大学アドミニストレーション研究 第8号(2017年度)
アカデミック・アドバイジングによる修学支援と質保証
-資格取得コースの課題-
中村 章二 【要旨】 大学の単位により様々な資格を取得することも多いが、これには高等教育の成果で ある単位が社会的な信頼を得ている背景があり、大学は社会に対し単位の認定に関し 責任を有していると言える。この単位については、1単位の授業科目は45時間の学修 を必要とする内容をもつて構成することが標準と定められているが、実際には学期毎 の履修登録単位数が多いことから基準に基づく授業運営が行われているとは考えに くい。これは、万人に平等な「時間」の概念から考えると、十分な学習成果を学生が身 に付けられず結果として資格の信頼性が保てない可能性がある。 本論文は、資格の代表として「教員免許状」を取り上げ、関係大学へ行った質問紙 調査により教育システムと教務系業務を調査・分析し、修学指導にアカデミック・ア ドバイジングの手法を導入することで、大学教育の質を保証するとともに資格の社会 的信頼性を保とうとするものである。 キーワード:単位制度、教育の質保証、資格、アカデミック・アドバイジング、教員 免許状 はじめに 大学の主要な成果として「単位」があり、様々な資格が大学の科目・単位修得により取得でき ることも多い。この単位は英語で「Credit」と表されるように「信用」との意味が含まれており、 高等教育の成果である単位が社会的な信頼を得ていると考えられ、大学は単位について社会に 対し責任を有している。この単位については、大学設置基準において「一単位の授業科目を 四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準」と定められているが、実際 に各大学の1セメスターに修得する単位は多く、基準に基づく授業運営が行われているとは考 えにくい。これは、学期毎の修得単位が一定を超えた段階で1単位当たりの学習時間が減少し 十分な学習時間が確保できないため、学ぶ内容が不十分となると考えられる。このことは、資 格のために多くの単位を必要とする資格取得コースに顕著であり、取得した資格のみならず、 単位を授与した大学が社会の信頼を得られないことも考えられる。 本研究では、資格の中から「教員免許状」を取り上げ、CAPとGPA等の教育システムのほか、 教員免許取得の修学指導体制を調査するために、全国の国立大学及び小学校1種教員免許状を取得できる公私立大学を対象に質問紙による調査分析を行ったほか、伝統的な教員養成大学の 履修ガイドを基に修学指導とキャリア支援に関し担当者へインタビュー調査を行った。 このような教育システム、特にCAPの設定単位数に基づく研究は、制度の導入や自大学の制 度によるものが多く、全国的な調査により具体的な設定単位数から質保証を論じた研究は見当 たらず、客観的な資料の分析から得た課題を基に質保証に向けた検討を進めることは重要な視 点と考えている。また、教育改革を支える教務系業務の現状を示し、学生の能力を引き上げる アカデミック・アドバイジングの手法を検討することで職員業務の充実を図るものである。 なお、教員免許状の正式名称は教育職員免許状だが、ここでは「教員免許」とし、教員免許の 取得を目的としたコースを「教育学部・コース」、教員養成に特化した大学を「教育大学」と本 研究では区別することとする。 1.大学の教育システムに関する調査 (1)調査対象大学 本調査の対象大学は、国立81校、小学校1種免許を取得できる公立3校及び私立165校、計 249校とし、国立65校、公立2校、私立75校、計142校から回答を得た(回収率57.0%)。 表1 対象大学の学部構成 2 ほか、教員免許取得の修学指導体制を調査するために、全国の国立大学及び小学校1種教員免 許状を取得できる公私立大学を対象に質問紙による調査分析を行ったほか、伝統的な教員養成 大学の履修ガイドを基に修学指導とキャリア支援に関し担当者へインタビュー調査を行った。 このような教育システム、特にCAPの設定単位数に基づく研究は、制度の導入や自大学の 制度によるものが多く、全国的な調査により具体的な設定単位数から質保証を論じた研究は見 当たらず、客観的な資料の分析から得た課題を基に質保証に向けた検討を進めることは重要な 視点と考えている。また、教育改革を支える教務系業務の現状を示し、学生の能力を引き上げ るアカデミック・アドバイジングの手法を検討することで職員業務の充実を図るものである。 なお、教員免許状の正式名称は教育職員免許状だが、ここでは「教員免許」とし、教員免許 の取得を目的としたコースを「教育学部・コース」、教員養成に特化した大学を「教育大学」と 本研究では区別することとする。 1.大学の教育システムに関する調査 (1)調査対象大学 本調査の対象大学は、国立81 校、小学校1種免許を取得できる公立 3 校及び私立 165 校、 計249 校とし、国立 65 校、公立 2 校、私立 75 校、計 142 校から回答を得た(回収率 57.0%)。 表1 対象大学の学部構成 表1より、教員免許を取得できる課程の多くが教育学部を含む複数の学部を持つ大学に置か れており、教員免許の開放性が根付いていることが判る。一方、教育実習の現場からは、「実習 生が必ずしも教員を希望していない」との声もあり、後に示す教員就職状況との関係に注目し たい。 (2)教育システムの概要 対象大学の教育の質保証ツールとしてのシラバス・CAP制・GPAに関する取組状況を調 査した。まず、シラバスについて表2に示すように、授業内容や評価方法等、授業時間内に関 する事項はほぼすべての大学で記載されている。一方、授業時間外に関する事項を記載してい る大学は、学習指示が65.5%とは過半数を上回っているものの、履修上の条件は 45.1%、GP Aや事前に履修する科目等の履修上の条件は 12.0%と低く十分な指示が示されていない状況 にある。 