は じ め に 多くの大学同様に,本学においても学生の身体計測, 体力測定, 運動能力テストが実施され報告されてき た1)–3) 。本学においてはカリキュラムの変更,運動施設 の縮小等により一時中断の時期が続いた。2004 年度(平 成 16 年度)に「健康とスポーツ」関連科目履修学生対 象にし「本学学生の身体的特徴および体力レベルの把 握」を目的に文部科学省「新・体力テスト」が実施され 本学学生の身体的特徴,運動能力等の報告がなされてい る。同時期に生活習慣関連調査も行われている4) 。体 育・スポーツ実技を担当する者にとって,対象となる学 生の身体的特徴,体力レベルを把握することは大変重要 である。さらに,学生にとって自己の身体的特徴,体力 レベル,運動能力レベルを客観的に知ることは,学生自 身の健康や体力の維持・増進を図るためにも意義深いこ とである。 本報の目的は,2004 年度前期「健康とスポーツ」関連 科目履修学生と本年度(2006 年)前期履修学生の身体 的特徴及び体力レベルを比較・検討するものである。ま た日常生活調査についても可能な限り比較するものであ る。 方 法 2006年度の本学前期「健康とスポーツ」関連科目を履 修した学生 119 名を対象とした。比較対照となる 2004 年 度の履修学生は全 101 名であった。測定は授業開始 2 週 から 3 週を利用して,身体計測,体力テストを実施した。 調 査 内 容 は 身 体 計 測 の 項 目 と し て 身 長 , 体 重 , BMI
(body mass index),体脂肪率であり,体脂肪率の測定は 自動体脂肪率測定器(タニタ TBF305)を使用した。体
本学学生の体力と生活習慣
—2006 年度と 2004 年度を比較して—
千 葉 義 信 * ・秋 田 昌 彦 * ・渡 邊 文 雄 * ・茂 泉 圭 治 *
伊 藤 耕 作 * ・芦 原 正 紀 ** ・栗 原 英 昭 ***
Physical Fitness Tests and Habitual Daily Life of Students in Shonan Institute of Technology
—Data in 2004 compared with that in 2006—
Yoshinobu CHIBA*, Masahiko AKITA*, Fumio WATANABE*, Keiji MOIZUMI*, Kosaku ITO*,
Masanori ASHIHARA** and Hideaki KURIHARA***
The purpose of this study was to examine the differences between the physical fitness of students in 2004 and that in 2006. The subjects were 101 college students (Age: 19.01.24) in 2004 and 119 college students (Age: 18.91.33) in 2006. The measurement items were height, body weight, body fat, body mass index, grip strength, sit up, forward bent, side step, standing long jump and 20 m shuttle run. In addition, the questionnaire of habitual daily life was carried out as well.
Results were as follows:
1) The students in the 2006 were significantly heavier in the body weight than those in the 2004.
2) The students in the 2006 were significantly upper in the grip strength, sit up, side step, standing jump and 20 m shuttle run than those in the 2004. There were no significantly differences in the forward bent between the students in the 2004 and those in the 2006.
3) About twenty percent students of the subjects said they were not have to take breakfast everyday.
