地図などの図版を 読者が見やすいように、わかりやすいように並べて、 誌面を構成することなのだ。 俺は世に出たばかりの新米ライターだけど、なぜか 彼女は俺を気に入ってくれて、最近は 一緒にいることが多い。 さっきから彼女は、デザインの作業を中断して、 自分の机にあるパソコンのモニターを前に、 なにやら深刻に考えこんでいる様子…。 それはディスプレイ画面に表示されている 雑誌のレイアウトについてではないだろう。 なぜって、その手はキーボードを操作するでもなく、 マウスに添えられてもいないのだ。 実は、つい

5

分ほど前のことなのだが、 彼女、上司であるチーフデザイナーに、大声で怒鳴られた。 「なにやってんだ、この締まらない構成は。緊張感が ないんだよ、緊張感が。これじゃ、入れるもの並べ ただけだろーが。  料理だってな、材料を入れただけじゃ駄目だろうが、 野菜と肉切って鍋に放り込めば出来上がるか?味付 けなんだよ、デザインつーのは。調味料とか、スパ イスが要るんだよ。  おまえのデザインじゃ、カレーなのかシチューなの か、八宝菜なのかわかんないんだよ。やり直し、や り直し!」 作品その

1

「俺はライター

She is a designer

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! チーフデザイナーの彼にとって、 わざと周囲に聞こえるように誰かを怒鳴るのは、 毎月の校了前のスタッフに「喝」を入れる 一種の儀式のようなものなので、 周りのライターやデザイナーは、慣れっこになっていたし、 ましてやその内容も決して的を射たものでなく、 その時の気分というか、 言いがかりにしか聞こえない代物なので、 誰も気に留めちゃあいない。 しかし、それが初めての経験となる彼女にとっては、 かなり衝撃的な出来事だったのだろう。 少しだけだけど、赤く染まってる頬が 彼女にとっての重大さを物語っている。 モニターに向いていたはずの彼女の目から、 大粒の涙がひとつこぼれ落ち、ほほからあごに一筋、 ゆるやかなシュプールを描いた。 なのに、この俺にはどうすることも出来ない。 なぐさめの言葉のひとつも、かけてやることができない。 彼女の周りだけバリアを張ったように、 その空間だけひっそりとした時間が流れていく。 そろそろ俺の出番だ。 彼女は手の甲で頬の涙の跡を拭うと、 灰皿のそばに置いてあったメンソールタバコの パッケージから一本を抜き出し、左手の人差し指と中指に フィルターの部分を挟み、俯き加減で唇にくわえた。 そして彼女はおもむろに『俺』を手に取り、 タバコの先端に火をつけた。 ■

fin

(8)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! ピンポーン♪ 「ごめんくださぁーい」 玄関のチャイムに続いて小さく、若い女の声がした。 今日は土曜日の午後。 俺を訪ねてくる女性の知り合いなどはいないのだ。 寂しい話しだが、それが現実なのだ。 (どーせまた、新聞とか、生命保険とか、宗教の勧誘と か、ろくでもねえのが来たんだろ) 俺は眠かったので、少々腹を立てながら 布団を頭からかぶり直したのだが、 声の主が比較的若そうだったこともあって、 一応ドアスコープで確認してやろうと思い、 ずるずると起きあがって玄関まで行った。 魚眼レンズ越しに変形してはいたが、 なかなかの別嬪さんがそこに立っていた。 なんだ新手の風俗か

?

俺には頼んだ覚えなどもないので、一体何者なのか 確認だけはしておこうとドアロックを外し、 ドアを開けた。ドアが開くやいなや、 その彼女は深々とお辞儀をしながら、 「こんにちわぁ」 と明るさいっぱいの声とともに、 にっこり笑顔を投げかけてきた。 営業用、といえばそれまでだが、笑顔が抜群に可愛いのだ。 そして彼女は口の両端をキュッとあげ、 小首を傾げて白い歯を見せ、笑顔の瞳で 俺を一瞬見つめると、 作品その

2

「幽霊

いかが

?

(9)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 「私、セールスの者ですが、今日はお客様にぜひご紹 介したい物件がありまして、お伺いしたんです。  よろしければ、5分だけ、お話聞いていただけませ んか?決して、お客様に損な話ではございませんし、 話だけでお断りになっても全然かまいませんから」 一字一句マニュアルどおりの、覚えたばかりのセールス トークは、まだまったくこなれておらず、 その初々しさがなんとも新入社員っぽかったので、 何だか知らないが無理矢理商品を押しつけられることも ないだろうと高を括って、 「ここじゃなんだから、玄関まではいってよ」 と、彼女を招き入れた。 「ありがとうございますぅ」 とまた深々と頭を下げた彼女は、 後ろ手にドアを閉めると、鞄に手を入れて 名刺を取り出し、うやうやしく両手で差し出した。 「私営業部のセールス担当で、山脇と申します。  まだ慣れなくて、うまく説明できないかもしれない かもしれませんが、よろしくお願いしますぅ」 言葉がぎこちない割には、笑顔はいかにもの営業用だった。 「あの、ところでお客様、お客様は幽霊って、見たこ と御座いますか?」 「えっ、幽霊ってその、亡霊とか、お化けとかいうあ れか?」 目が点になりそうなのをこらえて、 彼女の目を見つめた。 電波系のアホにはどうみても見えないのだが。 「はい。その幽霊でございます」 「それが君と、一体何の関係があるって訳?」 「実は私どもは、その幽霊を販売してるんです」

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 俺は後悔した。 なんでこんな変なの招き入れちゃったんだろう、 ってことをだ。 「どのお客様も、お話するとみなさん始めは険しい表 情をなさいます。幽霊というものの認識が、悪い方 に悪い方にと、偏っているんですよねぇ。  でも、ですよ、皆さんが言ってる幽霊っていうのは、 私たちの業界用語でいうところの、悪霊とか怨霊の ことなんですよ」 (なんだその業界っつーのは) と、突っ込んでやろうかとも 思ったのだが、長居されたくなかったので止めにした。 「守護霊、っていう言葉、聞いたことがありますでし ょ。守ってくれる神様のような幽霊や、可愛い幽霊 もたくさんいるんです。  そういったものを、私どもは販売してる訳なんです けどね」 一生懸命説明するその姿は、可愛くていいんだけど、 その外見とはうらはらに、話の内容は与太話そのもの。 俺は切り返して一気に逆襲しようかと思った。 「そんなん買うやついるのかよ」 俺のつっこみに一瞬もめげることなく 嬉々としてしてまた喋り始めた。 「それはもうお求め戴いたお客様には喜んでいただい ております。ペットのように餌代がかかるわけでは ありませんし、世話する必要もまったくありません。 お出かけの時や旅行などいらっしゃるときには泥棒 避けにもなりますよ。いかがですか、お客様には江 戸時代に17歳で亡くなった大工の娘『お紺ちゃん』、 なんかお勧めです。かわいんですよ、彼女。  絶対気に入っていただけると思います。私が自信を 持ってお勧めしますよ」 カタログを広げながら、説明を始めようとした。 えっ、カタログまであるのかよ、

