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住民が排出する廃棄物の量的な増加と、それらが適切に 管理されない場合に生じる環境および人間の健康に対する 脅威は、過去数十年間に多くの国々が直面している問題の 一 つ で あ る。 ま さ し く、 「人 間 活 動 は 廃 棄 物 を 生 み 出 す が、環境と公衆衛生に対するリスクとなりうるのは、廃棄 物 の 取 り 扱 い、 保 管、 収 集、 処 理 の 方 法」 な の で あ る ( Zurbrugg 2002: 1 )。 国 連 開 発 計 画 (U N D P) に よ る 世 界一三五都市の市長に対する調査によれば、廃棄物処理問 題は 「 最も深刻な 」 都市問題として第三位に位置づけられ ている ( Badshah 1996 ) 。 固 形 廃 棄 物 の 不 適 切 な 処 理 は 空 気 ・ 土 壌 ・ 水 質 汚 染 の 原 因 と な る 。 固 形 廃 棄 物 の 流 出 は 澱 ん だ 昆 虫 培 養 水 を 作 り 出 し 、 と り わ け 都 市 部 で は 雨 季 に お け る 洪 水 の 原 因 と な る 。 ま た 昆 虫 お よ び げ っ 歯 類 の 保 菌 者 は 、 コ レ ラ や デ ン グ 熱 と い った感 染症を 広め ること にも なる ( IBRD/WB 1999 ) 。ア ジアでは毎年約六六〇万人がさまざまな環境的健康リスク の た め に 亡 く な っ て お り 、 こ れ は 全 死 者 数 の お よ そ 四 分 の 一 を 占 め て い る ( AIT 2008 ) 。 さ ら に 発 展 途 上 国 に お け る 野 外 投 棄 場 の 拡 大 は 、 環 境 問 題 と 健 康 問 題 を 引 き 起 こ し て い る だ け で な く 、 付 近 に 暮 ら す 人 々 の 生 命 ま で を も 脅 か し て い る 。 た と え ば 、 豪 雨 に よ る 野 外 投 棄 場 の 崩 落 に よ っ て 、 二〇〇〇年七月にフィリピンのパヤタスの野外投棄場では 二 〇 〇 人 が 亡 く な り 、 二 〇 〇 五 年 二 月 に イ ン ド ネ シ ア の ル ウィガジャの野外投棄場では一四七人が亡くなっている。 こうした廃棄物の問題に対処するための政策も立案・実 行されているが、現在に至るまでこの問題は中央・地方政 府さらには国際機関にとっての課題であり続けている。廃 棄物のガバナンスという争点ないし問題関心は、国内外の 討 論 会 や 会 議 に お け る 重 要 な ト ピ ッ ク の 一 つ と な っ て い る。天然資源の有限性の認識ならびに廃棄物問題が世界的 な 関 心 事 と な る な か で、 日 本 か ら は 小 泉 首 相 (当 時) が 二 〇 〇 四 年 の 主 要 国 首 脳 会 議 (G 8 サ ミ ッ ト) に お い て「3 R (リユース、リデュース、リサイクル) イニシアティブ」 を提唱した。さらに二〇〇九年一一月一一日と一二日に東 京で開催されたアジア3R推進フォーラム推進会合では、 アジア諸国一五ヶ国と一六の国際機関からの代表と廃棄物 管 理 の 専 門 家 が 出 席 し、 「ア ジ ア 3 R 推 進 フ ォ ー ラ ム の 設 立に関する東京3R宣言」が採択された ( MOEJ n.d. ) 。 アジア諸国の間では、地方レベルでこの宣言に則って政 策を実行するというコミットメントは存在するが、3Rを 実行するための技術と方法が利用可能な資源と現実の条件 に依存するため、国ごとに異なるというのが実情である。 発展途上国の大半では、地方における固形物の廃棄は 「 有 機的に 」 行われている。というのは、それらの多くは焼却 が困難であり、処理のためには微生物分解が必要とされて いるからである。さらに、廃棄物の収集、分解、再利用に 積極的に従事する膨大な数のインフォーマル ・ セクター関 係者が必要となる。廃棄物を管理する資金的 ・ 人的資源は 大幅に不足しており、また都市部では廃棄物の回収をより 効率的にする物的インフラが不足している関係で、そのた め 「 ロー ・ テク 」 な解決が必要とされる状況となっている ( UNEP-IETC 1996 ) 。 シャインバーグらの最近の研究において、廃棄物の性質 は国の所得水準によって異なっていることが明らかにされ て い る ( Scheinberg, Wilson and Rodic 2010 ) 。 彼 ら の 発 見 によれば、高所得国ではごみのうち有機物が二九%である のに対して、中所得国と低所得国ではそれぞれ六七%およ び七一%である。中所得国ではその他のごみが紙 (八%) 、 ガ ラ ス (二 %) 、 金 属 (一 %) 、 プ ラ ス チ ッ ク (一 〇 %) と なる。 さらに、国ごとの経済状態の違いが廃棄物に対する認識 および定義に影響を与えることにもなっている。先進国で は電化製品、家具調度品、新聞、雑誌、衣料品といった中 古品の処分は費用がかかるような、いわゆる廃棄物である と認識されている。しかしながら、発展途上国ではこれら は高価な商品であると認識されているため、修理・修復さ れ る な ど し て、 再 利 用 さ れ て い る の で あ る ( Damanhuri 2010 ) 。 こうした廃棄物管理の複雑さを踏まえて、本稿では廃棄 物管理におけるグッド・ガバナンスを通じた参加の重要性第Ⅱ部
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と い わ れ て い る ( Motavilli et al. 2005 ) 。 こ う し た 大 都 市 へ の人口 集中の増大は 、 主によりよい 機会と他の生 活手段を 求 め て の 地 方 か ら 都 市 へ の 絶 え ざ る 移 住 に よ る も の で あ る 。 とりわけ発展途上国におけるこうした予測可能な都市人 口のトレンドを踏まえれば、政府や都市計画策定者が都市 環 境 の 改 善 政 策・ 計 画 を 作 成 す る 際 に は、 (多 く の メ ガ ・ シ テ ィ で 懸 案 事 項 と な っ て い る) 固 形 廃 棄 物 の 増 加 に 配 慮 しなければならないだろう。発展途上国の大半では資源の 制 約 に よ っ て、 政 府 は 都 市 廃 棄 物 の 適 切 な 収 集 と 処 理 と いった基本的なサービスを住民に提供することに失敗して きた。多くの場合において、産業廃棄物やごみ処理サービ スにお金を払うことのできる中産階級の出す廃棄物だけが 定期的に回収されている事例がほとんどである。したがっ て、スラムやインナー ・ シティといった地域から出るごみ は回収されずに放置され、すでにごみが一杯で汚染された ような場所に不法に投棄されているのである。
