令和元年度 修士論文
MF 帯放送波の日出/日没時伝搬異常と
地震発生との関連性解析
指導教員 本島
邦行 教授
群馬大学大学院理工学府 理工学専攻
電子情報・数理教育プログラム
修士
2 年 学籍番号 T181D005
新城
アンドレ
目次
1.序論 ... 1 2.電波観測システム ... 2 3.解析方法... 4 3.1.MF 帯放送波と電離層 ... 4 3.2.データの平滑化 ... 6 3.3.伝搬異常判定方法 ... 7 3.4.閾値の選定方法 ... 9 3.4.1.季節の考慮 ... 9 3.4.2.太陽活動の考慮 ... 11 3.4.3.閾値の決定 ... 12 4.解析対象地震 ... 14 4.1.地震規模を考慮しない震央エリア ... 14 4.2.地震規模を考慮した震央エリア ... 15 4.3.海洋地震について ... 16 5.評価方法 ... 18 5.1.異常期間の定義 ... 18 5.2.警報期間・関連付け期間長𝒕𝐩𝐞𝐫・予知率 ... 195.3.Molchan’s Error Diagram と確率利得 ... 20
6.解析準備 ... 22 6.1.観測アンテナの指向性 ... 22 6.2.関連付け期間長𝒕𝐩𝐞𝐫の決定 ... 23 6.3.定数 α の決定 ... 25 6.4.電波伝搬路から震央までの距離Lの決定 ... 26 7.解析結果 ... 28 7.1.札幌テレビ放送波の解析結果 ... 28 7.2.RCC 中国放送波の解析結果... 31 8.結論 ... 35 9.今後の課題 ... 36 10.謝辞 ... 38 参考文献 ... 39 研究業績 ... 40
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1.序論
日本は複数の海洋及び大陸プレートの境界上に位置することから、世界有数の地震大国 である。2011 年に発生した東日本大震災、2016 年に発生した熊本地震などの大規模地震 が甚大な被害をもたらした。地震による被害を最小限に食い止める為には事前の対策が必 要不可欠であり、地震予測の実現は重要な課題である。地震予測は大きく分け「長期的予 測」と「短期的予測」の 2 つに分類される。このとき「長期的予測」は年単位で地震が発 生する可能性を予測するものであり、地震が具体的に発生する時期の正確性に欠ける。そ れに対して「短期的予測」は日単位での地震が発生する可能性を予測するため、地震が発 生する時期の正確性は高い。そこで本稿では「短期的予測」に着目し、地震と電波伝搬異 常の関連性について記述する。 地震との関連性に関して、日出/日没時の VLF 帯放送波の変動と地震発生との関連性に ついては過去多くの報告がされている(1)(2)(3)。過去の報告例としては Terminator Time に 関連する論文があり、この Terminator Time とは電離層の日変化に伴った VLF 放送波の 位相・振幅の日変化で日出/日没付近で強度が極小となる時間のことである。これらの過去 の報告は日出/日没時刻の数分・数十分付近での変化に着目しているのに対して、本稿で取 り扱う手法は日出/日没時刻の受信電力と日出/日没時刻の数時間前後の受信電力に着目し ているため、地震と関連付ける異常の発生時間帯とその判定法が異なる。 本稿では日出/日没時刻と MF 帯放送波の受信電力をもとに地震との関連性を調べ、地 震発生が電離層に影響を与えるのかについて検証する。MF 帯放送波における日出/日没時 刻での受信電力を基準として、日出/日没時刻前後の受信電力との時刻差を用いて伝搬異常 を検出する。その後、前後1ヶ月間の季節や太陽活動の影響を考慮した閾値を決定する。 この閾値を用いることによって、季節や太陽活動の影響を受けることなく伝搬異常を判定 することを可能とした。このようにして求められた伝搬異常と地震の関連性について定量 的に評価を行った。 また伝搬異常と地震の関連性を示す評価方法に関して、過去に予知率及び確率利得を用 いた報告(4)、Molchan’s Error Diagram を用いた報告(5)がされている。したがって、本稿で用いている MF 帯放送波の解析にもこれらの評価方法を適応し、伝搬異常と地震の関連性 について考察を行った。
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2.電波観測システム
本稿で扱う観測データは、日本各地の電波塔から送信される様々な MF 帯放送波の一部 である。現在、群馬大学桐生キャンパスの屋上に設置したループアンテナにより、MF 帯 放送波の受信電力を 24 時間体制で計測している。群馬大学桐生キャンパスで観測してい る MF 帯放送波の一覧を以下の表 2.1 に示す。 表 2.1 観測している MF 帯放送波の一覧表 放送局 放送波(Frequency) NHK 東京 AM0594k_Tokyo (594kHz) NHK 福岡 AM0612k_Fukuoka (612kHz) NHK 大阪 AM0666k_Osaka (666kHz) NHK 秋田 AM0774k_Akita (774kHz) NHK 名古屋 AM1053k_Nagoya (1053kHz) RCC 中国 AM1350k_Hiroshima (1350kHz) 札幌 TV AM1440k_Sapporo (1440kHz) また MF 帯放送波の受信電力を計測している観測システムについて、概略図を群馬大学 桐生キャンパスの観測システムを例に以下の図 2.1 に示す。 図 2.1 MF 帯放送波の観測システム3 各地に存在する電波塔から送信される様々な MF 帯放送波を、群馬大学桐生キャンパス 屋上にて設置したアンテナにより受信している(各送信点及び受信点の位置関係を以下の図 2.2 に示す)。そこでスペクトラムアナライザを用いることで、受信した電波の受信電力 [dBm]を計測している。計測した受信電力データは本研究室サーバに蓄積される。以下の 図 2.3 に実際の観測波形を示す。 図 2.2 MF 帯放送波の送受信店 図 2.3 観測システムにおける観測波形 観測データ:AM_1440kHz_Sapporo 観測期間:2008/06/01 00:00 ~ 2008/06/02 00:00
