カビ付によって起るカツオ節の化学成分の変化につ
いて
著者
金澤 昭夫, 柿本 大壱
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
6
ページ
144-147
別言語のタイトル
Change of the Chemical Constituent of
"Katsuwobushi" by Aspergillus ruber and
Aspergillus repens
144 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 6 巻
カビ付によって起るカツオ節の
化学成分の変化について※
金 沢 昭 夫 。 柿 本 大 壱
Cha血geOf趣eChemiCalCOnStmxemOf“遮鋤suWobushi,,
by型…rgi"狸sr邸6e所and4sipergi"邸sγePe”s
AkioKANAZAWrAandDaiichiKAKI皿OTO InthispaperauthorsexplainedthechemicalchangesofKatsuwobushiby4鞘c7g"“spicces. I)Exceptingtllefatdecreasing,notablechangeswerenotrecognizedingeneralconstituent、 2)InthefreeaminoacidinKatsuwobushi,inspiteofdecreasingthemonoaminoacidand lysine,acidicaminoacids,glycineproline,andserinewereincreascdbytheseorgamsms, 緒 言 カツオ節はカツオの鮮肉に煮熟,陪乾,日乾及びカビ付等の操作を施しながら,数十日 を費して製造する我国特有の水産製品で,古くから調味料として珍重されている。このう ちカビ付の意義については,二,三挙げられているが何れも明確なものではなく,特にこ の操作によって起る製品の化学変化については研究者によって可成り相違があるようである。即ち山川,山本ユ)は陪乾肉と本枯節を比較した結果,乾物量,全窒素には変化を認め
ないが,水分,蛋白質,モノアミノ酸は前者より後者が減少し,ジアミノ酸特にヒスチジ ンは逆に増加することを報告し,節製造工程による化学成分の変化の一端に触れている。 更に西村,木村2)は工程中培乾までを同一にした試料についてカビ付・による変化を検べた 結果,全窒素,蛋白態窒素,有機塩基窒素,モノアミノ酸,灰分,アンモニア等何れも差異はなく,水分,脂肪の含有量がカビ付により減少することを認めた。叉須山3)の報告で
はカビ類のリパーゼがカビ付の結果作用し脂肪を加水分解することを証明している。以上 の如くカビ付は単に水分を減少せしめ脂肪を分解するのみとされているが,これらによっ てカツオ節の品質が著しく向上すると見倣すには根拠に欠けるようであるので,著者等は 主として従来まで論議されている呈味成分をカビ付の有無により分析し,これにより二, 三の知見を得たので以下記載することにする。 実 験 方 法 1 . 試 料 1956年4月鹿児島県枕崎に於て水場されたカツオの同一工程で製造したカビ付直前の雄 節,雌節各10本を細挫して粉末状とし,良く混和して試料とした。この試料を300ccの三角フラスコに159宛とり,綿栓して15ポンド,5分間殺菌し,あらかじめ斜面培養したカ
ツオ節カビを無菌的に接種し,30°Cに40日間培養した後再び前記同様の殺菌を施したも のを分析に供した。なお使用したカツオ節カビは兵庫農科雲大学吉村貞彦教授が優良カビとして分離したAspe暦j恥37.皿6er,Aspe7gjzz“rejりe7z3各6種計12種類を用いた。
2 . 一 般 分 析 常 法 に よ り 水 分 , 灰 分 , 粗 指 坊 , 全 窒 素 , 蛋 白 態 窒 素 , ア ミ ノ 態 窒 素 , ア ン モ ニ ア を 測 ※本研究は昭和31年度日本水産学会秋期大会(31年10月,広島〕にて発表した。金沢。柿本:カビ付・によって起るカツオ節の化学成分の変化について 145
定し特に味覚に関係あると思われるアミノ酸類はBioassayによって測定した。
3。遊離アミノ酸の定量前項の如くカビ付の終了した試料29に50ccの水を加え,沸騰浴上で30分間加温した後,
