Carcinological Society 01 Jap an
一般公開シンポジウム「外来ザリガニ類のシンポジウム
一環境省指定の特定外来生物,ウチダザリガニを中心に一」
開催結果報告一得られた見解と今後の展望
Report of Symposium in Carcinological Society of Japan
,
view for the alien signal crayfish
P a c抑
stacus leniusculus,
and future direction of the symposium
川井唯史
lTadashi K a w ai
. は じ め に 20日年に,著者である川井が企画者となり一般 公開シンポジウムを開催した. 本稿では,最初にこ の結果を報告する. 報告は最初に著者が圏内のザリ ガニ類の概要とウチダザリカ" ニの移入から現在に至 るまでの経過,そして各講演から体系化されたこと を説明する. そして別途各講演者が著者として発表 内容の概要を紹介する. 次に本シンポジウムの発表 内容から著者が導いたウチダザリガニ対策に対して の考え方を示した. 最後には同じく著者による今後 の一般公開シンポジウムに対しての展望を述べた. . 一 般 公 開 シ ン ポ ジ ウ ム 開 催 結 果 報 告 20日年 10月
23日( 日) に,東京海洋大学白鷹館 の講義室にて,日本甲殻類学会の一般公開シンポジ ウム「外来ザリガニ類のシンポジウム 環境省指定 の特定外来生物,ウチダザリガニを中心に 」 を開 催した. シンポジウムの前半では,r
各地の事例」 として北海道,福島,千葉,長野,滋賀県からの報 告があり,続いて「国外の先進事例」 としてオース l 稚内水産試験場 干097--000 1 稚内市末広4 -5-7Wakkanai Fisheries lnstitute, 4-5-7 Suehiro, Wakkanai, Hokkaido 097--0001, Japan
E-m ail: kawaトtadashi@ hro.orj.p
トラリアの南端の離島であるタスマニア州で環境調 査会社を経営するトッド氏の講演「“A revie w of the giant Tasm anian freshwater lobster Astacopsis gouldi (Clark) and its conservation" by T. S. W alsh and B . B .
W alsh (Kanunnah Pty, Ltd)J があり ,最後に「対策の 事例」として,技術としての対策,食用としての対 策,教育としての対策があった. そして討議により 締めくくられた. 各地の事例報告と対策の事例に関 しては別個の概要報告があり,そちらを参考として いただきたい. またトッド氏の講演は世界最大のザ リガニ類の保全に関するものであり, Special lssues of C rustacean R esearchに詳細が報告される予定であ る. 興味のある会員の方はそちらも参考として読ん でいただきたい. 1. 各地の事例 各地の事例として北海道,福島県,千葉県,長野 県,滋賀県の現状が報告された. これに先立ち, シ ンポジウムに参加できなかった会員の皆様に向け て,日本国内のザリガニ類とウチダザリガニの移入 の経緯に関して極簡単に紹介しておきたい. 日本に は 在 来 種 で 希 少 種 の ニ ホ ン ザ リ ガ ニCambaroides japonicus,そして北米から輪入されたウチダザリガ ニP acifastacus leniusculus とアメ リカザリガニ Pro-cambarus clarkii が 分 布 し て い る (三宅, 1977) . ニ ホンザリガニは体長が 5 c m程と小さく,分布域は 北海道と東北の北部に限られている. その一方,ウ チダザリガニとアメリカザリガニは体長が 10 cm 以
上となり,その分布が記録されているのはウチダザ リガニが北海道,福島県,千葉県,長野県,滋賀県 となっている CNakata et al., 2010; Usioら, 2007). ウチダザリガニの元々の分布域は北米の太平洋側の 河川であり,本種は昭和初期頃に日本に数回輸入さ れ,それらの 一部は天然の水系に放流されている. そして摩周湖に放流されたものは和名がウチダザリ 力。