復興まちづくりの現状と課題―宮城県東松島市あお
い地区を事例に―
著者
磯崎 匡
雑誌名
文化
巻
84
号
1,2
ページ
22-39
発行年
2020-10-31
URL
http://hdl.handle.net/10097/00129704
令和 2 年 10 月 31 日発行
復興まちづくりの現状と課題
―宮城県東松島市あおい地区を事例に―
復興まちづくりの現状と課題
―宮城県東松島市あおい地区を事例に―
磯 崎 匡
1、問題の所在 本論文の目的は、2019 年に行ったアンケート調査をもとに、宮城県東松島市あ おい地区を事例として、東日本大震災の復興まちづくりの現状と課題を明らかに することである。さらに本論文ではそうした現状と課題を明らかにした上で、既 存の地域住民組織とは異なる、新しい形の組織の役割についても検討する。 第二次世界大戦後の我が国の都市計画の進展、あるいは地方分権の流れから もこれまでに住民自治の重要性は指摘されてきた。田中重好によると、1995 年以来の地方分権改革によって地域(地方自治体)が「地域社会における公共 性のありよう」をみずから規定する主体となりうる可能性獲得したことは分権 化の決定的成果であり、地方分権化は「多元的な参加の場」を作り出すことに つながる(田中 2010:147)。しかしながら、そうした改革下で広域合併が進 むことによって、行政村の廃止と総合支所への縮小、行政の人的資源の減少と 意欲の減退、地元雇用機会の消滅、人材育成の場の消失、といった住民自治組 織と行政との関係の変化が生じた(今野 2015)。田中逸郎によると、そのよ うな住民自治組織と行政との関係性の変化のなかで、地域課題の解決のために は旧来の自治組織や行政のほか多様なアクターのネットワークによる地域コ ミュニティの再構築が求められている(田中 2007)。 本論文の調査対象地であるあおい地区が位置している東松島市では、市民 協働のまちづくりを推進してきた。永井彰によると、その柱が、地域住民自 治組織(東松島市では「地域自治組織」と呼ぶ)の組織化であった(永井 2017)。東松島市では 2005 年の合併を契機として、2008 年には 「まちづくり 基本条例」 を制定し、市内を8エリア(赤井、大曲、矢本東、矢本西、大塩、 小野、野蒜、宮戸)に区分し(ほぼ公民館区に該当)、そのそれぞれに住民自治協議会(地域自治組織の呼称)が組織された。そのさい、2007 年に市民セン ター機能を公民館に併設し自治活動の拠点施設として位置づけ、2009 年 4 月 からは公民館を市民センターと改称し、その運営を地域自治組織がおこなうこ ととし、各住民自治協議会がその指定管理者となった(東松島市 2016: 4-6)。 このように、震災以前から行われてきた、地域住民によるまちづくりの実践 が震災後にも影響を及ぼしていると考えられる。あおい地区では震災直後か ら、住民による、まちづくり整備協議会が開かれている。こうした組織が復興 まちづくり果たした役割について考察する必要があると思われる。 東日本大震災の発生から、2020 年 3 月で 8 年が経過している。多くの被災 自治体では応急 ・ 復旧期を過ぎ、復興期へと段階が進んでいる。しかしなが ら、このような状況は今後数年で大きな変化を迎えようとしている。国の復興 政策を司る復興庁は設置当初、発災 10 年後である 2021 年に廃止が決まってい た(1)。それに伴って、復興庁の予算のうち、被災者支援、特に心のケア・地域 コミュニティに関する予算は最も高額だった 2016 年度の 271 億円から、2019 年度は 205 億円と減額されている(復興庁 2018)。東松島市の復興計画にお いても、計画の期間を 2021 年度までとしている(東松島市 2011)。これまで 復興の枠組みで行われてきた様々な政策や取り組みは、縮小されるか、別の形 で行われるか、行われなくなるか、各自治体での予算配分次第となる。 この問題は住民が主体となって行われる「復興まちづくり」にも重大な影響 を及ぼす。