コミュニティ・ケア概念の変遷 : 新たなケアの展開に向けて
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(2) ―7 4―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. である。答申はコミュニティ・ケアについて「コ. である。3つめはコミュニティ・ケアを、コミュ. ミュニティにおいて在宅の対象者に対し、そのコ. ニティを基盤とした住民による自主的な問題解決. ミュニティにおける社会福祉機関・施設により、. の方法=コミュニティオーガニゼーションケアで. 社会福祉に関心を持つ地域住民の参加をえて行わ. あると理解する考え方である。この立場の代表は. れる社会福祉の方法である。そしてそこでは、社. 阿 部 志 郎 で あ る。阿 部(1973)は、「コ ミ ュ ニ. 会福祉の各種サービスがコミュニティ単位に有機. ティケアとは、コミュニティ〈互いに重荷を負い. 的に統合されなければならない。社会福祉の諸活. 合う〉と、ケア〈面倒をみる、放っておけないこ. 動は、大きくは、このコミュニティ・ケアと施設. と〉の合成語であるから地域で、住民が放ってお. などで行われる収容された対象者に対するインス. けない事柄に対して、互いに責を負い合うことに. ティチューショナル・ケアに区別される。 」と定. なろう。……従って仮説として次のように表現で. 義する。対象はコミュニティにおける在宅生活者. きようか。『一定の地域で、組織化運動を通し. であり、実施主体は組織レベルとしては行政およ. て、住民が相互の福祉を守るための具体的サービ. び社会福祉事業機関・施設、個人レベルとしては. ス活動を基盤とし、福祉問題に対する公私の責任. それらの機関で働く専門社会福祉事業従事者とし. 分担と組織・施設の体系化をめざす社会福祉の方. ている。ただし、コミュニティ・ケアの規定はあ. 法である』 (阿部,1973,p.158)。」と定義する。. くまでも暫定的であるということが繰り返し答申. 阿部の特徴は、東京都や三浦とは対照的にコミュ. の中で述べられている。2つめはコミュニティ・. ニティ・ケアの実施主体を住民自身としているこ. ケアを収容施設、中間施設、在宅ケアを含む専門. とにある。ただし、社会福祉サービスが公的機関. 的ケア体系としてとらえようとする考え方であ. もしくは、委託を受けた社会福祉法人によって行. る。この立場の代表は中央社会福祉審議会答申. われていた体制であったこの1970年代前半という. 「コミュニティ形成と社会福祉」であり、研究者. 時期、コミュニティ・ケア論の大勢は後で詳述す. として は 三 浦 文 夫 があ げ ら れ る。三 浦(1 973). る岡村の地域福祉論も含めてコミュニティ・ケア. は、収容施設はもともと救貧施設としての生活保. の実施主体に公的機関を第一義に位置づけてお. 護機能であったが、現代の福祉ニードはニードの. り、阿部のコミュニティ・オーガニゼーション・. 充足、能力の維持、回復、開発を図る機能を施設. ケアを理想論として批判する意見もあった(前. に求めることとなったとしている。このような機. 田,1974)。. 能変化の要求に関連して通園施設が増加し、その. 井岡はこの3つの考え方の類型はそれぞれの実. 場において治療・教育・訓練・リハビリテーショ. 施主体の捉え方、対象、実施の場について見解の. ンが行われるようになってきた。これらの施設は. 相違はあるものの対立構造ではなく、それぞれが. 従来の意味の収容施設とは区分され、むしろ居宅. 補完関係にあるとする。 「たとえば第一類型を. サービスを補完するものとして居宅サービスに連. ベースとして、第二類型がこれを補強した専門的. なるものとすることが出来る。つまり収容施設と. ケア体系を示し、さらに第三類型がそれらの展開. 対置するコミュニティ・ケアではなく、ニードの. 基盤ないし住民主体の原則をしめすというよう. 多様化からの要請に応じる形で地域の中に展開す. に、いずれの類型もそれぞれ別個では一人歩きで. る、施設機能の総体(収容施設+中間施設+在宅. きないのである(井岡,1975,p.17)。」. ケア)としてのコミュニティ・ケアという構図が. 3つの考え方の背景には、収容保護が個人の社. 描かれている。コミュニティ・ケアの対象は1つ. 会関係を断ち、社会から隔離してしまうというこ. めの考え方と同じくコミュニティにおける在宅生. とへの反省があり、地域の中で在宅ケアへと社会. 活者である。また実施主体についても公的職員の. 福祉の実践を転換していくという方向性は共通の. 責任を第一義とするところは1つめの考え方と共. ものであるといえる。目指す方向性は同じベクト. 通する。しかし施設機能に着目し、施設機能の地. ルを持っているが、違いは、むしろその推進戦略. 域への開放、展開をコミュニティ・ケアに包摂す. に在ると理解することが妥当であろう。. る点が、東京都社会福祉審議会の考え方との違い.
