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メキシコにおけるコミュニティと共創する芸術創造に関する研究

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Academic year: 2021

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メキシコにおけるコミュニティと共創する芸術創造に関する研究

メキシコにおけるコミュニティと共創する芸術創造に関する研究

A STUDY OF ARTS THAT CO-CREATED WITH A COMMUNITY IN MEXICO

……….

谷口 文保 芸術工学部アート・クラフト学科 准教授

Fumiyasu TANIGUCHI Department of Arts and Crafts, School of Arts and Design, Associate Professor

………. 要旨 筆者は2015 年 8 月 3 日から同年 10 月 5 日までメキシコに滞 在し、ベラクルス州ハラパにあるベラクルス州立大学の客員教授 として研究活動を展開した。 研究テーマは、「メキシコにおけるコミュニティと共創する芸 術創造の研究」であった。ハラパでは、「コラボ・ショール」プロ ジェクトや小学校でのアートワークショップを実践した。また、 「グアダルーペを探せ」プロジェクトの調査を行った。メキシコ シティでは、「ソーシャル・ランドスケープ基金」や壁画文化に関 する調査を行った。イベロアメリカーナ大学では3 回講義を行っ た。 今回の研究を通してたくさんの人々に出会うことができた。本 研究が日本とメキシコの相互理解に役立ち、交流促進の一助とな ることを願う。 Summary

I studied in Mexico from August 3, 2015 to same year October 5. During a stay, I was visiting professor of University of Veracruz in Xalapa.

A study subject was "A study of arts that co-created with a community in Mexico". I practiced "collaboration shawl" project and an art workshop at Xalapa. And I investigated about "Wanted Guadalupes" project. In Mexico City, I investigated about "Social landscape Foundation" and wall painting culture. And I lectured 3 times at Ibero-American University.

I could meet a lot of people in Mexico. I wish that this study is useful for mutual understanding in Japan and Mexico.

