同窓会推薦講演
周術期麻酔管理と術後予後
群馬大学医学部附属病院手術部 門 井 雄 司
高齢化社会の到来とともに高齢者が手術を受ける機会
が増加している. 高齢者は術前合併症を有する場合が多
く, 極めて繊細な周術期麻酔管理が要求される. 周術期
麻酔管理が術後予後に及ぼす影響について心臓外科手術
での中枢神経系障害についての影響について発表する.
高齢者患者では急激な血行動態の変動に対して脳循環の
対応が鈍く, 麻酔中のアクシデント時には脳虚血に陥り
やすいとされている. 脳循環障害の原因としては糖尿病
や高血圧, 脳梗塞の既往などの合併症のため cerebral
autoregulation が通常と異なっている場合が多い. その
ため人工心肺中の平 血圧を高めに維持することが必要
とされてきたが, これまでの報告では平 血圧を高めに
維持した方が術後の中枢神経障害を減少させたという確
たる実証はされていない. 近年, 術後の臓器障害を軽減
するために Off Pump bypassが多用されているが長期中
枢神経系保護作用という点に関しては異論がでている.
周術期血糖管理に関しては NICE-SUGAR Studyに
より結論が出た感があるが, 術前の少量ブドウ糖投与や
術中の少量ブドウ糖負荷, 麻酔薬の選択, 膜外麻酔の
併用, などにより周術期血糖管理が変わってくる.
揮発性麻酔薬は基礎実験では preconditioning 作用が
あることはよく知らせているが, その一方では
Alz-heimer型認知症を誘発する可能性も指摘されている. 現
時点では揮発性麻酔薬は neuroprotectiveに作用するの
か neurotoxicに作用するのか臨床上は不明である.
高齢者患者では患者サイドの合併症を十 把握した周
術期全身管理や脳循環管理が麻酔科医に要求される.
成人喘息診療に残された問題点
群馬大学医学部附属病院呼吸器・アレルギー内科 石 塚 全
私が研修医の頃には気管支喘息は気管支平滑筋が収縮
して発作性呼吸困難を来す疾患という え方が主流で,
その病態としてアセチルコリンなどの気管支収縮物質に
対する過敏性の亢進が強調された.治療としては経口 β2
刺激薬やテオフィリン製剤に加えて, 抗アレルギー薬が
用いられていたが, 発作のため入院する患者が多く存在
した.しかしながら,1990年代に入って,喘息の病態にお
ける好酸球性気道炎症が重視され, 吸入ステロイド薬
(ICS) を成人喘息治療の第一選択薬として 用するよう
になると, 成人喘息患者の症状コントロールは飛躍的に
改善した. 現在では様々な ICSに加えて, ICSと長時間
作用性吸入 β2刺激薬との配合剤, ロイコトリエン拮抗
薬などによって, ほとんどの喘息患者が外来で症状が良
好にコントロールされるようになった. 一方, 現在でも
喘息は小児のみならず成人における common diseaseで
あることに変わりはなく, 患者数は非常に多い. 2010年
に群馬大学の学生を対象として実施した期間有症率調査
では, 男子学生の 9.4%, 女子学生の 5.3%は喘息症状を
有すると判断された. また, 成人喘息患者では, 好酸球性
副鼻腔炎, 好酸球性中耳炎, Churg-Strauss症候群などの
下気道以外の領域へ好酸球性炎症が波及する疾患の合併
や, 気道リモデリングによる非可逆的な気流制限, 喫煙
者での COPD の合併や鑑別などが問題となってきた.少
数ながら, 標準的な薬物治療によって症状のコントロー
ルができない難治性喘息患者も存在する. 本講演では私
たちが生体調節研究所 岡島 和教授グループと共同研
究してきた気道炎症に関する基礎研究データや泌尿器科
と共同で行っている難治性喘息に対する新規治療法の紹
介を含め, 現在の成人喘息診療に残された問題点につい
て論じたい.
360 第 59 回北関東医学会 会抄録