復興まちづくりという用語は、防災集団移転や防潮堤の建設など、 工学、建築系のおける災害復旧 ・ 復興期の都市計画事業で主に使われている用 語である(2)。宮城県の事業概要においても、復興まちづくりを以下のように説 明している(宮城県 2020a)。 高台移転、職住分離、多重防御による大津波対策など、沿岸防災の観点か ら震災教訓を活かした災害に強いまちづくりを進め、さらに、その取り組み やプロセスを取りまとめ、後世に伝えるための取り組みです。 そして復興まちづくりの関連事業として、防災集団移転促進事業や被災市街地 復興土地区画整理事業/津波復興拠点整備事業を紹介している。本論文では、 そうしたいわゆるハード面での復興まちづくり事業ではなく、地域住民が主体 となって行う、コミュニティの形成 ・ 維持を目的とした取り組みを、復興まち
づくりと見なし、調査対象とする。 今後 「復興」 がとれ、通常の「まちづくり」という局面になったとき、予算 の少ない自治体から順に心のケア ・ 地域コミュニティに関する予算が削減され ると思われる。 いずれにせよ、今後の活動を考える際には、これまで行われてきた復興まち づくりについて総括をする必要がある。つまり、これまで行われてきた復興ま ちづくりの活動に対して、住民からの評価を受け、その成果や課題を明らかに する必要がある。そうすることで、今後の住民主体のまちづくり活動への指針 となり得るし、また、行政との連携を考えた際に、行政に対する活動実績の情 報発信となり得る。その点から、2016 年には地区内の宅地引渡し・災害公営 住宅の鍵引渡しが完了し、現在まで復興まちづくりの取り組みを行っている 「 あおい地区」 への調査は有用であると考えられる。 以上のことから、本論文の意義は、再編が進んできた中で起きた東日本大震 災を機に、従来の地域住民組織の取り組みとは異なる形での、復興まちづくり の様態を描き出すことにある。また、それを通して、地域のまちづくり実践へ の一助となり得る点も意義の一つとしてあげられる。 2、調査対象地の概要 1)調査対象の概要 本論文では、宮城県東松島市 あおい地区を事例として取り上 げる。東松島市は、2005 年に桃 生郡矢本町と鳴瀬町の合併によ り誕生した自治体である。宮城 県の中部に位置し、石巻市に隣 接する位置にある。市内には、 市街地、農村地域、漁村地域が あり、地区ごとに地域特性が異 なっている。 図 1 東松島市の位置(宮城県 2020b)
震災前 2010 年の人口は、42,903 人であったが、震災後 2015 年の人口は 39,503 人と減少傾向にある(国勢調査 2015)。 東松島市における東日本大震災の被害状況は、2019 年 3 月時点で死者数 1,109 人(関連死を含む)、行方不明者 24 人であった。家屋被害は半壊以上が 11,077 棟(全世帯の約 73%)で、一部損壊を含めると、14,581 棟(全世帯の 約 97%)が被害を受け、市街地の 65%が浸水した(東松島市 2019)。 以上のような被害を受けて、東松島市では、2011 年 6 月 13 日に「東松島市 震災復興基本方針」を制定し、復興まちづくり計画等の策定をスタートした。 計画づくりの際には、8 つのエリアの住民自治協議会を単位として、「地区懇 談会」が実施し、のべ 1100 名以上の住民が参加した。その他にも、各種組織 の代表者を集めた「復興まちづくり懇談会」が開かれた(東松島市 2011)。 この「復興まちづくり計画」によって災害危険区域に指定された被災者は、 防災集団移転促進事業による住宅再建が計画された。東松島市では、防集事 業による移転地として、東矢本駅北、野蒜北部丘陵、矢本西、牛網、室浜、大 浜、月浜の 7 地区が計画された。このうち東矢本駅北にある移転地が現在の 「あおい地区」である。 図 2「復興まちづくり計画」内矢本東地区の復興方針図(東松島市 2011)
