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海洋ゴミによる海洋環境汚染問題について

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TUMSAT-OACIS Repository - Tokyo University of Marine Science and Technology (東京海洋大学)

海洋ゴミによる海洋環境汚染問題について

著者

兼廣 春之

雑誌名

東京海洋大学研究報告

7

ページ

5-7

発行年

2011-02-28

URL

http://id.nii.ac.jp/1342/00000394/

(2)

Journal of the Tokyo University of Marine Science and Technology, Vol. 7, pp. 5-7, 2011

[論説]

海洋ゴミによる海洋環境汚染問題について

東京海洋大学 名誉教授 兼廣 春之

The Problem of Marine Litter in Japan

Haruyuki KANEHIRO

1.はじめに

近年、海洋ゴミによる海洋環境汚染が地球規模の問題として世界的にも注目されるようになってきた。海洋ゴミが最初に 国際的な問題として取り上げられたのは1967 年の北太平洋オットセイ委員会(日本、アメリカ、ソ連、カナダ 4ヶ国)にお いてである。この会議で、海洋に流出した漁網やロープによるオットセイやアザラシなどの海産哺乳動物への絡まり被害の 事例が多数報告され、これをきっかけに海域における漂流物の実態調査が実施されるようになった。1986 年~ 1990 年にか けて日本の水産庁により実施された北太平洋海域の漂流物調査によると、調査したほとんどの海域でゴミの漂流が確認さ れ、ゴミによる海洋汚染が太平洋海域全域に広がっていることがわかった。調査の結果、海域によってゴミの漂流密度は異 なり、ゴミの集まりやすい海域があることがわかった。特にゴミが多い海域は、ミッドウェー諸島を中心としたハワイ周辺 の海域であった。ゴミが集まりやすいこれらの海域は、太平洋ゴミベルト地帯と呼ばれ、海流に運ばれてたくさんのゴミが 流れ着く。ミッドウェー諸島の海岸には現在でも年間に数十トンを超えるプラスチック製品や、漁網・ロープなどの漁業系 廃棄物が漂着しており、そこに生息する海鳥やアザラシなどに大きな被害を与えている。 世界の海には一体どのくらいのゴミが流入しているのであろうか?世界の海全体の海洋ゴミの量については、あまり体系 的な調査データはないが、アメリカ科学アカデミーの調査によると、世界の海に流入するゴミは年間約600 ~ 700 万トンと 推測されており、そのうちプラスチック製品が大半を占めており、その量は年々増え続けていると指摘されている。

2.海洋ゴミの問題点

海洋ゴミは私たちの生活や漁業などの産業活動から発生したものであり、その大半をプラスチック製品が占めている。プ ラスチックは自然環境中ではほとんど分解しないため、一旦海洋に流れ出るとさまざまな環境汚染を引き起こす。例えば、 ①大量のゴミの漂着による海岸の景観悪化、②ゴミの堆積による干潟や漁場の汚染(魚介類の生産量低下)、③漁網・ロー プなどの漁業廃棄物によるゴーストフィッシング(漁業資源への影響)、④漁業操業被害や船舶航行被害(ゴミの混入や絡 まり)、⑤海鳥や海洋生物による誤飲・絡まり、などさまざまである。 それに加えて、ゴミの種類や発生源が多種多様なため、排出者が特定できず、ゴミの回収・処理の責任の所在が明確でな いことである。本来ならば、漂着ゴミの回収・処理は国あるいは海岸管理者の県が対応すべきであるが、現状は市町村が対 応せざるを得ないのが実情である。回収・処理に要する労力や費用は膨大であり、地方自治体にとっては大きな財政負担と なっており、漂着ゴミの回収・処理問題に対する国や行政の対応が強く望まれている。