Ⅱ
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「フ ィ リ ピ ン 環 境 ガ バ ナ ン ス ( Ecogov ) 」 は、 劣 悪 な ガ バナンスは国の環境と天然資源の不適切な管理をもたらす と述べている。地方レベルにおいては、資金の制約が地方 政 府 単 位 (L G U) の コ ン プ ラ イ ア ン ス を 制 約 し、 し ば し ば透明性、アカウンタビリティ、参加型意思決定を十分に 提供することができないでいる。中央レベルにおけるガバ ナンスの劣悪さは、集権化された意思決定と地方の実情に 適合していない政策に如実に表れている ( Ecogov n.d. ) 。 一九八〇年代以降、フィリピン政府はさまざまな環境問 題に対処するうえで、ガバナンスの重要性を認識しており (日 本 環 境 会 議 二 〇 〇 五) 、 実 際 に、 N G O や そ の 他 の 市 民 グ ル ー プ は、 政 府 の 政 策 に 影 響 を 与 え る ポ テ ン シ ャ ル を もっている。 フィリピンでは、コラソン・アキノ政権が一九八七年の 憲法改正で、非営利の私的セクターの役割を賞賛し、それ が環境ガバナンスの急速な発展に寄与したことを明示する 条 項 を 追 加 し た (日 本 環 境 会 議 二 〇 〇 五) 。 さ ら に 一 九 九 一 年 の 地 方 自 治 法 に は、 「市 町 村 お よ び 県 レ ベ ル に お い て は地方開発局の職員の二五パーセント以上をNGO/NP O に 割 り 当 て る こ と」 と い う 条 項 が あ り ( Laquian 2005: 130 ) 、 共 和 国 法 九 〇 〇 三 ( RA 9003 ) と し て 知 ら れ る 二 〇 〇〇年の固形廃棄物管理環境法の施行の時も、政府はLG UとNGO、さらに私的セクターが固形廃棄物管理にさら に 積 極 的 に 参 加 す る こ と を 奨 励 し た の で あ る ( Republic of the Philippines, RA 9003 ) 。 を強調する。まず主要な議論に入る前に、都市人口の急激 な増加、工業化、近代化といった廃棄物の量的増加をもた らすいくつかの要因について議論する。資源の制約から政 府だけではさまざまな廃棄物問題を解決できないという事 実 を 踏 ま え て、 本 稿 で は N G O、 イ ン フ ォ ー マ ル ・ セ ク ター、公的組織および私的組織といったさまざまな利害関 係者の参加の必要性を論じたい。また、ガバナンスの透明 性や利害関係者の権利意識といった、とくに参加を促進す る要因についても議論する。 他のアジア諸国の事例も引用するが、本稿における議論 は主にフィリピンの経験に関するものであり、市民の参加 を通じた廃棄物管理に対するさまざまな懸案事項に応える 近年のフィリピン国内での取り組みに焦点を当てている。Ⅰ
都市化・工業化
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廃棄物管理
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及
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影響
都 市 化 は 都 市 部 に お け る 貧 困 を 急 激 に 増 大 さ せ て い る ( Badshah 1996 ) 。経済活動の大半は都市部に集中している ため、多くの農村住民にとって都市部への移住は魅力的な ものである。しかしながら、こうした都市人口の急激な増 加 は、 都 市 部 に お け る 極 端 な 生 活 条 件 の 悪 化 を も た ら し た。都市は工業化と経済発展の中心である一方で、過酷な 貧困と不衛生が蔓延する場所でもある。 都市における膨大な需要のため、多くの国の政府は十分 な住居、水と食料、衛生的な生活環境といった人々のベー シック・ニーズに応えることができないでいる。そのため 都市住民の間では雇用機会を巡る熾烈な競争が生まれ、最 も苦い思いをするのが貧困層や社会の周辺的な階層の人々 であるといったような状況が生まれる。都市におけるこう した劣悪な生活条件にもかかわらず、いまだに多くの人々 は都市への移住を望み、見捨てられた田舎に留まるよりも 都 市 で 生 き 残 り、 「よ り よ い 生 活」 を 手 に 入 れ る チ ャ ン ス を求めている。 第二次世界大戦以降のメガ ・ シティ * 1 の拡大もまた廃棄物 問題の 深刻化に寄与 したといえよ う 。一九六〇年 代の初頭 には 、発展 途上国の人 口の約二〇% が都市に居住 していた の み だ っ た ( Rapten 1998 ) 。 フ ィ リ ピ ン の 首 都 の メ ト ロ ・ マ ニ ラ ( M M ) は 当 時 、 人 口 三 〇 〇 万 人 以 下 で あ り 、 世 界 的 に み て も メ ガ ・ シ テ ィ は 三 〇 都 市 も な か っ た ( Laquian 2005 ) 。 し か し 二 〇 〇 七 年 八 月 の 国 家 統 計 局 ( N S O ) に よ る 二 〇 〇 七 年 版 セ ン サ ス に よ れ ば 、 メ ト ロ ・ マ ニ ラ の 人 口 は す で に 一 一 〇 〇 万 人 以 上 と な っ て い る ( NSO 2011 ) 。 さ らに二〇一五年までにメガ ・ シティは世界中で三三都市と なり 、その うち二七都 市が発展途上 国に集中する であろうⅢ
地域社会