Vol. 41, No. 1, 2007
*総合文化教育センター非常勤講師
** 総合文化教育センター助教授
***総合文化教育センター教授
力テスト項目は,文部科学省スポーツ・青年局規定の 「新・体力テスト実施要項」(表 1)に沿って筋力測定と して「握力」,筋持久力測定として「上体起こし」,柔軟 性測定として「長座体前屈」,瞬発力測定として「立ち 幅跳び」,敏捷性測定として「反復横跳び」,全身持久力 測定として「 20 m シャトルラン」 を行った。 さらに 「新・体力テスト実施要項」付随の日常生活調査(表 2) を同学生対象に質問紙により同時に実施した。平均値の 統計的有意差検定には,平均値の差の検定(対応のない t-test)を用いた。 結果および考察 I. 身体計測,体力測定 身体的特徴を表 3 に示す。参考として全国平均値を同 時に記載した5) 。2004 年度前期履修学生(以下 04 年 度)の平均年齢は 19.01.23 歳,身長 169.76.69 cm,体 重 62.211.03 kg,体脂肪 19.56.23%,BMI 21.63.17 で あり 2006 年度前期履修学生(以下 06 年度)の平均年 齢 は 18.91.33 歳 , 身 長 170.85.75 cm, 体 脂 肪 率 19.56.81%,BMI 22.54.16 であった。身体的特徴を 04 年度と 06 年度で比較すると,体重で 06 年度が 04 年度 よりも有意に大きな値を示し,その他の項目では両者の 表 1 新・体力テスト実施要項 テスト項目 体力項目 握力 筋力 上体起こし 筋持久力 長座体前屈 柔軟性 反復横跳び 敏捷性 20 mシャトルラン 全身持久力 立ち幅跳び 瞬発力 表 2 日常生活調査 1. 健康状態について 1) 大いに健康 2) まあ健康 3) あまり健康でない 2. 体力について 1) 自信がある 2) 普通である 3) 不安がある 3. スポーツクラブへの所属状況 1) 所属している 2) 所属していない 4. 運動・スポーツの実施状況 1) ほとんど毎日(週 34 日以上) 2) ときどき(週 12 日程度) 3) ときたま(月 13 日程度) 4) しない 5. 1日の運動・スポーツ実施時間 1) 30分未満 2) 30分1 時間 3) 12 時間 4) 2時間以上 6. 朝食の有無 1) 毎日食べる 2) 時々欠かす 3) まったく食べない 7. 1日の睡眠時間 1) 6時間未満 2) 6時間以上 8 時間未満 3) 8時間以上 8. 学校時代の運動部(クラブ)活動の経験 1) 中学校のみ 2) 高校のみ 3) 大学のみ 4) 中学校・高校 5) 高校・大学 6 6) 中学・大学 7) 中学校・高校・大学 8) 経験なし 表 3 身体的特徴
N sex age Height (cm) Weight (kg) Body fat (%) BMI
06 year 119 Male 18.9 170.8 65.7 19.5 22.5
SD — — 1.33
]
N.S 5.75]
N.S 12.16]
* 6.81]
N.S 4.16]
N.S04 year 101 Male 19.0 169.7 62.2 19.5 21.6
SD — — 1.23 6.69 11.03 6.23 3.17
national average — Male 19.0 171.7 63.2 — —
SD — — — 5.49 8.37 — —
間に有意差は認められなかった。 体力測定の結果を表 4 に示す。参考として全国平均値 を 同 時 に 記 載 し た5 )。 0 4 年 度 の 平 均 は , 握 力 40.477.27 kg,上体起こし 24.814.49 回,長座体前屈 39.978.85 cm,反復横跳び 46.316.90 回,立ち幅跳び 200.9521.73 cm,20 m シャトルラン 58.9717.90 回であ り,「全国平均と比較して本学学生の値は著しく低いも のであった4) 」 と報告された。 06 年度の平均は握力 42.517.19 kg,上体起こし 26.76.06 回,長座体前屈 40.969.03 cm,反復横跳び 49.776.93 回,立ち幅跳び 221.8525.53 cm,20 m シャトルラン 66.5119.68 回で あった。06 年度の測定値が 04 年度の測定値を全種目で 上回り,握力,上体起こし,反復横跳び,立ち幅跳び, 20 mシャトルランの測定種目において両者の間に有意差 が認められた。長座体前屈では両者の間に有意差は認め られなかった。図 1 は実施要項に従い測定値を得点に換 算(資料 1 :項目別得点表)して示した。