3.海洋ゴミ問題に対するこれまでの取り組み

1980 年代に入って、日本で、海洋ゴミの実態調査が行われるようになった。先に述べた水産庁による日本近海及び北太平 洋海域における漂流ゴミ調査(1986 年~ 1990 年)を機に、行政(環境省や水産庁、国土交通省、気象庁、海上保安庁など) や研究者、ボランティア活動団体等による海洋ゴミの実態調査や清掃活動の取り組みが数多く始まった。1990 年以降これら の機関を中心として全国規模で海岸漂着ゴミの実態調査が実施されるようになり、日本の海岸に漂着するゴミの実態がかな り明確になってきた。最近の調査によると日本の海岸に一年間に漂着するゴミの量は約15 万トンと推定されている(環日 本海環境協力センター(NPEC)調査)。 近年、外国(韓国、中国、台湾、ロシアなど)から日本に流れてくる漂着ゴミの量は年々増えている。外国からの漂着ゴ ミには生活用品の他に、漁業廃棄物や医療廃棄物、工業薬品用ポリ容器なども含まれている。漁網・ロープ・フロートのよ うな漁業廃棄物は巨大で、かさばるため、回収には重機が必要とされる。また、注射器や薬瓶などの医療系廃棄物や工業薬 品の入ったポリ容器のように危険なものもある。さらに、漂着ゴミは塩分を含んでいるために、焼却するとダイオキシンの

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兼廣春之 6 発生の懸念があるなど、焼却処理もやっかいである。こうした漂着ゴミの回収・処理に要する労力や費用は膨大であり、現 地の各地方自治体にとっては大きな財政負担となっている。漂着ゴミの回収・処理を円滑に推進するためには、国や行政に よる財政支援や対策の構築が必要とされる。

4.漂流・漂着ゴミ対策に関する最近の動き

2000 年になって、漂着ゴミ問題について各省庁間の横断的な対策検討会(漂流・漂着ゴミに関する関係省庁連絡会議)が 開催され、漂着ゴミの排出と汚染の実態調査及び排出防止対策や法的規制などについての検討が開始された。漂着ゴミに関 する省庁間の横断的な検討会の開催はこれまで始めてであり、漂着ゴミ問題の解決に向けた大きな動きになるものと期待さ れた。しかしながら、関係省庁連絡会議はその後数回開催されたが、具体的な成果が得られまでにはいたらなかった。 最近になって、漂着ゴミ問題解決に向けた国や行政の取り組みが大きく動き始めた。2005 年(H17 年度)には、環境省に より「漂流・漂着ゴミに係る国内削減方策モデル調査」が発足し、漂流・漂着ゴミの①現状把握、②回収・処理方策、③発 生源対策などの検討が始まった(本モデル調査はH22 年度現在も継続中)。この他にも、漂流・漂着ゴミに係る国際的削減 方策調査(環境省:H17、18、19 年度)、海洋ゴミ削減方策検討会(環境省、H21 年度)、海岸における漂着ゴミ等危険物対 応ガイドラインの策定検討会(国土交通省:H19、20 年度)、沿岸域における漂着ゴミ等の処理方法効率化検討会(国土交 通省:H20、21 年度)、漂流・漂着物処理推進モデル事業(水産庁:H19、20、21 年度)など数多くの委員会が開催され、さ まざまな観点から漂着ゴミ対策の検討が進められている。 こうした動きと並行して、2006 年 2 月に「構造改革特区の第 8 次提案に対する政府の対応方針」が決定され、同年 4 月に 10 省庁の局長級による「漂流・漂着ゴミ対策に関する関係省庁会議」が設置され、国として本格的な検討が始まり、2007 年3 月には「漂流・漂着ゴミ対策に関する関係省庁会議の取りまとめ」が発表された。取りまとめでは、今後の漂流・漂着 ゴミ対策として、①漂流・漂着ゴミの現状(漂着状況等に関する調査結果、地方公共団体等の取組)、②漂流・漂着ゴミ問 題に対する国の取組の推進(政府としての基本的な方針・関係者の責務及び平成19 年度以降の当面の施策)、③今後の課題 (漂流・漂着ゴミの処理等に係る体制の確立)などが盛り込まれている。 一方で、大量の漂着ゴミに悩まされている各地方自治体の国会議員の中からも海洋ゴミ問題に対する国の早急な対策の必 要性が指摘されるようになり、2006 年 8 月に自民党の国会議員が中心となって「漂流・漂着ゴミ対策特別委員会(代表:加 藤紘一代議士)」が発足し、漂着ゴミに対する国としての積極的な施策の実行や自治体への支援などについて検討が始まっ た。海ゴミ問題に対する取り組みは自民党の国会議員だけにとどまらず、全国の地方議員による「海ゴミ対策推進地方議員 連盟」が発足するなど、海ゴミ問題解決に向けた取り組みは地方から国へと全国的な広がりを見せた。

