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マイクロクレジット商品に対する顧客の選択 -- インドネシアの事例 (特集 マイクロファイナンス -- 変容しつづける小規模金融サービス)

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(1)

マイクロクレジット商品に対する顧客の選択 -- イ

ンドネシアの事例 (特集 マイクロファイナンス

--変容しつづける小規模金融サービス)

著者

塚田 和也

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

173

ページ

8-11

発行年

2010-02

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004579

(2)

マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス に 総 称 さ れ る 多 様 な 金 融 サ ー ビ ス の 中 で も 、 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト は 中 心 的 な 金 融 サ ー ビ ス の 位 置 を 占 め て き た 。 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト が 世 界 各 地 で 普 及 し た 事 実 は 、 貧 困 家 計 に お い て も 資 金 の 借 入 需 要 が 存 在 す る こ と を 、 地 域 横 断 的 か つ 経 験 的 な レ ベ ル で 示 し た も の と い え る 。 借 入 資 金 は 、 病 気 や 冠 婚 葬 祭 に 対 す る 緊 急 時 の 支 出 、 自 営 ビ ジ ネ ス の 運 転 資 金 、 物 的 投 資 、 子 ど も の 教 育 な ど 、 広 範 な 目 的 に 供 さ れ て い る 。 と こ ろ で 、 一 口 に 借 入 と い っ て も 、 そ の 融 資 条 件 は 様 々 で あ る 。 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト の 場 合 、 無 担 保 、 少 額 、 比 較 的 高 い 金 利 、 硬 直 的 な 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル 、 と い っ た 融 資 条 件 が 平 均 的 な イ メ ー ジ と し て 想 起 さ れ よ う 。 連 帯 保 証 貸 付 が 採 用 さ れ る 場 合 は 、 こ れ を 上 記 の 特 徴 に 含 め て も 良 い 。 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト の こ う し た 特 徴 は 、 商 業 銀 行 や イ ン フ ォ ー マ ル な 金 貸 業 者 が そ れ ま で 提 供 し て き た 融 資 の 条 件 と は 、 い く つ か の 点 で 大 き く 異 な っ て い た た め 、 少 な か ら ぬ 注 目 を 集 め た 。 一 方 、 マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス 機 関 ( M F I ) の 多 様 性 が 拡 大 す る に つ れ て 、 同 じ マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト と 呼 ば れ る 融 資 の 中 に も 、 平 均 的 な イ メ ー ジ で は 一 括 り に で き な い バ リ エ ー シ ョ ン が 生 じ て い る 。 貧 困 家 計 は ど の よ う な 融 資 条 件 を 望 ん で い る の だ ろ う か 。 従 来 の 議 論 は 、 貸 し 手 で あ る M F I の 視 点 に 立 つ も の が 多 か っ た た め 、 借 り 手 で あ る 貧 困 家 計 の 融 資 条 件 に 対 す る 選 好 に つ い て は 、 必 ず し も 十 分 な 理 解 が 得 ら れ て い な い 。 本 稿 で は 、 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト の 顧 客 で あ る 貧 困 家 計 の 視 点 に 立 ち 、 融 資 条 件 に 対 す る 顧 客 の 選 好 や 融 資 チ ャ ネ ル の 選 択 を 考 察 す る 。 以 下 で は 、 融 資 条 件 の 基 本 的 な 要 素 を 取 り あ げ 、 そ の 論 点 を 整 理 す る 。 つ ぎ に 、 筆 者 ら が イ ン ド ネ シ ア で 行 っ た 研 究 に 基 づ き 、 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト 商 品 に 対 す る 顧 客 の 選 択 を 実 証 的 に 論 じ る ( 参 考 文 献 ① )。 最 後 に 、筆 者 ら の 研 究 で は 十 分 カ バ ー で き な か っ た 問 題 に 関 し て 、 既 存 文 献 を 手 掛 か り と し て 議 論 の 見 通 し を 与 え た い 。

