− 29 − 外国人児童生徒に対する支援のあり方に関する研究 一外国人児童生徒の支援にかかわるエピソード分析を通して一 人間教育専攻 幼年発達支援コース 福 尾 充 洋 第1章 問題の所在と研究の目的 1990年代以降,日本社会において外国人人口 が増加するのに伴い,学校教育現場においても 外国人児童生徒が増えてきた。1990年の入国管 理法改正を契機として,日本で生活を営む外国 人が急増し,日本の学校教育を受ける外国人児 童生徒の数も急速に増加している。文音│牙ヰ学省 「学校基本調査」によれば,2012年 5月 1日現 在で全国の公立学校に在籍している外国人の児 童生徒数は71.545人に上っている。毎年 7万 人を上回る外国人児童生徒が,公立の小・中・高 等学校等で日本人の児童と一緒に学校教育を受 けているのである。(藤井・孫,2014) 外国人児童生徒の教育をめぐる課題は7つある。 1.言語に関する課題2.学校生活への適応の課題 3.学力獲得の課題4進路保障の課題5.不就学問 題6.アイデンティティの形成・帝酎寺についての 課題7.文化に関する課題。本研究ではこの7つ の課題を総合的に見ていく。 外国人児童生徒の支援には,居場所作りや社 会跡芯のための手段の提供等の具体的なサポー トを彼らのライフコースに沿った形で適時に提 供する必要があると考えられる。 第2章 研 究 方 法 本研究は,まず外国人児童生徒のライフコー スに沿ってそれぞれの日常生活又は学校での生 活にはどのような問題,支障があり,これらに対 して周囲の人のどのような支援的関わりが効果 指 導 教 員 田 村 隆 宏 的であるのかにコいての示唆を得るために,こ の問題を扱った文献エピソード・又はノンフィ クションの事例,及びインタビ、ューを分析する。 分析に当たってはと、のような支援的関わりが効 果的であるのかを具体的に明らかにするために ソーシャルサポートの観点から分析する。ソー シャルサポートの定義ではHouse(1981)が情 緒的サポート(共感したり,愛情を注いだり,信 じてあげたりする人道具的サポート(仕事を手 伝ったり,お金や物を貸してあげたりする) ,情 報的サポート(問題への対処に必要な情報や知 識を提供する),評価的サポート(人の行動や業 績にもっとも相応し評価を与える)という 4つ の機能が指摘され,それらのうち 1つないしそ れ以上の要素を含む相互作用がソーシャルサポ ートであると定義している。この、ノーシャルサ ポートの観点から分析することによって外国人 児童生徒の日常生活又は学校での生活に対して どのような支援的関わりが効果的であるかにつ いて具体的なレベルで示唆を得ることができる と考えられる。 第3章 結 果 と 考 察 本研究ではエピソード分析、インタヒ、ュー記 録分析をする中で、ソーシャルサポートを介し て外国人児童生徒がサポートを通して様々な児 童生徒の問題解決,学びがあることが判明した。 (1)ソーシャルサポートにおいての外国人児 童生徒のサポート
− 30 − ①情緒的サポート エピソード2下線部(副『中学校の先輩から王 氏に対しての支援』 「高校中退後,王さんは何もせず,昼間からゲ ームセンターに通うようになりました。そして そこで知り合った仲間と,目的もなく集まって は夜遅くまで騒ぎ,喫煙などの非行に及ぶよう になりますJとエピソードにあるように,王氏が 高校を中退し日々に投げやりになっている状況 を中学校の先輩が自分も同じような時期があっ たと王氏の今の状況に共感し,なぐさめ・励まし ていると考えられる。 ⑫萱具的サポート エピソード 1下線部 (C)~担任教師から王氏に 対しての支援』 担任教師は王氏に行動的な援助を行い,新し い習慣に慣れることを提供していることが見ら れ,王氏がその新しい習慣をすぐ身に着け,でき るようになるために学級活動の時間に,クラス 全員で,物の貸し借りのロールプレイをし,借り る前に声をかけたときとそうしなかったときの 気持ちを話し合う機会を持つといった,行動的 な介入の援助も促されこれらが王氏の問題解 決を後押しもしてくれたと考えられる。 ③情報的サポート エピソード1下線部 (b)~担任の先生から王氏 に対しての支援』 出身国の文化の価値観で考え行動している王 氏に対して,担任の先生は日本での習慣(礼儀) を教え,日本の文化を理解するという大きな後 押しをしてくれたと読み取ることが出来る。そ して,担任教師は日本人の物の貸し借りに関す る考え方を伝え,問題解決の助言と手助けを与 えていることが考えられる。 ④評価的サポート エピソード 1下線部(副『担任の先生から王氏 に対しての支援』 担{壬の教師が国や地域によって,物の所有や 公私の別について考え方が違うこと,ほかの人 が自分の持ち物を使っても,勝手に使ったとは 考えない王氏の考え方を間違っていなく,悪気 はなかったのであると理解し,彼の出身国の文 化大切にし,彼に対して,彼の考え方,行動の価値 を保証したと考えられる。 (2)ソーシャルサポート支援の流れ エピソード 2:先輩がら王氏に対する支援『情 緒的サポート→情報的サポート』 「高校中退後,王さんは何もせず,昼間からゲ ームセンターに通うようになりました。そして そこで知り合った仲間と,目的もなく集まって は夜遅くまで騒ぎ,喫煙などの非行に及ぶよう になります」とエピソードにあるように,王氏が 高校を中退し日々に投げやりになっている状況 を中学校の先輩が自分も同じような時期があっ たと王氏の今の状況に共感し,なぐさめ・励まし ていると考えられる(~情緒的サポート~)。 エピソードより「でも,何か知識や技能がない と,アルバイト以上の仕事は見つかんないよ。ど うするつもり。俺は訓│締校に行けてラッキーだ ったけど。」と中学校の先輩の意見は王氏に対し ての具体的なアドバイスであり,これは問題解 決を促す助言であると考えられる(~情報的サポ ート~)。 第4章 今 後 の 課 題 ソーシャルサポートの視点を中心として分析 したが,支援はその視点だけで完結するわけで はなく,様々な視点での支援カ沼、要であろう。 今後の研究では,様々な視点で支援のあり方を 分析し,具体的な支援のあり方を探っていく必 要がある。