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3.解析方法
本稿で扱う MF 帯放送波は、2 章の表 2.1 で記載した MF 帯放送波一覧の中から、札幌テ レビ放送(1440kHz)と RCC 中国放送(1350kHz)の 2 つの放送波とした。また、受信点は両 放送波とも群馬大学桐生キャンパスである。3 章の解析方法から評価まで両放送波に対して 同様の処理を行う際は、札幌テレビ放送を例として説明する。 3 章では本稿で扱う MF 帯放送波の性質を説明し、その性質を考慮した上で MF 帯放送 波の伝搬異常と地震の関連性の検証を行うための解析方法について記述する。3.1.MF 帯放送波と電離層
MF 帯放送波は放送法の第 2 条第 16 号(6)において、「526.5kHz から 1606.5kHz までの周 波数を使用して音声その他の音響を送る放送」のことを指している。通常 MF 帯放送波の 電波伝搬は、昼間・夜間で異なり、昼間では隣県程の範囲でしか受信することはできないが、 夜間ではその範囲が拡大する。これは昼夜における電離層の変化に起因している。以下の図 3.1 に MF 帯放送波における昼間と夜間の伝搬の違いを表す例を示した。 図 3.1 昼間と夜間の MF 帯放送波5 電離層は太陽活動に大きく影響される性質があり昼間には D 層・E 層・F 層が現れるが、 太陽の影響が弱くなる夜間ではと図 3.1 のように D 層が消滅し E 層と F 層のみが残る。MF 帯放送波は、昼間では D 層による減衰のため遠方まで伝搬しないが、夜間では D 層による 減衰がなく、E 層による反射のみとなるため昼間と比較して遠方まで電波が伝搬するように なる。実際の観測波形を用いて、昼間と夜間ではどのように受信電力が変化するかを説明す る。以下の図 3.2 に受信電力波形及び日出/日没時刻を示す。 図 3.2 日出/日没時刻での変化 D 層の出現と消失は太陽活動が大きく影響している。そのため太陽が地平線から見え始 める日出時刻を確認すると、受信電力が約−90[dBm]から数時間に渡って徐々に減少してい ることが分かる。反対に太陽が地平線から見えなくなる日没時刻を確認すると、数時間前か ら受信電力が増加し、約−90[dBm]で一定の増加が終わることが分かる。MF 帯放送波にお いては、以上のような受信電力の変動が毎日繰り返されているため、この性質を用いて伝搬 異常の判定を行っていく。また、日出/日没時刻に関しては、太陽の赤道や近日点などの複 数の要素を考慮する必要があり計算が複雑化するため、国立天文台天文情報センター暦計 算室(7)が予め上記の値を考慮し算出した値を用いることとする。なお、日出/日没時刻の算 出に用いる緯度経度は解析放送波の送信局の緯度経度を採用している。
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3.2.データの平滑化
観測したデータはノイズが含まれており、そのまま解析を行うと特定の異常を見落とし やすくなってしまう。そのため解析前には 5 データで移動平均をとることにより平滑化を 行い、その平滑化したデータを用いて解析をする。以下の図 3.3 に 5 データ間隔で平滑化し たデータと平滑化する前のデータを示す。 (a) 平滑化前の観測データ (b) 平滑化後の観測データ 図 3.3 観測データの平滑化7
3.3.伝搬異常判定方法
本稿で扱う MF 帯放送波の観測データから、伝搬異常を判定する方法について記述する。 日出/日没時刻を用いて以下の手順に従い、伝搬異常判定を行うこととする。 手順(1).観測データでの日出/日没時刻とその時の受信電力を記録する。 手順(2).日出時刻の受信電力と日出時刻の 4 時間後までの受信電力を比較し、日出時刻の 受信電力より大きな受信電力が観測された場合には、その時刻と日出時刻との時 間差を記録する。(超えていなかった場合は 0 とする。)以降、時間差データと呼 ぶ。 手順(3).日没時刻の受信電力と日没時刻の 4 時間前までの受信電力を比較し、日没時刻の 受信電力より大きな受信電力が観測された場合には、その時刻の日没時刻との時 間差データを記録する。(超えていなかった場合は 0 とする。) 手順(4).手順(2),手順(3)で求めた時刻差データが予め定めた閾値を超えた場合、日出/日 没時刻から次の日没/日出時刻までを“伝搬異常期間”と定義する。 手順(2)と手順(3)で解析範囲を 4 時間としたのは、日出/日没の時間間隔が 1 年で1番短 い冬至で4時間以上としてしまうと解析範囲が重なってしまうためである。以下の図 3.4 に 2008 年の冬至を例にして解析範囲を示した。 図 3.4 冬至での解析範囲8 以下に日出時と日没時に分けて、伝搬異常判定方法の簡単な例を示した。図 3.5 の(a)は 日出時、(b)は日没時の例である。 (a) 日出時での伝搬異常判定 (b) 日没時での伝搬異常判定 図 3.5 日出/日没時での伝搬異常判定方法