(11)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! それなら見せろよと言いたかったけど、 買う気があるようには見せたくなかったので、 カタログを覗き込むのは止めにしたが、 何気ない仕草を装って視線を向けると、 金髪の豊満ボディをアピールするポーズの全身写真 (とは言っても足はよく見えないのだが)に 「私と霊感プレイを楽しみましょう 」なんて キャプションが書いてあった。 まるでモデルクラブのカタログのようだったので とても興味をそそられたのだが、ぐっと堪えた。 「でさ、いったいくらするのよ、幽霊って」 行き掛かりで、つい値段の話しを口にしてしまった。 いきなり彼女の目が輝いた。 「はい。ただいまキャンペーン中で特別サービス価格 になっておりますので、一体10万円でございます。  もしお気に召さない場合には2週間以内でしたら、 クーリングオフ制度も適用されますので自由に返品 できますし、また他の幽霊にチェンジいただくこと もできるんですよ」 へー、売ってるものの割にはシステムは現代的なんだぁ、 なんて思わず感心してしまった。 「お客様、2週間で返品して結構ですから、お試し期 間だけ、ご利用いただけないでしょうか、実は、私 今月、ノルマに達しなくて…」 おいおい今度は泣き落としかよ、その手には乗らんぞ と思ったが、ほんと売れてなさそう顔だったし、 お紺ちゃんも可愛い顔だったので、 ついつい契約書にサインしてしまった。

2

週間経ったら返品するのだから、来週の同じ時間に また来てくれよと念を押して、お引き取り願った。 お紺ちゃんは、実に可愛い幽霊だった。 ただいつも紬の着物姿で、俺がいくら頼んでも ミニスカートは穿いてくれなかったし、 いつも桃割れとかいう髷を結っていて、

(12)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 俺の好きなショートヘアにしてくれるはずもなく、 ましてやナースの制服を着てくれる訳もなく、 すぐにそれが不満になってきた。 それに、夜の方が活動しやすいようで、 夜中に目が覚めた時、 枕元に立ってたときはマジで驚いた。 俺が会社に行ってる間に 部屋の掃除や洗濯をしてくれたり、 帰ってくる頃に飯作って待ってる とかが出来るなら便利なんだろうが、 ただいるだけってんじゃ芸がない。 やっぱり返品することにした。 約束の

2

週間がたった日は、 朝からセールスの彼女が来るのを待ったが、 なぜか、夕方近くなっても現れない。 (まずいよ。営業マンが約束守らないと) なんて独り言いいながら、 もらった名刺の電話番号をダイヤルした。 「オカケニナッタデンワバンゴウハ ゲンザイツカワ レテオリマセン バンゴウヲ オタシカメニナッテ モウイチド……」 何度かけても 電話局の録音テープのアナウンスが応えるだけ。 名刺の住所から番号案内で調べても、 該当する登録はありません、と冷たい返事。 (まずいよなぁ……) 俺は背中に冷たい空気を感じた。 「そうか、幽霊会社ってわけか」 ひとり呟くとお紺ちゃんが俺の前にフッと現れ、 にっこりと微笑んだ。 ■

fin

(13)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !!   

PIRRRRRRRR

…   

PIRRRRRRRR

… 耳障りな電子音が聞こえる。何の音だ? いったいどこで鳴っているだろう。遠くなのか、 それとも自分のすぐ近くで鳴っているのかさえ、 なぜか把握できない。 朦朧としていた頭の意識が、だんだんはっきりしてきた。 そうだ、この腹立たしい音は俺の携帯電話の着信音だ。 俺は昨夜、帰宅してそのまま 着替えもせずベッドに倒れ込んで、 そのまま眠ってしまったのだった。 腕時計を見ると、針は

1

48

分の位置。 今が、真夜中であることに気がついたとたん、 無性に腹が立ってきた。 (ちくしょう、るっせーなまったく) などと小声で呟きながらも、 誰かからの急用かもしれないからと思い、 留守番伝言サービスに切り替わる前に、 電話に出ることにした。 万が一、その電話が郷里のお袋からで、親父が危篤だ なんていう連絡である可能性だって、 俺ぐらいの年齢になりゃ当然あるわけで、 ましてや酒かっ喰らって電話に出られなかったために 死に目に会えなかった、なんてことになったらこの先、 親類縁者一同に会わせる顔がない。 ベッドから身体を起こすと、 数時間前までしこたま飲んでいたアルコールと 消化中の肴が胃袋から喉にせり上がってくる、 あのいやーな感じがした。 作品その

3

「ミッド

イトコール」

Midnight call

(14)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! そういえば、昨夜というか今日の夜というかは、 京子とホテルに行って、そのあとふたりで飲み屋に行って、 えーと、京子をタクシーにのせて、それで、 俺は終電で帰ってきたんだった。 脱ぎ捨てたスーツの上着の内ポケットから、 携帯電話を取り出し、通話ボタンを押して耳にあてた。 もし、間違い電話だったら、 「ばっきゃろーなんじだとおもってるんだ  このすかたん !!!」 と、一喝してスカッとした気分になったところで また眠ろうと決め、密かにそれを期待した。 だって、真夜中にかかってきた電話が、 いい話だったってこと、聞いた試しがないだろう。 「もしもし…」 俺は、 めいっぱい不機嫌そうな声を出す自分、を演じて 応答した。 「もしもしぃ、あたし…」 真夜中だっつーのに、普段よりキーが

3

つほど高い 脳天気に明るい京子の声が、 頭蓋骨にまでぐわんぐわんと響いてきた。 …っきしょーなんだ京子かよ、 こっちは死ぬ思いで電話にでたっていうのに なんなんだよ、ったく。 「おめーいいがげんにしてくれよ、京子、何時だと思 ってんの、普通の人間はお休みの時間だよ。かんべ んしてくれよ、さっきまでホテルで一緒だったじゃ ん、別に急ぎの用なんてないじゃない。  明日も仕事だよ俺。そんなんおめーも、よーくわか ってんだろ。昨日今日のつき合いじゃねんだぞ、俺 たち」 つき合いも長いだけに、ついつい口調はきつくなる、 声もでかくなる。 「………」