今回は,文部 科学省スポーツ・青年局規定の「新・体力テスト実施要 項」に従い筋力,筋持久力,柔軟性,敏捷性,瞬発力, 全身持久力において 06 年度と 04 年度の比較に努めた。 総合判定結果を実施要項に従い AE の 5 段階に換算 (資料 2 :総合評価基準表)して図 2 に示した。04 年度 のヒストグラムは右に大きくシフトしていたが,06 年度 のヒストグラムは 04 年度に比べて中央付近に集中しつ つある。すなわち 06 年度「健康とスポーツ」関係科目 履修者が 04 年度のそれを上回ったことを意味する。 測定結果を実施要項(資料 3 :体力年齢判定基準表) に照らし合わせ,本学学生の体力年齢を換算すると 04 年度が「4549 才」だったのに対し,06 年度は「4044 才」であった。体力年齢レベルが実年齢レベルにより近 づいた。今後はさらに体育・スポーツ活動の充実を図り, 本学学生の体力年齢レベルが,実年齢レベルにより近づ くよう取り組んでいくことが重要であると考えられる。 06年度の体力測定結果が全ての項目で 04 年度を上回っ たが,二ヵ年の比較では,単純に本学学生の体力レベル が向上したとは断定できない。今後,更なる継続的な調 査が必要である。仮に 06 年度の体力測定結果が本学の 体力状況を反映するものとしても,全ての測定項目で全 表 4 新・体力テスト結果
Grip strength Sit up Forward bent Side step Standing jump 20 m Shuttle run
(kg) (times) (cm) (times) (cm) (times)
06year 42.5 26.7 41.0 49.8 221.9 66.5 SD 7.19
]
** 6.06]
** 9.03]
N.S. 6.93]
** 25.53]
** 19.68]
** 04year 39.7 24.4 39.8 46.0 198.1 57.0 SD 7.99 5.10 9.04 6.94 24.96 19.60 national average 44.6 29.8 49.3 55.5 231.4 81.9 SD 6.44 5.68 9.90 6.61 21.13 22.65 ** p0.01 N.S: not significant 図 1 新・体力テスト項目別得点 図 2 新・体力テスト総合判定国平均を下回り本学学生にとってはより一層の体育・ス ポーツ活動が求められることとなる。 II. 日常生活調査 身体計測,体力テストと同時に「新・体力テスト実施 要項」付随の日常生活調査を同学生に質問紙により実施 した。設問 1「健康状態について」に関しては,大いに 健 康 (35.3%), ま あ 健 康 (52.9%), あ ま り 健 康 で な い (11.8%),設問 2「体力について」に関しては,自信があ る (7.6%),普通である (49.6%),不安がある (42.9%)で あった。04 年度の日常生活調査は本学が独自に作成した 物であり,上記 2 設問に関しては比較する項目が見出せ なかった。運動部・クラブ活動所属状況に関しては,04 年度が所属している (16%),所属していない (84%) に対 して,06 年度は所属している (14.3%),所属していない (85.7%) であり運動部・クラブ活動所属率が低下してい る。平素の運動状況を調べたところ,04 年度では調査学 生の約 80% が「週 12 日」又は「全くしていない」と の報告がなされた。06 年度は「ときどき(週 12 日程 度)」「ときたま(月 13 日程度)」「しない」の合計が 全体の約 90% を占めた。運動部・クラブ活動への所属 率の低下,平素の運動習慣の減少が明らかとなった。こ のことは,ほとんど毎日運動をする「積極的運動派」と ほとんど運動を実施しない「非積極的運動派」の二極化 が進んだものとも考えられる。さらなる調査が必要であ る。1 日の運動・スポーツ実施時間に関しては,30 分未 満 (57.1%) が 最 も 多 く 以 下 , 30 分60 分 (21.8%),60 分120 分 (10.9%),120 分以上 (10.1%) の順であった。 食事に関しては,04 年度では,朝食・昼食・夕食の摂 取状況についての調査報告がなされ, 朝食について 「時々欠かす(週 34 日)」から「全く食べない」学生 が約半数の 48% との報告がなされた。06 年度に関して は,毎日食べる (44.5%),時々欠かす (35.3%),食べない (20.2%) であった(図 3)。06 年度も 04 年度同様に朝食を 欠かす学生が多いようである。