この地区の地理的特徴としては、すぐ南側に JR 仙石線東矢本駅があり、西 側に三陸自動車道矢本 IC があり容易にアクセスできる。また市役所本庁舎、 小中学校、商業施設が近接しており、比較的利便性の高い地区となっている。 このあおい地区では、2011 年 11 月より「NPO 法人 都市住宅とまちづく り研究会」が東松島市から委託を受け、整備協議会設立の準備を開始し、2012 年 11 月に「東矢本駅北まちづくり整備協議会」が設置された。この協議会 は、2014 年 5 月にまちの名称が「あおい」に決定したことに伴って、名称が 「あおい地区まちづくり整備協議会」に変更された。 あおい地区では 2014 年 11 月から災害公営住宅入居が始まり、2016 年 7 月 には、地区内の宅地引渡し・災害公営住宅の鍵引渡しがすべて完了し、これを 機に、まちづくり整備協議会は 2016 年 9 月に解散し、その後はあおい地区を 構成する 3 つの自治会(3)およびあおい地区会の活動が本格化した。 2)取り組み あおい地区の自治会は、自立再建・災害公営住宅エリアの一体感醸成を見す え、両者にまたがるように設置されており、各自治会は、それぞれのエリアを 合わせて 200 世帯前後で構成される。自治会ごとに班やゴミ集積所の管理を 行ったり、個別課題に対応したりしている。それに対して、丁目を越えた横断 的な課題に対応するための組織があおい地区会である。地区会は単純な各自治 会の連合組織ではなく、各自治会の自主的な運営を尊重しつつ、自治会の枠を 超え、あおい地区全体と して一体化して進めた方 が、より効果的・効率的 な事業に特化して取り組 む組織である。組織体制 としても地区会には自治 会会長も役員として入っ ており、自治会と地区会 の連携がスムーズに行わ れている。 図 3 地区会と自治会の関係性(あおい地区 2019)
前述の通り、震災後それまでの 「復興まちづくり」 の主体であった整備協議 会は 2016 年 9 月に解散し、その後あおい地区会が 「復興まちづくり」 の主体 となった。しかし、あおい地区会で会長を担っているのは、それまでの整備協 議会でも会長を担っていた小野竹一氏である。また、あおい地区会の活動や組 織体制はそれまでの整備協議会と一部オーバーラップする形となっている。 (38人) ・会長 1人 ・副会長 4人 ・理事 31人 (会計担当含む) ・監事 2人 画地評価チーム 新しいまちの名称選考委員会 地区会での活動へ 少人数の専門部会で検討し、方 向性を役員会に諮り、全会員対 象の井戸端会議(ワークショップ)で 意見を聞き、総会で最終決定する 体制で会議を行い、年間90~120 回、多い年は3日に一度のペースで 協議会活動。 9 ※ 二重取り消し線で消されてる部分は、 役割を終えた部分。 図 4まちづくり整備協議会の組織体制(2016 年時点)(あおい地区 2019) 図 5 現在の地区会の組織体制(あおい地区 2019) ここでは、あおい地区会へと移行した後の復興まちづくりについての取り組 みを取り上げる。
あおい地区会では設立後も様々な取り組みを行っているが、ここではコミュ ニティ形成の観点から、5 つの活動について説明する。なお、活動説明におい てはあおい地区による資料(あおい地区、2019)を参考にした。 あおい地区の場合、入居時の区画決めの際に、顔見知りや親類と区画を同じに するグループ入居の方式がとられた。ブロック調整・区画調整の話し合いを経た 上で、最終的には一部は抽選での決定もあったが、多くは入居時に既に区画内で 顔見知り関係が形成された。入居後の班はこの区画ごとに定められ、市報や回覧 板の受け回しなどを行っている。それに対して、ゴミ出しは班とは別のグループ で形成されている。それは区画以外での人間関係の形成のためである。 また、あおい地区では毎年青森から踊り手である跳人と山車をよび、ねぶた 祭りを開催している。地区会ではこれをあおい地区でコミュニティを形成する 上で、重要な行事の一つとして考えている。