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⑶ 災害の概要 1 人的被害平成 25 年 9 月 1 日現在 死者数 18,703 人 行方不明者 2,674 人である なお 平成 23 年 3 月末時点では10,977 人 行方不明者 12,995 人 ( いずれも消防庁被害報 ) となっていることも併せみると 今回の人的被害の主要因が津波に

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はじめに

本稿の執筆時点で、東日本大震災の発生から1000日が経過したところであるが、被災地域の復興、 福島第一原発への対応及び被災者の帰還については、いまだ大きな課題が残っており、一刻も早い 解決が望まれる。 未曾有の東日本大震災において、緊急消防援助隊が消防庁長官の指示により、延べ31,166隊、延 べ約11万人が出動し、消火、救急、救助等の活動を展開した。 東日本大震災については、様々な白書や報告書等で分析が行われているところであり、本稿にお いては、改めて、緊急消防援助隊の活動という視点で、東日本大震災の災害概要、出動状況、活動 状況、そして今後の課題等について述べていくこととする。 なお、本稿の意見にわたる部分は個人のものであること。また、主に消防庁が作成した東日本大 震災記録集(平成25年 3 月)に依拠しているが、紙数の都合上、データの出典は割愛したことをご 了解いただきたい。     

東日本大震災の被害の概要

地震被害の詳細な分析については、他に譲ることとし、本稿では緊急消防援助隊の活動にとって 重要な関係を有するものと考える被害について述べる。 ⑴ 地震の概要 平成23年 3 月11日14時46分、三陸沖でマグニチュード9.0の地震が発生し、宮城県栗原市で震 度 7 を観測したほか、宮城県、福島県、茨城県及び栃木県の 4 県37市町村で震度 6 強を観測した。 なお、本震の前日及び前々日にそれぞれマグニチュード 7 クラスの地震が発生するとともに、 緊急消防援助隊の出動期間中( 6 月 6 日まで)、マグニチュード7.0以上が 4 回、6.0以上が20回 の余震が発生した。 ⑵ 津波の概要 今回の地震の特徴として、海溝型であり、我が国観測史上最大のマグニチュード9.0という大規 模であり、発生した津波は最大規模のものとなった。津波による浸水区域は、全国で528㎡にも わたり、特に宮城県では県域の約 4 %、石巻市では約10%が浸水被害を受けた。

東日本大震災における緊急消防援助隊の活動について

消防庁 広域応援室長

杉 田 憲 英

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⑶ 災害の概要  ① 人的被害 平成25年 9 月 1 日現在、死者数18,703人、行方不明者2,674人である。なお、平成23年 3 月末時点では10,977人、行方不明者12,995人(いずれも消防庁被害報)となっていること も併せみると、今回の人的被害の主要因が津波によることの影響で、死者数、行方不明者 とも多数に上った。  ② 物的被害 ア 建物被害   全国で全壊した建物は約13万棟であり、津波による全壊建物は約12万棟であった。 イ 火災被害   地震及び津波による火災は、全国で333件発生し、延焼面積は616千㎡であり、10千㎡ 以上延焼したのが岩手県 4 地区、宮城県 6 地区、福島県 1 地区であった。なお、阪神・ 淡路大震災の延焼面積は457千㎡であった。 ウ 危険物施設・コンビナート被害   危険物施設のうち3,341施設が被害を受け、地震によるものが1,409施設、津波による ものが1,821施設であった。また、石油コンビナート等特別防災区域のうち、岩手県久慈 市、宮城県多賀城市・七ヶ浜町・仙台市、茨城県神栖市・鹿島市、千葉県市原市では火 災が発生した。 エ ライフライン被害   電気については、 3 月11日20時時点で青森県、岩手県、秋田県の全域、宮城県、山形 県のほぼ全域、福島県の一部で合計約450万戸が停電した。   上水道については、 3 月12日21時時点で17道県で少なくとも170万戸に断水が生じて いた。   通信では、固定通信、移動通信とも、通信回線や基地局が被災するとともに、固定電 話で80〜90%、移動通信で70〜95%の発信規制が行われ、一般通信が輻輳、途絶した。   また、製油所、物流網等の被災により、発災直後から石油供給が大幅に滞り、 4 月初 旬まで燃料不足など混乱が続いた。 オ インフラ被害   道路については、高速道路15区間、直轄国道69区間、都道府県等管理国道109区間、 県道等540区間であった。   空港については、仙台空港全体が冠水し、長期にわたり使用不能となり、山形空港は 発災当日のみではあったが停電によりターミナルビルが運用できなかった。 エ 市町村・消防   岩手県では大槌町、釜石市、陸前高田市の 3 市町で、宮城県では南三陸町、女川町、 亘理町の 3 町で、本庁舎が使用不能となった。   また、消防職員の死者・行方不明者は27名、消防団員の死者・行方不明者は254人であっ た。消防本部及び消防署は全壊 6 棟、半壊 8 棟、分署及び出張所は全壊11棟、半壊11棟 であった。使用不能となった消防用車両は89台であった。    

