1 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 更新日:2021/2/19 調査部:橋本知世
(短報)停滞するタンザニアの LNG 開発
(各社 HP、Platts Oilgram News、International Oil Daily、Upstream他)
2010 年以降タンザニア南部沖合では BG(現:Shell)や Statoil(現:Equinor)によって探鉱が行わ れ、複数のガス田が発見された。 当初、南部沖合ガス田から産出されるガスを各社共同で液化する計画が立ち上がったが、Shell と Equinor の方向性の違いから合意には至らず、共同の液化基地建設の可能性は残しつつもそれ ぞれ独自にタンザニア政府と HGA 交渉を進めることとなった。 しかし、タンザニア政府は現行の PS 契約を見直すこととし、IOC と政府の HGA 交渉は 2019 年に 中断された。 2021 年 1 月、Equinor はタンザニア LNG プロジェクトについて経済性の改善が見込めず、バラン スシート上の価値の正当性が維持できないことから、9 億 8,200 万ドルの減損処理を行う旨発表し た。同社はタンザニア政府との協議は継続するものの、LNG 輸出国になるというタンザニアの夢 はまた一歩遠のいた。 1. タンザニアでのガス発見 2010 年以降、タンザニア南部沖合における探鉱により、深海部の 4 鉱区(Block 1~4)にて、複数のガ ス田が主に Statoil(現:Equinor)及び BG(現:Shell)によって発見された。
Equinor は 2007 年にタンザニア石油開発公社(Tanzania Petroleum Development Corporation : TPDC) と 2 つの PS 契約を締結してタンザニアに進出を果たした。Block 2 でのパートナーは ExxonMobil で、権 益保有割合は Equinor 65%、ExxonMobil 35%となっている。なお、TPDC は 10%の権益で参画する権利を
有している1。2011 年に Block 2 の探鉱を開始し、これまで合計 15 の探鉱井を掘削し、原始埋蔵量ベー
スで 20Tcf 以上のガスを発見した。
また、BG(現:Shell)は Ophir Energy(現:Medco Energi2)及び Pavilion Energy をパートナーとして深海
鉱区 Block 1 および Block 4 に権益を保有しており、これまでの探鉱で 16Tcf の回収可能なガスを発見
した3。両鉱区での権益保有割合は、いずれも Shell 60%、Medco Energi 20%、Pavilion Energy 20%となって
いる。
1 https://www.equinor.com/en/where-we-are/tanzania.html 2 インドネシア企業。2019 年 5 月 22 日に Ophir Energy を買収。 3 https://www.shell.co.tz/about-us/who-we-are.html
2 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 なお、BG は Block 1 及び 4 と同様に 2010 年に Block 3 にも参入したが、2014 年に、さらなる探鉱に 値しないとして、Block 3 から撤退した。この時、パートナーの Ophir Energy が BG の権益を引き継ぎ 80% の権益とオペレーション権を獲得、残り 20%は Pavilion Energy が保有する構図となった。なお、Ophir Energy は BG の権益を引き継いだという位置づけになっており、BG への支払いは発生していないと報 じられた。しかし、翌 2015 年には Ophir Energy、Pavilion Energy ともに Block 3 から撤退したと報じられ、 現在ではオープンエリアとなっている。Block 3 では 2012 年に探鉱井が掘削され、BG によるタンザニア 南部沖合探鉱での 6 回目の掘削であり、6 回連続のガス発見でもあった。0.5~2Tcf の埋蔵量が推定さ れたが、Block 3 では 2012 年以降ガス発見はない。
図 1:タンザニア沖合鉱区図
3 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 2. タンザニア LNG プロジェクト
Shell によれば、南部沖合鉱区で将来、産出されるガスの量は、Equinor 率いる Block 3 の事業と共同 で陸上に LNG 液化プラントを建設するのに十分な量であり、当初は共同の液化プラント建設が計画され ていた。Equinor は Block 2 からの LNG 生産量は年間 750 万トンが見込まれると発表していた。 表:液化プラント(計画段階) プラント名 名称未定 液化能力 1,000 万トン/年 参加企業 (保有割合)
Equinor(32.5%) 、Shell(30%)、ExxonMobil(17.5%) 、Medco Energi(10%)、 Pavilion Energy(10%) 出所:天然ガス・LNG データハブ 2021 他より JOGMEC 作成 タンザニア政府は液化プラントのために、すでに同国南部の海岸沿いの街 Lindi を割り当てている。 図 2:LNG 開発のフロー 出所:Equinor ホームページ Equinor と Shell は互いに共同で LNG プラントを建設する可能性を排除していなかったが、大規模な LNG プロジェクトを運営したいと考えていた Equinor に対し、Shell は Equinor の経験不足を理由に同社 が共同プラントを運営するのを拒否したとも一部で報じられていた。2019 年 5 月に Equinor は単独でタン