ニとされ,滋賀県淡海池に放流されたものはタン カイザリガニと称されている. これらは放流後,限 られた生息地内で“細々と" 生活を続けていた(川 井ら, 2002). それが平成時代となり本種は急激に 分布域を拡大し, しかも国内の在来の生態系に著し い悪影響を与える可能性が高い生物として環境省と 農林水産省により特定外来生物に指定されて いる. ウチダザリガニに関しては,昭和初期頃から 40 年程度,生息地は摩周湖だけに限られていたが, 1970年以降は北海道東部で分布域の拡大が確かめ られている( 蛭田, 1986). さらに 1990 年以降,分 布域は拡大しており,北海道では南部を除いて広く 生息域が確認さ れ,本州では福島県や千葉県でもウ チダザリガニが分布を拡大し( 阿部ら, 2004; Naka-ta et a,.l 2010) C図1),最近では福井県でも新しく 生息地が確認されている . これとは対照的に 滋賀県 のタンカイザリガニでは分布域の拡大はな く,縮小 が見られている( 中川, 2005; 中川ら, 2011 ; Usio ら, 2007). 当初は淡海池の湖岸や流入河川で広く 見られていたタンカイザリガニは,最近では流入河 川だけでし か捕獲できなくなっており i淡海池以外 で分布域が拡大している様子も無い( 中川ら, 2011). 摩周湖と淡海池に加えて,昭和初期頃に放流され ていた第 三の 個 体 群 が 長 野 県 で 発 見 さ れ て い る COhtaka et al., 2005). 滋賀県と同様に長野県でも分 布域を拡大している様子が見られず,生息密度も低 く保たれている( 熊)I[ら, 2011). では,なぜ長野 県のウチダザリガニ個体群が昭和初期からの代を重 ねていたと分かるのか? なぜ北海道各地や福島県や 千葉県に分布を拡大したこの由来が北海道東部と分 かるのか? この根拠は,公文書や標本,そして近年 の生物学的情報としては,付着する生物の種組成, 遺伝子情報となっている. 長野県には 昭和初期頃にウチダザリガニを持ち込 んで飼育していた公文書が残されており,また昭和
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図1 . ウチダザリガ ニ・タンカイザリガニPacifastacus leniusculusの分布域の経年変化. 農林水産局 ( 1927) と本稿での各発表者の内容を参考に作成 した. 初期頃の標本も残されている( 川井ら, 2011 ). な おウチダザリガニの両眼の間にある突起の先端部 は,さらに鋭角になり,この部位は尖角と呼ばれている. 北海道 ・福島県 ・千葉県の個体は,尖角の長 さと幅の比率が同様で,滋賀県,そして長野県の個 体とは,比率が異なっている (Kawaiet al., 2006; 熊 川 ら,2011 ; Nakata et al., 2011 ). そしてザリガニ類 には種特異的にヒルミミズ類( 環形動物の仲間で, 大きさ数ミリでヒル類とミミズ類の中間的な形態を 呈している) が付着し ,こ の種組成は移入に対する マーカーになることが多い CGelder,1996; Kawai et al., 2006; Vogt, 2001 ) . 付着するヒルミミズ類の種組 成は地域個体群により差異があり ,北海道・ 福島 atωだけが付着し,滋賀県の個体にはヒルミミズ類 が見られず,これに対して長野県のウチダザリカ。ニ で は Xironogiton victriensis が 付 着 す る ( 熊}II ら, 2011). そのため北海道・福島県 ・千葉県の個体群, 滋賀県,そして長野県の由来は,それぞれ異なるグ ループと考えられる. このことはマイクロサテライ トD N A によって確認されている( A z w na et al., 20 11). 2. 対策の事例 ニホンザリガニは希少種として位置付けられてお り,その保全対策は急務である . しかし本種は生息 環境が特殊であり,これを定量的 ・連続的に把握す ることは重要である. ウチダザリガニは防除すべき 外来種であり,各地での取組はあるが根絶は難しい ことが判明しつつあり,対策を効果的に促進する考 えが求められている . そのーっとしてウチダザリガ ニを食べて, これにより駆除を促進する考えがあ る. また別の促進策として本種は基本的に人間によ る放流が分布拡大に大きく拍車を掛けていることが 考えられる . そこで人に対しての教育や知識の普及 を徹底することも重要と思われる. しかしこれまでニホンザリガニの調査例, ウチダ ザリガニを食用とすること , そしてザリガニ類に対 しての教育例は,ほとんど紹介されていなかった. 今回の講演で3 演者により ,それぞれの可能性が示 された. 圃 得 ら れ た 見 解 1. 