走り高跳びの学習指導に関する基礎的研究 : 踏切板(用具)の使用が跳躍高に及ぼす影響について
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(2) (彰跳躍フォームの分析 踏切板の使用効果のみられた児童について踏切フォー ムを分析した。. ④助走速度,踏切鉛直初速度,踏切効率 助走速度(Av)は,踏切1歩前振上脚の接地時から 踏切脚接地時までの大転子の移動距離とそれに要した時 間をVTRより計測・算出した。. 図1は,測定角度の定義を示したものである。 すなわち,股関節,膝関節,足関節の各関節角度,な. 踏切鉛直初速度Ov)は,踏切脚離地直後の2フレー ムにおける大転子の鉛直移動距離をビデオトレーサー. らびに踏切脚接地時から踏切脚離地時までの錘と大転子 を結ぶ線が鉛直線となす身体の後傾角(なお,本研究で は踏切脚接地時の後傾角を踏切入射角,離地時のそれを 跳び出し角と呼ぶ)について分析した。. (新大阪商会社製)を用いて計測し, 1/30秒で除して求 めた。 鉛直線. 表1.被験者(大学生)の身体特性と走り高跳びの記録 氏名. 身長. 垂 直銑ぴ. (c m ). (c m ). 藷 切 板 無 記 I 8 (c m ). 蹟 切 痕 有. H J. S. 記 録 (c m ). H. 差. J S. cm. ♂ T .A. 1 7 0 .0. 6 8 .0. 13 5 .3. 7 4 .0. 13 7 .0. 7 6 .4. 1 .7. ♂ 丁.∫. 1 65 .0. 8 5 .0. 1 4 3 .3. 7 1.5. 14 5 .3. 7 3 .9. 2 .0. ♂ Y l-. 1 6 0 .0. 5 3 .0. 1 3 5 .3. 10 4 .3. 1 3 4 .8. 1 0 3 .3. -0 .5. ♂ 丁,T. 1 74 .0. 6 5 .0. 1 4 0 .3. 8 2 .0. 1 5 1 .1. 9 8 .6. 1 0 .8. ♂ K .Y. 16 8 .0. 6 0 .0. 1 38 .3. 9 0 .5. 1 4 7 .1. 105.. 8 .8. ♀ M .0. 15 7 .0. 4 5 .0. 1 08 .6. 6 6 .9. 1 1 9 .8. 9 1 .7. l l .2. ♀ Y .K. 1 5 8 .0. 4 4 .0. 1 10 .6. 7 1 .8. 1 1 3 .9. 79 .2. 3 .3. ♀ T .S. 1 5 3 .0. 5 0 .0. 1 08 .6. 6 4 .2. 1 1 8 .3. 8 3 .7. 9 .7. ♀ A .T. 1 5 6 .0. 6 0 .0. 1 10 .6. 5 4 .3. 1 16 .3. 6 3 .8. 5 7. ♀ T .N. 1 5 7 .8. 4 7 .0. 1 10 .6. 6 7 .4. 1 15 .7. 7 8 .2. 5 .1. ♀ H .H. 162一. 5 0 .0. 1 18 .6. 7 5 .2. 12 2 一. 8 2 .9. 3 .9. ♀ A .ド. 157一. 5 1 .0. 1 1 0 .6. 6 2 .9. 1 17 .8. 7 7 .1. 7 .2. 平 均. 1 6 1 .5. 5 6 .5. 1 2 2 .6. 標準傭 差. (6 .4 ). (l l .9. 1 4 .4 ). 7 3 .8 (13 .4. 12 8 .3. 8 4 .5. 5 .7. (13 .8 ). 1 2 .7). (3 .8). 図1.分析角度の定義 表2.被験者(小学生)の身体特性と走り高跳びの記録 学 習 身長. 垂 直 jK ぴ. 踏 切 板 無 記 鍬 cm ). H. 前. 学 習. 搭 切 板 有 J S. 記 韻 {c m ). H. 」 J S. 搭 切 板 無. 後. 踏 切 板 有. s. 氏 名. (c m ). K .. 1 4 6 .0. 3 6 .0. 9 5 .0. 6 1 .1. 1 0 6 .0. 9 1 . … 1 1 .0. 9 5 .0. 6 1 .1. 1 0 1 .3. 78 .. 6 .3. Y .0. 1 6 3 .7. 3 8 .0. 1 1 4 .0. 8 4 .6. 1 2 7 .0. 1 1 8 .8 … 1 3 .0. 12 3 一 0. 1 0 8 .3. 1 3 3 .6. 1 36 .. 1 0 .6. M. .K. 1 5 2 .8. 3 0 .0. 1 0 6 .0. 9 8 .7. 1 1 2 .0. 11 8.. 1 1 8 .7. 1 1 9 .4. 14 3.. 7 .4. 1 5 5 .3. 4 4 .0. 1 1 2 .0. 7 8 .1. 1 2 3 .5. 6 .0 1 0 4 .2 … 1 1 .5. 1 1 2 .0. Y .K. 1 1 4 .0. 8 2 .6. 1 2 0 .9. 9 8.. 6 .9. 1 1 9 .5. (c m ). 紀 詩 < cm ). H J S. 記 録 cm ). H. J S. cm. S .K. 1 5 4 .1. 3 0 .0. 1 1 2 .0. 1 1 6 .5. 1 1 2 .9. 0 .9. 1 1 2 .0. 1 1 6 .5. 1 1 2 .4. 11 7.. 0 .4. A .S. 1 5 7 .5. 3 5 .0. 1 0 3 .0. 6 9 .3. 1 0 9 .0. 8 6. …. 6 .0. 1 0 9 .0. 8 6 .4. 1 1 6 .9. 1 0 9. …. 7 .9. K .N. 1 4 0 .3. 5 2 .0. 1 1 1 .0. 7 8 .6. 1 1 0 .5. 