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第357回東京女子医科大学学会例会(平成30年2月24日)

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学会・研究会抄録

第 357 回東京女子医科大学学会例会

日 時 平成 30 年 2 月 24 日(土) 13:00~17:40 会 場 総合外来センター 5 階 大会議室 開会の辞 司会(幹事)橋本悦子 挨  拶 (会長)吉岡俊正 平成 29 年度研究奨励賞授与式 13:02~13:15 選考経過報告 (学長)吉岡俊正 佐竹高子研究奨励賞(第 26 回) 1.新規血管新生抑制因子 LYPD1 の機能部位の同定 (先端生命医科学研究所助教)青木信奈子 2.血中 uromodulin の臨床的意義に関する研究 (八千代医療センター腎臓内科准講師)臼井亮介 中山恒明研究奨励賞(第 4 回) 1.ハイブリッド型人工神経による新しい顔面神経再建手術法の確立 (形成外科学講師)松峯 元 平成 28 年度受賞者研究発表 13:15~14:15 座長(幹事)橋本悦子 山川寿子研究奨励賞(第 29 回) 1.日本人 2 型糖尿病患者の個別化治療におけるインスリン療法に関する研究 (内科学(第三))大屋純子 佐竹高子研究奨励賞(第 25 回) 1.ヘルパー T 細胞の分化を運命づける樹状細胞の機能分子の探索 (微生物学免疫学)大森深雪 中山恒明研究奨励賞(第 3 回) 1.転移前ニッチ形成を標的とした新規がん治療への展開 (薬理学)出口敦子・丸 義朗 2.再生医療のための移植用心筋組織内残存未分化 iPS 細胞除去手法開発 (先端生命医科学研究所,循環器内科学)松浦勝久 一般演題 14:15~14:25 座長(幹事)橋本悦子 1.一般内科初診外来における愁訴と傷病名に関する多施設共同研究 (保健管理センター学生健康管理室,女性医療人キャリア形成センター女性医師再研修部門)横田仁子 <休  憩> 第 12 回研修医症例報告会 14:40~17:40 〔発表 7 分,質疑応答 3 分/○発表者,◎指導医〕 開始の挨拶 (卒後臨床研修センター長)川名正敏 Block 1 14:45~15:40 座長(産婦人科)中林 章・(救命センター)武田宗和 1.全身麻酔導入後,高度の徐脈を来し,手術が延期になった 1 症例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2麻酔科,3内科)○杉山瑞恵1 ◎市川順子2・諏訪邦明3・西山圭子2・小高光晴2・小森万希子2 2.左腎摘出後,嘔気・頭痛が続いた vonHippel-Lindau 病の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2脳神経外科)○中尾千恵1・◎糟谷英俊2・山崎 圭2 3.交通外傷による右心耳破裂の 1 救命例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2救急医療科)〇川口憲治1・◎庄古知久2・出口善純2

東女医大誌 第 88 巻 第 1 号頁 30~38 平成 30 年2月

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4.胃癌による穿孔が疑われたが,最終的に S 状結腸癌にて手術を行った 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2外科)○横川英之1・水口知子1・下嶋優紀夫2 宮澤美季2・◎山口健太郎2・碓井健文2・横溝 肇2・塩澤俊一2・島川 武2・勝部隆男2・成高義彦2 5.副腎皮質癌と鑑別を要し,胃原発神経鞘腫に類似した組織像を持つ後腹膜神経鞘腫の 1 例 (1卒後臨床研修センター,2乳腺・内分泌外科,3病理診断科)○林 怡嫻1 羽二生賢人2・永井絵林2・◎尾身葉子2・堀内喜代美2・山本智子3・岡本高宏2 Block 2 15:40~16:25 座長(小児科)平澤恭子・(東医療センター小児科)本間 哲 6.右大腿蜂窩織炎で受診し,詳細な問診から早期診断に至った小児 1 型糖尿病の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2小児科)○高橋侑利1 ◎星加将吾2・安田祐希2・松岡尚史2・杉原茂孝2 7.右膝の腫脹を主訴に入院し,関節型若年性特発性関節炎と診断した 1 歳女児例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2小児科,3膠原病リウマチ痛風センター)○岩本隼輔1 ◎東 範彦2・星加将吾2・根木瑠美子2・安田祐希2・宮前多佳子3・杉原茂孝2 8.退形成性上衣腫の多発転移に急性リンパ性白血病を合併した女児例 (1卒後臨床研修センター,2小児科,3脳神経外科)○岡野まり子1・◎金子裕貴2・鶴田敏久2 千葉幸英2・木原祐希2・藍原康雄3・林 基弘3・川俣貴一3・永田 智2 9.乳児期後期に進行を認めた出血後水頭症 2 例 (1卒後臨床研修センター,2小児科)○森島直子1・◎佐藤友哉2 竹下暁子2・平澤恭子2・永田 智2 <休  憩> Block 3 16:35~17:25 座長(循環器内科)志賀 剛・(血液内科)吉永健太郎 10.ニボルマブ関連大腸炎に対してステロイドが有効であった転移性腎細胞癌の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2泌尿器科)○木下翔太郎1・◎近藤恒徳2 11.