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動員
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必要性
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社会運動
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役割
一 九 八 〇 年 代 に 、 環 境 N G O と 社 会 運 動 の 成 長 は フ ィ リ ピ ン で 顕 著 な も の と な っ た ( 日 本 環 境 会 議 二 〇 〇 五 ; Magalona and Malayang 2001 ) 。「 持 続 可 能 な 成 長 に 向 け た 国 家 戦 略 」 ( The Philippine Strategy for Sustainable Development ) も 一 九 八 九 年 に 採 択 さ れ、 「N G O は 市 民 を 動 員 し、 N G O と政治制度のネットワークの構築を通じて環境マネジメン トに市民を積極的に参加させ、地域社会を組織化し、公的 な情報の発信を行い、研究とアセスメントを行い、環境に 関する監視とモニタリングを行い、その他同様の活動を行 う も の と す る」 と い う こ と が 強 調 さ れ た ( Magalona and Malayang 2001: 72 ) 。 イ ン ド、 イ ン ド ネ シ ア、 中 国、 台 湾、韓国といったその他のアジア諸国における環境NGO の 数 も ま た 一 九 八 〇 年 代 以 降 増 加 し て い る (日 本 環 境 会 議 二〇〇五) 。 マグノはフィリピンにおける環境運動の起源と変容を三 つ の 時 期 区 分 に 類 型 化 し て い る ( Magno 1999: 148-149 ) 。 第 一 期 (一 九 七 八 ― 八 五 年) に お い て 環 境 運 動 は、 市 民 を 開発計画への参加から排除したことに由来する環境汚染、 資源へのアクセスの不平等性、非民主的な政治経済構造を 打倒するべく結成された。他方で、マルコスの追放とコラ ソ ン・ ア キ ノ 政 権 発 足 に よ っ て 特 徴 付 け ら れ る 第 二 期 (一 九 八 六 ― 九 一 年) に お い て は、 新 政 権 が 社 会 変 革 に お け る NGOと市民組織の役割を認識することとなった。新憲法 も ま た 国 民 福 祉 を 増 進 す る N G O と 地 域 社 会 組 織・ セ ク ターの活動を奨励し、民主制の下で、環境・開発NGOの 数 は 全 国 で 急 激 に 増 加 し た。 第 三 期 (一 九 九 二 ― 九 七 年) においては、NGOはガバナンスの過程において顕著な活 動を行ってきた ( Magno 1999 ) 。 近 年 の 研 究 で は、 「環 境 問 題 へ の 取 り 組 み に つ い て、 政 府と企業に説明責任を果たさせる独立した番犬」としての NGOの重要な役割が明らかになってきている。市民から の圧力は、地域社会が動員され、潜在的な汚染者を監視す る力が付与された場合には、とりわけ環境問題への取り組 み を 改 善 す る 強 力 な 推 進 者 と な る ( Qadri 2001: 35 ) 。 ジ ャ ニ ス・ パ ー ル マ ン は、 「近 隣 諸 国 の 技 術 革 新 の 成 功 の 背 景 に は、 草 の 根 の 指 導 者 に 試 練 を 課 す よ う な 仕 組 み が 存 在 し、……彼らは生来的に革新的な考え方や行動様式を備え て い る 」 と 述 べ て い る ( Perlman and Hopkins 1998: 68, 65 ) 。 彼 女 は さ ら に、 「こ う し た 指 導 者 た ち を 互 い に 結 び つ け、 さらに中心的な意思決定者に結び付けることで、彼らの持 つ影響力と想像力が合わされば、都市や地域社会において 真の意味での変革を同時的にもたらす強力な力になるだろ う」と述べている (Perlman and Hopkins 1998: 3
) 。 したがって、地域住民のスキルと能力が活用されるだけ でも、固形廃棄物管理という大問題に対処する上では大き な助けとなるだろう。政府における限られた人的資源を踏 ま え る な ら ば、 こ こ に N G O が 入 り 込 む 余 地 が 大 い に あ る。多くのアジア諸国で市民組織の数は増加しており、環 境ガバナンスに対する影響力も増大しているとされている ( Qadri 2001 ; Hopkinson 2001 ) 。
Ⅳ
健全
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先行研究によれば、人口増加と現代的な生活スタイルは 固形廃棄物の増加に大きく寄与している。とりわけ、発展 途上国における急激な都市化と人々の不適切な廃棄物処理 に 対 す る 態 度 は、 固 形 廃 棄 物 問 題 を さ ら に 悪 化 さ せ て い る。財政的・技術的資源の制約から、発展途上国は非効率 な固形廃棄物収集と処理施設の不足から引き起こされる環 境的・健康的問題により一層苦しんでいるのである。 したがって、廃棄物管理の問題に対処するための適切な アプローチの特定が非常に重要となる。技術移転の問題に 関していえば、受入国の適性は十分に査定されず、単に提 供国の規範と経験に基づいて行われているのが実情である ( Ogawa 1996 ) 。こうした技術と条件の「ミスマッチ」は、 多くの固形廃棄物管理プログラムが失敗し、あるいは持続 不可能となる理由の一つである。たとえば、日本やシンガ ポールのような先進国の大半では焼却炉の利用が効果的で あっても、費用の高さなどのために、発展途上国の多くで は焼却炉の利用はあまり受け入れられないのである。フィ リピンでは、ダイオキシンその他の汚染物質の存在を根拠 として、一九九九年の清浄空気法、および共和国法八七四 九 ( RA 8749 ) の 下 に 政 府 が 焼 却 炉 の 利 用 を 禁 止 し て い る (日本環境会議 二〇〇五 ; Terazono et al. 2005 ) 。