【特別支援学校:肢体不自由】 自立活動学習指導案 広島県立広島特別支援学校 指導者 L 大谷 祥子 T 森谷 美紀 S 山脇 清美 1 日時・場所 平成20年11月19日(金) 10:45~11:30 教室 2 対象 小学部1年1組(女子3名) 3 題材名 身近なものを使ってつくろう~はじき絵をしよう~ 4 題材設定の理由 〇 児童観 本学習集団は,重複障害学級の女子児童3名で編成されている。教育課程は3名とも自立活動を中心と した教育内容を行っているが,その運動障害や知的障害の程度はさまざまである。 運動や移動に関しては,介助歩行が可能な児童が1名,寝返りやずり這いで移動できる児童が1名,自 力で背臥位から側臥位への姿勢変換ができる児童が1名である。上肢の動きに関しては,3名とも微細運 動は難しく,程度の差はあるが粗大運動は行うことができる。 感覚の受容・活用に関しては,感覚刺激に過敏に反応する様子が見られる。児童たちは,色彩の鮮やか な物や絵本の読み聞かせ等に興味・関心を示すことが多い。興味・関心がある時には,自ら手を伸ばして 触ろうとする姿が見られる。感覚過敏があるため,触ることが躊躇される場面も見られるが,活動への意 欲は高い。児童たちは入学からこれまでスポンジスタンプや寒天ゼリー遊び,紙粘土遊びを経験してきた。 いずれの素材も感触はさまざまで児童によって好きな感触,苦手な感触があった。全く刺激を受け入れら れないこともあったが,学習を進めるうちに多少過敏性も軽減されるようになり,刺激を受け入れる姿も 見られるようになったものもいる。また,昼休みには何度か自由画を描く経験もしている。点描や線描を する児童のなかには,その線や点,形,色等に意味付けをする児童もいる。 コミュニケーションに関しては,3名とも快・不快の表現がはっきりとしている。問いかけに関して「は い」「いいえ」で答えようとする児童が2名おり,そのうちいくつかの表出言語のある児童もいる。どの児 童も程度の差はあるが活動を見通す力を持っており,活動への期待感や意欲を感じることができる。児童 はそれぞれ得意とすることが違い,生活や学習場面によってモデルとなる児童が入れ替わりながら,互い に刺激し合ったり,励まされたりして学習に取り組んでいる。 〇 題材観 はじき絵は,色彩の鮮やかさやクレヨンで描いた点や線が,絵の具を重ねても浮き出てくる,という面 白さを味わうことのできるものである。また,クレヨンは得意だが絵の具は苦手といった児童にも取り組 みやすく,児童の実態からも適したものであると考える。児童たちはこれまでにクレヨン画を経験してい る。クレヨン画では,これまでの学習の様子から,柔らかいものや細いものは握り難く児童が主体的に握 って手指を動かすことは困難であると考え,握りやすいように持つ所が球状になっているものを選んだり, 改良してしっかりと握れるものを使用したりした。また,今回使用する絵の具は発色が鮮やかでのびがよ く,手指を使って感触を味わったり描いたりするのに適したものを選んだ。また,色に関しても注視しや すく視覚的に捉えやすい赤・青・黄の3色を用意した。いずれの素材も安全性を考慮したものにしている。 〇 指導観 本題材の時間は毎回同じ流れで活動することで見通しが持てるようにしている。本時の指導にあたって は,児童の興味・関心に合わせて歌・体操・活動の説明・メイン活動・まとめと場面を区切ることで児童 が 45 分間集中して学習できることやじっくりと活動をできる時間を保障して展開することに留意した。導 入の体操では,まず動きの確認を行ってから曲に合わせて体操するようにする。また,活動の説明では, 色を意識させること,しっかりと絵の具に目を向けさせること,本時の学習に期待感・見通しを持たせる ことができるようにしたい。展開のメイン活動では,絵の具の感触を味わうことを目標にじっくりと素材 と関わることができるようにする。絵の具の感触を受容できるようになること,学習を通して自分の気持