77 ▼ i. - 0 .5. 1 0 5 .0. 6 7 .0. 1 0 4 .5. Y .ド. 1 3 7 .2. 3 3 .0. 9 5 .0. 8 0 .0. 9 9 .3. 93 .. 4 .3. 9 5 .0. 8 0 .0. 1 0 3 .4. L F. 1 5 6 .7. 3 7 .0. 1 0 3 .0. 6 6 .6. 1 0 1 .8. 6 3.. - 1 .2. 1 0 0 .0. 5 8 .5. 1 0 3 .9. 6 9 .1 …. H .Y. 1 5 1 .1. 3 5 .0. 1 1 0 .0. 9 4 .0. 1 0 9 .0. 9 1.. - 1 .0. 1 0 9 .0. 9 5 .6. 1 1 4 .2. 1 10 . …. 5 .2. ♂ 平 均. 1 5 1 .5. 3 7 .0. 1 0 6 .1. 8 2 .7. 1 1 1 .1. 9 6 .5. 5 .0. 1 0 7 .4. 8 7 .5. 1 1 3 .1. 1 0 3 .4. 5 .7. 標 準 偏 差. (8 .1. (6 .7 ^. (1 6 .6. 8 .6 ). 105 .. 8 .4. i. 3 .9. (3 .5 ). 1 8 .8. (5 .4. (8 .8. (2 2 .0 ). 1 0 .2 ). (2 6 .2. .-. 1 5 5 .3. 4 0 .0. 1 1 1 .0. 8 3 .4. 1 1 4 .7. 9 2 .6. 3 .7. 1 1 4 .0. 9 0 .9. 1 1 9 .2. 1 0 3 .9. 5 .2. ド.-. 1 4 9 .9. 3 4 .0. 1 0 0 .0. 7 3 .7. 9 7 .4. 6 6 .0. -2 .6. 1 0 3 .0. 8 2 .5. 1 1 2 .8. 11 1.. 9 .8. Y .-. 1 3 6 .9. 3 1 .0. 8 5 .0. 5 3 .4. 8 7 .9. 6 2.. 2 .9. 9 5 .0. 8 5 .7. 9 8 .3. 9 6.. R .-. 1 4 8 .3. 3 2 .5. 1 0 0 .0. 7 9 .5. 1 0 3 .1. 89 .. 3 .1. 1 0 0 .0. 7 9 .5. 1 1 3 .6. M. (7 .0. 6 6 . … ー0 .5. 1 2 1 .4. 3 .3 1 3 .6. R .. 1 3 5 .7. 3 4 .0. 9 5 .0. 7 9 .9. 1 0 3 .8. 1 0 5 .7. 8 .8. 1 0 0 .0. 9 4 .6. 1 0 3 .9. 1 0 6 .0. 3 .9. K .K. 14 7 ▼. 3 0 .0. 9 0 .0. 5 4 .2. 9 5 .2. 7 1 .5. 5 .2. 9 5 .0. 7 0 .8. 1 0 3 .8. 1 0 0 .2. 8 .8. M. .K. 1 4 1 .9. 3 5 .5. 9 0 .0. 5 3 .7. 9 4 .3. 6 5 .8. 4 .3. 9 5 .0. 6 7 .8. 9 5 .2. M. .K. 1 5 4 .7. 4 5 .0. 1 0 3 .0. 5 7 .0. 1 1 0 .4. 7 3 .4. 7 .4. 1 0 9 .0. 7 0 .3. 1 1 3 .9. 8 1 .2. 4 .9. T .T. 1 4 8 .3. 4 1 .0. 1 06 ー 0. 7 7 .7. 1 0 2 .3. 6 8 .7. - 3 .7. 1 1 1 .0. 8 9 .9. 1 1 4 .0. 9 7 .2. 3 .0. 丁 .T. 1 5 0 .4. 3 9 .0. 1 0 9 .0. 8 6 .7. 1 1 4 .8. 1 0 1 .5. 5 .8. 1 1 4 .0. 9 9 .5. 1 1 1 .7. 9 3 .6. ー2 .3. E .H. 1 5 1 .9. 3 6 .0. 1 0 0 .0. 6 6 .8. 1 0 0 .0. 6 6 .8. 0 .0. 1 0 0 .0. 6 6 .8. 1 0 9 .4. 9 2 .9. 9 .4. K .M. 1 5 0 .3. 3 0 .0. 9 5 .0. 6 6 .2. 1 1 3 .3. 1 2 7 .2. 1 8 .3. 1 0 6 .0. 1 0 2 .8. 1 1 0 .4. 1 1 7 .5. 4 .4. S .Y. 1 4 8 .0. 4 3 .0. 1 0 5 .0. 7 2 .1. 1 0 4 .7. 7 1 .4. -0 .3. 1 1 2 .0. 8 8 .4. 1 2 0 .3. 1 0 7 .7. 8 .3. ♀平 均. 1 4 7 .6. 6 9 .6. 1 0 3 .2. 1 0 9 .7. 標 準 偏 差. 6 .0 ). 全 体 平 均. 1 4 9 .3. 標 準 偏 差. 7 .1 ). 3 6 .2. 9 9 .2. (5 .0 ). (7 .8 ). 3 6 .6 (5 .6. (l l .9. (8 .4 ). 1 0 2 .0. 7 5 .3. 1 0 6 .7. 8 .1 ). (1 5 .3 ). (9 .2 ). 8 1 .7 (1 9 .9 8 8 .1 (2 0 .4. -62-. 4 .1. 1 0 4 .2. 8 3 .8. (5 .7. (7 .3. 1 2 .1 ). 4 .5. 1 0 5 .6. (5 .5. (8 .0 ). 8 5 .4 (1 6 .8 ). 7 .5 ) 1 1 1 .2 8 .7 ). 6 8.. 0 .2. 9 9 .8. 5 .6. (1 4 一 4. (4 .3. 1 0 1 .4. 5 .6. (1 9 .9. (3 .9.
