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先物外国為替市場の予測性についての一考察

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Academic year: 2021

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(1)先物外国為替市場の予測性についての一考察 高 橋 和 秀 Ⅰ. はじめに. Ⅱ. 先行研究のサーベイ. Ⅲ. 外国為替市場についての考察. Ⅳ. 実証分析による考察. Ⅴ. 結 論. Ⅰ はじめに  通信情報技術の発達と金融工学の進歩は、取引単位の小口化と取引手数料の低 下により金融市場への参加者を増やし、取引の簡便化と高速化により金融市場全 体の流動性を高めた。この2点は資産クラスを越えた取引も容易にした。このこ とは外国為替市場においてもさらなる流動性と市場への参加者をもたらし、もと もと巨大であった外国為替市場はより一層巨大な市場とした。BIS( Bank of. International Settlement )による調査 1)では、世界の通貨取引量は2001年から 2004年の間にデイリー平均が5000億ドル増加し1兆9700億ドル、2004年か ら2007年の間にデイリー平均が1兆3000億ドル増加し3兆2100億ドルとなっ ている。近年高い成長率で注目される新興国通貨の割合は同調査で8.5%(2001 年) 、7.7%(2004年)、9.9%(2007年)である。新興国経済の拡大に伴って、 外国為替市場における新興国通貨の存在感は増しているものの、外国為替市場に おいては依然として先進工業国の存在が非常に大きい。2007年度調査において 世界の通貨取引量に占めるアメリカドルの割合は43.1%、ユーロは17.5%、日 本円は8.3%、イギリスポンドは7.5%であり、上位4通貨で約85%に達してい る。上位4通貨は取引規模とともに大きな取引シェアを占めている。  本稿では外国為替市場における先進工業国通貨と新興国通貨の取引規模の差を 1)Bank of International Settlement(2005)および Bank of International Settlement(2007). 95.

(2) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 踏まえた上で、先物外国為替市場の予測性について分析を行う。先進工業国通貨 と新興国通貨の取引規模の違いが市場の予測性に与える影響について、先行研究 で示されている先物外国為替市場の予測する力が小さいことの原因を、分析結果 を用いて考察することは意義があるものと思われる。  この考えより、本稿では先進工業国同士と先進工業国と新興国との通貨ペアに よって市場の予測性を検証している。先進工業国と新興国の違いが、市場の予測 性にどのような影響をもたらしているのかを検証し、流動性が確保されているこ とは市場効率性にもたらす影響にプラスであると考えられているが、プラスの影 響が導かれず、市場が観測する予測性を損なわせている原因についても先行研究 と本稿での比較分析を行った結果を交え言及する。  外国為替市場について、アメリカドルに対し、先進工業国として先行研究で扱 われるサンプルデータ5カ国、イギリスポンドに対し、先進工業国5カ国にアメ リカを加えた6カ国に、さらに先行研究と異なる部分として、アメリカドルおよ びイギリスポンドに対して、インドネシア、インド、タイの3カ国を新興国とし て加えて一般最小二乗法によって検定をおこなっている。検定の結果、先物外国 為替市場の予測性と通貨ペアの取引規模について同方向の関係が確認されず、ま た先進国と新興国を比べると、新興国のほうが予測に優れているという結果に なった。本稿では検定が棄却される原因として、市場の予測性を損なう原因とし て、外部要因によるところが大きいという見解を持つものである。  以下Ⅱ章では Fama(1984)および Froot and Frankel(1989)を中心にカバー 付き金利平価およびフォワードレートの不偏性仮説による先物外国為替市場の予 測力に関する先行研究をサーベイする。Ⅲ章では外国為替市場の効率性を乱して いる原因に関して見解を述べる。Ⅳ章では近年のサンプル期間および各国のサン プルデータを用いてフォワードレートの不偏性仮説について検証と分析をおこな う。. Ⅱ 先行研究のサーベイ  先物外国為替市場の効率性を検定する方法として、主に①カバー無し金利平価 ( Uncovered Interest Parity、以下 UIP と表記)による実証研究、②先物不偏性 仮説( Forward Rate Unbiasedness Hypothesis、以下 FRUH )の実証研究の2つ 96.

(3) 高 橋 和 秀 がおこなわれている。UIP とは将来のスポットレートの変化率が対応する期間の 二国間名目金利差に等しいという考えであり、先物不偏性仮説とは効率的市場で はフォワードレートとフォワードレートの満期に対応する期間の将来のスポット レートが合理的な予測値であるという仮説である。いずれも市場に参加する投資 家はリスク中立的であり、かつ合理的期待をおこなうという前提を置いている。 ①と②のそれぞれの考えと仮説を検証するための回帰式は、 d. f. =α+β(it,t+k−it,t+k) +εt,t+k (St+k−St). (1). (St+k−St) =α+β(Ft,t+k−St) +εt,t+k. (2). d. f. it,t+k は t + k 期を満期とする t 期時点での国内金利、 it,t+k である。       は t + k 期を 満期とする t 期時点での海外金利とする。また St は t 期時点でのスポットレート、. Ft,t+k は t + k 期満期の t 期フォワードレートとし、St と Ft,t+k の数値は為替レー トの値を自然対数値化したものである。回帰式のパラメーターとして用いるαは 回帰結果の推定される定数項であり、βは推定される回帰係数とする。εt,t+k は. t 期から t + k 期までの間の誤差項であり、リスク中立的な前提を置く場合、誤 差項はホワイトノイズと仮定される。(1)式について、右辺第2項の変数は内外 の金利差であり、 (2)式について右辺第2項の変数はフォワードプレミアム率で ある。UIP は間接的に、また FRUH は直接的に、フォワードレートが将来のス ポットレートの合理的な予測値であるという同一の主張を持つ。UIP の間接的に フォワードレートは将来のスポットレートの合理的な予測値であるという主張 は、為替市場におけるカバーつき金利平価( Covered Interest Parity、以下 CIP ) という考えと密接な関係があることによる。CIP とは国内外の金利差がフォワー ドプレミアム率に等しいという仮説であり、 d.  . f. (3). it,t+k−it,t+k =Ft,t+k−St. で提示される。 (3)式では、用いている変数が全て同時点において既知であるこ とから、フォワードレートを決定する際の最も単純な理論値として扱われ、常に 正しいと中窪(2000)が述べている 2)。この式を変数 id について解くと次式が得 2) (3)式を4週、13週、26週、52週で回帰分析すると、それぞれの決定係数がアメリカドル−日 本 円 で0.389、0.967、0.991、0.978、イ ギ リ ス ポ ン ド − ア メ リ カ ド ル で0.263、0.266、 0.926、0.977となった。フォワード契約の期間が長いほど、金利差に基づいた価格に決定して いる。. 97.

