法人税法22 条4項と不動産流動化実務指針 : 東京高判平成25 年7 月19 日を素材として
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(2) 90. 横浜国際社会科学研究 第 21 巻第 4・5 号(2017 年 1 月). (234). 課税公平の原則であると解される6).. 2 一般に公正妥当と認められる会計処理の基 準の解釈. ⑵ 課税所得算定の基本規定. 法人税法第 22 条第 4 項 に 規定 す る「一般 に. 法人税法第 22 条は各事業年度の所得金額の. 公正妥当と認められる会計処理の基準」(公正. 計算について規定し,そのうち同条第 1 項は所. 処理基準)の解釈について,金子宏名誉教授の. 得金額,同条第 2 項は益金の額,同条第 3 項は. 解釈8)及び成道秀雄教授の分類9)によると次の. 損金の額,同条第 5 項は資本等取引について定. 三つ考え方があると思われる.. め,そして同条第 4 項は,別段の定めがあるも. ⑴ 企業会計準拠主義. のを除き,同条第 2 項に規定する資本等取引以. 公正処理基準は,法人の所得計算が原則とし. 外のものに係る収益の額及び同条第 3 項に掲げ. て企業会計に準拠して行われるべきことを定め. る原価の額,費用の額および資本等取引以外の. た基本規定であるという考え方である10).ただ. ものに係る損失の額について,一般に公正妥当. し,有力説である金子宏名誉教授は,企業会計. と認められる会計処理の基準に従って計算され. 原則 や 確立 し た 会計慣行 の 公正妥当性 に つ い. るものと規定している.法人税法第 22 条第 4. て,下記 3 に記述のとおり,3 つの注意が必要. 項は,企業会計との関係について,課税所得の. であると述べておられる.. 計算を企業会計に基づいて計算することを前提. ⑵ 企業会計基準主義(企業会計依存主義). としていると解され,課税所得算定の基本規定. 公正処理基準は,法人税法の趣旨目的から離. 7). れて,あくまで企業会計の領域で独自の基準で. として位置づけられる .. もって構成されているのであって,法人税法の 解釈が入る余地はないという考え方である11). . 6)そ し て,再掲 と な る が,最一小判平成 5 年 11 月 25 日(前掲注 ⑴ 2566 頁)は,法人税法は,「公 平な所得計算」の要請を企図している(同 2571 頁 及び 2573 頁)旨を判示している. 7)法人税の課税所得算定の法的構造について, 中里実教授の説明によると,「法人税の課税所得算 定の基礎となる企業会計は証券取引法-企業会計 原則系統のそれではなく,商法系統のそれである と考えるべきである….法人税法は,商法系統の 企業会計に基づく単一の課税所得算定方法を定め ている」(中里実「企業課税における課税所得算定 の法的構造」5・完)」法協 100 巻第 9 号(1983 年) 1545,1549 頁)と述べておられる.また,同教授は, 「法人税法 74 条 1 項 は,課税所得算定 が 企業会計 の基礎の上に立つことを,算定の基礎となる計算 書類の面から規定した,申告方法についての手続 的 な 規定 で あ る」(中里・同上論文 1557 頁)と 説 明する.すなわち,条文構造からも明らかなように, 法人税法 22 条 4 項は課税所得算定に関する実体的 規定,同 74 条 1 項は手続的規定ということになる. なお,本稿は確定決算主義の議論には立ち入らな い.ちなみに,株主総会等の承認を得ていない決 算書類に基づく確定申告を有効とする裁判例(福 岡高判平成 19 年 6 月 19 日平成 19 年(行 コ)第 7 号(D1-Law28140272))がある.. ⑶ 税会計基準主義(法人税法配慮主義) 公正処理基準といえども,法人税法の条文を 構成しているものであり,法人税法の趣旨目的 にそぐわない意義内容を採用することはできな いという考え方である12). 本件では,⑵ は概ね納税者の主張するとこ ろであり,⑶ は課税庁が主張し,裁判所が支 持した基準である.⑶ の考え方は,⑴ の課税 所得計算の考え方を前提としての考え方であろ うと思料する. . 8)金子宏『租税法第二十一版』 (弘文堂,2016 年) 321─324 頁参照. 9)成道秀雄「法人税法第 22 条第 4 項『公正処 理 基 準』の 検 証」租 税 研 究 800 号(2016 年)311 頁参照. 10)金子・前掲注 ⑻ 321─324 頁参照. 11)成道秀雄『新版税務会計論第 4 版』 (中央 経済社,2013 年)6 頁参照. 12)本件課税庁の主張及び本件判決の考え方で ある..
(3) 法人税法第 22 条第 4 項と不動産流動化実務指針(安田). 3 一般に公正妥当と認められる会計処理の基 準の意義. (235). 91. を例に挙げて, 「法的な観点から見た場合には, 『公正妥当』という観念の中には,法的救済の. 法人税法第 22 条第 4 項に規定する「一般に. 17) 機会の保障も含まれている」 と解されておら. 公正妥当と認められる会計処理の基準」の意義. れる.また,品川芳宣名誉教授は,同事件につ. について,企業会計原則及び各種会計基準,会. いて,法人税についてのみ更正の請求が認めら. 社法,会社計算規則と同義に解釈すべきか,ま. れなくなるというのは, 「なかなか理解しがた. たは法人税法の目的に従って独自に解釈すべき. 18) い問題があります」 と述べておられる.この. か,議論が分かれる.この点について,金子宏. ように考えると,法人税法第 22 条第 4 項の「一. 名誉教授は,次の 3 つの点に注意する必要があ. 般に公正妥当と認められる会計処理の基準」と. 13). るとする .. いう言葉の意味は,企業会計原則その他会計処. ⑴ 企業会計原則の内容や確立した会計慣行が. 理の基準,会社法及び会社計算規則と完全に一 致するわけでないと考えることもできる.. 必ず公正妥当であるとは限らない. ⑵ 企業会計原則や確立した会計慣行が決して. 以上から明らかなように,法人税法第 22 条 第 4 項でいう「一般に公正妥当と認められる会. 網羅的であるとはいえない. ⑶ 公正妥当 な 会計処理 の 基準 は,法的救済 を. 計処理の基準」が含意するところは,原則的に 企業会計に従うが,企業会計とは違う場合もあ. 排除するものであってはならない. 同教授は,⑴ については,前述した大竹貿. りうることが前提とされている.したがって,. 易事件 の 控訴審(大阪高判平成 3 年 12 月 19. 法人税法第 22 条第 4 項 の 公正処理基準 は,企. 14). 日・訟月 38 巻 7 号 1325 頁) を引用し, 「企業. 業会計との関係について企業会計準拠主義を採. 会計原則や確立した会計慣行について,それが. 用していると解され,筆者はこの考え方を支持. 公正妥当であるといえるかどうかをたえず吟味. する.. する必要がある. 」とする.このような観点か. この点について争われた本件判決を一つの素材. らいえば,企業会計,会社法,会社計算規則とは,. として,同条項の公正処理基準と企業会計の基準. 完全に一致するとは限らないという考え方が成. 等について検討することが本稿の目的である.. り立ちうる.そして,⑵ については, 「何が公. その前提として,先ず,企業会計と課税所得. 正妥当な会計処理の基準であるかを判定するの. の 関係 に つ い て,法人税法第 22 条第 4 項制定. は,国税庁や国税不服審判所の任務であり,最. の背景及び税制改正の動向を見ることとする.. 15) 終的には裁判所の任務である」 とし,⑶ につ. い て は,大元密教事件(東京高判昭和 61 年 11 16). 月 11 日・行 裁 例 集 37 巻 10 = 11 号 1334 頁) . 13)金子・前掲注 ⑻ 323─324 頁参照. 14)最 一 小 判 平 成 5 年 11 月 25 日・前 掲 注 ⑴ の 原審.同大阪高判 は,納税者 の 採用 し た 会計処 理の基準を「一般に公正妥当と認められる会計処 理の基準に適合するものとはいえない」と判断し ている. 15)金子・前掲注 ⑻ 323 頁. 16)金子宏教授 は,「こ の 判決 は,いった ん 確 定した過去の年度の会計処理の遡及的修正を認め ないという企業会計の考え方に従ったものである と思われるが,最近の企業会計の考えは,一定の. Ⅱ 課税所得と企業会計の関係 1 法人税法第 22 条第 4 項制定の背景 ⑴ 制定の背景 ① 立法の理由 . 範囲でそれを認める傾向にある. 」 (金子・前掲注 ⑻ 326 頁)と述べておられる. *企業会計基準委員会,企業会計基準 24 号「会計 上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」参照. 17)金子・前掲注 ⑻ 324 頁. 18)品川芳宣『国税通則法講義─国税手続・争 訟の法理と実務問題を解説─』 (日本租税研究協会, 2015 年)60 頁..