問題の背景 現在のウチダザリガ、ニ生息地のうち ,公式な放流 記録が残されているのは北海道東部の摩周湖と滋賀 県の淡海池だけである( 川井ら, 2002). 他 のウチ ダザリガ ニ生息地には公式な放流記録は残されてい ないが,ザ リガニ類は一生を淡水域で過ごすので, これまでウチダザリガニが見られなかった水系で, 飛び地的に本種が出現した場合は,人間による放流 の可能性が高い. なぜ,そのような放流が起こっているのか? 原因 のーっとしては,子どもを中心とした市民に外来種 ウチダザリガ ニと 在来の希少種 ニホ ンザリガ ニの違 いが十分に認識されていなかったことが挙げられ る. 北海道で小学生を対象にアンケート調査を行 なった中田ら (2006) によれば,多くの市民はウチ ダザリガニが在来の生態系を破壊しかねない危険な 生物である点を正確に認識していないことが明らか にな った. このため,ウチダザリガニを採集した子 どもが,
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良かれと思い」別の水系に放流すること が,本種の分布拡大の一因になった可能性は高い. 2. 現在の防除の取組状況 ウチダザリガニが環境省により特定外来生物に指 定されてから5 年以上が経過した . こ の間, 北海道 を中心に様々な防除が取組まれ,幾っかは現在でも 継続している. 防除の主体は主に環境省と北海道で あり,籍わなやダイパ ーによる捕獲によって,相当 数の個体が駆除されてきた. その結果,ウチダザリ ガニは人聞が多少駆除しでも密度を低下させたり, 拡散を防止することが難しし根絶するには相当な 時間と経費を要することが明らかになった. 一方 で,市民がボランティアとして中心的,主体的に駆 除に取組む動きも見られるようになってきた. 3. 防除による成果 ウチダザリガニが特定外来生物に指定された直後 までは,本種の新しい生息地は北海道の各地で発見 された( 蛭田, 2010). 例えば従来は北海道東部だ けであった生息域は,北海道西部の洞爺湖,支努 湖,北海道北部の天塩川水系,枝幸町で分布が確認 された. しかし,その後,少なくとも北海道では, 既存の生息域から離散した全く新しい生息地の発見 はあまり見られなくなっている. これは環境省や北 海道庁や北海道における各地域の N P O 等の市民団体を始めとした各組織や個人の活動の普及面での成 果が出て,放流がこれまでより 抑制 されている成果 と評価したい. 普及の成果と いう のは,数字で は評価 しにくい. そ こで,圏外の例と比較する . 北米ではウチダザリ ガニが在来の生息地外に放流され本来の希少種のザ リカoニ類P acifastacus nigrescence を絶滅させたとの 報告例がある CRiegel,1959). 欧州でも ウチダザリ ガニが輸入され,地域の在来生態系に大きな被害を 与え ている CHofer,1904; Holdich, 1988; Alderman,
1993). 著者は2010年に欧州で最もウチダザリガ ニ 対 策 が 先 進 的 と さ れ て い る 英 国 の ,Professor D Rogers of Darby Universityを招聴し 対策の現状を講 演していただいた( 山田ら ,2011 ). その際の発表 の内容としては,英国ではウチダザリカザニの分布拡 大の抑制 に成功 していなかった. そして僅かに残さ れた在来種の生息地を何 とか守っ ている状況であっ た. なお,我が国ではニホンザリガニが絶滅してお らず,また少なくとも過去数年は新規の分布域拡大 は抑制できている . その意味では 日本の( 特に北海 道の) ウチダザリヵーニの普及活動は世界的に見て先 進的 と言えるかも 知れない. 4. 現行の防除体制の問題点 活動目的や根拠が不明確 残念ながら ウチ 夕、ザリ ガニの個体数が明 らか に減少 した, あるいは根絶 し たと言った駆除活動による“自に見えた成果" は見 当た らない. 実際, ボランティアのダイ パーとして 駆除活動に参加して多くの個体を駆除した市民 は, 大幅な密度低下とい った成果を期待 して翌年も参加 したところ,駆除数は前年を上回っていて 「虚脱感 に襲われた」 との感想、を述べている( 野谷,2011 ). 現時点の北海道では, ウチダザリガ ニの生息地数が 爆発的に増大 している. 傍観して いても状況が好転 しないことは明白なので,確認されている生息地で ウチダザリガニをボランティアと共に駆除していく のは,決して無意味ではないだろう . しかし駆除活 動の主体となる 組織が,一般市民をボ ランティアで 活動に巻き込んで,応分な満足感を与えないのは問 題点になるだろう. リスクアセスの研究不足 ウチダザリガ ニの在来 生態系に対するリスクアセスメントは十分と言えな