(4) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 られる。  . d. f. (4). it,t+k=Ft,t+k−St+it,t+k.  これは、国内の金利がフォワードプレミアム率と海外の金利の和に等しいこと を提示している。CIP と UIP が成立すると想定した場合、内外の金利差を通じ て、フォワードプレミアム率とスポットレートの変化率が等しくなることになる ので、UIP は間接的にフォワードレートが将来のスポットレートの予測値である という主張を持っていると考えられる。  UIP 仮説および FRUH が正しいならば、(1)式および(2)式のαはゼロ近傍 かつβは1をしめす。つまり(1)、(2)式の検定における帰無仮説および対立仮 説は次のようになる。 H0:β=1,α=0 H1:β≠1,α≠0  先行研究では、βを中心とした検定を行っている。UIP 仮説と FRUH が正しけ れば、帰無仮説は棄却されないので Ft,t+k = St+k より、 d.  . f. (5). it,t+k=St+k−St+it,t+k. である。この式は国内名目金利による収益は、為替の変動率と海外名目金利によ る収益との和に等しいことになる。仮に現時点で(4)式が等号ではなく不等号で あるならば、市場に無リスク収益機会が存在することになる。しかし、効率的市 場においては、一定の値への収束をもたらす市場裁定行動によって、超過的な収 益は消失し、不等号は等号になり、(5)式は満たされる。  UIP 仮説と FRUH に関する多くの実証研究では、フォワードレートが将来のス ポットレートの合理的な予測値であるという仮説について、その見解が分かれて いる。一般最小二乗法を用いた研究 3)では、それぞれの変数にかかるβの値が. UIP 仮説および FRUH の主張するβ=1から大きく外れる上、その符号が負であ ることを示している。βの符号が負であることは、 (2)式より、フォワードプレ ミアムが負であるならば、スポットレートの変化率が正である傾向があることを 指している。市場が合理的であるならば、市場参加者によってリスクフリーな収 3)Fama(1984) ,Froot and Frankel(1989)があげられる。先物外国為替市場の予測性に関して は、両論文がその後の中心となっている。. 98.

(5) 高 橋 和 秀 益機会はすぐに消失するので、一般最小二乗法の結果は、外国為替市場の予測す る能力について疑問を呈する結果である。一般最小二乗法の示した市場の予測す る能力への疑いの原因について、先行研究からの見解は主に2つにわけられる 4)。. Fama、Froot and Frankel、Hodrick(1987)によると、フォワードレートと将 来のスポットレートについて(2)式のβは公式 5)より、 β=. cov (St+1−St,Ft−St ) 2 σ(Ft−St ) 2. =. σ[ E(St+1−St )] +cov[Pt,E(St+1−St)] (6) 2 σ(Pt ) +σ[ E(St+1−St )] +2cov[Pt,E(St+1−St)] 2. ( . )は分散であり、Pt は Pt = Ft − E( St+1)で定義 と展開することができる。σ2 されるリスクプレミアムである。また cov[ Pt,E( St+1− St )]はリスクプレミ アムとフォワードレートに対応する期間のスポットレートの変化率との共分散を 示している。 (6)式はリスクプレミアムとスポットレートの期待変化率によって 構成されており、この2つの要素がβの値に影響を与える。Fama はフォワード プレミアムとスポットレートの変化率の関係が負という結果はスポットレート変 化率の分散よりも、二国間での一定ではないリスクプレミアムの方が分散は大 きいため生じているという見解を述べ、もう1つ Froot and Frankel は外国為替 レートの変動の原因が外国為替市場でのノイズによるものであるという見解を示 している。Froot and Frankel は(2)式の平均リスクプレミアムをゼロα=0とし て仮定した上で、一般最小二乗法による回帰をおこない、エラーの及ぼす影響を 観察した。その結果、負の回帰係数はエラーによるもの 6)という見解をしめし、 回帰期間において市場の予測能力を低下させる外部要因の存在が、スポットレー トの期待変化率の誤差を生じさせていると主張している。この見解は Fama の見 解と逆に、スポットレートの期待変化率の分散がリスクプレミアムの分散よりも 大きいことを述べているのである。この2つの原因について、Mayfield and. Murphy(1992)、Wolff(1987)、Zhou and Kutan(2005)が検証を行ってい る。Mayfield and Murphy は UIP について、 3ヶ月物と6ヶ月物金利をオフショ 4)他に手数料の問題を考えられるが Hodrick の検証で大きな要因ではないと述べられている。また は Engel(1996)は自身のサーベイ論文の中で、非合理的投機バブルを原因とする研究もおこな われている事を示している。 Cov(X, Y) 5)βの公式はβ= 2 σ(X ) 6)Froot and Frankel は“ R 2決定係数から変動の84%がノイズである”と述べている。. 99.