胃ランタン沈着症―6 例の臨床病理学的検討 (1卒後臨床研修センター,2病理診断科,3消化器内視鏡科)○小林茉弥1・◎長嶋洋治2・◎中村真一3 12.周術期低血糖が遷延した 1 型糖尿病の症例 (1卒後臨床研修センター,2麻酔科,3糖尿病内科,4乳腺・内分泌外科)○林 怡嫻1 深田智子2・井出理沙3・神尾孝子4・◎尾㟢 眞2・◎野村 実2 13.顔面神経麻痺の治療後に多発脳神経障害を繰り返し,診断に至った特発性肥厚性硬膜炎の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2内科,3耳鼻咽喉科)○鈴木綾子1 興野 藍2・金子富美恵3・◎西村芳子2・柴田興一2・佐倉 宏2 14.Multi-detectorcomputedtomography(MDCT)を用いた稀少疾患である calcifiedamorphoustumor(CAT)の定量的評価 (1卒後臨床研修センター,2循環器内科,3画像診断・核医学科,4病理学(第二))○福島 博1 ◎関口治樹2・鈴木 敦2・芹澤直紀2・新井光太郎2・芦原京美2 村崎かがり2・萩原誠久2・福島賢慈3・長尾充展3・宇都健太4 初期臨床研修現況報告 (循環器内科准教授)志賀 剛 ベストプレゼンテーション賞表彰式 閉会の辞 司会(幹事)小森万希子

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〔平成 28 年度山川寿子研究奨励賞受賞者研究発表〕 1.日本人 2 型糖尿病患者の個別化治療におけるイン スリン療法に関する研究 (内科学(第三)) 大屋純子   〔目的〕基礎インスリンをデグルデク(IDeg)かグラ ルギン 300U/ml(IGla300)に変更 6 か月後の有効性を 比較した.〔対象と方法〕対象は当院で 2015 年 11 月~ 2017 年 5 月に基礎インスリンを IDeg または IGla300 に 変更された 2 型糖尿病患者 151 名.変更前後の HbA1c, BMI,インスリン変化量を IDeg 群と IGla300 群で比較し た.〔結果〕変更前に比し変更後の HbA1c は有意に低 下,BMI は不変で,いずれの変化量も両群で差はなかっ た.基礎インスリン投与量は変更前後で不変だが,IDeg 群では IGla300 群に比べ追加インスリン量が有意に減少 していた(IDeg-0.1 vs IGla300 0.7u,p<0.05).〔結論〕 IDeg,IGla300 はいずれも体重を増加させず HbA1c を改 善する傾向があった.以上の結果をふまえ,持効型溶解 インスリン(IDeg または IGla300)に,①ナトリウム・ グルコース共役輸送体阻害薬,②グルカゴン様ペプチド 1 受容体作動薬,③超速効型インスリン 1 回打ち,の 3 パターンの併用療法による 48 週間の介入試験を行い,有 効性と安全性について比較する予定である.現在,① 7 例,② 6 例,③ 6 例が登録されている. 〔平成 28 年度佐竹高子研究奨励賞受賞者研究発表〕 1.ヘルパー T 細胞の分化を運命づける樹状細胞の機 能分子の探索 (微生物学免疫学教室) 大森深雪   近年増加傾向にあるアレルギー疾患は Th2 サイトカ インの産生亢進を共通の特徴とする.Th2 サイトカイン の産生は alarmin である表皮由来サイトカインによって 誘導されることが知られているが,そのメカニズムには 未知な点が多い.そこで私たちは,Th2 サイトカインの 主たる産生細胞であるヘルパー T(Th)細胞に主眼をお いて,「特定の樹状細胞サブセットが Th2 サイトカイン を産生する Th(Th2)細胞への分化を調節する」という 仮説のもとに,alarmin のひとつである thymic stromal lymphopoietin(TSLP)に応答する樹状細胞の同定に着 手した.その結果,3 つの樹状細胞サブセットが皮膚で の TSLP 発現に応答してリンパ節に集積することを発見 した.次に,セルソーターによりそれぞれの樹状細胞サ ブセットを純化し,ナイーヴ Th 細胞と抗原存在下で一 定期間共培養した.その Th 細胞を回収し,再活性化し た際の機能性サイトカインの産生能を評価した.その結 果,共培養に用いた樹状細胞サブセットによって,Th2 サイトカインおよび interleukin(IL)-9 を高産生する細 胞,IL-10 を高産生する細胞,IL-17A を高産生する細胞 が分化し,特定の樹状細胞サブセットが Th 細胞の分化 調節に関与している可能性が示唆された.以上の結果を 受けて,Th2 サイトカインおよび IL-9 を高産生させる樹 状細胞サブセットについて,TSLP で刺激した時に発現 するシグナル分子の網羅的解析を行ったので,その結果 について報告する. 〔平成 28 年度中山恒明研究奨励賞受賞者研究発表〕 1.転移前ニッチ形成を標的とした新規がん治療への 展開 (薬理学) 出口敦子・丸 義朗   がんによる死因の多くは,がんが原発巣から離脱した 後,遠隔臓器への転移によるものと考えられている.こ のような転移性がんに対する治療が臨床上重要な課題と なっているが,現在までに,完治が望める有効な化学療 法は確立されていない.そのため,転移性がんにおける 早期予測や治療法の開発は急務である.  がんの進展には,がん細胞自身の遺伝子レベル上の変 異に加えて,炎症に惹起されたがん周辺部に存在する微 小環境(ニッチ)の存在が明らかとなった.