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3.4.閾値の選定方法
3 章 3 節の手順(4)で述べた閾値は、その値を変えることで伝搬異常を「全く異常を出さな い状態」から「全期間で異常を出す状態」まで変化させることができる。このように閾値を変 化させることで最終的に伝搬異常と地震の関連性の評価を行う。この際に年間を通じて一 定の閾値を設定してしまうと、季節による変化によって異常の出やすい時期と出にくい時 期があり、適切な異常判定を行えない。そのため、4 節では閾値の選択方法に関して述べて いく。3.4.1.季節の考慮
3 節で述べた方法で時間差データを求める場合、時間差データは日出/日没時刻に大きく 左右される。以下の図 3.6 に 1 年間の時間差データの変動を示す。 図 3.6 時間差データの月変動 観測データ:AM_1440kHz_Sapporo 観測期間:2008/06/01 00:00 ~ 2009/05/31 00:00 日出/日没でそれぞれ解析範囲が異なるため、日出解析時には時間差が+になり日没解析 時には時間差が-になる。図 3.6 を確認すると分かるように、時間差データは夏季では約 6000 秒であるのに対して冬季では約 8000 秒になることが分かる。これは夏季と冬季の日10 出/日没時刻の変化によって生じる。以下の表 3.1 に例として 2008~2009 年の春分・夏至・ 秋分・冬至の日出/日没時刻データをまとめた。 表 3.1 日出/日没時刻の変化 日付 日出時刻 日没時刻 夏至 2008/06/21 03:55 19:18 秋分 2008/09/23 05:23 17:30 冬至 2008/12/21 07:03 16:03 春分 2009/03/20 05:38 17:47 このように冬季では日出/日没時刻の間隔が短いため図 3.7 のように昼間でも受信電力が 一定とならない日が多くみられる。以下の図 3.7 に 2008 年で受信電力が一定とならない日 の例を示す。 図 3.7 2008/12/10 の観測データ 冬季において図 3.7 のような現象が頻発している。ゆえに、このような現象が解析に影響 することを防ぐために季節変動の考慮が必要となる。
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3.4.2.太陽活動の考慮
3 節で述べた方法で時間差データを求める場合、時間差データは太陽活動の周期にも大き く左右される。以下の図 3.8 に 11 年間の時間差データの変動を示す。 図 3.8 時間差データの年変動 図 3.8 を確認すると分かるように、2008 年では時間差データの最大値が約 8000 秒だっ たのに対して、2013 年では最大値が約 6000 秒となっている。そして、2018 年になると最 大値が上昇し、約 8000 秒となっていることが確認できる。この現象は以下の図 3.9(8)の変 動と非常に類似している。 図 3.9 黒点数の変動12 図 3.9 は 1996 年から 2018 年の太陽の黒点数の増減を示している。この増減が図 3.8 の 時間差データの変化と一致していることから太陽活動の周期は本解析法において大きく影 響を与えるものであると分かる。
3.4.3.閾値の決定
3.4.1 の季節変動を考慮しない場合、伝搬異常が多い月と少ない月が生じる。また 3.4.2 の 太陽活動を考慮しない場合、伝搬異常が多い年と少ない年が生じる。そのため、両者を考慮 した閾値を設定する必要がある。本解析では正規分布の3σ区間に基づく「3σによる閾 値」と筆者が任意で決定する一定閾値である「可変型閾値」の 2 つの和を用いて閾値判定を行 う。以下の図 3.10 に3σによる閾値の決定方法を示す。 図 3.10 変動を考慮した閾値の選択方法 図 3.10 のように前後 1 ヶ月のデータでから求めたσ値に基づく3σ区間を閾値として判 定を行う。この方法を採用することによって、季節や太陽活動からの影響を受けずに解析を 行うことができる。この方法によって求めた「3σによる閾値」と「可変型閾値」を設定する ことによって、伝搬異常と地震の関連性を評価する際には伝搬異常の出現する頻度を変化 させることができる。以下の図 3.11 に前後 1 ヶ月の時間差データから求めた「3σによる 閾値」と「可変型閾値」を表した例を示す。13
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4.解析対象地震
伝搬異常と地震発生の関連性を評価する前に、どのような条件を含む地震が伝搬異常を 引き起こすかを考える必要がある。そこで MF 帯放送波に影響を与える地震は、伝搬路付 近で発生したもので、かつ規模が大きいものであるという仮説のもと解析対象とする地震 の判定方法について記述する。なお、本稿では伝搬路から震央までの距離について地震規模 を考慮した震央エリアと考慮しない震央エリアの 2 つの条件で定義を行った4.1.地震規模を考慮しない震央エリア