(3) October 2 0 0 7. ―7 5―. 2)岡村地域福祉論におけるコミュニティ・ケア. 隣人や地域住民の相互扶助体制を必要とする、. ではここで、改めて日本の地域福祉論に多大な. まったく新しいケア方式である。したがって単な. 影響を与えてきた岡村重夫の地域福祉論(岡村,. る「在宅者サービス」ではなく、英語でいわれて. 1974)に み る コ ミ ュ ニ テ ィ・ケ ア の 論 述 を レ. いるように「「コミュニティ・ケア」 (community. ビューし、岡村のコミュニティ・ケアの位置を確. care)という新しい用語がむしろ適切である(岡. 認したい。. 村,1974,p.42)。」として対象者と地域構造の. 定藤(1986)が指摘するように、岡村は『地域. 双方に着目している。効果的なコミュニティ・ケ. 福祉論』においてコミュニティ・ケア論を中核と. アを実行するためには、地域福祉構造をコミュニ. して地域福祉の体系図を明らかにしたことによ. ティ型地域社会に発展させるような力動が必要で. り、その後の地域福祉研究に多大な影響を与え. あり、そのためにコミュニティ・ケアと地域組織. た。まず、コミュニティの捉え方についてである. 化活動とを下位概念とする、「地域福祉」という. が、岡村はコミュニティの捉え方として、都市化. 上位概念が必要であるとしている。. 状況のもとではひとつの地域社会が一つの「コ. 岡村は、コミュニティ・ケアの運営について住. ミュニティ」を形成しているのではなく、人々の. 民参加は不可欠であるが、だからといって住民に. 関心の多様性に応じて成立する各種の集団の成員. ケアの実施責任を押し付けるということではな. がもつ「同一性の感情」にもとづいて同じ地域社. く、あくまで責任主体は公的機関であるとする。. 会のなかにも多数の「コミュニティ」が成立する. またコミュニティ・ケア実施の場は在宅に限ら. としている。そしてそれらコミュニティの中でも. ず、地域の中での個人の身辺自立を支援するため. 社会的不利条件を持つ少数者の特殊条件に関心を. に施設ケア、中間ケア、在宅ケア、アフター・ケ. もち、これらの人々を中心として「同一性の感. アをバラバラに引き離さず統合的にとらえ、個別. 情」をもって結ばれる下位集団が「福祉コミュニ. の状況に応じてケアを提供するとしている。ケア. ティ」であるとする。. の実施主体として公的責任を第一義とする点、ま. またコミュニティ・ケアについて、 「対象者自. たケアの場を在宅に限らず統合的に施設の社会化. 身とその家族の生活条件の全体を把握するという. を含めて捉えている点は、三浦文夫と共通してい. 社会福祉固有の視点にたちながら、彼らの生活. るといえるだろう。しかし岡村のコミュニティ・. ニードを総合的に充足することが必要である。そ. ケア論の最大の特徴は、 「同一性の感情」に基づ. れは単一の福祉機関によって実施できるものでは. いた地域組織化と公的責任をもって個別対応サー. なくて、地域社会にある各種のサービス機関・団. ビスとして実施されるコミュニティ・ケアとの関. 体施設の密接な共同と調整によってはじめて可能. 係を不可分とし、共に地域福祉の構成要素として. であり、また生活上不利な条件を持つ者に対する. 位置づけていることにある。コミュニティ・ケア 対. 象. 者. %$&$'. ! $$$$ $"心身障害者 $$$$$ # 児童 老人 その他 ↓ ↓ ↓ ↓ コミュニティ・ケア → 児 → 老 → 障 → そ の 害 童 人 他 一般地域組織化 → 者 → 地 → 地 → の 地 地 域 域 域 福 祉 組 織 化 → → 域福 福 → 福 → 福 祉 予防的社会福祉 → → 祉 → 祉 → 祉 %$$$$$ &$ $$$$' 分 野. 構 成 要 素. 出典:岡村(1 9 7 4)『地域福祉論』p.6 図1.岡村地域福祉論の地域福祉構成要素.
(4) ―7 6―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. のみでは是正できない地域からの疎外を防ぎ、隣. 祉政策と経済との関連においても示唆が多い。. 人として受容し支持することがコミュニティの役 割だとし、サービス提供の安易な責任転嫁をコ ミュニティに対して行うことに岡村は警鐘を発す. 2.コミュニティ・ケアから在宅福祉 サービスへの展開. るのである。 1)社会福祉協議会の方向性 3)コミュニティ・ケアへの批判. 1970年代前半のコミュニティ・ケア論からの流. 以上見てきたように、1970年代前半はコミュニ. れの中で、1970年代後半、要援護・介護層に対象. ティ・ケアを主軸とした答申が相次いで発表さ. を限定した在宅福祉サービス論が台頭してきた. れ、三浦、岡村はじめ各研究者が活発にコミュニ. (定藤,1986)。定藤が指摘しているように、1979. ティ・ケアをめぐって議論を行ってきた。しかし. 年全社協から刊行された「在宅福祉サービスの戦. 1970年代後半以降、地域福祉に関する議論の中心. 略」がその展開の一つのエポックメーキングの役. はしだいにコミュニティ・ケアから在宅福祉サー. 割を果たすものと思われる。1970年代後半に、全. ビスあるいは福祉のまちづくりへと論議がシフト. 国社会福祉協議会(以下、全社協)は「在宅福祉. していくこととなる。またコミュニティ・ケアに. サービスのあり方に関する研究委員会」を設けて. 対する批判的な見解も見られるようになる。鈴木. 論議を重ね、1979年に前述した「在宅福祉サービ. (1981)は「コミュニティ・ケアはイデオロギー. スの戦略」を刊行した。永田(1988)はコミュニ. か方法か」と題する論文で、コミュニティ・ケア. ティ・ケアと組織化が事実上一体化しており、地. が社会福祉ニーズの多様化、複雑化を背景に、あ. 域福祉とコミュニティ・ケアとの関係が明確でな. る種イデオロギー的期待を一身にうけて登場した. いとし、現在まだ進行形の在宅福祉体系を明確に. 