薬理学教室 では,がんが原発巣にとどまっている段階において,将 来の転移先となる肺に Toll 様受容体 4(TLR4)内因性 リガンドを介した転移前ニッチ形成を誘導していること を見出しており(Hiratsukaetal:NatCommun,2013), がん周辺部に存在するがん微小環境に加えて,がんを呼 び寄せる環境(転移前微小環境)の存在が示唆されるよ うになった.さらに我々は,TLR4 阻害薬の肺転移に対 する効果を担がんマウスにおいて検証したところ, TLR4 内因性リガンド S100A8 阻害は骨髄由来免疫抑制 細胞や腫瘍随伴マクロファージの機能を抑制し,転移前 肺ニッチ形成と腫瘍内における腫瘍血管新生を抑制する ことから抗腫瘍作用を発揮していることを見いだした (Deguchietal:Oncogene,2015).  転移能を持つがんは,ある程度の臓器指向性を持つこ とが知られており,転移を促進する転移前ニッチ形成に も,組織特異性が存在する可能性が考えられる.我々は, これまでに,大腸癌転移前肝ニッチ形成に関わる候補因 子を cDNA マイクロアレイ法により同定した.マイクロ アレイ解析により候補因子としてヒットした分子は肺転 移モデルマウスで得られた転移前肺ニッチ形成候補因子 とは相異なる因子が多く含まれていたが,S100A8 は共 通因子としてヒットしたことから,S100A8 が全身性転 移に関与している可能性が示唆された.本研究では, S100A8 中和抗体が転移先臓器に依存せず,転移抑制可 能であるかを明らかにするため,大腸癌同所移植モデル マウスを用いて S100A8 中和抗体による肝転移に対する

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効果と抑制機序を検証した. 2.再生医療のための移植用心筋組織内残存未分化 iPS 細胞除去手法開発 (先端生命医科学研究所,循環器内科)  松浦勝久   種々の心疾患に伴う障害を端緒とし,心臓組織のリモ デリングと引き続いて生じる心不全の要因として,心臓 の自己再生能の著しい欠如が負うところは大きく,根本 的治療には障害によって失われた心筋組織を補塡する手 段が必要となる.近年,従来の薬物治療や外科的治療で は根治できない難治性疾患,組織・臓器の傷害や欠損に 対する新たな治療法として「再生医療」が世界的に注目 されている.特に人工多能性幹(iPS)細胞など治療に使 用する細胞ソースの開発および組織工学を用いた再生組 織構築技術の発展が,再生医療への期待をさらに高いも のとしている.我々は,東京女子医科大学発の 3 次元浮 遊攪拌懸濁培養技術および細胞シート技術により,ヒト iPS 細胞由来心筋細胞の量産化およびヒト心筋組織構築 に成功し,心筋組織置換型の再生医療開発および疾患・ 創薬研究への応用を進めている.一方,無限増殖能と多 分化能を有する多能性幹細胞の利用においては,移植組 織内の未分化細胞の残存に伴う腫瘍化リスクが懸念され る.特に 109スケールの移植細胞数が想定される心筋再 生医療では,未分化細胞の残存リスクも相対的に大きく なるため,より効率的な残存未分化細胞の除去手法が不 可欠である.最近我々は,メチオニン非含有培地,42℃ 培養,cyclin-dependent kinase(CDK)1/9 阻害剤がそ れぞれ異なる機序で iPS 細胞のアポトーシスを誘導する 一方,心筋細胞機能には影響しないことを見出し,心筋 組織内残存 iPS 細胞除去への応用を進めている.これら の手法の組み合わせや in vitro での iPS 細胞残存リスク 評価系およびモデル動物への移植における造腫瘍性試験 により,腫瘍化リスクのない心筋再生医療の実現に寄与 できるものと考える. 〔一般演題〕 1.一般内科初診外来における愁訴と傷病名に関する 多施設共同研究 (保健管理センター学生健康管理室,女性医療人 キャリア形成センター女性医師再研修部門) 横田仁子   〔目的〕離職した女性医師が地域医療施設で一般内科初 診外来を担当するために最初に修得すべき頻度の多い愁 訴,傷病名の実態調査を行う.〔方法〕問診票と診療録に よる観察的縦断研究.東京近郊の無床~400 床規模の医 療施設(千葉県立東金病院,聖隷横浜病院,東葛病院, 埼玉協同病院,北本共済病院,あさお診療所)に,2011 年 6 月 15 日~7 月 15 日(夏期),2012 年 1 月 16 日~2 月 15 日(冬期)の間に内科外来初診者で問診票を記入し た 4,424 名を対象とした.愁訴は ICPC-2 でコード化し た.4 施設で診療録(冬期 1,573 例)を用いてその後の転 帰,傷病名(ICD-10 分類)の追跡調査を行った.〔結果〕 夏冬ともに,病院の規模に関わりなく主訴では頻度順に, 咳,発熱,咽頭の症状,頭痛の順で多かった.傷病名で は呼吸器疾患,消化器疾患,循環器疾患,感染症・寄生 虫症の順で多かった.再診なしは 45%であった.〔考察〕 一般内科初診外来における愁訴に関するデータベースを 作成することが出来,追跡調査も 4 つの施設で行った. 頻度の高い愁訴および傷病名は施設によって変わりはな かった.一般内科で復職を希望する女性医師にとって習 得すべき愁訴と傷病名が実態調査により明らかになった. 〔第 12 回研修医症例報告会〕 1.全身麻酔導入後,高度の徐脈を来し,手術が延期 になった 1 症例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2麻酔 科,3内科) 〇杉山瑞恵1 ◎市川順子2・諏訪邦明3 西山圭子2・小高光晴2・小森万希子2   〔症例〕43 歳男性,身長 173cm,体重 88kg.