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緊急消防援助隊について

⑴ 創設の経緯とこれまでの出動実績 緊急消防援助隊は、阪神・淡路大震災を契機として、全国的な消防応援体制を強化するため、 平成 7 年 6 月に創設された。その後、平成15年に消防組織法を改正し、法制化するとともに、 大規模・特殊災害発生時の消防庁長官の指示権が創設された。発足以降、これまで25回出動し ており、地震災害の出動が14回、風水害・土砂災害の出動が 7 回、特殊災害・事故の出動が 4 回となっている。(表1) 表 1  緊急消防援助隊のこれまでの出動実績(平成15年度以降) 災害名 死者数 行方不 明者数 日付 日数 出動延べ 隊数 隊種別延べ隊数 平成16年 7 月新潟・ 福島豪雨 16名 ― 平成16年 7.13〜7.15 3 日間 335隊 指揮34、消火 8 、救助152、救 急20、後方支援110、航空11 平成16年 7 月福井豪雨 4 名 1 名 平成16年 7.18〜7.19 2 日間 318隊 指揮32、消火38、救助138、後 方支援54、航空18 平成16年台風第23号  兵庫県豊岡市水害 95名 3 名 平成16年 10.21〜22 2 日間 139隊 指揮 9 、救助88、救急 6 、後方 支援32、航空 4 平成16年(2004年) 新潟県中越地震 68名 ― 平成16年 10.23〜11.1 10日間 1,075隊 指揮59、消火178、救助213、救 急201、後方支援348、航空52、 その他24 福岡県西方沖を震源 とする地震 1 名 ― 平成17年 3.2 1 日間 3 隊 指揮 1 、航空 2 平成17年JR西日本福 知山線列車事故 107名 ― 平成17年 4.25〜4.28 4 日間 74隊 指揮 8 、消火 3 、救助19、救急 20、後方支援20、航空 4 奈良県吉野郡上北山 村土砂崩れによる車 両埋没事故 3 名 ― 平成19年 1.3 1 日間 7 隊 指揮 1 、救助 1 、航空 5 平成19年(2007年) 能登半島地震 1 名 ― 平成19年 3.25〜3.26 2 日間 174隊 指揮16、消火50、救助26、救急 42、後方支援26、航空10、その 他 4 三重県中部を震源とす る地震 ― ― 平成19年 4.15 1 日間 3 隊 指揮 1 、航空 2 平成19年(2007年) 新潟県中越沖地震 15名 ― 平成19年 7.16〜7.23 8 日間 59隊 指揮10、後方支援14、航空35 平成20年(2008年) 岩手・宮城内陸地震 17名 6 名 平成20年 6.14〜6.19 6 日間 854隊 指揮87、消火175、救助134、救 急133、後方支援285、航空40 岩手県沿岸北部を震 源とする地震 1 名 ― 平成20年 7.24 1 日間 99隊 指揮10、消火29、救助11、救急 10、後方支援33、航空 5 、その 他 1 駿河湾を震源とする地震 1 名 ― 平成21年 8.11 1 日間 6 隊 指揮 3 、航空 6 東日本大震災 18,493 名 2,683 名 平成23年 3.11〜6.6 88日間 31,166隊 指揮2057、消火6494、救助2812、 救急6185、後方支援11949、航 空1164、その他505 平成25年(2013年) 台風第26号による伊 豆大島土砂災害 35名 4 名 平成25年 10.16〜10.31 16日間 479隊 指揮32、救助185、救急32、後 方支援62、航空139、その他29