2018 年度までは宮城県からの助 成金を財源に開催してきたが、2019 年度からは助成金が減額され、住民から の協賛金を募る形で開催されている。 図 6あおい地区で行われている青森ねぶた祭の様子 (あおい地区 facebook より取得) あおいの地区会の活動の一つとして 2017 年から始まった、あおい農園があ る。これは、被災した土地を耕作し、種まき、草取り、収穫などといった農作 業を通して人々の心身の健康を増進するという介護予防を目的とした取り組み である。また、この活動によって収穫した農作物を販売するなどのコミュニ ティビジネスへと展開することで、次世代の人材・活動財源の確保につなげて いくという事業である。現在、あおい農園の登録者は 43 名おり、三班に分か
れて活動している。 図 7あおい農園の活動の様子(あおい地区 2019) 見守り活動は地区会の一つの部会になっているほど重要視されている。外部 支援者ではなく住民である見守り部会のメンバーが分担して、77 歳以上の高 齢者の見守りを実施している。それによって、住民同士の関係性構築や、地区 の高齢化問題に対する当事者意識の涵養に寄与している。 図 8 見守り活動の様子(あおい地区 2019) 高齢者に対しては、見守り以外にも、健康作りと住民交流を目的とした百歳 体操、高齢者の居場所づくりを目的としたお茶会 ・ サロン活動を地区会で実施 している。百歳体操を行った後にお茶会という流れで週に一回のペースで行わ れている。活動は各丁目ごとに行われている。
図 9 百歳体操の様子 図 10サロン活動の様子(あおい地区 2019) 3、アンケート調査の結果 1)アンケート調査の概要 本論文で取り上げるアンケート調査は、社会学専攻分野で 2019 年度に実施 した 「社会学調査実習」 の一環で行ったものである(4)。アンケートの集計 ・ 分 析は筆者を中心にティーチングアシスタントの大学院生や履修した学部学生と ともに行った。調査票では、あおい地区入居前後の住居、人付き合い、地区会 での取り組み、生活上の困りごと、地区会の運営、行事イベント、回答者の基 本属性といったテーマについて質問した。 アンケート調査は調査票を 11 月 15 日にあおい地区へ全戸配布して、 11 月 22,23 日の 2 日間で各戸を訪問 して回収した。その結果、入居世帯 563(2019 年 11 月 時 点 )の う ち、 307 世帯から調査票を回収すること ができた。回収率は 54.5%となっ た。調査票はあおい地区全世帯に配 付したが、回答者は世帯主本人に依 頼した。回答者の基本属性を示した 表が以下の通りである。 表 1 回答者の年代 度数 有効パーセント 20代 3 1.4 30代 11 5.0 40代 34 15.6 50代 36 16.5 60代 59 27.1 70代 55 25.2 80代 19 8.7 90代 1 0.5 合計 218 100.0 有効回答数:218、単位:人(%)
表 2 回答者の性別 度数 有効パーセント 男性 152 70.7 女性 63 29.3 合計 215 100.0 有効回答数:215、単位:人(%) 表 3 回答者の震災当時の居住地 度数 有効パーセント 7 . 0 2 外 県 城 宮 宮城県内(東松島市外) 14 4.9 2 . 9 6 2 曲 大 8 . 5 4 0 3 1 浜 曲 大 9 . 9 8 2 東 本 矢 2 . 4 2 1 西 本 矢 7 0 2 本 矢 5 . 3 0 1 井 赤 5 . 2 7 野 小 9 . 9 8 2 蒜 野 4 . 0 1 戸 宮 その他(東松島市内) 6 2.1 0 . 0 0 1 4 8 2 計 合 有効回答数:284、単位:人(%) 表 4 回答者の居住地区(丁目) 度数 有効パーセント 1丁目 92 32.4 2丁目 101 35.6 3丁目 91 32 合計 284 100.0 有効回答数:284、単位:人(%)