(4) 92. 横浜国際社会科学研究 第 21 巻第 4・5 号(2017 年 1 月). (236). ア 昭和 41 年 12 月税制調査会「税制簡素化に. 業会計処理の未進歩や恣意に起因して,あるい は負担の公平という概念にとらわれて,やや画. ついての第一次答申」による説明 法人税法第 22 条第 4 項(公正処理基準)は,. 一的に過ぎ,弾力性に欠ける面が相当ある.そ. 昭和 41 年 9 月 の 税制調査会「税制簡素化 に つ. れが原因となって,企業に対する税務調査は,. いての中間報告」及び同年 12 月の税制調査会. おびただしい項目の否認を毎期のように発生す. 「税制簡素化についての第一次答申」 (以下「昭. る一方,否認項目のうちの期間損益については. 和 41 年 12 月答申」という)を受けて,税制簡. 翌期から直ちに認容といった手数のかかること. 素化を狙いとして,昭和 42 年 5 月 31 日法律第. を繰り返しているのが現況である.課税所得計. 21 号による法人税法の一部改正により,新し. 算の弾力化ないし自由化と企業会計処理の客観. く設けられた規定である.. 性の確立こそ,わが国の税制と企業に課された. 昭和 41 年 12 月答申 に よ る と,法人税法第. 22) 大きな課題である.」 とする.. 22 条第 4 項 の 立法理由 に は,税制 を 複雑化 し. そして税制簡素化の真の目的について,塩崎. た原因及び背景として次の二つがあるとされ. 氏は, 「税制簡素化の真の狙いは,減税でも増. る.紙幅の都合上,内容は省略する.. 税でもなければ,また,単純な課税所得と企業. ア 税制が基盤とする社会経済事象の複雑化 19). (社会的要因). 利益の一致にあるのでもない.それは,煩雑さ から解放して人員の適正配置等により納税者,. イ 税制の立案とその執行の態度 20). 税理士,税務当局ひいては社会全体の生産性を. イ 当時の立法当局の説明による原因及び背景. 向上させて経済の成長を助けるとともに,納税. 塩崎潤氏(当時の大蔵省主税局長)は,税制. 者の税制に対する理解を容易にし,自発的協力. 簡素化が必要とされ,要望されるに至ったわが. を一層促進することにあると思われる.税法,. 国の税法が,どこの国の税法とも違った複雑な. 商法,企業会計あるいは課税所得と企業利益の. 仕組みと長文の無数の規定と通達をもっている. 一致というようなことは,それを達成するため. ように見える背景と原因について, 「第一の背. の現時点的な一つの方法に過ぎない. 」23)と述. 景と原因は,わが国税制ないし税務行政に特徴. べ て い る.法人税法第 22 条第 4 項 の 公正処理. 的な強い画一主義の傾向である.…….第二の. 基準をめぐる今日の問題を示唆しているように. 背景と原因は,租税法律主義の過剰な適用であ. 思われる.. る.…….しかし,この租税法律主義の意味す. さらに塩崎氏は, 「税制簡素化ができるかど. るところは,税法以前の社会的事実である所得. うかは,大きな方向の一つとして,以上のよう. や企業利益,あるいは財産の定義や計算原理を. な税制からの画一主義と租税法律主義の過剰を. こまかく規定するところにあるのではなく,課. どの程度排除できるかどうか,そして税制が納. 税標準が何か,税率はどの程度かという租税プ. 税者の合理的な個別事情をどの程度尊重できる. 21). ロパーのことを法律で規定することにある. 」. かどうかにかかっている.……,税制簡素化の. と述べている.. 究極の途は,法令や解釈通達でこまごまと会計. ここでの当時の画一的取扱いの現状につい. 規定や課税所得の計算原理を規定することにあ. て,塩崎氏は, 「現在の課税所得の計算は,企. るのではなく,それでは到底,森羅万象を規定 し切れないものとあきらめて,先進諸国のよう. . 19)昭和 41 年 12 月答申 38 頁参照. 20)昭和 41 年 12 月答申 38─39 頁参照. 21)塩崎潤「税制簡素化 の 意味」企業会計 19 巻 12 号(1967 年)10,11─12 頁.. . 22)塩崎潤「税制簡素化の実施にあたって」税 経通信 22 巻 5 号(1967 年)2,4─5 頁. 23)塩崎・前掲注(22)3 頁..
(5) 法人税法第 22 条第 4 項と不動産流動化実務指針(安田). (237). 93. に,事件発生ごとの個別解決,つまり,納税者. が,『課税所得は,納税者たる企業が継続して. が税務官庁の処分に対して異議申立てを遠慮な. 適用する適正な会計慣行に従って計算する企業. く提出し,紛争を公開の場で,納税者と税務官. 利益を基礎とする』旨の基本規定を税法のうち. 庁とが対等の場で討論して,個別的,具体的に,. に設けることとしている.. しかも迅速に解決することに尽きるのであっ. 会計学者のうちには,この基本規定の挿入を. て,それには現在の不服申立制度やその運用の. もって,税法がいわゆる企業会計原則の軍門に. 仕方について根本的に検討を加える必要がある. 降ったものとみて,鬼の首でも取ったかのよう. ということが,税制簡素化の検討がもたらす論. に主張する者もいるが,この挿入の趣旨は,前. 24) 理的帰結でもあるようである. 」 と述べている.. 述のようなものであって,税制の当然の論理を. ② 当時の立法当局の説明による立法の趣旨. 追認することが目的であるから,これは会計学. 塩崎氏は,本条項の立法趣旨について,次の. 者の思う『鬼の首』ではなさそうである.むしろ,. ように述べている.. この規定の功徳は,この規定の挿入後,企業と. 「課税所得と企業利益とは一致し,税法独自. 税務の双方の気長い努力によって企業会計の努. の計算原理や規制が少ない方が企業にも税務当. 力も進歩し,税務からも画一的な取扱いが減少. 局にも簡便であり,また本来,税制は,税制以. して,企業側も税務当局側も企業利益と課税所. 前に存在する企業や企業利益を前提として構成. 得の計算に客観的な自信を持つようになれば,. されている.現在の税法でも暗にこのことを前. 税法のなかの数多くの計算規定は不要となっ. 提として組み立てられている筈であるが,この. て,税法はもちろん通達まで大いに簡素化され. 前提が明文化されていないことや過去のいきさ. るとともに税務上の否認は著減するであろうと. つ等から税法のなかに数多くの所得計算規定が. いうことに求めるべきであろう.法人税法改正. 挿入されている外,通達で無数の会計処理基準. 法律案は,このような趣旨から,その表現は,. が示されていて,それらが果たして,企業会計. サラリと,法 22 条第 4 項に『第 2 項に規定す. 上当然の計算規定であるのか,あるいは税法独. る当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げ. 自の計算規定であるのか,つまり,そもそも税. る額は,一般に公正妥当と認められる会計処理. 法のなかの計算規定は,いかなる基準で採り上. の基準に従って計算されるものとする.』と追. げられているかが不分明となっている.私は,. 25) 加しているだけである.」 .. これらの税法の通達の計算規定の大部分は,企. すなわち,その趣旨は,課税所得と企業利益. 業会計の進歩,納税者の自信,さらには税務側. との間の開差に由来する税制および税務調査上. のケース・バイ・ケースの思想の習熟さえあれ. の複雑さを減少させるために所得計算の弾力化. ば削除してもよい筈の当然の規定と考えてい. を図ること及び税制の当然の論理を追認するこ. る.しかし,このようなドラスティックな削除. とが目的であるとされる26).. 案を提案すると,法令や通達で示された計算規. 上記の塩崎氏の説明は,将来の経済環境の変化. 定という『より所』に慣れて,自ら解釈するこ. を見据えるものであり,今日顕現している問題を. とに慣れていない納税者あるいは企業の経理担. 考えるにあたって参考となるのではなかろうか.. 当者と税務官吏とを奈落の底につき落とすこと にもなりかねない.そこで,当然のことである . 24)塩崎・前掲注(21)14─15 頁.同旨として, 藤掛一雄「法人税法 の 改正」国税庁『昭和 42 年改 正税法のすべて』(1968 年)76 頁参照.. . 25)塩崎・前掲注(22)5 頁. 26)同旨として,原一郎「法人税法の改正につ いて」週刊税務通信 975 号(1967 年)13,13─14 頁, 藤掛・前掲注(24)75─76 頁,西原宏一「法人税法 の一部改正」税務弘報 15 巻 8 号(1967 年)74,74 ─75 頁..