表1より、教員免許を取得できる課程の多くが教育学部を含む複数の学部を持つ大学に置か れており、教員免許の開放性が根付いていることが判る。一方、教育実習の現場からは、「実習 生が必ずしも教員を希望していない」との声もあり、後に示す教員就職状況との関係に注目し たい。 (2)教育システムの概要 対象大学の教育の質保証ツールとしてのシラバス・CAP制・GPAに関する取組状況を調査し た。まず、シラバスについて表2に示すように、授業内容や評価方法等、授業時間内に関する事 項はほぼすべての大学で記載されている。一方、授業時間外に関する事項を記載している大学 は、学習指示が65.5%とは過半数を上回っているものの、GPAや事前に履修する科目等の履修 上の条件は45.1%、授業時間外学習時間は12.0%と低く十分な指示が示されていない状況にあ る。
大学アドミニストレーション研究 第8号(2017年度) 表2 シラバスの記載内容 シラバスの記載内容(複数回答可) 大学数 百分率 授業の概要 140 98.6% 毎回の授業内容 141 99.3% 教科書、参考文献 142 100.0% 成績評価の方法・基準 140 98.6% 授業時間外学習指示 93 65.5% 授業時間外学習時間 17 12.0% 履修上の条件(GPAや事前に履修する科目等) 64 45.1% 計 142 - 次に、学期毎の上限登録単位数(CAP)は、表3に示す通りであり、21~ 25単位としている 大学の比率を算出すると、教育学部63%、他学部74%、全体では69%となっている。これを「一 単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準」とすると いう大学設置基準の規定から考えると、20単位以上のCAP設定は厚生労働省の示す過労死基 準を上回る可能性がある。このような過大なCAP設定がなされる背景には、単位制度の理解不 足が考えられる。これについて、舘昭は、①講義は標準45時間に与えられる1単位が15時間程 度の学習に与えられることが常態化、②単位制度の不整合は続いている、と厳しく指摘してい る(舘 2007: 61-4)。 表3学期毎のCAP単位数 3 表2 シラバスの記載内容 シラバスの記載内容(複数回答可) 大学数 百分率 授業の概要 140 98.6% 毎回の授業内容 141 99.3% 教科書、参考文献 142 100.0% 成績評価の方法・基準 140 98.6% 授業時間外学習指示 93 65.5% 授業時間外学習時間 17 12.0% 履修上の条件(GPAや事前に履修する科目等) 64 45.1% 計 142 - 次に、学期毎の上限登録単位数(CAP)は、表3に示す通りであり、21~25 単位としてい る大学の比率を算出すると、教育学部 63%、他学部 74%、全体では 69%となっている。これ を「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準」と するという大学設置基準の規定から考えると、20 単位以上のCAP設定は厚生労働省の示す過 労死基準を上回る可能性がある。このような過大なCAP設定がなされる背景には、単位制度 の理解不足が考えられる。これについて、舘昭は、①講義は標準 45 時間に与えられる 1 単位が 15 時間程度の学習に与えられることが常態化、②単位制度の不整合は続いている、と厳しく指 摘している(舘 2007: 61-4)。 表3 学期毎のCAP単位数 GPAについては、多くの大学で導入されており(表4)、その活用は、学生への個別指導と 奨学金や授業料免除の選考が多く、両者を合わせると 66%と過半数を超える(表 5)。一方、履 修上限単位の設定、進級や卒業判定等の基準、特定科目の履修者に求められる条件、教員間や 授業科目間の評価基準の調整としての活用は進んでいない。 表4 GPA制度の導入状況 表5 GPAの活用状況回答(複数回答可) GPAについては、多くの大学で導入されており(表4)、その活用は、学生への個別指導と奨 学金や授業料免除の選考が多く、両者を合わせると66%と過半数を超える(表5)。一方、履修 上限単位の設定、進級や卒業判定等の基準、特定科目の履修者に求められる条件、教員間や授 業科目間の評価基準の調整としての活用は進んでいない。 (3)学生の学習成果を証明する証明書(成績証明書等)について 学生の学習成果を大学が社会に対して証明する成績証明書について、GPAの記載をキーポイ ントに証明書の記載事項を調査した。証明書作成という事務的要素が強い業務に新しい評価指 標であるGPAの記載状況から、教務事務の大学改革への対応状況と、大学改革の成果として自 己点検評価等に導入が報告されているGPAを大学が社会へ発行する証明書にどのように反映 しているかを調査することで、質保証に対する大学の立場を明らかにするためである。
表4 GPA制度の導入状況 表5 GPAの活用状況回答(複数回答可) 3 表2 シラバスの記載内容 シラバスの記載内容(複数回答可) 大学数 百分率 授業の概要 140 98.6% 毎回の授業内容 141 99.3% 教科書、参考文献 142 100.0% 成績評価の方法・基準 140 98.6% 授業時間外学習指示 93 65.5% 授業時間外学習時間 17 12.0% 履修上の条件(GPAや事前に履修する科目等) 64 45.1% 計 142 - 次に、学期毎の上限登録単位数(CAP)は、表3に示す通りであり、21~25 単位としてい る大学の比率を算出すると、教育学部 63%、他学部 74%、全体では 69%となっている。これ を「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準」と するという大学設置基準の規定から考えると、20 単位以上のCAP設定は厚生労働省の示す過 労死基準を上回る可能性がある。