地震データに対して「マグニチュードM」、「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」の条 件を設けることで、解析対象とする地震を限定する。今回対象とする地震は規模が大きいも のを想定しているため、震源の深さは考慮しない。 「電波伝搬路から震央までの距離 L[km]」に対する伝搬路及び解析対象とする地震の震源 域を図 4.1 に示す。 図 4.1 電波伝搬路から震央までの距離に対する伝搬路及び解析対象とする地震の震源域15
4.2.地震規模を考慮した震央エリア
4 章 1 節で説明した地震規模を考慮しない震央エリアのほかに地震規模を考慮した震央 エリアを導入した。大きい規模の地震はより広い範囲の電離層に影響を与えると仮定し、地 震の規模によって「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」が変動する「マグニチュードを考 慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を採用した。以下に「マグニチュードを考慮 した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を表す式(1)を示す。𝐿
𝑀
= 10
αM
[km]
α:定数 M:マグニチュード (1) 「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」に対する伝搬路及び 解析対象とする地震の震源域を図 4.2 に示した。 図 4.2 マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離16 図 4.2 では式(1)を導入した際の解析対象とする地震の震源域を表している。定数αの値 は例として 0.36 を用いた。実際の解析では”関連あり地震”と”関連なし地震”の位置関係を 確認しながら放送波ごとに設定する。定数αを 0.36 とした場合、図 4.2 で示した 3 つの範 囲の𝐿MはそれぞれM=6.0 で𝐿M=144[km]、M=6.5 で𝐿M=218[km]、M=7.0 で𝐿M=331[km] となった。このようにマグニチュードが大きい場合には解析対象とする地震の震源域が広 がり、マグニチュードが小さい場合には解析対象とする地震の震源域が狭まる。
4.3.海洋地震について
震央の位置を内陸と海洋に分け、海洋で発生した地震による MF 帯放送波への影響につ いて考察する。実際に解析放送波を札幌テレビ放送とした場合の“関連あり地震”と”関連な し地震”の位置関係を以下の図 4.3 に示した。 図 4.3 関連あり地震と関連なし地震の位置関係17 解析放送波:札幌テレビ放送(1440kHz) 解析期間:2008/06/01 ~ 2018/05/31 マグニチュード:6.0 以上 関連付け期間長:地震発生前 13 日 警報分率:50% 図 4.3 では「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」での範囲を示した。100km とした場 合は赤色、200km とした場合は青色で示している。図 4.3 から関連あり地震は陸地に近い 場合が多く確認できる。海岸線から 0km から 100km を 10km ずつ変化させ全地震に対する 関連あり地震の割合を求めた結果、海岸線から 50km 以内までとした場合が最も関連あり 地震の割合が高かった。この結果より、本稿では海岸線から 50km 以内の地震に限定して地 震を選択する。
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5.評価方法
本稿では伝搬異常と地震の関連性を統計的に評価するための評価値として、予知率 (Prediction rate)、警報期間(Alarm period)、警報分率(Alarm rate)、確率利得(Gain of probability)を用いる。
5.1.異常期間の定義
評価方法を説明する前に、伝搬異常と地震を関連付ける期間を定義する必要がある。以下 の図 5.1 に日出時解析と日没時解析での異常期間の定義を示した。 図 5.1 異常期間の定義 日出時解析時に異常が発生した場合、解析日の日出時刻から日没時刻を異常期間と定義 する。また、日没時解析時で異常が発生した場合には、解析日の日没時刻から解析日翌日の 日出時刻を異常期間と定義する。19
5.2.警報期間・関連付け期間長
𝒕
𝐩𝐞𝐫・予知率
警報期間(Alarm period)とは、5 章 1 節で説明した伝搬異常の開始時刻から異常期間の終 了時刻に「関連付け期間長𝑡pe𝑟[days]」を加えた時刻までの時間長のことである。以下の図 5.2 に警報時間の例を示した。 図 5.2 警報時間の定義 ここで”+𝑡per”とは、伝搬異常の終了時刻後に加算する関連付け期間長のことであり、地 震発生前𝑡per[days]以内に発生した伝搬異常が”関連あり”と判定するために定義された時間 長である。例として𝑡per = 1[days]とした場合、伝搬異常発生時刻から伝搬異常の終了より 1 日後までに発生した地震を”関連あり”とみなす。𝑡perの日数の決定は 6 章の解析準備で定義 する。 また、警報分率とは「全解析時間に対する解析期間中の総警報時間」の割合であり、式(2) で示される。警報分率 =
解析期間中の総警報時間
全解析時間
(2) 予知率とは「解析対象となる地震総数に対する伝搬異常により予知が確認できた地震数」 の割合で、式(3)で示される。予知率 =
伝搬異常により予知された地震数
解析対象となる地震総数
(3)20
5.3.