(6) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 ア市場での預金レート、および FRF(フランスフラン)、CHF(スイスフラン)、. DEM(ドイツマルク)の月の取引最終日における対 USD(アメリカドル)を用い て 7)、サンプル期間1975年1月から1990年10月で検証をおこなっている。外 国為替のリスクプレミアムαはある程度変化していると考え、(1)式より、次の ように表している。 j. α=αt,t+k j t, t+k. α. j. j. d. f. j. =St+k−St + ( it,t+k−it,t+k)=δiλt,t+k (7). j. α t, t+k    は t 期から t + k 期までの通貨 j のリスクプレミアム、i は預金金利を表し j. ている。また CAPM よりδt は通貨 j の預金資産ベータの差、λ t,t+k は t 期から. t + k 期までの金利のリスクプレミアム 8)とする。次に(7)式を1階のテーラー 展開をおこなった次の式を回帰式として用いている。 j. j. d. f. (8). (St+k−St ) =φ+ηt+μi+β(it,t+k−it,t+k) +εt+k.  . j. j. ηt=δtλt,t+k φ=δ tλt, t+k       はαに代わる定数項をあらわす。そして      は通貨に共通 する時間による一定影響を考慮する固定効果( fixed time effect )であり、また j. j. =δtλt,t+k は通貨それぞれの固定効果をあらわす。Mayfield and Murphy は μ       η t =μ i =0、η t =0および両効果を認めるという3種類の UIP の検定をおこ ない、両効果を認めるときにのみ有意にβが1に近づいている結果が導かれたこ とから、UIP が棄却される原因として、時間とともに変化するリスクプレミアム によるものという結論をしめした。 、DEM、JPY(日本円)の  一方で Wolff は対 USD の GBP(イギリスポンド) 4週ごとの金曜日のスポットレートおよび30日フォワードレートの外国為替 レートを用い、サンプル期間1973年4月6日から1984年7月13日で Kalman. filter を用いて、式を組成し、最尤値法により検定をしている。Kalman filter に よる式の組成は次のようになる。 Pt Ft, t+k−St+k= [1 0]  +Vt+l Zt Pt 0 1 P t−1 εt =       + Zt θεt 0 0 Z t−1. (9) (10). Pt はプレミアム項でフォワードレートプレミアム率であり、ν t+1は予測値と実際 7)通貨表記については ISO4217コードに基づいている。 d m rf f m rf t, t+k−i t, t+k) +i t,rft+k,i t,f t+k=β(i t, t+k−i t, t+k) +i t,rft+k とし、計算する i t,d t+k=β(i 8) (6)式について、                              αt,j t+k= (βd−βf ) (i t,mt+k−i t,rft+k)=δjtλt, t+k を得る。 と、                    . 100.

(7) 高 橋 和 秀 の観察値の差異である。最尤値法によりリスクプレミアムが一定の値に持続する という結論をしめした。また Zhou and Kutan は GBP、CAD(カナダドル)、. FRF、DEM、JPY、CHF の月の最終日の1日前のスポットレートと1ヶ月フォ ワードレートを用いて、サンプル期間1977年9月から1998年6月で FRUH と 同時にフォワードプレミア率のβが1から乖離している外部要因としてペソ問題 にあることの検証をおこなった。アメリカにおけるペソ問題とは1980年代のア メリカの金融・財政政策の失敗により、長い間フォワードレートがスポットレー トよりも減価した状態である 9)。アメリカドルがプレミアムを持つ場合において、 統計的に有意にβが1に近く、FRUH がフォワードプレミアム率の符号に依存し ているという見解 10)に対し、正負のフォワードプレミアムに分けて次の式で. FRUH の検定をおこなっている。 St+k−St= (Ft−St )≧0]+α−×d[(Ft−St )<0]+ α+×d[ ×d[(Ft−St ) ≧0]+ β+(Ft−St ) ×d[(Ft−St ) <0]+εt+1   (11) β−(Ft−St ). d( . )は真ならば1をとり、偽ならば0をとるので、そのため正と負のフォワー ドプレミアム率を区別して検定する。Zhou and Kutan はサンプル期間、1980 年1月から1987年12月までの期間およびペソ問題を除いたサンプル期間全体の 3種類をそれぞれ(11)式で検定し、その結果フォワードプレミアムの符号では なく、FRUH は期間に依存していることを示した。  また UIP 仮説、FRUH に肯定的である見解として、Bilson(1981)は、「外国 為替投機により、収益を得ることができないという仮説は誤りである」11)という 見解とともに、FRUH について、肯定的な見解を述べている。先物外国為替市場 の予測能力についての実証研究は、異なる検定方法 12)によって再検証がなされて おり、 “ UIP はかつてほど強く否定されるわけではない[ Mayfield and Murphy (1992)、井上(2004) ]”とされている。しかし UIP も FRUH も同一の検定方法 を用いた検証では、異なったサンプル期間やフォワードレートの期間を用いた場 9)ペソ問題については Isard(1995) 10)Wu and Zhang(1997) 11)Bilson(1981)は先物外国為替市場の効率性について疑問を呈しているが、FRUH については極 端な市場の動揺がない限り、成立すると述べている。 12)VAR、Johansen Likelihood、GARCH による実証研究が行われている。新関(1999)、Delcoure 他(2000) 、Baillie(1989)、Bekaert(1995),佐藤(2007). 101.

