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医療裁判の研究 : 医療事故をめぐる紛争解決手段の現状と展望

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(1)研究ノート. 医療裁判の研究 一医療事故をめぐる紛争解決手段の現状と展望-. 根本晋-. 第1序. 論. 検察庁は,横浜市立大学医学部付属病院患者取り違え事件(1999年1月)を 契機として1),医療事故-の介入を強め,必罰・厳罰の姿勢で捜査・公判に臨 んでいる。具体的には,捜査体制の強化手段として医療専従班を新設し(2002 年4月),警視庁捜査課強行班(殺人・暴行傷害・強窃盗などの粗暴犯の捜査 を担当する警視庁内の部署)を動員して捜査を実行し,医師に対する逮捕状・ 医療機関に対する捜索差押令状の請求を常態化させるなどして,医療事故の初 動調査権を事実上独占しており,医療事故の強制捜査化・刑事事件化を公然と 推し進めている。裁判所も,捜査機関の令状請求を容易に認めており,この傾 向を事実上助長している。しかし,この現象は,鉄道・航空機事故などと比較 すると均衡を失するように思われる。けだし,これらの事故が発生した場合に. は,いきなり犯罪祝することなく,法令の規定により速やかに事故調査委員会 が設置され,専門家集団を擁する事故調査委貞会が真相解明のイニシアチブを 執り,これに追随する形で警察庁・検察庁が捜査を進めており,合理的かつ迅 速な事故原因の究明がなされているからであろ。 わが国における,医療事故の真相解明手法は,わが国独自のものであり,請 71.

(2) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). 外国における医療事故法制の在り方(非刑事事件化傾向)と反対のベクトルを 示している。また,医療事故を鉄道・航空機事故と区別して,別異に取り扱う. 理由も不功であ.る。 このような趨勢に対し,日本産婦人科学会と日本産婦人科医会は,福島県立 大野病院帝王切開事故(2004年12月発生・死亡事例)の担当医師が逮捕 (2006年2月18日). ・起訴(同年3月10日)されたことを受け,本件の逮捕・ 起訴を不当とする声明を発表し(同年3月11日),産婦人科医の有志によって 構成される「周産期医療の崩壊をくい止める会」も,医療行為の無闇な犯罪化 は,難易度の高い術式を必要とする患者への診療を事実上不可能とする旨の陳 情書を・,全国の産科医師約6520人の署名と併せて厚労省に提出するなどして おり,医療事故の刑事事件化傾向に対し,・強く抗議する姿勢を打ち出している. (同年3月17日). 2)。. 本稿は,かような現状を踏まえ,わが国における医療事故法制の現状と,請 外国の法制を比較検証するとともに,医療事故に伴う法律上の紛争を解決する 手段について,先進国の法制と,わが国における新たな取り組みを紹介し,医 事紛争解決手段に関する今後の課題と展望,ならびに若干の私見を論説するも のである。. 第2 1. 医療事故と事案の解明 わが国の現状. (1)医療事故調査委員会3) (-)内部調査委員会方式と外部調査委貞会方式 医療事故調査委員会とは,医療事故が発生した場合に,医療機関が自ら単独 で,あるいは患者側との協議を経て任意に設置する,常設もしくはアドホック な私設の事故調査機関である。なお,委員会の構成は,内部調査委員会方式 (医療機関側の委員のみで構成)と,外部調査委貞会方式(患者側ならびに中 72.

(3) 医療裁判の研究. 立的な第三者も委員として参加)に大別される。 まず,内部調査委員会方式であるが,これは,東京女子医大付属病院におけ る,一連の心臓ポンプ誤作動事故をめぐる,交渉の初期段階において採用され た方式である。. 患者参加型の医療事故調査委員会. 病院側. (注)患者側は内部調査が不十分と判断した場合,弁護士や学会の専門医らで構成する外部調査 委員会の開催を要求できる。. つぎに,外部調査委員会方式であるが,これは昭和大学医学部付属藤が丘病 院における,副腎腹痛腹腔鏡手術事故に関する事故調査委貞会において採用さ れた方式である。 患者参加型の医療事故調査委員会. 病院側. 患者側将需. 第三者. 73.

(4) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月).. なお,東京女子医大のケースについては,患者・遺族側が,内部調査委員会 が出した結論を不服としたため,新たに「医療事故調査検討委貞会」なる事故 調査委貞会を設置し,`調査を仕切り直した経緯がある。当調査委貞会は,従来 までの,内部・外部といったカテゴリーでは分類できない折衷的なスキームを 採用しており,第三の類型ともいうべきものなので紹介する。. 患者参加型の医療事故調査委員会. 病院側. 患者側瀦第三者. (二)医療事故調査委貞会の限界 事故調査委員会が,紛争の早期解決という所期の目的を達しているのか否か については,若干の疑義を呈さざるを得ない。その理由について,以下,死亡 事例を例にとって説明する。. 医療機関は患者の死亡確認(俗にschterbenと呼ばれる)と死因を明らかに するために死亡診断書を作成するが,一見して死因が不明である場合は病理解 剖に附し,死因を究明する。しかし,患者の遺体はその死亡と同時に遺族の所 有物となるため,遺族が病理解剖を拒否した場合は,これを行うことはできず,. 特段の事件性が認められか、限り,そのまま遺族に引き渡さなくてはならない。 しかし,医療機関に患者を収容した後24時間以内に患者が死亡し,しかも 74.

(5) 医療裁判の研究. 死因が不明である場合には,医師法第21条の規定により,当該医療機関を管 轄する警察署に対して異状死の届出をしなければならず,遺体は死因究明のた め,強制的に司法・行政解剖に附されるので,死因は解明されることになる。 本手続の概要であるが,届出があると,所轄警察署の捜査員と当該都道府県を. 管轄する監察医務院に所属する監察医が,患者の死亡を確認した医療機関まで 派遣され,捜査員による事情聴取・監察医による検死と,それに基づく死体検 案書の作成が行われる。かような手続が終了すると,遺体は当該警察署の管理 を離れ,医療機関の法医学教室に移管され,司法・行政解剖に附される。剖検 医は,遺体の全身状態や解剖中の状況を撮影するなどして解剖所見(剖見)を 記載した鑑定書を作成し,捜査機関に提出する。なお,私法・行政解剖の依頼 者は捜査機関であるが,捜査機関は,当該医療事故に事件性があると思料する 場合には,鑑定事項を明示して,これに回答する形の剖見の起案を求めるのが 通常である。. しかし,ここで問題が生じる。いわゆる捜査の非公開性の壁である。つまり, 鑑定書は書証の一つであり,事後的に捜査機関によって作成される実況見分調 書,関係者の供述調書などと併せて,捜査に関する一件記録,さらには公判請. 求する場合における公判提出記琴を構成するので,担当医師が公判請求されな い限り,原則として非公開とされてしまうからである(刑訴法第47条,第53 条,第196条参照)。つまり,捜査記録は被告人医師にのみに公開されるだけ であり,患者・遺族側に対しては,公判終結後まで,原則として公開されない のである。. 結局のところ,医療機関が死因を解明する方途は基本的に病理解剖のみであ り,患者側としては,医療機関側より剖見を聴取するか,あるいは,剖見を信 用しないのであれば,所轄の警察署に被害届を提出し,刑事事件として捜査に 着手させ,被疑者医師が起訴された後,犯罪被害者保護法に基づく謄写請求権 を行使して,捜査の過程で収集された各証拠関係(公判提出記録)から死因を 窺い知る他はない。 75.

