整数/組合せ計画法の現状(そのり
巡回セールスマン問題
1.問題 これまでの報告で重ねて指摘されたように,一般的な 整数計画問題に対して汎用性のある強力な解法は今のと ころ存在しないだけでなく,その本質的なむずかしさが 徐々に納得されつつある.そして,いきおい研究は特殊 な構造をもった問題へと向かっている.その中で巡回セ ールスマン問題については 1970年以降の研究に興味深い ものがある.本報告では 1970年以降の研究を中心に,そ れ以前の成果をも振り返りながら話を進めたいと思う. 巡回セールスマン問題とは,都市 t から都市 j へ行く のに必要なコストが Cij で与えられているとき,すべて の都市をちょうど一度訪れなければならないという条件 のもとで,旅行に必要なコストを最小にする訪問のJI原序 を求める問題である.つまり ,n
( 都市の数)個の頂点、と コスト Cij を付加された n(n-I) 本の枝とから成るグラ フ(図1.1 )で,最小コストの巡回路(各頂点をちょうど 一度通る閉路)を求める問題である. したがって巡回路のどの性質に注目するかが解法上の 1 つの要点となる. 図1. 1 対象とするグラブ 1979 年 5 月号 整数計画法研究部会山本芳嗣 n(n-I) 次元のベクトノレ x=(X12, X1S, …, :Cn,ト 1) に対 して,校集合 S(x) を, S( ぉ)=
{
(
i
,
j)I
Xij キ O} と定義すると,巡回セールスマン問題 PS は, ィ J ts
., J t c ηZZ 4J4J πZ4 t レ u , a,
、 -a d 』, 最条件
E"36j=1(s=I
,
L
,
n)
、l
j j=1 キ4f
:
Xij=1{j =1
, 2,・
",
n)
i=l 1キj (1. 2) 校集合S(x)の作るグラフは連結 (1.3) Xij は0 あるいは 1 (i, j=I ,2, "',河) (1.4) と書ける.この問題から条件(1.3) を取り除くと,よく 知られた割当問題となり,条件(1. 2) を, nL
:
(Xij+Xji);:;;1(i=
1, 2,… , n) j=l j キる で置きかえると, (Cij>O のもとで)最小コストの木(3 節参照)を求める問題となる.したがって,条件(1. 2)に 注目するか,条件(1.3) に注目するかで大きく 2 種の方 法を考えることができる.2
.
割当問題を用いた算法 割当問題の実行可能解zについて S(x)の作るグラフ は一般に図2.1のように部分巡回路(長さn未満の閉路) がいくつか集まった非連結なグラフとなる.したがって 割当問題に部分巡回路を含まない条件L
:
Xu豆
ICI
ー 1
(長さn害満のすべて) (2. 1) (i,Jreri'
iJ=
=
I V I - ! \の閉路Cについて/ あるいは連結性の条件 /ゆキVc{1,2,…,却}\L
:
L
:
Xi;;:;;1 なるすべての頂点集I (2.2) ieV jey \合Vについて / を付け加えることによって巡回セールスマン問題を表わ すことができる. ここで , ICI は閉路 C の長さを表わ す.これを一般的な解法で解けばよいことになるが,条2
8
3
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.図 2.1 部分巡回路 件 (2.1) , (2.2) はいずれもをの個数がぼう大なうえ,割 当問題のように容易に解ける問題ではない.したがって, 分校限定法で部分巡回路を排除するように分校を行ない ながら,繰り返し割当問題を解く算法が考えられる.今, (1
,
2),
(2,
3),… ,
(k ー l , k) ,(k,
1) を割当問題を解いて得 られた部分巡回路とすると,全都市を訪れる巡回路では X12=O,
X23=0, …,
Xk-1.k=0,
