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インテグレーションを経験した聴覚障害者の障害受容ライフストーリーの観点から

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Academic year: 2021

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(1)インテグレーションを経験した聴覚障害者の障害受容.     一ライフストーリーの観点から一              特別支援教育学専攻                心身障害コース.                  M10097K                   川口知佳 心理的な負担や困難さを増幅している、と述べて. I.問題と目的  山口(2003)は、聴覚障害は外から見えないと. いる。聴者と類似したコミュニケーションを用い. いう点に特徴がある、と述べている。また滝沢. ていても、見えにくい困難さを抱えていることは、. (1995)は、聴覚障害者は外見から判断できず、. 障害の受容を困難にする可能性をもつだろう。. ひとりで悩んで傷ついだり、家族や友人から誤解.  本研究では、調査の手法として、ライフストー. され、人間関係の気まずさから悲哀を感じること. リーの視点を導入する。語られたライフストーリ. がある、と述べている。聴覚障害の多くは難聴者. ーをより詳細に分析することにより、障害受容の. であり(岩淵、1991)、難聴者独自の悩みとして. 変化の契機をより具体的に明らかにすることが. 「立場の曖昧さ」が障害受容の困難さを招きやす. 出来ると考えられる。. くしている(滝沢、1995)。.  以上により、本研究では、聾学校の経験のない.  近年、インテグレーションする聴覚障害児童・. 先天性の聴覚障害者で、通常学校にインテグレー. 生徒が増えている(美濃・鳥越、2007)。聴覚障. ションをした聴覚障害者を対象とし、インタビュ. 害者へのアンケート調査(濱田・間根山、2007). ー調査をする。様々な悩みや葛藤等から、障害受. によると、自身の障害のことでとても悩んだこと. 容がどのように変化しているのかを考察してい. があると答えた人が全体の73.5%あり、その多く. きたい。. は小中学生時代が占めていた。また、悩んだ事柄. 1I.方法. としては、コミュニケーションに関することが多. 1.調査対象者:先天性の聴覚障害’をもち、聾学. く、また友人関係や障害受容の悩みも挙げられて. 校(幼稚部を除く)の就学経験がなく、通常学校. いた。藤巴(2002)は、障害受容において、他者. にインテグレーションをしていた聴覚障害者. との消極的な関わりから積極的な関わり、また自. A,B,C,Dの4名(女性3名、男性1名). 己否定的から自己肯定的へと変化していった契. 2.調査期間:2011年5月∼9月. 機として、「同障者との出会い」「理解ある健聴者. 3.調査手続き:まず、対象者に自己プロフィー. との出会い」が重要になってくると述べている。. ル(教育歴、家族構成など)を記入してもらい、. このような悩みはアンケート調査において明ら. それを基に、半構造化面接を行った。面接の内容. かにされているが、具体的に障害受容においてど. はビデオで録画、書面でのインタビューをした。. のような変化があったのか、そのような論文は見. 4.分析方法:面接によって得たデータを文字起. られない。. こしし、オープンコード法(犬木、2007)を用い.  さらに、Leigh&Stinson(1991)は、インテ. てコードをつけ、それらを基にカテゴリーに分け. グレーションを経験した聴覚障害者の多くは、手. た。またカテゴリー内で時系列に生成されたコー. 話のような手段でなく、周りの聴者と同じ音声言. ドを並べ、障害受容の変化がどのように起きたの. 語を主要なコミュニケーション手段として用い. か質的に分析した。. ており、そのことがかえって淋しさや孤独感など、. 皿.結果と考察. 一186一.

(2)  Aは45のコードが見られ、それらを分類した. め、健聴者との関わりに消極的になったのではな. ところ「対人関係の変化」「コミュニケーション. いかと考えられる。また仕事を辞めた原因につい. の変化」r聴覚障害への向き合い」r授業における. て、同障者はいたが自分とは違うと感じ、また同. サポート」「親の理解と感謝」「仕事における考え」. 性がいない、悩みを相談出来る相手がいないこと. の6つに分けることが出来た。. が大きく影響していると考えられる。難聴学級経.  対人関係とコミュニケ』ションに変化があっ. 験が強く影響しており、同年代の同障者との関わ. たのは、同障者の出会いが大きく関係している。. りに安心感があるため、同じ仕事場に同性がいる. 高校までは本当の自分が出せず、気持ちも抑えて. こと、同年代がいること、理解ある健聴者がいる. いたが、同障者とはr共感」出来る、本当の自分. こと、の3つがあれば、仕事を辞めなかったので. が出せるという面において、心理的に大きな安心. はないか。. 感を得ることが出来ている。また、聴覚障害と向.  Dは76のコードが見られ、それらを分類した. き合うきっかけとして、「挫折感」を経験したこ. ところr対人関係の変化」rコミュニケーション. とにより、改めて自分の障害に気付いたり、見つ. の変化」「聴覚障害への向き合い」「周りの理解」. め直したりしている。そこから聴覚障害に対して、. r学校生活についてl r音楽への向き合い」の6. きちんと向き合い解決していこうとする傾向で. つに分けることが出来た。. あると考えられる。.  健聴者と同様にいることでr当たり前」r日常.  Bは62のコードが見られ、それらを分類した. 的」と言っていたが、健聴者とのコミュニケーシ. ところ「対人関係の変化」「コミュニケーション. ョンに悩みを抱えていた。また難聴児との関わり. の変化」r聴覚障害への向き合い」r授業における. をきっかけに手話に興味を持ち、聴覚障害を持つ. サポート」「周りの理解」「仕事における考え」「学. 人との関わりが増えたが、健聴者との関わりが減. 校生活について」の7つに分けることが出来た。. っていることから、同障者といることへの安心感.  同障者との関わりも少なく、手話への興味もあ. があるのではないか。. まりないことで、健聴者寄りの立場が強く見られ. 1V.総合考察と今後の課題. る。健聴者との悩みはコミュニケーションに関し.  本研究で明らかになったこととして、周りの人. て多く、小中学生時代はr諦め」が多かったが、. の理解の有無がインテグレーションをする聴覚. 現在はr分かってもらおう」とする気持ちに変化. 障害児童・生徒の心理面に影響を与えていること. があり、それがコミュニケーション方法を変えて. である。インテグレーションすることは、健聴者. いることに繋がっていると考えられる。また現在. の世界の中に入り、戸惑いや葛藤を感じやすい。. も健聴者との関わりが中心となっている理由と. 戸惑いや葛藤などの心理的不安要素を軽減させ. して、今でも関わりがある理解ある健聴者の友人. るものとして、教師や友人など周りの人の理解が. が支えになっているのではないかと考えられる。. 影響している。本研究からは自己受容と社会受容.  Cは52のコードが見られ、それらを分類した. の2つが見られ、これらの2つは互いに影響し合. ところ「対人関係の変化」「コミュニケーション. いながら、インテグレーションを経験した聴覚障. の変化」r聴覚障害への向き合い」r授業における. 害者の心理面を支えていたと考えられる。. サポート」「学校生活について」r仕事における考.  今後の課題として、男性と女性の障害受容にど. え」の6つに分けることが出来た。. のような違いがあるのか、また対象者がろう学校.  小中学校時代は友人と上手くいかない時や授. も経験していた場合、違った障害受容についても. 業での悩みに対して難聴学級のサポートがあっ. 検証する必要があると思われる。. たが、高校時代はそれが全くない状況であったた.      主任指導教員  鳥越 隆士. 指導教員 鳥越隆士 ■187一.

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