(6) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). 既往のスキームによると,事故調査委貞会を設立して事案の解明を試みたと しても,病理解剖の剖見のみが頼りであり,これが存在しない場合は,遺体が 既に存在しない関係から,所轄消防庁救急課が保管している,救急政命士が作 成した救急活動記録票や,当該医療機関が保管している看護師日誌(救急活動 データベース),および担当医師が作成したカ・ルテや死亡診断書,監察医が作 成した死体検案書のみに依存せざるを得ないのが現状である。従って,医療機 関が手術中の情況をビデオなどに収録して保管しているのでない限り,事案の 解明は極めて困難といわざるを得ない。そのため,過失の有無や因果関係の存 否が怪しい限界事例においては,双方の主張が食い違い,却って当事者の関係 が紛糾し,話し合いが不調に終わり,結局のところ訴訟沙汰,つまり,証拠保 全を経て民事訴訟の提起という結末に至るケースが散見される。 以上の説明から明らかなように,私設の医療事故調査委員会は,過誤が明白 (な事案について機能するに止まり,限界事例については機能不全に陥る傾向が ある。. (2)裁判外紛争処理機関(ADR-Alternative. Dispute. Reso山tion). 医事紛争の当事者が,事故調査委員会の設立に合意しない場合,当事者の一 方又は双方が,裁判所以外の,私設の第三者機関(以下,民間塑ADRという) に事案の解明を委ねることがある。もちろん,公設機関ともいうべき民事調停 に委ねることも可能であるが,代理人弁護士に委任する費用等を掛けて調停を 申し立てるのであれば,調停に強制力がないことも相侯って,証拠保全の申立 を経て提訴という流れを選択した方が訴訟経済に資するため,取り敢えずは, 申立を行うにつき特別な法律的素養を有する必要がなく,また申立の要件も法 定されておらず任意に行い得,そのため法曹に委任する費用も掛からない民間 型ADRに事案の解明を委ねる土とがある。かような試みの晴夫としては,名 古屋弁護士会仲裁センターの,医事紛争に特化した仲裁機関を指摘することが できる4)。 76.

(7) 医療裁判の研究. ADRによる紛争処理の特徴は,簡易・迅速・柔軟という言葉に集約される。 訴訟と対比すると,第一に,訴訟では,原則として厳格な証拠法則に基づいて 勝敗-白黒をはっきりさせるが,. ADRでは必ずしもそうとはいえない。第二. に,訴訟では,審判の村象を訴訟物-請求権として構成可能なものに限定し, 結論も請求権の有無という形式で出されるが,. ADRでは必ずしもそうとはい. えない。第三に,訴訟法規は強行規定なので,原則として,原告による要件事 実の主張・立証,被告の抗弁,原告の再抗弁,そして, たときは,終局判決をする」. 「判決をするのに熟し. (民訴法第243条第1項)という過程を辿るが,. ADRにおける取扱規定は任意規定なので,それに囚われずに当該紛争の解決 に最も相応しい方法をとることができる。第四に,審査員・代理人の資格に制 限がないので,特殊領域の専門家を,鑑定などの手続を経ずに直接審査過程に 参加させることができる。以上の差異は,訴訟には当事者に審理の結果を強制 する力があるが,. ADRのメ. ADRにはないことに求められる。言い換えれば,. リットとデメリットは楯の両面なのである。第五として,訴訟については公開 原則があるので(憲法第82条参照),訴訟関係人のプライバシーや企業秘密が 第三者に漏出したり,名誉や業務上の.信用が敦損される虞れがあるが,. ADR. ノは原則として非公開なので,かかる虞れは生じない。. 民間型ADRの特徴は,概ね以上のようなものであるが,. ADR一般に敷街す. べき制度的な課題と■して,司法裁判所との連携の在り方が議論されている。こ れが実現すれば,司法裁判所とADRの判断が敵蔚する慮れもなくなるため, ADRの利用規定に散見される「訴訟繋属中の事案は受理しない」との規定は 不要になる。但し,. ADR担当者に厳格な守秘義務を課したり,裁判所に証拠. 調を嘱託可能とするなどの法整備も必要セある。また,. ADRが成功した場合. には,合意に執行力を附与する際に裁判所を関与させたり,反村に失敗した場 合には, ・爾後の訴訟手続に不利益に働くことのないように, 時効中断効(遡及効)を附与したり,. ADRへの申立に. ADR手続で行われた証拠調の効力を制. 限するなどの手当も欠かせないところである。 77.

(8) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). さらには,民間塑ADRは公設の機関ではなく,任意に設立できるため,読. 立主体や財産的基盤などが千差万別・玉石混交であり,中には非弁すれすれの 示談屋的業者も存在する。もし,かような現状を放置すやと,利用者である国 民の利益を害するので,法務省は,法務大臣がADRを認証し,その質を保証 する制度を開始する方針を固めた(2005年4月19日)。この認証制度は,裁判 外紛争処理促進法(2004年11月制定)に基づくものであり,同省は,現在, 省令などの附属法令制定作業や広報と意見募集などの実施に向けた策定作業中 であり,本法の施行期日である2do7年4月を目標に,認証申請を受理している ところである5)。. 具体的な認証基準としては,手続に関与す息,斡旋ないし調停担当者の資格 要件や選任要件が適切なものであること,法曹資格を有する者の助言を得る方 途が保障されていることなどの,一定の基準を充足しなければならず,存続要 件として,主務官庁に対する事業内容報告義務が課される。また,認証取消事 由も規定されており,資格要件を欠く者,例えば,指定暴力団の構成員に認証 業務を担当させると,認証を取り消される他,罰則の適用を受けることになる。 既往のように,. ADRは訴訟とならぶ紛争解決手段となりつつあるが,医事. 紛争領域については,未だ充分に機能していないように思われる。というのは, 仲裁人の人選・公平性に疑問のあるケースが多いからである。つまり, において,紛争を裁定する仲裁人につき,医療訴訟に詳しい法曹の受任が多い ところ,実務において,医療側と患者側の代理人がはっきりと区別され,事案 ごとに立場を入れ替えて訴訟活動をすることが殆どないため,申立人が依拠す る立場と,当該仲裁人の立場が敵解する場合には,申立人側において,当該仲 裁人を事実上忌避して申立を取り下げたり,あるいは,事前に仲裁人の人選を 察知して,申立を取り止めるなどの弊害が生じているからである。 なお,訴訟についても,. ADRの場合ほど顕著ではないが,同様の弊害が報. 告されている。医事紛争を数多く手掛ける訴訟代理人の間で,各民事部(裁判 長)における医療側・患者側の勝敗率に関する情報が出回っており,この数値 78・. ADR.