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いと思う これまでの研究で,在来種で希少種であ るニホンザリカゃニを活発に捕食することの室内実験 があり CNakata& Goshima, 2006),また感染症の媒 介者である危険性を有する こと CAlderman & Pol-glase, 1988; Unestam, 1973),在来の水草や巻貝を食 べてし ま うことが上げられている (春採湖調査会, 2010;五十嵐,2011 ). しかし野外においてウチダザ リガ ニが生態系へ悪影響を及ぼしている評価が報文 として公表されている例は,あまり見られない. 北 海道の湖では過去ニホンザリヵー ニの生息がみられた が,現在,多くがウチダザ リガニにより占拠されて いる CU sioら,2007) . そのため前者は後者によ っ て滅ほ、さ れた ような 印象を受けるが,そのような事 実は確認されていない. ニ ホンザリガ ニが何らかの 理由で消えた後,何十年も経過してから湖岸にウチ ダザリガ ニが目立ちはじめている例が多い. また感 染 症 (水カビ 病〉に関しでも,その根拠としては今 から40年近く前に国外で行なわれたl実験例だけで ある CUnestam,1973). そして,その後の研究によ り水カビ病には数多くの系統があり CHuang et a., l 1994),日 本のウチダ ザリカ、、ニは水カ ビ病を保菌し ているのか ? 保菌したと して, これは野外の ニホ ンザリガニにと って致死性の高い系統なのか ? と 言っ た重要な部分が不明となっている . また著者が 得た情報によると ,北海道東部の釧路市ではウチダ ザリカ前 ニの増大に反比例して水草が消えて いるそう で,実験的に水草を簡で覆えば,本種の食害か ら逃 れられるためか,舘内に限り水草は生育すると 言わ れている. しか し話は単純ではなく,ウチダザリガ ニが侵入して相当な年数が経過している湖沼でも水 草が見られる場所もある . 倫理上の問題 駆除活動を行なう上で避けては通 れない倫理上の問題がある . 捕獲( 駆除) したウチ ダザリ ガニの多くは殺処分することになる . 生命の ある動物を「殺すJ
というのは倫理や道徳上,軽々 しく行な ってはいけない, というのは日本人の一般 的な感覚と思われる . そして,外来種を駆除して殺 処分するには相当に慎重 に検討された妥当な理由が 必要であろ う. 特に駆除に,子どもを始めとした一 般市民が参加する場合は道徳上の問題が一層重要に なるだろう . 私たち日本人は小学校の道徳教育で 「生物を 簡単に殺してはいけない」 と教育されてきたはずだ. そして教室では,生物を飼育して情操教 育されてきたと思われる. 駆除活動を普及推進する ことは教育上の自己矛盾を抱え込んでいる. 防除の促進策は? 駆除した個体を食べてしま う,との発想は,ウチダザリガニの駆除活動による 死が必ずしも無駄ではなく,
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食j と言った「人聞 の必要性」の意味を与えることになるので駆除作業 の辛さが緩和される . さらにウチダザリガニが地域 の特産品にでもなれば駆除は大いに加速することが 見込まれる. しかし,仮に商品になったとすると, 今度は営利目 的で新しい生息地を増やすための放流 を行なう人聞が出現することの対策を新しく講じな ければならない. そのため経済上の付加価値を付け るのは,駆除を劇的に促進する期待も持てるが,新 しい放流を間接的に奨励する危険性も持っている. そして,この危険性を我々は責任持って防ぐことは 出来ないだろう. 本来,ウチダザリガニの駆除は在来の生態系を保 全するために行なわれるものである . しかし食を強 調しすぎると,食さないものは無駄な殺生となるた め,食用にしない分の駆除活動はダメ,といった本 来の目的を見失った方向に進むことも危倶される . 5. 今後の方向性 活動 目的や根拠が不明確 ウチダザリガニの駆除 推進に際しては,活動の目的を一層明確にすること が望まれる . そして目的は, 1) 生息しているウチ ダザリガ ニの密度を低下させるのか? 2) 市民に外 来種について普及するのか? の現状をモニタリン グするのか? に分けられると恩われる. 1) ならば, 対象とする生息するウチダザリガニの個体数の推定 を行い,例えば推定された個体数の80%を駆除し て密度低下の有無を検証する等の目標値を設定して 駆除を実施し,目標の達成状況を検証し,今後の方 向性を修正していく流れが必要になるだろう. 2) ならば,採捕した数というのは重要ではなく,むし ろ何人の市民が参加したか,あるいは参加者への普 及の状況を把握するためのアンケート調査などは大 切になるだろう. 3) ならば, モニタリングのデー タを誰が責任もって保管し解析し ,どのように市民 に公表するか等を明確にして進めるのが望ましい. 特に 1) と3) の活動で参加者がボランティアの方 を含む場合には,I