ちを表現できることを目標に学習を行うようにする。また,児童同士が関わり合って共に学習できるよう に働きかけ,友だちとの関わりを通して学習意欲を高めるようにしたい。まとめでは,児童それぞれの目 標に沿った振り返りを行うようにする。よかった点をはっきりと児童に伝え,賞賛を受けることで学習へ の満足感や達成感が得られるようにしたい。 5 題材の目標 ○ 感覚を受け入れたり,手指をしっかりと動かして主体的に表現しようとしたりすることができる。 ○ 友だちを意識したり,達成感・自己肯定感を得たりすることができる。 6 指導計画 (全 15 時間) 第1次 クレヨンで描こう!! 第2次 絵の具であそぼう!! (本時 10/15) 第3次 はじき絵を描こう!! 7 本時の目標 (1) 全体の目標 ○ 主体的に絵の具に触り,絵の具の感触を受け入れることができる。 〇 友だちと関わり合いながら活動したり,感触遊びを通して満足感や達成感を得たりすることができる。 (2) 個別の目標 これまでの様子 目標 A ○ 低緊張で左半身に麻痺があり,主に右上肢を使用する。 ○ 興味・関心のあるものには目的的に手を対象物に伸ばすことができる。 ○ 触覚に関して過敏性があり,嫌なものは触ろうとしなかったり,不快な表情 をしたりする。 ○ 視力は両眼で最低でも 0.3 見えており,対象物に視線を向け,注視すること ができる。 ○ よく聞く言葉(ごはんなど)に関しては見通しを持つことができる。 ○ 快感情は笑顔や発声,手の動きなどで表現する。 ○ 手に持ったものを口に入れる行動が見られる。 ○ 最低でも一日に2回は発作がある。発作時は,見守るようにする。 ○ ベンチ椅子座位では,骨盤を起こし,胸を開いて座ることに課題がある。少 しずつ座る時間が長くなるよう取り組んでいる。 ○ 絵の具に目 的的に手を伸 ばし,しっか りと絵の具に 触り続けるこ とができる。 ○ 感触遊びを 通して快・不 快などの自分 の気持ちを表 現することが できる。 B ○ 両手を正中線で合わせることができる。利き手は右手で,活動する時は右上 肢を使用する。確実ではないが,身体の部位と名称,左右が一致しており,ボ ディーイメージを持っている。 ○ 目的的に上肢を対象物に伸ばすことができるが,筋緊張の動揺が見られるた め,緊張が入ると頭部が下がってしまうことがあり,永続的に物を注視するこ とが難しい。斜視がある。 ○ 触覚や体性感覚に過敏性があり,上肢や下肢に体重をかけたり,中途半端な 硬さのものを触ったりするのは苦手である。感触遊びをすることは難しい。 ○ 言語と視覚的な手がかりがあれば,活動に見通しを持つことができる。 ○ 教師の問いかけに「はい」の返事または「いいえ」の動作ができる。また, 声を出して注意喚起したり,もう一回などのサインをだして要求を伝えたりす ることができる。 ○ 苦手な感触 である絵の具 に自分から触 ることができ る。 ○ 友だちの活 動している様 子を見たり, 励まされたり しながら,最 後まで活動を やりきること