(9) 医療裁判の研究. が偏向していて,自らの立場と反対の場合には,当該部を忌避して訴を取下も しくは放棄し,再度提訴する場合がある6)。. (3)地方裁判所医療集中部7) (-)スキーム. 医療集中部の概略であるが,裁判所は,第1回進行協議において,当事者双 方の訴訟代理人に対し,. ニュアルを配布し,. 「医療過誤訴訟の進行についてのお願い」と題するマ. ①診療経過・症状・検査結果・投薬状況などの事実関係を. 確定するため,診療経過一覧表・検査結果一覧表・投薬一覧表・医学用語集な どを作成させる。なお,認否も同時に行い,否認する事実については具体的な 主張を併記する(この点、当該部総括裁判官が訴訟代理人に対し、口頭にて第 1回目の口頭弁論期日から具体的な認否に入るように指示するのが通常であ る)。そして,これらはフロッピーディスクに記録して提出する.. (参, ①に基. づいて事実関係を確定した後,過失・因果関係に関する主張を確定し,争点整 理表を作成する。そして, 会・文書送付嘱託,. ③争点整理手続が終了するまでの間に,当事者照. ・調査嘱託の申立などを必要に応じて行うほか,書証につい. ても,弾劾証拠を除く全ての証拠を提出する(カルテ,看護記録,レントゲ ン・. CT.スキャン・. MRほどの検査記録,鑑定書・_専門書および論文など)。. なお,書証の提出に際しては,前記マニュアルの附属書類である「医療過誤 訴訟における書証の提出等についてのお願い」を参照のうえ,. ④一般の訴訟と. 同様に,提出順に書証番号を附した個別証拠説明書を提出するほか,これとは 別個に,争点整理表を作成した後,改めて,争点と対応させた形の総括証拠説. 明草(事実関係を甲4,文献など甲B,損害立証を甲Cとして番号を付した一 覧表) ■を提出すること,⑤陳述書についても,一般の訴訟のように事実の経過 を述べるだけでは足りず,医療機関側に対しては,. ②で作成した争点整理表の. 争点ごとに,前提事実および当時の判断・判断の根拠・原告の疑問点に対する 回答という形式で,患者側に対しては;医療機関側の説明内容.現在の症状・ 79.

(10) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). 被告の疑問点に対する回答,という形式で起案することを求めている点が特徴 である。. 裁判所は,このような,.医療訴訟に特化した方法で証拠資料を収集し,証拠 方法として採用するのであるが,証拠調についても,医療訴訟の特殊性に鑑み て集中証拠調を施行するのが通常である。この方法によると,原告側(患者と 協力医)と被告側(担当医)を同一期日に尋問できるので,争点外および重複 尋問が減って審理が促進されたり,心証を取り易くなるメリットがある。加え て,状況が許せば,原告側の協力医と被告病院の担当医を並べて尋問する「対 質」や,主尋問連続方式を行う場合もある。 なお,医療集中部における進行協議・ 争点整理は,弁論準備手続(民訴法第 168条ないし178条)の中で行われるが,裁判所は,双方の代理人に対してプ ロセスカードという,当該期日の審理内容や次回期日までの準備事項を簡潔に 記載したメモを送付することにしており,期日を単なる書面交換で終わらせな い工夫を凝らしている。. (二)犯罪被害者の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律 (犯罪被害者保護法)との関係 被告医師が公判請求され,同一の医療事故について民事事件と刑事事件が併 行審理される場合に限ってのことであるが,犯罪被害者保護法が制定されたこ とに鑑みて,裁判所民事部は,証拠関係を同じくする刑事被告事件の公判提出 記録を証拠として採用することにより,合理的かつ迅速に審理を進められるよ うになった(同法第3条参照)。 要約すると,原告(被害者)側は,刑事被告事件の終結前であっても,裁判 所刑事部に村して,検察側が公判廷に提出した記録を適宜謄写請求することが 可能となったため,裁判所民事部は当事者双方の代理人に対し,本法によって 原告(被害者). ・側が取得した公判提出記録,具体的には,鑑定書・医師の鑑定 的意見を記載した供述調書・証人尋問調書・意見書などを,可能な限り法廷に 80.

(11) 医療裁判の研究. 証拠として申請するように促し,これを積極的に証拠方法として採用すること が可能となった。そのため,従来までの弊害,つまり,原告側による証拠保全 以外に証拠の収集∴保全の方途がなかったことに起因する証拠関係の不備は若 干改善された8)。 結局のところ,併行審理が開始された後の民事部独自の証拠調としては,原 告被告本人尋問の施行程度に止まることが多い。また,民事部の判決は刑事部 の判決以降に下されることが多く,双方が敵離することも僅少である。但し, 医療訴訟実務において,期待権侵害論(I,oss. of Chance. ; Perte. d、une. Chanc占). が最高裁によって承認されたこととの関係で9),過失あり・因果関係なしの事 莱(刑事事件としては無罪。民事事件としても,従来までは請求棄却)につい ても原告の請求を棄却することなく,過失に対する非難と原告の被害感情の慰 謝の観点から,生命侵害事例における認容額の十分の-程度の慰謝料相当額の 支払を命じることも可能となった。そのため,民事部は原告(患者・被害者) 代理人に対して,過失の存否に関する刑事部の事実認定について,弁論終結間 際の弁論準備の際に,. 「最終準備書面において,刑事事件の判決に対する反論. を準備せよ。」との指示を出すこともある。かような訴訟指揮は,訴訟上の和 解(私的紛争の最終的解決),ひいては,被害弁償問題の解決による検察官控 訴の断念に結びつき,医事紛争の可及的な早期解決に資するものとして評価で きる。. なお,最近,法務省は, 、被告事件のみならず,不起訴事件に関する捜査記録 を_も開示するとの見解を明らかにし,開示に関するガイドラインをまとめ,全 国の検察庁に通達したので,その概要を説明する(2004年6月6日)。本通達 は,. 「訴訟に関する書類」につき,例外として開示できるとことを示す,. 上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合」. 「公益. (刑訴法第47条但書). なる文言の解釈を明らかにしたものである。本通達によると,開示を認めるた めには,. ①当該被疑事件について民事訴訟が提起されていること 81.

(12) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). (参原告(患者・遺族)側の請求があること (彰当該民事訴訟における事案の解明に不可欠な証拠資料であること ④供述人が行方不明または死亡するなどしているため出廷不可能であること (9関係人のプライバシーを害しないこと などの要件を備える必要があり,検察官が,かかる要件を具備すると認めた 場合には,鑑定書や実況見分調書を開示し,供述調書についても,裁判所0)揺 出要請があれば開示し,さらには,供述人や証人の住所や氏名についても,反 対尋問の必要性があれば開示することにしている。かような取り扱いにより, 被告事件のみならず,不起訴事件と事案を同じくする民事訴訟の解決も∵層促 進されることが予想される10)。. (4)日本医師会・日本歯科医師会11) (-)わが国の場合 医療事故に関する事案の解明の在り方は,医師の職能団体たる医師会の自治 権と関連する。わが国における医師の職能団体は,医師免許の性質に応じて日 本医師会と日本歯科医師会なる二つの団体が存在するが,その法的性格は任意 加入の社団法人である。従って,医師の自治規範・職業倫理規範である「医の 倫理綱領」. (昭和26年制定・施行,平成12年改正)ち,その名称の如く,会員. の身分を有する医師に限って効力を及ぼし得る,法的拘束力のない訓示規定に 過ぎない。そのため,医師会は,会員に対する法律上の懲戒権限や,それに対 応する医籍管理権を有せず,また,会員に対する懲戒権限や医籍管理権を有し ないこととの関連で,会員が係った医療事故に関する調査権も有しない。 要するに,わが国の医師会は,諸外国の医師会と異なり,医師の自治権の根 幹ともいうべき懲戒権限・医籍管理権・医療事故調査権を有せず,これらを全 て国家機関の管理に委ねているのである。この国家機関とは,周知の通り行政. 機関であり,具体的には,厚生労働省医政局医事課キ,その傘下にあって,医 療関係者や学識経験者を以って構成される医道審議会医道分科会である。最近 82.