また、焼 却炉の利用が代替的なエネルギー源になりうるとしても、 この種の技術は高いレベルの技術力と資金を必要とし、発 展途上国の大半では手に入らないのである。 発展途上国における廃棄物の性質と経済社会的条件を考 慮すれば、シンプルでコストの低い技術の利用とさまざま な利害関係者の参加の促進が、健全な廃棄物管理に向けた 取り組みにおいては最も適切かつ効果的なアプローチとな るだろう。これらは環境的 ・ 健康的な関心事に対処するこ とのみならず、あとで述べるように、貧困削減にもつなが るかもしれない。しかし問題は、どのように参加を促し、 資 源 制 約 が あ る 状 況 下 で は ど の よ う な 戦 略 が 可 能 か、 といったことになろう。ツヴィープとダスクは市民参加のた め の 三 つ の 条 件 を 挙 げ て い る。 そ れ は、 「情 報 へ の ア ク セ ス、意思決定手続きへの関与、そしてそれらを可能にする 法的・行政的救済手段」である (
Zwiep and Dusk 1996
) 。 政府だけでは固形廃棄物問題を解決できないことを認識 し た 上 で、 こ こ で は さ ま ざ ま な 社 会 セ ク タ ー の 重 要 な 役 割、とりわけ固形廃棄物のガバナンスにおける市民社会の 影響力の増大に着目する。また本稿は、透明性のあるリー ダーシップ、参加型意思決定、アカウンタビリティからな る「グッド・ガバナンス」の適用がどのように廃棄物管理 における問題に対処する上で効果的な手段となりうるのか を明らかにする。したがって、本稿において「環境ガバナ ンス」とは、発展途上国、とりわけフィリピンにおける健 全な固形廃棄物管理の実行に向けた政策規制者、さまざま な団体、地域社会、必要とされる技術といった固形廃棄物 管理のさまざまな要素を統合するメカニズムとプロセスの ことをいう。 政策決定者は、政府とLGUを含み、廃棄物管理プログ ラムのリーダーないし法的執行者として重要な役割を果た す。 他 方 で、 そ の 他 こ の 問 題 に か か わ る 団 体 に は、 N G O、 市 民 組 織、 企 業、 そ の 他 公 的・ 私 的 団 体 (研 究 所、 学 校、 大 学) な ど が 挙 げ ら れ る。 ま た、 地 域 社 会 な い し 地 域 住 民 (家 計) は、 廃 棄 物 管 理 プ ロ グ ラ ム を 実 行 す る 上 で の 重要な利害関係者である。これらの部門の参加ないし不参 加はプログラムの成否に大いに影響を与える。さらに、現 実的な条件と利用可能な資源に基づいた適切な技術の選定 は、固形廃棄物管理問題に対処する上で重要となる。こう した技術は、 「ハード」 (装置、施設など) と「ソフト」 (廃 棄 物 最 小 化、 使 用 料、 人 的 資 源 の 開 発、 情 報 の 普 及 な ど) の 二 種 類 に 分 類 す る こ と も 可 能 で あ ろ う ( Ocenar 2001: 4 ; Ogawa 1996: 72 ) 。
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参加
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固形廃棄物管理のような慢性的な問題に対処する上で、 問題の根本原因を特定し、財源および人的 ・ 技術的側面か ら利用可能なリソースを特定することは、実現可能な解決 策と戦略を決定する上で重要である。いわゆる「完全では あるが、実行不可能な技術的システムないし政策枠組み」 を設計することは論理的ではない。利用可能な資源と制約 を 慎 重 に 考 慮 す る こ と に よ っ て、 わ れ わ れ は、 「す べ き こ とを決定し、可能なことに労力を集中する」ことができる のである ( UNEP-IETC 1996: 16 ) 。 以下では、フィリピンとその他のアジア諸国における経 験 か ら い く つ か の 成 功 事 例 を 取 り 上 げ て 議 論 す る。 本 稿 は、こうした経験から引き出しうる洞察が、その他の似た ような条件の地域でも適用できる可能性についての教訓や 課題を提供することを試みるものである。ここで示される 事例は、理論上だけでなく、実際に有効性が証明された実 行可能な戦略に基づいている。また、以下では、健全な固 形廃棄物管理戦略の適用に付随するさまざまなメカニズム (利害関係者) とプロセス (意思決定) に焦点を当てたいと 思う。1
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固形廃棄物管理
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概要
固 形 廃 棄 物 管 理 問 題 の 危 機 的 状 況 、 な ら び に そ れ が 解 決 さ れ な い 場 合 に 環 境 お よ び 人 間 の 健 康 に も た ら さ れ る 脅 威 に 対 す る 反 応 と し て 、 フ ィ リ ピ ン 政 府 は 二 〇 〇 一 年 一 月 二 六 日 に 共 和 国 法 九 〇 〇 三 ( RA 9003 ) を 制 定 し た 。 こ れ ま で の 部 分 的 な ア プ ロ ー チ を 用 い た 環 境 政 策 と は 異 な り 、 こ の 法 令 は 固 形 廃 棄 物 管 理 問 題 に 対 す る 包 括 的 な ア プ ロ ー チ を 採 用 し た も の と な っ た 。 ま た 当 該 法 令 は 、 公 衆 衛 生 と 環 境 保 護 を 保 証 す る 体 系 的 、 か つ 環 境 に 配 慮 し た 固 形 廃 棄 物 管 理 プ ロ グ ラ ム を 採 用 す る 国 家 の 意 思 を 表 明 し た も の で も あ っ た ( Republic ofthe Philippines, RA 9003, Article 1, Section 2
) 。 政策規制者 技術 環境 ガバナンス 健全な固形廃棄物管理 ◎有効性 ◎持続可能性 ◎再現可能性 図1 健全な固形廃棄物管理に向けた環境ガバナンス (出所)Atienza 2009.