表 5 回答者の居住形態 度数 有効パーセント 自立再建 157 54.9 災害公営住宅(集合タイプ) 31 10.8 災害公営住宅(戸建てタイプ) 75 26.2 災害公営住宅(二戸一タイプ) 19 6.6 元から住んでいる 4 1.4 合計 286 100.0 有効回答数:286、単位:人(%) 2)アンケート調査の結果 本論文では、アンケート調査の結果のうち、あおい地区で行っている復興ま ちづくりに関する住民の意識および、あおい地区会に関する意識についての結 果を述べる。そこから、復興まちづくりの現状と課題、およびあおい地区会の 役割を明らかにしたい。 一つ目が見守り活動についてである。「見守り活動による地域への影響につ いて」という質問の複数回答の結果、「見守り活動を地区会が担っていくべき だとあなたは思いますか」という質問の結果について述べる。 表 6 見守り活動が地域に与えた影響 度数 有効パーセント 度数 有効パーセント 度数 有効パーセント 近隣の人の情報を得られるようになった 16 8.3 176 91.7 192 100.0 0 . 0 0 1 3 9 1 9 . 1 8 8 5 1 1 . 8 1 5 3 た っ 立 役 に 止 防 立 孤 の で 域 地 0 . 0 0 1 3 9 1 8 . 4 9 3 8 1 2 . 5 0 1 た え 増 が 人 る す 加 参 へ 動 活 域 地 0 . 0 0 1 3 9 1 3 . 5 9 4 8 1 7 . 4 9 た っ な に し 渡 橋 の 報 通 の へ 察 警 や 急 救 0 . 0 0 1 3 9 1 5 . 5 8 5 6 1 5 . 4 1 8 2 る じ 感 を き つ び 結 の と 人 の 域 地 0 . 0 0 1 2 9 1 1 . 8 7 0 5 1 9 . 1 2 2 4 る あ が 感 心 安 む 住 に 域 地 地域で見守りが必要な人を気に掛けるようになった 24 12.4 169 87.6 193 100.0 0 . 0 0 1 3 9 1 9 9 1 9 1 1 2 た え 増 が 渉 干 の ら か 人 の 域 地 0 . 0 0 1 3 9 1 9 . 7 9 9 8 1 1 . 2 4 る じ 感 を 担 負 に と こ る す 動 活 で 域 地 0 . 0 0 1 3 9 1 3 . 5 9 4 8 1 7 . 4 9 い な れ ら じ 感 を 響 影 い 良 0 . 0 0 1 2 9 1 7 . 9 4 6 9 7 . 9 4 6 9 い な に 特 0 . 0 0 1 2 9 1 4 . 8 9 9 8 1 6 . 1 3 他 の そ はい いいえ 合計 有効回答数:192、単位:人(%)
表 7 地区会が見守り活動を行うべきか 度数 有効パーセント はい 100 36.5 いいえ 23 8.4 わからない 151 55.1 合計 274 100 有効回答数:274、単位:人(%) 見守り活動が地域に与える影響として地域に住む安心感があると回答した人 の割合は 21.9%、地域での孤立防止に役立ったと考える人の割合は 18.1%と、 肯定的意見は一定数いる一方で、特にないと回答した人の割合も 49.7%あっ た。地区会が見守り活動を担うべきかという問いに対して、36.5%の人はそう であると答えた。また、わからないと答えた人の割合は 55.1%だった。 二つ目が行事イベント、特にねぶた祭への参加経験の有無とその評価であ る。評価についてはあおい地区への愛着がわいたかという観点からの評価であ る。 表 8 参加経験の有無 有効回答数:212、単位:人(%) 表 9 行事・イベント評価 有効回答数:141、単位:人(%)