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⑵ 登録部隊数等 平成25年 4 月現在、全国762消防本部等から4,594隊が登録されている。 ⑶ 部隊編成 緊急消防援助隊の部隊編成は、図 1 のとおりである。 ⑷ 出動に関する財政措置 消防の応援に要する経費については、一般的に応援を受けた側が負担することが原則である。 (消防組織法第 8 条、災害対策基本法第92条)消防の応援については、消防組織法第39条第 2 項において定める相互応援協定に地域ごとに定められ、受援側負担のほか、相互協力の趣旨 から応援側と受援側が折半する例や応援側が経費負担するという例もある。 緊急消防援助隊の出動のうち、消防庁長官の指示による出動については、消防組織法第49条 第 1 項において上記原則とは異なる規定がされており、国の指示を受けて出動した緊急消防援 助隊の活動により増加し、又は新たに必要となる経費については国が負担することとされている。 これはあらかじめ国の負担について明確に規定することにより、指示を受ける側の地方公共団体 の財政面での懸念を払拭し、大規模・特殊災害時の迅速・円滑な出動を担保しようとするもの である。 また、消防組織法第44条第 1 項から第 4 項までに定める消防庁長官の求めによる緊急消防援 助隊の出動に係る経費については、全国市町村振興協会において被災市町村の経費相当分を応 援市町村に対して交付する制度が確立されている。緊急消防援助隊の創設前から全国的な消防 の広域応援活動においては応援市町村に多額の財政負担を強いることが少なくなかったことか ら、本制度の発足によって被災市町村が費用負担に不安を抱くことなく、応援要請を迅速に行 うことが可能とし、消防の広域応援を迅速かつ円滑に行うために、昭和62年度に創設されたも のである。     図 1

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東日本大震災における緊急消防援助隊の出動状況

⑴ 出動指示 発災と同時に消防庁長官を本部長とする消防庁災害対策本部を設置し、情報収集を行い、被 害の甚大性を踏まえ、消防庁長官から、法制化後初めての消防組織法第44条第 5 項に基づく緊 急消防援助隊の出動指示を行った。その後も情報収集を行い、甚大な被災状況が判明するに従い、 合計 6 次にわたる出動指示を行い、部隊の追加投入を決定していった。(表2) 表 2  東日本大震災における緊急消防援助隊の出動指示   対応 月日 出動指示 派遣 1 次出動指示 3 月11日 15時40分 東京、新潟、群馬、埼玉、神奈川、富山、山梨、長野、静岡、 岐阜、愛知、滋賀、三重、兵庫、京都、山形、奈良、大阪、 秋田、北海道【計 20都道府県】 2 次出動指示 3 月11日 23時15分 石川、福井【計  2 県】 3 次出動指示 3 月12日 6 時 8 分 和歌山、鳥取、島根、広島、岡山、栃木【計  6 県】 4 次出動指示 3 月13日 22時00分 青森、千葉【計  2 県】 5 次出動指示 3 月14日 11時25分 福岡、香川、佐賀、大分、愛媛、山口、高知、宮崎、徳島、 長崎、熊本、鹿児島、沖縄【計 13県】 6 次出動指示 3 月25日 8 時30分 茨城【計  1 県】 ⑵ 出動総数 緊急消防援助隊は、 3 月11日から 6 月 6 日までの88日間にわたり、出動を行い、表 2 及び図 2 のとおりの出動を行った。 図 2 表 3  緊急消防援助隊の出動数 項目 隊数 登録隊数に対する率 人員数 緊急消防援助隊登録隊数 (人員数) (東日本大震災発災時点)4,278隊 ──── 51,765人 延べ隊数 31,166隊 729% 109,919人 総隊数 8,854隊 207% 30,684人