この法令の施行に際しては、LGUが主要な役割を担う こ と (第 一 〇 節) 、 残 存 廃 棄 物 の 最 終 処 理 場 と し て の 野 外 投 棄 場 を す べ て 閉 鎖 し、 代 わ っ て 衛 生 埋 立 地 (S L F) が 造 成 さ れ る こ と (第 三 七 節、 四 〇 ― 二 頁) 、 当 該 法 令 施 行 か ら 五 年 以 内 に 二 五 % の 削 減 を 目 標 と し (第 二 〇 節) 、 上 流 に お け る 分 別 (第 二 一 節) 、 す べ て の 市 町 村 に お け る 廃 棄 物 再 利 用 施 設 (M R F) の 造 成 (第 三 二 節) 、 す べ て の セ ク タ ー の 参 加 (第 五、 一 一、 一 二 節) を 通 じ て 実 行 す る と し て い る。 ま た 市 民 の 参 加 を 奨 励 す べ く、 あ ら ゆ る 個 人、団体、法人および政府当局で法を遵守しない者に対し ては、すべての者が民事 ・ 刑事 ・ 行政訴訟を起こすことが で き る と 定 め て い る (第 五 二 節) 。 国 家 固 形 廃 棄 物 管 理 委 員 会 (N S W M C) は 関 連 す る 政 府 機 関、 N G O、 法 人 と 協力して固形廃棄物管理に対する市民の意識向上のために 啓 蒙 活 動 の 継 続 な ら び に 促 進 を 委 任 さ れ て い る (第 五 五 節) 。 ま た、 学 校 カ リ キ ュ ラ ム 上 の 全 課 程 に お け る 環 境 事 項についてもその重要性が強調されている (第五六節) 。 他の発展途上国と同様に、フィリピンにおける廃棄物の うち高い割合を有機物と再利用可能なごみが占めている。 たとえば、メトロ・マニラでは図2が示すように、廃棄物 の大部分が微生物分解可能で再利用可能なごみである。さ らに図3が示すように、こうしたごみの七四・一四%が家 庭ごみであり、一六・九〇%が商業施設から出るごみであ る。このことが意味するのは家庭と商業施設がごみを適切 に分別し、リサイクルを実行するだけで、非常にわずかな 量の廃棄物が処理施設に捨てられるだけで済むようになる ということである。というのは、台所から出るごみは微生 物分解に回し、再利用可能なごみは自治体の廃棄物再利用 施設において商業用途で保管するか、もしくは再利用可能 商品用の原料として利用しうるからである。このように、 処理施設に捨てられるごみの量が減るだけでなく、廃棄物 処理にかかる経費の多くが削減できる上に、バランガイ * 2 や 地 域 社 会 に と っ て は 追 加 的 な 収 入 源 と も な り う る の で あ る。収入源として清掃、廃棄物売買に依存する膨大な数の インフォーマル・セクターが存在し、メトロ・マニラだけ でも生活のためにこうした活動に従事する人々は四〇〇〇 人ほどいるのである ( Atienza 2009 ; DENR/ADB 2003 ) 。 フ ィ リ ピ ン の 置 か れ て い る 状 況 の 顕 著 な 特 徴 は 、 廃 棄 物 の保管とその管理を含む環境保護プログラムの促進に積極 的 に 関 与 す る 環 境 N G O の 数 が 非 常 に 多 い こ と で あ る 。フ ィ リ ピ ン 証 券 取 引 委 員 会 の 記 録 に よ れ ば 、 一 九 九 七 年 で 五 万 八 〇 〇 〇 以 上 の 部 門 別 団 体 が 登 録 さ れ て お り 、 お そ ら く さ らに数千の団体がインフォーマルに活動していると思われ る ( Laquian 2005 ) 。 環 境 天 然 資 源 局 ( D E N R ) に も 一 万 以 上 の 環 境 N G O / N P O が 登 録 さ れ て い る ( Magalona and Malayang 2001 ) こ と か ら も 、 フ ィ リ ピ ン は ア ジ ア で も 45% 7% 1% 5% 1% 17% 4% 16% 1% 3% 生ごみ 草・木材 革・ゴム 金属 陶器・石材 紙 繊維 プラスチック ガラス その他 74.14% 7.50% 9.40% 7.60% 0.80%0.14%0.40% 家庭 商業施設(レストラン) 商業施設(小売店) 卸市場 公共施設 街路清掃 河川清掃 図2 メトロ・マニラにおける廃棄物の構成 (出所)MMDA. 2007 図3 メトロ・マニラにおける廃棄物の発生源 (出所)MMDA. 2007
八トンのその他のごみが自治体のトラックによって毎週土 曜日に混合収集されている ( Atienza 2008 ; Pantua 2008 ) 。 バグンブハイ・バランガイ バグンブハイ・バランガイは、住民が再利用可能な廃棄 物 と 交 換 に ポ イ ン ト を も ら い、 そ の ポ イ ン ト を 米、 医 薬 品、石鹸、シャンプーなどと交換できる「廃棄物取引プロ グ ラ ム」 ( Basura Mo, Ipalit Mo ) を 通 じ て 廃 棄 物 管 理 に お けるブレーク・スルーを達成した。シンプルで低コストの 技 術 を 利 用 す る こ と で、 バ ラ ン ガ イ に お け る リ サ イ ク ル (主 に プ ラ ス チ ッ ク) を 成 功 さ せ た。 バ ラ ン ガ イ は 微 生 物 分 解 を 通 じ て 生 ご み 問 題 に 対 処 し、 こ う し た 活 動 を 通 じ て、ごみを六五%削減し、わずか三年でごみ回収の回数を 一 週 間 あ た り 一 〇 回 か ら 一・ 五 回 ま で 減 ら す こ と が で き た。これらの結果、バグンブハイ・バランガイはケソン市 政 府 か ら 一 二 〇 万 ペ ソ に 及 ぶ 報 奨 金 を 二 〇 〇 六 年 に 受 け 取り * 3 、報奨金はプログラムの継続費用に充てられることと なった。さらにバグンブハイ・バランガイは、肥料を一キ ロ当たり五ペソで養豚農家に売ることで副収入を得ること ができるようになった。またそれを二等分することで「エ コ警察」とごみ回収業者も副収入を得ることができるよう になったのである ( Atienza 2008 ) 。 NGOの重要な役割に関する事例として、マザー・アー ス 財 団 (M E F) の 経 験 に つ い て 議 論 し よ う。 M E F は フィリピンの固形廃棄物管理において最も有力なNGOで あ る と 認 識 さ れ て お り、 共 和 国 法 九 〇 〇 三 ( RA 9003 ) 制 定 に 向 け た ロ ビ イ ン グ の 第 一 線 に あ っ た。 