自己の活動を自然の保全に対し て役立てたい」との期待を抱いて参加されるものと 思われるので,どのような成果が上がったかを明確 に報告することが必要になるだろう. リスクアセスの研究不足 リスクアセスメントに ついては,一層の研究活動に期待したい. また, リ スクアセスメン卜の研究の結果,やはりウチダザリ ガニは防除すべき,危険な生物であることが改め て,より明確な根拠をもって確認できたならば,本 種を効率的に駆除する技術の開発についても,より 本格的に取組まなければならない. 倫理上の問題 私としては,これは今後に生かす べき問題として捉えたい. 具体例を示すと,仮に, 現在飼育しているウチダザリガニを飼えないが殺せ ないので,野外に放流したとする. これは,在来の 生物のより多くの生命を奪う極めて問題の多い行為 であることの説明を行い,外来種の放流行為を抑止 するための道徳上 ・生命倫理上の説得力のある根拠 としたい. 特にウチダザリガニが在来の生態系に与 えている害は,人間の目につき難い場所で発生して いるので,一般の方は分かり難いと思われるので, 十分な説明が必要になるだろう . 防除の促進策は? これに関しては( 活動目的や 根拠が不明確) と閉じように,目的を一層明確化す る必要があるだろう. そもそも保全の視点、に立て ば,駆除行為こそが目的であり,食べることや経済 活性化は副次的な目的となる . 駆除活動の主催者 は,食等を絡めて駆除活動を実施する場合は,当初 の目的と照合してぶれることが無いように心がけな ければいけない. 私がお勧めしたい駆除促進策は別にある. それ は,科学者による技術革新,行政による社会の意識 改革にある. ウチダザリガニの駆除の主体は箆によ る採捕となっている. 科学者が,より効率的に採集 できる漁具を開発すれば,ウチダザリガニの問題は 一気に解決できるかもしれない. また科学者がリス クアセスメン卜をさらに行いウチダザリガニの危険 性が一層正確に分かり,これを行政が認識して一般 市民に普及すれば社会の駆除活動への理解が深ま り,さらなる対策予算の配分や駆除ボランティアへ の参画が期待できる.♂、
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図2. 著者の提案するウチタザリガニ対策の役割分担 と各位の立場. 6. やるべきことと体制 重要な 「やるべきこと 」 は,以下の点と考えてい る. 科学者: さらなるリスクアセスメントを行い,一層 効率的な駆除技術を開発する. 行 政 : 科学者が得た リスクアセスメントの結果や 開発した新しい駆除技術を普及して,外来 種に対しての社会の意識を高める方向に導 く. 市 民 : より正しく新しい知識や技術を取り入れ て,外来種に対しての意識を一層高める. 私としては,各位がそれぞれの立場や役割を良く 理解 ・尊重して,綿密に連携する社会システムの構 築こそが, ウチダザリガニを含む外来種対策が 円滑 に進むためのポイントではないかと考えている( 図 2). 本シンポジウムの成果のーっとしては,このよ うな方向性が示せたことがある . . 今後の展望 以降は,国際シンポジウムに参加しての見聞録を 紹介し,これも踏 まえて今回著者が企画した一般公 開シンポジウムの反省点を述べ,今後を展望した い. これにより今後,甲殻類学会でシンポジウム等 を運営される方が企画を進める上で参考としていた だくことを目的としている . 私は 201 3 年にサンフランシスコで開催されるSo-80