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1.はじめに 筆 者 は 神 戸 芸 術 工 科 大 学 海 外 研 究 員 派 遣 制 度 に 基 づ い て、平 成27 年 8 月から同年 10 月にかけて、メキシ コ に 滞 在し 、 さ ま ざ まな 研 究 活 動 を展 開 し た 。 2.研究活動の概要 期 間: 平 成27 年 8 月 3 日~平成 27 年 10 月 5 日 国 : メキ シ コ ( ベ ラ クル ス 州 ハ ラ パお よ び メ キ シコ シ テ ィ ) 所 属: ベラ ク ル ス 州 立大 学 造 形 美術 研 究 所 役 職: 客員 教 授 研 究 テ ーマ : メ キ シ コに お け る コ ミュ ニ テ ィ と 共創 す る 芸 術創 造 に 関 す る研 究 主 な 研 究 活 動 : ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト 「 コ ラ ボ ・ シ ョ ー ル 」 の 企 画 運 営 。 大 学 や 文 化 施 設 で の 講 演 。 小 学 校 に お ける ア ー ト ワ ーク シ ョ ッ プ の企 画 運 営。「 ソ ー シ ャ ル ・ ラ ン ド ス ケ ー プ 基 金 」 の 調 査 。 メ キ シ コ の 壁 画 文 化に 関 す る 調 査。「 グ ア ダ ルー ペ を 探 せ 」プ ロ ジ ェ ク トの 調 査 。 3.研究の内容 3-1.アートプロジェクト「コラボ・ショール」の企 画 運 営 「 コ ラ ボ・シ ョ ー ル 」は 、神 戸 芸 術工 科 大 学 に おい て 、 ば ん ば まさ え 教 授( フ ァ ッ シ ョ ン デザ イ ン 学 科)、小 越 将 吾 実 習 助 手 ( 元 ・ ビ ジ ュ ア ル デ ザ イ ン 学 科 ) と 取 り 組 ん で い る 、 障 害 者 福 祉 や コ ミ ュ ニ テ ィ を テ ー マ と す る ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト で あ る 。 本 研 究 は 、 こ の ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト が 、 言 語 や 文 化 の 違 う メ キ シ コ に お い て も 有 効 か ど う か を 検 証 す る こ と を 目 的 に 、 ベ ラ ク ル ス 州 立 大 学 造 形 美 術 研 究 所 を 拠 点 に 、 同 大 学 周 辺 地 域 で 実 施 し た実 験 で あ る (写 真1~7)。 ま ず 、同 大 学 芸 術 学 部で 彫 刻 を 学 ぶ学 生 に 参 加 を呼 び か け、「 コ ラ ボ・シ ョ ー ル 」に つ い て 説 明 し 、家 族 や 友 人 と の共 同 制 作 を 提案 し た。後 日 、完 成 し た 画像 デ ー タ を 筆者 に 提 出 し ても ら い 、専 門 業 者 に 依 頼 して 布 に 印 刷 し、「 コ ラ ボ・シ ョ ー ル 」が 完 成 し た 。筆 者 は 、 (写真1)「ベラクルス州立大学造形美術研究所」 (写真2)「参加者への説明」 参 加 学 生全 員 に イ ン タビ ュ ー を 実 施し 、参 加 者 同士 の 交 流 や 共 同 制 作 の プ ロ セ ス に つ い て 詳 し く 聞 き 取 っ た 。そ の 結 果 、メ キ シ コ に お い て も日 本 で 実 施 した 時 と 同 様、共 同 制 作 を 通し て 参 加 者 同士 の 交 流 が 実現 し 、 相 互 理 解が 深 ま る こ とが 確 認 で き た 。ま た 、制 作 を 通 し て 地 域の 再 発 見 が 起こ っ て い る こと も 分 か っ た。 2 か月間で参加者総数 35 名、19 作品が完成し、10 月1 日から 10 月 2 日にかけてベラクルス州立大学造 形 美 術 研究 所 ギ ャ ラ リー に て 展 覧 会を 開 催 し た。10 月 1 日には研究発表会を開催し、プロジェクト参加者や 大 学 関 係者 、 芸 術 関 係者 な ど 約 60 名の聴衆に向けて プ レ ゼ ンテ ー シ ョ ン を行 い 、本プ ロ ジ ェ ク ト の 成果 と 意 義 を 説明 し た1) 3-2.大学や文化施設での講演 イ ベ ロ アメ リ カ ー ナ 大学( メ キ シ コシ テ ィ )で3 回

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(写真3)「印刷業者との打ち合わせ」 (写真4)「作品の完成」 (写真5)「展覧会の開催」 講 演 を 行っ た 。9 月 1 日にビジュアルデザイン学科で、 9 月 8 日にファッションデザイン学科で、「 コ ラ ボ・シ ョ ー ル 」に つ い て 紹 介し た 。9 月 7 日には大学院で、 「 ア ー トプ ロ ジ ェ ク ト」 に つ い て 講演 し 、 現 代 日本 の (写真6)「研究発表会に集まった参加者や地域の人々」 (写真7)「研究発表会の様子」 ア ー ト の潮 流 に つ い て、大 学 院 生 や教 員 と デ ィ スカ ッ シ ョ ン を行 っ た ( 写 真8)。 9 月 10 日に、ベラクルス州立彫刻公園において、 「 日 本 人芸 術 家3 名による公開シンポジウム」が開催 さ れ 、矢 作 隆 一 氏( ベ ラ ク ル ス 州 立大 学 造 形 美 術研 究 ( 写 真8)「イ ベロアメリカ ーナ大学での 講義」