Xk.1=0 のいずれかが成り 立つから, P1 :x
12= O P2 : X23= 0 Pk : Xk1=0 なる k 個の部分問題に分枝する方法が考えられる. この分校によって作られた部分問題の実行可能領域は 互いに排反ではないが, P1 :x
12= O P2 : X12= 1,
X23= 0 Pk : X12=X23=…
=Xk-1.k= 1,
Xk.1 = 0 とすれば排反にできる [3 ].また,巡回路であるために は 1 , 2 ,… , k の内の少なくとも l つの頂点から 1 , 2,…, k 以外の頂点、へと路が延びていなければならな L 、から P1 : x1j=O (j=1,
2,…,
k, j キ 1)
P
2: X2j = 0 (j=1,
2,…,
k
, j キ 2)
P
k : Xkj=O (j=1,
2
,… ,
k
,
j キ k) と分校することもでき,この分校法は前の 2 つの方法と 比べてより多くの部分巡回路を排除できる [3]. さらに,P
1: X1j = 0 (j=1,
2,…,
k
, j キ 1)
P2 : x1I=0 (1 キ 1 , 2 ,… , k) X2j = 0 (j= 1,
2,…,
k,
j キ 2) Pk : X1I =X21=…
=Xk-1.1=0 (1 キ 1 , 2,...,
k) Xkj=O (j=1,
2,…,
k
,
j キ k) とすれば,やはりこれら k 個の部分問題の実行可能領域 を排反にできる [10]. すべてのた j について Cij=Cji なる問題をとくに対称 問題といい,この問題についても以上の方法をそのまま 用いることができるが,対称性により i<j について変 数 X(j を用意すれば十分で,条件(1. 2) , (2.2) はそれぞれL
:
X11+L
:
Xjk=2 (j= 1,
2,… ,
n) (2.3) i<jj<k-L
:
_Xlj 孟 2 ((.jle<V,yl (2.4) に置きかえることができる.ここで, (i,
j) ε (V, V) は i E V, j
E V あるいは iEV, jEV のいずれか一方が成り 立つことを示すものとする. Miliotis [23,
24J は対称 問題を, O.(1.
1), (1.
4),
(2.3) を解く.1
.
条件 (2.4) の中で,その解によって満たされてい ない制約を捜す. 2. その制約を付け加えた問題を解き1.へもどる. という手"闘で解いているが,手順 0 と 2 で整数解を得る ために Gomory カットを用いた方法では, 0~100 の乱 数でコストを与えた90都市の問題 2 題を CDC7600 を用 いて, 4 秒足らずで解いている.しかも,報告されている 17題のいずれについても必要としたカットの本数は 30本 未満であることは注目に値する.また条件(1.4) (2.3) を 満たす解はbーマッチングとよばれ, Edmonds-Johnson [9J によって問題(1. 1) ,(1.
4),
(2.3) を解く高々o
(n4) の手聞の算法が提案されている. Bellmore-Malone [3J はこの算法を用いて UNIVAC 1108 で30都市の乱数コ ストの問題を 5 題,平均 32 1. 6 秒で解いたと報告してい る.3
.
最小コストの木と巡路 話を簡単にするため,しばらく対称問題だけを扱うこ とにする.われわれが前節で扱ってきた問題では,セー ルスマンはすべての都市を巡った後,出発した都市にも どって来ることになっていたが,都市 l から都市 n へ向 かつて,すべての都市をちょうど一度通過してゆく路 (これを巡路という)を求める問題 Ps' 最小化L
:
.
CtjXtj t<1 条件 L: Xij+L
:
Xjk=2 4 く j く k n-1L
:
X1j = 1 J=2 n-1.