ま た リ サ イ ク ル、再利用、堆肥化を通じた廃棄物の早急な再生を意味す る「廃棄物ゼロ管理」を推進していることでも知られてお り、またボトム・アップのアプローチとロー・テクかつ低 コストの固形廃棄物管理を支持している。活動の中にはセ ミナーの開催、廃棄物再生施設の建設、再利用可能廃棄物 の経済的利用の促進もある。これらのセミナーでは「内的 エ コ ロ ジ ー」 (環 境 倫 理) お よ び「外 的 エ コ ロ ジ ー」 (実 践 的 廃 棄 物 再 生) と 呼 ば れ る テ ー マ な ど に つ い て 議 論 が 交 わ されている ( Ancheta 2004 ) 。 カローカン市 カローカン市はメトロ・マニラ地域においてケソン市に 次ぐ第二の都市であり、MEFからトレーニングを受けた 都市の一つである。LGUおよびその他のセクターとの協 働 に よ り、 M E F は 共 和 国 法 九 〇 〇 三 ( RA 9003 ) の 啓 発 のために固形廃棄物管理のセミナーを開催し、廃棄物ゼロ 管理を促進するためにバランガイの廃棄物再利用施設の建 設と運営を支援している。総会は毎月開催され、市長、M EF、一八八のバランガイの首長らが一堂に会して固形廃 最も活動的で影響力のある市民社会を有する国の一つとし て知られているのである。
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︱︱ い く つ か の 成功事例 資源制約が存在するなかで、効果的に廃棄物管理を実施 しうることを証明して見せたフィリピンにおける近年の取 り組みは以下のような活動に見て取れる。たとえば、参加 と 地 域 社 会 の 動 員 の 促 進、 個 人・ 地 域・ 学 校 に お け る 情 報・ 教 育・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン (I E C) キ ャ ン ペ ー ン の 実施、廃棄物再利用施設、廃棄物の分別施設の建設といっ たシンプルな技術の応用、インフォーマルな廃棄物処理セ クターの再評価、モデル地域の選定、廃棄物取引プログラ ム、 再 利 用 品 の 回 収 イ ベ ン ト (R C E) 、 廃 棄 物 マ ー ケ ッ トといった活動がそれにあたるであろう。 こうした取り組みの中からいくつか成功事例を挙げる上 で、バランガイおよび都市の経験と同時にNGOやその他 の利害関係者の重要な貢献についても議論したい。自治体 の参加を促進するために、DENRは廃棄物管理における モデル地域の選定を始めた。筆者は、以前にラグーナのロ ス・バニョスとケソン市のバグンブハイ・バランガイの二 つの自治体の経験について、どのようにそうした自治体が 参加し、IECキャンペーン、低コストの地元技術の活用 を通じて廃棄物管理におけるブレーク・スルーを達成した の か に つ い て 議 論 し た こ と が あ る ( Atienza 2008 ) 。 ち な みに、両者ともにモデル地域に選ばれている。 ロス・バニョス ロス・バニョスにおける大きな転換点は、野外投棄場を 廃 棄 物 処 理 セ ン タ ー に 変 え た こ と (D E N R は 廃 棄 物 再 利 用 施 設 と み な し て い る) 、 お よ び 既 存 の イ ン フ ォ ー マ ル・ セ ク タ ー を 正 式 な 団 体 に 再 編 成 し た こ と (「ロ ス・ バ ニ ョ ス 固 形 廃 棄 物 団 体」 (L B ― S W O) と し て 知 ら れ て い る) である。これはロス・バニョス政府、ロス・バニョス科学 技術地域財団 (LBSCFI) 、 フィリピン自然研究会 (P S S N) 、 そ の 他 の 協 力 に よ っ て 実 現 さ れ た。 こ れ は ま た ボランティアと強力なIECキャンペーンを通じた参加型 意思決定、セクター間の対話、地域社会の動員などを通じ て可能となった。自治体もまた「分別なければ回収なし」 という方針に加えて、商業施設におけるプラスチック、発 泡スチロール、使い捨て品の不使用、生ごみの微生物分解 (野 菜、 果 物、 花 の 肥 料 と し て の 利 用) 、 再 利 用 品 の 適 切 な 管理などを厳格に履行した。廃棄物の分別収集の実行によ り、一日当たり約三三トンから三五トンあった固形廃棄物 が 削 減 さ れ ( Perez 2006 ) 、 一 日 当 た り 二 ト ン の 生 ご み とれている有効な戦略の一つとしては、違反者が地方メディ アで報道されるという「恥辱キャンペーン」なども行われ て い る (二 〇 一 〇 年 七 月 二 三 日、 プ エ ル ト・ プ リ ン セ サ 市 環境職員からの聞き取りによる) 。 企業部門による取り組み 廃 棄 物 の よ り 効 果 的 で 効 率 的 な 回 収 と そ の 処 理 の た め に、 環 境 問 題 に 対 す る フ ィ リ ピ ン 企 業 連 合 (P B E) は、 再 利 用 品 回 収 イ ベ ン ト と D E N R、 地 方 政 府、 企 業 部 門 (と り わ け S M ス ー パ ー モ ー ル、 ア ヤ ラ・ モ ー ル と い っ た モ ー ル 運 営 者 や リ サ イ ク ル 業 者 な ど) 、 地 域 社 会 の 協 力 に よ る廃棄物マーケットなどを実施している。廃棄物マーケッ ト は、 企 業 の 社 会 的 責 任 (C S R) プ ロ グ ラ ム の 一 環 と し て、企業部門が廃棄物管理の懸案事項に取り組んでいるも の で あ る。 二 〇 〇 七 年 か ら 二 〇 〇 八 年 以 降、 廃 棄 物 マ ー ケットが開始され、アヤラ・モール・グループは二六万七 〇 〇〇 ペソ相当の四六トンの廃棄物を回収したと報告して いる。さらにSMスーパーモールは二六〇万ペソ相当の四 一七トンの廃棄物を回収した。その結果、RCEによって 二〇〇二年の活動開始以来回収された再利用可能な廃棄物 は合計二三三六トンにも上っている ( Antonio 2010 ) 。
Ⅵ
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廃棄物処理