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ciety of Integrative and C o m parative Biology ( 北米に 本部を置く生物学の学会であり,以下頭文字をとっ て SIC B と略す) ,そして 2014 年にフランクフルト で聞かれる International C rustacean C ongress でシン ポジウムを企画している. ところが困ったことに , これまで国際学会への参加経験はあったものの,自 ら国際的なシンポジウムを海外で企画したことは無 かった. また, 日本人の甲殻類研究者が中心となっ て海外でシンポジウムを企画 ・運営するのは,あま り聞いたことが無い. すなわち参考となる例は少な い. そこで開催される前年に,シンポジウムがどの ように開催されているのか視察してみることとし た. SICB は毎年冬季に一度会議を開催しており 201 2年は大西洋側に位置するサウスカ ロライナ州 のチヤールストンで開催された. そして 20 12 年は フジツボの生物学に関してのシンポジウムが開催さ れていた. 遠く日本から渡米した私は大変な意気込 みで参加した. しかし,個人的な感想としては,私 の期待が大きすぎたのか,全面的に満足できるもの ではなかった. 聴取者の人数は 10 人未満であり, ていた感は否めなかった. 念のため,知り合いのア メリカ人で毎年参加している方に確認したところ, 「毎年こんな感じだよ」とのことであった. これで は,盛り上がりに欠ける , と言われるかもしれな し 、 ここでシンポジウムの意味を改めて考えて見る. SIC Bのフジツボのシンポジウムに参加 ・発表して いたある北欧からの参加者は,発表が終了して各参 加者と多少の会話をした後,すぐにワシントン
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にあるスミソニアン自然史博物館へ行ってしまっ た. その理由を聞いたところ,以下の回答があっ た.i
せっかく北欧からアメリカに来たのだから, この機会を有効に利用して米国の博物館に行き,見 たい標本をじっくり観察するんだJ . シンポジウム での発表に続いて標本観察とは,実に前向きな行動 であり,国際舞台で活躍する研究者の有るべき姿か もしれない. また,個人的な思いであるが,最近で はシンポジウムと銘打つてはいるが通常の学会発表 と大きな差異が見られないものが多いように感じら れてならない. ある国語辞典によるシンポジウムの 意味は「公開討論会」 となっている. 私自身のシンポジウムへの思いとして,この「公開討論会」の側 面をもっと強化して行けば,多くの参加や活発な討 議が期待されて大い に盛上る のが期待されて,よ り 良いように思える. さらには参加者と講演者, また 講演者聞の連携を一層深める場面も拡充していけば 更に充実したものになるだろう. そのような視点で,今回の「外来ザリガニ類のシ ンポジ ウム 」を振り返っ て反省してみたい. 国内外 の御専門の方が一同に介することができた. また一 般公開シンポジウムであったため,市民の参加が多 かった. これは今後,一般市民と専門家が連携する 良い契機となり,成果のーっと思われる. そして発 表内容 に関しても,市民 + 環境 コンサルタン ト会社 の技術者+ 専門的知識を有する科学者が揃い, バラ ンスのとれた多様なものであったと思われる. また 発表の内容が本誌C A N C E Rに掲載できたのは記録 が残り良かった. しかし課題も 残っ た. 当日はせっ かく多くの方が会場に参加していただき ,質疑応答 に参加していただきながら,これを記録して公表で きなかったのは残念であり,どんな参加者が何人参 加して, シンポジウ ムに対し ての感想などもアン ケートで調査しておけ ば, 今後の参考になったの に,これは企画者の多忙とミスで対応できなかっ た. 今後の糧としたい. そして今後のシンポジウム 企画者の方への参考と取れなれば幸甚である.
圃 証 書
一般公開シンポジウム開催への御理解と助力を頂 きました東京海洋大学の浜崎活幸先生に深く感謝の 意を表します. そして本稿の「得られた見解」に対 して貴重な御意見を頂いた兵庫県立大学の阿部 豪 氏に深謝します. 多くの意見を交換して議論し阿部 博士の数々の見解を取り込みました. 岡山大学の 中 田和義氏には主に 「一般公開シンポジ ウム開催結果 報告J
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今後の展望」の部分に対し て貴重な御意見 を頂きました. 各先生に心より感謝申し上げま す.園 文 献
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シンポ結果報告包見解と今後@ 属議
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