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隊の種別でみると、表 4 のとおりである。特に、長期にわたる活動になったことから、指揮 支援部隊、都道府県指揮隊及び後方支援隊の出動率が高くなっている。(緊急消防援助隊の出 動は、例えばA市の消火隊 3 日、B市消火隊 3 日、C市消火隊 3 日と出動した場合、延べ 9 隊出動、 総数で 3 隊出動とカウントしている。) 表 4  東日本大震災における緊援隊出動総数(隊別) 隊種別 登録数 (H23.3.11時点) 出動総数 出動率(%) 隊 人 隊 人 隊 【A】 【B】 【B/A】 指揮支援部隊 38隊 504人 159隊 653人 418% 都道府県指揮隊 110隊 1,368人 414隊 1,733人 376% 消火部隊 1,571隊 23,109人 1,853隊 8,596人 118% 救助部隊 388隊 5,772人 854隊 4,196人 220% 救急部隊 995隊 9,015人 1,734隊 5,408人 174% 後方支援部隊 573隊 4,626人 3,441隊 8,086人 601% 特殊災害部隊 168隊 1,866人 51隊 169人 30% 特殊装備部隊 345隊 3,786人 103隊 322人 30% 航空部隊 71隊 1,350人 242隊 1,475人 341% 水上部隊 19隊 354人 3隊 46人 16% 合計 4,278隊 51,750人 8,854隊 30,684人 207%    

東日本大震災における緊急消防援助隊の活動状況

⑴ 概括 東日本大震災における緊急消防援助隊の活動は、平成 7 年発足以来最大規模であり、消防庁の オペレーションにおいても以下のような点で過去の災害と大きく異なる出動となった。 ① 平成15年の法制化以降初めてとなる消防庁長官の出動指示。(被災 3 県を除く44都道府県が出動) ② 震度 6 弱以上が 8 都県にのぼり、広範囲で津波警報(大津波)が発出された中での出動。 ③ 最大震度 6 弱以上の余震の発生、 3 月12日未明に発生した長野県北部地震(震度 6 強)や福島 第一原発事故への対応(救急、救助、水注入等)に対して、相次ぐ部隊転戦を実施。 ④ 88日間に渡る史上最長となる活動期間。 ⑤ 主な被災 3 県(岩手県、宮城県、福島県)では、厳しい環境下において、余震や津波の警戒を 続けながら、地元消防等との連携のもと消防活動に従事し、5,064人を救助。

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⑵ 県別の活動 岩手県、宮城県、福島県での活動状況は、表 5 のとおりである。 ⑶ 主な活動 緊急消防援助隊は、長期間にわたり様々な活動を展開したものであり、その全体像を詳述す ることは困難である。しかしながら、今回の東日本大震災は、地震、津波、火災、危険物施設・ 石油コンビナート災害、原子力発電所事故と、一つの災害の中で、複合的に多様な災害が発生 した点で未曾有の災害であるといえる。 今般の活動の中から、東日本大震災における緊急消防援助隊の活動をご理解頂く上で重要な もの、今後の緊急消防援助隊のあり方を考える上で重要であると考えられるものについて、いく つかご紹介する。 ① 大規模市街地火災への対応(図 3 ) 宮城県気仙沼市では、震災当日の15時58分、気仙沼市鹿折(ししおり)方面の火災発生が確認 され、地元消防署ポンプ隊が対応をした。すでに鹿折街区全体に火災が拡大しており、明らか に消防力は劣勢であり、鹿折市街地に防火線帯を設けるなど延焼防止を主眼とした活動となった。 気仙沼市消防団にも出動命令が下り、鹿折小学校のプールからの送水作業などにあたったほ 図3 表 5  東日本大震災における緊急消防援助隊の活動状況(主要被災3県) 県 活動市町村 延べ隊数 (延べ隊員数) 岩手県 6市3町2村 (陸前高田市、大船渡市、釜石市、宮古市、花巻市、矢巾市、山田町、 住田町、大槌町、野田村、普代村) 6,135隊 (21,898人) 宮城県 9市4町 (仙台市、石巻市、東松島市、名取市、気仙沼市、塩竃市、七ヶ浜市、 多賀城市、岩沼市、女川町、南三陸町、山元町、亘理町) 16,165隊 (60,195人) 福島県 8市3町2村 (福島市、相馬市、南相馬市、二本松市、本宮市、郡山市、田村市、 いわき市、小野町、三春町、新地町、飯舘村、大玉村) 8,657隊 (27,021人)