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! なぜか返事もなく、突然訪れる沈黙の時間。 すこし言い過ぎたかな、 と、一応毛の先ほどの反省はしてやったが、 こちとら安らかなる眠りを妨害された 善良な一市民なのだから、しょうがない。もう遅い。 ここで下手に出ては男じゃない。 言うことは言っとかないと。 しかし沈黙の後、返って来た言葉は、 「…………ねぇ、キョウコって、だれ?」 げっ、思いもよらないリアクション。やば! てっきり俺はその声の感じで京子と勘違いしたけど、 そうか玲子だったのか、マジやっべぇ。 「ごめーん、玲子、俺、寝ぼけてたよ。なんか変なこ と言ったみたい?なんか夢みてたのかな、疲れて熟 睡してたからさぁ」 「………」 咄嗟に弁解しても、また訪れた再びの重ーたい沈黙。 「………どうゆう、関係なの。……親しいみたい じゃない」 ようやく言葉は出てきたものの、かなりのご立腹。 まずいぜ。 なんとかしよう。 なんとかしなくちゃ、なんとかなりま専門店、 なんちて、こんなつまんねーギャグじゃ、 どーにもなんねーか。 でもここで言葉につまったら、変に怪しまれる。 何かいい言い訳はないかと頭脳をフル回転させてはみたが、 いい考えも浮かばない。しょうがない。 こうなりゃ困ったときの友達なすりつけ攻撃で この場は凌ぐしかない。 「いやまいっちゃったよ。友達の彼女が京子さんって いうんだけどぉ、なんかその友達が、二人がうまく いかないから相談に乗ってくれって、頼まれちゃっ てさぁ、なのに友達は急にこれなくなちゃって、し

(16)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! ょうがなく相手してたんだよ玲子。ほんと。心配す るようなことじゃないって、そんなかわいくなかっ たし、タイプじゃなかったし。俺には玲子が一番だ って」 一瞬にして、これだけのストーリーを作成した俺って、 作家的センスがあるのかもしれない。 「………ふーん」 まだ信用してない。まあ無理もない。それは当然だろう。 でも、とにかく今日は京子とは何もなかったことに しなければ。 「いつかおまえと行ったじゃん、S宿の肴屋って居酒 屋。ふたりでさ、ビール飲んで、えーと、めんたい ポテトだっけ、うまいの食ったじゃん。あの店で京 子って子の話、聞いてやっただけ、ほんとだって」 これは昨日の夜のことだったから、 すらすら言葉が出た。 「ふーん、でもその前にキョウコって子と、ホテル行 ったんでしょ」 何でホントのこと、知ってんのよっ、て言葉が 喉まで出かかったのを必死でこらえた。 喉から出そうなのをこらえるのは、今日もう二回目だ。 今度は俺が絶句する番って訳

?

なんも言葉が出てこない。 「いったい誰と思って話してたのよ。アタシは京子。 アタシをタクシーに乗せるとき、心配だから家に着 いたら電話しろって、言ったのあんたじゃない。ア タシは何、友達の彼女?冗談じゃないわよ。せっか く電話したのにひっどい言い方するから、ちょっと からかったの。どうせアタシとその玲子って女と二 股かけてたんでしょ。さよなら、もう二度と会わな いわ!バイバイ」 気がつけば、携帯電話がツーツー鳴ってる。 ちくしょう、こっちこそ二度と 夜中の電話には出ねぇぞぉと、携帯電話を握りしめながら、 俺は心に固く誓った……。■

fin

(17)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! とてつもなく巨大なドームに、俺たちは集まっている。 俺たちは、これから始まる 「バトルロワイヤル・レース」の参加者なのだ。 右をみても左を見ても、若くて逞しいファイターばかり。 果てしないドームに、途方もない数のファイターが ひしめき合っている。 その数は十万、百万、いや、もう一桁上か

?

そんなことはどうだっていい。 相手が幾人いようと、所詮、俺という存在はひとり。 そして、もうすぐ始まる、この過酷なレースで 生き残れるのも、たったひとり。 隣のヤツをぶち殺してでも、進まなきゃならない。 ゴールに何が待っているのは、わからない。 しかし、俺たちはそこを目指すよう、

DNA

に刷り込まれてしまっている。 だから、ただひたすらにゴールを目ざす。 俺たちは、この本能ってやつから逃れることはできない。 ゴールで待っているのは、漠然とだが、 神とかヴィーナスとかのような、神々しく あたたかくやさしいイメージの何かだ。 だが、はっきりとした正体は、俺も他の参加者も、 まだ見たことはない。 そして聞くところによると、この過酷なレースでは、 場合によっては、誰も残れない ということだってあるという。 まれに運良く

2

名の同時ゴール、ということも あるそうだが、最後の勝者になるための可能性は、 極めて薄いといっていいだろう。 しかし俺たちはこのレースのために この世に生まれてきたのだ。 このレースを征するために、全力を尽くす宿命なのだ。 ただひとりの勝利者、という栄光のためだけに。 ここに集まった全員が、スタートの合図を 作品その

4

「バトルロワイヤル・

ース」

Battleroyal race

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! いまかいまかと、待ちこがれている。 じっとしてるヤツなんか見あたらない。 と思ったら、お、もうすでに競争に絶望したのか、 人いきれにあたったか、 命を絶ってしまっている参加者もいるではないか。 いったいこの先、どんな関門が試練が待ち受けているのか、 誰も見当もつかない。 誰も助けてはくれない非情のレースでは、 頼れるのは自分のカラダと気合いと根性だけだ。 ただ、栄光のゴールめざして、前進あるのみ、だ。 突然、ドーム全体が地響きにも似た振動を始めた。 割れんばかりの歓声がわき起こる。 そしてその振動は定期周期で訪れるようになり、 その動きも徐々に激しくなる。いよいよだ。 スタートの時は近い。 ファイターたちが、ドーム全体が、ヒートアップする。 その次の瞬間、まるで雪崩か洪水が起きたかのように、 人波ごとうねるように、猛スピードで何かに押し流され、 俺たちはドームの外へと押し出されていく。

(19)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! まるで火山の噴出するマグマにでもなったようだ。 ドームの外に飛び出すと、何だ

?

ここはトンネルか

?

そんな思考をする余地もなく、 ファイターたちは一定の方向へと突き進んでいく。 流れはものすごい圧力だ。 ちょっとでも気を抜けば、 押しつぶされてしまうに違いない。 突然、明るい世界に飛び出した。 なんだこれは、いったいどこなんだ。 こんなはずはない。 ゴールまでは暗くて長い濁流のコースじゃなかったのか。 通路がないぞ、おかしい。 えっ、この先に透明状のバリアーがはられて 先へ進めない

?

じゃ、ゴールはこっちか

?

突発的な変化にファイターたちは、 それぞれが無秩序な動きをはじめる。 パニック状態だ。 俺はどっちへいけばいいんだ

?