(3) 踏切効率E) 101は,踏切鉛直初速度Jv)を助克 速度(Av)で除して算出した。. また,学習前においては踏切板の使用によって,むし ろ記録を低下させた6名の児童においても1名を除き向 上が認められた。さらに5cm以上記録を向上させた児 童は,学習前の10人から14人に増加がみられた。. 2.踏切板の使用が筋作用機序に及ぼす影響(実験2) (1 )被験者 大学陸上競技部に所属する走り高跳び選手1名と, 6 年生児童2名(いずれも男子)について,上記と同様の 2条件で,走り高跳びを行わせ筋電図を記録した。 また,児童については, 6日間(30分/日)の練習後 にも筋電図を記録した。 (2)筋電図の記緑 筋電図は,直径5mmの皿状円盤電極を使用し双極皮膚 表面誘導法により, 18極多用途脳波計(三栄測器社製, 1A-59型,感度:6mm/0.5mV,時定数: 0.003s,紙送り 速度'. 6cm/s)を用いて記録した。 被験筋は,これまでに行われた跳躍動作の筋電図的研 究2'川を参考に,踏切脚側の12筋(前腔骨筋,排腹筋, 内側広筋,大腿直筋,大腿二頭筋,大殿筋,長内転筋, 中殿筋,外腹斜筋,仙棟筋,三角筋前部・同後部)と振 上脚側の3筋(外腹斜筋,三角筋前部・同後部)を選択 した。 なお,フォームの撮影方法は実験1と同様で,ビデオ のフレームシグナルを筋電図と同時記録した。. これらのことから,踏切板の使用効果には,筋の構成 等の加齢による発達レベルの影響は考え難く,踏切板に 対する慣れや走り高跳びの経験・技術レベル等が影響し ていると考えられた。 また,学習による記録の伸びを,踏切板を用いない条 件で評価すると3.4±4.lcirであるのに対し,踏切板を使 用した条件では4.5±6.1cmを示した。すなわち,踏切板 を使用した場合の方が学習効果を自覚させ易いことが認 められた。 表3は,踏切板を使用した場合と用いない条件での HJS指数の分布状況を学習前・後について示したもので ある。 学習前のHJS指数の学級平均値は75.3±15.3点で,技 能的特性に触れていると考えられる80点以上l'を示す児. 跳躍嵩の差. Ⅱ.結果ならびに考察 1.踏切板の使用効果 用踏切板を使用した場合の跳躍高の増大について 図2は,踏切板の使用効果を示したものである。 児童,成人のいずれも,平均値でみると踏切板を使用 した方が用いない場合よりも高く跳べる傾向がみられた。 すなわち,走り高跳び学習前の児童においては,学級平 均で4.5±5.3cm記録が向上した。男子の向上は5.0±5.4 cm,女子のそれは4.1±5.7cmで,平均値でみる限り男子. 女子後 男子習. ・ ' . . . 4 t 耶. 児. 女子前 男子習. v l i , 巌. 低下したものは12名中1名で僅少であった(表1)。 (2)学習による影響. 児. 上の向上を示したが,踏切板の使用によって記録の低下 したものが23名中6名(26%),殆ど変化しなかったも のが2名認められた(表2)。しかし,成人では記録の. 大学生. の方が効果は大きかったが,統計的な性差は認められな かった。 また,成人の効果は5.7±2.4cmで,児童よりも大きかっ たが有意な年齢差はみられなかった。 なお,個人的にみると,児童においては4名が10cm以. 図2.踏切板を用いない場合と 使用した場合の跳躍高の差 表3. HJS指数の分布 H. J S. 指 数. 学 堵 切 石 無 (% ). 7時間の学習後では,踏切板を用いない場合よりも使 用によって5.6士3.8cm男子:5.7±3.5cm,女子:5.6 ±4.3cm)高く跳べるようになり,成人と同値を示すよ うになった。すなわち,踏切板の使用効果は学習によっ て大きくなることが認められた。. -63-. 1 00  ̄. 習. 前. 学. 藷 切 坂 有 (叫. 習. 後. 茂 切 痕 無 (% } 揖 切 板 有 (% ). 4 .3. 3 0.4. 17 .4. 5 6.5. 8 0  ̄1 0 0. 2 6.1. 26 .1. 47 .8. 2 6.1. 6 0  ̄ 80. 5 2.2. 43 .5. 30 .4. 1 7.4. 1 7.4. 0 .0. 4 .3. 0 .0. 7 5 .3 ± 15 .3. 88 .1 ±2 0.4. 85 .4 ±16 .8. 1 01 .4 :ヒ19 .9. 60 平均 効果 無. 7/ 23. (X ). 3 0.4(% ). + 5 c m 以上. 10 ′ 23. (人). 4 3.5(% 】. 2′ 23. (人 ). 8.7 1% ). 14 ′ 23. (人). 6 0.9(% ].
(4) 学習によって踏切板使用の効果が減少するのに対し,効. 童の割合は30.4%であった。しかし,踏切板を使用する とHJS指数はi.1±20.4点を示し, 80点以上の児童の割. 果の小さかった群(BEM, BES)では,増加する傾向の あることが認められた。 これら3群の学習前における踏切板を用いない条件で. 合は56.5%に増加した。 さらに,学習後では,踏切板を使用すると81.6%の児 童が80点以上を示し100点以上のものも56.5%認めら n^-.. のHJ S指数の平均値は, BEL群: 71.2±10.2点, BEM 群:73.2±16.5点, BES群:80.8±16.9点を示した。す なわち,平均値でみる限り,効果の少ない群でむしろ走. これらのことから,踏切位置に踏切板を用いることは, 子どもに走り高跳びの技能的特性に触れさせる工夫の一. り高跳びの技術レベルは高いと判定された。 総体的な技術指標としてのHJS指数には,クリアラン. つとして意味あると考えられる。 また,児童は「高いバーをうまく跳び越せたとき」. ス技術が含まれている。そこで,クリアランス技術の関. 「身体がフワッと高く浮いたとき」 「記録の伸びを感じ たとき」に走り高跳びの妙味を感じる3}ことから,踏切 板は,これらの3大妙味を昧合わせるのに有効な教具で あると言える。. s j 0 o 0. 紛直初速度の差. 躍高の差の学級平均値±1/2SDを基準に3群(以下, 差の大きい方からBEL, BEM, BES群と呼ぶ)に分け, 学習による踏切板の使用効果の変化を示したものである。 学習前では, BEL群: ll.7±3.8cm, BEM群:4.6±1.. e 0. なお,児童の踏切板を用いた場合の意見や感想の代表 例を付表に示した。 (3)技術レベルによる影響について 図3は,踏切栃を使用した場合と用いない条件での跳. 2cm, BES群:-l.i±1.5cmを示した。しかし,学習後で は, BEL群は6.2±2.5cmに低下し, BEM群BES群では, 5.8±4.8cm, 4.9±4.0cirにそれぞれ増加がみられた。 すなわち,学習前に効果の大きかった群(BEL)では,. 学学 習習 前後. 図4.鉛直初速度の差で群別した 踏切板の使用効果の学習による変化. ∧. 蝣 *. 3. C M 0. O 0. C O. 感想の﹁H地銀. r l r J I J r l. 0. I S 0. * 0. ・. VBES群vBEM群VBEL群 (重心上昇鳥+#地時の重心畠) ll/2身長 鉛直HJS措致垂直銑びの記録. 図3.記録の差で群別した踏切板の 使用効果の学習による変化. 図5.踏切板を用いないときの 鉛直HJ S指数の群別比較. -64-.