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か、夜が明けてからは山水を貯めておく貯水槽から遠距離送水するなど、地元消防本部の心強 い後方支援の役割を担った。 発災翌日の朝、緊急消防援助隊である東京都隊及び新潟県隊が到着し、陸上では鹿折川から 遠距離大量送水装備(スーパーポンパー)とホースを10本以上利用して放水を行い、空中から は消防防災ヘリコプターを用いて13回にわたって消火散水するなど延焼阻止にあたった結果、 その日の昼過ぎには火災の鎮圧に成功した。その後13日間にわたって多量のがれきに阻まれる中 で、地元の消防本部を中心に消火活動と再燃の警戒が続けられ、 3 月23日 7 時48分に鎮火した。 ② 市街地における夜間の空中消火 宮城県仙台市では、地震発生後、津波浸水によって市立中野小学校の校舎屋上で約600人の 避難者が孤立し、小学校の西側で火災が発生したことから、地元消防署が現場に向かったが、 がれきや浸水により接近できなかった。(写真 1 ) 学校には、給食用のガスボンベがあり、引火・爆発の危険が切迫していたことから、仙台市 消防航空隊のヘリコプターが夜間の空中消火を行うこととし、夜間飛行は、送電線や高所建物 への接触等の 2 次災害の危険もあったが、高度を工夫しながら空中消火を繰返したところ火勢 は弱まった。当日から翌日にかけて、消防、自衛隊のヘリコプターが連携し、避難者を救助した。 ③ 津波浸水地域における陸路及びヘリコプターによる大規模救助 東日本大震災の特徴として、広大な津波浸水区域が発生し、学校等に避難者が大量に孤立し たものの、陸路から車両による救助が阻まれた。 緊急消防援助隊では、胴長、ドライスーツ、ボートなどの資機材を活用し、水没地域に陸上 からアプローチし、救助活動を展開した。 また、このような事案に対応するため、緊急消防援助隊の航空隊が出動し、受援県も含むベー スで、岩手県では最大18機、宮城県では最大22機、福島県では最大11機のヘリコプターが活動 した。特に、津波浸水地域の孤立した避難者を、ホイストやピックアップによる救助活動を発 災直後から 3 日間程度、大規模に展開して、多くの避難者の救助に当たった。 なお、被災地では、消防機関以外にも自衛隊、警察、海上保安庁等の機関のヘリも救助活動 を展開した。宮城県及び岩手県においては、災害対策本部に、航空運用調整班を設置し、ここ で各機関の運航調整を行うことで、このような大規模な活動を展開することができた。(図 4 )  写真 1  中野小学校屋上の状況 図4