融 資 条 件 に は 様 々 な 要 素 が あ る 。 こ こ で 取 り 上 げ る 要 素 は 重 要 で は あ る が 、 網 羅 的 で は な い 。 ま た 、 そ れ ぞ れ の 要 素 は 同 時 に 決 定 さ れ る た め 、 本 来 は 独 立 に 論 じ る こ と が 難 し い も の で も あ る 。 以 下 は 、 他 の 融 資 条 件 が 一 定 で あ る こ と を 想 定 し た 限 定 的 な 議 論 で あ る 。 第 一 に 、 担 保 の 有 無 を 取 り あ げ る 。 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト は 、 資 産 の 乏 し い 貧 困 家 計 を 顧 客 と す る こ と か ら 、 無 担 保 で の 融 資 は 前 提 で あ ろ う と す る 見 方 も あ る が 、 実 態 は 必 ず し も そ う で は な い 。 無 担 保 で あ る こ と が 借 入 の 意 思 決 定 に ど の 程 度 の 影 響 を 及 ぼ す か は 、 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト が 普 及 し た 需 要 側 の 要 因 を 探 る う え で も 重 要 で あ る 。 理 論 的 に み る と 、 担 保 は 返 済 を 促 す イ ン セ ン テ ィ ブ の 役 割 を 果 た す 。 担 保 を 要 求 し な い 代 わ り に 、 顧 客 同 士 の 社 会 的 関 係 を 返 済 の イ ン セ ン テ ィ ブ に 利 用 し た 連 帯 保 証 貸 付 は 、 初 期 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト に お け る 革 新 の 一 つ で あ っ た と 考 え ら れ て い る 。 有 担 保 の 個 人 貸 付 と 無 担 保 の 連 帯 保 証 貸 付 が 利 用 可 能 な 場 合 、 顧 客 が ど ち ら の 融 資 条 件 を 選 択 す る か は 現 実 的 な 論 点 と な り う る 。 第 二 は 、 融 資 額 の 大 小 で あ る 。 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト は 、 言 葉 の 通 り 小 規 模 な 融 資 を

塚田和也

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特 集

特 集

マイクロファイナンス

―変容しつづける小規模金融サービス 返 済 の 意 思 は あ っ て も 、 つ い つ い 余 計 な 出 費 を 増 や し て し ま い 、 結 果 と し て 、 返 済 に 窮 す る と い う 事 態 は 十 分 生 じ う る 。 こ う し た 状 況 を 前 も っ て 予 想 す る な ら ば 、 顧 客 自 身 が 自 ら 硬 直 的 な 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル に コ ミ ッ ト す る こ と を 、 望 ま し い と 判 断 す る か も し れ な い 。 事 後 の 観 点 か ら 見 て 望 ま し い 柔 軟 性 と 事 前 の 観 点 か ら 見 て 望 ま し い 硬 直 性 、 顧 客 が ど ち ら を 評 価 す る か は 重 要 な 問 題 で あ る 。 融 資 条 件 に 対 す る 選 好 は 、 顧 客 の 属 性 や 経 済 状 況 に よ っ て も 、 大 き く 異 な る こ と が 予 想 さ れ る 。 こ れ ら の 点 を 踏 ま え 、 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト 商 品 に 対 す る 顧 客 の 選 択 を 分 析 し た イ ン ド ネ シ ア の 研 究 を 紹 介 す る 。