○ ベンチ椅子座位では,下肢に体重をかけることに過敏性があるため,活動に よって足底を床面につけて座るものと足底を浮かせて座るものを使い分けて いる。筋緊張の動揺が見られるので,姿勢が崩れたらその度に姿勢を整えるよ うにしている。 ができる。 C ○ 安定した座位姿勢をとることができ,歩行器または介助歩行で移動できる。 ○ 両上肢を意識して動かすことができるが,左の麻痺が強く,左右の分化した 動きが難しい場合がある。身体の部位と名称,身体を動かすことに関する言語 についておおまかに理解できている。 ○ 触覚に過敏性があり,始めは刺激を嫌がるが,次第に慣れることができる。 ○ 視力は両眼で最低でも 0.2 である。斜視があり,左眼が優位である。 ○ 言語と視覚的な手がかりで活動を見通すことができる。 ○ 教師の問いかけに返事や身振りで答えることができるが確実ではない。教師 や友だちの様子をみて模倣できる。 ○ 注意が転導しやすいため,活動への集中が持続するよう,適宜,言語的・身 体的支援を行うようにしている。 ○ ベンチ椅子座位では,指導者に身を任せて上肢の左右分化した動きをするこ とを課題としている。 ○ 手と目を協 応させながら 絵の具をしっ かりと触るこ とができる。 ○ 友だちの様 子を見たり, 働きかけたり しながら活動 することがで きる。 8 準備物 絵の具,トレー,画用紙,画板,画板付きユニバーサルアーム,ベンチ椅子,机,CD, ラジカセ,ブラックボード,らくちゃん,ビッグマック,台,斜面台 9 指導過程 別紙 10 評価の観点 (児童の活動に関する評価) ○ 自分から絵の具を触ることができたか。 ○ 友だちとの関わり合いや学習を通して得た満足感や達成感を表情や仕草等で表現できたか。 (指導状況に関する評価) ○ 個々の実態に応じた姿勢・運動に関する適切な支援ができたか。 ○ 児童の応答を待つ等,主体性が引き出されるような関わりをすることができたか。 11 年間指導計画 略 12 教室配置 黒 板 入 口 C ラジカセ ボード T S L A B
9 指導過程 学習活動 指導上の留意点(…:課題 ○:支援 ☆:評価) 全体 A B C 1 は じ め の 挨 拶 を し , はじまりの歌を歌う。 (3分) 〇 全員と視線を合わせ てからはじめる。 ○ 当番が伴奏の入った スイッチを押して歌う。 Tと一緒にベンチ椅子に座る。 ○ 骨盤を起こして座るようにす る。 Sと一緒にベンチ椅子に座る。 〇 緊張の度合いによって高さの 違うベンチ椅子を使い分ける。 ○ ベンチ椅子を跨ぎ,骨盤を起 こしてやや前傾の状態で座るよ うにする。緊張が低い時は体幹 と顎を支えるようにする。 ○ 上肢を机上に置き,椅子に深 く腰掛けるようにする。体幹が 前傾しすぎる時は行動指示で正 すようにする。 2 準備体操をする。 (5分) ○ 動きの確認を行って から曲に合わせて体操 をする。 ○ Tと一緒に上肢を動かす。 ○ Aのペースでゆっくりと動か す。 ○ Sと一緒に上肢を動かす。 Lと一緒にベンチ椅子に座る。 ○ Lと一緒に左右分化した動き で上肢を動かす。 3 今日の活動を知る。 (7分) ○ Aの前で話を行うよ うにする。提示物に児童 の視線が向くまで待つ。 ○ 体調や筋緊張の状態によって は座位保持装置付車椅子に座る ようにする。 ○ しっかりと視野に入るように 提示を行う。 ○ 緊張が高い時は,全身を丸く して緊張を低くしてから座り直 すようにするか,横抱きにする ようにする。緊張が低い場合は 体幹と顎を支えるようにする。 ○ 注意が持続するよう適宜言葉 かけを行う。 4 絵の具遊びをする。 (20 分) ・ 絵の具だけを触る。 ・ 絵の具を紙に伸ばす。 ・ 絵の具を交換して色を 重ねる。 ○ 絵の具は2色から選 択する。 〇 絵の具は,できるだけ 友だちと交換できるよ うにし,難しい場合は児 童が配るようにする。 ○ 活動を行うときは児 童の視線に留意して場 所の設定を変更する。 ○ 児童同士が関わり合 って活動できるよう全 体を見ながら言葉かけ を行う。 ○ よい行動や表情,仕草 ○ 絵の具は2色から視線で選択 し,選んだ方に手を伸ばせるよ うにする。 ○ 体調や筋緊張の状態によって は座位保持装置付車椅子で背面 にタオルを入れて座るようにす る。 ○ 動きが出ない時は,肘を支え て動きが出やすいようにした り,Tと一緒に動かしたりする。 ○ 絵の具は2色から手を伸ば す,または質問への「はい」「い いえ」で選ぶようにする。 ○ 緊張が高い時は,全身を丸く して緊張を低くしてから座り直 すようにする。緊張が低い場合 は体幹と顎を支えるようにす る。 ○ 難しい場合は,教師と一緒に 触ったり,他の児童と共に励ま したりする。 ○ 絵の具は2色から手を伸ばし て選択するようにする。 ○ Aが座位保持装置付車椅子に 座る場合は,机と椅子の下に台 を置き他の児童と同じ目線にな るようにする。 ○ 体幹が前傾しすぎる時は行動 指示で正すようにする。 ○ 難しい場合は,Tと一緒に行 ったり,手元を見るように言葉 絵の具に目的的に手を伸ば し,しっかりと絵の具に触り 続けることができる。 苦手な感触である絵の具に自 分から触ることができる。 手と目を協応させながら絵の 具をしっかりと触ることがで きる。
等が見られたらその都 度賞賛する。 ○ 絵の具が児童の口に 入らないよう留意する。 ○ 手拭き用のタオルを 準備する。 ○ 片付けながら振り返 りをする時に話す内容 をそれぞれついている 指導者と相談する。 ☆ 目的的に絵の具へ手を伸ば し,しっかりと絵の具に触り続 けることができたか。 ○ 絵の具が口に入らないように する。 ○ 表情や仕草などの細かな変化 を見逃さずに受容し,言語でA にかえす。 ☆ 快・不快などの自分の気持ち を表情や仕草で表現することが できたか。 ○ 行動のイメージを擬音や仕草 で伝える。 ☆ 自分から絵の具を触ることが できたか。 ○ 友だちの様子を見るように言 葉かけをする。 ☆ 最後まで活動をやりきること ができたか。 かけを行ったりする。 〇 塗る場所を指定することで手 元を見ることができるようにす る。 ☆ 手元を見て,絵の具を触るこ とができたか。 ○ 友だちへと目を向け,友だち に働きかけるよう言葉かけをす る。 ☆ 友だちに目を向けて呼びかけ たり,励ましたりすることがで きたか。 5 本 時 の 振 り 返 り を す る。 (8分) ○ 個々の目標を中心に 学習を振り返る。 ○ 座位保持装置付車椅子に座る ようにする。 ○ Aの表情や仕草を見ながら活 動の様子をTが話すようにし, 使った絵の具や紙などを提示す る。 ○ 緊張が高い時は,全身を丸く して緊張を取ってから座り直す ようにするか,横抱きにするよ うにする。緊張が低い場合は体 幹と顎を支えるようにする。疲 れている時は座位保持装置付車 椅子に座るようにする。 ○ 「はい」「いいえ」や表情,仕 草で答えられる質問をする。 ○ 上肢を机上に置き,椅子に深 く腰掛けるようにする。体幹が 前傾しすぎる時は行動指示で正 すようにする。 ○ 注意が持続するよう適宜言葉 かけを行う。 ○ 「はい」「いいえ」や表情,仕 草で答えられる質問をする。 6 終りの挨拶をする。 (2分) 〇 全員と視線を合わせ てから終える。 ○ 上肢をテーブルの上に置き, 顔をあげるようにする。 ○ ベンチ椅子座位で緊張が低い 場合は体幹と顎を支えるように する。座位保持装置付車椅子の 時は,顔をあげるように言葉か けをする。 ○ 上肢を机上に置き,椅子に深 く腰掛けるようにする。体幹が 前傾しすぎる時は行動指示で正 すようにする。 快・不快などの自分の気持ち を表情や仕草で表現すること ができる。 友だちの様子を見たり,働きか けたりしながら活動すること ができる。 友だちの様子を見たり,励まし を受けたりしながら,活動をや りきることができる。