L
:
Xjn= 1 1=2 (j=2,
3, ...,
n ー 1) (3. 1) (3.2)L
:
xiJ 孟(3 .3) (i,
j)e(V,
v)-を考えよう.連絡で閉絡を含まず,すべての頂点をつな ぎあわせている部分グラフ T をそのグラフの木(極大木) とよび,そのコスト C (T) を木に属する校のコストの総 和とする.また, C(T,(ρ, q)) を木 T に枝 (p, q) を付け 加えたときにできる閉路の校集合, D(T
, (s, t)) を木 T
D(T.(s. t)) 図 3.1 太線を木 T とすると,横に破線の引かれた 閉路が C(T, (p, q)). 一点鎖線の交わる校集 合が D(T, (5, t)) である. から校 (5, t) を取り除いたときにできる 2 つの部分木を 結ぶ校集合とすると(図 3. 1), T が最小コストの木であ ることと, (i) T に属さない任意の校 (p, q) について, cpq=max {c/j
I
(i,
j
)
e C(T,
(p,
q))},
(ii) T に属する任意の枝 (5, t) について, c.e=min{Cjjl (i,j)
eD(T,
(5,
t))},
のそれぞれが同値であることが知られている.これらの 性質から最小コストの木を求めるためのつぎの 2 つの算 法を導くことができる. Kruskal の算法 [21JO
.
T= ゆ, F=E( グラフの校集合)とする. 集合とする.O
.
.
9
'
=
{PS '},
u= + ∞とする.1
.
.9'=併なら終了 (uを達成している巡路が最小コスト の巡路上そうでなければ2. へ.2
.
タの中から問題 P を選びタ=ター {P} とする.3
.
問題 P のコストの下での最小コストの木を作り, c(T) 孟 u なら1.へ. c(T) くu dl(T)=dn(T)=I,
d/(T)=2 (i キ I , n) なら u=c(T) として1.へ.そうなければ,ム (T)>I あるいは dπ (T)>I となっているか, ddT)>2 なる 頂点 i が存在するので,その中の 1 つの頂点を j とす る . Oj(T) のそれぞれの校のコストを+∞と修正した dj(T) 個の問題をタに付け加えて 2. へ. 今,コスト C=(C/j) のもとでの最小コストの木 T に 関する頂点 t の次数が ddT)>2 であるとする.このと き頂点 t に接続する枝のコストだけを一律に C'/j=CjJ+ π と上げると,新しいコスト C'=(C'jj) のもとでの最小 コストの木 T に関する頂点 t の次数 ddT') がめ (T) よ りも下がることが期待できる.しかも,このようなコス トの修正を行なっても巡路間のコストの大小関係は保た1
.
cpq=min {Cjjl(i,
j) e F} なる枝 (ρ, q) を選び, TU れる.実際 π=(πhtr2, .",1I'n) によってコストを, (ρ, q) が閉路を含まなければ T=TU(ρ, q) , F=F- C'jj=C/j+町 +πj(
3
.
4
)
(p, q) として 2. へ.閉路を含めば F=Fー (p, q) として 1.へ. 2. ITI=n-1 となったら終了.そうでなければ1.へ. Prim-Dijkstra の算法[8 ,3
0
J
O
.
任意に 1 つの頂点, たとえば頂点 1 ,を選んで U= {I},
T= ゆとする.1
.
U に属きない頂点 j について ん =Cj(jl.j=min{
c
j
J
I
ie
U}
を求め,頂点 j にラベル [i (j), ßjJ を付ける. 2. ん =min{んJj<$U} なる頂点 k を選ぴ, U=UU {k},
T = TU
(i(k),
k) とする. 3. IUI=n となったら終了.そうでなければ 4. へ.4
.
U に属きない頂点 j で ん >Ckj となる頂点 j のラベルを [k, CkjJ に変えて 2. へ. これらの算法の計算効率については[7]に詳しい議論が されている.このように簡単に最小コストの木が求まる ことと,巡路が 1 つの木であることを用いると,つぎの 分校限定法による算法を考えることができる. ここで ìldT) は頂点 t に接続する木 T の校集合, ddT) はその 本数(頂点 i の T に関する次数)を表わし,タは問題の 1979 年 5 月号 と修正した場合を考えると , c(Htl ;;;'c(H2) なる 2 つの 巡路 Hb H2 について c' (Htl = .I
:
_
_
(Cjj+ π汁 11:j) (i,j)eHl 旬 -1I
:
Cij+ (π1+2I
:
1
1
:
i+1
1
:
n) <i,
J)eHl i=2 n-l 2三I: cij+ (π1+2I
:
11:/+πη) ぱ .JleH2 /=2I
:
(Cil+的 +11: I)=c'(H2) (i,
j leH2 が成立する.C
h
r
i
s
t
o
f
i
d
e
s
[5
,
6
J は以上の性質を用い て,頂点罰金法と名付けた発見的算法を提案している. O. 十分大きな正の数 M を用いて, 11:1=πn=M, 的 =0 (i キ I , n) として (3 .4)によって C'=(C'jj) を作る(この修正によ りコスト U のもとでの最小コストの木に関する頂点 1,
n の次数は必ず 1 となる).1
.