Molchan’s Error Diagram と確率利得
図 5.3 Molchan’s Error Diagram の例
Molchan’s Error Diagram は図 5.3 のように「警報分率(Alarm rate)τ に対する予知率 (Prediction rate)ν」として表される。一般的に予知率は警報分率と共に増加し、ランダム な予測に対しては図 5.3 のように対角線で図示される。ランダムな予測による予知率と伝搬 異常に基づく予知率の比を確率利得 Gp(Gain of probability)と定義する。ここで各評価値に 基づいた Molchan’s Error Diagram における各線の導出方法について記述する。
(1)ランダム推測(対角線) 図 5.3 における対角線のことであり、ランダムな予測に対して描かれる線である。この線 よりも上側に存在する予測は、予想される地震の割合が警報割合よりも大きいことを示し ており、ランダムな予測より関連性が有ることを意味する。 (2)伝搬異常による予測(赤線) 図 5.3 における赤線のことであり、伝搬異常に基づいた予測に対して描かれる線である。 また、筆者が任意で決定する一定閾値である「可変型閾値」を変化させることで伝搬異常発 生と判定される頻度を変え、その閾値での警報分率に対する予知率をプロットしたもので ある。
21 (3)95%信頼区間(青線) 図 5.3 における青線のことであり、信頼区間を表す線である。95%信頼区間とは 95%の 信頼度という基準である区間を推定した場合、同様の条件で標本抽出を繰り返した際、全真 値の 95%が含まれる区間を表している。本稿では、伝搬異常と地震が無関係という仮定の もと、95%の信頼度という基準で推定した際の残り 5%の区間外に含まれる標本は確率統計 において偶然には起こりえないと判断する。このことより図 5.3 の青線で示した 95%信頼 区間を伝搬異常に基づいた予測線(図 5.3 の赤線)が超えているものは伝搬異常と地震の関 連性が極めて高い予測であると評価できる。また、7 章の解析結果では 99% 信頼区間(99% confidence)における評価も行う。 次に 95%信頼区間を導出する方法について述べる。解析期間中に地震がNeq回発生したと 仮定すると、警報時間中に発生する地震数は二項分布に従う。ゆえに解析期間中に地震が Neq回発生した場合の警報分率を τ とすると、警報時間中に n 回地震が発生する確率は式
(4)となる。Molchan’s Error Diagram では各警報分率に対して、Bin(n,τ)の二項分布にお ける確率式(4)を算出し、95%信頼区間を図示する。
P(𝑛) = (
𝑁
eq22
6.解析準備
評価を行う前に、解析に用いる定数の決定やデータの修正方法を考察する必要がある。6.1.観測アンテナの指向性
以下の図 6.2 に群馬大学桐生キャンパスに設置されている MF 帯放送波の観測用ループ アンテナとループアンテナの指向性を示す。 図 6.1 ループアンテナの指向性 図 6.1 のようにループアンテナの指向性は北北東に向いているため、送信局が札幌である 札幌テレビ放送の受信電力は高く、送信局が広島である RCC 中国放送の受信電力は弱くな る傾向にある。実際の観測データからその傾向は確認でき、RCC 中国放送波より札幌テレ ビ放送波の最大受信電力は高い。両者の比較を行うため以下の図 6.2 に、左に札幌テレビ放 送、右に RCC 中国放送の 1 日の受信電力を示した。23 図 6.2 受信電力の比較 札幌テレビ放送では最大受信電力が約−90[dBm]であるのに対し、RCC 中国放送の最大 受信電力は約−100[dBm]である。このように両者の最大受信電力に差が生じたまま解析を 行うと同等な基準で解析を行えない。その為、RCC 中国放送の日出解析時には日出時刻を 実際の日出時刻より 10 分前に設定し、日没解析時には日没時刻を実際の日没解析時の 10 分後に設定する。RCC 中国放送の日出/日没時刻を変更した理由としては、札幌テレビ放送 の解析を基準としているためである。
6.2.関連付け期間長
𝒕
𝐩𝐞𝐫の決定
𝑡perはすべての放送波に対して同様の日数とする。その為、最も高い地震と伝搬異常の関 連性を得ることができる𝑡perの値を確かめる必要がある。本稿では札幌テレビ放送の解析にて𝑡perを 1~30[days]全てで解析を行い、Molchan’s Error Diagram の結果において最も高い
地震と伝搬異常の関連性を確認できた𝑡perを採用する。以下に解析条件と図 6.3 に各𝑡perの
値における Molchan’s Error Diagram の結果を示した。
解析放送波:札幌テレビ放送(1440kHz) 解析期間:2008/06/01 ~ 2018/05/31
マグニチュード:6.0 以上
伝搬経路から震央までの距離:200km 以内 関連付け期間長tper: 1~30days
24
25 図 6.3 の結果より最も 95%信頼区間を超えていたのは𝑡perを 13[days]とした場合だった ので、本稿ではすべての解析条件において𝑡per = 13[days]を採用する。
6.3.定数αの決定