イ ン ド ネ シ ア は 、 早 く か ら マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト が 発 展 し て き た 国 の 一 つ で あ る 。 イ ン ド ネ シ ア 庶 民 銀 行 ( B R I ) の マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト 部 門 は 、 世 界 で も 有 数 の 顧 客 数 と 融 資 残 高 を 誇 り 、 そ の 他 に も 、 一 般 商 業 銀 行 、 庶 民 信 用 銀 行 、 信 用 協 同 組 合 、 イ ス ラ ー ム 方 式 の M F I 、 N G O が マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト 商 品 を 提 供 し て い る 。 加 え て 、 政 府 や 外 国 の 援 助 プ ロ グ ラ ム も 充 実 し て い る 。 イ ン ド ネ シ ア の マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト に お け る 特 徴 は 、 営 利 を 目 的 と す る 商 業 ベ ー ス の 割 合 が 大 き い こ と で あ る 。 ま た 、 B R I の マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト に 代 表 さ れ る よ う に 、 有 担 保 の 個 人 貸 付 を 採 用 し て い る M F I が 借 入 の 意 思 決 定 や 融 資 チ ャ ネ ル の 選 択 が ど れ だ け 影 響 を 受 け る か で あ る 。 借 入 需 要 の 金 利 に 対 す る 弾 力 性 と 言 い 換 え て も 良 い 。 貧 困 家 計 は 極 端 な 資 金 制 約 に さ ら さ れ て い る た め 、 金 利 に 対 す る 弾 力 性 は 非 常 に 小 さ い で あ ろ う と の 見 方 が 存 在 す る 。 そ の 場 合 、 M F I は 、 融 資 金 利 を 引 き 上 げ る こ と で 収 益 を 向 上 さ せ 、 金 融 機 関 と し て の 自 立 性 を 高 め る こ と が 可 能 と な る 。 反 対 に 、 金 利 に 対 す る 弾 力 性 が 大 き い 場 合 は 、 金 融 機 関 と し て の 自 立 性 を 確 保 す る こ と と 融 資 を 拡 大 す る こ と の ト レ ー ド オ フ は 、 よ り 一 層 厳 し い も の と な ら ざ る を 得 な い 。 第 四 は 、 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル の 硬 直 性 で あ る 。 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト は 、 一 般 に 、 融 資 の 直 後 か ら 直 ち に 返 済 が 開 始 さ れ る 。 多 く の 場 合 は 、 毎 週 も し く は 隔 週 ご と に 元 利 均 等 払 い で 返 済 を 行 う ス ケ ジ ュ ー ル が 組 ま れ る 。 ま た 、 返 済 の 繰 り 延 べ は 原 則 と し て 認 め ら れ な い 。 こ の よ う な 頻 繁 か つ 硬 直 的 な 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル は 、 顧 客 の 返 済 期 間 内 に お け る キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 管 理 を 困 難 な も の と す る 。 仮 に 、 返 済 の 頻 度 を 少 な く し 、 よ り 柔 軟 な 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル へ 移 行 す る こ と が で き れ ば 、 顧 客 の 事 後 的 な 対 応 は 容 易 と な り 、 一 時 的 な シ ョ ッ ク で 債 務 不 履 行 に 陥 る 確 率 も 低 下 す る こ と が 期 待 で き る 。 し か し な が ら 、 こ れ と は 反 対 の 見 方 も 存 在 す る 。 多 く の M F I は 、 硬 直 的 な 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル に よ っ て 、 顧 客 の 返 済 に 対 す る 規 律 が 強 化 さ れ る 側 面 を 重 視 し て い る 。 事 実 、 意 味 す る が 、 ど の 程 度 の 融 資 額 を 顧 客 が 小 規 模 と 見 な す か は 、 優 れ て 実 証 的 な 問 題 と い え る 。 こ こ で 考 慮 す べ き 点 は 、 様 々 な 制 約 に よ っ て 、 融 資 額 に 自 ず と 上 限 と 下 限 が 生 じ る こ と で あ る 。 融 資 額 が あ ま り に 大 き け れ ば 、 顧 客 は 真 面 目 に 返 済 す る よ り 意 図 的 に 債 務 不 履 行 を す る 誘 因 が 高 ま る 。 一 方 、 融 資 審 査 や 資 金 回 収 に 係 る 費 用 の 多 く は 融 資 額 に 依 存 し な い 固 定 費 用 の た め 、 融 資 額 が あ ま り に 小 さ く な る と 、 平 均 的 な 金 利 設 定 の も と で は 損 失 が 発 生 し て し ま う 。 顧 客 の 希 望 額 が 上 限 よ り も 大 き い 場 合 は 、 他 の 融 資 チ ャ ネ ル に も 借 入 を 依 存 し な け れ ば な ら ず 、 顧 客 の 負 担 す る 取 引 費 用 は 大 き く な っ て し ま う 。 反 対 に 、 融 資 希 望 額 が 下 限 よ り も 小 さ い 場 合 は 、 そ う し た 需 要 が 満 た さ れ な い ま ま で 終 わ る 可 能 性 も あ る 。 後 者 は ど れ ほ ど 現 実 的 に 生 じ う る だ ろ う か 。 イ ン ド ネ シ ア で は 、 貧 困 家 計 の お よ そ 四 〇 % は 融 資 の 対 象 に な り う る 、 と い う M F I 自 身 に よ る 審 査 結 果 が 示 さ れ て い る ( 参 考 文 献 ② )。 し か し 、 実 際 に 融 資 を 受 け て い る 貧 困 家 計 の 割 合 は 、 こ れ よ り も 小 さ い 。 お も な 理 由 と し て 、 貧 困 家 計 の 希 望 す る 融 資 額 は M F I の 提 供 す る 融 資 額 よ り 小 さ い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 供 給 側 が 設 定 す る 融 資 額 の 下 限 は 、 借 入 の 意 思 決 定 に 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が 高 い の で あ る 。 第 三 は 、 融 資 金 利 の 高 低 で あ る 、 顧 客 に と っ て 金 利 は 低 い 方 が 望 ま し い こ と は 言 う ま で も な い 。 問 題 は 、 金 利 の 高 低 に よ っ て 、