(13) 医療裁判の研究. では,医道審議会に諮問される案件に変化が見られる。 本来,医道審議会は,社会的信用の高い医師が,その信用を失墜させるよう な「品位を損するような行為」をした場合, った」場合,. 「医事に閲し犯罪や不正行為のあ. 「罰金以上の刑に処せられた場合」に,厚労省医政局医事科より. 諮問を受け,審議を付託された医道審議会が免許の取消を上限とする具体的な 処分を決定し(取消の典型例は,殺人・薬物事犯・児童売春などの破廉恥行為 であり,業務停止の典型例が,選挙違反・贈収賄・横領・背任などの職務の清 廉性を損する行為である),その決定を厚労省医政局医事課に答申し,これを 受けた厚労大臣が決裁し,正式な行政処分が決定されるスキームであった(医 師法第7条第2項参照)。ところが,ここ数年に亘る医療バッシングの風潮と, 医療事故の刑事事件化傾向に押される形で,純粋な医療行為,すなわち医師の. 医学的知見に伴う裁量に関する過失責任についてまで審議の狙上に上がる事態 となり,医療事故が即,破廉恥事件と同様のレベルで,医師免許の取消に直接 リンクしかねない,医師の死活問題になってしまったのである。結局のところ, 現状においては,医療事故に係った被疑者医師が起訴された場合,厚労省は自 ら事実関係を調査することなく,検察庁(法務省)の捜査権限に依存して事案 の解明を図り,公判を担当した検察庁に対し,. __当該被告事件の判決を通知する ように依頼し,その内容に従って(盲従して?)具体的な処分を決定している. に過ぎない。. 因みに,平成17年度後半期おいて,厚労省医政局医事課が,医道審に行政. 処分の内容を諮問した医師・歯科医師の数は過去最高の72人に上り,うち処 分を受けた者の数は58人,指導を受けた者の数も14人と,何れも過去最高で あった。これに平成17年度前半期分の被処分者数33人を加えると,年度別に. みた場合であっても,なお過去最高の91人であり,平成12年度の約3倍に上 ることが判明した。 最近では,被告人医師が起訴されたものの,未だ刑が確定する前の段階にお いて医道審に付託され,同会が起訴状に記載された公訴事実のみを根拠に具体 83.

(14) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). 的な処分を決定し,厚労大臣も答申通りに被告人医師を懲戒処分に附する例や (2004年3月18 日。東京慈恵医科大学付属青戸病院腹腔鏡手術過誤事件),刑 事事件として立件されなかったにもかかわらず,民事訴訟の確定判決が存在し, 原告患者・遺族側から処分の申請があったという理由により諮問の対象とし, 医道審の答申通りに医師を懲戒処分に附する例も現れた(美容外科医院アクア クリニック事件。女性患者に豊胸手術を施したところ,麻酔管理の過誤により 患者が植物状態に陥った事件)。 前者については,無罪推定の原則を無視するものであり,後者については,. 誠意のある謝意の表示と充分な被害弁償を済ませることにより,起訴猶予を得 て行政処分を回避する途を途絶するものである。いったん行政処分の前歴を科 されると,事後的に無罪判決を得たり起訴猶予となった場合であっても,失わ れた信用は容易に回復できないので,医師としての命脈を絶つことにもなりか ねない。ゆえに,厚労省の方針転換は,到底是認できるものではない。以上の ように,わが国においては,医師会のみならず,医師の監督機関である厚労省 にさえも事案の解明権はなく,検察行政と刑事司法に依存しているのである。 参考までに,わが国における,各資格・免許に対する行政処分の比較対照表を 以下に示す。. 処分権者 医師. 厚労大臣. 処分の類型 ○業務停止. 復権,免許再交付 明文規定なし. ○免許取消 弁護士. 弁護士会. ○戒告. 除名から3年は不可. ○2年以内の業務停止 ○退会命令 ○除名 公認会計士. 内閣総理大臣. ○戒告. 登録抹消から5年は不可. ○2年以内の業務停止 ○登録抹消 税理士. 財務大臣. ○戒告. 業務禁止から3年は不可. ○1年以上の業務停止 ○業務禁止 84. (参考. 日経新聞).

(15) 医療裁判の研究. (二)ドイツ連邦共和国の場合 ドイツの医師会は,概ね以下のようなスキームで運営されている。医師会は ラント(州)単位で構成され,医師免許を有する者は医師会に加入しないと医 療行為に従事することができない(強制加入)。医師会は会員医師の医籍管理. 権・監督権を有するのみならず,法規範性を有する医師職業規則に基づき,医 療事故相談窓口・鑑定委員会・懲戒委員会を運営し,苦情の受理・事故原因の 分・析・医療行為に過誤があるとの鑑定が出た場合における,医師免許の停止, 戒告,過料課金の可否などを審査する。鑑定委員会は,裁判官資格を有する委 員長と必要な員数の医師を以って構成され. その鑑定意見に法的拘束力はない. ちのの,当事者がこれを尊重する慣行が成立してしミるため,鑑定書の内容に従 った適切な補償が実行され,解決に至るケースが大半である。また,鑑定意見 が同時に医師職業規則に違反する場合は,法律上の懲戒権限を有する懲戒委員 会への報告案件とされ,同委員会において,長期2年以下の免許停止を上限と する懲戒を検討するが,医師免許の取消を必要と判断した場合は,医師職業裁 判所の審理に付される。要するに,ドイツの医事法制のスキームによると,辛 案の解明は,患者取り違えや薬剤誤投与のような,医療過誤以前の過誤を除き, 原則として医師会の自治に委ねられている。. (≡)アメリカ合衆国の場合 アメ〈リカ合衆国の医師会は,概ね以下のようなスキームで運営されている。 医師会はステーツ(州)単位で構成され,医師免許を有する者は医師会に加入 しないと医療行為に従事することができない(強制加入)。しかし,ドイツと 異なり,医師会は会員医師に対する直接の医籍管理権・懲戒権を有せず,各州 の医療担当部局内に設置されている「医師免許管理委員会(Board)」に委ね ている。但し,委員会の構成員に会員医師を参画させ,意見を陳述させること により,意思決定に関与することができる。因みに,委員会の構成員は,L医師 のほか法曹資格者およびNPO関係者である。 85.