(8) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 合、異なる結果が度々導かれている 13)。  ま た 外 国 為 替 市 場 の 予 測 で な い と い う 検 証 結 果 に も と づ い て、Kritzman (1999)は運用会社が自社の外国為替運用における活動の十分な利益的根拠を示 すために、外国為替市場の非効率性および予測性に関する実証的な調査研究をし ている 14)。また CFA Institute(2000)内で Levich は外国為替のアクティブ運用 の妥当性を認め、通貨インデックスからプラスした利益を得ることが可能である という見解を示している。Kritzman はフォワードレートバイアスを“フォワード ディスカウントまたはプレミアムがスポットレートの変化を過大に評価している 事実からくるもの”と記し、自身の検証結果をふまえた上で“フォワードレートの ディスカウントまたはプレミアムが将来のスポットレートの変化を過大評価して いるだけでなく、平均すると間違った方向を推定している”と、実証研究の検証 結果に含まれる寓意を述べている。誤った推定を生じさせる原因について、上記 で述べた2つの見解を中心に考察する。. Ⅲ 外国為替市場についての考察  Baillie and Bollerslev(2000)は“外国為替市場の効率性に関するアノマリー は立証された一定不変のものになり、そしてもっとも重要な解決されていない矛 盾である”と述べている。本章では市場参加者から、外国為替市場の予測性を乱 す要因を考察する。. 1 どのような市場参加者が取引を行うのか  外国為替市場は使用動機と利益動機の2種類に分けられる動機を持った参加者 が混在している。使用動機とは貿易・現地投資および費用の支払い・残額の交 換・政府の市場介入のような実需による動機、利益動機とは海外証券保有・売買 や外国為替取引によって利益を得ようとする動機を指す。  また使用動機にもとづく取引は、貿易・国外事業投資および外国通貨建て費用 の支払いや国内使用のための外国通貨の交換といった消費のための取引と政府介 入に分けられる。通貨変換を要する消費のための取引は通貨取引のタイミングと 現時点の為替レートや将来期待される為替レートは無関係であり、また政府介入 は当該国の政府や海外政府との協調によって、将来の為替レート誘導および為替 13)VAR による検定について、井上(2000)はβが有意に1に近いと述べ、Baillie(1989)や Bekaert (1992)はβが1であることを有意に棄却している。 14)運用会社の調査研究についてはウィリアム・エム・マーサー(2000)を参照。. 102.

(9) 高 橋 和 秀 レートが政府の意図している水準にない場合には、市場で均衡している為替レー トに関係なく取引がおこなわれる。そのため、この2つを目的とする場合の外国 為替取引は、市場の期待する為替レートから一時的に外れる原因を作る。次に利 益動機にもとづく取引は、ポートフォリオのための取引と市場間から生じた無リ スク収益機会を獲得するプロによる個別裁定および予測した変動に賭ける投機取 引に分割できる。海外資産による収益とリスクのリバランスを目的とするポート フォリオと個別裁定および投機取引はスポットレートや将来のスポットレートお よびフォワードレートと無関係ではない。なぜなら利益動機にもとづく取引をお こなう市場参加者は実際の資産保有者でないことが多く、ほとんどの市場参加者 は法律や契約によって、実際の資産保有者への資産の内容およびパフォーマンス の公開が定められ、パフォーマンス善し悪しによって、報酬や市場参加者の経済 的環境が変化する。そのために利益動機にもとづく市場参加者は、パフォーマン スに大きく影響を与えるスポットレートとフォワードレートの外国為替レート変 動に無関係ではない。プロによる個別裁定は、スポットレートに無関係な取引に よって均衡を外れた為替相場に対して、市場間取引により利益を得る。次に予測 した変動に賭ける投機取引はキャッシュフローを生む原資産から収益を得ること が目的でなく、スポットレートの変化やフォワード取引を用いて利益を得ようす るので、投機者は自国通貨と購入通貨の間で偏った確信を抱いている。またポー トフォリオのための取引者は証券投資から収益を得ることが主であるが、投資国 の証券が生み出す収益率以上に、母国通貨の増価が生じることは好まない。なぜ なら他国通貨に投資する際は自国通貨が弱くなるほうが正の収益が得られるから であり、逆に自国通貨が強くなると確信している、確信にいたらずともそのよう に考えているならば、海外の通貨を購入する行動はしない。すなわち為替レート の変動の主因はポートフォリオと投機動機にもとづいた取引が主であるであると 考える。  したがって利益動機に基づく取引が、期待する将来のスポットレートに大きな ばらつきを引き起こしていると考える。この見解は Froot and Frankel に従うもの である。. 2 市場参加者の行動に影響する要因  外国為替市場の参加者はそれぞれに異なる目的を持ったうえで、目的に見合う ような合理的行動をしている。そのため、目的の異なる合理的な市場参加者に影 響を与える要因について考えなければならない。副島(2000)は市場参加者の行 動様式に影響を与える要因について、 “市場規模;市場とプレーヤーの相対的な 103.