(6) 94. (238). 横浜国際社会科学研究 第 21 巻第 4・5 号(2017 年 1 月). ③ 当時の立法当局の説明による「一般に公正. が表れるものとは思われない.」28).. 妥当と認められる会計処理の基準」の意味. しかしながら,会計ビッグバンの影響によっ. 原氏(当時大蔵省主税局税制第一課)は,そ. て新会計基準(後掲脚注(81)参照,以下同じ). の意味について以下のように述べている27).. が次々と開発されたことによって,今日におい. 「新設された基本規定では, 『一般に公正妥当. ては,企業会計と法人税法との乖離が進んでい. と認められる会計処理の基準』により計算する. る状況にある.そして,後述する本件判決にみ. と規定しているが,その基準の内容に関しては. るように,いま,法人税法第 22 条第 4 項の基. 何ら規定していない.. 本規定としての意義が注目されるに至る.. ここにいう基準は,客観的な規範性をもつ公. なお,この公正処理基準に関する裁判例につ. 正かつ妥当と認められる会計処理の基準という. いては,Ⅲにおいて後述する.. 意味であり,特に明文の基準があることを予定. ⑵ 法人税法第 22 条第 4 項制定時の議論. しているわけではない.もちろん, いわゆる 『企. ① 法人税法第 22 条第 4 項の問題点. 業会計原則』 だけを意味するものでもなければ,. 中川一郎教授 は,「法人税法 22 条 4 項 に 関. 税務官署の側だけで定められるべきはずのもの. する問題点」について,以下の問題を挙げて. でもない.. い る29).な お 当該問題 は,日本税法学会第 33. 具体的会計処理について,それが一般に公正. 回大会の課題である「法人税法 22 条 4 項の解. 妥当と認められる会計処理の基準にのっとって. 釈論と立法論」に係る内容である30).. いるかどうかは,今後,事例につての判例等の 判断の積み重ねによって順次明確になって行く ことになろう. それよりもこの基本規定は,具体的には企業 が会計処理において用いている基準ないし慣行 のうち,一般に公正妥当と認められないものだ けを税法でも認めないこととし,原則としては 企業の会計処理を認めるという基本方針を明ら かにしたものであるという点にその意義を求め るべきであろう. つまり,企業会計において一般に公正妥当な 会計処理の基準によって会計処理が行われるな らば,税法のなかにある数多くの計算規定は不 要となり,あわせて税務調査における否認等を めぐるトラブルもなくなるであろうという考え 方にその意義を求めるべきであるということで ある. もちろん,従来から,税法は一般に公正妥当 な会計処理の基準は尊重する建前をとってきて おり,この基本規定の創設により,急激に影響 . 27)原・前掲注(26)14 頁参照.. . 28)原・前掲注(26)14 頁.同旨として,藤掛・ 前掲注(24)76 頁,西原・前掲注(26)75 頁参照. 29)中川一郎「法人税法 22 条 4 項に関する問題 点の整理」税法学 202 号(1967 年)33 頁以下参照. 30)同大会のパネル形式によるシンポジウムの 内容は,税法学 204 号(1967 年)1 頁以下,205 号 (1968 年)1 頁以下及 び 206 号(1968 年)1 頁以下 に公表されている. また,本大会は,以下の方々が研究報告及び発 表をなされている.其々の研究報告の掲載は,以 下のとおりである. ・松本茂郎「法人税法 22 条 4 項の意味するもの」 税法学 201 号(1967 年)22 頁参照. ・近江亮吉「法人税法 22 条 4 項 の 規定 の 位置, 機能及び適用について ⑴」税法学 202 号(1967 年)1 頁,同「同 左 ⑵」税 法 学 203 号(1967 年)9 頁,同「同左 ⑶」税法学 207 号(1968 年) 30 頁, および同「同左 ⑷」税法学 208 号(1968 年)1 頁参照. ・徳島米三郎「税法における理想と現実-法人 税法 22 条 4 項をめぐって」税法学 202 号(1967 年)24 頁参照. ・清永敬次「法人税法 22 条 4 項について」税法 学 202 号(1967 年)27 頁参照. ・山田二郎「法人税法 22 条 4 項と商法の計算規 定 と の 関係(梗概) 」税法学 202 号(1967 年) 30 頁参照. ・竹下重人「法人税法 22 条 4 項の問題点につい.
(7) 法人税法第 22 条第 4 項と不動産流動化実務指針(安田). 第一 解釈法論上の問題点 一 文言の解釈 A 会計処理 B 会計処理 の 基準 C 一般 に 公正 妥当と認められる D 額は…計算されるものとする F 「別段の定めがあるものを除き」という文言がな いこと(Eはなし・筆者注) 二 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」と明 文による諸規定・原則との関係 三 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」と通 達との関係 四 この規定は,申告所得額の是否認の基本方針を示した ものであるか 第二 適用上の問題点 五 立法当局の説明の如く,「一般に公正妥当と認められ る会計処理の基準」には,明文の基準があることを予 定していないというのであれば,今後具体的な事例は いかなる具体的な基準によって判断するのか 六 無償による資産の譲渡に係る収益の額,および無償に よる資産の譲受に係る収益の額の計算と本項の適用 七 この規定と 132 条の適用上の関係 八 一部で提唱される「事前確認制度」に対して,この規 定は,その法的根拠となるであろうか 九 「特定の期間損益事項」にかかる法人税の取扱いにつ いて」通達は,本項違反第 1 号ではないか 第三 立法上の問題点 一〇 損益計算に関する基本規定を必要とするか,もし必 要であるとした場合,本項の法文,ならびに規定の位 置は妥当であるか 一一 九に述べた通達に関連し,立法論上検討すべき問題 はないか. ② 「一般に公正妥当と認められる」ことの意味 上記①の問題点のうち,本稿のテーマとの関 連及び紙幅の都合から,同大会における一のC の問題にかかる議論を税法学 204 号ないし 205 号から一部抜粋して紹介すべきところ,紙幅の 都合から,議論の整理に止める31). ア 公正妥当 を 議論 す る 前提 と し て,22 条 4 項は,先ず広さと深みのあるものとして理解 する.次に,日本経済の発展とともに学問な り会計実務が発展してくると,過去に良いと されていたものが現在においては妥当でない . て(梗概)」税法学 202 号(1967 年)32 頁参照. ・新井隆一「法人税法 22 条 4 項に関する問題提 起(梗概)」税法学 202 号(1967 年)33 頁,同「同 左」税法学 203 号(1967 年)21 頁参照. 31)発言者の肩書は省略している.. (239). 95. というものが出てくるので,そういうものを 全体として抱擁(ママ)するものが,22 条 4 項の規定でなければ,企業の発展なり学問の 発展なりを阻害するものになり,そういうも のではないと読まなければこの規定は有益で はない(近江亮吉氏). イ 「公正妥当」の概念は非常に不明確である けれども,事案ごとに正確な事実認定をした 上で判断しようとする,一つの白紙規定的概 念であって,「公正かつ妥当」ではない場合 は,22 条 4 項に反するということになる(松 本保三氏). ウ 「一般に」という言葉は,「一般が認める」 と読むのではなく,制度的あるいは手続的な 問題として考え, 「一般にみて公正妥当であ る」という場合にはじめて制度的あるいは手 続的な争いが出てくることになる(新井隆一 氏) . エ この規定は,裁判所が判断する場合の客観 的基準であることを予定しているが,判断基 準 の 内容 は 一義的概念 で は な い(新井隆一 氏) . オ 条文は客観的な基準を予定しているが,不 動の基準があるかということが問題になる. 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基 準」というものは,時代とともに,会計学の 進歩とともに,あるいは人の主観によって変 わるものだというところに問題の焦点がある ということになる(伊地知大介氏). ⑶ 諸説 上記議論のほか,主な見解を簡単に紹介する32). ① 22 条 4 項の規定は,税法における所得を解 釈する場合に効用を持つものであり,税法に明 確に規定されていない場合には,常にこの規定 の存在を確認し,所得の解釈について原点に 33) 戻って検討する必要がある(武田昌輔氏) .. . 32)論者の肩書は省略している. 33)武田昌輔『立法趣旨法人税法 の 解釈〔四訂 版〕 』 (財形詳報社,1991 年)59 頁参照..