(5) 与しない,身体重心上昇高を決定する踏切鉛直初速度で 踏切板の使用効果を3群(以下、差の大きい方からVBEL 秤, VBEM群, VBES群と呼ぶ)に分け検討した。 図4は, 3群の踏切鉛直初速度でみた踏切板の使用効 果の学習による変化を示したものである。 学習前では, VBEL群: 0.25±O.llm/s, VBEM群: 0. 00±0.05m/s, VBES群: -0.2i±0.12m/sを示したが, 学習後では,それぞれ0.32±0.17m/s, 0.16±0.14m/s, 0.06±0.27m/sに変化した。すなわち,学習前に効果の 大きかったVBEL群では、効果は学習によって殆ど増大 しなかったが, VBEM群では効果の増大が顕著に認めら れた.さらに, VBES群では踏切板使用のマイナス効果 が解消され僅かではあるがプラスの効果を示すようにな ることが認められた。 また,学習前のH ∫ S指数はVBEL群が70.1 ±12.7点, VBEM群が73.5±13.6点VBES群が82.1±19.3点をそ れぞれ示し,踏切鉛直初速度でみた場合にも踏切板使用 の効果が大きい群ほど走り高跳びの総体技術レベルは低 いと判定された。 そこで,踏切鉛直初速度から求めた身体重心上昇高を 記録とした場合のHJS指数(以下,鉛直HJS指数と呼ぶ) で,学習前・後のそれぞれの群の踏切技術レベル1'を評 価してみた(図5)。 学習前の鉛直HJS指数は, VBEL群: 120.0士21.3点, VBEM群: 107.1±19.0点, VBES群: 103.<±17.7点を それぞれ示した。また,学習後におけるそれは, VBEL 秤: 130.9±26.1点, VBEM群: 129.3±25.4点, VBES 秤: 125.7±19.1点を示すことが認められた。 すなわち,学習前・後のいずれにおいても,踏切板の 使用効果の大きい群ほど,鉛直HJS指数は高い傾向にあ ることが認められた。さらに,踏切板使用効果の学習に よる増大は,学習前の踏切技術レベルの高かったVBEL 群で最も小さいことが認められた。 以上のことから,踏切板の使用効果の程度は,踏切技 術1-と関係し,踏切技術レベルの低い者では,踏切板を 用いても跳躍高を高めることはできないが,踏切技術レ ベルが上がるにつれて踏切板の使用効果は大きくなり, さらに,ある踏切技術レベル以上になると踏切板を用い なくても使用した時と同じように踏切れるようになるた め,踏切板の使用効果は小さくなると推察された。 2.効果の要因について 図6は,踏切板を使用した場合に踏切鉛直初速度を高 めると考えられる諸要因の群別平均値を学習前・後につ いて示したものである。 踏切板の使用効果の大きかったVBEL群の助走速度は, 学習前,用いない条件の3.79±0.76m/sよりも高値(4. 25±0.79m/s)を示し,踏切板を使用した場合に大きな. -65-. VBES群VBEM群vBEL群 臣∃宙Ⅷ試rau詣后π E3TFLK2由的ヨ由ELj. 図6.踏切鉛直初速度を高める諸要因.
(6) 助走速度で踏切に入っていることが認められた。しかし, 踏切効率には減少が殆どみられず,踏切板を使用した場. られなかった。また,踏切入射角は, VBES群において も踏切板を使用した場合に僅かではあるが大きくなる傾. 合に高い踏切鉛直初速度を得ていることが認められた。 この群では,踏切横を使用した場合にも平均値でみる 限り後傾角は大きくならなかったが,これは,踏切板を 用いない場合にも他の群より踏切入射角の大きかったこ. 向を示した。しかし,踏切効率を58.5±11.2%から52.6 ±11.5%に低下させてしまっていることが認められた。 これが結果として,踏切鉛直初速度を増大させなかった 要因と考えられた。. とが関係していると推察された. さらに,学習後では踏切板を使用した場合,助走速度 を高め,踏切効率も高め(51.1±9.4%-59.3±6.;. これらのことから,踏切板の使用効果のみられない群 では,踏切動作に何らかの抑制が作用していると推察さ れた。. 得ていることが認められた。これらが,鉛直初速度を踏 切板を用いない場合よりも増大させている要因と考えら 学習によって踏切板の使用効果がみられるようになっ. しかし,学習後では,助走速度を高めても踏切効率は 低下することはなく,僅かではあるが踏切板を使用して 鉛直初速度を大きくできていることが認められた。さら に,踏切入射角は踏切板を使用しない条件の26.7度から. たVBEM群においても,学習後ではVBEL群と同様の傾 向がみられ,助走速度を踏切板を使用した場合(5.08± 0.66m/sに,用いない場合(4.24±0.55m/s)よりも. 28.7度に増大し,踏切技術が高いと考えられるVBEL群 が示す値に近づく傾向がみられた。 そこで,踏切入射角と踏切板の使用効果の関係につい. 高め得ることができ,踏切入射角を大きくし踏切効率も 高め,鉛直初速度を増大していることが認められた。 なお,学習前に踏切板の使用効果の認められなかった ことには,助走速度を踏切板を用いない場合よりも低下 させたことが関係しているように考えられた。. て検討した。 図7は,踏切板を使用した場合と用いない場合の踏切 鉛直初速度の差と踏切入射角の関係を,踏切板を用いな い場合(A)と使用した場合(B)について,示したも のである。. 一方,学習前に効果のみられなかったVBES群の助走 速度は,学習前では踏切板を使用した場合(4.48±0.77 m/s)にも,用いない場合(4.40士0.90m/s)と差はみ. 踏切板を使用しない場合(A)には,学習前では, Y -7.9X+28.8 (r-0.264; Pく0.01)の回帰式が得ら れ,踏切板の使用効果の大きい児童の方が,踏切板を用. 蝣as. 図7.踏切板の効果と後傾角の関係 -66-.