(10) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 大きさ、投機を呼び込みやすい市場特性、外部的規制要因、内部的要因、情報を めぐる問題、心理的要因”、以上の6点、を取り上げている 15)。この中ですべて の市場参加者が共通して容易に知ることができる要因は、市場プレーヤーとの相 対的な大きさである。外国為替市場を個別の通貨で観察した場合、その大きさに は歴然とした差がある。取引シェア上位10通貨で90%を占め、OECD 非加盟国 (シンガーポール、香港、台湾除く)通貨の総計は6.65%である 16)。表1は各国 4週次のスポットレートの標準偏差である。インドの標準偏差の小ささは意外で あるが、他の新興国は先進工業国の標準偏差よりも大きいことがわかる。アメリ カドルや先進工業国通貨のような非常に大きい市場では、巨大なプレーヤーが算 入してきたとしても吸収できるので規模の大きい市場ほど効率的市場であると考 えられる。一方新興国のような取引総量が少ない流動性の不安定な通貨に対し て、巨大なプレーヤーが投機的参入をすることは通貨変動の不安定をまねき、ま た通貨安定を目的とする政府による介入を呼び込むため、市場が効率的な状態か ら遠ざかる。このことから市場規模の大きい通貨ペアほど、通貨に支払うリスク プレミアムは小さくなると考えられる。 表1 通貨ペアの4週スポットレートの標準偏差 AUD. CAD. CHF. IDR. INR. JPY. NZD. THB. USD. USD. 2.942% 1.762% 2.747% 9.603% 1.271% 3.053% 3.166% 3.967%. GBP. 2.838% 2.490% 1.973% 9.524% 2.652% 3.146% 2.982% 4.124% 2.198%. 3 相関係数と市場裁定能力の差異  効率的市場であるならば、ある国の外国為替レートの変化は、その一国を基準 としたその他の国との為替レートを変化させ、その場合の相関係数は1である。 よって相関係数を見ても、どちらの市場が裁定能力に劣りがあるのかという把握 はできないが、市場の裁定に差があるということは容易にわかる。ある通貨ペア の市場の裁定の働きが低く、片方の通貨を基準とし、別の通貨をペアとする市場 の裁定の働きが高い場合、それらの相関係数は小さくなる。またペソ問題のよう な期間には、相関係数の値は変わりやすい。スポットレートに先行してフォワー ドレートが減価し続け、負のフォワードプレミアムが継続して発生した期間の対. USD 相場の変動について、Isard が“市場の期待が結果的に正しいことが証明さ れ、事前に十分に合理的であったけれども、すぐにはそれが実現しなかったとい う事実は、減価前の期間を含む有限のデータサンプルについて、先物レートをバ 15)副島(2000)P17 16)BIS(2007)より算出. 104.

(11) 高 橋 和 秀 イアスのかかった予測値にしてしまった”17)と述べたように、一つの通貨国の経 済にバイアスがかかるような場合においては、個別裁定が相関係数を低くする原 因となる。なぜなら、平時の市場環境であるならば、当事国間の為替相場変動 は、第三国との為替との間に裁定機会を作り出し、利益動機を持つ市場参加者に とって裁定行動が合理的行動であるからである。市場が減価を予測するなかで、 個別裁定行動は相関を乱すことになる。  表2は1997年7月から2007年6月までのオーストラリアドル AUD、カナダ ドル CAD、スイスフラン CHF、日本円 JPY、ニュージーランドドル NZD の対 アメリカドル USD と各国に USD を加えた対イギリスポンド GBP の週次スポッ トレートの変化率の相関係数である。表2からそれぞれの通貨間に正の相関があ り、対 USD では0.2096から0.7998であり、対 GBP では0.8719の間にある ことが確認でき、また相関係数が0.5を超えるものは、対 USD において10個中 2個、対 GBP においては15個中6個を確認できた 18)。すなわち半分以上の通貨 において、裁定の働きにやや差があると考えられる。  このことを踏まえ、次章での分析にすすむ。 表2 週次スポットレートの相関関係. AUD CAD CHF JPY NZD. AUD CAD CHF JPY NZD USD. AUD 1.00 0.54 0.33 0.35 0.80 AUD 1.00 0.68 0.17 0.40 0.71 0.62. 対 USD CAD CHF 1.00 0.25 0.21 0.44. 1.00 0.44 0.42. 対 GBP CAD CHF 1.00 0.20 0.42 0.55 0.87. 1.00 0.48 0.23 0.21. JPY. NZD. 1.00 0.33. 1.00. JPY. NZD. USD. 1.00 0.39 0.45. 1.00 0.52. 1.00. Ⅳ 実証分析による考察  本章では近年のサンプルデータを用い、一般最小二乗法による FRUH の関係に ついて分析する。サンプル期間は1997年1月1日∼2007年6月30日 19)で、 17)Isard(1995)邦訳 P98 18)新興国(インドネシア、インド、タイ)の場合、対 USD について1つのペアで、対 GBP では6つ のペアで0.5を上回った。 19)ただしインドは、データの取得の都合で1997年10月28日を始点としている。. 105.

(12) 先物外国為替市場の予測性についての一考察. USD に対して AUD、CAD、CHF、IDR(インドネシアルピア)、INR(インド ルピー) 、JPY、NZD、THB(タイバーツ)の8カ国および GBP に対して AUD、. CAD、CHF、IDR、INR、JPY、NZD、THB、USD の9カ国を採用し、週次の スポットレートおよび4週、13週、26週、52週のフォワードレートを用いて 20) フォワードプレミアム率による複数の対応する期間のフォワードレートバイアス 率とスポットレートの変化率に対する回帰分析をおこなう。それにより、直近10 年間の FRUH についての分析と先進工業国だけでなく新興国の両方の為替レー トをもちいたことで、経済成長と為替市場の規模の差をつけて比較することが可 能になる。また基準通貨を2つ据えることで、市場の予測性についてアメリカに 偏重した分析から、より広がりのある分析ができると考える。2つ目の基準通貨 における条件として、データの入手が可能であり、サンプル期間が十分に存在す る、かつ USD との比較が可能であることから GBP を選択している。  フォワードプレミアムによる t + k 期のフォワードレートバイアスの回帰式は、  . =α1+β1(Ft,t+k−St ) +εt,t+k (Ft,t+k−St+k). (12). であり、またフォワードプレミアムによるスポットレートの変化率の回帰式は (2)式で行うが、結果について区別をするために添字をつけ、  . =α2+β2(Ft,t+k−St ) +εt,t+k (St+k−S t ). (13). とする。また誤差項についてはホワイトノイズと仮定して、検定を行う。なお Ft+k−S t (12)と(13)式は左辺を和算することで    となるので、α 1+α2 =0、 β1+β2 =1であるので、(12)式が統計的に棄却されない場合に(13)式で棄却 されたとしても、十分な信頼を得ることができないので、 (12)式と(13)式両方 が棄却できる場合にのみ、FRUH が棄却される。よってそれぞれの帰無仮説と 対立仮説は、 H0:β1=0,β2=1 H1:β1≠0,β2≠1 となる。帰無仮説が棄却されない場合、 (12)式が定数項と誤差項から成り立つこ とになり、フォワードレートバイアス率がランダムであることを示している。ま たこの時、 (13)式のβ2=1であることから、 スポットレートの変化率が現在のフォ ワードプレミアムに等しいということになり、FRUH が成立することになる。 (12)式お  表3−1,2は対 USD について、表3−3,4は対 GBP についての、 よび(13)式の回帰分析の結果をあらわしている。 20)データの取得は Thomson Datastream Advance4.0を用いている。. 106.