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所 研 究 員)、坂 本 太 郎氏( 福 井 大 学教 育 学 部 准 教授 )と と も に パネ リ ス ト と して 登 壇 し た (写 真9)。 ( 写 真9)「ベ ラクルス州立 彫刻公園での シンポジウム 」 3- 3 小 学 校 に お け る ア ー ト ワ ー ク シ ョ ッ プ の 企 画 運 営 9 月 24 日に、ハラパ市立ファン・エスクッティア小 学 校 に お い て 、 ア ー ト ワ ー ク シ ョ ッ プ 「 校 庭 の 木 を 想 像 し 、 創造 す る 」 を 実施 し た 。 ま ず 先 生 方 と 相 談 し 、 授 業 と の 繋 が り を 考 え て テ ー マ を コ ミ ュ ニ テ ィ と エ コ ロ ジ ー と し た 。 先 生 方 か ら 、 以 前 校 庭 に レ モ ン の 木 が あ っ た が 、 校 庭 に 屋 根 を か け る た め に 伐 採 さ れ た こ と を 聞 い た 。 そ の 木 を 想 像 し 、 一 人 一 人 が 大 き な 葉 っ ぱ を 描 き 、 そ れ を 校 庭 の 壁 に 貼 り 付 け 、 一 本 の 木 の 壁 画 に 仕 上 げ る プ ロ グ ラ ム を 提 案 し た 。5、6 年生約 50 名が参加した(写真 10~12)。 (写真10)「葉っぱの制作」 (写真11)「作品の完成」 ( 写 真12)「 アートワーク ショップの参 加者」 3-4 「ソーシャル・ランドスケープ基金」の調査 「 ソ ー シャ ル・ラ ン ド ス ケ ー プ 基 金」は 、メ キシ コ の 深 刻 な 社 会 的 課 題 と ア ー ト や デ ザ イ ン を つ な ぐ 活 動 を 行 って い る グ ル ープ で あ る。日 本 人 芸 術 家 はぎ の み ほ 氏 と 日 系 メ キ シ コ 人 建 築 家 タ ロ ウ ・ ソ リ ジ ャ 氏 、 メ キ シ コ人 キ ュ レ ー ター の マ リ ア ナ・モ ラ レ ス 氏 、日 本 人 画 家の 馬 場 菜 津 美氏 を 中 心 に、老 人 ホ ー ム や児 童 養 護 施 設 で の 定 期 的 な ア ー ト ワ ー ク シ ョ ッ プ や 美 術 館 見 学 プロ グ ラ ム 、ラ ジ オ 番 組 制 作な ど 、多 様 な 活 動 を 展 開 して い る2) 筆 者は8 月 25 日から 9 月 6 日にかけて、定例会議、 児 童 養 護施 設 で の ワ ーク シ ョ ッ プ、「 女 性 の 家 」コン サ ー ト 、ラ ジ オ 番 組 の 収録 な ど を 見 学し 、メ ン バ ーへ の イ ン タ ビュ ー を 実 施 した 。

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( 写 真13)「 ソーシャル・ランドスケー プ基金のメン バー」 ( 写 真14)「 定例会議の様 子」 ( 写 真15)「 児童養護施設 での活動に参 加した筆者」 3-5 メキシコの壁画文化に関する調査 1920 年代から開始されたメキシコ壁画運動は、20 世 紀 芸 術 に 大 き な 影 響 を 与 え た 芸 術 運 動 で あ る 。 同 時 に 、 古 代 ピ ラ ミ ッ ド の 壁 画 を 原 点 と す る メ キ シ コ の ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 再 構 築 を 目 指 す 社 会 運 動 で も あ っ た 。 現 在 も 街 中 や 公 共 施 設 に 描 か れ た 当 時 の 壁 画 を 確 認 す る こと が で き る 。 ( 写 真16)「 ポリフォルム ・シケイロス 」 ( 写 真17)「 公園に描かれ た現代の壁画 」 筆 者 は メキ シ コ 滞 在 中、ダ ビ ッ ド・ア ル フ ァ ロ・ シ ケ イ ロ スや デ ィ エ ゴ・リ ベ ラ と い った 巨 匠 た ち の作 品 を 見 学 する と と も に、そ の 原 点 と なっ た テ オ テ ィワ カ ン 遺 跡 の壁 画 や 、現 代 の 若 手 ア ー ティ ス ト 達 が 公園 や 一 般 住 宅の 壁 に 描 い た壁 画 を 多 数 見学 し た 。 3-6 「グアダルーペを探せ」プロジェクトの調査 「 グ ア ダル ー ペ を 探 せ 」は 、メ キ シ コ在 住 の 日 本人 ア ー テ ィ ス ト 矢 作 隆 一 氏 が 展 開 す る ア ー ト プ ロ ジ ェ ク ト で あ る 。グ ア ダ ル ーペ は 、メ キ シ コ で も っ と も信 仰 さ れ て いる 女 神 の 名 前で あ る 。ア ス テ カ の 神 と キリ ス ト 教 が 習合 し て 生 ま れた グ ア ダ ル ーペ 信 仰 は、複 雑 な メ キ シ コの 歴 史 と 文 化の 象 徴 で あ る。 矢 作 氏 は、メ キ シ コ にグ ア ダ ル ー ペと い う 名 前 の 人 が 多 い こと を 知 り、グ ア ダ ル ー ペ とい う 名 前 の 人物 を