「んー、ううっ、出た…」 勝哉の口から深いため息と 言葉が漏れる。 「ねぇ、ちゃんとゴム、  つけてたよねー」 耳元でヒデコが囁く。 勝哉はヒデコにかぶさるようにあずけていた体を起こし、 股間のゴム製品を外し、ゴミ箱へと投げ捨てた。 「いてっ、てめえ、尻の鞭毛があたったじゃねぇか、 ちくしょう、卵子はどこなんだ?子宮口の入り口は どっだ?」 ゴミ箱に捨てられたゴム製品の中では、 受胎のために卵子めがけて突き進む、精子たちのレースが、 まだ続いている…。 ■

fin

(20)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !!

21

世紀のある日。 太陽系第

3

惑星である地球のアジア極東地域一帯が、 突如かつてないほどの巨大地震に見舞われた。 この大型地殻変動は、太平洋プレートと フィリピンプレート、それに大陸プレートとが 同時に変動を始めたのが原因で、この

3

つのプレートが 重なるように交差する場所に位置していた日本列島は、 マグニチュード

16.5

という猛烈なエネルギーで ぶつかり合う地殻のうねりに飲み込まれるように、 海面下へ水没する運命となったのである。 ユーラシア大陸や太平洋の島嶼国はもちろん、 世界中が大きな打撃を受け、当時の政治経済から 科学技術を支配していたネットワークや デジタル衛星通信網、コンピュータなどはすべて壊滅し、 地球全体が復旧に数百年の時間を要すほどの ダメージを受けた。 ………それから何百年という時が流れた現在。 日本という国家が存在した場所を 移動型海底シールドマシンで掘削し、当時の文化遺産を 調査しようというプロジェクトが 学術レベルで進められていた。 そしてある日、一本のビデオテープが 調査隊によって発掘され、日本人の血を引く 日本風俗学研究の権威・古屋教授の元に 届けられることになった。 「博士、来ましたー。調査隊が海底シールドマシンで 採取した、当時のものと思われるビデヲテープを採 取して持ち帰ってきました」 助手の清野が古屋教授に走りより、耳元で そのニュースを伝えた。 作品その

5

「アダルト・ビ

(21)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 「なに!、それは例のあれか?」 「はい、そうでありまーす。なにせ今回の掘削場所は、 首都と呼ばれたトウキョウのしんじくかぶきっちょ 付近です。我々が探してたあれであると見て間違い ないとオペレーターも報告していたそうですぅー」 「そうかー、とうとう発見したか。でも清野君、発掘 地点はしんじゅくかぶきちょーが正解だ。極東地理 史もよく勉強しておきたまえ」 そう言うと博士は、感慨深げに窓から遠くを見つめた。 かつて

20

世紀頃、ビデヲと呼ばれた 磁気を帯びた帯状の磁性体を巻き込んで、 映像を記録したメディアがあった。 そして一般庶民はそれを ビデヲデッキという再生機械を用いて、 テレビと呼ばれるガラス管の一部を平面にした ガラス板部分に、電子銃で放電する映像装置に電送し、 映像を楽しんでいたという。 その再生機という骨董品の巨大な機械は、 いまでは博物館の倉庫や研究所にしか存在しない 貴重なものとなっている。 「そうかー、私たちはとうとう、あの文献でしか知る ことのできなかったアダルトビデヲというものを、 この目で見ることができるのだなぁ」 「教授、例のもの、以外と損傷のないようなので、こ のまま再生機にかけても大丈夫だと研究員が言って ます。貼ってあったシール部分は、別の研究室で放 射線照射解析を行うので外しました。  小一時間もすれば、タイトルや出演者も判るはず でーす」 「伝説の飯島恋、や、あいだすもも、とかだったら、 うれしーだろーねー、興奮するねー、いや学術的価 値が高いね、清野君!」 「じゃ早速、AV鑑賞、じゃなくて学術観察の準備をは じめましょう、教授」

(22)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! そう、

30

世紀を過ぎた頃から、地球人類は その子孫繁栄の手段をすべて試験管培養に 改めざるを得なくなっていた。 つまり科学やテクノロジーの進化は、 人類の発展に寄与したものの、個々の身体能力を 徐々に衰えさせるという結果を招き、 骨格や筋肉組織も虚弱矮小化したために、肉体労働や スポーツ、そして男女の性行為にさえ耐えられないほど 脆弱な身体構造に変化してしまったからである。 人工的な受胎により、人類は計画的な国家建設や 経済調整も可能になり、国家民族間闘争も消滅し、 平和な世界が延々と続いている。 しかし、人類がその

DNA

の中にインプットされていた、 エロスを求める本能は消え去ることはなく、 性行為に対する憧れは、 脈々と受け継がれていったのである。 「いよいよ生の人間同士の性交渉行為が見られるんで すね、教授」 助手の清野は、すでに目が血走っている。 画像は不鮮明で、時々走査線が乱れることはあったが、 何が行われているかは、十分視覚認知することができた。 「お、もう行為が始まっているではないか。なに、女 性の方は胸が大きいな。身体が動くたびにブルブル ふるえておるではないか、これが巨乳というやつだ よ」 「ちょっと肌の色が黒いですね、ガングロっつーやつ ですかね、こいつ。教授、男の方は赤いビキニブリー フですね。現代じゃ、こんなの誰も穿いてませんか ら、奇妙に見えますね、エロくないですよ、これ」 「まだまだ前戯の段階でごちゃごちゃ言うな、これか らじゃ。まだお互いの上半身を少しづつタッチしな がら、相手の性感帯を探って手での刺激を徐々に繰 り返しておるのじゃ。ペッチングというヤツじゃな、 文献どおりじゃぞ、清野君!」 ふたりはモニター画面を凝視している。

(23)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! かなり興奮している。 「汗かいてませんか?、この女」 「運動量も、カロリー消費も、かなり激しい行為と見 たぞ、かつての人類は子孫を残すためにこんな過酷 な重労働を強いられておったのじゃな…」 「肉体と肉体が絡みつき、また離れ、ぶつかるように 擦りあう、まさに、欲望のなせる技じゃな」 「あっ、教授!よく見てください。この女の方のあそ こ。ぱっくり割れてません?さっきはこんなじゃな かったですよ?」 「おお、清野君。よく見たまえ、血が滲み出てるでは ないか、これは貴重な映像だ。きっとマニアには大 喜びされた名作じゃぞ、これは」 その時、ビデヲのラベルを 放射線で解析にあたっていた別の研究室から 使いの研究員が、解析結果を持って現れた。 「古屋教授、レポート、ここに置きますよ」 と言って、テーブルの上に投げ置くと、 すぐに部屋を出て行った。 声をかけても、ふたりの耳にはまったく届いていない。 テーブルの上に置かれたレポートには、 こう印字されていた。   「プロレスリング名勝負シリーズ