C' での最小コストの木 T を求める. 2. ddT) =2(i=2, 3 , … , n- I) であれば T は最小コス
トの巡路となるので終了.そうでなければ何らかの方 法で罰金 π=(π2 ,1t'a,… ,11:n-1) を決めて C'/j:=C'ij+ 11:i+ πj として1.へ.2
8
5
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.この算法によってかなり効率良く最適解が得られたと 報告されている(前金をつぎの (3.5)(3.6) によって決め た場合には, 1O~60都市の乱数コストの問題が 33題解か れており 60 都市問題 3 題の平均反復回数と平均時間 は CDC 6600で, 111 回, 13.6秒である)
[6
]が,残念な がら常に最適解を作り出すとは限らないことが示されて いる [16]. 罰金 π の決め方としてつぎのようなものが提 察されている. ( i) r>O を用いて, πi=r(ddT) ー 2) ddT)>2 なる頂点 t について 向 =-r ddT) =1 (i キ l , n) 11(
i
i
)
反復ごとに r:=a'r(O く a< l) として (i) を用いる.(
i
i
i
)
ゐ (T)>2 の場合ゐ (T) の校 (s, t) それぞれについ て, Ciωjω=min{CijI
(i,
j)E
D( T,
(s,
t)),
J,
J キ s} e ト (3.5) を求め π.=min {Ci(t )jω -C. tI (s,
t
)
E
0.( T)} } とする. d.(T)=1 の場合は頂点 s に接続する T に属さな い校 (s, が)それぞれについて,Ci(tl )j(tη=min{Cij
I
(i, j) ε C(T, (s,
t')),
ì 脚注J
,
J キ s} を求め e ト (3.6)1
l
:
.=max
{Ci (tlげはり -Cst, 1 (s,
t') <$T} とする.4
.
最小コストの“ 1-木"と巡回路 前節では巡路が 1 つの木で、あることを用いて問題 Ps' を解く算法について話してきたが,つぎに同様な考え方 を問題 PS にも応用してみよう.そのためには,巡回路 に対して木に相当するものを見っけなければならない.Held-Karp [16
,
1 7]はそのような性質をもつものとし て“ト木"を定義している.グラフから 1 つの頂点,た とえば,頂点、 1 ,とそれに接続する枝集合,ム,を取り 去ったグラフ G1
を作り , G1
の木と 01 の任意の 2 本の枝 とをあわせたグラフをト木と定義する(図 4. 1).この定 義から明らかなように巡回路は 1 木である.そのうえ, 最小コストのト木は G1の最小コストの木と 01 の最もコ ストの小さい 2 本の枝をあわせて作ることができる.ま た,罰金 π を用いて (3.4) によってコストを修正しても ds(T)>2 の場合の町の決め方にならえば, Ci (tl )j(t円 =max{cijl(i,j) EC(T,
(s, t')) , i, j キ s} とすべきである.2
8
6
図 4.1 1-木 やはり巡回路のコスト相互の大小関係も変わらない.し たがって前節の頂点罰金法を問題 PS
に対しても適用で きるが,ここではこの算法を違った角度からながめてみ ることにする.前節でも触れたように頂点罰金法では必 ずしも最適解が得られるとは限らないので,最適解を得 るには分校限定法を用いざるを得ないが,その際,部分 問題の最適解の良い(なるべく大きな)下界を求めるこ とは限定操作のうえで重要である.すべての 1-木に 1 , 2 , … , k, … , K と番号を付け,コスト C のもとでの k 番目 の 1-木 Tkのコストを Ck> 問題 PS
の最適解H* のコス トを C* と書くと,コスト Ci/=Cij+ 町 +πj のもとでの n n それぞれのコストは Ck+L
;
1l:iddTk) , げ +2 L; πt とな る.したがって H* が 1 つの 1-木であることから, n nc*+2
L