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探 し て 、 そ の 肖 像 写 真 を 撮 影 す る と い う プ ロ ジ ェ ク ト を メ キ シコ 各 地 で 継 続的 に 展 開 し てい る 。 8 月 14 日から 8 月 16 日にかけて、テクサココ美術 館 や テ ク サ コ コ 市 街 地 で 実 施 さ れ た プ ロ ジ ェ ク ト に 同 行 し 、 その 制 作 プ ロ セス を 見 学 し た( 写 真16・17)。 ( 写 真18)「 プロジェクト の説明をする 矢作隆一氏」 4.まとめ 今回の研究活動を通して、多くの人々と出合うことが できた。美術家、写真家、研究者、学生、教師、調理師、 音楽家、会社員、小学生。メキシコ人、日系メキシコ人、 日本人。彼らとふれあい、語り合う中で、メキシコの芸術 文化の深さと豊かさを実感することができた。同時に、そ の背景にあるこの国の複雑な歴史や社会の姿が見えてき た。日本と異なるその関係や構造を捉えることが今後の 課題である。 また、研究を進める中で、メキシコと日本の交流の歴史 を学び、それが近年飛躍的に深まりつつあることを知っ た。本研究で出会った方々との人的ネットワークをさら に育み、日墨交流の促進につなげていきたいと考えてい る。 謝辞 ベラクルス州立大学造形美術研究所ハビエル・コサル・ アングロ所長、矢作隆一研究員、ソーシャル・ランドスケ ープ基金はぎのみほ氏、タロウ・ソリジャ氏、馬場菜津美 氏、イベロアメリカーナ大学玉川絵理教授、国際交流基金 メキシコ日本文化センター洲崎勝所長、ルシア・シロネ ン・テジェス・ハコメ氏、相原修氏など、本研究にご協力 くださいました皆様に深く感謝申し上げます。 注 1)メキシコで制作されたコラボ・ショールは、筆者が日本 に持ち帰り、「企画展 コラボ・ショール 室津を身にま とう2016」(2016 年 2 月 16 日~3 月 13 日、たつの市立 室津海駅館、たつの市立室津民俗館)において展示し、そ の写真をe メールでメキシコの参加者に送付した。 2)写真 13、15 はソーシャル・ランドスケープ基金の撮影。 その他の写真は筆者撮影。 参考文献 谷口文保、「メキシコにおけるアートと社会の共創に関す る調査-壁画、ソーシャルランドスケープ基金、「グアダ ルーペを探せ」-」、『環境芸術学会第16 回大会研究発表 概要集』、2015 谷口文保、「芸術家と地域社会の共創に関する研究-ソー シャル・ランドスケープ基金の活動から-」、『文化経済学 会<日本>年次大会 予稿集:2016』、2016 谷口文保・ばんばまさえ・小越将吾、「障害者福祉施設と 大学の連携による地域に共創を誘発するアートプロジェ クトの研究/―コラボ・ショール室津を身にまとう―」、神 戸芸術工科大学紀要『芸術工学』、2015

参照

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