このような過大なCAP設定がなされる背景には、単位制度 の理解不足が考えられる。これについて、舘昭は、①講義は標準 45 時間に与えられる 1 単位が 15 時間程度の学習に与えられることが常態化、②単位制度の不整合は続いている、と厳しく指 摘している(舘 2007: 61-4)。 表3 学期毎のCAP単位数 GPAについては、多くの大学で導入されており(表4)、その活用は、学生への個別指導と 奨学金や授業料免除の選考が多く、両者を合わせると 66%と過半数を超える(表 5)。一方、履 修上限単位の設定、進級や卒業判定等の基準、特定科目の履修者に求められる条件、教員間や 授業科目間の評価基準の調整としての活用は進んでいない。 表4 GPA制度の導入状況 表5 GPAの活用状況回答(複数回答可) 3 表2 シラバスの記載内容 シラバスの記載内容(複数回答可) 大学数 百分率 授業の概要 140 98.6% 毎回の授業内容 141 99.3% 教科書、参考文献 142 100.0% 成績評価の方法・基準 140 98.6% 授業時間外学習指示 93 65.5% 授業時間外学習時間 17 12.0% 履修上の条件(GPAや事前に履修する科目等) 64 45.1% 計 142 - 次に、学期毎の上限登録単位数(CAP)は、表3に示す通りであり、21~25 単位としてい る大学の比率を算出すると、教育学部 63%、他学部 74%、全体では 69%となっている。これ を「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準」と するという大学設置基準の規定から考えると、20 単位以上のCAP設定は厚生労働省の示す過 労死基準を上回る可能性がある。このような過大なCAP設定がなされる背景には、単位制度 の理解不足が考えられる。これについて、舘昭は、①講義は標準 45 時間に与えられる 1 単位が 15 時間程度の学習に与えられることが常態化、②単位制度の不整合は続いている、と厳しく指 摘している(舘 2007: 61-4)。 表3 学期毎のCAP単位数 GPAについては、多くの大学で導入されており(表4)、その活用は、学生への個別指導と 奨学金や授業料免除の選考が多く、両者を合わせると 66%と過半数を超える(表 5)。一方、履 修上限単位の設定、進級や卒業判定等の基準、特定科目の履修者に求められる条件、教員間や 授業科目間の評価基準の調整としての活用は進んでいない。 表4 GPA制度の導入状況 表5 GPAの活用状況回答(複数回答可) 集計結果は表6と表7の通りである。これらの表から、成績証明書でありながら、その記載内 容は単位修得証明書であることが明らかとなった。このことは、社会に対し大学が発行する証 明書という観点から大きな問題がある。これについては、3節において考察する。 表6 証明書に記載する科目の範囲 表7 証明書の名称と記載内容 (有効回答139校) (有効回答137校) (4)教育学部・コースの学生が教員免許を取得する方法について 卒業要件を満たすことで教員免許を取得できる大学は63校であり、卒業に必要な科目以外に 科目・単位の修得が必要な大学は52校であった。その内、31校について具体的な単位数の記載 があった。 表8 教員免許取得のため卒業に必要な科目・単位以上に修得する単位数(教育学部・コース) 区分 大学数 区分 大学数 1~ 5単位 7 36~ 40単位 1 6~ 10単位 7 41~ 45単位 0 11~ 15単位 4 46~ 50単位 3 16~ 20単位 0 51~ 55単位 0 21~ 25単位 3 56~ 60単位 2 26~ 30単位 1 61単位以上 2 31~ 35単位 1 計 31 注:「○~○単位」というように幅をもって回答している場合は、少ない単位数により整理した。 * 成績証明書:不合格科目を含め履修登録した 科目全てが記載された証明書。 単位修得証明書:修得した科目のみが記載さ れた証明書。ただし、単位修得証明書には、た とえば「成績(単位修得)証明書」のように併 記されているものを含む。
大学アドミニストレーション研究 第8号(2017年度) ①教員免許状の複数取得 教育学部・コースでは、複数の学校種の教員免許を取得できることが知られており、今回の 調査によると、複数の学校種の教員免許が取得できる大学は104校、取得できない大学は6校で あった。取得できる教員免許の組み合わせは表9の通りである。表9では、当該コースの主たる 目的の教員免許を主免、主免のほかに取得する教員免許を副免として示している。なお、幼稚園・ 小学校・中学校・高等学校教諭免許状以外に、特別支援学校教諭免許状が取得できるとの回答 が多くあったが、この免許状は教育職員免許法の規定により取得条件として小・中学校の教員 免許を必要とするため、単位修得状況を調査する今回の集計からは除いている。 表9 教育学部・コースが取得する教員免許取得の組み合わせ(複数回答可) № 主免 副免 大学数 百分率 ① 幼稚園1種 小学校1種 55 16.6% ② 小学校2種 15 4.5% ③ 小学校1種 幼稚園1種 77 23.3% ④ 幼稚園2種 25 7.5% ⑤ 中・高1種 57 17.2% ⑥ 中学校2種 36 10.9% ⑦ 中・高1種 小学校1種 40 12.1% ⑧ 小学校2種 26 7.9% 計 331 100% ②教育学部・コースの学生が参加する教育実習 教員免許状を取得するための必須条件として、免許法において教育実習が設定されている。 教育学部・コースにおける教育実習の概要は表10の通りであった。 