;
1l:i 主主 min{Ck+L
;
πiddTk) Ik=I,
2,
…
,
K} なる関係が得られる. つまり, 的k=ddTk) ー 2 , Vk= (V1k> v2k>"',
Vnk)t とすると, n も C* ミ;;;min{ck+ L; 町 ddTk)I
k=I,
2,
…
,
K}-2L;1l:
i=min
{Ck+ πtVkl k=I,
2,
…
,
K} が任意の π について成立する.ここで, w( π)=min
{ck+ πtVkl k=I,
2,
…
,
K} (4.1
)
とすると最良の下界を求めるためには, 最大化叩 (π(4.2) を解けば良いことになる. (4. 1)からわかるようにこの 問題は区分的線形凹関数の最大化問題である.図 4.2 の 1 本の直線(実際は n 次元超平面)が 1 ;本のト木に対応し ている.とくに巡回路では Vk=O であるから,1r軸に平 行な直線が巡回路に対応していることがわかる. 図 4.2 (a) のようにうまく π を決めるとコスト Cij+町+町での 最小コストのト木が巡回路になる(したがって問題 PS の最適解)こともあるが,一般には図 4.2 (b) のようにど のように π を決めても巡回路が最小コストのト木として 現われない場合がある.この場合には分校を行なう必要 があるが,それは巡回路に対応する水平な直線を下から おおい隠している何本かの直線を取り去ることに対応し ている.ω(π) 図 4.2(a) w(π) 新しい変数却を用いれば,問題 (4.2) は線形計画問題 最大化 ω 条件叩孟 Ck+ 炉内 (k=I , 2 , … , K) に書き直すことができる.この双対問題 b 品 目 s b h
c
K Z M レ u , a1 ・ 、 E E E J ' ,, 最 条件 Yk;?'O(k=
1, 2,… , K) K K L:Yk=l
, L:(-Vk)Yk=O
k
=
l
k
=
l
を改訂単体法を用いて解けば,初めにすべてのト木を 知っている必要がないうえ,価格ベクトルを (0,11:10 11:2 , …,11:η) とすると新しく基底に入れるべき列ベクトル (1 , -V1k , … , -v叫 )t を求めるには, " n nCk 一 {O-L:1I:
i
Vik}={Ck+
L: πidj{ Tk)} 一 {0+2 L:町} を最小にする 1-木を求めれば良いことになるが,結局こ れは Cij+ 町 +1I:j のもとでの最小コストの 1-木を求める ことになる.残念ながらこの算法の収束は遅いことが知 られている [16J. Held-Karp は問題 (4.2) を π叶 1=πν+ε(πν, d ν) ・ dν(
4
.
3
)
と反復法で解くことを提案している.彼らが [16J で示し た方法は,目的関数 w(π) の炉での上昇方向 d" を求め 区分的線形関数 w(π) の区切り目まで dν 方向に進むよ う ε(πν, dν) を求めて, (4.3) で炉+1を決め,……という ものである .T をト木とし , T の校 (s, t) と T に属さな い校 (i, j) について , TU(i, j) ー (s, t) が再びト木となる とき 2 本の枝が交換可能であるとよぶことにすると, ε(πν , dν)=min Cst+ πsν+π♂キ Cij+ 1I:i"+ πf あるいは ds"+dt" キ di.+dj• となる , T に関して交換可能な校 ω(π) π 図 4.2(b) 叩 (π) Cst+ π♂ +πt.+ ε (ds.+dt.) =Cij+ πr 十 πj.+ ε (di"+dj.) となる e. と選べぽ良いことが示される. また彼らはつぎのような反復法を提案している [17J. 今,iiJ く maxw(π) を目標値として設定し,叩 (π) ミ~W な る π を見つける問題を考えると,この問題は凸多面体 P面 ={π Jw(π) ミ~iiJ} ={πJ ck+ πtVk ;?,iiJ (k=1
,2
,…, K)} の 1 点を見つける問題となる.Motzkin-Schoenberg
[
2
5
J
.