(8) 96. 横浜国際社会科学研究 第 21 巻第 4・5 号(2017 年 1 月). (240). ② わが税法は,税務上の収益費用の認識基準. の取扱いが以前から存在している.. についての基本規定を欠いているから,むし. ④近年,国民の税に対する関心の高まりの中. ろ,取引の類型ごとにこれを明文化するほう. で,税の公正・中立や透明性の視点を踏まえ,. 34) が大切であった(北野弘久氏) .. 実態に即して適時適切に課税を行う必要性が. ③ 法 22 条 4 項の狙いは,税法が経済事情の. 以前にも増して重要となっている.しかしなが. 変遷に応じてスライドすることである(河合. ら,現行法人税法が商法・企業会計原則におけ る会計処理の保守主義や選択制を容認している. 35). 信雄氏) . ④ 「一般に公正妥当な会計処理の基準」その. 結果,企業間の税負担の格差や課税所得計算の. ものの意味・前提条件等について一致した見. 歪みがもたらされている面があることも否定で. 36). 解が成立することが望まれる(渡邊進氏) .. きない.法人税の課税所得は,今後とも,商法・. ⑤ 別段 の 定 め こそが法人税法本来の規定で. 企業会計原則に則った会計処理に基づいて算定. あって,22 条 4 項 が 所得計算 の 基本規定 で. することを基本としつつも,適正な課税を行う. あるとするのは形式的な解釈であるにすぎな. 観点から,必要に応じ,商法・企業会計原則に. 37). い(須貝修一氏) .. おける会計処理と異なった取扱いとすることが. との諸説がある.. 適切と考える.」(平成 8 年 11 月答申 24 頁).. ⑷ 税制改正の動向. 上記報告 は,「適正 な 課税 を 行 う 観点 か ら,. ① 平成 8 年税制調査会法人課税小委員会報告. 必要に応じ,商法・企業会計原則における会計. 税制調査会は,平成 8 年 11 月 26 日「法人課. 処理と異なった取扱いとすることが適切と考え. 税小委員会報告」第 1 章四 3.において,次の. る」として,税法の独自性が強調されている.. ように述べている.. ただし,これによって,法人税法 22 条 4 項の. 「② し か し,税法,商法,企業会計原則 は,. 規定の文言には変わりがない.本条項の規定を. それぞれ固有の目的と機能を持っている.…….. そのままにして,平成 8 年の税制調査会法人課. 一方,税法は,税負担の公平,税制の経済に対. 税小委員会報告では,適正な課税を行う観点か. する中立性の確保等をその立法の基本的な考え. ら税法独自の取扱いをする考え方が示されたこ. 方とし,適正な課税の実現のため,国と納税者. とになる.. の関係を律している.したがって,税法におい. 以降,企業会計と税法の乖離が進むことにな. て,適正な課税の実現という税法固有の考え方. る38).. から,商法・企業会計原則と異なった取扱いを. ② 平成 12 年税制調査会答申「わ が 国税制 の. 行う場合があることは当然である.例えば,交. 現状と課題─ 21 世紀に向けた国民の参加と. 際費の損金不算入,受取配当の益金不算入,引 当金の繰入限度額にみられるように,税法固有 . 34)北野弘久「昭和 42 年度税法改正 へ の 若干 の 疑問─第 55 回国会公述要旨─」税法学 198 号 (1967 年)27 頁参照. 35)河合信雄「法人税法上 の 会計処理基準 の 創 設」経済論叢 103 巻 2 号岡部利良教授記念号(1969 年)115,131 頁参照. 36)渡邉進「会計処理の公正妥当な基準の探求」 税経通信 22 巻 12 号(1967 年)2,6─8 頁参照. 37)須 貝 修 一「法 人 税 法 22 条 4 項」法 學 論 叢 82 巻 6 号(1968 年)1,2─3 頁参照.. 選択─」(平成 12 年 7 月) 同答申は,その第二の二の 1 の ⑴ ④におい て次のように述べている. 「企業の会計には,財産・持分をめぐる株主 や債権者などの利害関係者の間の利害を調整す る機能と,関係者に企業の財政状態と経営成績 . 38)平成 10 年度 の 税制改正 で,賞与引当金 の 廃止等,法人税の課税ベースの適正化として法人 税の規定が大幅に改正され,企業会計からの乖離 が進んだ..
(9) 法人税法第 22 条第 4 項と不動産流動化実務指針(安田). (241). 97. を開示するという情報を提供する機能の 2 つの. GHQ は,『まず会計原則をつくれ』と政府に指. 機能があります.…….. 示しました.. 一方,税法は,税負担の公平や税制の経済に. いろいろな経緯があったようですが,それを. 対する中立性を確保することなどを基本的な考. 受け止めたのが “あんぽん” と呼ばれた経済安. え方としており,適正な課税を実現するため,. 定本部(後 の 経済企画庁)で す.そ し て 昭和. 国と納税者の関係を律しているのです.した. 24 年七月,黒澤清先生 ら が 中心 と な り『企業. がって,適正な課税の捉え方が商法・企業会計. 40) 会計原則』を発表しました.」 .. 原則と異なる場合があることは当然です.例え. GHQ は,竹井芳雄氏 に よ る と,第二次大戦. ば,受取配当の益金不算入,引当金の繰入限度. による敗戦後の我が国経済の再建を図るにあ. 額や寄附金の損金算入限度額といった制度は,. たって,企業の実態を把握するため,企業会計. 税法固有の取扱いとされているものです.. の整備を取り上げ,わが国の会計制度が不備で. ま た,法人税法 が,商法・企業会計原則 に お. あるという理由によって,当該指示書を指定会. ける会計処理の保守的な考え方や選択制をその. 社に送付し,この指示書に基づき財務諸表を作. まま容認すれば,企業間の税負担の格差や課税. 成するよう命じたとされる41).ところが,提出. 所得計算の歪みがもたらされる場合があります.. された財務諸表が GHQ の指示に従って作成さ. 法人税の課税所得については,今後とも,適. れていなかった42)という遺憾な思いが,企業会. 正な課税を実現するという税法固有の目的を確. 計原則の設定の目的にもあるように,企業会計. 保する観点から,必要に応じ,商法・企業会計. 制度の改善統一は緊急を要する問題であった.. 原則における会計処理と異なった取扱いをする. このような戦後の社会的・経済的そして政治. ことが適当です. (平成 12 年 7 月答申 159 頁) 」 .. 的な背景のもと,企業会計原則は昭和 24 年に. 現在のところ, 本条項の改正はない. したがっ. 設定された.. て,新会計基準の本条項にいう公正処理基準該. ⑵ 税法と企業会計原則との調整. 当性を判断するメルクマールが問題となる.こ. ① 昭和 27 年 6 月 16 日経済安定本部企業会計. の点については,今後の研究課題としたい.. 基準審議会中間報告「税法と企業会計原則と の調整に関する意見書(小委員会報告)」. 2 税法と企業会計原則との関係 (1) 企業会計原則設定の背景及び設定 企業会計原則の設定の背景について,武田昌. 同意見書は,企業会計原則の立場から,税法 と企業会計原則との不一致についての調整問題 点を提起し,解決の方向を示唆するものである.. 輔名誉教授は以下のように説明している. 「昭和 22 年 12 月『工業会社及 ビ 商事会社 ノ 財 務諸表作成ニ関スル指示書』 ,俗称『インスト ラ ク ション』が GHQ(連合国総司令部)か ら 出されました.GHQ が提出を求めた制限会社 (GHQ の統治下において主要な商工業会社のほ とんどがそう指定された39))の財務諸表が当時 は『会計処理方法 に 遺憾 な 点 が 多 い』と 言 わ れるほど,ばらばらだったためです.そこで . 39)以下,本稿では「指定会社」という.. . 40)武田昌輔『法人税回顧六〇年~企業会計 と の関係を検証する~』 (TKC 出版,2009 年)100 頁. なお,戦後の「企業会計原則」制定までの具体 的経緯 に つ い て は,嶋和重『戦後日本 の 会計制度 形成と展開』 (同文館出版,2007 年)19─85 頁参照. 41)竹井芳雄「戦後における会計制度の近代化 (その一) 」龍谷ビジネスレビュー 9 号(2008 年)1 ─5 頁参照. 42)たとえば,竹井芳雄氏の説明によると,昭 和 21 年に公布された企業再建整備法に基づき財務 諸表を作成し指示書に従っていない,営業報告書 等 が 3 年間 の 会計期間 と なって い た な ど が あ る. 竹井・前掲注(41)8─9 頁参照..