急性胆 囊炎に対し,腹腔鏡下胆囊摘出術が予定された.既往歴 に心房中隔欠損症,35 歳時に心不全を伴う僧帽弁逆流症 を指摘され僧帽弁形成術,心房中隔欠損閉鎖術が施行さ れた.術前から心不全治療目的にて,β 遮断薬,抗アル ドステロン拮抗薬,利尿薬が処方され,術後に発作性心 房細動になったため,抗凝固薬が導入された.今回,胆 囊摘出術の術前に β 遮断薬のみ内服した.入室時の心拍 数(HR)48bpm,血圧 122/74mmHg であった.プロ ポフォール 100mg,セボフルラン 2.0%,フェンタニル 100μg,レミフェンタニル 0.3μg/kg/分,ロクロニウム 60mg で麻酔を導入し,気管挿管を行った.気管挿管の 刺激により一時 HR 61bpm まで上昇したが,麻酔導入 10 分後に HR30bpm 台前半まで低下し,35 分後に 5 秒 間の心静止があった.徐脈に対し,硫酸アトロピン計 1mg,エフェドリン計 12mg を投与したが HR30bpm 台が持続したため,ドブタミンを持続静注し HR 70~ 80bpm まで上昇した.経皮ペーシングを行い,最大強 度にしても経胸壁心臓エコー上,ペーシングによる有効 な心収縮がみられず,ペーシングが機能しなかったため 手術は延期になった.術後にカテコラミン未投与で HR 40bpm 台の徐脈が継続したため,前回の全身麻酔から 5 日後に経静脈ペーシング(VVI,HR60bpm)を使用し て全身麻酔下で腹腔鏡下胆囊摘出術を行ったが,周術期 の循環・呼吸動態に問題はなかった.術後に HR50bpm

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台の自己脈があったため,経静脈ペーシングは中止,抜 去した.〔考察〕麻酔導入後に高度の徐脈に至る原因とし て,循環器作動薬などの常用薬の影響,麻酔薬自身の副 作用,脊椎麻酔,硬膜外麻酔などの影響,循環器疾患の 関与などを考えるが,本症例では,継続投与された β 遮 断薬による房室伝導抑制作用と麻酔導入時による薬剤と の相互作用で生じたと考えた.房室伝導を亢進させる硫 酸アトロピンが無効であったことは,もともとの洞機能 不全や 2 枝ブロック(左脚前枝ブロック,完全右脚ブロッ ク)の存在による影響を考えた.経皮ペーシングも無効 であったことは,心肥大や体格の影響を考えた.〔結語〕 麻酔導入後に高度徐脈になり,抗コリン薬や交感神経刺 激薬,経皮ペーシングが無効であったため手術が延期に なり,経静脈ペーシングを用いて手術を行った症例を経 験した. 2.左腎摘出後,嘔気・頭痛が続いた von Hippel-Lindau 病の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2脳神 経外科) ○中尾千恵1 ◎糟谷英俊2・山崎 圭2   21 歳時頭痛精査で小脳血管芽腫が見つかり後頭下開 頭にて 4 か所の腫瘍摘出術を受けた.26 歳時,右腎がん の摘出術.その後,小脳腫瘍が大きくなってきたため, 27 歳で 7 か所の小脳腫瘍にガンマナイフの照射を受け た.その 6 か月後,小脳の照射されなかったのう胞性腫 瘍が大きくなったため腫瘍摘出術を受けた.35 歳で腎が んのため左腎摘出術(複数個あり腎の温存が困難と判 断).その退院前後から,嘔気・頭痛が続いた.退院 20 日後,脳神経外科の定期検診で,小脳腫瘍の増大が新た に見つかり入院となった.家族歴として父が vonHippel-Lindau 病で,腎がんの頸椎転移で死亡.入院時 MRI で は,左小脳から延髄にかけてのう胞が延髄を圧迫,のう 胞内小脳正中に 13mm の腫瘍を認め,均一に造影され た.それ以外に約 20 か所に造影される 5mm 以下の腫 瘍を認めた.2016 年の MRI で,小脳下部にあった当時 最も大きかった 7mm の腫瘍が,のう胞を伴って増大し たと考えられた.腹部 CT では,膵のう胞を認めるが, 眼底は異常ない.血液検査所見では,クレアチニンが 1.37mg/dl と高値以外に異常は認めなかった.手術は腹 臥位とし,後頭下開頭を行い,のう胞を開放し,腫瘍を 同定して全摘出した.病理所見は血管芽腫であった.術 後 9 日で,症状改善し退院した.今後は腎がんと小脳血 管芽腫の綿密な経過観察と,腫瘍が大きくなった場合に はガンマナイフ治療を行う予定としている.多科にまた がる von Hippel-Lindau 病では,全身の状態をよく理解 しておく必要がある. 3.交通外傷による右心耳破裂の 1 救命例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2救急 医療科) 〇川口憲治1 ◎庄古知久2・出口善純2   〔はじめに〕鈍的心外傷は近年救命例が増えつつある が,心外傷のなかでも心破裂は来院時にすでに心肺機能 停止に近い状態であることが多く,最も重篤かつ致命的 な損傷であり,迅速な患者対応と適切な緊急手術でのみ 救命することが可能となる.〔症例〕25 歳男性.都内で 首都高速を運転走行中に単独自損事故を起こし受傷.救 急隊現場到着時,収縮期血圧 76mmHg,脈拍 102 回/分 のショック状態,JCSII-30 の意識障害で当救命救急セン ターに搬送された.左前胸部に打撲痕あり.初療での FAST(focused assessment with sonography for trauma)にて心タンポナーデと診断.心窩部より心囊ド レーンを留置し,間欠的に暗赤色の血液を吸引すること で血圧を維持させた.