解析対象地震のパラメータとして用いる「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震 央までの距離𝐿M[km]」は定数αを定める必要がある。定数αは”関連あり地震”と”関連なし 地震”の位置関係とマグニチュードを1つの図にまとめ、どの数値に定めた際に最も高い地 震と伝搬異常の関連性を得られるかを検証することで決定する。αの値は放送波ごとに定 める。以下の図 6.4 に札幌テレビ放送での解析条件とその結果を示す。 解析放送波:札幌テレビ放送(1440kHz) 解析期間:2008/06/01 ~ 2018/05/31 関連付け期間長𝑡per: 13days 警報分率:50% 図 6.4 札幌テレビ放送解析時での関連地震の距離とマグニチュードの関係 図 6.4 の解析では 4 章 3 節で解説した海岸線より 50km 以内の地震を陸域地震としてお り、海岸線から 50km の距離より遠い地震を海洋域地震としている。陸域地震のうち、”関 連あり地震”はαを 0.36 とした場合に全地震に対する割合が最も高くなる。そのため札幌テ レビ放送解析時にはαを 0.36 として解析をする。26 次に RCC 中国放送波でのαを定める。以下の図 6.5 に RCC 中国放送での解析条件とそ の結果を示す。 解析放送波:RCC 中国放送(1350kHz) 解析期間:2008/06/01 ~ 2018/05/31 関連付け期間長𝑡per: 13days 警報分率:50% 図 6.5 RCC 中国放送解析時での関連地震の距離とマグニチュードの関係 図 6.5 から RCC 中国放送の解析時にはαを 0.38 とした場合、陸域地震の全地震に対す る”関連あり地震”の割合が最も高かった。そのため、RCC 中国放送の解析時にはαの値を 0.38 として解析をする。
6.4.電波伝搬路から震央までの距離
L
の決定
本稿では地震規模を考慮しない震央エリアのパラメータとして用いる「電波伝搬路から 震央までの距離L[km]」は 200km としている。これは実際にLを 100km、200km、300km と変化させて解析した結果、200km とした場合に最も地震と伝搬異常の関連性が高かった ためである。以下の図 6.6 にLを 300km として解析した際の関連地震の位置関係を示した。27 図 6.6 L を 300km とした場合の関連地震の位置関係 解析放送波:札幌テレビ放送(1440kHz) 解析期間:2008/06/01 ~ 2018/05/31 マグニチュード:6.0 以上 関連付け期間長𝑡per: 13days 警報分率:50% 図 6.6 では 300km 以内を黒色、200km 以内を青色、100km 以内を赤色の範囲で示してい る。Lを 200km とした場合、青点で示された”関連あり地震”の割合が高いが、Lを 300km とした場合には赤点の割合が高くなることが確認できる。この結果より 200km 以上の範囲 では地震と伝搬異常の関連性が低くなることが確認できる。
28
7.解析結果
本稿で解析対象とする MF 帯放送波に対して、伝搬異常と地震の関連性解析を行った。 可変型閾値を設定することで伝搬異常の割合を 0~100%まで変化させることで評価を行う。 また、地震に関しては「マグニチュードM」、「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」、「マ グニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を用いて解析対象地震を選択する。そして、Molchan’s Error Diagram において 95%信頼区間及び 99%信頼区間か ら最も離れた結果、つまり伝搬異常と地震との関連性が最も高い結果に着目し、各評価値を 用いて伝搬異常と地震の関連性について考察する。
7.1.札幌テレビ放送波の解析結果
7 章 1 節では札幌テレビ放送波の解析を行う。本稿では地震の選択方法を 2 つに分け、 「マグニチュードM」、「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」を用いる場合の解析と「マグ ニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を用いた場合の解析を行う。 札幌テレビ放送解析時に用いた解析条件を以下に列記する。 ●解析期間 ・2008/06/01 ~ 2019/05/31 ●解析放送波 ・札幌テレビ放送(1440kHz) ●送受信点 ・送信点:北海道札幌市(北緯 43 度 05 分 21 秒 , 東経 141 度 35 分 27 秒) ・受信点:群馬大学桐生キャンパス(北緯 36 度 25 分 26 秒 , 東経 139 度 20 分 57 秒) ●地震選択パラメータ ・マグニチュード:𝑀 ≥ 6.0 ・電波伝搬路から震央までの距離:𝐿 ≤ 200[km] または ・マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離:𝐿M= 100.36M29 上記の解析条件で解析を行った結果を以下の表 7.1 にまとめた。 表 7.1 札幌テレビ放送の解析結果 観測放送波 札幌テレビ放送(1440kHz) 総解析日数 3785[days] 関連付け期間長 13[days] 解析条件 解析条件① 解析条件② マグニチュード 𝑀 ≥ 6.0 解析地震選択範囲 𝐿 ≤ 200[km] かつ 海岸線から 50[km]以内 𝐿M= 100.36M かつ 海岸線から 50[km]以内 地震総数 27 21 警報分率 0.051 0.051 予知率 0.148 0.190 確率利得 2.89 3.72 札幌テレビ放送の解析では「マグニチュード M」、「電波伝搬路から震央までの距離 L[km]」を用いる条件は解析条件①とし、「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央ま での距離𝐿M[km]」を用いる条件は解析条件②とした。また、警報分率が小さい場合には確率 利得が地震と伝搬異常の関連性に関係なく高くなってしまうため、5%以上の警報を出す中 で最も確率利得が高い条件において評価をする。確率利得は解析条件①で 2.89、解析条件 ②で 3.72 であり、「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を用 いると地震と伝搬異常の関連性がより高くなることを確認できた。このことより、地震の規 模と電離層に与える影響には関連があるとわかる。以下の図 7.1 に解析条件①と解析条件② の Molchan’s Error Diagram を示す。