(13) 高 橋 和 秀 表3−1 回帰分析の結果(1) Model 1: Ft,t+4− St+4=α1+β1( Ft,t+4− St )+εt,t+4 Model 2: St+4− St =α2+β2( Ft,t+4− St )+εt,t+4 Test Statistics. α1. β1. α2. β2. 0.772. R-Squared1 R-Squared2. S.E. of regression. N. 対 USD AUD. 0.001**. 0.228. -0.001 . CAD. 0.002**. 1.587. CHF. 0.005. 2.993. IDR. -0.008**. 0.609. 0.008. INR. -0.004**. JPY. 0.002. 0.019. 0.029. 544. -0.002** -0.587**. 0.044. 0.006. 0.018. 544. -0.005  -1.993**. 0.037. 0.017. 0.027. 544. 0.391**. 0.058. 0.025. 0.095. 544. 1.869. 0.004** -0.869**. 0.139. 0.034. 0.013. 501. 0.002**. 1.726. -0.002  -0.726**. 0.018. 0.003. 0.031. 544. NZD. -0.004**. 3.407. 0.004. -2.407**. 0.048. 0.024. 0.031. 544. THB. 0.003**. 0.142. -0.003 . 0.858. 0.002. 0.080. 0.038. 544. **:5%水準で有意である。. Model 1: Ft,t+13− St+13=α1+β1( Ft,t+13− St )+εt,t+13 Model 2: St+13− St =α2+β2( Ft,t+13− St )+εt,t+13 Test Statistics. α1. β1. α2. β2. S.E. of R-Squared1 R-Squared2 regression. N. 対 USD AUD. -0.004. 28 . 50 **. 0.004  -1.850**. 0.123. 0.056. 0.050. 535. CAD. 0.006**. 2.789** -0.006** -1.789**. 0.090. 0.039. 0.032. 535. CHF. 0.026**. 4.452** -0.026** -3.452**. 0.123. 0.078. 0.046. 535. IDR. -0.026**. 0.682**. 0.026**. 0.318**. 0.027. 0.006. 0.196. 535. INR. -0.005**. 1.442**. 0.005** -0.442**. 0.094. 0.010. 0.026. 492. JPY. 0.013**. 2.349** -0.013** -1.349**. 0.038. 0.013. 0.054. 535. NZD. -0.019**. 0.019** -3.692**. 0.127. 0.083. 0.058. 535. THB. 0.005. 0.004. 0.068. 0.079. 535. 4.692** -0.312. -0.005. 1.312. **:5%水準で有意である。. 107.

(14) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 表3−2 回帰分析の結果(2) Model 1: Ft,t+26− St+26=α1+β1( Ft,t+26− St )+εt,t+26 Model 2: St+26− St =α2+β2( Ft,t+26− St )+εt,t+26 Test Statistics. α1. β1. α2. β2. R-Squared1 R-Squared2. S.E. of regression. N. 対 USD AUD. -0.019**. 0.019** -3.688**. 0.332. 0.235. 0.066. 522. CAD. 0.012**. 4.061** -0.012** -3.061**. 0.255. 0.163. 0.042. 522. CHF. 0.055**. 4.243** -0.055** -3.716**. 0.241. 0.195. 0.055. 522. IDR. -0.070**. 1.093**. 0.070** -0.093**. 0.063. 0.000. 0.288. 522. INR. -0.004. 0.975**. 0.004. 0.025**. 0.087. 0.000. 0.036. 479. 2.743** -0.034** -1.743**. 0.101. 0.043. 0.073. 522. 4.688**. JPY. 0.034**. NZD. -0.050**. 5.608**. 0.050** -4.608**. 0.267. 0.197. 0.082. 522. THB. -0.001. 0.037. 0.001. 0.000. 0.035. 0.119. 522. 0.963. **:5%水準で有意である。. Model 1: Ft,t+52− St+52=α1+β1( Ft,t+52− St )+εt,t+52 Model 2: St+52− St =α2+β2( Ft,t+52− St )+εt,t+52 Test Statistics. α1. β1. α2. β2. S.E. of R-Squared1 R-Squared2 regression. N. 対 USD AUD. -0.043**. 0.043** -4.262**. 0.473. 0.371. 0.096. 496. CAD. 0.026**. 4.940** -0.026** -3.940**. 0.517. 0.405. 0.051. 496. CHF. 0.116**. 5.012** -0.116** -4.012**. 0.503. 0.393. 0.069. 496. IDR. -0.177**. 1.659**. 0.177** -0.659**. 0.142. 0.025. 0.436. 496. INR. -0.002. 0.776**. 0.002. 0.224**. 0.131. 0.012. 0.047. 453. 2.818** -0.074** -1.818**. 0.215. 0.102. 0.092. 496. 5.262**. JPY. 0.074**. NZD. -0.113**. 6.386**. 0.113** -5.386**. 0.434. 0.353. 0.118. 496. THB. -0.015. 0.930**. 0.015**. 0.051. 0.000. 0.156. 496. 0.070**. **:5%水準で有意である。. 108.