Agmon[ 1
J は一般的な凸多面体A={xJ αitx三五九
(i=I
,2
, …, m)} の点を求める反復法として,O
.
初期点、がを与え, ν=0 とする. 1. x. が満たしていない制約の内で超平面 Hi={xJait x=btl までの距離が最大のものを選び Hん〉とする.2
.
a.=(biω-ai(.)tx
.
)
/
I
I
a
t
c
.
)
11' として , 0< ,1 主立を 用いてお叶 l=Xν +Àa.aiω とし ν.-ν+1 として1.へ. を提案しており,こうして作り出される点列 {x.} が,(
i)
xν キ%&1 +1ν=0 , 1 ,.・.)(ii) A の任意の点 U について IIx.-yll ;?, IIxV+1- yll (ν=0, 1 ,…) なる性質をもっ(このとき点列 {x"} は A に関して, Féjer 単調であるという)ことを示して彼らの算法の収 束を保証している Pw の 1 点を求める問題についても, k(π) をコスト Cij
+
1I:i
+町のもとでの最小コストの 1 一木 の番号とし, 0<ε く À.~玉 2 か =λν ( iiJ ー即(伊 ))/IIvk(炉)112 として, π叶1=πν +t.Vk( πν)(
4
.
4
)
によって点列{伊}を作ると, {伊}は P面に関して Féjer 単調であることが示せて(図4.4). {π.} は有限回 の対 (s, t)E T と (i,j)*
'
T が存在 で P面に入るか, P面の境界に収束するかのいずれかが して, 成立する.Held-Karp
[17J は (4.4) で t.=i( 一定)とし 1979 年 5 月号 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.2
8
7
1T レ 図 4.4 P面と点列 {πJ て条件,サイズの異なった 19題の対称問題を解いている が,分校を行なう前に得られた下界は最適解の値に非常 に近く,両者の差がないものが 7 題あったことが報告さ れている.その後この算法の改良が提案されており [15 , 32J ,たとえば [15J には IBM 360/75 を用いて 70都市の 乱数コストの問題を 15題平均78秒で解いたと報告されて いる.これまで,話を対称問題に限ってきたが,非対称 な問題についても条件(1.3)を, 8(31) はト木である に置きかえることができる.その際
O(λ, μ) =min{ck+1tYk+ 戸 Zkl k=I , 2 , ・ ., K}
(
4
.
5
)
を最大にする 1, μ を求めれば最良の下界が得られる [2 ].ここで,頂点 t から出る (i に入る )1-木 T の枝の 本数を di+(T) (ddT)) とすると Yk=(d1+(Tk) ー 1 ,… , dn+(Tk) ー l)t zk=(d1-(Tk
) ー 1 ,… , dn-(Tk) ー I) t である.この算法によって UNIVAC 1108 を用いて, 60都市の乱数コストの問題が約35秒で解かれている. 本節で述べた算法は Geoffrion [IIJ のラグランジュ 緩和法(第 3 回報告の双対法参照)の一種であり,ラグラ ンジュ変数え, μ を介して目的関数(1. 1)に条件(1. 2) を 組み込んだものが (4.5) で,ラグランジュ変数 π を介入 して(1. 1) に条件 (2.3) を組み込んだものが (4.1) である. そして,いずれについても目的関数に組み込まれずに残 された条件 r8(x) はト木である」は第 3 節で述べたよ うに元問題と比べて非常に扱いが容易であることがこれ らの算法の効率に寄与している.5
.