ねぶた祭に関しては、2019 年度から始まった、住民から協賛金を募って開 催する形式についても質問した。 表 10ねぶた祭の協賛金に対する考え 度数 有効パーセント 0 4 8 7 く い て し 催 開 て っ 募 を 金 賛 協 の ら か 民 住 き 続 き 引 住民からの協賛金に頼らず、外部からの協賛金主体で開催していく 24 12.3 3 . 3 1 6 2 く い て し 催 開 て し 小 縮 を 模 規 、 ず ら 頼 に 体 自 金 賛 協 4 . 4 3 7 6 す お な 見 を 体 自 催 開 合計 195 100.0 有効回答数:195、単位:人(%) ねぶた祭は、アンケート回答者の 75.9%が参加経験のある、あおい地区で 行われている全行事・イベントの中でも最も参加率が高いイベントとなってい る。あおい地区への愛着がわいた行事・イベントとしても、最高評価である。 ねぶた祭はまた、協賛金供出の是非にかかわらず、65.6%の住民が継続開催を 望んでいる。一方、34.4%の住民が「開催自体を見なおす」という意見を持っ ている。 表 11 行事イベントへの関心 度数 有効パーセント 関心が高まった 59 26.1 変わらない 130 57.5 関心が低くなった 37 16.4 0 . 0 0 1 6 2 2 計 合 有効回答数:226、単位:人(%) 行事イベントへの関心は、以前住んでいた地域に比べ、変わらないと答えた 人がもっとも多く、60%弱を占めていた。関心が高まったと答えた人は 26.1% と、関心が低くなったと答えた人の 16.4%よりも多かった。 最後に、人付き合いにおいて地区会が与えた影響である。人付き合いの人数 と交流の深さの 2 つの観点から聞いた。人数、交流の深さ共に「特に影響がな
かった」と回答した人が多く、それぞれ 58.2%、63.7% であり、ともに約 6 割 の人が地区会活動の人付き合いへの影響を感じていないことになる。しかし、 「知り合いが増えた」と回答した人は 36.3% で、「交流が深まった」と解答し た人は 29.4% でああり、「知り合いが減った」、または「関係が希薄になった」 というマイナスの影響を感じている人が少数であることもわかった。 表 12 地区会活動が人付き合いに与える影響(人数) 度数 有効パーセント 新しい知り合いが増えた 99 36.3 知り合いが減った 8 2.9 特に影響はなかった 159 58.2 その他 7 2.6 合計 273 100.0 有効回答数:273、単位:人(%) 表 13 地区会活動が人付き合いに与える影響(交流の深さ) 度数 有効パーセント 交流が深まった 77 29.4 関係が希薄になった 12 4.6 特に影響はなかった 167 63.7 3 . 2 6 他 の そ 合計 262 100.0 有効回答数:262、単位:人(%) 上述の質問にて、新しい知り合いが増えた、もしくは、交流が深まったとい う選択肢のうちどちらか一方でも選択した人のみ回答した、人付き合いの変化 に最もよい影響を与えた地区会活動を尋ねる質問では、50.5% と約半数の人が 行事やイベントが最も大きな影響を与えたと回答していて、それにお茶会が続 いている。
表 14 人付き合いに影響の大きかった地区会活動 度数 有効パーセント お茶会 18 18.2 百歳体操 8 8.1 行事・イベント 50 50.5 その他 14 14.1 わからない 9 9.1 合計 99 100.0 有効回答数:99、単位:人(%) 4、考察 前章でのアンケート調査結果をもとに、東日本大震災の復興まちづくりの現 状と課題、あおい地区会の役割について考察する。 前章ではあおい地区における復興まちづくりの現状と課題として、あおい地 区会が行っている見守り活動および行事イベントについての、住民の評価を明 らかにした。そして最後に、地区会活動が人付き合いに与える影響について、 住民の意識を調査した。 見守り活動に対する肯定意見はあったものの、肯定意見が大多数を占めるわ けではなかった。しかし、約4割の人が地区会による見守り活動を期待してい ることがわかった、今後、地区会が見守り活動をすることにあたって、どのよ うな役割が期待されるのか。