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(a) 解析条件①の結果
(b) 解析条件②の結果
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図 7.1 の Molchan’s Error Diagram の結果から解析条件①と解析条件②の両者においてラ ンダム予測線を大きく越えていることが確認できる。解析条件①では警報分率が 0~10%・ 20~40%にかけて 95%信頼区間を超えていることから、地震と伝搬異常の高い関連性を得 られた。解析条件②では多くの警報分率において 95%信頼区間を超えており、警報分率が 0~10%・20~30%にかけては 99%信頼区間を超えている。99%信頼区間を超えた場合、 1%の確率でしか起こりえない現象であるため、解析条件②では地震と伝搬異常の関連性が 非常に高いと分かった。
確率利得と Molchan’s Error Diagram の両評価で解析条件①より解析条件②のほうが地震 と伝搬異常の関連性が高いという結果が得られたことから、電離層は地震に大きく影響さ れ、その影響は地震の規模によって大きく左右されることが分かった。
7.2.RCC 中国放送波の解析結果
次に RCC 中国放送波の解析を行う。解析条件は札幌テレビ放送波の解析時と同様に解析 条件①と解析条件②に分けて解析する。以下に RCC 中国放送の解析時に用いた解析条件を 列記する。 ●解析期間 ・2008/06/01 ~ 2019/05/31 ●解析放送波 ・RCC 中国放送(1350kHz) ●送受信点 ・送信点:広島県広島市(北緯 34 度 24 分 07 秒 , 東経 132 度 27 分 41 秒) ・受信点:群馬大学桐生キャンパス(北緯 36 度 25 分 26 秒 , 東経 139 度 20 分 57 秒) ●地震選択パラメータ ・マグニチュード:𝑀 ≥ 6.0 ・電波伝搬路から震央までの距離:𝐿 ≤ 200[km] または ・マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離:𝐿M= 100.38M32 上記の解析条件で解析を行った結果を以下の表 7.2 にまとめた。 表 7.2 RCC 中国放送の解析結果 観測放送波 RCC 中国放送(1350kHz) 総解析日数 3785[days] 関連付け期間長 13[days] 解析条件 解析条件① 解析条件② マグニチュード 𝑀 ≥ 6.0 解析地震選択範囲 𝐿 ≤ 200[km] かつ 海岸線から 50[km]以内 𝐿M= 100.38M かつ 海岸線から 50[km]以内 地震総数 16 22 警報分率 0.068 0.053 予知率 0.186 0.182 確率利得 2.73 3.39 RCC 中国放送の解析でも同様に「マグニチュード M」、「電波伝搬路から震央までの距離 L[km]」を用いる条件は解析条件①とし、「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央ま での距離𝐿M[km]」を用いる条件は解析条件②とした。RCC 中国放送解析時には確率利得が 解析条件①で 2.73、解析条件②で 3.39 となり、札幌テレビ放送解析と同様に解析条件①よ り解析条件②で確率利得が高くなった。以下の図 7.2 に解析条件①と解析条件②の Molchan’s Error Diagram を示す。
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(a) 解析条件①の結果
(b) 解析条件②の結果
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図 7.2 の Molchan’s Error Diagram の結果から解析条件①と解析条件②の両者においてラ ンダム予測線を大きく越えることが確認できる。解析条件①では警報分率が 5~20%にかけ てランダム予測線を越えることから、地震と伝搬異常に関連性があることが分かる。解析条 件②では警報分率が 5~10%にかけて 95%信頼区間を超えることより、地震と伝搬異常の 高い関連性があることが分かった。 RCC 中国放送の解析時でも札幌テレビ放送解析と同様に、確率利得と Molchan’s Error Diagram の両方で解析条件①より解析条件②のほうが地震と伝搬異常の関連性が高いとい う結果が得られた。
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8.結論
本稿では確率利得と Molchan’s Error Diagram に基づき、MF 帯放送波の伝搬異常と地震 の関連性について統計的検証を行った。解析期間内の日出/日没時刻での受信電力を基準と して、日出/日没時刻前後の受信電力と比較をすることによって伝搬異常を検出した。また、 前後1ヶ月の時間差データから求めた平均値・標準偏差で算出する閾値を用いることによ って、季節や太陽活動の影響を考慮した伝搬異常判定を行った。解析結果としては、札幌テ レビ放送の解析時には地震規模を考慮しない震央エリアを用いた場合に 95%信頼区間を超 過し、地震規模を考慮した震央エリアを用いた場合には 99%信頼区間を超過することを確 認した。両者の結果において伝搬異常と地震との高い関連性を得られることが確認できた。 RCC 中国放送の解析時には地震規模を考慮しない震央エリアを用いた場合にはランダム予 測線を大きく越え、地震規模を考慮した震央エリアを用いた場合には 95%信頼区間を超過 した。RCC 中国放送解析時にも両者の結果において伝搬異常と地震との高い関連性を得る ことが確認できた。このことによって地震の発生は MF 帯放送波及び電離層に大きく影響 を与えているということを確認できた。また、札幌テレビ放送と RCC 中国放送の両者の解 析時で地震と伝搬異常の高い関連性を得られたことから、この現象は1つの放送波に限っ た地域性がある現象ではないことが分かった。他に両者の確率利得及び Molchan’s Error Diagram の結果で、地震規模を考慮しない震央エリアの条件より地震規模を考慮した震央 エリアの条件において地震と伝搬異常の高い関連性を示していたことより、規模が大きな 地震ほど MF 帯放送波及び電離層に影響を与えることが確認できた。