(7) いない場合にも大きな後傾姿勢で踏切に入っている傾向 がみられた。しかし,踏切板を使用した場合には,両者 の回帰直線の傾きは小さくなるとともに有意な相関関係 はみられなくなった。 このことは,踏切枚の使用効果の小さいものも,踏切 板を使用すると後傾して踏切に入っている傾向はあるが, この後傾を踏切鉛直初速度の増大にうまく結び付けられ ていないことを示唆している。 一方,学習後では,踏切板を用いない場合では, Y10.2X十28.3 (r-0.372, Pく0.01)の回帰式が得ら れ,両者の関係はよりクリアーになることが認められた。 また,踏切板を使用した場合にも有意な相関関係がみら れるようになった。これは,踏切板使用効果の大きかっ た群も踏切板を使用した時の方が後傾して踏切に入るよ うになったことによるものと考えられる。 これは身体を後傾して踏切に入っても踏切板を使用す れば"スペル"ことが防げることを学習したためと考え られる。このことは,いずれの群においても学習後では, 踏切板を使用した場合の方が助走速度の高まっているこ とからも裏付けられる。 以上のことから,踏切板を用いない場合よりも用いる ことで,助走速度を高め後傾角を大きくし大きな踏切鉛 直初速度を得ているタイプ,助走速度には変化はみられ ないが後傾角を大きくして大きな踏切鉛直初速度を得て いるタイプ,後傾角に変化はないが踏切板の傾斜による ブレーキ作用を利用して踏切鉛直初速度を高めているタ イプ等のあることが示唆された。 3.跳躍動作の外部構成のパターンの相違について これまで,踏切板を使用した場合に跳躍高の大きくな る要因について検討してきたが,その要因には個人差の あることが認められた。 図8は,踏切板の使用効果がみられた児童(Y.K)に ついて,踏切動作中の下肢各関節角度の変化を両条件で 比較したものである。 本被験者は,踏切板を使用した場合(黒塗り)に用い ない場合(白塗り)よりも,助走速度を高め踏切入射角 (後傾)を大きくし,踏切効率を維持し,鉛直初速度を 高めているタイプである。 この例では,踏切板を使用した場合の方が,膝関節の 伸展の開始時期が股関節の伸展開始時期よりも早くなっ ていることが認められた。さらに,接地後の足関節の背 屈の程度が小さくなっていた。 直列につながる関節を伸展する場合,最も大きな力の 発揮できる関節から始動させるのが合理的である12'-3'。 したがって,この例では,膝関節を積極的に使って脚の 伸展を行っていると推察される。 さらに,踏切脚離地時の爪先と大転子を結ぶ線が鉛直. 線となす角度は垂直に近くなっていることが認められ, 垂直跳び11'に近い踏切ができていると考えられた。 つまり,踏切板を使用した場合,助走速度を高める (無:5.00m/s-有:5.29m/s)とともに,身体を大き く後傾して(無:29.1度-有:38.7度)踏切に入ること で大きなブレーキ力を得ているが,膝・股関節の伸展開 始時期を変化させ脚伸展力を大きくし,このブレーキ力 を受けとめることができたため踏切効率が維持でき,高 い踏切鉛直初速度が得られたものと考えられた。 図9は,学習によって踏切板の使用効果がみられるよ うになった児童の学習前・後の跳躍動作を示したもので ある。 学習前では,踏切板を用いても助走速度(無: 3.76m /S,有:3.18m/s)は高まらず,踏切鉛直初速度(無: 2.46m/s,有:2.35m/s)を高めることができなかった。 また,踏切入射角には殆ど変化はみられなかったが,踏 切中の膝関節屈曲角度は踏切板を使用した場合に大きく なり,踏切時間の延長が認められた。すなわち,按地の 衝撃をエクセントリックに受けて筋の弾性エネルギーを 有効に使っていないように推察されだ4)0 しかし,学習後では,踏切板を使用した場合に,鉛直 初速度を0.45m/s高め,記録を9.8cir向上させていた。 助走速度は,踏切板を用いなかった場合(4.72m/s)に 比して僅かではあるが速く(4.75m/s),後傾角には変 化はみられないが膝関節の屈曲が踏切板を用いない場合 と同程度を示し,踏切時間は短縮されることが認められ た。すなわち,踏切板によって生じた大きなブレーキ力 を脚を"突っ張る"ように受けとめることができ踏切効 辛(無:60.6%,有:69.7%)を高め,高い踏切鉛直初 速度が得られたと考えられた。このことは,踏切脚離地 時の膝・股関節の伸展度合が,学習前(左図)では膝関 節:169.!度,股関節:186.0度であったが,学習後(右 図)では膝関節: 173.3度,股関節: 188.9度に変化し積 極的な踏切動作の行えていることからも伺われた。 すなわち,学習後では,学習前よりも助走速度を大き くしても伸張性収縮により脚を積極的に伸展し,離地後 の跳び出し方向を鉛直に近づけることができるようになっ たことが,高い踏切鉛直初速度の得られた要因と考えら れた。 4.跳躍動作の内部構成のパターンの相違について 図10は,踏切板を使用した場合と用いない場合の2条 件における「はさみ跳び」の筋電図と跳躍フォーム,な らびに同試技における下肢各関節角度の変化を示したも のである。なお,右側は,同被験者の練習後の結果であ る。 国中の①-(勤の番号は,図上の跳躍フォームと対応し ており, ①:踏切2歩前の踏切脚接地時, (令:同脚離地. -67-.
(8) 時, ③:踏切1歩前の振上脚接地時, ④:同脚離地時, ⑤:踏切脚接地時, ⑥ :踏切脚の膝関節の最大屈曲時, ⑦:踏切脚離地時, ⑧:身体重心の最高点到達時, ⑨: 着地時を,それぞれ示している。 本研究では, ①-②を2歩前接地期, ②-③を2歩前 空輸期, ③-④を1歩前接地期, ④-⑤を1歩前空輸期, ⑤-⑥を踏切期前半, ⑥-⑦を踏切期後半, ⑦-⑧を上 昇期と呼ぶことにした。 この被験者では,踏切鉛直初速度から求めた重心の上 昇高に及ぼす踏切板の使用効果は12.4cmみられたが,踏 切板を使用した場合と用いない場合の踏切入射角(無: Y.K 忠霊震度告,36m/l-ォ3.53m/s40.0 ,有:38.9つには,殆ど差は認められなかった。 。。m/i-S.29m/< 助走速度は,踏切板を使用した場合に大きく,踏切効 :雷監守66.9%-ee.1% S143-17サ 撫有 !呂豊昌雷:. 率を維持できたため踏切鉛直初速度を0.40m/s高めるこ とができていた。 筋電図についてみると,踏切板を用いない場合,前歴. :△足閑輸▲ ∇練伸角▼ I-'中JBT事. 骨筋の放電は,踏切脚接地前より踏切期前半(⑤-⑥) にかけてみられ,経から接地するための足背屈に働き, 大きなブレーキ力に耐え得る着地動作をしようとしてい ると考えられた。 排腹筋の放電は,踏切脚接地前より踏切期(⑤-⑦). 0.1 0.2 0.3 (sec). 時間 図8.踏切板を用いない場合と 使用した場合の下肢関節角度の比較. ≡ >*鋼 (°eg 200. /妄-毒. contact. take-off. 180 160 140. 角120 度1 00. 無有 0股関節● Eコ膝関SS I △足関節▲ ▽後傾角▼. 80 60 40 20. ll. 鉛直初速度i2.46m!S-2.35m/s 助走速度i i3.76m/s-3.18m/s 踏切効串=65.4% -73.9% 軌如js; im →118 ll ll. 雷悪癖:2.86m/s-*3.31m/s 472m/s-サ4.75in/s 踏切効率IIGO.6%→69.7% 鉛直HJSi1155-184 ll ll. 0. -20. 0.1時間0-2 0-3(sec)  ̄ー0.1時間0.2 0-3(sec) 図9.踏切板を用いない場合と使用した場合の下肢関節角度の比較(学習による変化) -68-.