言葉だとしている。しかし、現実にはコミュニ. するためには、在宅福祉サービス部門を明確にし. ティ・ケアの推進の前提となるべき社会資源の整. たほうがわかりやすいということを、全社協が在. 備や専門職の養成などが遅れているとして理念と. 宅福祉サービスという用語をコミュニティ・ケア. 実践の乖離を指摘している。また谷口(1980)は. の代わりとして戦略的に使用する理由として述べ. 「コミュニティ・ケアの虚像と実像」という鈴木. ている。全社協が示した地域福祉の構成要素は図. と共通性のあるタイトルの論文の中で盲重複障害. 2の通りである。. 児への調査を通じ、コミュニティ・ケアの理念の. 岡村が示した地域福祉の構成要素の中のコミュ. 美しさに比して、それを支える実際の基盤整備の. ニティ・ケアを在宅福祉サービスと置き換え、予. 脆弱さを批判的に検討している。この時期にみら. 防的福祉もサービスとして在宅福祉サービスの中. れるコミュニティ・ケアに対する批判的な論文に. に包摂した構図となっており、在宅福祉サービス. は、ティトマスの「コミュニティ・ケア―現実か. の拡充、施設の社会化に貢献し、拡大化するサー. 虚構か」がしばしば引用されており、鈴木、谷口. ビス事業の管理運営機能の強化をめざす、いわゆ. の両論文のタイトルにもティトマスからの影響を. る「事業型社協」路線の方向性が明示されてい. はっきりと見ることが出来る。コミュニティ・ケ. る。鈴木(1989)は1987年当時、社会福祉協議会. アを日本に先んじて政策的に推進してきたイギリ. がすでに在宅サービス実施主体として、全サービ. スにおいても、コミュニティ・ケアは理想論であ. ス量のかなりの割合を担っているデータを示しこ. り、安上がり福祉のスローガンにされる可能性の. の流れを肯定的に捉え、社協の事業は市民活動の. 指 摘 が な さ れ て い た(田 中,1978) 。コ ミ ュ ニ. 援助、組織化が基盤となることは第一義である. ティ・ケアが公的責任の回避のすり替えとなる危. が、それだけではもはや社協は機能し得ないとす. 険性について「コミュニティ・ケアは社会福祉施. る。「わが国の福祉が在宅福祉サービスの開拓に. 策を支える財政的要因との関係がとりわけ重要で. 将来をかけているとすれば、地域福祉の担い手た. あるというティトマスの指摘を想起すべきである. る社会福祉協議会が、その重要な柱である在宅福. (右田,2005,p.80)。」という指摘は、今日の福. 祉サービスについても、みずから実験し、実施の.
(5) October 2 0 0 7. ―7 7―. 予防的福祉サービス(活動). ! 要援護にならないための諸活動 $〈情報の提供、教育、相談活動〉 " 地域住民全体・あるいは特定の階層の集団等 % ニーズの早期発見 # にたいしておこなう & 事故等の発生を防ぐための地域環境 条件や物的危険防止などの点検整備. 在宅福祉 サービス. 専門的ケア・サービス ! 要援護者のニーズのうち、従来社会福祉施 $〈医療、看護(訪問)〉 " 設、医療機関の一部でおこなわれてきた専門 % リハビリテーション、教育、カウン " 的サービスを地域で再編成したもので、特質 % セリング、濃密な身辺介助サービス # はあくまで専門的サービスを中軸とするもの &(施 設 の 社 会 化、中 間 施 設 創 設、 サービス・ネットワーク) 在宅ケア・サービス. ! 家族内で充足されてきた日常生活上の介助、 $〈家事援助サービス〉 " 保護、養育等のニーズが家族機能の変化によ % 給食、配食、入浴、洗濯、布団乾燥、 " り社会化されたものを、施設で対応するので % 買物、歩行、外出、雑用 " なく地域で在宅のまま再編するもの。必ずし % " も専門的サービスとする必要はなく非専門的 % " サービスとしてボランティア、地域住民の参 % # 加を求める & 福祉増進サービス (要援護者に限らず、一般住民を含めて福祉の増進を図る) 老人の社会参加、生きがい対策. 地 域 福 祉. 環境改善 サービス. 組織活動. 要援護者の生活、活動を阻害している物的条件の改善整備を図る 要援護者の社会参加を促進するために必要な制度的条件の改善整備 地域組織化……住民の福祉への参加・協力、意識・態度の変容を図り福祉コミュニティ づくりをすすめる 福祉組織化……サービスの組織化・調整、サービス供給体制の整備、効果的運営 出典:永田(1 9 8 8)『地域福祉論』p.4 3 図2.地域福祉の内容(全社協). 一翼を担い、要援護者のニーズと直結することに. ケアの捉え方についてレビューしてきたが、本節. よって、真に連絡調整する役割が発揮できるので. では政策との関連、政策から与えられた影響につ. はないだろうか(鈴木,1 989,p.305)。」として. いて検討したい。. 事業型社協を推奨している。. 日本にイギリスのシーボーム報告が紹介され、 地方自治体をベースにした対人福祉サービスの展. 2)福祉見直し政策からの影響. 開についての検討がなされ始めた1960年代末から. 1970年代前半のコミュニティ・ケアの論議、お. 1970年代前半は、まさに高度経済成長期の後半期. よびその後のコミュニティ・ケア論から在宅福祉. でもあった。1960年厚生白書において「福祉国家. サービス論への流れは、政治・経済の文脈からの. への道」が明確に示され、豊かな国家財政のもと. 影響が極めて大きく、福祉見直し政策のインパク. 社会保障の充実が求められ、また実現されていっ. トが日本のコミュニティ・ケア論に与えた操作性. た時期とも重なる。1 970年「新経済社会発展計. は当然看過することは出来ない。前節までは主に. 画」においては「国民が連帯意識の上にたって、. 研究者の論議、および実践主体としての社会福祉. 自らの望ましい社会の在り方を選択するととも. 協議会の動向から、日本におけるコミュニティ・. に、社会的責任とその分に応じた負担を受け持ち.