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ジ ッ ト モ デ ル と い う 手 法 を 適 用 し て 得 ら れ た お も な 分 析 結 果 で あ る 。 第 一 に 、 土 地 家 屋 な ど の 資 産 保 有 状 況 は 、 無 担 保 の 融 資 を 選 択 す る 確 率 に 、 有 意 な 影 響 を 及 ぼ し て い な い 。 こ れ は 、 資 産 を 持 た な い 顧 客 が 無 担 保 の 融 資 を 評 価 し て い な い と い う こ と で は な く 、 む し ろ 、 資 産 の 保 有 状 況 に か か わ ら ず 無 担 保 の 融 資 が 好 ま れ て い る こ と を 反 映 し た 結 果 で あ る 。 た だ し 、 B P R を 含 む 全 て の 融 資 は 個 人 貸 付 で あ る た め 、 有 担 保 の 融 資 と 無 担 保 の 連 帯 保 証 貸 付 の 間 の 比 較 は で き な い 。 第 二 に 、 少 額 の 融 資 を 選 択 す る 確 率 に 対 し て 、 顧 客 の 所 得 水 準 は 有 意 な 影 響 を 及 ぼ し て い な い 。 担 保 に お け る 結 果 と 同 様 に 、 所 得 が あ る 程 度 高 い 家 計 に お い て も 、 少 額 の 借 入 が 行 わ れ て い る こ と を 反 映 し た 結 果 で あ る 。 ま た 、 農 村 に 居 住 す る 家 計 ほ ど 、 少 額 の 融 資 を 望 む こ と が 明 ら か と な っ た 。 し た が っ て 、 少 額 の 融 資 は 所 得 水 準 に か か わ ら ず 広 く 需 要 さ れ て い る が 、 投 資 機 会 に 乏 し い 農 村 家 計 ほ ど 、 よ り 明 示 的 に 少 額 な 融 資 を 望 ん で い る と い え る 。 第 三 に 、 フ ォ ー マ ル な 融 資 を 選 択 す る 確 率 は 、 自 営 ビ ジ ネ ス ( 農 業 を 除 く ) を 持 つ 家 計 で 有 意 に 高 い 。 自 営 ビ ジ ネ ス を 継 続 的 に 発 展 さ せ る た め に は 、 資 金 の 安 定 的 な 借 入 先 が 必 要 だ と 考 え ら れ る 。 こ の 点 で 、 知 人 や 親 戚 な ど の イ ン フ ォ ー マ ル な 貸 し 手 に 依 存 す る こ と は 問 題 が あ る た め 、 フ ォ ー マ ル な 金 融 機 関 が 取 引 相 手 と し て 選 択 さ れ る B P R が 新 た な マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト 商 品 の 提 供 を 開 始 し た こ と で 、 融 資 チ ャ ネ ル の 選 択 に は 変 化 が 生 じ た 。 ま ず 、 イ ン フ ォ ー マ ル な 借 入 も 含 め て 、 そ れ ま で 全 く 融 資 を 受 け て い な か っ た 家 計 の う ち 、 い く つ か の 家 計 は B P R か ら 借 入 を 行 う よ う に な っ た 。 ま た 、 別 の 融 資 チ ャ ネ ル か ら 借 入 を 行 っ て い た 家 計 の う ち 、 い く つ か の 家 計 は B P R か ら の 融 資 に 切 り 替 え た 。 B P R の 融 資 は 無 担 保 で 少 額 で あ る 。 少 額 の 定 義 を 、 や や 恣 意 的 で は あ る が 、 B P R の 最 大 融 資 額 で あ る 一 五 〇 万 ル ピ ア 以 下 に 設 定 す る と 、 調 査 地 に お け る 融 資 条 件 に は 複 数 の バ リ エ ー シ ョ ン を 観 察 す る こ と が で き る 。 具 体 的 に は 、( 一 ) フ ォ ー マ ル か イ ン フ ォ ー マ ル か 、( 二 ) 有 担 保 か 無 担 保 か 、 ( 三 ) 小 額 で あ る か 否 か 、 の 三 点 で あ る 。 た と え ば 、 B P R の 融 資 は 、 フ ォ ー マ ル 、 無 担 保 、 少 額 と 特 徴 づ け る こ と が で き る 。 ま た 、 知 人 か ら 一 五 〇 万 ル ピ ア を 超 え る 借 入 を 行 っ た 場 合 、 こ の 融 資 は 、 イ ン フ ォ ー マ ル 、 無 担 保 、 少 額 で な い と い う 特 徴 づ け が 可 能 で あ る 。 B P R 以 外 の フ ォ ー マ ル な 金 融 機 関 に よ る 融 資 に も 、( 割 合 と し て は 小 さ い も の の ) 少 額 な 融 資 が 含 ま れ て い る こ と を 指 摘 し て お き た い 。 B P R 参 入 の 以 前 と 以 後 で 、 ど の よ う な 属 性 を 持 つ 家 計 が 、 ど の よ う な 融 資 チ ャ ネ ル の 選 択 を 行 っ た か を 分 析 す る こ と で 、 顧 客 の 融 資 条 件 に 対 す る 選 好 を 実 証 的 に 推 計 す る こ と が で き る 。 以 下 は 、 二 年 間 の パ ネ ル デ ー タ に 、 混 合 ロ ャ ワ 州 に お い 実 施 し た 。 調 市 で あ る ス ラ 造 業 や 商 業 が 域 で あ る 。 調 一 般 商 業 銀 行 マ ル 金 融 機 関 い く つ か 存 在 多 く が 有 担 保 戚 か ら の イ ン わ れ て お り 、 る 。 一 方 、 伝 在 せ ず 、 調 査 い な い こ と が で 新 た な マ イ 開 始 さ れ た 。 イ ン ド ネ シ ア 銀 行 ( 以 下 で る B P R と 呼 供 す る 無 担 保 融 資 で あ る こ 小 さ い こ と も 、 特 徴 で あ る 。 一 五 〇 万 ル ピ い 。 B R I に 資 額 が 、 最 大 〇 〇 ド ル ) で 規 模 性 が 際