(16) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). なお,アメリカは,わが国と反対に,そしてドイツと同様に,医療事故の非 刑事事件化を促進している。この点につき,アメリカの口腔外科医ロバート・ ストロース教授より下記の意見を受領している(一部抜粋)。本意見は,杏林 大学医学部付属病院頭蓋内割箸片看過事故(1999年7月11日事件発生, 年8月2日起訴,. 2002. 2006年3月28日「無罪」判決)の刑事事件化の是非をめぐり,. 本件起訴の当時,筆者の知人医師(専門医・国立大学付属病院医長)が同教授 より耳恵取したものである12)。 Anopinion. of "Robert. A. Straus",. Training. Program. Virginia. relating. to. hospital. attached. to the Kyorin. 『- Based these. tests. ideal, I. most. on. Division. what as. D.D.S., &. of Oral. are. well. In any. certainly. cann'ot. case,. see. I would. me. while this. as. Surgery. Director, Medical. single in skull overlooking. Universitymedical telling. Professor. Maxillofacial. half-split chopsticks. you. M.D.. criminal. College. accident. of in A. department likely. his Judgment a. Residency. not may. have have. gotten. been. either of less than. case.』. 杏林大学医学部付属病院頭蓋内割箸片看過事故に関する,バージニア医科大 学・口腔顎顔面外科学部門ロバート・ストロース教授のご見解 『-貴殿より伝えられた内容に基づくと,私が本件患児を診察したとしても,. おそらく,その2つの検査(筆者注-Cナスキヤンと鼻咽腔ファイバースコー プによる検査)の何れをも行わなかったことでしょう。何れにしろ,仮に本件. 担当医師の診断が理想的なものではなかったとしても,私は,本件を刑事事件 と看倣すべきではないと強く確信いたします。』. (5) 「医療関連死」に関する公的な検証機関の創設13) (-)沿革とスキーム 厚生労働省は,診療中における原因不明の死亡事例を,従来までの「異状死」 (医師法第21条)と並存する別個'0)概念として「医療関連死(医療死)」と定 86.

(17) 医療裁判の研究. 義し,死因の究明を公的かつ中立な検証機関に委ねる制度を試行した(2005 年5月17日決定,同年10月試行)。本制度は,日本内科学会・日本外科学会・ 日本法医学会・日本病理学会が発した共同声明(2004年4月1日)と,この声 明に賛同した15団体の医科系学会の意見を反映した再度の共同声明(同年9月 30日。広報担当は,日本内科学会理事・慶庵義塾大学医学部教授の池田康夫. 医師)の内容を端緒として具体化されたものであり,医学界のイニシアチブに よって実現された構想である点が注目される。なお,既往の合計19団体の医 科系学会の会員数は約29万人であり(なお,. 1人で複数の学会に所属すること. もあるため,この数値は延べ人数である),また,垂同者数は全国の医師免許 保持者数の半数を超える数なので,本制度は,医学界の自治意識を反映する画 期的な事業であった。 但し,本制度はモデル事業であるため,本制度の実効性を確保するために必 要な数の法医学・病理学の専門医を確保可能な,;全国で9箇所のモデル地域 (東京・愛知・大阪・兵庫・札幌t茨城・神奈川・新潟・福岡)を指定して試 行されており,. 5年後に成果を検証し,訴訟によらない医療事故原因解明のシ. ステムとして制度化することを検討している。因みに,本事業に関する,厚労 省の平成17年度予算案における概算要求額は1億円であった。. モデル事業のイメージ 結果報告 -. 調査依頼 J_. -. 解剖承諾. † 結果報告. モデル地域. 中央. (参考. 日経新聞) 87.

(18) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). (二)アメリカ合衆国ニューヨーク州の場合14) ニューヨーク州においては,医師会とは別個に「医療行為監視委員会. (OPMC)」が存在し,事故調査権を付与されている。不要員会は,患者・遺族 の委任または内部告発を端緒として調査を開始し,症例の究明と過誤の有無を 判定する。本委員会は公費によって運営される公設の行政機関であり,約200. 名の専属医師によって構成される。本委員会は調査権のほかに医籍管理権を有 し,調査結果に基づいて,医師免許の取消を上限,戒告を下限とする行政処分 を行うことができる。因みに,ニューヨーク州に■ぉいては,例年約30名に上 る医師が,医師免許取消を相当とするとの判定を受けており,取消に至らない までも,懲戒相当と判断された場合は,インターネット上に実名を公表する。. (三)今後の課題と展望 本制度は,医療現場に生じた混乱を解消するために医療側より提唱され,厚 労省とのタイアップにより実現された構想であった。つまり,従来まで,医師 法第21条が,医療機関が「死体-を検案して異状があると認めたときは-所 轄警察署に届け出なければならない」と規定し,この届出を僻怠した場合には,. 同法違反の罪を科すとのスキームを採用しているにもかかわらず, る文言の意味が暖昧であり,. 「異状」な. 「異状」と「死因不明」が同一概念であるのか否. かが不明瞭であったため,これを一義的に明らかにすることを目的として構想 された制度である。. なお,医師法第21条をめぐり訴訟も提起されており,本法に基づく届出は 犯罪捜査の端緒となることから,本条項は黙秘権の保障条項(憲法第38条第1 項)に反し,違憲無効なのではないかが争われたが,最高裁は,これを合憲と したため15),届出基準の具体化を求める医療現場の声が強まったことも,制度 の早期実現に拍車を掛けたといえる。 既往の通り,本制度のスキームは優れているが,幾つかの問題点を指摘され ており,例えば,証拠流用の可否の問題がある。これは,検証機関が当該案件 88.

(19) 医療裁判の研究. を「異状死」相当と判断した場合,調査の過程で収集された証拠関係を,捜査 機関に引き渡す必要性の有無という問題である。仮にこれを肯定すると,黙秘 権保障の趣旨から疑問があり,実際にも,関係者は,後目立件された場合に備 え,真実を供述しなくなる虞れがある。この辺りの法整備が急務であろう。. 第4 1. 医療事故をめぐる適切な紛争解決手段の模索 わが国の現状. わが国においては,既往の通り,医療事故調査権の帰属や,各機関による併 行調査の在り方について充分な議論が尽くされておらず,制度的にも未成熟な 段階にあるため,医事紛争は,地裁の医療集中部と一部の仲裁機関において, 最終的な解決が図られているに過ぎない。この事態は,医療過誤と同じく国民 の生命・身体の安全に係る,医薬品の副作用禍と予防接種禍について,すでに 損失補償制度が実現されていることと著しく均衡を失するように思われる。. 2. フランス共和国の場合16) 「患者の権利および保険衛生システムの質に関する法律. フランスには,. (LOI. no. systemede. 2002-303. du. mars. 2002. relative. aux. droits des malよdes. et. a. la qualite. du. sよnte」(以下, 「保健衛生法典」とする)が存在し,同法に基づい. て,医療事故に特化した補償・調停制度か運用されている(2002年3月4日融 走,同年12月30日改正)。本制度は,医療機関に「賠償」責任保険への加入を 義務づけるのみならず(過失責任を前提とした場合),公設機関による「補償」 制度(無過失t因果関係不存在などを前提とした場合)をも併せて規定してい る点が注目される。また,補償を行う公設機関(本署)に,医療事故に関する 調停権限を付与されている点も注目される(公設のADR)。 本制度の概略であるが,本署は,地域ごとに分署を設置し,患者(遺族)側 より申立受理機関(分署)に調査依頼を受けると,分署は医療事故につい■て, 89.