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フ ィ リ ピ ン に お け る そ の 他 の 近 年 の 取 り 組 み は、 「固 形 廃棄物管理におけるインフォーマル・セクターの国家的枠 組み計画」を通じたインフォーマル廃棄物処理セクターの 重要な貢献に見て取ることができる。二〇〇九年に策定さ れた固形廃棄物管理におけるインフォーマル・セクターの 国家的枠組み計画において提案された計画は、インフォー マル・セクターを組織化あるいは法人化することや、能力 開 発 及 び 資 源 へ の ア ク セ ス な ど を 含 ん で い る。 つ ま り、 「良 好 な 政 策 環 境、 ス キ ル の 向 上、 安 定 し た 生 活 手 段、 雇 用、社会サービスへのアクセスを提供すること」によって 固形廃棄物管理システムを統合することが期待されている のである ( NSWMC 2009: 34 ) 。 本稿の冒頭部分で言及したように、インフォーマルな廃 棄物処理セクターの存在は、フィリピン、インドネシア、 インドなどの多くのアジアの発展途上国で顕著となってい る。インフォーマルな廃棄物処理セクターを語る上で着目 する必要がある重要な争点の一つは、廃棄物処理に従事す る人々だけでなく、そうした活動に付随する環境と健康へ 棄物管理プログラムの実施におけるさまざまな争点につい て 議 論 し て い る。 バ ラ ン ガ イ 固 形 廃 棄 物 管 理 委 員 会 (B S W M C) は 宗 教 団 体、 ジ ャ ン ク・ シ ョ ッ プ、 学 校 そ の 他 の さまざまな団体からの代表から成り、すべてのバランガイ に お い て 設 立 さ れ た。 「分 別 な け れ ば 回 収 な し」 の キ ャ ン ペーンはすべての市で実施された。二〇〇七年六月三〇日 の時点で、一八八のバランガイすべてでBSWMCが設立 されたことが報告されている。カローカン市は一八八のバ ランガイに一七九の廃棄物再利用施設を建設し、それは基 準 の 九 五 ・ 二 一 % を 達 成 す る も の で あ っ た ( Caloocan City. n.d. ) 。 こ れ に よ っ て、 M E F、 L G U、 自 治 体 の 協 働 に よってすべてのバランガイで廃棄物再利用施設の有効な運 営 が 行 わ れ、 以 前 と 比 べ て 廃 棄 物 が 一 一 % 削 減 さ れ た ( Ancheta 2004 ) 。 こ う し た 状 況 は、 ご み の 不 法 投 棄 の 減 少 と環境への重大な脅威の減少を意味するものである。 プエルト・プリンセサ市 廃棄物再利用施設のようなシンプルな施設の設立がどの ようにSLFのような高価な技術の必要性を下げ、その寿 命を延ばしうるのかについて示す例として、パラワンのプ エルト・プリンセサの経験を紹介したい。プエルト・プリ ンセサ市は三年間最も衛生的で環境的な都市として殿堂入 り し て い る。 共 和 国 法 九 〇 〇 三 ( RA 9003 ) が 施 行 さ れ る 前の一九九九年には、フィリピン初のSLF建設の公聴会 を 開 催 し た。 ア ジ ア 開 発 銀 行 か ら 二 億 ペ ソ の 融 資 を 受 け て、 二 〇 〇 五 年 八 月 二 五 日 に 第 一 段 階 と し て 二・ 七 ヘ ク タールが建設された。当時、平均一〇〇トンの廃棄物が回 収されるという前提で、SLFの寿命は三年二ヶ月とされ ていた。しかし、現在に至るまで利用は半分にとどまって い る (四 つ の セ ル の う ち 二 つ) 。 こ れ は そ の 他 の ご み の 収 集が二〇〇五年には一日当たり一〇〇トンに削減され、現 在でもすべてのバランガイでの分別の実施によって一日当 た り 四 八 ト ン に 削 減 さ れ て い る た め で あ る (二 〇 一 〇 年 七 月 二 二 日, ア ー ル・ ブ エ ン ヴ ィ ア ジ ェ Earl Buenviaje か ら の聞き取りによる) 。 廃棄物管理の厳格な実施、とりわけ廃棄物再利用施設の 建設は二〇〇七年に開始された。この時からプエルト・プ リンセサ当局は、MEFによるすべてのバランガイへのト レーニングを実施した。六六のバランガイのうち三一は農 村部であり、三五は都市部にある。つまり、六%の都市部 に全人口の八〇%が居住していることになる。農村部では 住宅はお互いに離れており、小規模の廃棄物再利用施設が 各戸に設置されているが、都市部ではバランガイごとに設 置されている。現時点では六六バランガイのうち、三~六 つのバランガイのみがプログラムの規定を遵守していない ことになっている。モデル地域への意識とは別個に用いらフォーマル・セクターの重要な役割が再認識され始めてい る。廃棄物管理政策にインフォーマル・セクターを取り込 む計画がいくつか開始され、状況改善のための方策が行わ れ て い る。 イ ン ド で は 二 〇 〇 六 年 度 国 家 環 境 政 策 に お い て、 「イ ン フ ォ ー マ ル・ セ ク タ ー に 法 的 認 可 を 与 え、 さ ま ざまな廃棄物の回収とリサイクルのシステムを強化する。 とくに制度的な融資と関連する技術へのアクセスを向上さ せる」と述べられている (第五・二・八節三e) 。
Ⅶ
廃棄物
ガ
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排 出 さ れ る 廃 棄 物 の 種 類 と 利 用 可 能 な 資 源 を 考 慮 す れ ば、再利用、リサイクル、堆肥化を通じたロー ・ テクかつ 低コストの技術の利用が、廃棄物問題に対処する上でより 効果的であると思われる。こうしたアプローチは排出され る廃棄物の量を削減するだけでなく、より多くの収入機会 を提供することで貧困削減にも寄与している。こうした固 形廃棄物管理戦略は、シンプルで安価であると同時に、環 境的にも社会的にも受容可能であるため、より持続可能で あると考えられる。排出される廃棄物の特徴、ならびに膨 大な数のインフォーマルなリサイクル業者の存在を踏まえ るならば、SLFのような高価な技術を用いた施設の建設 は必ずしも必要であるとはいえないであろう。しかしその 代わりに、セクター間協力と強力な啓発キャンペーンを通 じた参加の促進は強化されるべきである。 図1と同様に、以上で議論した諸事例では健全な廃棄物 管 理 戦 略 の 達 成 に 関 わ る さ ま ざ ま な メ カ ニ ズ ム (利 害 関 係 者) と プ ロ セ ス (意 思 決 定) が 明 ら か に さ れ た。 固 形 廃 棄 物管理におけるさまざまな争点や懸案に対処するために、 セクター間対話、会合、IECキャンペーン等を通じてさ まざまなアクターが意思決定プロセスに関与することは、 プ ロ グ ラ ム と 政 策 の 効 果 的 な 実 施 が な さ れ る こ と に 繋 が る。これは、利害関係者間の問題をめぐる透明性、住民参 加による意思決定、アカウンタビリティによって特徴づけ られるような固形廃棄物問題へのグッド・ガバナンスの適 用による便益の一つであると言えよう。結論