表10 教育実習の開設学年(教育学部・コース) 5 21~25 単位 3 56~60 単位 2 26~30 単位 1 61 単位以上 2 31~35 単位 1 計 31 注:「○~○単位」というように幅をもって回答している場合は、 少ない単位数により整理した。 ①教員免許状の複数取得 教育学部・コースでは、複数の学校種の教員免許を取得できることが知られており、今回の 調査によると、複数の学校種の教員免許が取得できる大学は104 校、取得できない大学は 6 校 であった。取得できる教員免許の組み合わせは表9 の通りである。表 9 では、当該コースの主 たる目的の教員免許を主免、主免のほかに取得する教員免許を副免として示している。なお、 幼稚園・小学校・中学校・高等学校教諭免許状以外に、特別支援学校教諭免許状が取得できる との回答が多くあったが、この免許状は教育職員免許法の規定により取得条件として小・中学 校の教員免許を必要とするため、単位修得状況を調査する今回の集計からは除いている。 表 9 教育学部・コースが取得する教員免許取得の組み合わせ(複数回答可) № 主免 副免 大学数 百分率 ① 幼稚園1種 小学校1種 55 16.6% ② 小学校2種 15 4.5% ③ 小学校1種 幼稚園1種 77 23.3% ④ 幼稚園2種 25 7.5% ⑤ 中・高1種 57 17.2% ⑥ 中学校2種 36 10.9% ⑦ 中・高1種 小学校 1 種 40 12.1% ⑧ 小学校2種 26 7.9% 計 331 100% ②教育学部・コースの学生が参加する教育実習 教員免許状を取得するための必須条件として、免許法において教育実習が設定されている。 教育学部・コースにおける教育実習の概要は表10 の通りであった。 表 10 教育実習の開設学年(教育学部・コース) *上段:最初に参加する教育実習、下段:副免取得用教育実習。 なお、教育実習に参加するために、事前に修得する修得科目・単位数等の条件を設定してい る大学は107校、設定していない大学は5校であった。設定している条件に関する具体的な回答 の主なものは、指定の教職科目単位修得に関する記述が91校、GPA等に関する記述は9校であっ た。 ③教育学部・コースの学生が卒業までに修得する単位数 教育学部・コースでは、卒業までに修得する単位数が多いことが知られているが、その現状
は表11の通りであった。 表11 卒業までに修得する単位数(有効回答108校) 区 分 計 区 分 計 120単位以下 0 151~ 160単位 33 121~ 130単位 10 160~ 170単位 21 131~ 141単位 15 171単位以上 6 141~ 150単位 23 計 108 ④教育学部・コースの卒業・就職状況について 教育学部・コースの目的は教員の養成であり、卒業後の主要な進路は教員と考えられる。表 12は、調査の前年度となる2014年3月卒業者に関する回答を集計したものである。 表12 教育学部・コースの卒業・就職状況 6 *上段:最初に参加する教育実習、下段:副免取得用教育実習。 なお、教育実習に参加するために、事前に修得する修得科目・単位数等の条件を設定してい る大学は107 校、設定していない大学は 5 校であった。設定している条件に関する具体的な回 答の主なものは、指定の教職科目単位修得に関する記述が91 校、GPA 等に関する記述は 9 校 であった。 ③教育学部・コースの学生が卒業までに修得する単位数 教育学部・コースでは、卒業までに修得する単位数が多いことが知られているが、その現状 は表 17 の通りであった。 表 11 卒業までに修得する単位数(有効回答 108 校) 区 分 計 区 分 計 120 単位以下 0 151~160 単位 33 121~130 単位 10 160~170 単位 21 131~141 単位 15 171 単位以上 6 141~150 単位 23 計 108 ④教育学部・コースの卒業・就職状況について 教育学部・コースの目的は教員の養成であり、卒業後の主要な進路は教員と考えられる。表 12 は、調査の前年度となる 2014 年 3 月卒業者に関する回答を集計したものである。 表 12 教育学部・コースの卒業・就職状況 (5)教育学部以外の学部が設置する教職課程 教育学部以外の学部学生が教員免許状を取得するための教職課程を設置している大学は 116 校、設置していない大学は 12 校であり、教員養成学部・コースを持つ大学の多くが他の学部 にも教員免許状が取得できる体制となっている。 今回の調査では、教職課程への参加資格等を調査し、教育学部・コースと比較することを目 的としている。以下に教育学部以外の学部が設置する教職課程の概要を示す。 (5)教育学部以外の学部が設置する教職課程 教育学部以外の学部学生が教員免許状を取得するための教職課程を設置している大学は116 校、設置していない大学は12校であり、教員養成学部・コースを持つ大学の多くが他の学部で も教員免許状が取得できる体制となっている。 今回の調査では、教職課程への参加資格等を調査し、教育学部・コースと比較することを目 的としている。以下に教育学部以外の学部が設置する教職課程の概要を示す。 ①教職課程への参加資格 教職課程への参加資格を設けているのは15校、設けていないのは98校で、多くの大学で教職 課程の参加に関し、特別な条件を付していないことが明らかとなった。なお、設定されている 参加資格の内容は、GPAの活用が2校、指定科目の履修が2校、前年度卒業要件単位と平均点の 指定が1校であった。 ②教育実習の開設学年と参加条件 教育実習の開設学年は、4年が84校と全体の72%を占め、2~ 4年が1校、3年が7校、3年ま たは4年が8校であった。学校で行われる教育実習は、日々の校務に忙しい中、学生を受け入れ て指導を行うため、実習校の負担は大きい。このため、教員志望の薄い学生が参加しないよう、