(10) 98. (242). 横浜国際社会科学研究 第 21 巻第 4・5 号(2017 年 1 月). ② 昭和 41 年 10 月 17 日大蔵省企業会計基準. 判決は,法人税法の課税の公平の観点から,為. 審議会中間報告「税法と企業会計原則との調. 替取組日基準は一般に公正妥当と認められる会. 整に関する意見書」. 計処理の基準に該当しないと判示し,船荷証券. 同意見書は,企業会計原則の立場のみにお. が発行されている商品の輸出取引の収益計上時. かず,税法における課税所得計算の原則をも考. 期に関するはじめての最高裁判決である.. 慮に入れて調整の可能性を検討し,税法と企業. 同判決の収益の年度帰属に関する判断枠組み. 会計との間に存する差異の調整について前意見. は,①収入すべき権利が確定したときの属する. 書の前文の趣旨に添って実際的な調整方法の研. 年度,②その収益計上時期を人為的に操作する. 究を展開している.. 余地を生じさせない,という点にある.. なお,本意見書が昭和 42 年度税制改正の特徴 である税制簡素化に影響しているといわれる. Ⅲ 裁判例にみる課税の公平と趣旨目的. 2 脱税経費の損金性と法人税法 22 条 4 項の関 係 に 係 る 先行判例(最三小決平成 6 年 9 月 16 日平成 1 年(あ)28 号)―課税の公平. 1 収益計上時期と法人税法 22 条 4 項の関係に. 事案の概要は,不動産売買等を目的とする法. 係 る 先行判例(最一小判平成 5 年 11 月 25. 人が,所得を秘匿する手段として,社外協力者. 日平成 4 年(行ツ)45 号)―課税の公平. に架空の土地造成工事に関する見積書及び請求. 事案の概要は,輸出業を営む法人が,海外顧. 書を提出させ,これらの書面を使用して架空の. 客との輸出取引の販売に係る収益について,輸. 造成費を計上して原価を計算し,右協力者に手. 出商品 の 船積 み 等 を 完了 し,船荷証券 を 取引. 数料として合計 1900 万円を支払ったというも. 銀行に引き渡した日(為替取組日)の属する事. のである.争点は,所得を秘匿するために要し. 業年度の益金として所得計算を行っていたとこ. た費用を損金の額に算入することが許されるか. ろ,課税庁が,当該収益を船積日基準によって. どうかということである.. 更正処分等をした事例である.争点は,輸出取. 最高裁は, 「架空の経費を計上して所得を秘. 引に係る収益計上時期が,為替取組日か,船積. 匿することは,事実に反する会計処理であり,. み日かである.. 公正処理基準に照らして否定されるべきであ. 最高裁は, 「収益は,その実現があった時,す. るところ,右手数料は,架空の経費を計上する. なわち,その収入すべき権利が確定したときの. という会計処理に協力したことに対する対価と. 属する年度の益金に計上すべきものと考えられ. して支出されたものであって,公正処理基準に. る.….そうすると,上告人が採用している為. 反する処理により法人税を免れるための費用と. 替取組日基準は,…,その収益計上時期を人為. いうべきであるから,このような支出を費用又. 的に操作する余地を生じさせる点において,一. は損失として損金の額に算入する会計処理もま. 般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適. た,公正処理基準に従ったものであるというこ. 合するものとはいえないというべきである.こ. 44) とはできないと解するのが相当である.」 と. のような処理による企業の利益計算は,法人税. 判示して,当該支出について損金の額に算入す. 法の企図する公平な所得計算の要請という観点. ることを否定した原判決の判断を維持した 45).. 43) からも是認し難いものと言わざるをえない. 」. と判示して,納税者の会計処理を否定した.同 . 43)訟月 40 巻 10 号 2566,2571─2573 頁.. . 44)判時 1518 号 146─147 頁. 45)同事件 に 係 る 問題 は,平成 18 年度 の 税制 改正によって法人税法第 55 条第 1 項が創設された ことにより解消されている.
(11) 昭和42年度税制改正「公正処理基準」創設以前の主な事例 裁判年月日等. 出典. 判断の基礎等. 参考(原告等又は事案). D1-Law21010340. ・企業会計原則(会計学上の原理). 呉服小売商を営む青色申告者. 一 企業会計の処理を無条件に尊重した事例 1 大阪高判昭和33年7月11日昭和31年(ネ)445号. 二 企業会計の発生主義を尊重しつつ法人税法の権利確定主義・債務確定主義をも考慮する事例 2 3 4 5 6 7. 大阪地判昭和24年9月12日(事件番号不詳) 東京地判昭和26年4月27日昭和24年(行)13号 東京高判昭和26年3月31日昭和25年(う)2431号 金沢地判昭和32年2月27日昭和29年(行)4号 京都地判昭和34年1月31日昭和31年(行)1号 東京高判昭和40年10月13日昭和40年(行コ)16号. D1-Law21001320 D1-Law21003130. ・権利確定主義 ・発生主義 ・企業会計原則 ・権利確定主義 . 日本薬品槽船㈱ 細田機械工業㈱. D1-Law21008530 D1-Law21011140 D1-Law21022130. ・権利確定主義 ・部分完成基準 ・権利確定主義 ・実現主義、継続性の原則 ・権利確定主義 . 日進建設㈱ 協和紡績㈱ 大栄プラスチックス㈱. (243) 99 法人税法第 22 条第 4 項と不動産流動化実務指針(安田) 細田機械工業㈱承継人㈱岡田工作機械製作所 D1-Law21003050 ・権利確定主義 . 表 1 昭和 42 年度税制改正「公正処理基準」創設以前の主な事例. 昭和42年度税制改正「公正処理基準」創設以前の主な事例. 三 裁判年月日等 企業会計を尊重しつつ法人税法の立法目的も考慮する事例 出典. 判断の基礎等 D1-Law21000750 ・法人税法の趣旨目的 D1-Law21005080 ・法人税法の趣旨目的 ・債務確定主義 ・企業会計原則 大阪高判昭和26年9月10日(事件番号不詳) D1-Law21003520 ・企業会計原則(会計学上の原理) ・法人税法の趣旨目的 大阪高判昭和33年7月11日昭和31年(ネ)445号 D1-Law21010340 東京高判昭和27年2月21日昭和26年(ネ)1225号 D1-Law21004020 ・法人税法の趣旨目的 ・発生主義 大阪地判昭和31年4月16日昭和28年(行)15号 D1-Law21007320 ・法人税法の趣旨目的 ・発生主義、実現主義 企業会計の発生主義を尊重しつつ法人税法の権利確定主義・債務確定主義をも考慮する事例 金沢地判昭和32年2月27日昭和29年(行)4号 D1-Law21008530 大阪地判昭和24年9月12日(事件番号不詳) D1-Law21001320 ・法人税法の趣旨目的 ・権利確定主義、債務確定主義 ・発生主義 ・権利確定主義 ・発生主義 (成道秀雄「法人税法第22条第4項『公正処理基準』の検証」租税研究800号(2016年)311、316-318頁及び343-350頁を参考に筆者作成) 東京地判昭和26年4月27日昭和24年(行)13号 D1-Law21003130 ・企業会計原則 ・権利確定主義 東京高判昭和26年3月31日昭和25年(う)2431号 D1-Law21003050 ・権利確定主義 金沢地判昭和32年2月27日昭和29年(行)4号 D1-Law21008530 ・権利確定主義 ・部分完成基準 京都地判昭和34年1月31日昭和31年(行)1号 D1-Law21011140 ・権利確定主義 ・実現主義、継続性の原則 東京高判昭和40年10月13日昭和40年(行コ)16号 D1-Law21022130 ・権利確定主義 . 8 東京地判昭和24年5月12日(事件番号不詳). 長野地判昭和27年10月21日昭和25年(行)8号 一9 企業会計の処理を無条件に尊重した事例 10 1 11 12 二 13 2 3 4 5 6 7. 参考(原告等又は事案) 帝国電気㈱ 不二蚕糸㈱ 近江絹糸紡績㈱ 呉服小売商を営む青色申告者 細田機械工業㈱ 大阪相互タクシー㈱ 日進建設㈱ 日本薬品槽船㈱ 細田機械工業㈱ 細田機械工業㈱承継人㈱岡田工作機械製作所 日進建設㈱ 協和紡績㈱ 大栄プラスチックス㈱. 