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④ 実動部隊の連携による救助活動 東日本大震災では、多くの死者、行方不明者、負傷者が発生し、消防、警察、自衛隊等が長 期間にわたり、救助活動を展開し、被災地の状況に応じ、実動部隊間で連携を図り、それぞれ の部隊の特性を活かし、効果的に救助活動を行った。例えば、仙台市の宮城野区及び若林区に おいて津波の行方不明者が多数であったことから、市災害対策本部において、当該地域の合同 活動を実施することとし、、地元に精通している仙台市消防局が現地合同指揮所において調整を 図った。3月15日から 8 月 1 日までの間、消防約800名(仙台市消防局職員250+仙台市消防団 員400+緊援隊150)、自衛隊・警察・海上保安庁・DMAT等約600名(ピーク時)が、約2,500 人の救助活動を実施した。  ⑤ DMAT及びドクターヘリと連携した救急活動 DMATのうち、都道府県DMATは平成16年、日本DMATは平成17年の発足であり、また、ド クターヘリについても、全国的に整備が進み始めたのは、この数年のことである。したがって、 東日本大震災は、緊急消防援助隊がDMATとドクターヘリと本格的に連携した初めての災害で あるといえる。 例えば、東京都隊は、東京DMATと連携・同行してトリアージや医療機関での支援活動を行っ た。東京DMATが緊急消防援助隊に帯同しての都外派遣は今回が初めてであり、東京DMAT連 携隊とともに12隊が派遣された。本来、現場での医療処置等を行うことを目的としているが、 東日本大震災では、トリアージや医療機関での支援活動などを連携して行った。なお、これら の活動は、東京都指揮支援隊の統制のもと、現地に派遣された救急隊と連携して実施した。また、 東京DMATは、日本DMAT(厚生労働省)と異なり、DMAT連携隊とともに、緊急消防援助隊 東京都隊長の下で活動した。 また、岩手県においては、秋田県及び青森県の救急隊が花巻空港に待機して、ドクターヘリ コプターを含むヘリコプター搬送患者への救急活動を行い、広域医療搬送を実施した。 ⑥ 石油コンビナート火災への対応 千葉県市原市ではガスタンクの大規模な爆発火災が発生した。 陸からの消火活動は危険が大きく有効な冷却放水ができなかったため、県内応援隊や緊急消 防援助隊を要請し、緊急消防援助隊の指揮支援部隊として川崎市消防局が出動し、東京消防庁、 横浜市消防局、三重県の水上部隊及び陸上部隊が出動した。水上部隊では、千葉市、東京消防庁、 横浜市の水上隊の消防艇に加え、海上保安庁、独立行政法人海上災害防止センターとも連携し 夜間を通じて放水を実施した。その結果、高圧ガスタンクの爆発危険がなくなり、地上からの 放水が可能となった。 一方、陸上部隊は、市原市消防局、千葉市消防局、東京消防庁、三重県隊が協力して、火勢 が弱まるまで約 2 日間活動を継続した。この活動では、東京消防庁の遠距離大量送水装備(スー パーポンパー)や無人放水車を利用して放水活動を実施した。これらにより、ガスタンクに対 する継続的な消火及び冷却放水を行った結果、火勢を抑制し延焼拡大を防止し、 3 月13日に撤 収完了した。(写真 2 ) ⑦ 原子力発電所事故への注水等 今回の災害では地震津波災害に加え、東京電力福島第一原発、第二原発において、未曾有の 原子力災害が発生した。 東京電力福島第一原発では、地震被害による電源の喪失により冷却機能が停止したため、使

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用済燃料プールに外部から放水冷却を行う必要に迫られていた。この危機的な状況を脱するた め 3 月17日に内閣総理大臣から東京都知事へ派遣要請及び総務大臣から各市長へ派遣要請が行 われ、これらを受けて消防庁長官から東京消防庁、大阪市消防局、横浜市消防局、川崎市消防局、 名古屋市消防局、京都市消防局及び神戸市消防局に出動要請を行った。19日 0 時30分の東京消 防庁による第 1 回目の放水を皮切りに 3 月25日の5回目まで合計23時間43分、合計放水量4,227t もの放水活動を134隊、655名により実施した。その後、発電所側でコンクリートポンプ車等に よる継続的な放水体制が整ったため、緊急消防援助隊は現地を引き揚げた。(写真 3 ) ⑷ 出動経費 緊急消防援助隊の出動経費については、原則として、2 ⑷に記載したとおりの財政制度となっ ているが、東日本大震災については、未曾有の被害であり、負担の大きさ、特殊性等を総合的 に勘案し、以下のような措置となっている。(決算額は平成24年度まで) ① 長官指示(消防組織法第44条第 5 項)による出動   消防組織法第49条第 1 項に基づき全額国庫負担 (緊急消防援助隊活動費負担金)   3,824百万円(決算ベース) ② 東京電力福島第一原子力発電所事故への消防庁長官の求め(消防組織法第44条第 2 項)に よる出動   予算措置により国庫補助(交付金、10/10)(原子力災害緊急消防援助隊等活動費交付金)   1,591百万円(決算ベース) ③ 県内協定に基づく消防相互応援による出動   予算措置により国庫補助(交付金、 9 /10) (災害発生県内消防応援活動費交付金)   58百万円(決算ベース)    