大学アドミニストレーション研究 第8号(2017年度) 多くの学生が進路を定める時期となる最終学年(4年)に設定している。なお、教育実習に参加 するための条件を設定しているのは106校、設定していないのは8校であった。設定されている 参加資格のほとんどは、指定された教職関係科目・単位の修得であり、GPAの活用は6校のみ であった。 ③CAP制における教員免許状取得単位の取り扱い 教員免許を取得するために取得する科目の単位を履修登録単位数の上限(CAP)に算入する のは16校、算入しない大学は70校と、多くの大学で算入しない現状が明らかとなった。しかし、 特定の科目をCAP制の対象から外すことは質保証の観点から望ましいことではないと考えら れる。 ④教員免許状取得者の教員就職状況 教育学部・コースの以外の学生の教員就職状況は表13の通りである。教育学部・コースの場 合と同様、2014年3月卒業者に関する回答を集計している。また、教育学部・コースの以外の 学生の教員就職状況の公表については、公表が62校(内2校は公表内容の記載なし)、非公表が 48校であり、公表している内容は表14の通りであった 表13 教員免許状取得者の教員就職状況(教育学部・コース以外) 7 ①教職課程への参加資格 教職課程への参加資格を設けているのは15 校、設けていないのは 98 校で、多くの大学で 教職課程の参加に関し、特別な条件を付していないことが明らかとなった。なお、設定されて いる参加資格の内容は、GPA の活用が 2 校、指定科目の履修が 2 校、前年度卒業要件単位と 平均点の指定が1 校であった。 ②教育実習の開設学年と参加条件 教育実習の開設学年は、4 年が 84 校と全体の 72%を占め、2~4 年が 1 校、3 年が 7 校、3 年または4 年が 8 校であった。学校で行われる教育実習は、日々の校務に忙しい中、学生を受 け入れて指導を行うため、実習校の負担は大きい。このため、教員志望の薄い学生が参加しな いよう、多くの学生が進路を定める時期となる最終学年(4 年)に設定している。なお、教育 実習に参加するための条件を設定しているのは106 校、設定していないのは 8 校であった。設 定されている参加資格のほとんどは、指定された教職関係科目・単位の修得であり、GPA の活 用は6 校のみであった。 ③CAP 制における教員免許状取得単位の取り扱い 教員免許を取得するために取得する科目の単位を履修登録単位数の上限(CAP)に算入する のは16 校、算入しない大学は 70 校と、多くの大学で算入しない現状が明らかとなった。しか し、特定の科目をCAP 制の対象から外すことは質保証の観点から望ましいことではないと考 えられる。 ④教員免許状取得者の教員就職状況 教育学部・コースの以外の学生の教員就職状況は表 13 の通りである。教育学部・コースの 場合と同様、2014 年 3 月卒業者に関する回答を集計している。また、教育学部・コースの以 外の学生の教員就職状況の公表については、公表が62 校、非公表が 48 校であり、公表してい る内容は表14 の通りであった 表 13 教員免許状取得者の教員就職状況(教育学部・コース以外) 表14 教員就職状況公表内容(教育学部・コース以外) 教員就職状況の公表内容 大学数 教員採用試験の受験状況と就職状況 7 教員就職状況(正規・非正規) 39 正規教員として就職した状況 14 計 60 ⑤教職課程設置の意義 教職課程を設置している意義を学生募集の観点から回答してもらった結果をみると、「貢献 しているので必要」が68校と回答の過半数となる一方、「貢献していない」は3校と非常に少な く、大学への貢献度は高い。他方で、約3割が「貢献しているがカリキュラムや経費面の負担が 大きい」と維持に負担が大きいと回答している。
⑥教育学部・コースとの違い 教員養成を主とする教育学部・コースは、教育職員免許法に定める科目をカリキュラムに落 とし込み4年間で計画的に修得できるようカリキュラムを構築している。他方、教員養成学部・ コース以外の学生は、本来の主となる学びのほかに教職課程を履修することで教員免許を取得 する。このため、教員を希望する意欲が低い場合もあり、教職課程の履修を途中で取り止める ことや、教員採用試験を受験しないことが地域で行われる教育実習の打ち合わせ等で話題に挙 がることがある。このように卒業に直接影響しない他学部の学生への指導は難しい面もあるが、 安易な指導により意欲の高くない者が教育実習に参加すると問題が生じることが多い。 そして、教育実習という大学以外の学校教育の場で起きる問題は、大学と学校の関係だけで はなく、その学校で学ぶ児童・生徒にも影響を及ぼすことになる。このため、教員養成学部・コー ス以外の学生の指導は、十分な状況把握と指導的立場に立って行う必要がある。 3.質保証に向けた指導体制 (1)CAP単位数と修得単位 上限登録単位数について、教育学部・コースと他の学部にどのような違いがあるだろうか。 ここでは、CAP単位数と教員免許取得者の修得単位を取り上げる。図1はCAP単位数について 教育学部と他学部を比較したもの、表15は実際の単位修得状況を比較したものである。 図1 CAP単位数の比較 一般的に教育学部・コースは、修得単位数が過大との声が多いが、学期毎に設定されたCAP 単位数には大きな差は認められず、タイム・マネジメントの視点から見ると両者の学習時間に 大きな差異はない。また、教員免許取得者の単位修得状況は、教育学部・コースの修得単位が多 いことを裏付けているが、これは複数の教育職員免許状を取得するためであり、他の学部に比 べて上級学年になっても修得する科目・単位が多いことを表している。これを他の学部で教員 免許取得のために卒業に必要な科目・単位以上に修得する単位数(教育学部・コース)と比較す ると、若干多めではあるが両者に大きな差違はないことが判る。