VOL.1

G

・馬葉

vs

アホダロ・ザ・ブッチャー」   ふたりの視線はモニター画面に釘付けされたまま……。 ■

fin

(24)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 会社から最寄りの

S

駅に向かう途中に、その店はある。 駅前からははずれた雑居ビルの地下

1

階。 カウンターだけの小さなバーが、 最近の俺の翼を休める止まり木となっている。 今日も残業を終えて帰途につく俺を引き止めるかのように、 その店の看板は、ぼんやりと灯りをつけている。 (終電まで、約一時間半。一杯だけ引っかけていくか…) 俺の脚は、吸い寄せられように狭い階段を降りていく。 やれやれ、バッカスの誘惑にはいつだって勝てない。 時間も遅いせいか、店の中はがらんとして、 マスターと常連の中林さんの二人きり。 中林さんは、扉を開けた俺と目が合うと、 右手を少し挙げて左右に振る、いつもの 奇妙な挨拶をしてきた。 マスターは皺と髭だらけの顔を綻ばせて、 「水割りだよね」 と言いながら、俺のボトルを探しはじめた。 中林さんというのは、毎晩といっていいほど この店にやってくる常連さんで、 その素性はよく知らないが、どこかの研究所とかに 勤めている人らしい。 店に来るたびに、会話を交わすという間柄ではないのだが、 話してみると驚くほどの博学で、科学や技術の分野にも 造詣が深い。 まあ、酒が入っているせいかもしれないが、 これからの社会や経済はどうなるか、という話になると、 大胆な私見を、もう延々と語り始める。 俺にとっては酒の席では聞きたくはない話題だが、 話の中に突拍子もない空想や、センスのいいジョークを 交える話の巧さが中林さんにはあって、 作品その

6

「飲

免許証」

Drinking license

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! つい引き込まれてしまうから不思議だ。 ま、話が長いのが欠点ではあるが、 そんな与太話で笑えるってことも、 俺がこの店にくる楽しみのひとつでもある。 今日の中林さんは、もうすでに頬杖をついて目も虚ろ。 かなり酩酊のご様子だから、 話で盛り上がることもないだろう。 退屈を紛らすようにタバコを燻らすマスターに、 俺はお愛想で話かける。 「マスター、そこの角のラーメン屋、ビルに建て直し するって、話、知ってます?この辺もずいぶん変わ りますよね。私がいまの勤め先に来た頃なんとかと は、まるで通りの様子も違っちゃいましたよね」 「そうだよね、そこの大通りなんか、居酒屋だらけで しょ、なんか、大手の系列店てのは値段も安いみた いだし、私らも商売やりにくくなったよねー」 「そうそう、若いのが酔っぱらって、店の前で大声あ げて、その辺の地べたに座ったりしてるの、やだよ なぁー、あれ」 「でもさ、あいつら、羨ましくない?俺たちがあれぐ らいの年頃には飲みたくても飲めなかったでしょ。 金なくて。今のガキは飲み代も安くて済むんだもん、 いいよね。まー、小さな飲食店経営者にしてみれば、 辛い限りだけどね」 「昔と比べると、ホント、  いい時代だって思いますよよねー」 マスターとさわりない会話を交わしながら、 俺は水割りを口に運ぶ。 それまで俯いていた中林さんが、ふいにこちらを向いた と思ったら、ろれつの廻らない口調で呟いた。 「今はいい時代だぞー。酒飲みにとっちゃーこのうえ なく幸せ。飲みたいヤツが飲みたいだけ飲む。これ から先は、こんなこと、できなくなるかも知れない よぉー」

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 「じゃ、なにかい。昔のアメリカのアル・カポネの時 代みたいに、禁酒法が日本でも施行されたり、とか ですか?、中林さん」 俺はついつい、中林さんに突っ込みをいれてしまう。 すると急に堰を切ったように、 中林さんはまくし立てはじめた。 「そーだよ、君ぃ。あと何年かたってみぃ、酒を飲む には免許証が必要になったりするかもしれんよ。ハ タチんなって、免許とれる年齢になると、飲酒教習 所通うっつーの、どお?。学科もあるけど、実地教 習もあるの。実地の第一段階はカクテル、で、第二 段階はビールとウィスキー。第三段階では日本酒ね。 ここまで教わると、やっと仮免がもらえて路上教習 に入るの。  つまり、指導教官といっしょにを飲み歩くわけ。あ、 もちろん支払いの方も生徒持ちで。ね、面白いと思 わん?でさ、それを何教程かやって、教官のハンコ もらったら無事卒業、と。そのあとは、保健公安委 員へ行って、試験うけて、合格したら、ようやく酒

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! が飲める免許が交付されるってーのは、どうだ?」 ここまで中林さんは一気に喋ると、 グラスに残ってた水割りを煽ってゴクリと飲み干した。 それ、けっこういいアイデアかも知れない、と俺は思った。 だって、無茶な飲み方して酒で死ぬ大馬鹿者は、 毎年腐るほどいるわけだし、酔って絡んだり、 暴力を振るうヤツだって、星の数以上にいるわけだ。 アルコールという記憶力や 思考能力を麻痺させる薬品の服用を、 一定の年齢に達したから、という理由だけで 許可していいのだろうか、と個人的には思う。 「いいすね、それ。酒を飲むのが免許制になる………。 んー、SFチックで、ショートショートとかのネタに なりそうじゃないですか」 「あ、お前、信じてねーなー。いつかきっとそうなる って。いまも密かに厚生労働省あたりで、計画が進 んでるかもよ。免許制になると大変だよー、きっと。 違反したら罰金と減点よ。  まー、酒飲んで千鳥足になって他人とぶつかったり したら[安全飲酒義務違反]だろうな。駅のホーム かなんかでゲロ吐いたら物損事故扱いでまず免停だ な。泥酔でケンカでもしようもんなら即免許取消、 刑務所送り。ま、当然か。  ね、どうよ、こんなの。春の安全飲酒週間とかつく って歓楽街のはずれあたりで、「ねずみ取り」する の。飲み過ぎてそうな通行人捕まえて息吐かせて血 中アルコール濃度調べんの。法定濃度オーバーして たら青切符、ひどい場合だと赤切符切られたりして。  当然、3年ごとにとかに、免許の更新手続きもある んだろうな。  でもって、新宿や渋谷あたりなんか、週末になると 暴飲族とかいって変な連中が大勢集まって、一ッ 気!!一ッ気!!、なんて飲みまくって危なくてし ょうがねぇってのはどーだ?な、面白いだろー。」 よくまぁこれだけの想像できるなと、つくづく感心する。 俺とマスターは笑いながら、中林さんの話を聞いていたが、 当の本人はここまで喋ると、 またカウンターに俯せてしまった。