その他の話題 巡路(巡回路)は各頂点の次数が 2 あるいは 1 と定めら れた木(ト木)であるから,次数が制限された最小コスト の木(ト木)を効率良く求めることができれば前節の算法 を加速できる見込みがある.Glover-Klingman[
12J は つぎの 2 つの事実を示している. Y(m)={TIT は木, ddT)=m} とし, T を Y(m) の中の最小コストの木とする. (i) I(i,j)eò
,- T
Cpq一
cu=min イ C(j 一 Ck!I
(k,
l)e
C(T, (i, j)) ト
I
-メl とすると , T'=TU (P, q) ー (s, t) は Y(m+ 1) の最 小コストの木である. (ii) l(k,
l)eòdT)
Cpq 一cst=min1
Cij-Ck!1(i,
j
)
e
D(T,
(k, l)) ト
I
-メl とすると , T'=Tu (P, q) ー (s, t) はもグ (mー 1) の最 小コストの木である.(
i
)
(ii) を用いれば,次数に制限のない最小コストの 木から出発して,指定された次数をもっ最小コストの木 を作り出すことができる . Y(m) の最小コストの木を求 める問題はグラフの校集合上に定義された 2 つのマトロ イド(グラフ的マトロイドと分割マトロイド)の最小コ ストの共通基底を求める問題に定式化でき,その問題の ための算法もいくつか提案されている [13 ,19
,
2
2
]
.
Murty[26
,
27]は巡回路と割当問題の基底解の関係に 注目し, n 互 31(j=1 (j=1
,
2
,"',
n)
πI
;
Xi.i=1 (i=I,
2, …,
n) j= n n E 五 Ctj 3lij=ß の作る制約行列で,変数:V1h.1:22,… ,
Xnn,
Xiljh 3Ji2jZ,…,
XtnJn
に対応する列が実行可能基底を作るとき,(i
"jIl,
(i
2
,
j2)
, "',
(in, jη) はそのコストが P 以下の巡回路である ことを示している.彼は,あらかじめ指定された列(こ こでは変数 Xu
, Xzz,… , Xnn
に対応する列)を含む実行可 能基底を求める問題を基本問題と名付け,最小被覆問題 (第 5 回報告参照)を繰り返し解いてゆく,本質的には列 挙法的な算法を提案しているが,計算結果は報告されて いない.巡回路に対応する 0, 1 ベクトル 31=
(3112,
3113,
…,品川ー 1) の集合を XH
, その凸包を coXH と書くこ とにし, 一対の巡回路 Hl' H2 に対応するベクトルが coXH上で隣接しているとき , H1 と H. が隣接している ということにする.(
_JH は巡回路.Hキ H" Hキ H2•) ~..=iHI
__ト 日 I HlnH.çH~HIUH.. とし , He 身グ12 に対して,H=(H
1nH.)
U(H
1U H
2-H)
が巡回路であるとき , H と H の組を補巡回路対とよぶ.Rao[3 1]は I 12I 豆 1 なら H1 と H2は隣接しており, H1 と H2が隣接しているなら æ'12 は補巡回路対を含ま ない(だからといって 1 æ'121 孟 l とは限らなし、)ことを 示しているが,いずれの条件も必要十分ではない.実は 一対の巡回路が隣接しているかどうかを判定する問題は NP 一完全(第 6 回報告参照)であることが示されている
[
2
9
J
.
ところが H1から始まり H2で終わる互いに隣 接した巡回路の列の中で最短のものの長さをd(Hh
H2) とし , COXH の直径を,P(COXH)
=maxd(Hし Hj) と定義する p(COXH) 話 2 とであることが示されている[
2
8
]
.
6
.
おわりに 本稿では数多い発見的算法についてはほとんど取り上 げることができなかったが,これまでに述べた算法を用 いて最適解を求める場合にも,発見的算法によって初め に良い実行可能解を知っていることは限定操作のうえで 非常に重要であることを付け加えておく.興味のある読 者は総合報告[4 J ,文献表[14, 20J を参照していただき たい.最後に原稿に対し貴重な御助言をくださった整数 計画法研究部会の方々に感謝いたします. 参芳文献[
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