(9) にかけてみられ,鐙から着地した踏切脚の足関節の底屈 を行ってキックしていることを示している。. 内側広筋の放電は, 1歩前接地期(③-④)後半より 踏切期前半(ゥー⑥)にみられ,踏切脚接地時の準備動 作としての膝関節の伸展と,踏切動作としての膝関節の 伸展に働いている。 大腿直筋の放電は,踏切2歩前の踏切脚離地時から踏 切期前半(⑤-㊨)にみられ,踏切脚接地前までの放電 は,踏切脚を前方-振り出すための股関節の屈曲に,踏 切期前半の放電は膝関節の伸展に働いていると考えられ る。. 大腿二頭筋の放電は,踏切脚接地前より上昇期(⑦⑧)にみられ,踏切動作としての股関節の伸展に働いて いると考えられた。 大殿筋の放電は,踏切脚接地前より踏切期前半(⑤(む)にみられ,股関節の伸展に働いている。 すなわち,踏切脚接地前に踏切脚の着地準備として足 背屈,膝関節の伸展を行い,踏切期前半では,膝・股関 節は接地の衝撃で外見上は屈曲されるが,両関節を伸張 性筋収縮により伸展させ,踏切期後半では,膝・股関節 を短縮性筋収縮により伸展し,踏切っていると考えられ f.. 一方,踏切板を使用した場合,前腔骨筋・排腹筋の放 電様相には,用いない場合と顕著な相違は認められなかっ た。 しかし,内側広筋・大腿直筋の放電が,踏切期後半 ((り-ョの始めまで持続するようになるとともに,膝 関節の屈曲と股関節の伸展に働く二関節筋である大腿二 頭筋の放電が,踏切期後半(㊨-⑦)から上昇期(⑦⑧)にかけて減少する傾向がみられた。すなわち,踏切 板を使用した場合の膝・股関節の放電様相は「垂直跳び」 の筋放電パターン川と近似し,踏切板を用いない場合の それは「立ち幅跳び当に近いことが認められた。 直列につながる関節で発揮される力は,いずれか弱い 方の関節で発揮される力の分だけ外部に伝達される12)13) ことが明らかにされている。したがって,股関節の伸展 と膝関節の屈曲に働く大腿二頭筋の放電に減少がみられ ることは,膝関節に負担のかかる脚伸展動作が行われた ためと考えられる。 すなわち,踏切板の使用は,膝関節に負担のかかる垂 直跳びと同様の踏切動作に変化させ,垂直方向に力を発 揮できる踏切が行われていると推察された。 以上のことから,踏切板を使用した場合に,股関節の 伸展を抑制し膝関節を使った跳躍動作に変化しているこ と,助走速度を大きくできたこと,が踏切鉛直初速度を 踏切板を用いない場合よりも高めた要因と考えられた。 さらに,学習後においても,踏切板を使用した場合に, 踏切鉛直初速度から求めた垂心の上昇高には6.17cmの効. 采がみられた。また,助走速度に変化はみられなかった が,身体を大きく後傾(41.1。 )して踏切に入っている ことが認められた。 筋電図についてみると,踏切板を用いない場合,前腰 骨筋・排腹筋・大腿二頭筋の放電様相には,学習前と相 違はみられなかった。 内側広筋・大腿直筋の放電は,学習前の踏切板を使用 した場合と同様に,踏切期前半(⑤-㊨)から踏切期後 半((彰一⑦)の始めにかけてみられるようになった。し かし,記録に反映するまでには至らず,学習前の踏切鉛 直初速度と殆ど差はみられなかった。すなわち,学習後 では踏切板を用いない場合にも,学習前の踏切板を使用 した場合と同様に,膝関節を踏切期後半まで積極的に使っ た踏切が行えるようになっていると考えられた。 一方,踏切板を使用した場合,踏切板を用いない場合 よりも踏切期後半((彰一⑦)に大腿二頭筋の放電の減少 する傾向が,学習前と同様に認められた。 また,内側広筋・大腿直筋の放電は,踏切期前半(⑤⑥)にしかみられなくなった。 さらに,排腹筋の踏切期の放電は,踏切板を用いない 場合よりも顕著にみられ,足関節の積極的な底屈がなさ れていると考えられた。 踏切脚離地時の膝関節角度は156.0度,股関節角度は 160.7度を示し,接地期後半の伸展範囲は,それぞれ, 23. 9度, 23.5度となり,踏切板を用いない場合の伸展範囲 (膝:21.2股20.5-)よりも大きく,また,踏切 脚離地時の伸展角度(膝関節: 154.1。 ,股関節: 157.4 0 )も大きいことが認められた。 すなわち,学習後では,踏切板を使用した場合に助走 速度を高めることはできなかったが,大きなブレーキ力 が得られるように身体の後傾角を大きくしても,膝・股 関節ならびに足関節の伸展が積極的に行えるとともに, 垂直方向にキックできたことが踏切鉛直初速度を高め得 た要因と考えられた。つまり,踏切期前半は膝・股関節 の伸張性収縮によって大きなブレーキ力を受け止め,踏 切期後半はこの弾性エネルギーによって膝・股関節を伸 展させ,さらに踏切期後半まで積極的な足底屈を行って いると推察された。 これらの変化傾向は,俳腹筋の放電を除き,他の1名 の児童についても同様に認められた。 図示していないが,成人走り高跳び選手では,踏切板 を使用した場合と用いない場合の筋放電様相に相違はみ られず,児童の踏切板を使用した場合と近似しているこ とが認められた。 これは,技術レベルの高い走り高跳び選手では,踏切 板を用いない場合にも使尽した場合と同様の踏切動作が 行えるように習熟しているためと推察される。したがっ て,走り高跳び選手では,踏切板の使用効果が小さかっ. -69-.
(10) 学習前学習後. -聖廟Y:麗 (はさみ跳び翰切坂有). 芸 鼠温筋 眺円切餌が細田. m. 0.1. 0.2 (sec). 時間. 0.1. 時間. 図1 0.踏切板を用いない場合と使用した場合の筋電図の比較 170-. 0.2 (sec).