(20) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). 適宜鑑定委員会を組織するなどして,医療機関の過失の有無・因果関係の存否 などにつき明らかにするため,損害が生じた状況・原因・性質・範囲について 調査し,本署し辛結果を報告する(意見陳述)。本署は,被害者・医療機関・保 険会社の三者に対し,分署の意見を通知す.る。もし,三者がこれを受容し(調 停成立),三者の合意内容として誠実に履行すれば,医事紛争は訴訟に至る前 に解決する。反村に,_調停が不調に終わった場合,とりわけ,無過失・因果関 係が不存在とされたり,あるいは,医療機関側の責任要件が肯定されたとして ち,なお患者(遺族)側が救済されない場合,すなわち,医療機関が保険に加 入していなかったり,医療機関・保険会社が本署による賠償提示を拒否した場 合については,直ちに患者・遺族側に提訴のリスクを転嫁することなく,本署 がこれを「補償」するスキームとなっている。なお,. 「補償」の財源であるが,. 疾病保険金庫等からの一般交付金・鑑定費用の償還金・本署による賠償提示を 拒否した場合における賠償責任者・保険会社への制裁金・本署が代位弁済した 場合における,賠償義務者から取得した求償金などである。 さいごに,本法制定の経緯について付言する。本法の試みは世界初の新機軸. であり,医療側・患者側の双方から賞賛されているものの,施行に至るまでの 道程は容易なものではなかった。つまり,制定当時は(loiKouchner-クシュ ネール法,あるいは3月4日法と呼ばれている),本署が医療機関側の責任を肯 定した場合における,保険会社のリスクを全く省みない法律であったからであ る。というのは,. 3月4日法が,入院患者が高度の確率で雁思する慮れのある. 「院内感染」につき,医療機関側に責任の不存在の立証責任を負担させたため, 保険会社側としては,保険料を高額化するか,撤退するかの進退両難の地位に 追い込まれ,実際に,複数の大手保険会社が撤退の意思を表明し,制度自体の 存立の基礎が崩壊の危機に曝されたことがあったからである。そこで,フラン ス政府は,折衷案を案出し,院内感染の全てではなくて,. 「死亡,および能力. 喪失率25%」を超えない場合のみ,保険会社の負担とし,この基準値を超え る場合は,本署が「補償」することにしたのである(loiAbout-アブ一法,あ 90.

(21) 医療裁判の研究. るいは12月30日法と呼ばれている)。 しかも,本改正は,. 3月4日法による本制度の運用が開始される前になされ. たのであるが,このことからも分かるように,相当な生みの苦しみ・試行錯誤 があったのであった。. 3. (-). わが国における取り組み 「医療事故被害防止・救漬センター」構想17). 加藤良夫教授(南山大学大学院教授・弁護士)が提唱されている構想であり, 概ね以下のようなスキームである。本構想は,法律に基づく特殊法人によって 運営される公設の制度であり,患者・遺族側からの相談や,医療機関側からの 事故報告を受理し,患者側に「補償」をなすべきか否かを判定するとともに (陪審制),補償事業・医療機関側に対する求償をも行い,併せて,医療機関側 に対しては,事故から得られた教訓を還元するものであり,運営の適正につい ては,市民オンブズマンによる監視により担保するというものである。因みに,. 医薬品の副作用禍に?いては,すでに「医薬品機構」が設立され,事故調査と 損失補償を行っており,一定の成果を挙げていることに鑑みると,本機構を改 組し,対象領域を薬禍から医療事故に拡大すオリぎ,本制度を速やかに実現する ことも可能とされている。確かに,わが国における交通事故訴訟において,運 行使用者に対して無過失責任に近い損害賠償責任を肯定しつつも,これを自賠 責強制保険制度により填補するスキームが比較的良好に機能している実情に鑑 みると,本構想は,その理念の応用ともいうべきものであるから,近い将来に おいて実現も可能なように思われる。 しかし,いまだ議論は,総論賛成,各論反対の憾みがある。というのは,以 下の疑問点が解消されていないからである。 a.補償が実行された場合,医療機関はセンターより求償を受けるのであるが, 本構想は,この求償義務の免除を可能としており,その要件として,医療機関 側に, 91.

(22) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). (∋日頃の医療実践について,誠実な活動実績があること. ②患者側より申告があ名前に医療機関側より報畠があること ③謝罪の意思を表明していること ④再発防止策を立案・実行したこと を要求している。しかしながら,そもそも患者は健常ではないからこそ病院に 搬入されてくるのであり,悪しき結果が診療の不奏功に起因するのか,それと も診療如何に係らず生じたものなのかが不明であるこ■とに鑑みると,医療機関. は軽々に「謝罪」できる筈はなく,センターに「申告」できる筈もない。する と,かかる免責要件は事実上機能しないので!その存在意義を没却されるので はないか。これでは患者側に偏り過ぎているとの譲りを免れないのではない か。. b.センターが有するとされる「一定の実効性のある調査権限」とはどのよう な権限なのか。警察権的なものを含むのか。また,.調査の結果,とりわけ供述 は,医師に対する行政処分や刑事責任の根拠となるので,その取り扱いを明ら かにする必要がある。. c.調査期間を3箇月としているが,短きに失しないか(因みに,フランスは 6箇月)。 d.因果関係の判定につき,陪審制を採用し, (∋著しく意外な結果となったのか否か (参医療行為によっていかにも気の毒な結果になったのか否か を「市民感覚」で判断し,補償の安否を決定するというが,これでは患者側に 偏り過ぎているとの語りを免れないのではないか。 e.補償を得た患者・遺族側は一律に訴権を失うとするが,補償相当額が不適. 当な場合,どのように村処するのか。因みに,フランスの制度では,革権を維 持する建前を採用しており,訴訟の結果,認容額と提示額の差が著しい場合は, 保険会社にペナルティーを課している。 f.財源を何処に求めるのか。本構想は交通事故に関する強制保険,つまり自 92.