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特 集

特 集

マイクロファイナンス

―変容しつづける小規模金融サービス よ う に な る で あ ろ う 。 マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト の 貧 困 削 減 に 及 ぼ す 影 響 に は 懐 疑 的 な 見 方 も 存 在 す る が 、 貧 困 家 計 が 自 ら の 選 好 に 基 づ き 、 顧 客 と し て 金 融 取 引 に 参 加 で き る 場 を 創 り 上 げ て き た こ と は 、 M F I が 果 た し た 最 も 重 要 な 貢 献 だ と 思 わ れ る の で あ る 。 ( つ か だ   か ず な り / ア ジ ア 経 済 研 究 所 マ ク ロ 経 済 分 析 グ ル ー プ ) ① Ts uk ad a, K az un ari ,T ak ay uk iH ig as hik a-taa nd K az us hiT ak ah as hi, “M icr ofi na nc e Pe ne tra tio na nd Its In flu en ce o nC re dit  C ho ice in In do ne sia :E vid en ce fr om a H ou se ho ld P an el Su rv ey ,” D ev elo pin g E co no m ies ,4 8(1 ),2 01 0. ② Jo hn sto n, D on a nd Jo na th an M or du ch , “T he U nb an ke d: E vid en ce fr om In do ne -sia ,” T he W orl d B an k E co no m ic R ev iew , 22 (3 ),2 00 8,p p.5 17 -37 . ③ K ar la n, D ea n an d Jo na th an Z in m an , “C re dit E las tic itie si nL es s-D ev elo pe d E co no m ie s: Im pli ca tio ns fo rM ic ro fi-na nc e,” A m er ic an E co no m ic R ev ie w , 98 (3 ),2 00 8,p p.1 04 0-6 8. ④ Field, Erica and Rohini Pande, “Repay -ment Fr equency and Default in Micr o-Finance: Evidence fr om India,” Jour nal of th e E ur op ea n E co no m ic A sso cia tio n, 6(2-3), 2008, pp.501-509. 融 資 額 を 一 定 と し て 返 済 期 間 を 延 ば す こ と は 、 顧 客 の 毎 回 の 返 済 額 を 小 さ く し キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 管 理 を 容 易 に す る 。 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル を 柔 軟 に し 、 事 後 的 な キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 管 理 を 容 易 に す る こ と で も 、 同 様 の 効 果 が 生 じ る こ と を 期 待 で き る 。 も ち ろ ん 、 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル の 柔 軟 化 は 、 返 済 率 を 低 下 さ せ る 恐 れ も あ る 。 こ の 可 能 性 を 検 証 し た 研 究 が 存 在 す る ( 参 考 文 献 ④ )。 