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9.今後の課題
今後の課題として、アンテナの指向性の修正と新たな解析方法が挙げられる。まずはアン テナの指向性に関して説明する。本稿では RCC 中国放送の解析時には日出/日没時刻を変 更し札幌テレビ放送の解析と同様な評価を行えるよう補正した。今後の展望としては、さら に解析放送波を増やし、地域が異なる場合でも伝搬異常と地震の関連性を得ることができ るか確認することを考えている。しかし、極端に最大受信電力が低い場合では本稿と同様な 判定はできない。以下の図 9.1 に NHK 福岡放送の1日の観測波形を示す。 図 9.1 NHK 福岡放送の観測波形 観測データ:AM_0612kHz_Fukuoka 観測期間:2008/06/01 00:00 ~ 2008/06/02 00:00 図 9.1 の観測波形と RCC 中国放送の観測波形を比較すると、NHK 福岡放送の受信電力 が弱いことが確認できる。図 9.1 では特に日没時刻後に受信電力が弱い傾向が現れている。 このため、今回の解析に採用することができなかった。この問題を解決するべくアンテナの 増設を行い、日本全国から送信される MF 帯放送波の受信電力が同様な最大受信電力にな るよう調整したい。37 次に新たな解析方法に関して説明する。今回採用できなかった観測データとして NHK 秋 田放送がある。NHK 秋田放送では夜間に電波の送信を停止することで停波となるため、日 出時刻での解析を行うことができない。以下の図 9.2 に NHK 秋田放送の観測波形を示す。 図 9.2 NHK 秋田放送の観測波形 観測データ:AM_0774kHz_Akita 観測期間:2008/06/01 00:00 ~ 2008/06/02 00:00 図 9.2 のように日出時刻では放送が届いていない為、日出時刻で解析をすることはできな い。そのため、日没時刻のみを用いた解析手法を考案する必要がある。試しに札幌テレビ放 送で同様な解析手法で日没時刻のみを用いて解析を行ったところ、図 7.1 で得られた解析結 果と類似した結果を得ることができた。このことより日没時刻のみを用いて解析を行うこ とは可能だと考えられる。
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10.謝辞
本研究を進めるにあたり多くの助言、ご指導をして頂いた本島邦行教授、研究室の方々 に厚く御礼申し上げます。並びに、修士学位論文の主査を務めていただいた小林春夫教授 及び副査を務めていただいた伊藤直史准教授に厚く御礼申し上げます。 また、本研究で扱っている地震データは、気象庁から拝借していることを付記し、関係 者各位に心より感謝致します。39
参考文献
(1).Yoshida, M., T.Yamauchi, T.Horie, and M.Hayakawa, “On the generation mechanism of terminator times in subionospheric VLF/LF propagation and its possible application to seismogenic effects" Natural Hazards Earth System Sci., vol.8, 129-134, 2008.
(2).吉田麻里,山内健,堀江匠,早川正士 “Wave-hop 法を用いた VLF/LF 帯電波伝搬解析 による Terminator Time の発生機構に関する考察,電子情報通信学会論文誌 B,vol.J91-B, No.1, 70-78, 2008.
(3).Hayakawa. M., O.A.Molchanov,T.Ondoh, and E.Kawai, "The precursory signature effect of the Kobe earthquake on VLF subionospheric signals," Journal of the Communications Research Laboratory, Tokyo, vol.43, no.2, pp.169-180, 1996.
(4)谷川 廣祐, 羽賀望, 本島邦行, “見通し内 VHF 帯放送波の伝搬異常と地震及び地表面平 均風速の統計的関連性,” J. Atmos. Electr., vol. 37, no. 1, pp. 11–24, 2017.
(5) Peng Han, Katsumi Hattori, Jiancang Zhuang, Chieh-Hung Chen, Jann-Yenq Liu and Shuji Yoshida, “Evaluation of ULF seismo-magnetic phenomena in Kakioka, Japan by using Molchan’s error diagram,” Geophys. J. Int., vol. 208, pp. 482–490, 2017.
(6)放送法 - 総務省 電波利用ホームページ
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/a724900001.html (7)国立天文台天文情報センター暦計算室-こよみの計算
https://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi
(8) “THE NEXT SUNSPOT CYCLE” THE ASTRONOMY CAFÉ
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