表15 教員免許所得者の単位修得状況 表 15 教員免許所得者の単位修得状況 注:他学部の修得単位数は、単位制度の原則に基づく4 年間の修得単位 120 単 位に教員免許取得のために修得する単位数(教育実習を除く)を加えたもの。 一般的に教育学部・コースは、修得単位数が過大との声が多いが、学期毎に設定されたCAP 単位数には大きな差は認められず、タイム・マネジメントの視点から見ると両者の学習時間に 大きな差異はない。また、教員免許取得者の単位修得状況は、教育学部・コースの修得単位が 多いことを裏付けているが、これは複数の教育職員免許状を取得するためであり、他の学部に 比べて上級学年になっても修得する科目・単位が多いことを表している。これを他の学部で教 員免許取得のために卒業に必要な科目・単位以上に修得する単位数(教育学部・コース)と比 較すると、若干多めではあるが両者に大きな差違はないことが判る。 (2)副免許状取得に関する指導体制 このように学期毎にみれば他学部と変わらない教育学部・コースだが、卒業までの修得単位 は副免許状を取得するために多くなっている。それでは、副免許状取得にどのような指導が行 われているだろうか。今回の調査では、副免取得に必要となる教育実習への参加条件を取り上 げているが、事前に修得する科目・単位数等を設定しているのは107 校と多かったものの、GPA を活用しているのは9 校のみであった。かつて、大学改革が進行する前は、GPA というツール もなかったため、特定の科目・単位の修得が条件となっていたことが推測される。 教員志望が高い教育学部・コースであるからこそ教育(学び)の質が求められる現在、主と なる養成コース以外となる副免許状所得にも学修成果の指標であるGPA を参加条件に組み込 むことが必要と考える。 (3)他学部の免許状取得に関する指導体制 教育学部・コース以外の学生が教員免許状取得を希望する場合、本来の学びのカリキュラム に加え、学生自らの意志で教職課程に参加することになる。これを単位数から考えると卒業に 必要な科目・単位に加え教職課程の単位を修得するが、このような選択となる教職課程の参加 について、参加資格を設けている大学が15 校、設けていない大学が 98 校と多くの大学で参加 注: 他学部の修得単位数は、単位制度の原則に基づく4 年間の修得単位120単位に教員免許取得のために修 得する単位数(教育実習を除く)を加えたもの。 大学アドミニストレーション研究 第8号(2017年度) (2)副免許状取得に関する指導体制 このように学期毎にみれば他学部と変わらない教育学部・コースだが、卒業までの修得単位 は副免許状を取得するために多くなっている。それでは、副免許状取得にどのような指導が行 われているだろうか。今回の調査では、副免取得に必要となる教育実習への参加条件を取り上 げているが、事前に修得する科目・単位数等を設定しているのは107校と多かったものの、GPA を活用しているのは9校のみであった。かつて、大学改革が進行する前は、GPAというツール もなかったため、特定の科目・単位の修得が条件となっていたことが推測される。 教員志望が高い教育学部・コースであるからこそ教育(学び)の質が求められる現在、主とな る養成コース以外となる副免許状所得にも学修成果の指標であるGPAを参加条件に組み込む ことが必要と考える。 (3)他学部の免許状取得に関する指導体制 教育学部・コース以外の学生が教員免許状取得を希望する場合、本来の学びのカリキュラム に加え、学生自らの意志で教職課程に参加することになる。これを単位数から考えると卒業に 必要な科目・単位に加え教職課程の単位を修得するが、このような選択となる教職課程の参加 について、参加資格を設けている大学が15校、設けていない大学が98校と多くの大学で参加資 格を設けていない。また、教育実習の参加資格については、114校の内、106校が参加資格を設 けているが、その内容の多くは指定された教職科目・単位の修得であり、GPAの活用は6校の みと、本来の学びではないことを考慮すると指導体制としては不十分であろう。質保証の観点 からは、GPAを活用した参加資格の設定を提案したい。 教育評価の集約であり、学生にとっては学修成果の指標となるGPAが参加資格となること で、学生側は参加するために学びの質を高めることになる。これは、実習を受け入れる学校側 にとってもしっかりとした学びを経た学生が参加することになることから「実習公害」と揶揄 される意欲のない学生の参加を抑えることになり、教育現場の負担解消に繋がるであろう。
このように、現実に設定されたCAP単位数の中で、単位時間ごとの学習時間を念頭にGPAを 活用して学生の学習意欲を刺激する条件設定を整えつつ、学生の学習成果の指標となるGPAに 基づく個別指導を行うことが求められている。そしてこのような学生の立場に立った指導その ものが「アカデミック・アドバイジング」であることを認識し活用を広げていただきたい。そこ で次節では、大学改革に伴い新たなツールとして導入されたCAP・GPA制度について大学改革 を支える立場にある教務系業務がどのように対応してきたかを検証し、これらを活用するアカ デミック・アドバイジングの展開を考察する。 4.大学改革を支える教務系業務とアカデミック・アドバイジング (1)CAP・GPA制度導入の経緯 大学設置基準の大綱化(1991)から始まった大学改革は、セメスター制への移行からシラバ スの充実、CAP制の導入を経て、GPAの導入・活用と進展してきた。図2は、質保証に関する2 つの答申である「学士課程教育の構築に向けて」(中央教育審議会2008)と「新たな未来を築く ための大学教育の質的転換に向けて」(中央教育審議会2012)が示された前後の状況をグラフ 化したものである。 図2CAP・GPA制度導入の状況(大学数) 出典:文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について」(各年)より。 図2に示されているように、大学改革において質保証のツールとされるCAP・GPA制度は、 順次、導入されてきたが、ここではGPAの活用の内、2011年度調査から追加された「履修上限 単位数の設定」と「算出に不可を含めている」に注目したい。この2つは質保証の展開において 重要な意味を持つ。履修上限単位数の設定は、GPAが高ければ当該学生を優秀と判断してCAP の上限を上げ、低ければ下げて学習時間を十分に与えることで学習の理解を促すものであり、