こ の 研 究 で は 、 M F I の 既 存 顧 客 に 、 返 済 頻 度 が 毎 週 の グ ル ー プ と 毎 月 の グ ル ー プ を ラ ン ダ ム に 作 り 出 し 、 両 グ ル ー プ の 返 済 率 を 比 較 し て い る 。 結 果 は 、 グ ル ー プ 間 で 返 済 率 に 有 意 な 差 は 生 じ な い と い う も の で あ っ た 。 し た が っ て 、 返 済 の 頻 度 は 、 通 常 主 張 さ れ る よ り も 、 返 済 率 に 重 大 な 影 響 を 与 え て い な い 可 能 性 が あ る 。 こ こ で 紹 介 し た 二 つ の 研 究 は 、 既 存 顧 客 を 対 象 と し て 、 融 資 条 件 の 変 化 が も た ら す 影 響 を 分 析 し た も の で あ る 。 今 後 は 、 融 資 を 受 け て い な い 潜 在 的 な 顧 客 も 分 析 対 象 に 含 め 、 融 資 条 件 の 変 化 が 地 域 全 体 の 金 融 取 引 に 与 え る 影 響 を 分 析 す る こ と が 望 ま れ る 。 現 在 の マ イ ク ロ ク レ ジ ッ ト は 、 純 粋 に 営 利 目 的 の 融 資 か ら 、 貧 困 削 減 を 社 会 的 な 目 標 に 掲 げ る 融 資 ま で 、 そ の 内 容 が 多 様 化 し て い る 。 融 資 条 件 に バ リ エ ー シ ョ ン が 生 じ 、 M F I 同 士 の 競 合 も 起 こ っ て い る 状 況 で は 、 顧 客 の 融 資 条 件 に 対 す る 選 好 と 融 資 チ ャ ネ ル の 選 択 が 、 ま す ま す 重 要 な 役 割 を 果 た す 傾 向 に あ る 。 第 四 に 、 B P R の 参 入 に よ っ て 、 い ず れ か の 融 資 チ ャ ネ ル か ら 借 入 を 行 う 家 計 の 割 合 は 大 幅 に 上 昇 し た 。 た だ し 、 借 入 を 行 う 家 計 の 割 合 は 、 最 貧 困 層 よ り も 、 あ る 程 度 の 所 得 を 得 て い る 層 で 大 き い 。 こ の こ と は 、 無 担 保 で 少 額 の 融 資 が 利 用 可 能 と な っ た B P R の 参 入 以 降 も 変 わ っ て い な い 。

イ ン ド ネ シ ア の 研 究 で は 、 デ ー タ と 手 法 上 の 制 約 か ら 、 金 利 と 返 済 ス ケ ジ ュ ー ル の 硬 直 性 に 対 す る 家 計 の 選 好 を 分 析 す る こ と が で き な か っ た 。 こ の 点 に 関 し て 、 既 存 文 献 を 頼 り に 簡 単 な 議 論 を 行 う 。 金 利 に 対 す る 弾 力 性 に つ い て は 、 南 ア フ リ カ の 消 費 者 金 融 を 対 象 と し た 研 究 が 存 在 す る ( 参 考 文 献 ③ )。 こ の 研 究 は 、 金 利 や 返 済 期 間 に ラ ン ダ ム な バ リ エ ー シ ョ ン を 与 え て 、 既 存 顧 客 の 融 資 需 要 に 対 す る 変 化 を 実 験 的 に 調 べ た も の で あ る 。 結 果 は 、 融 資 金 利 の 引 き 下 げ に つ い て は 、 わ ず か な が ら 借 入 の 増 大 が 見 ら れ た 一 方 、 融 資 金 利 の 引 き 上 げ に つ い て は 、 か な り 大 き な 借 入 の 減 少 が 確 認 さ れ た 。 し た が っ て 、 金 利 を 引 き 上 げ る こ と で 全 体 的 な 収 益 を 改 善 し 、 M F I の 自 主 性 を 高 め る こ と は 困 難 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 同 じ 研 究 で は 、 返 済 期 間 を 延 ば す こ と で 、 融 資 需 要 が 増 大 す る こ と も 報 告 さ れ て い る 。 こ の 効 果 は 貧 困 な 顧 客 に 関 し て 特 に 大 き い 。

参照

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