三 企業会計を尊重しつつ法人税法の立法目的も考慮する事例 8 9 10 11 12 13. 東京地判昭和24年5月12日(事件番号不詳) D1-Law21000750 ・法人税法の趣旨目的 長野地判昭和27年10月21日昭和25年(行)8号 D1-Law21005080 ・法人税法の趣旨目的 ・債務確定主義 ・企業会計原則 大阪高判昭和26年9月10日(事件番号不詳) D1-Law21003520 ・法人税法の趣旨目的 東京高判昭和27年2月21日昭和26年(ネ)1225号 D1-Law21004020 ・法人税法の趣旨目的 ・発生主義 大阪地判昭和31年4月16日昭和28年(行)15号 D1-Law21007320 ・法人税法の趣旨目的 ・発生主義、実現主義 金沢地判昭和32年2月27日昭和29年(行)4号 D1-Law21008530 ・法人税法の趣旨目的 ・権利確定主義、債務確定主義 ・発生主義 (成道秀雄「法人税法第22条第4項『公正処理基準』の検証」租税研究800号(2016年)311、316-318頁及び343-350頁を参考に筆者作成). 帝国電気㈱ 不二蚕糸㈱ 近江絹糸紡績㈱ 細田機械工業㈱ 大阪相互タクシー㈱ 日進建設㈱. 昭和42年度税制改正「公正処理基準」創設後の主な事例. 表 2 昭和 42 年度税制改正「公正処理基準」創設後の主な事例. 裁判(裁決)年月日等 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. 出典 判断の基礎等 最(一)判平成5年11月25日平成4年(行ツ)45号 訟月40巻10号2566頁 ・課税公平性の原則 最(三)決平成6年9月16日平成元年(あ)28号 判時1518号146頁 ・課税公平性の原則 東京高判平成13年(行コ)94号平成14年3月14日 D1-Law28070932 ・課税公正性の原則 名古屋地判平成13年7月16日平成12年(行ウ)14号 D1-Law28071850 ・課税公平性の原則 ・通達方式の会計慣行化 神戸地判平成14年9月12日平成12年(行ウ)45号 D1-Law28081901 ・業界通達方式の会計慣行化 東京地判平成19年1月31日平成17年(行ウ)597号 D1-Law28141134 ・業界会計規則を法22④の公正処理基準として認めた 平成4年6月8日裁決 TAINZ J43-3-02 ・業界取引慣行を法22④の公正処理基準として認めた 福岡地判平成11年12月21日平成10年(行ウ)13号 D1-Law28081097 ・リース会計基準の会計慣行化を否定 東京高判平成16年12月13日平成16年(行コ)248号 D1-Law28141599 ・新会計基準は法22④の公正処理基準に当然には該当性しない 最(一)判平成4年10月29日平成3年(行ツ)171号 D1-Law22006421 ・権利確定主義 (成道秀雄「法人税法第22条第4項『公正処理基準』の検証」租税研究800号(2016年)311、320-322頁及び356-362頁を参考に筆者作成) 昭和42年度税制改正「公正処理基準」創設後の主な事例. 参考(原告等又は事案) 大竹貿易㈱ ㈱エス・ヴィ・シー ㈱日本興業銀行 商品券発行対価の収益計上時期 互助会長期掛金の収益計上時期 火力発電設備の有資除却損 競走馬売買に係る収益計上時期 リース取引 ソフトウェアの開発費用 返還過払電気料金の収益計上時期. 裁判(裁決)年月日等. 参考(原告等又は事案). 出典. 判断の基礎等. 46) 1 最(一)判平成5年11月25日平成4年(行ツ)45号 訟月40巻10号2566頁 ・課税公平性の原則 大竹貿易㈱ 1 のとおり 3 つに分けて解されている 同判決の脱税経費の損金算入に関する判断枠 . 2 最(三)決平成6年9月16日平成元年(あ)28号 判時1518号146頁 ・課税公平性の原則 ㈱エス・ヴィ・シー. 組みは,①事実に反する会計処理でないこと, ⑵ 法人税法第 22 条第 4 項創設後 4 名古屋地判平成13年7月16日平成12年(行ウ)14号 D1-Law28071850 ・課税公平性の原則 ・通達方式の会計慣行化 商品券発行対価の収益計上時期 3 東京高判平成13年(行コ)94号平成14年3月14日. 5 6 7 8 9 10. D1-Law28070932. ・課税公正性の原則. 神戸地判平成14年9月12日平成12年(行ウ)45号 D1-Law28081901 ・業界通達方式の会計慣行化 東京地判平成19年1月31日平成17年(行ウ)597号 D1-Law28141134 ・業界会計規則を法22④の公正処理基準として認めた 平成4年6月8日裁決 TAINZ J43-3-02 ・業界取引慣行を法22④の公正処理基準として認めた 福岡地判平成11年12月21日平成10年(行ウ)13号 D1-Law28081097 ・リース会計基準の会計慣行化を否定 東京高判平成16年12月13日平成16年(行コ)248号 D1-Law28141599 ・新会計基準は法22④の公正処理基準に当然には該当性しない 最(一)判平成4年10月29日平成3年(行ツ)171号 D1-Law22006421 ・権利確定主義 (成道秀雄「法人税法第22条第4項『公正処理基準』の検証」租税研究800号(2016年)311、320-322頁及び356-362頁を参考に筆者作成). ㈱日本興業銀行. 互助会長期掛金の収益計上時期. ②対価として支出されたものであっても法人税. 火力発電設備の有資除却損 法人税法第 22 条第 4 項が制定された後から. を免れるための費用でないこと, という点である.. リース取引 後述するⅣの事案までの公正処理基準に関する ソフトウェアの開発費用. 3 法人税法の趣旨目的を考慮する裁判例 ⑴ 法人税法第 22 条第 4 項創設以前 法人税法第 22 条第 4 項が制定された昭和 42 年以前の裁判例においても,法人税法の趣旨目 的から判断した事例がある.その主な事例に係 る裁判所の判断について,成道秀雄教授は,表 . 46)成道秀雄「法人税法第 22 条第 4 項『公正処 理基準』の 検証」租税研究 800 号(2016 年)311, 316─318 頁参照. 47) 表 中 の 裁 判 例 の う ち, 表 2 の 9 の 事 例 は, 平 成 18 年 6 月 23 日 最 高 裁 不 受 理 決 定(D1Law28162759)である. な お,Ⅳ に 掲 げ る 本件判決後 の 近時 の 公正処 理基準に関する主な裁判例として,①東京高判平 成 26 年 8 月 29 日平成 24 年(行コ)第 466 号(D1Law28223754) (第一審:東京地判平成 24 年 11 月 2 日平成 22 年(行ウ)第 693 号(D1-Law28223261)), ②東京高判平成 26 年 4 月 23 日. 競走馬売買に係る収益計上時期. 主な裁判例(上記 1 及び 2 の最判を含む)は, 返還過払電気料金の収益計上時期. 表 2 のとおりである47). . 平 成 25 年(行 コ) 第 399 号(D1-Law28224246) (第 一 審: 東 京 地 判 平 成 25 年 10 月 30 日 平 成 24 年(行 ウ) 第 212 号(D1-Law28220130) ,最三小 決平成 27 年 4 月 14 日平成 26 年(行 ツ)第 309 号 (D1-Law28232650) ) , ③ 東 京 地 判 平 成 27 年 2 月 26 日 平 成 24 年(行 ウ) 第 592 号(TAINS Z8881918) ,④東京地判平成 27 年 9 月 25 日平成 25 年 (ウ)第 676 号(D1-Law29013543) ,⑤東京高判平 成 28 年 4 月 21 日平成 27 年(行コ)第 157 号(D1Law28241540) (第一審:東京地判平成 27 年 3 月 27 日平成 24 年(行 コ)第 160 号(D1-Law28232727) がある.ちなみに,①の第一審判決の「金融商品 に 関 す る 実務指針」の 公正処理基準該当性判断 に ついて,品川芳宣名誉教授は, 「本判決が,日本公 認会計士協会という民間団体が定めた本件実務指 針の取扱いを即公正処理基準に妥当すると判示し たことに違和感がある」 (品川芳宣『重要租税判決 の 実務研究第三版』 (大蔵財務協会,2014 年)357 頁. )と述べておられる..