廃棄物の増加とその不適切な管理が環境および人間の健 康にもたらす脅威と踏まえるならば、こうした懸案事項に は緊急に対処する必要性がある。本稿での考察によれば、 健 全 な 廃 棄 物 管 理 の 実 現 の た め に は、 住 民 側 の イ ン セ ン の危険性である。廃棄物処理に従事する人々の大半は何の 保護も無くこうした活動に従事しており、危険な廃棄物を 取り扱う場合にはリスクはより大きくなる。こうした危険 性にもかかわらず、多くのインフォーマルなリサイクル業 者は、主にその他の機会が無いことや、こうした活動のリ スクの認識不足のために危険な活動に従事し続けているの である。 ケソン市パヤタスのインフォーマル・セクターであるパ ヤ タ ス・ ア ラ イ ア ン ス・ リ サ イ ク ル 取 引 所 (P A R E) の 社員数人に対する個人的な聞き取りによれば、彼らの大半 は こ の 種 の 仕 事 が も た ら す 危 険 に つ い て は 分 か っ て い る が、生きていくために彼らに依存している家族がいるので 他に選択肢が無いと言う。しかし機会があるなら、他の種 類 の 仕 事 を 学 ぶ 意 欲 は あ る の だ と も 言 っ て い る (二 〇 〇 九 年 八 月 二 五 日) 。 パ ヤ タ ス・ オ ペ レ ー シ ョ ン・ グ ル ー プ 社 長のコロネル・ロベルト・ジャイマリン ( Coronel Roberto Jaymalin ) に 対 す る 最 近 の 聞 き 取 り に よ れ ば、 パ ヤ タ ス 当 局が管理していた投棄場の完全閉鎖に先立って、すでに一 部のインフォーマル・セクター関係者に対する代替的な生 活 手 段 に 関 す る 訓 練 プ ロ グ ラ ム が 開 始 さ れ て い る と い う (二〇一一年二月一七日) 。 また、フィリピンの環境NGOの一つである廃棄物エコ 連 合 は、 「プ ロ ジ ェ ク ト・ プ ロ テ ク ト」 と い う プ ロ グ ラ ム を行っており、有害化学物質の啓発とその危険から人々と 環境を守るというキャンペーンを実施している。二〇一〇 年八月二三日にはセブ島で化学物質の安全性に関するワー クショップを実施した。参加者の八〇%が廃棄物回収者で あり、その他は労働省、厚生省、保健省、LGUなどの政 府機関からであった。 他 方 で 、 筆 者 の 以 前 の 研 究 で イ ン フ ォ ー マ ル ・ セ ク タ ー に つ い て 議 論 し た よ う に ( Atienza 2010 ) 、 共 に 以 前 は イ ン フ ォ ー マ ル ・ セ ク タ ー で あ っ た テ ッ ク ス サ イ ク ル ( マ レ ー シ ア ) や マ ル チ ・ ハ ン ナ ・ ク レ ア シ ン ド ( イ ン ド ネ シ ア ) は 、 廃 棄 物 管 理 へ の 規 制 や 不 適 切 な リ サ イ ク ル が も た ら す 危 険 性 に つ い て 認 識 し た 際 に 、 リ サ イ ク ル 活 動 を 改 善 す る 決 意 を し た と い う 点 で 共 通 し て い る 。 ま た リ サ イ ク ル 事 業 の 潜 在 力 を 彼 ら は 理 解 し て い る の で 、 持 続 可 能 な 方 法 で ビ ジネスとして競争するために重要なことは法的な認可であ る と い う こ と を 悟 っ た の で あ る ( 二 〇 一 〇 年 一 月 一 八 日 、 テ ッ ク ス サ イ ク ル の 上 級 職 員 か ら の 聞 き 取 り 、 二 〇 一 〇 年 二 月 一 〇 日 、マ ル チ ・ ハ ン ナ ・ ク レ ア シ ン ド の 現 場 監 督 フ シ ン ・ シ ャ ハ ブ Husin Shahab か ら の E メ ー ル に よ る 回 答 に よ る ) 。 こうしたインフォーマル・セクターの活動に関わる問題 と課題にもかかわらず、とくに貧しい都市移住者にとって インフォーマルなリサイクル活動は潜在的な収入源になり う る。 近 年 で は、 一 部 の 国 で 廃 棄 物 管 理 に お け る イ ンの促進を通じてのみ実行されうるのである。また情報の共 有が参加を促進することは重要である一方で、すべての利 害関係者の権利が認められ、より健康的で持続可能な環境 の一致団結した追求とともに、とりわけ社会のより不利な 立場のセクターについての社会的・環境的側面が考慮され ることもまた重要である。 ◉注 * 1 メ ガ ・シ テ ィ と は、 国 連 に よ る 定 義 に よ れ ば 人 口 一 〇 〇 〇万人以上の都市を指す( Laquian 2005 )。 * 2 バランガイ ( Barangay ) は、 フィリピンにおける自治体 の最小単位。 * 3 共 和 国 法 九 〇 〇 三( RA 9003 ) の 施 行 を 支 援 し、 す べ て の 自 治 体 に 固 形 廃 棄 物 管 理 を 実 施 さ せ る た め に、 ケ ソ ン 市 政 府 は「バ ラ ン ガ イ に 対 す る 最 高 の 固 形 廃 棄 物 管 理 の 取 り 組 み」 と し て 知 ら れ て い る「条 例 SP-1203, S-2002 」 を 二 〇 〇 二 年 一 二 月 三 日 に 制 定 し た。 こ の 条 例 に よ れ ば、 バ ラ ン ガ イ は 最 良 の 固 形 廃 棄 物 管 理 を 実 施 す れ ば、 市 政 府 か ら 補 助 金 と い う 形 で イ ン セ ン テ ィ ブ を 受 け 取 る 権 利 を 有 す る こ と に な っ て いる。 ◉参考文献 Ancheta, Arlen A.( 2004 ) Strengthening partnership between a loc al go ve rn m en t un it an d an N GO to w ar ds e co log ica l
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