(6) ―7 8―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. つつ社会開発に参加する」と国民の責任を位置づ. こそ存立しえるものであるからである」と強調し. けている。高田はこのような状況を、いかに福祉. ている。この活力ある福祉社会という考え方は経. を向上させるかという原則に立つ社会開発が経済. 済社会基本計画、新経済社会7ヵ年計画で「日本. 開発の一部もしくは補完とされていたと指摘して. 型福祉社会」として明確に政府の方針として打ち. いる。「経済大国は福祉小国の仮の名に過ぎない. 出された。しかしこれは「福祉国家」の後退を合. (高田,1986,p.42)」の で あ っ て、高度 経 済 成. 理化するためのものであると高田(1 986b)は批. 長の裏には国民生活の低成長があった。高齢化、. 判する。伊藤はこうした政府の方針にはイギリス. 地域および家族機能の弱体化などの生活問題の増. のサッチャー政権、アメリカのレーガン政権の政. 大という喫緊の課題への応答として地域福祉が重. 策遂行ベース思想となった「ニューライト(The. 視されることとなり、コミュニティ・ケア論がま. New Right)」の影響が強くあるとする(伊藤,. さにその打開方法として迎え入れられていった経. 2002)。ニューライトとは、自由主義、保守主義. 緯がある。. に依拠しているが、自由市場システムが壊れやす. しかし1973年の石油ショックを契機に、日本の. いことも自覚し、それを有効に機能させるための. 経済成長は急激に失速し低経済成長期を迎えるこ. 国家介入の必要性も認めた上で、市場原理の導入. とになる。豊かな財源の余剰をベースに進めてき. により国家役割の縮小と公共支出の削減、福祉. た福祉政策は「パイの論理」にもとづいて急速に. サービスの効率化 を 意 図 す る 考 え 方 で あ る。. 縮小を迫られる。さらにそうした経済的な背景と. ニューライトの提起する、福祉国家に代わる政府. ともに、日本における疾病構造の変化も福祉政策. の方針の問題点について「国家による福祉供給を. に方向の修正を余儀なくすることとなる(川上,. 第一義的には市場セクター、ついで家族やボラン. 1997)。川上は疾病構造の変化を3つに時期区分. ティアなどのインフォーマルセクターによる福祉. し以下のように整理している。すなわち、戦後復. 供給に置換えようとする点にある(伊藤,2002,. 興期を経て急速に医療技術が発展し、急性伝染. p.35)。」と伊藤は指摘する。. 病、慢性伝染病を克服していった時代。60年代後. コミュニティ・ケア論が日本に導入された時期. 半から70年代の成人病時代。そして80年代以降の. は、まだ高度成長期の最終局面で経済的にはバッ. 老人病時代である。この老人病時代においては、. クグラウンドが豊かな社会保証体制の中で、増大. 高齢者の疾病の長期化、重度化が進み、医療とし. する生活問題への対応、施設収容の負の側面への. てのキュアのみではなく、対象者の QOL を支え. 反省から、それらの打開策としての期待がコミュ. るケアの部分も含まざるを得なくなり、福祉政策. ニティ・ケアに寄せられた時期である。しかし、. がこうした疾病構造の変化への対応を迫られる事. その直後1970年代後半には低経済成長に日本経済. 態となるのである。. が移行し、政府が社会保障財源の削減に積極的に. 経済の失速、社会構造、疾病構造の変化に伴. 乗りだすこととなった。まさに高田がいうように. い、1973年以降、国民所得に占める社会保障給付. 社会開発が経済開発に飲み込まれ、上乗せ政策と. 費の割合が急上昇することになる。政府の方針は. して翻弄されることになる。本来コミュニティ・. 福祉国家政策から一転して社会保障費削減の方向. ケアの前提条件として整備されるべき、地域にお. へとシフトしていくこととなる。1983年「臨時行. ける社会資源が不十分なまま「自立・自助を原則. 政調査会. とする国民の活力ある創意を基礎としてこそ存立. 最終答申」において日本の目指すべき. 2大目標として1)活力ある福祉社会の建設. しえる」日本型福祉社会が強調され、 「虚像とし. 2)国際社会に対する積極的貢献. が示される。. てのコミュニティ・ケア」 「理想としてのコミュ. その中で「新しい時代の行政の役割は、国民の福. ニティ・ケア」が現実と乖離する事態となった。. 祉のため真に必要な施策は確保しつつ、同時に民. 日本型福祉社会で期待された家族の介護力は、. 間の自由な活動を十分に保障する最小限のもので. 現実的には核家族化や女性の社会進出等でその基. なければならない。活力ある福祉社会は、自立・. 盤が脆弱化していた。しかし政府の方針は社会保. 自助を原則とする国民の活力と創意を基礎にして. 障費抑制のため、在宅での福祉サービス供給に施.