東日本大震災を踏まえた課題と対応

⑴ 消防審議会の答申等 平成24年 1 月に消防審議会の第26次答申「東日本大震災を踏まえた今後の消防防災体制のあり方 に関する答申」において、①長期にわたる消防応援活動への対応、②消防力の確実かつ迅速な被災 地への投入について対応を講ずる必要があるとされている。 写真 2  水上消防隊の夜間放水活動 写真 3  緊急消防援助隊による3号機への放水(東京消防庁HPより)

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①については、後方支援活動に必要な人員や資機材、燃料などを搬送する車両の配備や、より効 果的な後方支援部隊の運用などが、②については、関係機関の連携を含め、航空機による人員・資 機材の投入、広範囲の被害を想定した緊急消防援助隊の出動計画の見直し、消防庁及び緊急消防援 助隊相互間の情報共有・収集体制の強化が指摘されている。 これらの課題への対応に必要な車両・資機材などハード整備に係る予算措置を講ずるとともに緊急 消防援助隊出動要綱などの各種計画等の見直しを行った。 ⑵ 今後の対応 緊急消防援助隊については、消防組織法に基づき隊の編成及び施設整備に関する基本的な計画、 いわゆる緊急消防援助隊基本計画を定めており、平成26年度から新たな基本計画を定めることとなっ ている。現在、見直し作業を進めているところであるが、南海トラフ巨大地震、首都直下地震、東 海地震、東南海・南海地震等に的確に対応するためには、東日本大震災の教訓・経験を踏まえた見 直しとする必要がある。 見直しの基本的な方向としては、①緊急消防援助隊規模の大幅増隊、②同時多発的な大規模災害 への指揮体制の確立、②機動的な出動態勢の構築、③石油コンビナート等特殊災害への対応力の強化、 ④情報通信確保のための充実強化を目指すこととなる。 基本計画以外の各種計画を的確に見直すとともに、車両・資機材についても着実に整備を進めて いく必要がある。 また、上記の措置を実現し、運用強化を図る観点からは、これまで以上に緊急消防援助隊の訓練 を充実していくことが欠かせない。運用面では、ICT技術や無人化技術など最先端の技術を積極的に 取り入れた活動の高度化、自衛隊、警察、DMAT等実動部隊、さらには首長部局の災害対策本部な ど関係機関との連携強化、後方支援活動の充実などによりロジスティックスの強化に取り組む必要 があろう。    

おわりに

 筆者は、平成 7 年及び平成16年に消防庁に在籍し、緊急消防援助隊の発足、そして法制化とい う節目に、緊急消防援助隊に関わった経験を持つが、そのような視点で、現在の緊急消防援助隊を みると、規模、態勢、装備、実績すべてについて、18年間で長足の進歩を遂げていると考えている。 また、消防の役割も、従前からの市町村消防の原則に基づく地域内の安全確保といった役割にと どまらず、より積極的に、大規模・特殊災害時に消防全体が協力・応援し合い、より広域的なレベル、 さらにいうと国家的なレベルにおいて、消防力を発揮することが求められる方向に大きく変化してい ると考える。 しかし、大規模災害時に求められる緊急消防援助隊の役割を考えると、更なる水準の向上に向け た取組が必要であると考える。しかも、東日本大震災という未曾有の災害において、緊急消防援助 隊が活動し、その教訓を踏まえると、尚更のことである。 緊急消防援助隊のさらなる充実強化が図られるよう関係者の一層のご理解とご協力をお願いしたい。

参照

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