植 物 防 疫 第68 巻 第 12 号 (2014 年) ― 70 ― 786 ハダニ防除にカブリダニを利用することをテーマに, 約40 年間,研究・普及活動を続けてきた。研究者とし て現役時代に出したデータが,現場で実践する中で誤り であると気付いたことが二つあった。これからの利用に も関連することなので,懺悔の筆をとることにした。 一つ目はカブリダニの高温耐性についてである。チリ カブリダニとケナガカブリダニについて,30℃を超える と発育できないというデータをいくつかの論文,雑誌に 報告してきた。ところが栽培現場においては,初夏のイ チゴ親株や苗床でチリカブリダニ,ミヤコカブリダニが 卓効を示したり,真夏のガラス室のナスでもミヤコカブ リダニが有効であったりして,暑さのためにカブリダニ の利用ができないというのは誤りであると言える。 これまでのテストの多くは,恒温や恒湿条件であり, 変温や変湿条件がカブリダニの発育に及ぼす影響を十分 に解明できなかったことが,高温では使えないという誤 った定説ができ上がった原因と考えられる。これには 我々の論文も一役かっていたと思うので,お詫びを申し 上げる次第である。個別のテストでは高温条件は不適で あっても,現に夏場も有効なことから,現場第一主義を 取って夏場のカブリダニ利用を奨励したい。高温でも利 用可能ということは,カブリダニの利用範囲が広がるこ とを意味しており,IPM のさらなる発展を期待したい。 二つ目は気門封鎖剤のカブリダニへの影響についてで ある。ハダニやカブリダニへの薬剤の影響を調べるテス トは,回転式薬剤散布塔(みずほ理化製)を使って行っ てきた。この機器は一定の圧力と付着量を決め,30 cm ほどの高さから筒内で噴霧するもので,画一的に公平な テストをするうえでは便利なものであった。この方式の テストでは気門封鎖剤はカブリダニを殺すことはなかっ たので,カブリダニに影響のない薬剤として位置づけて きた。ところが動力噴霧器を用いて気門封鎖剤が多量に 散布されたバラ園で,チリカブリダニ雌成虫がコロコロ 死んでいるのに出くわした。どうも,散布器具,圧力, 濃度,量等の条件によって,カブリダニが悪影響を受け ることが明らかになった。最近はカブリダニと共用でき る薬剤の一覧表から,気門封鎖剤は削除している。ただ し,カブリダニの放飼前にハダニの密度を下げておきた い場合は,全く問題ないので,気門封鎖剤の散布を勧め ている。 古希を迎え,ずっと気になっていたことを記して,筆 を置きたい。
カブリダニ利用上における二つの懺悔
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