大学アドミニストレーション研究 第8号(2017年度) GPA本来の機能につながるものである。また、算出に不可を含めることは、GPA積算の基本で あるが、なぜ、この項目が調査の対象となったのだろうか。これには、次のような背景が考えら れる。 日本の大学においては永く修得した科目・単位のみを「成績」として扱ってきた。これは、今 回の調査において成績に関する証明書の記載事項が「修得科目のみを記載」が95%(130校)に 達していることからも明らかである。これに対し、GPAの算出は学習の到達度を示す指標のた め、「不可」も評価の一つと考えて算出に含める。しかし、先に述べたように修得した科目・単 位のみを「成績」として扱ってきた経緯から正しいGPAの算出が行われている大学が少ないこ とや、そもそも大学改革の状況調査に挙がってきたのは2011年からであり、文部科学省を含め 高等教育界全体のGPAに対する理解が不足していたと考えられる。 このように必ずしも十分な理解の上に大学改革が進んでいるとは言えない状況もあるが、次 では学習成果を社会に示すものの一つとして成績証明書の記載事項について考察する。 (2)成績証明書の記載事項について アカデミック・アドバイジングを展開するためには、学生個々の能力を把握して指導に活か すことが必要であり、CAP制とGPA制度は重要なツールである。ここでは、成績証明書の記載 事項を通して新しく導入された質保証ツール(CAP・GPA)を教務系部局がどのように理解し 業務を展開しているかを検証する。成績証明書を取り上げる理由は、大学で修得した科目・単 位により資格を取得する際に必要となるもので、証明書という性格から記載事項には社会的信 頼性が求められるとともに、その作成には主として教務系職員が関わっており、担当職員の制 度に対する理解が大きく影響するからである。ここでは、単位修得証明書は修得した科目・単 位のみを記載しているもの、成績証明書は履修した科目・単位のすべてを記載しているもの(不 合格も成績評価の一つ)と区別して検証を進める。 今回の調査では、証明書の名称とその記載内容を調査しているが、表7で示したように成績 証明書という表記の116校の内、修得科目のみ記載が109校と大部分を占めており、大学改革に より質の保証が求められ新しいツールが導入される前の認識から変わっていないことが判る。 また、証明書にGPAを記載しているのは表6で示したように35校であったが、その内、履修 登録科目全てを記載しているのは5校に留まっている。残りの30大学は単位修得科目のみを記 載しているにもかかわらず、不合格科目が積算の対象に含まれるGPAを記載している。これは、 記載されたGPAの数値が当該証明書に記載された単位・評価の内容で確認できないことにな り、証明書の信頼性という観点から大きな問題となる。このことは、証明書の偽造が問題となっ ている海外の大学に対する影響が大きく、留学や卒業生が海外の大学院へ進学する際に証明書 の内容が信頼できないことにより当該学生が不利益を被っている可能性があることにも留意す る必要がある。このように現状においては、証明書を担当する教務系部局にGPAが正しく理解 されていないことが考えられる。 しかし、大学改革の成果として、自己点検評価等にGPAの導入が報告されていることや、学
生の学習到達度を表す指標であるGPAは、大学が社会へ発行する証明書に記載されるべき事項 と考えられることから、成績証明書の記載事項は早急に改善が求められる。そして、その背景 には教務系職員の資質向上が必須であることを示しておきたい。 (3)資格取得コースにおけるアカデミック・アドバイジング 資格取得コースは資格が就職に影響を与えるため、修学指導において優先する傾向にあるが、 充実した学びを経てこそ卒業後の社会生活において学生個人や資格の評価を高めると共に、資 格を取得した大学の評価を高めることになる。そこで、今回取り上げた教員免許においては、 教育実習の参加資格に学習成果に基づく条件を付すことが有効と考えられる。 既に今回の調査においても、教職科目の単位修得を条件とするケースが多数を占めていたが、 未発達の児童・生徒の教育を担う職業資格であることから、単に単位を修得したという結果の みではなく、学習評価を考慮することが必要と考える。そこで従来の参加資格にGPAの基準を 追加し学生の修学意欲を刺激するとともに意欲の低い者の参加を認めないという厳正な立場に 立つことで社会の信頼性を高めることができる。 なお、教育学部・コースの場合は、副免の教育実習参加資格を主免よりも高く設定する。これ は、主免が必修であることに対し、副免は自らの意志で取得することからより厳しい設定が必 要である。これに対して、他学部の場合は、所属学部の基準よりも高く設定する。これは、主た るカリキュラムのほかに自らが教職課程を希望して履修することから、より厳しい設定とする ものである。このような設定により、安易な履修が減少し、結果として教員として就職するも のが増加することで社会的な評価が高まることが期待できる。情報公開の時代を迎え、単に「教 員免許が取得できる」から「教員免許取得者○名から△名が教員として就職」という実績が受 験生を集めることになるであろう。 