例えば , 永井は東松島市における地域ケア ・ シス テムの形成の取り組みに関して、被災者支援を契機とした社会福祉協議会と行 政の連携という点については方向性が明確になってきたが、住民の関与を引き 出しつつ自治会主体の見守り体制を全市的に構築するという課題への対応は、 まだ始まったばかりである、と指摘している(永井 2017)。あおい地区の見 守り活動の事例はそうした体制構築のモデルケースとなり得るのではないだろ うか。 行事イベント、特にねぶた祭に関しては、あおい地区にとって重要な役割を 果たしてきたことが窺える。アンケートの自由記述をみても、ねぶた祭の開 催見直しについて、もう他地域のお祭りは十分なので、地区独自のお祭り創設 や、子供もふくめて皆が参加できる盆踊りなど、発展的な提案がみられた。あ
おい地区入居後の行事イベントへの関心の変化として、その理由を自由記述で 聞いたが、関心が高まった理由として「(以前住んでいた地区と比べ)あおい 地区はイベントが多い」、「以前の地区では昔からのしがらみがあり、イベント があっても参加しない人の方が多かった気がする」などがあった。ここから、 あおい地区が震災後新しくできた地区である利点、大曲浜を中心としてはいる が多様な地区から人々が集まってできた地区である利点が明らかとなる。あお い地区会の役割としては、これまでの既存の自治体では実施が困難であった、 しがらみが少ない、新しいイベントを実施する主体としての役割を担ってい る。 最後に、地区会活動が人付き合いに与える影響について、地区会活動の人付 き合いへの影響を感じていない人が多いものの、地区会活動はある程度人付き 合いを促進しており、その中でも特に行事やイベントが影響を与えていること がわかった。人付き合いの促進という観点からも、今後のイベントについて、 あおい地区会は上記の役割だけでなく、様々な世代が参加できるイベントを実 施していくことが求められる。 5、おわりに 本論文では、宮城県東松島市あおい地区を事例として、東日本大震災の復興 まちづくりの現状と課題を明らかにした。さらに既存の地域住民組織とは異な る、新しい形の組織として、あおい地区会の役割についても検討した。現状に ついては前章までのアンケートの結果で明らかにしたが、課題について改めて 本章で考えたい。 高齢者の見守り活動、行事イベントの実施、人付き合いの促進、これらに共 通する課題、すなわち、復興まちづくりの課題として「共生」の問題が考えら れる。見守り活動は、高齢者を地域社会に包摂することを意味するし、しがら みの少ない新規の行事イベントの実施は、あおい地区の住民を出身地区で区別 しない事を意味する。また復興まちづくりには子育て世代や高齢者世代など、 世代の区別なく参加する必要がある。そういう意味では、あおい地区会は、単 なる復興まちづくりの主体としての役割だけでなく、「共生」 のまちづくりの 主体としての役割を担う。 最後に、本論文の限界と課題を述べる。本論文は 2019 年に実施したあおい 地区全世帯を対象としたアンケート調査をもとにした論文である。しかしなが
ら、調査結果においては単純集計レベルの結果のみ示し、その結果をもとに考 察した。そのため、2016 年度の社会学専攻分野で行った、同地域の調査で明 らかになった問題点、例えば、丁目ごとに災害公営住宅と自力再建で入居時期 がずれ、自治会設立にも時期の開きがあったため、丁目、住居形態の違いで人 付き合いに変化が生じる、という課題(東北大学文学部社会学研究室 2017) など、一部の問題点の分析を行うことができなかった(5)。今後はアンケート調 査のさらなる分析をし、先行研究の課題を考察したい。また、注に記したとお り、アンケート調査に先立ってインタビュー調査も行った。しかしながら、手 続き上の問題から取り上げることができなかった。アンケート調査の結果と言 うことで、地区としての全体の傾向は掴めたものの、個別具体的な住民の語り から、あおい地区の復興まちづくりの現状と課題を明らかにするために、適切 なインタビュー調査を進めていきたい。 