(7) October 2 0 0 7. ―7 9―. 策の重点化を図っていく。政策文書の中でも、コ. 要性について論じる研究が非常に盛んとなる。コ. ミュニティ・ケアという記述のかわりに「在宅. ミュニティケアマネジメントという用語もいくつ. サービスの連携」 「地域におけるサービスの総合. かの文献で見ることが出来るが(竹内,1 999a―. 的な提供」というように、地域での在宅サービス. b)、この含意はイギリスのコミュニティケア法. 供給システムとしての用語が頻出するようにな. におけるケアマネジメントシステムの援用とし. り、コミュニティ・ケアの公的な用語使用は1980. て、「地域におけるケアマネジメントシステム」. 年代の10年間はほとんど見られなくなる。. としての使用であろうと思われる。. 3.基礎構造改革とコミュニティケア. 4.コミュニティ・ケア再考. しばらくの間、在宅福祉サービス論に飲み込ま. 以上、1970年代の日本におけるコミュニティ・. れた形で論議されてこなかったコミュニティ・ケ. ケア萌芽期から、福祉見直し期の在宅福祉サービ. アが1990年代以降、再び学術論文に頻出するよう. ス論へのシフト、そして基礎構造改革においてケ. に な る。例 え ば 顕 著 な 例 と し て NICHIGAI. アマネジメントとともに再びコミュニティケアが. MAGAZINE PUS という学術論文データベースで. 議論されたことを、歴史的変遷をたどりながら検. 検索すると1980年代にコミュニティ・ケアをキー. 討してきた。こうした検討を行ってきた筆者の内. ワードとする論文はわずか43本であったのが1990. 面的な動機として「何か大事なものを忘れてはい. 年代には238本、2000年以降は現在に至るまで実. ないか」という思いがある。かつて、コミュニ. に1500本以上がヒットする。まさに、基礎構造改. ティ・ケアが日本に紹介され論議がなされていた. 革以降、コミュニティ・ケアが再び地域福祉政策. 1970年代コミュニティ・ケアの考え方において、. のキーワードとして再浮上してきたことを示すも. 地域住民が生活主体者であるという視点は極めて. のであろう。しかし、基礎構造改革以降、特に. 重要な論点であったはずである。岡村は地域組織. 2000年前後のコミュニティケアの論述には、大半. 化とコミュニティ・ケアは不可分であるとし、阿. がそれに付随する形でケースマネジメント、ある. 部はコミュニティ・ケアの主体は地域住民と明確. いはケアマネジメントが議論されることに1 970年. に論じていた。地域における住民の「同一的感. 代の論議とは一線を画する特徴がある。例えば、. 情」がコミュニティ・ケアの前提として厳然とす. 西尾はコミュニティケアの問題点として以下の7. えられた論議がなされていたように思う。しか. 点をあげる(西尾,1992)。. し、在宅福祉サービス論が地域組織化とサービス. (ア) 散在する対象者のニード把握が困難. 供給を明確に分離し、サービス供給システムに介. (イ) サービス提供および、連絡調整に時間を. 護保険制度という管理機能が加わったことによ. 有する. り、地域組織化と在宅サービスシステムの乖離が. (ウ) 地域におけるサービス資源の不足. ますます顕著になってきているように思う。ここ. (エ) サービスが断片化するおそれ. で右田の示した「地域の福祉」と「地域福祉」の. (オ) 責任の所在があいまい. 違いを改めて想起したい。福祉見直しの行革臨調. (カ) 効果測定が困難. を基本とした自助・相互扶助による日本型福祉社. (キ) 非効率的. 会、基礎構造改革による措置から契約への福祉シ. そしてこのような、問題点に対して、個々人の. ステムの転換は、常に経済の影響を受け政策とし. ニーズに合わせて点在するサービスを調整する. ての地域福祉が推し進められてきた経緯がある。. ケースマネジメントの必要性を述べている。この. 地域を客体化し、政策として地域を把握するので. 時期には(西尾,1992;杉本,1995;久田,1995;. あればそれは「地域の福祉」であると右田は主張. 植村,1999)をはじめとして1990年のイギリスコ. する(右田,1 986)。そして「地域福祉」はそこ. ミュニティケア改革の動向を紹介し、日本におけ. に生活する個人を「生活主体者」としてとらえる. るケースマネジメント(ケアマネジメント)の必. ことに原点があるとしている。サービス論、技術.
(8) ―8 0―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. 論に偏重することは、すなわち地域の中で生活問. それに対して、上野谷は明確に住民主体によるコ. 題を持つ人をサービスの受け手として客体化し、. ミ ュ ニ テ ィ ケ ア の 構 築 を 主 張 す る(上 野 谷,. 地域の住民を制度の狭間の受け皿としてやはり客. 2003)。これからコミュニティケアを推進してい. 体化することになりはしないだろうか。コミュニ. くためには、住民が当事者性により自らのニーズ. ティケアという言葉にあえて筆者がこだわる意図. に気づき自らが発言し自らが解決していこうとす. は、元来コミュニティケアという言葉の意味は. る住民の主体形成にコミュニティワークが専門的. 「地域の福祉」ではなく地域組織化と不可分とい. 技術として側面的支援を展開していく必要である. う前提のもとに「地域福祉」を意味するものでは. とする。これらの考え方に対して筆者は、個人的. なかったのかという問題意識によるものである。. な教育や経験からの主体形成と、当事者として自. 近年のコミュニティケア研究において、渡邊. らニーズに気づき自ら解決していこうとする力動. (2005)はこうした単方向のコミュニティケアに. を支援するコレクティブな主体形成はそのどちら. ついて重要な示唆を与える。渡邊は双方向的なコ. もが総体としてコミュニティの主体形成につなが. ミュニティケアを提起し、コミュニティケアの実. るものであり、対立関係ではないと考えている。. 施体制は、「フォーマルケア」と「インフォーマ. むしろその違いは方向性によるものであり、相補. ルケア」と「営利ケア」と「非営利ケア」で構成. 的なものなのではないだろうか。. されるとする(表1)。 この存在の認識に規定された社会福祉と意識の. 5.ナラティブとしてのコミュニティケア. 認識に規定された社会福祉は双方向であり止揚関 係にあるとする考え方は、コミュニティケアの主. これらの方向性の違いについて考えるとき、一. 体的側面を重視し、狭義の単方向のコミュニティ. つの羅針盤としてナラティブの中でのケアについ. ケアを超えるための導きになるものと考える。か. て検討をしてみたい。