(28)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 腕時計に目をやると、そろそろ看板の時間。 「中林さん、もう帰りましょう。続きはまた来たとき に聞かせてくださいよ、さ、起きて」 肩を軽く揺り動かすと中林さんは虚ろげに目を開けた。 「勘定してー」 と小声で言い、上着の内ポケットから 財布を取り出そうとするのだが、酔ってるせいか 動作もおぼつかなくて、なかなか出てこない。 ようやく取り出せたと思ったら、今度はそれを床に落とし、 小銭やクレジットカード、レシートに キャッシュカードだのを派手に散乱させてしまう始末。 (やれやれ、しょうがない) と独りごちながら俺も拾い集めるのを手伝うことにした。 そして、腰を屈めて 何枚かのカードを拾って驚いた。 その一枚は、『時間旅行許可証』、そしてもう一枚には、 『飲酒免許証』と書かれていたのだ。 床にへばりついて唖然としている俺を見下ろし、 中林さんはこう言った…。 「飲むんなら、いまのうちだよ」 ■

fin

(29)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 「健太郎、夕方になったらお買い物に行こうねー」 礼子さんが、ソファで雑誌を眺めながら俺に話しかける。 (また買い物かよ、めんどくせーな。) このところお茶を飲みに近くの喫茶店へ行くにも、 近所のスーパーに行くのも、俺といっしょに行こうとする。 やんなっちゃうよな。 俺、ホントは何もしないでいるのが大好きなのに。 でもさ、自分で言うのも何だけど、俺ってまだ若いし ルックスには自信があるんだよ。 生まれてからずっと、美形だ美形だって言われてきたしね。 だから礼子さんが俺と出かけたいって気持ち、 連れ歩いてみんなに見せびらかしたいって気持ちは、 分からない訳じゃあない。 俺と礼子さんが出会ったのはね、

1

カ月ほど前の深夜。 というよりも、もう明け方に近い時間だったな。 六本木の外れにあるバーのドアの横で だらしなーく眠りこけてた俺に声をかけて来たのが最初。 礼子さんは、すこし酔ってたみたいだったな。 俺に話しかけてきて 「いらっしゃいよ、あたしのウチに」 っことになったわけよ。 その日から、居候生活の始まりさ。 喰わしてもらってるんだから、お供で出かけるぐらい、 我慢しろって

?

そうかもな、贅沢言っちゃ、罰が当たるかもな。 もちろん、そのご厚意には、感謝してるさ。 でも、家にいるときはいつも俺にべったりで そうとしないっていうのには正直困ったものさ。 作品その

7

I am

Kentaro's story

(30)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 夜だって、ベッドまでいっしょだぜ。 眠るのだったら、どこでも構わない俺だけど、 ご奉仕させられるのがなぁー、 へへ、結構辛いのよ、これが。 礼子さん、俺の舌がお気に入りらしくてさ、 リクエストも多いんだ。 なんて、へへへ、それ以上は教えないよ。 こう見えても義理堅いんだ、俺。 でもよ、こんな生活、まるで鎖に繋がれた犬じゃん。 俺、犬なんかじゃねーもん。 だからさー、思い切って礼子さんに言うからな、見てろよ。 言ってしまったせいで 「じゃ、別れましょ」 なんて ポイと捨てられちゃったら、 俺にとっては実はとっても困る問題なんだけど、 腹から声出してはっきり言おうと、決心した。 俺は思いきり、息を吸った。 「時々は俺の好きなようにさせてくれ、これまで我慢 してきたけどいつもいっしょは辛いぜ。たのむから、 俺に自由をくれ!!」 目一杯の大声で、礼子さんに向かって叫んだ。 「あらあら、健太郎ちゃん、どうしたのー?  そうニャアニャア鳴かないでちょうだい、あ、お昼 の時間ね、お腹すいた?鰹節ご飯、食べる?」 礼子さんはそう言うと、俺の餌の用意をしに キッチンへ立った。 ■

fin

(31)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 僕の家と小学校の、ちょうど真ん中くらいの場所に、 ちいさな空き地があるんだ。 広さはだいたい、家がふたつかみっつ分かな。 サッカーとかはできないよ。そんなに広くない。 いつもじゃなけど、そこで僕は下校の途中に、 友達と遊んだり、ひとりで漫画の本を読んだりしてる 秘密の場所。 家に帰ると、塾とかスイミングスクールとかに 行かなきゃならないから、学校以外で友達と遊べるのは、 ここぐらいのものなんだ。 通学路からは見えない場所だったから、 下級生や先生にも見つからないし、超便利だよ。 でも

2

カ月ぐらい前から、その空き地の

3

分の

1

ぐらいの土地に、家を建てる工事がはじまった。 いまはまだ、柱が組み立てられたばかりで、 できあがるのはまだ先のようだけど いつも職人さんたちが忙しそうに仕事してる。 もう夕方だから、そろそろおしまいにするのだろう。 ゴミとかの後かたづけをしてる。 僕は空き地のすみっこに置いてある、 ビール瓶を入れて運ぶプラスチックのケースを さかさまにしたやつに座って少年ジャンプを読んでいた。 これ、便利なんだ。 今は椅子だけど、友達と遊戯王カードするときなんかは 上に板置けばテーブルにもなる。 帰る時は端っこの草むらに隠しておくのさ。 そのうちに、何人かいた職人さんたちは トラックに乗って帰っていったのだけど、ひとりだけ 帰らないおじさんがいた。 そのおじさんは建ててる途中の家の土台に腰掛けて、 何か飲んでいた。たぶん、カップ入りのお酒だね。 おじさん、赤い顔してきたから。 作品その

8

「幻の蛇

少年」

(32)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 少年ジャンプも読み終わっちゃったので、僕は しばらく遠くの山を見てた。 そしたら急に、そのおじさんが僕のこと呼んだんだ。 べつに僕に用事があるとは思えないんだけど、 「おー、ぼーずー、っっちかー、っちけー」 だって。 いったいどこの言葉なんだろ、 日本語とは思えないぐらい、すっげー訛ってる。 たぶん、こっちにこい、って言ってるんだ。 手招きしてるから、たぶんそう。 ウチのお父さんもそうだけど、お酒飲んでる人には、 素直に言うこときいたほうがいいよね。 無視してるとお説教になって、よけいめんどくさくなる。 漫画本を鞄にしまって、おじさんのそばへ行くと、 「こー、のめー」 って言いながら、僕に缶コーヒーをくれた。 危ない人じゃ、なさそうだ。 いちおういつでも走って逃げる用意だけは してたんだけどね。 ありがとうとお礼を言って、僕が コーヒーをのむと、おじさんは、 「ええって、えって」 と言って、がははははと笑った。 しっかり聞いてないと、何言ってるか まるでわからなくなりそうだ。おじさんは、 足下にあった箱のような鞄のような入れ物を 足の先で僕の方に蹴飛ばして押しやりながら 「ぼーず、ずわりゃー」 といった。 たぶん、座りなさいという意味だろうと思ったので、 僕が座ろうとすると、その箱の中で、 何かがゴトリと音をたてた。 おじさんの持ち物のようだったから、僕が座ったせいで つぶしたりこわしちゃ悪いと思ったので、