ザニア政府と HGA(Host Government Agreement)4協議に乗り出すことを決定し、これが Shell にさらに不
4 Host Government Agreement (HGA)とは、IOC 等の外国投資家と当該産油・産ガス国との間で、LNG やパ
4 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 満を抱かせたとも言われている。以降、共同プラントの可能性は残しつつも Equinor と Shell はそれぞれ 独自に政府と協議を進めていく方針のようである。 2019 年にはマグフリ大統領5の指示のもと、タンザニア政府が現行の PS 契約の契約条件について見 直しに着手し、IOC とタンザニア政府間の HGA 交渉が中断した。同年 11 月、現地メディアは「PS 契約 には石油法(2015 年制定)と矛盾したり重複したりする条件がある可能性があり、議会は HGA 交渉を進 める前に、それを見直す特別チームを結成することになった」と報じ、2013 年モデルの PS 契約の条件を 見直す予定とされているが、PS 契約のどの条件が問題なのかはまだ明確にはされていない。 また、2019 年 10 月、タンザニア政府は LNG 基地建設によって住環境等に影響を受ける人々に補償 金を支払うことを発表した。それから約 1 年後の 2020 年 9 月には、政府は土地所有者に合計 233 万ド ルの補償金を支払い、LNG 基地建設のための土地の取得を完了した。これによって、タンザニア政府は プロジェクト前進に向けて着実に進んでいると述べ、HGA 交渉を再開する準備ができているとした。 しかし、Equinor は「タンザニアで進行中の PS 契約の見直しを待っており、HGA 交渉は保留中」と強調 している。Shell は「HGA 交渉を進めたい。いつ、どのようにプロセスを再開するのかについてタンザニア 政府の手引きと明確化を期待している」とコメントしており、歩調はそろっていない。 現在、タンザニアの LNG 開発プロジェクトはまだ初期の段階にあり、プロジェクトの構造・参加・商業契 約などの主要な項目がまだ定まっていない。なお、LNG 液化施設建設に向けた PreFEED は HGA の締 結を待って行われる予定になっている。 3. Equinor が減損処理 プロジェクトがなかなか進まない中、2021 年 1 月 29 日、Equinor はタンザニア LNG プロジェクトにつ いて 9 億 8,200 億ドルの減損処理を行うと発表した。同プロジェクトの経済性を確保するために必要なガ ス価が高く、同社保有のポートフォリオにあっては他事業よりも経済性が劣っていることがその理由であ る。Equinor はより高いリターンが得られるプロジェクトに資本を投じる方針であり、プレスリリースで、2026 年までに操業開始予定の石油・天然ガス探鉱開発プロジェクトのブレイクイーブンを 35 ドル/bbl、今後10 年以内に操業開始予定の未 FID の探鉱・開発プロジェクトのブレイクイーブンを 40 ドル/bbl に置いてい る。一方で、Rystad Energy によると、タンザニア LNG のブレイクイーブンは 48 ドル/bbl(8 ドル/tcf)と見 5 2020 年 10 月、タンザニア大統領選挙が行われ、マグフリ大統領は得票率 84.4%で再選を果たし 2 期目に入っ た。
5 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 られている。 ただし、Equinor はタンザニア LNG がビジネスとして成立できるような商業的、財政的、法的枠組みを 見出すため、タンザニア政府との協議を継続すると述べ、完全にドアを閉めたわけではない。契約条件 が緩やかなものになれば、経済性は向上してブレイクイーブンも下がる。 もう一方の IOC である Shell も投資プロジェクトの選定には厳格なアプローチをとっているため、開発 が進むかは不確実である。タンザニア政府は同国がいつか LNG 輸出国になることを夢見ているが、業 界筋の見方は厳しく、その可能性は今のところ低いと言われている。 4. 今後の展望
2020 年に FID した液化プロジェクトはメキシコにおける Sempra Energy の Costa Azul 輸出プロジェクト 1 件のみであり、今回のタンザニア LNG の評価減は新たな液化プロジェクトを市場に投じることの難しさ を改めて浮き彫りにしたものであろう。COVID-19 のパンデミックと長期的なガス需要に対する不確実性 によって、2020 年には資本集約的な液化プロジェクトへの投資意欲が減退し、FID 不足となった世界的 な傾向の中、アフリカも例外ではない。アフリカでは、タンザニア LNG が評価減したほか、モザンビーク では Rovuma LNG の FID が遅延しており、モーリタニア・セネガルでも Tortue LNG の拡張計画がスケ ールダウンされる計画である。アフリカの石油・天然ガス開発計画の進展について、世界のトレンドととも に引き続き注視される。