造影 CT 検査にて右心耳破裂と診 断.バイタルサインは安定していたので手術室の準備を 待って入室.救急医療科医師の執刀にてクラムシェル開 胸.心囊切開すると大量の血液が噴出,右心耳に 3 か所 の破裂部を確認しサテンスキー鉗子で把持し止血.それ ぞれ縫合修復を行い救命に至った.術後経過は良好で, 十二誘導心電図も問題なく不整脈も認めなかった.術後 4 日目にはドレーンを抜去し ICU を退室.術後 15 日目 に退院し,後遺症なく社会復帰となった.今回行ったク ラムシェル開胸は胸骨縦切開よりも迅速でかつ低侵襲で あり,特殊な手術器械も必要としない.重症胸部外傷の 出血制御には非常に有効なアプローチ法である.適切な 心囊ドレナージと術前 CT にて診断し救命し得た症例を 経験したため文献的考察を加え報告する. 4.胃癌による穿孔が疑われたが,最終的に S 状結腸 癌にて手術を行った 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2外科) ○横川英之1・水口知子1 下嶋優紀夫2・宮澤美季2・◎山口健太郎2 碓井健文2・横溝 肇2・塩澤俊一2 島川 武2・勝部隆男2・成高義彦2   〔症例〕83 歳男性.陳旧性肺結核,肺線維症にて当院 呼吸器外科にてフォローアップされていた.上腹部痛に て救急外来受診.上腹部に free air を認め上部消化管穿 孔の診断で入院.上腹部の圧痛のみで筋性防御なく,絶 食および経鼻胃管による減圧で保存的に治療する方針と した.その後症状は改善したため,入院から 1 週間後に 上部消化管内視鏡検査を施行.胃角部小弯に深掘れの潰 瘍を認め,襞の集中,癒合を認め 3 型胃癌が疑われた. また,腫瘍マーカー値も CEA が 22.7ng/ml と高値であ り,胃癌による穿孔と診断し術前精査を進める方針とし た.しかし,胃の病変からは悪性所見が出ず Group1 の 所見であった.腹部 CT 所見を見直すと S 状結腸の壁が 肥厚していたため,下部消化管内視鏡検査を施行した結

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果,S 状結腸に 1 型病変があり,生検で Group5 が検出 された.胃病変は再度内視鏡検査を施行し,生検も行っ たが悪性所見なく胃潰瘍の診断であった.後日,S 状結 腸癌に対して S 状結腸切除予定としたが,肺機能が著明 に低下していたため,腰椎および硬膜外麻酔での手術方 針とし,手術を施行した(手術時間 1 時間 24 分).術後 は麻痺性イレウス,誤嚥性肺炎などを併発したが,徐々 に回復し無事退院となった.〔結語〕上部消化管穿孔とい う疾患に目を奪われ,S 状結腸癌の発見にやや時間がか かってしまった症例を経験した.広い視野であらゆる可 能性を考えた診断が必要であると改めて考えさせられた 症例であった. 5.副腎皮質癌と鑑別を要し,胃原発神経鞘腫に類似 した組織像を持つ後腹膜神経鞘腫の 1 例 (1卒後臨床研修センター,2乳腺・内分泌外科,3 理診断科) ○林 怡嫻1・羽二生賢人2 永井絵林2・◎尾身葉子2 堀内喜代美2・山本智子3・岡本高宏2   後腹膜腫瘍は比較的稀で,しばしば副腎腫瘍との鑑別 を要す.今回我々は,副腎皮質癌との鑑別を要し,胃に 発生する神経鞘腫に類似した組織像を呈した後腹膜神経 鞘腫を経験したので報告する.症例は 51 歳女性.人間 ドックの際に施行した腹部超音波検査で右副腎偶発腫を 指摘された.内分泌検査所見上は非機能性腫瘍であった. 造影 CT 検査で,右副腎に 5cm の造影効果を伴う石灰 化した円形腫瘤を認めた.MRI 検査では明らかな脂肪成 分は含まれなかった.PET-CT 検査で SUVmax8.59 と 高値であった.画像所見から副腎皮質癌または神経原性 腫瘍が疑われ,診断的治療目的に手術をする方針となっ た.周囲組織への明らかな浸潤は認めなかったため,腹 腔鏡下副腎摘出術を行った.術中所見では,副腎との連 続性はないようであったが,悪性の可能性を考慮し,副 腎も合併切除した.組織学的には,副腎外病変で,S-100 陽性の紡錘形細胞が錯綜して増殖し,核分像や Ki67 陽性 細胞が少数であることから,後腹膜原発神経鞘腫と診断 された.原発性後腹膜腫瘍の中で神経鞘腫は 6.9% と稀で ある.画像所見は副腎癌と似た特徴を有するため鑑別が 重要となる.また本症例の病理所見は被膜を持たず,辺 縁にリンパ組織を伴い,これは胃に発生する神経鞘腫の 特徴であった. 6.右大腿蜂窩織炎で受診し,詳細な問診から早期診 断に至った小児 1 型糖尿病の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2小児 科) 〇高橋侑利1・◎星加将吾2 安田祐希2・松岡尚史2・杉原茂孝2   症例は 7 歳女児.入院 1 か月前から伝染性膿痂疹を繰 り返していた.X-2 日から右大腿後面の疼痛が出現.X-1 日に症状増悪し当院救急外来を紹介受診した.右大腿後 面に約 5cm 大の紅斑と少量の排膿を認めた.CRP0.7, WBC9400 と軽度上昇のみにて抗菌薬を処方され帰宅し た.翌日再診時,全身状態は良好であったが,疼痛増悪 し蜂窩織炎の診断で入院となった.入院時の問診で,母 親より 1 か月程前から児の多飲多尿の出現と父親が 1 型 糖尿病であることを聴取した.血糖値 476mg/dL,ケト ン 1.6mmol/L であり,精査にて HbA1c 13.7%,アシ ドーシスはなし,GAD 抗体陽性,C ペプチド 0.4ng/mL. 1 型糖尿病と診断しインスリン療法を開始した.