(33)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! はしっこにお尻を乗せてコーヒーを飲んだ。 おじさんと話しすることはなかったんだけど、 ずっと黙ってるのもへんだし、 缶コーヒーをもらったこともあるので 話しかけることにした。 「おじさん、この箱の中って何が入ってるの?」 「うー、なにゃ、ツチノコ、かなて…ぼーず、してっ か?きたことあっが?胴、ぐーってな、こななめー」 げっ、つ・ツチノコって、幻の蛇じゃなかったっけ

!

頭と尻尾はふつうの蛇だけど、 胴のとこがめちゃ太ーくなってるやつ。 うへー、ホントかな。 このおじさん僕を子供だと思って、からかってんのかな? おじさんの顔を見ると、また、にたぁと笑った。 あ、思い出した。

2

3

年前だったけど、学校の裏にある 造成地の奥の山林でツチノコを見かけたという人が現れて、 警察やテレビ局の人がたくさん来て 大騒ぎになったことがある。きっとそこで見つけたんだ。 あれ以来、山は立入禁止になってるけど、 大人なら入っていける。 「でな、こいが金んなっだっての、でじなもんだぁ」 そうか、このおじさんはこれを売って お金にしようとしてるんだ。 だからひとりだけ帰らずに残ってたんだ。 きっと、動物園とかに高く売るつもりなんだ。 いつかテレビ番組を作る会社に勤める 親戚のおにいさんが言ってた。 珍しい情報とか事件を、テレビ局に知らせると 謝礼が貰えるって。 この中にいる幻の動物・ツチノコのことも、 きっとそうなんだ。 「ねー、おじさん。この箱開けてもいい?」 僕は思い切って訊いてみた。

(34)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 「だんみだぁ、あぶねっがら」 眉を顰めながらおじさんは応えた。 見たいな。絶対見たい。なんて頼めば、 見せてくれるんだろう。 僕は、箱を指でつついてみた。こんどは何の音もしない。 おじさんの方を見ると、 作りかけの家の柱に寄りかかって目をつむっている。 ふと、僕にある考えが思いついた。 これを親戚のおにいさんに見せてあげよう。 きっとニュースや番組に取り上げられて、 きっとテレビ局で誉められるし、僕に感謝して ご褒美だって…。 僕はおじさんには悪いけど、この箱を家まで 持って帰ることにした。 これは泥棒かもしれないけど、きっとテレビで 話題になれば、許してもらえるんじゃないかな、 と思った。 よし! 僕は立ち上がってその鞄のような箱を抱えた。 箱の中で、またゴト、と音がした。 その瞬間、おじさんは目を開け、 僕と目があったけど、それと同時に僕は走り出した。 ちょっと走って振り向くと、やばい、 おじさんが追いかけてくる。 僕はスピードをあげた。 おじさんが何か叫んでるけどよく聞こえない。 早く見たいなー、ツチノコ…。 「おおーいぼーず待てー、そん中にゃ、金づち、のこ ぎり、カンナとか、でえじな道具へってんだー、も っでくでねー」 僕は箱をしっかり抱え直して、思い切り走った。 ■

fin

(35)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 友人の直樹からの電話は、久しぶりだった。 これといった用件はなくて、まあご機嫌伺いというか、 なんとなく暇に任せてダイヤルしたのだという。 「ちょうどよかった。こっちからも電話しようと思っ てた」 と俺が言うと、 「なんか変わったことでもあった?」 直樹は音階で

3

度ほど上げた声で訊いてくる。 電話の向こうで 興味津々という表情をしてるだろう直樹の様子が ひしひしと伝わってくる。 「ん、まあ、そんなたいしたことじゃないんだが、こ の機会に言っておこうと思うんだけど、俺たち、つー か、俺と恭子……、もしかしたら離婚することにな りそうなんだよね」 僕と恭子が知り合って、

5

年が経とうとしていた。 お互いを好きになって結婚したのはまぎれもない事実だ。 ひと目見た瞬間に、僕はこの女の子を落としてやろう、 何としてでも付き合ってやろう、と心に決めてたし、 彼女の方もそれに似た想いだったと、後で聞いた。 その当時は、二人ともいっしょにいるだけで楽しかったし、 やっと運命の人に巡り会えたとお互いが確信していたんだ。 周囲のみんなから熱愛カップル、なんて言われてた。 そしてつきあい始めて

1

年ほどで 教会で結婚式を挙げたんだ。 でも、でもさ、

5

年も経つとあの時の熱い気持ちなんか、 もう体温と同じくらいの温度になっちまってる。 作品その

9

「別れる

由」

(36)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 関係自体が、マンネリというか、 ただ惰性で続いていると言えなくもない。 僕たち二人は、お互いがそれぞれ仕事を持っているし、 まして鎹(かすがい)となる子供も持たなかったから、 毎日の生活のリズムだって、全然噛み合わなかった。 僕はクルマのディーラーで働いていたから 土日に出勤するのはあたりまえだったし、 デザイン事務所につとめる恭子は土日は休めるものの、 仕事は昼過ぎに出社し、深夜までというのが あたりまえの生活だった。 互いそれぞれに異性の友達をたくさん持っていた、 というのも原因というか、 遠からずの理由になっていたのかもしれない。 最近では同じ家に住んでいるのに、 顔を合わせることのない日もしょっちゅうだし、 何より俺自身、この日常に飽きていたのかもしれない。 「その、まだ、決まった訳じゃないんだろう。何があ った?もしかして、浮気とか、したのか?」 直樹の声が、暗い。沈んでる。 おまえが落ち込んでどうするっていうのよ…、 と突っ込んでやりたくなったが、友達想いの気持ちが そうさせているのならしょうがないか、なんて、 こっちまで気を遣っちまったじゃないか。 しかし、なんていう短絡的な発想だろう。 そんな貧困な発想しかできないこの男は