(11) (大きい). たものと考えられた。 このことは,前述した児童の踏切板の使用効果と踏切 技術レベルの関係の学習による変化を裏付けているもの と考えられる。. +. 踏切板の効果. 小さくなると図11に示すようにまとめられた。 すなわち,踏切技術レベルの低い児童では,踏切板を 用いても,用いない場合よりも助走速度を高めたり,踏 切脚接地時の身体の後傾(踏切入射角)によるブレーキ. 0. 以上のことから,踏切板使用の効果の程度には,走り 高跳びの踏切技術レベルが関与すると考えられた。すな わち,踏切技術レベルの低い者では,踏切板を用いても 跳躍高を高めることはできないが,踏切技術レベルが上 がるにつれて踏切板の使用効果は大きくなり,あるレベ ル以上になると踏切板を用いなくても使用した時と同じ ように踏み切れるようになるため,踏切板の使用効果は. (小さい). (低)踏切技術(嵩) 図1 1.踏切板の使用効果の大きさと 踏切技術の関係. 力を鉛直初速度に効率よく変換することができず,踏切 板の使用効果を生み出すことはできない。しかし,踏切. 約1/4の児童において踏切板の使用効果はみられなかっ た。一方,成人では, 5.7±2.4cm高く跳べることが認め. 技術レベルが上がると,踏切板の使用によって助走速度 を高め踏切脚接地時の身体の後傾角を大きくするととも に踏切脚離地時の爪先と大転子を結んだ線をより鉛直方 向にし,助走速度を鉛直方向に効果的に変換できるよう になる。 また,これには,踏切板を用いない場合よりも踏切期. られた。 2)踏切板の使用効果の学年平均値±1/2S Dを基準に 3群(BEL, BEM, BES群)に分け,学習前・後の効果 の変化をみると,学習前に効果の大きかったBEL群では. の膝・股関節の伸展開始時期を変えることや,その伸展 範囲を大きくしたり,股関節よりも膝関節を使った脚伸 展による踏切を行えること,さらに足関節の足底屈を踏 切期後半積極的に行えること等が動作の内部構成ならび に外部構成のパターンから考えられた。 今後,踏切板を使用して体得された技術や感覚を,用 いない場の条件において発揮させるための指導のあり方 について検討する必要がある。. 効果が減少(前: ll.7±3.8cm-後:6.2±2.5cm)する のに対し,効果の小さかった群では大きくなる(BEM 秤;前:4.6±1.2cm-後:5.8±4.8cm, BES群;前:ll. 1±1.5cm -級:4.9±4.0cm)ことが認められた。 3)クリアランス技術の影響を除いた踏切鉛直初速度で 踏切板の使用効果をみると,踏切板の使用効果の大きい (VBEL)群ほど鉛直HJS指数(踏切技術)の高い傾向 が認められた。 4)上記, 1) 2) 3の結果から,踏切板の使用効果 には,踏切技術レベルの影響が考えられた。すなわち, 踏切技術レベルの低い者では効果はマイナスになり,レ. Ⅳ.要約 男女大学生12名ならびに6年生男女児童23名を対象に, 踏切位置に弾みの無い木製の踏切板を使用した場合と用 いない場合の2条件で,はさみ跳びを行わせた。その際,. ベルの向上に伴い踏切板の使用効果は大きくなる。しか し,踏切技術レベルがある程度以上になると踏切板を用 いなくても使用した時と同様の踏切動作が行えるため, 踏切板の使用効果は小さくなると考えられた。. 記録を測定するとともに2台のVTRによって跳躍フォー ムを撮影し,踏切板の使用が跳躍高に及ぼす影響の程度 とその要因を明らかにした。 なお,児童については, 7時間の走り高跳びの授業の. 5)踏切板を使用した場合に高い踏切鉛直初速度の得ら れる要因は,助走速度を高めて踏切に入れることや,踏 切効率を高め得ることの,いずれか,あるいは両方であ ることが認められた。. 後にも同様の測定を行い,学習による影響を検討した。 また,一部の被験者については,筋電図を記録し,動. その際,踏切入射角を大きくしている者と,踏切入射 角には変化のみられない者が存在した。. 作の内部構成のパターンの面からも効果の要因を検討し た。. 6)踏切板を使用した場合に身体を大きく後傾できてい る児童では,踏切板を使用した場合に,助走速度を高め, 膝関節の伸展を股関節の伸展より積極的に行うことによっ て踏切効率を維持し,踏切鉛直初速度を高めているもの と考えられた。. 1)踏切枚を使用した場合,走り高跳びの学習前の児童 で平均4.5±5.3cm,学習後で5.6±3.8cm用いない場合よ りも高く跳べることが認められた。しかし,学習前では. -71-.
(12) 一方,後傾角に変化のみられなかった児童では,踏切 板を使用した場合に用いない場合よりも助走速度が高く なっているにもかかわらず,踏切脚離地時の膝・股関節 の伸展度合を大きくできていることが認められ,これに よって踏切鉛直初速度を高めているものと考えられた。 なお,いずれの場合にも,踏切時間の延長は認められ なかった。 7)踏切板を使用した場合,大腿二頭筋の踏切期後半の 放電が減少する傾向が認められた。これは,股関節より も膝関節を積極的に使った踏切動作を行っていることを 意味し,上記6)の動作の外部構成のパターンから得ら れた結果を動作の内部構成のパターンの面から裏付けて いる。. 以上のことから,踏切板の使用は,踏切時の脚伸展動 作を立ち幅跳びに近い筋作用機序から垂直跳びに近いも のに変化させ,記録を向上させる働きがあり,走り高跳 びの技能的特性に触れさせるのに有効な教具であると考 えられた。. 持久力に対する等速性トレーニング効果の年齢差に ついて」 ,スポーツ教育学研究,13(2) ,79-90,1993. 9)後藤幸弘「各種速度条件下の歩行・走行における筋 活動量と酸素需要量の関係(続報)一幼小児におけ る速度と筋放電量-」,関西医科大学雑誌, 35(3), 405-430 , 1983.. 10)松井秀次,三浦望慶,小栗達也,袖山紘,丸山書 五郎,小掛照二「走り高とびの踏切における速度変 換」,昭和49年度日本体育協会スポーツ科学研究報 告N0.m, 14-19, 1974. ll)辻野昭,岡本勉,後藤幸弘,橋本不二雄,徳原 康彦「発育にともなう動作とパワーの変遷について」, 身体運動の科学J杏林書院, 203-243, 1974. 12)高木公三郎・熊本水頼「直列多関節運動系の特性」 身体運動の制御,高木公三郎・熊本水頼(編),杏林 書院, 207-229, 1980. 13)Yamashita,N. "The mechanism of generation and transmission of force in leg extension , J.Human Ergol.4,43-52, 1975. 14)Komi,P.V. and C.Bosco "Utilization of stored elastic. 注l :h;s指数]'とは,走り高跳びの記錨から体格要因である身長. energy in leg extensor muscles by men and wome呂. の1/2を差し引いたものと垂直跳びの記録の割合として求められる. Med.Sci.SportslO,26ト265,1978.. ものである。したがって, 100一尺以上を示せば助走の勢いを高さに L手く変換できていることになる。しかし,児童が「はさみ跳び」 でこれを凌駕することは難しく,跨ぎ越せる高さを股下とすれば80 点以Lで助走を用いない場合よりも高く跳べていることになる。. KM E-- v. 1)川本幸則,後藤幸弘「児童期における走り高跳び (はさみ跳び)学習の適時期について」,スポーツ 教育学研究, 15(1) ,ト13,1995. 2)後藤幸弘,松下健二,辻延浩,奥野暢通,津田和 也,原田耕造「児童の走り高跳びの筋電図的特徴」, 日本体育学会第44回大会号p.838, 1993. 3)後藤幸弘,原田耕造「背面跳び(走り高跳び)学習 の小学校段階への導入の是非について-はさみ跳び による学習成果との比較から-」,スポーツ教育学 研究, 16(1) ,25-37,1996. 4)清原善之「3 ・ 4年生の授業」,跳・投運動の授業, 体育科教育別冊7 ,大修館書店, 100-103,1991. 5)池田延行「5 ・ 6年生の授業」,跳・投運動の授業, 体育科教育別冊7 ,大修館書店, 104-107,1991. 6)文部省「小学校体育指導資料指導計画の作成と学 習指導」,東洋館出版社, 82-83, 1991. 7)日本体育協会(監) 「スポーツ大辞典資料編」,大修 館書店, 19-20,1987. 8)辻延浩,後藤幸弘,辻野昭「大腿筋群の筋力と筋. -72-.