注 (1)しかしながら、2019 年 12 月に当初の計画から更に10 年延長し設置年限を2031 年 までとする「復興の基本方針」が閣議決定した(復興庁 2019)。 (2)現在では、工学 ・ 建築系の研究者も 「『開発』から『まちづくり』」 へとこれまでの ハコモノ行政の延長であった復興計画を批判していたり(平野 ・ 姥浦 2013)、「住 民主体 ・ 地域協働のもと、場所の個性と復元力を活かす復旧 ・ 復興プロセス」を重 要視していたりする(佐藤 2011)。 (3)ここでいう自治会とは、東松島市における住民自治組織の基本的な単位であり、従 来の行政区制度に代わるものである。 (4)アンケート調査に先立って、インタビュー調査も行った。対象はあおい地区会の活 動の一つであるあおい農園に登録されている住民で、43 名の登録者のうち、 33 名に インタビューを行った。形式は半構造化インタビューで、対象者自身の経歴につい て(同別居の状況、居住歴、役員歴など)、あおい地区での生活状況について(農 園活動、人付き合い、イベント、あおい地区の高齢者支援)、あおい地区での生活 満足度(心の安らぎ、住んで良かったか)の三つのテーマについて聴き取りをし た。調査対象を無作為抽出法で選ぶなど行っておらず、結果の信頼性に疑問がある 点、対面でのインタビュー調査という性格上、直接あおい地区会への評価を問う質 問ができていなかった点、などから本論文では取り扱わないことにした。 (5)上述のような課題については、例えば、住んでいる丁目と住居形態をクロス集計 し、人付き合いの満足度について分析するなどの方法が最適であると考えられる。
文献 あおい地区会、2019、『防災集団移転地あおい地区のまちづくり』 復興庁、2018、『平成 31 年度予算概算決定概要』 ̶、2019、『「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針』 東松島市、2011、『東松島市 復興まちづくり計画』。 ̶、2016、『東松島市協働のまちづくり―基本編』。 ̶、2019、「東松島市の被害状況」、東松島市ホームページ、(2020 年 7 月 31 日取得、 https://www.city.higashimatsushima.miyagi.jp/index.cfm/1,1055,122,257,html) 平野勝也・姥浦道生、2013、「復興まちづくりのあり方」、平川新、今村文彦、東北大学 災害科学国際研究所編著『東日本大震災を分析する 2 震災と人間 ・まち・ 記録』 明石書店。 今野裕昭、2015、「市町村合併と地域課題の解決力―平成の大合併下の日光市栗山―」『専 修人間科学論集社会学篇』5(2)。 宮城県、2020、「復興まちづくり事業の概要」、宮城県ホームページ、(2020 年 7 月 31 日 取得、https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/fukumachi/)。 ̶、2020、「 宮 城 県 地 域マップ」、 宮 城 県ホームページ、(2020 年 7 月 31 日 取 得、 https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/image/260744.gif)。 永井彰、2017、「被災者支援を契機とした地域ケア・システム形成の取り組み―宮城県 東松島市の事例―」『文化』80(3,4)、1-13 佐藤滋、2011、「東日本大震災の意味と復興まちづくりの方法」佐藤滋編『東日本大震 災からの復興まちづくり』大月書店 田中逸郎、2007、「NPOと自治会等地縁型団体の協働による地域コミュニティ再構築の 諸要件」『コミュニティ政策』5。 田中重好、2010、『地域から生まれる公共性―公共性と共同性の交点』ミネルヴァ書房。 東北大学文学部社会学研究室、2017、『東松島市あおい地区における 「復興まちづくり 」 の現状と課題̶持続可能な地域を考えるために̶』東北大学文学部社会学研究室