睡眠時間に関して,04 年 度調査では,本学学生の平均睡眠時間は 5.8 時間1.09 時間との報告がなされた。06 年度に関しては,6 時間8 時間 (52.9%) が最も多く以下,6 時間未満 (42.9%),8 時 間以上 (4.2%) の順であった(図 4)。 運動部(クラブ)活動の経験に関してでは,「中学の み (40%)」が最も多く以下,「中学・高校 (30%)」,「中 学・高校・大学 (15%)」,「高校のみ (1%)」であり,「経 験なし」が 14% であった。この設問に関して,04 年度 と比較する項目を見出すことが出来なかった。健康の三 大要素である運動・栄養・休養について「運動」に関す る分野を中心に論じてきたが,それぞれの重要性を踏ま えこれらを「三位一体」として「健康とスポーツ関連科 目」の中で指導していくことが重要であると考える。 ま と め 本報は本学「健康とスポーツ」関連科目を履修した学 生の身体的特徴と体力レベル,日常における生活状況を 04年度前期履修学生(男子 101 名)と 06 年度前期履修 学生(男子 119 名)とを比較・検討するものである。結 果は以下である。 ・身体的特徴では 06 年度調査学生の体重が,04 年度の 調査学生の値を有意に上回り,年齢,体脂肪,BMI で は有意差は認められなかった。 ・体力測定では 06 年度調査学生の握力,上体起こし, 反復横跳び,立ち幅跳び,20 m シャトルランにおいて 04年度調査学生の値を有意に上回った。長座体前屈で は両者の間に有意差は認められなかった。 ・ 06 年度の調査学生は 04 年度調査学生と比較して運動 部・クラブ活動への所属状況が低く,運動・スポーツ の実施状況も低かった。 ・ 06 年度調査学生の 1 日の睡眠平均時間は 6 時間8 時 間が最も多く,朝食を抜く者が多かった。 図 3 朝食の摂取状況 図 4 1日の睡眠時間
引用・参考文献 1) 上野陽一,他:相模工業大学学生の体格及び体力 に つ い て , 相 模 工 業 大 学 紀 要 第 22 巻 第 1 号 , (1899),67–78, 2) 芦原正紀,他:相模工業大学学生の体格及び体力 について 第 2 報—運動能力別に見た本学と全国の 比較及び本学に於ける体力評価基準の作成について の 検 討 —, 相 模 工 業 大 学 紀 要 第 24 巻 第 1 号 , (1990),149–157. 3) 栗原英明,他:本学学生の体格及び体力について 第 3 報—最近 10 年間の推移—,相模工業大学紀要 第 26 巻 第 1 号,(1992),101–116. 4) 芦原正紀,他:本学学生の体力と生活習慣—新体 力テストとアンケート調査から—,湘南工科大学紀 要 第 39 巻 第 1 号,(2005),125–130, 5) 文部科学省スポーツ・青年局:平成 16 年度体力・ 運動能力調査報告書,(2007). 6) 文部科学省:新体力テスト 有意義な活用のため に,(200),ぎょうせい. 資料 1 項目別得点表(男子) 得点 握力 上体起こし 長座体前屈 反復横跳び 20 mシャトルラン 立ち幅跳び 得点 10 62 kg以上 33回以上 61 cm以上 60回以上 95回以上 260 cm以上 10 9 58–61 30–32 56–60 57–59 81–94 248–259 9 8 54–57 27–29 51–55 53–56 67–80 236–247 8 7 50–53 24–26 47–50 49–52 54–66 223–235 7 6 47–49 21–23 43–46 45–48 43–53 210–222 6 5 44–46 18–20 38–42 41–44 32–42 195–209 5 4 41–43 15–17 33–37 36–40 24–31 180–194 4 3 37–40 12–14 27–32 31–35 18–23 162–179 3 2 32–36 9–11 21–26 24–30 12–17 143–161 2 1 31 kg以下 8回以下 20 cm以下 23回以下 11回以下 142 cm以下 1 資料 2 総合評価基準表(男子) 段階 20歳24 歳 A 50以上 B 44–49 C 37–43 D 30–36 E 29以下 資料 3 体力年齢判定基準表(男子) 体力年齢 得点 体力年齢 得点 20–24歳 46以上 50–54歳 30–32 25–29歳 43–45 55–59歳 27–29 30–34歳 40–42 60–64歳 25–26 35–39歳 38–39 65–69歳 22–24 40–44歳 36–37 70–74歳 20–21 45–49歳 33–35 75–79歳 19以下