野口(2004)はケアとは相. つて嶋田(1971)がいったようにコミュニティ解. 手と自分との間に何がやり取りされたか(行為). 体の傾向が自然界のホメオスターシスのように、. の問題ではなく相手と自分の間の関係性であると. コミュニティ組織化、地域社会開発を再び生み出. する。ナラティブ・アプローチが主張するのは専. すという希望的観測は現在の地域福祉の状況では. 門家とクライエントが共同で同じ問題に取り組む. 期待できそうもない。コミュニティの中で渡邊の. 関係であり、このような関係をケア的な関係とい. 主張するように主体・客体、あるいは存在・意識. う。ここで野口が現在のサービス論、技術論に偏. の双方向性、止揚関係を認識した上で双方への意. 重するコミュニティケアに新たな視点を与えてい. 識的な戦略的な働きかけが必要とされるのではな. る文章を少し長いが引用する。. いだろうか。ただし渡邊の主体形成は住民の福祉 理解、あるいは福祉活動への参加体験から醸成さ. こうしてわたしたちはよりよいケアをめぐって、互. れるとする。そしてコミュニティケアの視点は具. いに競い合うような関係、すなわち「競争的関係」の. 体的な問題解決のための個別援助(ケア)が中核. 中へ入っていく。 ケアをめぐる競争が始まるのである。. であるとして、地域福祉援助(組織化・コミュニ. このとき、ケアは「与えるべき何か」として、あるい. ティワーク)についてはあえて触れてはいない。. はそのための「技法」としてイメージされるようにな. 表1.双方向的ケアの位置関係 双 方 向 的 ケ ア. 存在の認識に規定 された社会福祉. (分権と規制改革) フォーマルケア. 客体形成. 意識の認識に規定 された社会福祉. インフォーマルケア (住民活動と運動). 主体形成. 営利ケア 福祉環境醸成 福祉のまちづくり 非営利ケア. 出典:渡邊(2 0 0 4)『コミュニティケアと社会福祉の展望』p.2 3 5.
(9) October 2 0 0 7. ―8 1―. る。ケアは、「もの」または「技法」に還元されて、そ. ル、営利・非営利の援助者がネットワークを組ん. の優劣を競い合うような関係の中におかれるのである。. で個人の援助を行う体制が想定されるが、その援. ここで思い出すのは「ケア・テイカー care taker」と. 助者間の関係性は常に平等であることを主張する. 「ケア・ギバー care giver」という言葉である。両者は. のではなく、当事者のニーズに対して援助者間の. ともに「ケアするひと」をあらわす言葉なのだが、そ. 範囲が重なる局面での問題提起・承認を行う関係. の語感は微妙に異なる。 前者は、 より一般的な言葉で、. 性=相補的自立性を保ちながら、ケアを行うとす. 「ケアするひと」という意味とともに「気遣うひと」と. る主張である。(この援助者の重なりに関しては. いうニュアンスがある。これに対して、後者は、老人. 広井も、マージナルという言葉で表現している. 介護などの文脈で最近よく使われるようになった言葉. (広井,2 000)。)三井はケアの技法論についてど. で、 ケアは「与えるべきもの」としてイメージされる。. れほど技法論を拡大したとしてもケアの固有性の. まさしく「もの」としてのケア、「技法」としてのケア. 多様性に答えきることは出来ないとする。技術. である。ケアはいま、「も の」や「技 法」と し て の イ. 論、あるいはマニュアル論に偏重する傾向は、個. メージをますます強めている。(野口,2 0 0 4,p.1 9 1). 人の「生」の不確実性、多様性に対する柔軟性を 奪い、規定からはずれた逸脱に対して「自助・自. ケアが市場に開かれ、「商品」としてケアが取. 立」の名のもとに放置するコミュニティを助長す. 引される今、つい最近も民間企業による営利目的. ることになりはしないだろうか。ケアの援助を実. の不正が発覚し大きな社会問題となった。確かに. 践するものも、ケアの援助を受けるものも、とも. 専門的な技術に優れたケアは今日的な生活問題の. に共同で同じ問題に取り組むものであるという主. 重複化、深刻化に対峙するためには社会福祉が獲. 体形成は、個人としての参画経験や学習からの形. 得しなければならないケアの形態であると思う。. 成も必要であるし、また自分たちが住むコミュニ. しかし加納が指摘するように「なおかつそこへ回. ティをどう捉えていくかというコミュニティ意識. 収されないケアの営みや思想が相補的にそして対. からの主体形成もともに必要なのではないかと考. 抗的に必要である(加納,2000)p.62。 」のでは. える。. ないだろうか。ケアを必要とする人と地域住民の. 最後に広井のコミュニティケアについての思想. 関係、ケアを必要とする人と専門職の関係はナラ. を引用して、本論のまとめとしたいと思う。広井. ティブにおけるケア的関係:共同で同じ問題に取. はかつての自然発生的な地縁・血縁によるコミュ. り組む関係を、今だからこそ目指すべきではない. ニティが経済的な進化にともなって、凝集性、求. かと考える。. 心性が弱まりしかもその個人がきわめて不安定な. また、ケアの市場化はケアの提供主体の多様性. 存在であるのでそれを再び社会的に支えるために. を認めることとなるが、ナラティブの視点で考え. さまざまな社会保障システムが構築されていった. るとその多元主義的ケアについても一つの軸を得. とし、 「ケア」はそうした個人をつなぎ支えてい. ることが出来る。三井(2004)はナラティブにお. く営みであるとする。コミュニティは人が生ま. けるケアは相手の「生」の固有性を重視するとす. れ、成長し、家族を形成し、老いてやがて死を迎. る。身体的、生活的、経済的環境がひとそれぞれ. えるライフサイクルの場であるならば、コミュニ. 違うだけではなく、個人のそれら環境への「意味. ティはまさに「生き る『生』の場」である。コ. づけの仕方」も渾然一体となってその人の「生」. ミュニティにおけるケアを考えるとき、その対象. が形成されているという考え方である。したがっ. が乳児から高齢者そしてターミナルケアまでをも. てその多様性あるいは不確実性に向き合うため. 含むのも、当然のことのように思える。広井はそ. に、それぞれの援助者は自らの限界性をいったん. うしたことから、コミュニティケアが単に「コ. 認識する必要があるとする。その上でケアの相互. ミュニティにおけるケア」に矮小化されるのでは. 行為を捉え直し、関わる援助者間に「相補的自立. なく「コミュニティ支援としてのケア」あるいは. 性」が形成される必要があるとする。コミュニ. もっと積極的に「コミュニティ(づくり)のため. ティケアにおいて、フォーマル・インフォーマ. のケア care for the community」までも包含する.