また、教育学部・コースの副免取得に対する指導について卒業後の教員生活を考慮した指導 を提言したい。今回、いくつかの教育大学を訪問した際に複数免許の取得と卒業後の教員生活 に関し、採用後の異動について尋ねたところ、学校種を超えた異動があると回答があったのは 愛知県のみであった。文部科学省「学校教員統計調査」によって、2012年度間に異動した公立小・ 中学校教諭に占める他校種間異動者の比率をみても、愛知県は19.3%であるが、全国では4.2% に過ぎない。これは、小学校、中学校と異なる校種の資格をもっていても、その有効性は教員採 用試験を受験する際に限定されていることを示し、採用後の長い教員生活において活用される ことは非常に少ないことを示している。 このことは、多くの単位を修得することから大学教育としての十分な学びを得られない可能 性がある現状において、苦労して取得した教員免許が長い教員生活において1種類しか活用さ れないことになる。卒業後を含めたこのような状況を、在学中のみではなく将来のキャリアを 含めて指導するアカデミック・アドバイジングという手法から副免の取得について改めて考え ると、主たるコースの学びを充実させることが重要との視点が新たに浮かび上がる。この点に ついては、今後、各自治体の採用後の処遇を分析する必要があるため、ここでは今後の課題と
大学アドミニストレーション研究 第8号(2017年度) して述べるに留めるが、各大学においては、自大学の特色と地域における教員採用後の処遇に 考慮した修学指導が望まれる。 まとめ 今回行った質問紙調査の分析から教育学部・コースの修得単位が多くなる要因は、副免許状 取得であり、CAP単位数は他の学部と大きな差がないことが明らかとなった。また、副免実習 が4年に行われるように上級学年まで副免取得単位の修得が続くためであり、他の学部と比べ 1単位当たりの学びの質・量において大きな差異がないことが示された。しかし、学期ごとの CAP単位数は20単位以上が多く単位の実質化が進んでいないことも明らかとなった。 これについては、将来のキャリアを含めて指導するアカデミック・アドバイジングの手法か ら、卒業後の教員生活における副免の有効性から副免取得を取り止めることで修得単位を抑え、 主たるコースの学びを充実させることも新たな選択肢として考えられることを指摘した。 このように、CAPの設定を抑えることは、学びの充実を目指すアクティブ・ラーニングの推 進により、学生や教員の負担が過度に増大することを避けることから喫緊の課題でもあるとと もに、2019年度入学者から適用される改正後の教育職員免許法により新たに教職課程に加わ る「アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善」への対応としても重要な点となる。 また、改正後の教育職員免許法においては、学校インターンシップの導入を求められており、 従来の教育実習のほかにも学生が大学の授業から一定期間離れることが想定される。これによ り、学事日程における授業予定の工夫が必要となるが、これらの業務を担うのは主に教務系職 員である。本研究では、成績証明書の調査から新たに導入された質保証ツール(CAP、GPA)が 必ずしも理解されていないことを指摘したが、新しい変化に対し、経験則ではなく理論に裏付 けられた判断が必要となることから職員の専門性向上に向けた効果的なSDや高等教育を学ぶ 大学院の学修等、職員自らの学びの充実を期待したい。 謝辞 本論文は筆者が日本学術振興会科学研究費補助金(奨励研究:課題番号26907036)により調 査を行い研究成果としてまとめたものである。本研究においては、多くの大学へ依頼した質問 紙調査への協力、特に教育大学の関係者には、訪問調査、各種の履修指導の資料提供に協力い ただいた。ここに感謝の意を表する。 引用(参考)文献 愛知教育大学,2013,『履修の手引き』 愛知教育大学 中央教育審議会,2008,「学士課程教育の構築に向けて」 中央教育審議会,2012,「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」 中央教育審議会,2015,「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」 北海道教育大学,2014,『学生便覧―履修と学生生活の手引き―』北海道教育大学 宮城教育大学,2014,『履修のしおり』宮城教育大学
文部科学省,2007,「大学における教育内容等の改革状況について(平成19年度)」 文部科学省,2011,「大学における教育内容等の改革状況について(平成21年度)」 文部科学省,2013,「大学における教育内容等の改革状況について(平成23年度)」 文部科学省,2013,「平成25年度学校教員統計調査」 (http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172 2017.9.29) 奈良教育大学,2014,『理由の手引き』 奈良教育大学 日本学生支援機構、「アカデミック・アドバイジングCAS基準とガイドライン」 (http://www.jasso.go.jp/gakusei/archive/__icsFiles/afieldfile/2015/12/09/academic_advising_2.pdf 2017.9.29) 大阪教育大学,2014,『履修便覧』 大阪教育大学 島田敬久,2013,「なぜアメリカの大学生は勉強するのか?―『契約』の概念に基づく勉強させるた めのシステム」 (https://www.tuj.ac.jp/jp/news/wp-content/uploads/2013/02/us-eduational-system-20130219.pdf 2017.11.11) 舘 昭,2007,『改めて「大学制度とは何か」を問う』東信堂