(15) 高 橋 和 秀 表3−3 回帰分析の結果(3) Model 1: Ft,t+4− St+4=α1+β1( Ft,t+4− St )+εt,t+4 Model 2: St+4− St =α2+β2( Ft,t+4− St )+εt,t+4 Test Statistics. α1. β1. S.E. of R-Squared1 R-Squared2 regression. α2. β2. 0.001. -2.183**. 0.015. 0.007. 0.028. 544. -0.151. 0.002. 0.000. 0.025. 544. -0.810**. 0.008. 0.002. 0.020. 544. N. 対 GBP AUD. -0.001. CAD. 0.000. 1.151. CHF. 0.002. 1.810** -0.002. IDR. -0.010**. INR. -0.005**. JPY. 3.183**. -0.001. 0.656**. 0.010**. 0.344**. 0.044. 0.012. 0.095. 501. 2.429**. 0.005** -1.429**. 0.064. 0.023. 0.023. 501. -0.002** -2.749. 0.018**. 3.749. 0.007. 0.012. 0.031. 544. NZD. -0.001. 1.615. 0.001. -0.615. 0.004. 0.001. 0.030. 544. THB. 0.000. -0.235. 0.002. 1.235. 0.001. 0.026. 0.041. 544. USD. -0.001. 0.001. 0.038**. 0.008. 0.000. 0.022. 544. 0.962**. **:5%水準で有意である。. Model 1: Ft,t+13− St+13=α1+β1( Ft,t+13− St )+εt,t+13 Model 2: St+13− St =α2+β2( Ft,t+13− St )+εt,t+13 Test Statistics. α1. β1. α2. β2. S.E. of R-Squared1 R-Squared2 regression. N. 対 GBP AUD. -0.004**. 0.071. 0.042. 0.045. 535. CAD. 0.003. 1.705** -0.003. -0.705**. 0.003. 0.002. 0.043. 535. CHF. 0.006. 1.776** -0.006. -0.776**. 0.024. 0.005. 0.031. 535. IDR. -0.034**. 0.834**. 0.034**. 0.166**. 0.031. 0.001. 0.193. 535. INR. -0.011**. 1.767**. 0.011** -0.767**. 0.092. 0.019. 0.037. 492. JPY. -0.050** -2.530**. 0.046**. 3.530**. 0.016. 0.031. 0.051. 535. NZD. -0.003. 0.735. 0.003. 0.265. 0.002. 0.000. 0.051. 535. THB. -0.009**. 0.114. 0.009**. 0.886. 0.000. 0.018. 0.080. 535. -0.004**. 1.432. 0.004** -0.432. 0.007. 0.001. 0.035. 535. USD. 4.114**. 0.004** -3.114**. **:5%水準で有意である。. 109.

(16) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 表3−4 回帰分析の結果(4) Model 1: Ft,t+26− St+26=α1+β1( Ft,t+26− St )+εt,t+26 Model 2: St+26− St =α2+β2( Ft,t+26− St )+εt,t+26 Test Statistics. α1. β1. α2. β2. S.E. of R-Squared1 R-Squared2 regression. N. 対 GBP AUD. -0.008**. CAD. 0.002. 1.324** -0.002. CHF. 0.013. 1.395** -0.013. IDR. -0.090**. INR. -0.021**. JPY. 2.603**. 0.008** -1.603**. 0.190. 0.082. 0.060. 522. -0.324**. 0.011. 0.001. 0.060. 522. -0.395**. 0.105. 0.009. 0.041. 522. 1.414**. 0.090** -0.414**. 0.091. 0.008. 0.284. 522. 1.609**. 0.021** -0.609**. 0.177. 0.030. 0.048. 479. 0.086**. 3.017**. 0.022. 0.048. 0.069. 522. 0.086** -2.017**. NZD. -0.012**. 1.878**. 0.012** -0.878**. 0.019. 0.004. 0.076. 522. THB. -0.021**. 0.474. 0.021**. 0.526. 0.007. 0.008. 0.118. 522. USD. 0.000. 2.681**. 0.000. -1.681**. 0.111. 0.047. 0.047. 522. **:5%水準で有意である。. Model 1: Ft,t+52− St+52=α1+β1( Ft,t+52− St )+εt,t+52 Model 2: St+52− St =α2+β2( Ft,t+52− St )+εt,t+52 Test Statistics. α1. β1. α2. β2. S.E. of R-Squared1 R-Squared2 regression. N. 対 GBP AUD. -0.012**. 0.135. 0.067. 0.087. 496. CAD. 0.005. 1.130** -0.005. -0.130**. 0.018. 0.000. 0.076. 496. CHF. 0.039**. 2.079** -0.39 ** -1.079**. 0.142. 0.043. 0.053. 496. IDR. -0.201**. 1.874**. 0.201** -0.874**. 0.173. 0.043. 0.429. 496. INR. -0.035**. 1.337**. 0.035** -0.337**. 0.286. 0.025. 0.060. 453. JPY. -0.192** -2.461** -0.192**. 3.461**. 0.064. 0.118. 0.094. 496. NZD. -0.037**. 3.287**. 0.037** -2.287**. 0.079. 0.040. 0.108. 496. THB. -0.037**. 1.256**. 0.037** -0.256**. 0.087. 0.004. 0.147. 496. 0.210. 0.107. 0.147. 496. USD. 0.006. 3.076**. 0.012** -2.076**. 3.022** -0.006. -2.022**. **:5%水準で有意である。. 110.