(10) ―8 2―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. と主張する。 本論の研究において、コミュニティケアの概念. 従来のコミュニティケア論を超え、新たな地域状 況へのチャレンジとして取り組むべきだと考える。. の変遷を先行研究にもとづきレビューを行ってき たが、あらためてコミュニティケアという言葉に. 6.今後の課題. は、実は自然発生的には地域組織化は含意されて いないということが明らかになった。1970年代の. 地域を基盤としたケアシステムには、従来のコ. 萌芽期、岡村の地域福祉論においても、コミュニ. ミュニティ・ケア論のように個別支援と地域組織. ティ・ケアは歴然とサービス体系として規定され. 化を別立てにし、一方が他方の前提となる階層構. ている。ただし地域組織化がコミュニティ・ケア. 造ではなく、二つをパラレルに包摂した新たなコ. の不可分な前提条件とされ、そのことにより住民. ミュニティケア論が必要であると本論では考察し. 主体の地域福祉が展開可能であるとされた。この. てきた。今後の研究課題としては、実際に先進的. ように本質的には地域組織化が内包されていな. な地方自治体で実践が始まっている、地域を基盤. かったコミュニティ・ケアは、その後の在宅福祉. とするケアシステ ム 実 践 の 実 証 研 究 を 行 い、. サービス論への転換により地域組織化の前提から. フォーマル+インフォーマルな資源がつながり地. 乖離し、個別支援と地域支援の分断化傾向は止ま. 域における地域のためのセーフティネットワーク. らない状況にある。個別支援の側面から見れば、. が構築されるという「地域へのケア」と、地域の. 例えば地域包括支援センターのワーカーがフォー. 中でのセーフティネットワークが多様な個に対し. マルインフォーマルな資源の有機的連携を機能と. て、マージナルな部分を広げてもれ落ちることな. して求められているにも関わらず、介護予防のプ. く地域につなぎとめて支援するという「個へのケ. ラン作成などの個別支援業務に追われ、地域に出. ア」が、どのようなプロセスで相補的に実践され. 向くことすらままならない現実がある。また地域. ているのかということを明らかにしていきたいと. 支援の側面から見ても、地域支援を担うべき社会. 考えている。. 福祉協議会の事業型社協化が進み、社協内部での 個別支援部門と地域支援部門との縦割り分断化が 大きな課題となっている。 このような現実に対峙していくためには、コ ミュニティケア(個別支援)と地域支援をもはや 別立てで考えていくのではなく、それらを包摂し た care for the community の意味での コ ミ ュ ニ ティケア論が必要であるというのが、本研究の主 張である。この考え方でのケアは個人に対するケ アと地域に対するケアの双方の意味を含む。つま り多様なゆらぎを内包する個人に対するケアを行 う活動の中でも、常にその先に「生」の場として のコミュニティを意識する必要があるし、規定か ら外れ制度からもれ落ちる危険のある人も包摂す る、つながり(ネットワーク)が豊かなコミュニ ティをつくり上げる地域へのケアも、その視線の 先には地域に住まう多様な個人個人の「生」が常 に意識されるという意味である。この新たなコ ミュニティケア論は1970年代への理論的ノスタル ジーではなく、分断化されている個別支援と地域 支援のマージナルな部分を広げ展開するために、. 注)1 9 7 0年代の議論では「コミュニティ・ケア」と2 語の間に「・」が付されていたが1 9 9 0年代以降の 文献では「・」が消失している。本稿では原文に 沿った形で表記方法を併用するものとした。 引用文献 阿部志郎(1 9 7 3)「地域福祉の展開と位置づけ―コミュ ニティ・ケアをめぐって―」『ジュリスト』5 3 7, 5 8. 1 5 4―1 中央社会福祉審議会(1 9 7 1)「資料Ⅰ コミュニティ形 成と社会福祉」財団法人鉄道弘済会編『住民福祉 の復権とコミュニティ』(pp.2 1 5―2 1 7)東京大学出 版会 広井良典(1 9 9 7)『ケアを問いなおす―〈深層の時間〉 と高齢化社会―』筑摩書房 広井良典(2 0 0 0)『越境するケアへ』医学書院 井岡勉(1 9 7 5)「地域福祉対策の理念と現実―コミュニ ティ・ケアのあり方をめぐって―」『月刊福祉』5 8 (4) ,1 6―2 1. 伊藤周平(2 0 0 2)『 「構造改革」と社会保障』萌文社 加納恵子(2 0 0 0)「地域福祉とケアの思想―ケアの社会 化の意味するもの―」右田紀久恵, 上野谷加代子,.