(13) Fundamental Study on Instruction of Running High Jump : The using effect of beat bord (instrument) for record. Yukihiro Goto, Hiroko Honda and Nobuhiro Tsuji. In this study, the effect for record that use the beat bord at take-off of running high jump was examined. Twelve university students of both sexes and 23 elementary school children of the sixth grade participated in this study. Their record were measured, and jumping form were filmed by two VTR simultaneously. 1) The child before learning of running high jump was able to jump 4.5±5.3cm more highly using the beat bord at take-off from the case that there was no use the beat bord. And the effect of using the beat bord was increased to 5.6±3.8cm after learning. On the other hand, the adult was able tojump 5.7±2.4cm highly when used the beat bord at take-off.. 2) The children were divided into 3 groups ( BEL, BEM, BES group ) by the usingeffect of the beat bord at take-off , and changes the effect in three groups were obsereved after learning.. The big large effect group (BEL) before learning decrease of using effect (be for:ll.7±3.5cm-af ter:6.2辻2.2cm ). However, small effect groups, the effect became larger ( BEM group; before:4. 6±1.2cm-after:5.8±4.6cm, BES group ; before:-1.1±1.4cir-after:4.9±3.2cm ). 3) The BEL group indicated that the perpendicular HJSindex when evaluated take-off perpendicularity initial velocity was higher than that of other groups. 4) From above l)2) and 3) results, it was thought that take-off skill level was related to using effect of the beat bord at take-off. In other words, in a low level person showed the minus effect of using the beat bord. On the other hand, with improvement of take-off technique, using effect of the beat bord became larger. 5) The discharge of biceps femoris muscle at latter half of take-off decreased when used the beat bord, and its pattern resembled to that of vertical jump. This meant that it was possible for the take-off movement that the knee joint was used more positively than the hip.. -73-.
(14) 付表.踏み切り板を用いた場合の児童の感想例 児. 1糾 しノ J a:A の. 童. の. 感. 禿貝. . 幅跳 びの時は, 前 に跳ぶ か らブ レーキをかけては いけなか つ たけ ど, 高跳 びの 時は違 う0 高跳 びはブ レーキをかけその反 動 を上に持 ってい く0 跳 び箱の ジャンプ台 (踏 み切 り板のこ と) を付 けたのは, 坂 になって いるか らプ レ∼キが上に行 く よ うにな る (N K 男 ) 0. 1 1 1. 1 0 5. . 踏 み切 り板 を使 うといつ もに比べ て高 く跳べた ( Y Y 男) 0. 9 0. 9 5. . 跨 み切 り板 を使 うと, 踏 み切 り板の角度があるか ら足を置 き やす い と思 う ( A K 男 ) 0. 9 5. 1 0 3. . 突 っ込む とは踏 切時に体が流 れる ことを表現 してい る0. 8 0. 1 0 9. 8 5. 1 0 9. f 止さ . 踏 み切 り台が なか った時は突 っ込 んでばか りだったけど, 踏 み切 り台をつ けるとや りやすか った (H N 子) 0 用 杏. 推測 され る児童 の 跳 躍 高 (cm ) 考えや動 き 学習前 : 学 習後. LL. . 踏 み切 り板 を使 うと, 高 く跳べ て抜 き足 もだいぶん当た らな くな った ( T A 子) 0. 意. . 突 っ込まな いこつか分か って きた0 それは, あん ま り踏 み切 り板 に足を付 けな いです ぐはなす といい ( O S ). . 突 っ張 るよ うな 動作 表現 して いる. 8 5. 9 0. . 踏み切 り板の ところまで走 って きて, 踏み切 り板の ところに .lつ と体 重 をかけてか らポー ンと軽 く跳べ ばいい と思 う ( S R 子) 0. . 積極 的な膝 . 股 関節の伸 展動作 を 表現 してい る0. 8 5. 9 5. . ぼ くの場 合は踏み切 り板 に 「バー ン」 じゃな くて, 「パ ーン」 . 接地 時間を短か くす る踏 み切 り方 と軽 くす る とや りやすい ( K Y 男) ○ を表現 してい るO . 少 しブ レーキを して, 勢 いを上 に変え るためには足のかか と か ら入 る0 も し, 爪先か らはい るとまっす ぐの勢 いが止まら ず 頭か ら入 るか ら足が (バーに) 引 つ元、 かる0 かか と示 ら入 るとブ レーキがかか って体がななめ になり, 上に上がる勢い にな って跳べ る0それは踏み切 り板が教えて くれた(K A 子0 ). 1 1 5. 1 1 8. 1 1 2. 1 0 ti. 自勺 iこ 捉 え た 伊り. . 踏 み切 り板がない時に, 踏み切 り板が あるよ うに角度を変え てす るこ と ( I T 男) 0 . 踏 み切 り板を使 って走 り高跳びを した時, 走 った勢いで とて . ク リア ラ ンス技 も高 くジャンプ したので よか った0 で も, 振 り上げ足をその 術 の習得 で きて い まま突 っ込んで上げなか ったので, 今度か らは高 く上げ よう ない子○ と思 った (N R 子) 0 . N ち ゃん はかか とか ら踏み切 ればい いと言 い, A ちゃんはそ の ため に踏 み切 り板 がななめにな って いると言 うけど, 私 に 」+「 はよ く分 か らない (H A 子) 0 好 u した内 2 回 しか うま 二 コ こ ± と こ 1 . 5 歩 助走 で踏 み切 り板 を付けて 5 . 6 ー J冒 、 くいかな か った○理 由は踏み切 り板の位選が決ま ってい るか 自勺 ら合 わな い (H S 子) 0 iこ 捉 え . 踏 み切 り板 を使 って高 く跳ん だ ら, 今まで したこ とがなか つ たか ら全然 うま くな らな くて反 対にへたになった0 今 日, 私 た は踏 み切 り板 を使 って初めてす ご く高 いところ(私か らして) 伊り ま で跳ん だか ら, バ ーを越 える時, バ レリーナの よ うにな つ て しま った (O S 子 ) 0. -74-. . 踏 切板の有 る無 しの違 いが 自覚 で きていない(〕 . 本来 は踏切位置 の学 習にな るはず なのに, それ を制 約 された と捉 えて いる0 . 踏 切板を付 けた 学習の慣 れが必要 . 思 わず体が浮 い た ときには ク リア ランス動 作が でき なか った○. 9 0. 9 0. 1 0 6. 1 0 0. 1 1 5. 1 0 6. 9 5. 9 O. 1 0 0. 1 0 0.
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