その後 CSII を導入した.蜂窩織炎に関しては切開排膿を行い, 培 養 か ら は Staphylococcus aureus が 検 出 さ れ,CEZ 100mg/kg/day を約 2 週間投与し軽快した.初発の小児 1 型糖尿病では,診断時に糖尿病性ケトアシドーシス (DKA)を発症している率が高い.発症から診断までの 時間が重症化に影響する.非典型的主訴で受診する場合 は診断が遅れる可能性があり,丁寧な問診が重要である. 多飲多尿は 90%以上,体重減少は 50%が小児 1 型糖尿 病で認められるため問診項目として診断の一助となり得 る.今回は詳細な問診から早期診断に至り,DKA 発症 前に治療を開始することができた. 7.右膝の腫脹を主訴に入院し,関節型若年性特発性 関節炎と診断した 1 歳女児例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2小児 科,3膠原病リウマチ痛風センター) 〇岩本隼輔1・◎東 範彦2 星加将吾2・根木瑠美子2 安田祐希2・宮前多佳子3・杉原茂孝2   〔緒言〕関節型若年性特発性関節炎(JIA)は,訴えの 乏しい年少児では四肢関節の疼痛や腫脹による歩行障害 や動作発達の退行が診断の契機となることがある.今回, 右膝の腫脹を主訴に関節型 JIA と診断した 1 歳児を経験 したため報告する.〔症例〕1 歳 5 か月の女児.1 歳時に 歩行開始し,成長発達は年齢相当であった.受診の 2 日 前に保育園で跛行を指摘され,近医受診し,右膝関節の 腫脹を認めたため当科を紹介受診した.現症:体温 36.5 度,胸腹部に異常認めず,右優位の膝関節腫脹・膝蓋跳 動・伸展制限を認めた,皮膚に発疹・紫斑なし.検査所 見:WBC 11,900/μl,CRP 1.56mg/dl, 血 沈 60 分 値 45mm,FDP17.4μg/ml,D-dimer10.8μg/ml,膝関節 X 線所見にて異常は認めなかった.入院後経過:安静に て経過観察とした.入院 4 日目になっても膝関節の腫脹 は持続しており,関節型 JIA を疑った.リウマトイド因 子・抗 CCP 抗体は陰性であったが,MMP-3 が 579.5ng/ ml と高値であった.入院 5 日目に施行した膝関節 MRI で STIR にて膝関節に高信号を認めた.入院 8 日目に膠 原病リウマチ痛風センターにて施行した関節エコーにて 5 関節以上に及ぶ滑膜炎所見を認め,リウマトイド陰性 多関節型 JIA と診断した.メトトレキサート,プレドニ

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ゾロンにて治療を開始した.〔考察・結語〕年少児で関節 腫脹を認める場合には JIA の鑑別が必須だと考えられ た.文献的考察を加えて報告する. 8.退形成性上衣腫の多発転移に急性リンパ性白血病 を合併した女児例 (1卒後臨床研修センター,2小児科,3脳神経外科) ○岡野まり子1・◎金子裕貴2 鶴田敏久2・千葉幸英2・木原祐希2 藍原康雄3・林 基弘3・川俣貴一3・永田 智2   〔はじめに〕長期に及ぶ脳腫瘍の治療中に急性リンパ性 白血病を併発した例に対して,Gamma KnifeⓇ治療にて 脳腫瘍をコントロールしつつ,白血病の治療を完遂した 小児例を経験したので報告する.〔症例〕10 歳女子.3 歳 時に小脳部退形成性上衣腫を発症した.全脳全脊椎照射 (CSI)30Gy を含めた放射線治療と,エトポシドを含む 化学療法が施行されたが,再発と治療を繰り返し,頻回 の腫瘍摘出術を繰り返していた.10 歳時に,急性リンパ 性白血病(初発時白血球数 63,000/μL,芽球 97%,B 前 駆細胞性,CRLF2+)を発症した.CSI および化学療法 後の発症で,初期ステロイド不応でもあり,マーカー的 にも非常に予後不良群と考えられた.幸い二度の大量シ タラビン療法により完全寛解が得られ,3 回の強化療法 の後,自己末梢血幹細胞移植術併用大量化学療法を施行 し白血病治療は終了した.脳腫瘍に対しては,麻酔科に よるデクスメデトミジンを用いた二度の非挿管による非 侵襲的呼吸管理下での GammaKnifeⓇ治療を行い,腫瘍 量のコントロールを行った.〔考案〕本症例は脳腫瘍と白 血病を合併した非常に高リスク例であり,当初,best supportingcare を選択すべきという意見もあったが,治 療継続のご家族の熱意は強かった.脳神経外科,小児科 の連携に加え麻酔科,小児外科,輸血・細胞プロセシン グ部,薬剤部の援助を得て白血病治療を完遂できた.こ のような高リスクの症例の治療では普段からの各部署と の連携が重要であることを認識した. 9.乳児期後期に進行を認めた出血後水頭症 2 例 (1卒後臨床研究センター,2小児科) 〇森島直子1・◎佐藤友哉2 竹下暁子2・平澤恭子2・永田 智2   極低出生体重児(VLBW)の救命率の改善の一方,軽 微な発達障害の合併の増加などの問題も提起され, VLBWの“後遺症なき生存”には多くの課題がある.そ の中でも脳室内出血(IVH)は発達予後を左右する合併 症であり,その後の水頭症(HC)に対する介入は予後の 改善に重要である.今回我々は NICU 退院後 6 か月以降 に HC の特徴的な症状は呈さずに脳室拡大の進行を認 め,外科手術を要した例を経験したので報告する.〔症例 1〕24 週 6 日 973g,日齢 2 に左側 IVH,日齢 14 に HC を発症し,日齢 14 から 68 までアセタゾラミドで治療さ れた.