室温に放冷し,これに10%タングステン酸ソーダ液5部,0.6N硫酸7部の混液4)を加えて
除蛋白し全容lOOccにして低温に保存し,定量時に適宜稀釈しBioassayにより測定した。
実 験 結 果 及 び 考 察ASP.γz‘667.,4や.7:Gpeノzs各々6種類計12種のカビ付によって起る一般成分の変化はTable.l
及び2の通りである。この結果によると水分及び脂肪含量は或る日数の経過によって変化
Table1.カビ付(4ゆe唇j"z灯1.z必cr)によるカツオ節の一般成分の変化(%) カ ビ 付 、 後 組 成 カ ビ 付 前 』妙,γ“‘r接種対照※│No.1※※|No.21No.31No:41N。、51No.6
水 分 灰 分 粗 脂 肪 全 窒 素 蛋 白 態 窒 素 遊 離 ア ミ ノ 態 窒 素 ア ン モ ニ ア 態 窒 素 20.00 3.30 4.85 12.67 9.85 0.112 0.081 15.30. 3.40 5.00 13.28 11.04 0.128 0.090 15.40 3.40 1.35 10.52 10.77 0.152 0.135 15.00 3.40 1.35 12.26 11.01 0.111 0.132 14.60 3.80 1.00 12.47 11.07 0.146 0.115 13.60 3.80 1.25 12.93 11.03 0.117 0.125 14..50 3.60 1.70 13.22 10.83 0.122 0.110 ※カビ付せず30.Cに40日間incubateしたもの ※※ASP.γ"6‘rNo.lを接種して30.Cに40日間incubateしたもの(No.2以下同じ) Table2..カビ付(4W悪畑”γ妙e"s)によるカツオ節の一般成分の変化(%) カ ビ 付 . 後 組 成 カ ビ 付 ・ 油 Aゆ.7.妙‘"s接種 14.80# 3.20‘¥ 1.95 10.98. 10.72 0.108 Oy090対照※│No.l※※lNQ21No31No、’41No.51No.6
水 分 灰 分 粗 脂 肪 全 窒 素 蛋 白 態 窒 素 遊離アミノ態窒素 ア ン モ ニ ア 態 窒 素 20.00 3.30 4.85 12.67 9.85 0.112 0.081 15.30 3.40 5.00 13.28 11.04 0.128 0‘090 16.50 3.20 1.50 12.33 10.89 0.153 0.121 17.00 3.20 1.45 12.11 10.77 0.118 0.158 17.00 3.40 1.70 12.24 10.97 0.135 0.125 16.80 3.40 0.50 12.11 11.07 0.142 0.130 16.52 3.00 0.90 11.37 10.71 0.113 0.168 ※カビ付・せず30.0に40日間incubateしたもの ※※』ゆ.γ“‘"SNO.lを接種して30°Cに40日間incubatcしたもの(No.2以下同じ) 15.90 3.40 1.00 12.36 9.30 0.138 0.110 を示しているが,このうち水分はカビ付による影響とは思われない。このことはカビ付を しなくとも同温,同日数のカビ付したものと同程度減少していることから明らかである。 脂肪は山川,山本等の研究と同様にカビ付後約l/4量に減少している。その‘他の成分,即ち 灰分,全窒素,蛋白態窒素,アミノ態窒素,アンモニアには殆んど変化がなく,又Asp.7zj6er,鹿 光 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 6 巻 146 ︵ 叩 ” ︺ ︽ 畠 叩 ︶ fl4日Ⅱ且
』や.γepe"sの如くカビの種属による相違はみられなかった。
次にカツオ節中の遊離アミノ酸を定量したが,試料は前記同様カビ付前後のものを比較 した。Table3はその結果を表示したものである。カビ付前の節ではヒスチジン,リジン, Table3.カビ付。(4Wぴ"噸γz心cr及び4.Wノ域"“γ妙‘'2s)による カツオ節の遊離アミノ酸の変化(乾物に対する、9%) 8 1 9 7 カ ビ 付 。 後 カ ビ 38. 441'8酒i伽sγ妙β"s接種 A妙e哩畑usγu6‘γ接種 7 ア ミ ノ 酸4039718077928523