(12) 横浜国際社会科学研究 第 21 巻第 4・5 号(2017 年 1 月). 100 (244). 裁判例 に お い ては,法人税法第 22 条第 4 項. 記事業年度の法人税の確定申告を行った.. 制定の前後を通じて,法人税の課税所得算定に. X は,本件事業年度(平成 19 年 9 月 1 日 か. あたっては,課税の公平の観点が考慮されてい. ら平成 20 年 8 月 31 日までの事業年度をいう.. ることがわかる.. 以下同じ)である平成 19 年 10 月に,本件信託. Ⅳ 東 京 高 判 平 成 25 年 7 月 19 日 平 成 25 年 (行 コ)第 117 号事件 の 概要-法人税法第 22 条第 4 項 と 不動産流動化実務指針 に つ いての検討-. 受益権を(有)三山マネジメントから 311 億円 で買戻した. ② 証券取引等監視委員会の調査等 証券取引等監視委員会 は,平成 20 年 12 月, 調査の結果,本件不動産流動化取引の会計処理. は,不動産流動化取引 の 会計処. について,本件信託受益権の(有)三山マネジ. 理について,不動産流動化実務指針が法人税法. メントへの譲渡を本件信託財産の譲渡として取. 第 22 条第 4 項の「一般に公正妥当と認められ. 扱い,本件信託財産である不動産を貸借対照表. る会計処理の基準」に該当しないと判断された. 上の資産の部に計上しないものとすること(以. 事案である.本稿Ⅳでは,本件に係る事実及び. 下「売却取引処理」という)は不適切であり,. 判決要旨について述べ,最後に本件判決につい. 本件信託受益権の上記の譲渡を本件信託財産で. て若干の検討を試みる.. ある不動産の譲渡とは認識せずに金融取引とし. 本件判決. 48). て処理し,本件信託財産である不動産を貸借対 1 事実. 照表上の資産の部に計上すること(以下「金融. ⑴ 本件訴訟に至る経緯. 取引処理」という)が適切であると判断し,X. ① 本件確定申告等. に対し行政指導をした.. 控訴人(原告・納税者,以下「X」という)は,. X は,上記の行政指導を踏まえ,(株)豊島. 家庭用電気製品の売買等を目的とする株式会社. 企画については,財務諸表等の用語,様式及び. であり,平成 20 年 6 月以降その発行する株式. 作成方法 に 関 す る 規則(以下「財務諸表等規. を東京証券取引所市場第一部に上場している.. 則」という)第 8 条に基づき子会社に認定すべ. X は,平成 14 年 8 月期(平成 13 年 9 月 1 日か. きであったもので,これを前提とすると,不動. ら平成 14 年 8 月 31 日までの事業年度をいう.. 産流動化実務指針によると X と合わせてのリ. 以下同じ)に,いわゆる不動産の流動化によっ. スク負担割合が 5% を超過することとなる等と. て資金の調達等をする目的で,その所有する土. して,同指針に従い,平成 14 年 8 月期に遡っ. 地及び建物等を信託財産とする信託契約(以下. て 本件不動産流動化取引 に 係 る 会計処理 を 金. 「本件信託契約」といい,これに係る信託財産. 融取引処理に改めるなどし,平成 21 年 2 月 20. を,以下「本件信託財産」という)を締結した. 日,関東財務局長に対し,上記の事業年度から. 上で,それに基づく受益権(以下「本件信託受. 本件事業年度までの有価証券報告書の訂正届出. 益権」という)を総額 290 億円で(有)三山マ. 書等を提出する等した.なお,原告は,同年 7. ネジメントに譲渡した(図 1 参照) .X は,本. 月 30 日,金融庁長官 か ら,有価証券報告書等. 件信託受益権の譲渡をもって本件信託財産の譲. に虚偽の記載があったとして,納付すべき課徴. 渡と取り扱って(後述する売却取引処理) ,上. 金の額を 2 億 5353 万円とする課徴金の納付命. . 48)本 件 判 決 に 係 る 原 審 は,東 京 地 判 平 成 25 年 2 月 25 日(訟 月 60 巻 5 号 1103 頁・LEX/ DB25510724)参照.. 令の決定(以下「本件課徴金納付命令」という) を受けた. ③ 本件更正の請求等 Xは,平成 21 年 6 月 12 日,本件事業年度の.
(13) 法人税法第 22 条第 4 項と不動産流動化実務指針(安田). (245) 101. ≪本件不動産流動化取引概要図≫ ①本件信託契約 ①本件各建物賃貸借契約(26.7億円/年)*2. X(原告・控訴人). みずほアセット信 託銀行(旧商号). ①本件不動産管理委託契約(12百万円/年)*3 直接86%間接14% 実質支配 配当*4. X の 創 業 者. ①本件信託受益権譲渡契約*1 290億円 ②本件信託受益権譲渡契約(買戻し) 311億円. 匿名組合契約出資 14.5億円. 匿名組合契約出資 75.5億円 (財規8、子会社認定). (有)三山マネジメント (営業者). ローン契約 30億円. ローン契約 180億円. 実質支配 名義株100% ㈱豊島企画. 日本政策 投資銀行. (株)三山コーポ レーション (SPC). *1: X は、本件信託受益権譲渡により290億円の譲渡代金を受領する。 *2: X は、各建物賃貸借契約により年間26.7億円の賃料を支払う。 *3: X は、年間12百万円の管理委託料を受領する。 *4: X は、匿名組合事業の出資配当金を受領する。 ①の日付けは、いずれも平成14年8月23日。 ②の日付けは、平成19年9月20日。 点線の矢印は出資を表す。 (本図は、筆者が平成27年4月3日のMJS租税判例研究会報告時に作成したものに加筆等したものである。). 図 1 本件不動産流動化取引概要図. 法人税について,上記の指導に基づいてその会. 具体的には,X の本件事業年度の法人税の所得. 計処理を訂正したことに伴い,本件事業年度の. の金額を計算するに当たり,平成 14 年 8 月期. 確定申告書の提出(以下「本件確定申告」とい. にされた本件信託受益権の譲渡について,本件. う)により納付すべき税額が過大となったとし. 事業年度の確定申告後に,不動産流動化実務指. て,国税通則法(平成 23 年法律第 114 号 に よ. 針に従って金融取引処理に訂正した X の会計. る 改正前 の も の.以下「通則法」と い う)23. 処理が,法人税法上相当なものといえるか否か. 条 1 項 1 号に基づき, 更正をすべき旨の請求 (以. である.. 下「本件更正請求」という)をし,豊島税務署 長(原処分庁,以下,被告・被控訴人である国. 2 本件控訴審の判決要旨(請求棄却・確定). を「Y」という)は,更正をすべき理由がない. 控訴審は,本件信託受益権の譲渡を含む不動. 旨の通知処分(本件通知処分)をした.その後,. 産流動化取引に係る法人税法上の会計処理の在. 本件通知処分についての異議申立て及び審査請. り方について,以下のとおり判示して49),X の. 求を経て,平成 24 年 1 月 19 日,訴えを提起し. 請求を棄却した.. た.第一審は,Xの請求を棄却した. ⑵ 争点 本件の争点は, 本件通知処分の適法性であり,. . 49)訟月 60 巻 5 号 1089,1099─1103 頁(高裁判 決文第三)参照..