(23) 医療裁判の研究. 飴責強制保険制度を模範とするようであり,国や地方自治体,患者・遺族側の 一部負担金を基本とし,これに医療機関と医療関連事業者が,利益の一部・医 療機関から取得した償還金・寄付金などを充当すれば足りるとのことである が,これでは不足するのではないか。 g.. 「市民オンブズマン」が運営監視機関を構成するというが,. 「市民オンブズ. マン」の適格性や質を担保する必要があるのではないか。少なくとも,待走非 営利活動促進法による法人格を取得していることを最低限度の条件とすべきで ある。この点につき,筆者が知るところの,ある法人格なき市民団体は,マス コミ露出度が高く著名であるが,開廷中の法廷にメンバーが大挙して押し掛け, ブーイングをしたり文書を廻すなどの訴訟妨害を公然と行ったり,また,ある 医療刑事事件において無罪判決を得た医師より,代表者・出版社が名誉穀損訴 訟を提起されるなどしている。. (二)新生児の脳性麻痔に関する公的な無過失保障制度の提言18) 日本医師会は,医療事故に関する新たな救済利度として,無過失補償制度を. 導入すべきとする要望書を厚生労働省に提申した(2006年2月28日)。当面は 周産期医療科領域における新生児の脳性麻痔に限定し,喫緊の課題となってい る産科医師の減少に歯止めを掛けることを企図するものである。本制度のスキ ームであるが,本症例は500例に一件の割合で確実に発生するものであり不可 避であること,また,. -わが国の産科医師数は仝医師数の5%に過ぎないにも係. らず,産科の医療訴訟の新件数峠全件数の120/.に上ることに鑑みて,本症例 に関して医療事故が発生した場合には,医師の過誤の有無に係らず基金から補 償金を拠出する。具体的には,障害等級1級と認定された場合仁子は,一時金と して1,000万円,逸失利益として4,200万円,介護料として4,200万円を給付す る。なお,基金は300億円規模を想定しており,財源は,社会保険料や租税を 基本とし,医師も一分娩につき1万円程度の負担金を支払うことにより賄うこ とにしている。 93.

(24) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月). 第5. 結. 語. 当面の制度的な手当としては,医師会に医療事故調査権や懲戒権限を附与す る組織改変が困難であることから,この点を触ることなく,まずは「医療関連. 死」検証制度(現行はモデル事業)を全国的に施行し,法整備と併せて■ガイ.ド. ラインを作成し,これを医療機関に周知徹底させることにより,第∵次的な医 療事故調査権を本検証機関に委ね,刑事事件化を可及的に抑制すべきである。 もっとも,本検証機関には法律上の調停権限がないこと,また,調査機関に調 停権限をも具有させる「医療事故被害防止・政済センター」構想は,やや中立 性を失するほか,財源確保の方途に問題があることなどに鑑みて,本構想の実 現は留保しつつ,現在,産科領域のみで提言されている公的な無過失補償制度 を優先して実現し,これをリスクの多い診療科に順次拡大することにより,医 療事故の刑事事件化のみならず,民事事件化をも適度に抑制すべきである。但 し,事故調査権については,これを検証機関に附与した場合,そこから得られ た証拠資料の取り扱いについて,犯罪捜査との兼ね合いを明確にする法整備が 必要である。また,補償制度については,民事訴訟における訴権の帰趨如何,. また,訴権を認めたとして,損害賠償額の認定に際し,補償済の金額をどのよ うに掛酌すべきかについての法整備も,併せて必要と思われる。 以. 上. 【注 釈】 1)明治大学シンポジウム「医療過誤刑事責任-注意義務の明確化をめざして」における報告5 例(2006年4月28日)。基調講演「医療過誤刑事責任における注意義務違反について」甲斐 克則(早稲田大学大学院法務研究科), 悪(東京大学大学院教授・弁護士), 学・弁護士),. 「医療過誤刑事責任-元刑事裁判官の立場から」山室 「刑事医療過誤の最近の動向」飯田英男(関東学院大. 「医療過誤刑事責任-弁護人の立場から」棚瀬憤治(弁護士),. 「医療過誤被害. 者にとっての刑事責任追及とは-患者側弁護士の立場から」伊藤律子,ならびに,明治大学 シンポジウム「医療と法. 医療過誤と刑事責任の現在」における報告3例(2004年5月8日)0. 「医療過誤と刑事責任の現在」飯田英男,. 「東京女子医大女児心臓手術医療過誤・カルテ改ざ. ん証拠隠滅事件の弁護を通じて」吉峯啓晴(弁護士), 94. 「刑事医療過誤の近年の動向と問題点」.

(25) 医療裁判の研究 甲斐克則,他に「医療事故15%が大学病院. 民間の調査会鑑定. 9年間で105件. 嘩過誤」日本経済新聞2004年6月14日, 「医療事故・事件届け出200件突破 昨年35%増. 立件5%,長期化する捜査」日経新聞2004年4月30日,. で鑑定結果. 医療事故7割超がミス. 「『医賠責保険』の対象事故 聞2005年11月6日,. 「『調査会』設立10年. 目立つ医師の技術不足」日経新聞2005年10月13日,. 医師に『責任あり』 6割. 「主要病院. 62件が医. 警視庁まとめ,. 医療死亡事故143件. 審査件数. 産婦人科が最多」日経新. 昨年,事故全体は1114件」日経新聞. 2006年3月9日など 2). 「帝王切開手術で出血死 執刀医を起訴. 切開ミス 3). 執刀医を逮捕 福島. 「帝王. 届け出も怠る」読売新聞2006年2月18日,. 業過致死など」日経新聞2006年3月11日. 「昭和大学藤が丘病院泌尿器科における医療事故に関する外部事故調査委員会報告書(概要) 平成17年9月7日」, 18日,. 「医療事故. 「患者参加の第三者機関. 東京女子医大が設置-」日経新聞2004年3月. 原因究明,患者側も参加. 病院の調査委員会. 対話重ねて解決めざす」. 日経新聞2005年10月16日,. 「変えたい医療. 性・公平性に難. 優秀な委員集まるか」読売新聞2006年3月8日. 外部調査. 事故検証客観性『手探り』. 内部調査. 透明. 4)■ 第6回全国仲裁センター連絡協議会シンポジウム「医療事故の裁判外紛争解決に向けて」に おける報告2例(2002年9月20日)。 護士),. 「ドイツにおける医療事故の裁判外処理」畔柳達夫(弁. 「名古屋弁護士会仲裁センターの医療事故の取り組み」渡辺-辛(弁護士),畔柳. 「現代型不法行為事件と裁判外紛争処理磯構. ドイツにおける『医療事故鑑定委員会・調停. 所』管見」判例タイムス第865号69頁(判例タイムス社1995年3月1日) 5). 「裁判外の紛争解決. ■国の"お墨付き". 2007年4月にも. 法相か民間業務認証」日経新聞. 20()5年4月19日 6)筆者が,棚瀬慎治弁護士(医療側代理人として医療訴訟に詳しい平沼高明弁護士-昭和大学 医学部客員教授・中央大学法学博士指導)より聴取した事実である。 7). 「医療訴訟迅速化. 審理平均27ケ月. 廷が変わる. 検証民事訴訟. 拙速懸念も. 手探り続く」日経新聞2004年8月17日,. の開示. 「法. 昨年,最高裁まとめ」日経新聞2004年5月26日,. 医療訴訟迅速化-始動. 仕組みの改善が必要」読売新聞2006年3月. 裁判官が手術見学・鑑定人が複数制 「長期化した医療訴訟. 遅い解剖結果 「最. 目,山名学・大嶋洋志(裁判官). 近の医療訴訟の動向と審理の実情」自由と正義第54巻第2号14頁(日本弁護士連合会2002 年3月),東京三弁護士会主催シンポジウム「医療集中部における審理方式の概要とその問 題点. 医療訴訟の現在・未来を語る. 東京地裁医療集中部裁判官・弁護士によるシンポジウ. ム」 (2002年3月15日),東京三弁護士会医療関係事件検討協議会シンポジウム「医療過誤訴 訟と鑑定」. (2003年10月29日),釜田ゆり-山田哲也-小川卓逸(裁判官). 「東京地裁医療集. 中部における事件の概況」民事法情報第213号17頁(民事法情報センター2004年6月10日), 森秀樹-市川貴哉「裁判統計から見た医事関係訴訟事件を巡る最近の動向」民事法情報第 214号2頁(2004年7月10日),最高裁判所事務総局民事局「これからの医療訴訟 師・弁護士・裁判所のよりよいパートナーシップをめざして」. 地域の医. (2002年6月). 8)平成12年5月19日制定,同年11月1日施行,平成12年法律第75号 9)最二小判平成12年9月22日民集第54巻第7号2574頁(切迫性急性心筋梗塞により死亡した 95.