(17) 高 橋 和 秀 (12)式の回帰係数β1 に関して、有意水準5%とおくとき、対 USD の4週の フォワードレート期間について、全ての通貨について帰無仮説を棄却できない が、13週、26週では帰無仮説は THB を除いて棄却され、52週では全ての通貨 について帰無仮説は棄却された。対 GBP の4週回帰では5通貨、13週では6通 貨、26週では8通貨、52週で全ての通貨において棄却された。つまりフォワー ドレート期間が長くなるほどフォワードレートバイアス率の発生がランダムでは ないという結果になっている。次に(13)式の回帰係数β2 について、有意水準を 5%とおくとき、検定結果より対 USD で THB を除くほとんどの通貨において、 帰無仮説が棄却された。THB は4週、13週、26週においてβ2 が1に近い値をと り、52週でのみ帰無仮説を棄却された。このことから USD-THB はほぼ FRUH が成立すること判明した。また AUD では4週フォワードレート期間において帰 無仮説を棄却できなかった。さらに対 GBP について、GBP-THB は USD と同様 に52週を除いて帰無仮説は棄却できない。また GBP では4週のフォワードレー ト期間で CAD、JPY、NZD、13週のフォワードレート期間で NZD、USD も棄 却されなかった。このため対 GBP においても THB ではほぼ FRUH が成立して いると考えられる。   (12)式と(13)式およびβ1+β2=1の関係より、総じて対 USD と対 GBP の 両方で4週のフォワードレート期間においての帰無仮説の棄却できない結果と なった。これはフォワードレート期間が短いほど、フォワードレートの予測力が 高いことがおおむね言えることになる。また THB が最もフォワードレートの予 測に優れていることが判明したが、FRUH の棄却された他の新興国を見ると、対. USD についてはβ2 が先進国よりも1に近い値をとっていることがわかる。ただ し対 GBP についてはこの限りではない。対 USD と対 GBP を比較した場合、先 進工業国通貨では対 GBP の方がβ2 はおおむね1に近く、新興国通貨では対. USD の方が1に近い傾向がある。このことから先進工業国同士の外国為替取引つ いては取引量の少ないほうが、また先進工業国と新興国間の外国為替取引につい ては取引量の多いほうが、先物外国為替市場に予測力があるという説明ができ る。  また分析に用いた通貨の中で INR は対 USD および対 GBP についてフォワード レート期間が長くなるにつれ、一貫してβ2 が正に近づくような推定値を得た。 この結果は対 USD について、他の採用通貨と整合性のある結果ではなく、通貨 特有の原因があると考えられ、今後の課題となる。  本稿での FRUH による外国為替市場の予測性についての検定結果は、先進工業 111.

(18) 先物外国為替市場の予測性についての一考察 国よりも新興国のほうが市場の予測性が高いことを示唆している。そのことから 外国為替市場の予測する力を損ねている問題について Froot and Frankel による 見解が支持される。特に13週を超えると、市場規模と市場予測する力との関係 は小さい。このことが期間金利にもとづいて決定される先物相場という CIP との 間に矛盾している。CIP では、期間が長くなるほど、現時点で考える将来時点に ついての予測は金利に集約されているが、FRUH についての本稿の検定結果か ら、金利で決定される合理的であるはずの先物相場との間に乖離が生まれてい る。このことから取引量の大きい通貨ペアほど投機的市場参加者が多いと考えら れるので、偏った通貨予測のためにスポットレートの観測エラーのばらつきが多 くなり、市場の予測性を阻害する原因となっていると考えられる。. Ⅴ 結論  本稿では、外国為替市場における先進工業国通貨 AUD、CAD、CHF、JPY、. NZD、USD および新興国 IDR、INR、THB について対 USD および対 GBP の 先物不偏性仮説に基づいた市場予測性と効率性の実証をおこなった。その結果、 対 USD では短期的な場合に、検証した全ての通貨に対してフォワードレートバ イアス率がランダムに発生していること、また同期間では対 GBP と比べて対. USD の方が先物為替市場に予測能力のあることを示した。また13週以降の結果 から、フォワードレート期間が先進工業国では先物不偏性仮説はほとんど支持さ れず、新興国については一部支持され、また推定された回帰係数も先進工業国よ り、仮説に近い値をとった。新興国は成長率が大きいが経済の安定性が先進工業 国よりも劣るため、先進工業国と新興国の外国為替市場を比較した場合、先進工 業国同士の通貨ペアがより効率的市場に近くなることが考えていたが、新興国を 加えた本稿の研究において、それに反する結果が導かれた。Ⅱ章で Fama と Froot. and Frankel の先物外国為替市場の予測性に関する見解に基づき考察を述べた が、実証結果と新興国との比較より、先進工業国において Froot and Frankel の 見解を支持するものである。ただしフォワードレートバイアスが発生すること は、市場参加者が合理的でないということではない。今後の課題として、Froot. and Frankel の見解が支持される場合、外国為替市場の予測能力が損なわれてい る状態は継続することが考えられるため、投機者の予測が偏ったままであるかど うかということが継続するのかを検証する必要がある。また新興国のサンプル データを増やし、今回の検証が新興国に一貫して確認されるものかどうか、そし 112.

(19) 高 橋 和 秀 て本稿で理論的な整合性がみられなかった問題についての理論的解決にのぞむこ とがあげられる。. (筆者は関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了). 113.

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