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[講演要旨] 新しい年輪年代測定法が可能にした樹木の枯死年と歴史地震記録との対比:南アルプスドンドコ沢と仁和地震の例

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Academic year: 2021

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(1)歴史地震 第34号(2019) 223頁. [講演要旨]. 新しい年輪年代測定法が可能にした樹木の枯死年と 歴史地震記録との対比:南アルプスドンドコ沢と仁和地震の例 山田 隆二*(防災科学技術研究所)・苅谷 愛彦(専修大学)・木村 誇(防災科学技術研究所)・ 佐野 雅規(早稲田大学)・對馬 あかね(総合地球環境学研究所)・李 貞(総合地球環境学研究所)・ 中塚 武(総合地球環境学研究所)・井上 公夫(砂防フロンティア整備推進機構) § 1. は じ め に 山地斜面の崩壊に伴って枯死した樹木の年輪年 代測定により,誘因となる地震の発生年代を 1 年単位 で決定し,歴史資料との対比が可能となる.近年,樹 木の細胞壁を構成するセルロースの酸素同位体比 (δ 18O)測定に基づく新しい年輪年代測定法が広が りつつある.本研究では,この手法を用いて,南アル プスドンドコ沢で発生した岩屑なだれの誘因として想 定される地震の特定と堆積過程の解明に迫った 1). 赤石山地鳳凰山東麓小武川支流ドンドコ沢に大 量に分布する巨大花崗岩質角礫群は,現地踏査お よびせき止め湖堆積層から採取した樹幹試料の放射 性炭素( 14C)年代測定に基づき,奈良-平安時代に 地震を誘因とする大規模岩屑なだれ由来と考えられ, いくつかの歴史地震が候補に挙げられている 2)(たと えば AD841 信濃,AD841 伊豆,AD878 関東諸国, AD887 仁和五畿七道). § 3. 酸 素 同 位 体 比 年 輪 年 代 測 定 法 植物試料を用いた年代測定には 14C 年代測定法 をよく用いるが,保存状態が良好で樹木の年輪・樹皮 が認められる場合には年輪年代測定法を用いること もできる.この手法は,樹木の個体間で年輪成長が 気温や降水量など気候の経年変動に同調することを 原理とし,年輪幅などの特徴的パターンから環境の 年変動を求める.未知試料の変動パターンを年代既 知試料から作成した標準変動曲線と比較する.現状 の日本では約 3000 年前まで適用可能である. 近年,年輪幅の代わりに年輪から抽出したセルロ ースのδ18O を指標とすることで,利用分野が飛躍的 に広がった 3).年輪幅の変動は主に樹種ごとに気候 変化への応答が異なり,異種間での標準変動曲線の 共有は困難であるが,セルロースの δ 18O は成長期 の相対湿度などの気象因子を反映するため変動の 相同性は異種間で高く,標準変動曲線を共有できる ことが多い.この手法の大まかな分析手順は次の通り である.(1) 樹幹試料の木口面から薄板をスライスし て整形し,セルロース以外の成分を洗浄除去.(2) 年 輪セルロースを 1 年ごとに切り出し,熱分解元素分析 計付き同位体比質量分析計にて δ 18O を測定.(3) δ 18O の経年変動パターンを標準変動曲線と対比し, 1 年ごとにスライドしながら相関係数が最も高いところ で年代決定する.. 今回用いた試料は,ドンドコ沢沿いに形成された 2 カ所のせき止め湖堆積物からほぼ完全な状態で掘 削・採取しディスク状に切り出した埋没樹幹(樹齢約 350 年のヒノキと約 300 年のツガ)である. § 3. 年 代 測 定 結 果 と歴 史 記 録 との 対 比 相関係数の解析および最外年輪や樹皮の存否な どを吟味した結果,AD885 以降数年以内(ヒノキ), AD888(ツガ)という倒伏・枯死年代を得た(図 1).年 代値の一致に基づく判断では,14C 年代から挙げられ た誘因候補のうち,仁和地震に絞ることができる. 今回,1 年単位の年代決定を行うことにより,枯死 年と歴史地震記録の間に有意な 1 年のずれが認識さ れた.これには 2 つの説明が可能である.1つは,誘 因は過去に発生した南海トラフ地震である仁和地震 ではなく,海溝型巨大地震に誘発されて糸魚川静岡 構造線沿いで起きた未確認の遠方誘発地震であっ た可能性である.なぜなら,ドンドコ沢は南海トラフ地 震の想定震源域の東端に位置しており,もし仁和地 震が岩屑なだれの直接の誘因とすると,同時期の斜 面崩壊の痕跡が西南日本の広範囲に分布すると考 えられるが,実際にはそうなっていないからである. もう 1 つは,この木が岩屑なだれに直接巻き込まれ て枯死したのではなく,地震で緩んだ地盤が後年の 降雨(たとえば仁和四年の洪水をもたらした雨 4))によ る斜面崩壊・土石流の際に倒伏し,せき止め湖堆積 物中に埋没した可能性である.今後,現地踏査を重 ねることで,地震発生から樹木の枯死に至るまでの過 程をより詳細に復元できるかもしれない. 文献 1) Yamada, R. et al., 2018, Quat. Geochronol. 44, 47-54. 2) 苅谷愛彦, 2012, 地形 33,297-313. 3) 中塚武・佐野雅規, 2014, 月刊地球号外, 第四紀研究に おける年代測定法の新展開 (III), 106-113. 4) 井上公夫, 2018, 本大会講演要旨集. 25.00 23.00 21.00 23.00 21.00 19.00 2.00 0.00 -2.00. - 223 -. 500. 600. 700. 800. 図 1. 相関係数最大時の年輪δ18O の変動パターン.. 900.

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