修正 1 歳半時,痙性四肢麻痺やてんかん出現を認 め,MRI で脳室の拡大の進行が確認され,直ちに外科手 術が施行された.術後発達の促進やてんかん発作の改善 が認められた.〔症例 2〕26 週 5 日 665g 双胎第 2 子,日 齢 3 に両側 IVH,日齢 16 に HC を発症し,日齢 19 から 123 までアセタゾラミドで治療された.乳児期早期より 発達の遅れを認め,修正 10 か月時の MRI で脳室の拡大 の進行などを認め,外科手術が必要と判断され,現在待 機中である.〔考察〕出血後 HC では,急性期以降に治療 を要することはまれである.上述の 2 例とも退院後明ら かな頭蓋内圧亢進症状はなかったが,経過観察の MRI で HC の悪化を認めた.術後症例 1 では,児の反応性の改 善や発達の促進を認めた.半年以上経過した後でも HC の進行を念頭にしたフォローアップが必要である.〔結 論〕出血後 HC を来した VLBW は乳児期後半以降も HC の進行がありうる. 10.ニボルマブ関連大腸炎に対してステロイドが有 効であった転移性腎細胞癌の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2泌尿 器科) ○木下翔太郎1・◎近藤恒徳2   〔緒言〕免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ が,2016 年 8 月より腎細胞癌に対して保険適用となっ た.これまでの抗悪性腫瘍薬とは異なる作用機序の薬剤 として注目を集めている一方,免疫関連の特有の有害事 象も報告されている.今回我々はステロイドが有効で あったニボルマブ関連大腸炎の症例を経験したので報告 する.〔症例〕71 歳女性,1989 年左腎癌にて根治的左腎 摘除術を施行した.2009 年 8 月に肺転移を認め腹腔鏡下 右中葉部分切除術施行,2012 年 2 月に右副腎転移が出現 し腹腔鏡下副腎部分切除術施行,2013 年 10 月に再度肺 転移を認め腹腔鏡下右上部部分切除術施行.2015 年 5 月 より肺転移の増大に対しソラフェニブ投与(17.5 か月) を行ったが,嘔気強くなり 2016 年 11 月に中止した.し かし,副腎・肺転移増悪のため 2017 年 3 月より 2 週間毎 にニボルマブの投与を開始した.7 クール終了後の CT 評価では標的病変が右副腎で 46%減少,右肺下葉で 33%減少と部分奏功であった.10 クール投与後 7 日目 より発熱と Grade3 の下痢がみられ入院となったが,絶 食補液による加療で一時軽快していた.退院翌日より 39.7℃の発熱,食後の嘔吐・下痢が出現し,収縮期血圧 の 60 台への低下を認めたため緊急入院となった.感染性 腸炎・薬剤性腸炎・虚血性腸炎・炎症性腸疾患が否定的 であり,CT 上で腸管壁の肥厚も認められることからニ ボルマブ関連大腸炎として矛盾のない所見であり,ニボ ルマブの投与を中止し,プレドニゾロン 2.5mg/kg/日の 投与を開始した.投与開始後から全身状態は改善傾向と なり,プレドニゾロンは漸減した.入院後第 22 病日で症 状改善し退院となり,現在外来にてフォロー中である.

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11.胃ランタン沈着症―6 例の臨床病理学的検討 (1卒後臨床研修センター,2病理診断科,3消化器 内視鏡科) ○小林茉弥1 ◎長嶋洋治2・◎中村真一3   〔はじめに〕慢性腎臓病で生じる高リン血症に対して, 炭酸ランタン服用患者の胃粘膜にランタン(以下,La) が沈着することが知られてきた.当院の上部消化管内視 鏡検査と胃生検で診断した胃 La 沈着症 6 例について臨 床病理学的検討を加え報告する.〔症例〕① 54 歳の女性. IgA 腎症で,血液透析(以下,HD)後,腎移植.② 46 歳の男性.糖尿病性腎症で,HD 継続中.③ 79 歳の男 性.膜性増殖性糸球体腎炎で,HD 継続中.④ 63 歳の女 性.糖尿病性腎症で,腹膜透析施行後,腎移植.⑤ 77 歳 の男性.慢性糸球体腎炎に対し,HD 継続中.⑥ 59 歳の 女性.糖尿病性腎症に対し,HD 継続中.La 服用期間 は,②③⑥ 7 年間,⑤ 5 年間,①④不明である.③④⑤ は経過中に胃癌あり.〔胃内視鏡所見〕全例で,乳白色微 細顆粒状病変が多発していた.一部の症例で胃粘膜全体 に白色の敷石状,ひび割れ様粘膜を認めた.〔病理学的所 見〕粘膜固有層内に針状結晶物を貪食した組織球が集簇 していた.同結晶は Kossa 染色陽性,PAS 反応,鉄染色 陰性であった.過去の文献の記載や画像を参照し,La 沈 着症と診断した.〔結語〕La 沈着症は服用患者増加,服 用長期化により今後の増加が見込まれる.乳白色の微細 顆粒や白斑粘膜など特徴的な内視鏡所見や,低分化腺癌 と紛らわしい病理組織像について知悉しておく必要があ ると考える. 12.周術期低血糖が遷延した 1 型糖尿病の症例 (1卒後臨床研修センター,2麻酔科,3糖尿病内科, 4乳腺・内分泌外科) ○林 怡嫻1 深田智子2・井出理沙3 神尾孝子4・◎尾㟢 眞2・◎野村 実2   〔症例〕37 歳女性.1 型糖尿病で強化インスリン療法 中.乳癌に対して,乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術が 行われた.術当日朝,基礎インスリンとして時効型イン スリン(トレシーバⓇ)20 単位を皮下注射した.手術室 入室直前(午後 1 時)の血糖値は 99 であった.