5.漂流・漂着ゴミに関する法律の制定

こうした一連の動きを受けて、2009 年 7 月に海岸漂着物対策の推進を図ることを目的として、「美しく豊かな自然を保護 するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(海岸漂着物処理推進 法)」が議員立法により国会に提出され、全会一致で可決・成立し、公布された。これにより、今後、我が国における海岸 漂着物対策は本法律にのっとって関係者の適切な役割分担と連携・協力の下で、各種の施策を総合的かつ効果的に推進して いくことが定められた。 法律では海岸漂着物対策の枠組みとして以下の三つの施策を柱として推進していくことが定められた。 ・ 海岸漂着物等の円滑な処理と発生抑制を施策の両輪とする ・ 関係者間の相互協力が可能な体制づくりや、民間団体等との連携、協力、支援を通じて、多様な主体の適切な役割分担と 連携の確保を図る ・ 周辺国との間で国際的な協力の推進を図る 特に、今回の法律では海岸漂着物の処理についてこれまで不明確であった関係者間の責任が明確にされていることが特徴 的である。漂着物の処理について、国の責務や地方公共団体(海岸管理者及び市町村等)の責務、事業者及び国民の責務と 同時に、これらの関係者間の連携の必要性が定められた。また、法律の中で国は漂着物処理などを円滑に推進するための財 政的な措置を講じることなども定められている。さらに、漂着物対策を効果的に推進するために都道府県では国の基本方針 に沿って漂着物対策のための地域計画(県、海岸管理者、市町村、県民等による海岸漂着物対策推進協議会などによる)の 策定が求められている。 さらに、「海岸漂着物処理推進法」の成立に基づいて、2010 年 3 月には漂着物対策を効果的に推進するための基本方針が 閣議決定された。基本方針では、海岸漂着物対策に係る課題として、現行の取り組みでは対処し切れない量と質の漂着や、 処理に関する体制のあり方が不明確な点、ほかの都道府県や周辺国に由来するものも多く広域的な対応が必要なことなどを

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海洋ゴミによる海洋環境汚染問題について 7 挙げており、そのため、①海岸漂着物等の円滑な処理と発生抑制、②多様な主体の適切な役割分担と連携の確保、③国際的 な強力の推進、の3 項目を対策の柱として施策を展開していくこととしている。 このうち円滑な処理については、海岸管理者等の処理責任と市町村の協力義務、地域外からの漂着物に関する当該都道府 県への協力要請などを示している。また、海岸漂着物の発生抑制については、①3R(リデュース・リユース・リサイクル) の推進による循環型社会の構築、②発生状況および原因に関する実態把握、③国民の意識高揚とモラル向上、などを挙げて いる。そのほか、漂着ゴミの原因究明に関する調査や国際協力の推進、NPO など民間団体との連携の促進、国民の意識高 揚・モラル向上に向けた環境教育や普及啓発の重要性なども明記している。 これと並行して、環境省による「地域グリーンニューディール基金」が平成21 年度第 1 次補正予算で創設され、海岸漂 着物地域対策推進事業に総額55 億円(平成 21 年から平成 23 年の 3 年間)の財政補助が決定された。これにより地域にお ける漂着ゴミに関する取り組みに対する財政的な支援体制が確立された。今後は、国の財政支援の基、都道府県・市町村・ 地域の関係者により構成される協議会の下、地域計画を作成し、それに基づいて海岸漂着物の回収・処理や発生抑制等の取 り組みが総合的かつ効果的に推進されることが期待される。

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参照

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