(26) 横浜国際経済法学第15巻第1号(2006年9月) 患者について,医師が適切な初期治療を行っていれば,急性揮炎と誤診す′る■ことなく,患者. がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性があるとさ叫た事例),平沼 高明「医師の過失と患者の死亡との間に因果関係が存在しない場合と医師の不法行為の成否」 塩崎勤編著 10) 「供述調書. 医療過誤判例の研究17頁(民事法情報センター2005) 不起訴でも開示. 法務省通知,被害者に配慮」日経新聞2004年6月7日 」. ll)佐々木拓「各国の医師の職業倫理(httt)://www.fine.bun.kvoto-u.ac.it)/newsletter/nllb4.html) 「[特集]医師の職業倫理」日本医事新報No,4052. の引用に掛かる, _. (2001. 12. ・. ・. 22)所収. 報告,間鴨道夫「ドイツにおける医師の職業倫理」,木村利人「アメリカ医師会・『医の倫理 原則-その動向と展望-』」,森岡恭彦「医の倫理-医師の職業倫理の実践に向けて」 英毅. ・友寄. 九州医師会連合会第245回常任委員会報告「医の論理シンポジウムー医師と患者関係. の本質を求あて-」シンポジスト岡嶋道夫「ドイツにおける医療倫理」沖縄県医師会報 (2002年3月号) 6・. 「[特集]医師と刑事責任」日経メディカル第427号45-53頁(2003. ・. 10), 「医療ミス繰り返す医師を再教育. 日医,来年度から」日経新聞2004年9月15日,. 「問題医師の処分基準を明確化. 厚労省方針. 日, 「処分医師再教育義務づけ. 厚労省検討会改革案骨子. 「厚労省. 2005年11月3日, 新聞2006年3月1日,. 業務停止の期間など」日経新聞2005年9月22. 医師70人の処分諮問. 「医師58人処分. ・. 調査・聴取に強制力」日経新聞. 医道審分科会に. 免許取り消し. 過去最大の規模」日経. 元日歯連会長ら4人. 医道審」日経. 新聞2006年3月2日 12)ロバート・ストロース教授;鼻咽腔ファイバースコープの世界的権威である。アメリカ合衆 国口腔顎顔面外科学学術会議において,しばしば鼻咽腔ファイバースコープに関する教育公 演を行っている。なお,この聴取内容は,筆者の知人医師(神経内科専門医)が,本件に関 する詳細な症例分析を行った後,ストロース教授に対し,本件鑑定書などを示しつつ直接に 鑑定的意見を徴した結果,得られたものである。 13) 「診療中の死亡事例 日, 「解説. 中立機関で検証. 診療中の不審死. 第三者機関での検証導入-. 「『医療死』に検証機関. 売新聞2004年9月24日,. 防止狙う」日経新聞2004年10月1日, 中立機関検証制度. 厚労省,ミスの有無など」日経新聞2004年8月27 透明度高め信頼性の確保を」読. 医学界挙げて共同声明. 「治療中に原因不明で死亡. 真相解明・再発. 解剖,遺族立会い認める. 3カ月内に報告」日経新聞2005年5月17日,川出敏裕「刑事手続と事故. 調査」ジュリスト第1307号10頁.. 「特集. 事故調査と安全確保のための法システム」所収. 論文(有斐閣2006年3月1日),畑中綾子「医療事故・インシデント情報の取り扱いに関す る論点」前掲ジュリ28頁。なお,日本泌尿器科学会は,本文の第三者機関とは別個に「医 療安全評価委員会」を独自に設立し,泌尿器科領域における医療事故が発生した場合,捜査 機関や裁判所より委託を受け■て,合議により鑑定書を作成することにした。本委貞会は,東. 京慈恵会医科大学腹腔鏡手術事故(死亡事例,担当医師は逮捕・起訴,医道審の処分は業務 停止3年6箇月)を学会レベルで重く受け止めた結果,設立されたものである(日経新聞 2004年3月12日)。 14) 「外科医の目. アメリカから. 医療の適否. 犯罪性で見る日本」大木隆生(アルバートシュ. タイン医科大学血管外科教授)読売新聞2006年3月13日, 96. 「特廉 いま,医療事故を防ぐた.

(27) 医療裁判の研究 めに. アメリカと日本の現状. 日本-の影響」治療第81巻第12号49頁(1999年12月). 15)最判平成16年4月13日刑集第58巻第4号 16)山口斉昭「研究. 医療事故被害者救済制度について. 加藤構想とフランス患者の権利法」賠. 償科学第30号53頁(日本賠償科学会.2003年12月25日),山野嘉朗「研究 医学展望(その6). フランス賠償. 病人の権利と保健衛生制度に関する新立法について(2)」同上48頁,. 山口「フランスの医療安全・補償制度」伊藤文夫-押田茂美編「医療事故紛争の予防・対応. の実務リスク管理から補償のシステム草で」所収論文439頁(新日本法規2PO5年12月) 「医療被害防止.救済センター」構想の実現をめぎして-(医療被害防止・救済. 17)加藤良夫-. システムの実現をめざす会. httt)://homet)age2.niftv.com/TX:mV/). 18) 「新生児の脳性まひ『医師無過失でも補償を』日医,新制度を要望」日経新聞2006年3月1 日。なお,諸外国においては,アメリカ合衆国フロリダ州,同国バージニア州,ニュージー ランド共和国などにおいて,既に無過失補償制度が導入されている。峯川浩子「アメリカ合 衆国における医療安全対策と医療事故-の対応」前掲伊藤-押田418頁,藤沢由和「ニュー ジーランドの医療安全・補償制度」前掲伊藤-押田469頁. 【参考文献】 1. 山川一陽「医療事故の概念とそれによる医療機関一医師の責任」前掲伊藤一押田3頁. 軍. 手鴫豊「医師の責任」川井健・塩崎勤編. 専門家責任訴訟法(新・裁判実務体系8). 240頁. (青林書院2002) 3. 若松陽子「医療過誤訴訟の到達点」歯科医療過誤訴訟の課題と展望一新しい医療の指針を求 めて-19頁(世界思想社2005). 97.

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