手術開始 2 時間後の血糖値は 26 と低血糖でありブドウ糖を投与し た.30 分後は 145,その後は 80 台を維持し手術を終了し た.覚醒遅延はなかったが,抜管後にせん妄様の言動が 見られた.その際の血糖値は 98 であったが,本人より 「低血糖っぽい」と訴えがあったためさらにブドウ糖を投 与したところ意識清明となった.病棟帰室後~翌朝食事 再開まで低血糖が遷延し,頻回のブドウ糖投与が必要で あった.〔考察〕1 型糖尿病患者では,インスリンの基礎 分泌および追加分泌をインスリンの皮下注射で補う強化 インスリン療法が標準治療である.基礎インスリンは食 事の有無にかかわらず一定量の投与が必要とされてい る.本症例も術前日 21 時から絶食としたうえで基礎イン スリンを投与して手術に臨んだが,術中および術後の低 血糖が遷延した.術中低血糖が持続した場合,覚醒遅延 や不可逆的な脳障害を来すこともあり,低血糖の持続は 回避しなければならない.今後,患者により良い医療を 提供するために,絶飲食を伴う周術期における基礎イン スリンの指示について医療安全推進部,糖尿病内科,当 該外科系診療科,麻酔科間で協議が必要である. 13.顔面神経麻痺の治療後に多発脳神経障害を繰り 返し,診断に至った特発性肥厚性硬膜炎の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2 科,3耳鼻咽喉科) ○鈴木綾子1 興野 藍2・金子富美恵3 ◎西村芳子2・柴田興一2・佐倉 宏2   〔症例〕36 歳,男性.〔主訴〕左側頭部痛,複視,難 聴.〔既往歴〕13~22 歳,右真珠腫性中耳炎で鼓室形成 術を 3 回施行.31 歳,左外転神経麻痺を発症し,半年で 自然軽快.〔現病歴〕2017 年 6 月中旬から左側頭部痛,1 週後に左口角下垂がみられ,他院耳鼻科で顔面神経麻痺 と診断.プレドニゾロン(PSL)・バラシクロビルが開始 され,嚥下障害もみられたため当院耳鼻科に 7 月初旬入 院.左聴力低下と左側への舌偏位が認められたが,5 日 後には改善がみられた.9 月初旬から左上顎痛が持続. PSL 再投与で効果なく,対症療法で経過観察.10 月下旬 から左難聴が出現,11 月初旬に複視が出現し当院内科を 受診し入院した.〔現症〕神経学的所見では,左側頭部痛 と,左三叉神経第 2・3 枝領域の表在覚低下,左眼外転制 限,難聴を認めた.〔臨床経過〕頭部造影 MRI で,左側 頭葉周囲から小脳テント部の硬膜肥厚と増強効果があ り,髄液検査で単核球優位の軽度の細胞数増多がみられ た.各種ウイルス PCR・培養などに異常はなく特発性肥 厚性硬膜炎と診断した.ステロイドパルス療法 1 クール を施行し,症状は改善し,PSL 維持療法で退院した.〔考 察〕本例は,肥厚性硬膜炎に伴い顔面神経麻痺で発症し, 経過中に同側の IV,V,VIII,XII の多発脳神経障害を 呈したのが特徴であった.頭痛とともに顔面神経麻痺が みられた時は,肥厚性硬膜炎を鑑別する必要がある.

14.Multi-detector computed tomography(MDCT) を用いた稀少疾患である calcified amorphous tumor (CAT)の定量的評価 (1卒後臨床研修センター,2循環器内科,3画像診 断・核医学科,4病理学(第二)) ○福島 博1 ◎関口治樹2・鈴木 敦2・芹澤直紀2 新井光太郎2・芦原京美2・村崎かがり2 萩原誠久2・福島賢慈3・長尾充展3・宇都健太4   〔背景〕Calcifiedamorphoustumor(CAT)は,石灰 化を伴う極めて稀な非増殖性の腫瘤である.1997 年に初 めて報告され,心内腫瘤のうち変性した血性成分が慢性

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炎症性変化を背景として石灰化した非腫瘍性病変とされ た.しかし,この疾患の原因や発生率なども不明で,本 邦では 10 例程度の報告しかなく,CAT を定量的に分析 したレポートもない.我々は当科にて CAT が疑われた 患者に対し MDCT での解析を試み,また手術症例に関 しては病理組織の検討も行った.〔方法〕2015 年から 2017 年にかけて CAT と診断もしくは疑われた 5 名の患者の MDCT を用い,Agaston 法による石灰化の定量,径,平 均 CT 値,石灰化病変の体積を算出した.〔結果〕患者の 平均年齢は 68 歳(47~77 歳),3 名が男性,末期腎臓病 は 3 名であった.そして,全員が病変を左室に有し,そ のうち僧帽弁に病変を有するのが 4 名で中隔に 1 名,ま た平均の腫瘍径は直径 11mm~25mm であった.CT の 結果は,多くの症例で低信号を示し(80%),石灰化病 変の体積は 2,575±894mm3,平均 CT 値は 282±47HU, 石灰化スコア(agastonscore)は 3,512±1,204 であった. CAT に対して手術したのは 3 名で,いずれも脳梗塞発症 を手術の決定要因としており,術後の組織病理では,縮 退した線維肉腫および限局性炎症が混在した石灰化非晶 質の混合を示した.〔結論〕この検討は CAT を MDCT により定量的に評価した最初の報告で,他疾患と比較す ることで術前診断の助けとなる可能性がある.また CAT は再発の報告があり,病理組織で CAT と診断した症例 は,再発を考慮した経過観察が必要である.       

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