(14) 102 (246). 横浜国際社会科学研究 第 21 巻第 4・5 号(2017 年 1 月). (1) 法人税法第 22 条第 4 項 の 内容,立法経緯 及び趣旨. 観的な規範性を有する公正妥当と認められる会 計処理の基準を意味し,企業会計の実務の中に. ① 「法人税の課税標準である各事業年度の所. 慣習として発達したものの中から一般に公正妥. 得の金額の計算について,法人税法 22 条 4. 当と認められたところを要約したものとされる. 項は,…,益金の額の算定の基礎である収益. いわゆる企業会計原則をいうものではなく,同. の額並びに損金の額の算定の基礎である原. 項は,企業が会計処理において用いている基準. 価,費用及び損失の額は, 『一般に公正妥当. ないし慣行のうち,一般に公正妥当と認められ. と認められる会計処理の基準』 (税会計処理. ないもののみを税法で認めないこととし,原則. 基準)50)に従って計算されるものとする旨を. としては,企業の会計処理を認めるという基本. 定めている」 .. 方針を示したものである」.. ② 「法人税法 22 条 4 項の定めは,税法といわ. ⑶ 税会計処理基準と企業会計上の公正会計基準. ゆる企業会計原則との調整に関する議論を経. 上記のような, 「同項の立法の経緯及び趣旨. て,政府税制調査会が,昭和 41 年 9 月, 『税. のほか,同項が,『企業会計の基準』等の文言. 制簡素化についての中間報告』において,課. を用いず,『一般に公正妥当と認められる会計. 税所得は,本来,税法・通達という一連の別. 処理の基準』と規定していることにも照らせば,. 個の体系のみによって構成されるものではな. 同項は,同法における所得の金額の計算に係. く,税法以前の概念や原理を前提とするもの. る規定及び制度を簡素なものとすることを旨. であるが,絶えず流動する社会経済の現象を. として設けられた規定であり,現に法人のし. 反映する課税所得については,税法において. た収益等の額の計算が,適正な課税及び納税. 完結的にこれを規定するよりも適切に運用さ. 義務 の 履行 の 確保 を 目的(同法 1 条参照)と. れている会計慣行に委ねることの方がより適. する同法の公平な所得計算という要請に反す. 当と思われる部分が多く,このような観点を. るものでない限り,法人税の課税標準である. 明らかにするため,税法において,課税所得. 所得の金額の計算上もこれを是認するのが相. は納税者たる企業が継続して適用する健全な. 当であるとの見地から定められたものと解さ. 会計慣行によって計算する旨の基本規定を設. れ(最高裁平成 5 年判決参照),法人 が 収益等. けるとともに,税法においては,企業会計に. の額の計算に当たって採った会計処理の基準. 関する計算原理規定は除外して,必要最小限. がそこにいう『一般に公正妥当と認められる. 度の税法独自の計算原理を規定することが適. 会計処理 の 基準』(税会計処理基準)に 該当 す. 当である旨の『税制簡素化についての中間報. るといえるか否かについては,これを不動産. 告』を発表し,次いで,同年 12 月,これと. を信託財産とする信託契約に基づく受益権を. 同旨の『税制簡素化についての第一次答申』. 有償で譲渡した場合についていうならば,同. を発表したことを受け,昭和 42 年度の税制. 条 2 項が,別段の定めがあるものを除き,有. 改正において新設されたもの」である.. 償による資産の譲渡により収益が生じる旨規. ⑵ 税会計処理基準の定義. 定しており,一般に不動産を信託財産とする. 上記 ⑴ に い う, 「税会計処理基準 と は,客. 信託契約に基づく受益権を有償で譲渡した場 合には有償による資産の譲渡にあたり,これ. . 50)本件判決において,裁判所は,法人税法第 22 条第 4 項 の 公正処理基準 を「税会計処理基準」, 企業会計上 の 基準 を「公正会計基準」と 呼称 し て いる.. により収益が生じたというべきであることを も踏まえて判断すべきであって,企業会計上 の公正会計基準として有力なものであっても, 当然 に 同条第 4 項 に い う『一般 に 公正妥当 と.
(15) 法人税法第 22 条第 4 項と不動産流動化実務指針(安田). (247) 103. 認められる会計処理の基準』に該当するもの. 係る受益権が契約により法的に譲渡され,当該. ではないと解するのが相当である」.. 契約に定められた対価を現に収入として得た場. (4)本件不動産流動化実務指針 は 税会計処理 基準に該当するか. 合において,…,他の法人との関係をも考慮し, リスク・経済価値アプローチにより,当該譲渡. そ し て,本件 に お け る 不動産流動化実務指. を有償による信託に係る受益権の譲渡とは認識. 針が税会計処理基準に該当するか否かについ. せず,専ら譲渡人について,当該譲渡に係る収. ては,「法人税法は,適正な課税及び納税義務. 益の実現があったものとしない取扱いを定めた. の履行を確保することを目的とし,資産又は. 同指針は,上記目的を有する同法の公平な所得. 事業から生ずる収益に係る法律関係を基礎に,. 計算という要請とは別の観点に立って定められ. それが実質的には他の法人等がその収益とし. たものとして,税会計処理基準に該当するもの. て享受するものであると認められる場合を除. 51) とはいえない」 と判示し,不動産流動化取引. き,基本的 に 収入 の 原因 と なった 法律関係 に. に係る収益認識について,リスク・経済価値ア. 従って,各事業年度 の 収益 と し て 実現 し た 金. プローチを採用する不動産流動化実務指針の法. 額を当該事業年度の益金の額に算入するなど. 人税法第 22 条第 4 項の基準該当性を否定した. し,当該事業年度 の 所得 の 金額 を 計算 す べ き. ものであり52),「税会計処理基準」という概念. ものとしていると解されるのであるから,当. を用いた初めての判決である53).. 該事業年度の収益等の額の計算に当たり,本. ただし,本件判決は,最高裁判決ではないた. 件におけるように,信託に係る受益権が契約. め下級審拘束性はない.しかしながら,会社が. により法的に譲渡され,当該契約に定められ. 採用する会計処理が,法人税法第 22 条第 4 項に. た対価を現に収入として得た場合において,. 規定する「公正妥当な会計処理の基準」に該当. それが実質的には他の法人等がその収益とし. するか否かについて,企業会計を尊重しつつも. て享受するものであると認められる場合では. 租税法の観点からの見直しの必要性を示唆する.. なくても,また,同法において他の法人との. なお,法人税法上の収益の認識時期について. 関係を考慮することができると定められたと. の実現主義ないし権利確定主義について,本件. きにも当たらないにもかかわらず,他の法人. 判決が参照し,納税者が主張の根拠とする最一. との関係をも考慮し,リスク・経済価値アプ. 小判平成 5 年 11 月 25 日54)については,本稿Ⅲ. ローチにより,当該譲渡を有償による信託に. の 1 に前述した.. 係る受益権の譲渡とは認識せず,専ら譲渡人. ⑵ 本件判決における収益計上基準に係る判断. について,当該譲渡に係る収益の実現があっ. 枠組み. たものとしない取扱いを定めた同指針は,上 記目的を有する同法の公平な所得計算という 要請とは別の観点に立って定められたものと して,税会計処理基準に該当するものとはい えないといわざるを得ない」. 控訴審は,以上のように判示して原判決を維 持し,納税者の請求を棄却した. 3 本件判決の検討 ⑴ 本件判決の意義 本件判決は, 「本件におけるように,信託に. . 51)訟月 60 巻 5 号 1089,1102─1103 頁(判決文 第三 2 ⑵) . 52)ちなみに,Xが金融庁からの課徴金納付命 令を受けたことをめぐって株主代表訴訟が提起さ れたが,役員らの勝訴判決が下されている (第一審: 東京地判平成 25 年 12 月 26 日 LEX/DB25516604, 控 訴 審: 東 京 高 判 平 成 26 年 4 月 24 日 LEX/ DB25504493,請求棄却・確定) . 53)同旨 と し て,岡村忠生「法人税法 22 条 4 項 と『税会計処理基準』 」税研 178 号(日本税務研 究センター,2014 年 11 月)143 頁参照. 54)前掲注 ⑴ 参照..
関連したドキュメント
■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 31年2月)』(P95~96)を参照する こと。
■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 27年2月)』(P90~91)を参照する こと。
何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求人は,請求人
■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 30年2月)』(P93~94)を参照する こと。
第16回(2月17日 横浜)
「社会福祉法の一部改正」の中身を確認し、H29年度の法施行に向けた準備の一環として新
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