主要な研究成果
背 景
火力発電プラントの厚肉配管溶接部にはクリープ損傷によるき裂(タイプⅣき裂)が発生した事例が報告さ
れている。タイプⅣき裂に対して TOFD 法とフェーズドアレイ(PA)法を併用することにより、溶接熱影響
部のき裂と溶接欠陥を区別して、高精度にき裂の寸法と位置を測定するための手法* 1
を提案した。一方、超
音波探傷の測定条件の最適化、プローブの設計などを効率的に行うには、より正確に受信波形を予測すること
が必要となる。このため、従来の単一振動子プローブを対象とした有限要素法に基づく詳細な超音波伝搬シ
ミュレーション手法を開発した。しかしながら、本手法では TOFD 法および PA 法の受信波形を予測すること
ができない。
目 的
実機配管を検査するための超音波探傷装置を開発し、提案したき裂の寸法と位置を測定する手法を検証する。
また、TOFD 法および PA 法などの種々の手法における受信波形を予測するために既開発のシミュレーション
手法を拡張する。
主な成果
1.実機配管用検査装置の開発
駆動ユニットおよび探触子ホルダから成る実機スキャナを用いて、外径 350mm から 700mm の実機配管周
方向溶接部をフェーズドアレイ法などの種々の超音波探傷法を組み合わせて非破壊検査することができる多
機能超音波装置を開発した(図 1)。本装置を用いることにより、従来と比べて約 1/60 の時間で探傷データ
を取得することが可能となった。
2.提案手法の検証
提案手法により、溶接熱影響部にあるタイプⅣき裂を模擬した内在き裂状欠陥と溶接金属部にある製造時
の各種溶接欠陥をその位置から区別することができた(図 2)。アメリカ機械学会規格の許容寸法誤差(平
均自乗(RMS)誤差、欠陥高さ 3.2mm、欠陥長さ 19mm)と比較して、内在き裂状欠陥の高さを RMS 誤差
1.5mm 以下(図 3)、長さを 5.4mm 以下、試験体厚さ方向の位置を 3.2mm 以下と高精度に測定できることを
確認した。
3.シミュレーション手法の拡張
結晶粒界における超音波の散乱を考慮でき(図 4)、より実際に近い TOFD 法および PA 法などの種々の手
法の受信波形を予測するためにシミュレーション手法を拡張した。これによって、両手法における欠陥高さ
測定に必要なき裂先端での回折波を明らかにし(図 5)、受信波形を定量的に予測することができた。また、
シミュレーションを適用し、測定条件の最適化およびプローブの設計を効率的に実施できるようになった。
今後の展開
実機配管への開発した超音波探傷装置の適用を進めるとともに、超音波探傷の測定条件の最適化、プローブ
の設計などに超音波伝搬シミュレーションを活用する。
主担当者 材料科学研究所 構造材料評価領域 主任研究員 福冨 広幸
関連報告書 「超音波探傷試験による厚肉配管溶接部の非破壊評価(第 3 報)」電力中央研究所報告:
Q04016(2005 年 3 月)
「オーステナイト系ステンレス鋼溶接部における超音波探傷技術の開発(第 2 報)」電力中
央研究所報告: Q04015(2005 年 3 月)
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実機配管の高精度、高効率欠陥検出のための多機能超音波
探傷装置および超音波伝搬シミュレーション手法の開発
* 1 :福冨 広幸・林山・新田 明人、電中研報告 T03071(平成 16 年)
A.コスト低減と信頼性の維持
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50mm 溶接欠陥
き裂状欠陥
試験体断面 PA法による断面像
溶接金属部
材質:2.25Cr-1Mo鋼
パソコン
実機スキャナ
超音波探傷器
スキャナ
コントローラ
探触子ホルダ
駆動ユニット
配
管
直
径
:
600
mm
図1 超音波探傷システムの構成 図2 内在き裂状欠陥と各種溶接欠陥
0
2
4
6
8
0 2 4 6 8
実測高さ(mm)
超音波
に
よ
る
測
定高
さ(mm)
TOFD法
PA法
図3 き裂状欠陥高さ測定精度
TOFD法のRMS誤差:0.6mm
PA法のRMS誤差:1.5mm
1回目の底面反射波
散乱波
探触子
探触子
1回目の底面反射波
(a)結晶粒を考慮
しない場合
(b) 結晶粒を考慮
した場合
図4 結晶粒径に応じた超音波伝搬の様子
図5 TOFD法およびPA法の超音波伝搬挙動
送信用
プローブ
受信用
プローブ
①ラテラル波、②回折波、③底面反射波
15μ秒
9μ秒
①回折波
②
反射波
き裂状欠陥
超音波
の波面
PAプローブ
①
③
②
き裂
TOFDプローブ
拡大
き裂状欠陥