■●申●●Ce合●●凸○由ご■■●
9571060302147682
21333229125237
19. 19. 32. 23. 25. 15. 0 . 30. 85. 14, 14. 53. 14. 18. 43. 付前 ※カビ付せず30.Cに40日間incubateしたもの ※※4砂β壇i"as↑・画”No.1を接種して30.Cに40日間incubateしたもの(No.2以下及び4.sβ‘槽i""., ブ・妙e"sも同じ) E 67. 74.581. 0 5 3 21.0 60.2 74.7 60644△28322︵U78845−03
守●●①。●■●■●車■●申●●■
7︵b34▲94人21183221227
5411311301151︽2︵b7
.140547902209490884
■P●q■PS●◆■句●号●■●●
586001518199097厘.︶8
61123213914136
7214211381141146
39832521541981639
●■●■凸●●0年●●由■●■●■
01018483037707839
97.8342868016512331
●b●●合。●●
89320374
28155832202777046
。▲P●■p●●p■■CaG由p①1460144137341939.9
711322136114137
グ リ シ ン ア ラ ー ン パ リ ン ロ イ シ ン ゼ リ ン ト レ オ ニ ン メ チ オ ニ ン シ ス チ ン ア ス パ ラ ギ ン 酸 グ ル タ ミ ン 酸 フ ェ ニ ー ル ア ラ ニ ン チ ロ ジ . ン プ ロ リ ン ト リ プ ト フ ァ ン ァ ル ギ ニ ン リ ジ ン ヒ ス チ ジ ン27577622654558626
●●■●●P。中心■●■①●●p◆
18733211122321215
4433243162131287
45332421
442429917
●●◆。●be●●
498560025
72142312
952186409
●●号●◆い◆●■
112422781
74143212011416
8922054195282982
。●●●■■●■$句●■◆■●●
1353025351898406
1 76.2611324361131136
57384981145841761
●●■?●p■●■◆●●●DB?■
04498752296850712
57.51115.5 3 ◆■● ハ︺︶n︵﹀︵、﹃﹀ 10︽an壬 53.3 11.4 22.1 59.5 80.64074171149118035
牢●。●申。●pp。●●●●■−
9496511122858864113ワ︼31.38114157
8 § 0 14‘ 23. 、及びグルタミン酸が多く,チロジン,トリプトファン,シスチン等が少ない。この量的関
係はカツオ肉の分析値と類似している。然るにカビ付すると,量的関係が明らかに変化し
て来ることが認められる。即ち塩基性アミノ酸中ヒスチジン,アルギニンにはあまり変化
がないが,リジンは明らかに減少を示し,著しいものでは半量以下になる.酸性アミノ酸
ではグルタミン酸,アスパラギン酸特に前者はカビ付によって著しく増加するがこれに対
し,アラニン,バリン,メチオニン,トレオニン,フェニールアラニンなどは減少し,之
等モノアミノ酸中グリシンのみがグルタミン酸に匹敵するほど顕著な増加を示し更にプロ
リン及びゼリンも増加の傾向が認められる。以上述べたようにカビ付によるてカツオ節の
遊離アミノ酸の分布に複雑な変化が見られるが,呈味アミノ酸のうち味の強いグルタミン
酸とグリシンが顕著に増加することは呈味の向上に大きく影響しているものと考えられ
る。尤もこれはいわゆる優良カビを用いてカビ付を行った場合とカビ付を行わないものとの比校であって,不良種と言われているものを用いてカビ付を行った場合アミノ酸分布に
如何なる変化が起るかの重要問題が将来に残されているわけである。 3 ロ ワ H I 54.1 27. 37. 6 4 7 12.6 19.8 42.0 10.4 24.4 / 38.9 110.3 1 . 36. 2 3 1H 41.5 11.6 21.0 83.5 82.9 59.0113.6 20.812.5 15.0,17.9 3 93. §金沢。柿本:カビ付によって起るカツオ節の化学成分の変化について 147 摘 要