21

世紀を生き延びていけるのか? なんて僕が考えてもどうにもならないか…。 「理由なんて、どこの夫婦でも経験してることさ。二 人のやったことに原因があり、両方に責任があるん だろうな」 「………そうか。わかった。とにかく来週、いや今週 でもいい。一度会って飲もうよ。また電話するから」 何かを伝えるためにあるはずの言葉が、 なんてこんなに伝え難いものなんだろう、 と僕は思った。

10

分も経たないうちに、電話が鳴った。

(37)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 「おい、聞いたぞ。お前、恭子ちゃんと離婚するんだ って?原因はお前の浮気なんだって?やるじゃん。 おまえはそんなことぜってーしねーヤツだと思って たのに、よくやった。偉い。尊敬しちゃうよ俺、で 相手は誰なの。お仕事関係?もしかして、俺の知っ てる人?」 受話器を取るなり達夫のうれしそうな声だ。 テレビのワイドショウじゃねーっての。 やばいな。直樹のヤツ、すぐに達夫に電話したんだ。 きっと、また他の誰かに電話してるはずだ、今頃も。 「だからー、浮気なんか、俺、してねーよ。そんな余 裕あるわけがない。する時間がない、だろ?」 いつもより僕の音量レベルは上がってる。 「え、ちがうの?じゃ、恭子ちゃんが他の男に走った ってこと?じゃ、捨てられたわけじゃん」 「それも違うって」 「ん…………じゃ、もしかしてお前、ホモになった?」 「ちがいます。ちがう。んなわけねーだろ!」 「もしかしたら夫婦でW不倫した可能性もある、って 直樹は言ってたけど、それ当たり?ビンゴ?」 もういいよ。悪いけど、ほっといてくれよ、 って大声で言いたい気分になってきた。 なぜ、みんな理由を聞きたがるのだろう。 たかが離婚じゃないか。 「当たってないけどさ、よーするにさ、俺たちはこれ をしてしまったんだから、離婚になってもしょうが ない、ってことをしてしまったからだよ。それだけ さ。これさえしなかったら、二人はうまくやれたか もしれないし、ぜったい離婚なんかならないのにな。 …………悪いけど、電話切るから」 受話器を置いたあとで、言わなきゃよかったかなと、 少々反省をした。

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! またすぐに電話が鳴った。 「ねぇねぇ、おまえ、一体何したの?嫁さん殴ったの? 変なモノ買ったの?不倫?まさか、俺のあげたアダ ルトビデオが恭子ちゃんに見つかったのが原因、っ てんじゃないだろーな。な、どうしたんだよ。原因 はなによ?何すると離婚になっちゃう訳?後学のた めにも、教えてくれない?」 こんどは正和からだ。 芸能リポーターみたいな矢継ぎ早の質問に 答えること自体がもう馬鹿らしくて、 「悪い、切るわ」 この一言でがちゃ切り。 その後、また別の友達からも電話があったが、 みんな僕を心配するとかではなく、 離婚に至るその理由を聞きだそうという ワイドショーみたいな興味からだった。 僕は重苦しい気分で、電話線のジャックを外した。 それにしても何でみんなわからないのだろう。 これをしてしまったから離婚に至ってしまうこと、なんて、 たったひとつしかないではないか。 結婚したから、だろう? なぁ……。 ■

fin

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コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! ナミという名で呼ばれるその少女は、 実に美しい容貌をしていた。 まず驚かされるのは均整のとれたスタイルである。 頭蓋骨からして一般人と比べると驚く程に小さく、 頭頂部から顎までの長さは彼女の身長の約八分の一という 理想の構成比率を成しているだろうことが、 ひと目で想像できる。 すらりと伸びた脚は身長の半分以上を占め、 腰の位置自体も驚くほど高い。 神の気まぐれな創造とはいえ、偶然が いくつも重ならなくては ここまでのスタイルは生まれることはないだろう。 そして美しさを特に印象的づけているのが、 大きく、しかも輝かんばかりの瞳。 とにかく可憐で美しいのだけれど、このストーリーには ディテールは重要ではないので以下略…。 そんな容姿に恵まれたナミは、普通の女子高生であった。 美しい女子高生なんてめったいねーんだから 普通じゃねーだろ!と 俺が突っ込み入れたころとでどうなるもんでもないので 勘弁してくれ。 もちろんこの美しさだからして同性の友達に恵まれ、 そして妬まれ、上履きのなかに 画鋲を入れられたりするがすぐに許してしまうという 天使のような優しさをも持ち合わせていた。 男子生徒からは憧れの存在として崇められ、 めがねの秀才君にも告られたりもして、 青春ど真ん中の学園生活を送っていたというわけだ。 幸せな毎日を過ごしていたって、わけだ。 しかし、ある時から、彼女の人生は大きく 転換してしまったのである。 まず、一流企業の部長職でバリバリと働いていた彼女の 作品その

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悲しい夜を止めて

17

歳ナミ

物語」

(40)

コピーライターを笑え! ショートショート劇場 SPECIAL 20連発 !! 父親が、ふとした出来事をきっかけに インチキ宗教に走った。 真面目だった父親は、その活動にのめり込むあまり、 退職を余儀なくされる。 それでも懲りずにインチキ宗教を盲進し続け、果てには 不動産など、資産をすべて売り払い、勝手にお布施として インチキ宗教に納め、出家と称して 行方不明になってしまったのである。 そうこうしている間に、学習塾に通う、 やっぱり美形の弟がその帰り道、前方不注意の スポーツカーにはねられて半身不随の身に。 母はそんな日々の心労からか、精神と身体に異常をきたし、 寝たきりの生活になってしまった。 まさに不幸のデパート状態である。 収入もほとんど無くなったこの一家を支えるのは、 ナミしかいなかった。 家族の生活費と母と弟の医療費、そして 自分の学費を払うためにナミは お金を稼がねばならなかった。 しかし高校に通学している都合上、 昼間働くことはできなかった。 まして、 時給

800

円などというファーストフードなどでは 家族が生活していくだけのを稼ぎ出せるはずもなく、 必然的に体を売ることに…。 ま、ようするにひと言でいうと援助交際だな。 某ターミナル駅付近の百貨店の入り口や、歓楽街で 夕刻になると客を引く彼女、 そしてその後のホテルで繰り広げられる 組んずほぐれつの男と女のお遊戯の間も、 彼女は実に美しかった。ナミは頑張って働いた。 働いたというと語弊があるが、 家族が生活していくだけのお金を得ることができた。 自分がなんとかしなくては、という使命感が 彼女を支えたのだろう。 嫌なプチ変態男もいたけれど、必死に耐えた。 危険な目にも遭ったけど、うまく逃れた。 しかし、そんな生活もすぐに破綻の時を迎える。 通ってた学校に、ナミが援助交際していたことが バレてしまった。

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