(11) October 2 0 0 7. 牧里毎治編『福祉の地域化と自立支援』(pp.5 0― 6 3)中央法規出版 川上武(1 9 9 7)『2 1世紀の社会保障改革』勁草書房 久田紀夫(1 9 9 5)「知的障害者居住サービス再考①―英 国コミュニティケアの実態から学ぶ―」『月間福 祉』7 8 (8) ,7 8―8 3. 前田大作(1 9 7 4)「コミュニティ・ケアの理念と内容― 老人福祉の立場から―」財 団 法 人 鉄 道 弘 済 会 編 『住民福祉の復権とコミュニティ』(pp.7 6―9 1)東 京大学出版 三井さよ(2 0 0 4)『ケアの社会学』頸草書房 三 浦 文 夫(1 9 7 1)「コ ミ ュ ニ テ ィ・ケ ア と 社 会 福 祉」 『季刊社会保障研究』7 (3) ,1 4―2 4. 三浦文夫(1 9 7 3)「社会福祉行政における施設サービス と居宅サービス」『ジュリスト』5 3 7,5 8―6 2. 永田幹夫(1 9 8 8)『地域福祉論』全国社会福祉協議会 西尾祐吾(1 9 9 2)「コミュニティケアとケースマネージ メント」『ソーシャルワーク研究』1 8 (1) ,1 7―2 1. 岡村重夫(1 9 7 4)『地域福祉論』光生館 定藤丈弘(1 9 8 6)「地域福祉の系譜」右田紀久恵,!田 眞治編『地域福祉講座』(pp.1 9 4―2 6 9)中央法規出 版 杉本敏夫(1 9 9 5)「コミュニティケアにおけるケアマネ ジメントの意義と課題」『ソーシャルワーク研究』 2 1 (1) ,1 0―1 5. 鈴木五郎(1 9 8 1)「コミュニティ・ケアはイデオロギー か方法か」『季刊労働法』8,1 1 9―1 2 4. 鈴木五郎(1 9 8 9)「コミュニティ・ケアの日本的展開」 仲村優一編『福祉サービスの理論と体系 転換期 をみすえて』(pp.2 9 5―3 0 6)誠信書房 !田眞治(1 9 8 6a)「高度経済成長期の社会福祉」右田 紀久恵,!田眞治編『地域福祉講座』(pp.3 8―5 1). ―8 3―. 中央法規出版 !田眞治(1 9 8 6b)「社会福祉の見直し―新しい道を求 めて―」右田紀久恵,!田眞治編『地域福祉講座』 5)中央法規出版 (pp.5 2―6 竹内孝仁(1 9 9 9a)「介護保険制度におけるケアマネジ メントの役割と課題―コミュニティケアが介護を 変える―」『介護支援専門員』2,5 7―7 6. 竹内孝仁(1 9 9 9b)「介護保険時代に求められるコミュ ニティケアの課題と展望」『月刊総合ケア』9 (1 1) , 1 6―2 3. 田中寿(1 9 7 8)「 「コミュニティ・ケア」論抄―日本と イギリス―」『レファレンス』2 8 (4) ,5―3 0. 谷口正隆(1 9 8 0)「コミュニティケアの虚像と実像―盲 重複障害児の調査から―」『月刊福祉』6 3 (4) ,4 0― 4 5. 東京都社会福祉審議会(1 9 7 4)「資料Ⅱ 東京都におけ るコミュニティ・ケアの進展について」財団法人 鉄道弘済会編『住民福祉の復権とコミュニティ』 (pp.2 1 8―2 2 5)東京大学出版会 植村英晴(1 9 9 9)「イギリスの障害者施策―基本的枠組 みとコミュニティ・ケア―」『月間福祉』8 2 (1) , 7 8―8 3. 上野谷加代子(2 0 0 3)「住民主体コミュニティケアの夢 と現実」『月刊総合ケア』1 3 (1 2) ,4 4―4 8. 右田紀久恵(1 9 8 6)「地域福祉の課題」右田紀久恵,! 田眞治編『地域福祉講座』(pp.2 9 6―3 0 5)中央法規 出版 右田紀久恵(2 0 0 5)『自治型地域福祉の理論』ミネル ヴァ書房 渡邊洋一(2 0 0 5)『コミュニティケアと社会福祉の展 望』相川書房.
(12) ―8 4―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. The change of the concept of community care ―― Aiming at a new care system based on the importance of community ―― ABSTRACT The main purpose of this paper is to effect a reconsideration of the meaning of community, and the meaning of care, by inspecting changes in community care theory. At the start of the 1970s community care theory was introduced into Japan from the United Kingdom. Thereafter, the argument shifted from community care theory to home care service theory in the 1980s. Ways of thinking about community care gradually inclined towards more technical ideas concerning the service supply. Criticism of the community care theory arouse due to a wide gap between the ideal concept enabling people to live in peace and harmony in their communities throughout their lives, and the very noticeable lack of resources available for social support. Inhabitants in communities do not exist originally solely as receivers of care service or services. Community inhabitants think of care by themselves, and can carry out care by themselves. They are the driving force for initiating actions that will raise the overall quality of care service. In future, community care must be more comprehensive involving not only care “in the community,” but also “care for the community.” It is only through this changed thinking and practice that community care autonomy can be supported. Key Words : community care, autonomy, care for the community.
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