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近畿における地区別都市ガス需要原単位の分析

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Academic year: 2021

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(1)

エネルギー・資源 28f

■ 報 文 ■

近畿における地区別都市ガス需要原単位の分析

AnalysisofCityGasDemandinResidentialSectorUsingSmallArea

DatainKansaiRegion

辻 毅 一 郎 * ・ 久 保 田 英 之 * * ・ 鈴 木 I

胖***

Suzuki

英 之 * * ・ 鈴 木

K u b o t a Y u t a k a Hideyuki KiiChiroTsuji 1 . ま え が き 民生用エネルギー需要構造を明らかにすることは, エネルギー需要の将来を見定める上できわめて重要で ある.筆者らは近畿地域を対象とし,地区別需要デー タを用いて民生用エネルギー需要の分析を行ってきた

[1,2]が,本報文では家庭用都市ガス需要原単位に関す

る重回帰分析結果を述べ,得られた知見を明らかにする ことを目的とする.分析の対象としたデータは,近畿 地域の120地区別の家庭用都市ガス需要原単位で「地 域エネルギーシステム研究」[3]において推定したも のである.図-1に120地区別にみた京阪神地区の家庭 用都市ガス需要密度を示す.重回帰分析の説明変数と しては,所得,価格,気温のほかに,住宅面積や世帯 人員,それに都市化の度合を表す指標として人口(あ るいは住宅地)密度や業務商業従業者(あるいは業務 商業地)密度を考慮し,種々の推計を行った. なお本報文における分析の流れは,別途行った家庭 用電力原単位の分析[4]におけるそれと同様である. j上上上上満 祁以以以以未 kOOOOO r叩加卵55 a︹U5 C・5 醜ロ■蹴鯛幽川目︺ 図−1都市ガス需要密度の地区分布(120地区 ベース,1980年) [│06kcal/世帯.年] 5.0可

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M I972I9731974197519761977197819791980 年度 函 夏 期 ■ 冬 期 図 − 2 家 庭 用 都 市 ガ ス 原 単 位 の 推 移 ( 京 阪 神 地区平均,1972∼1980) 2 . 家 庭 用 都 市 ガ ス 原 単 位 の 推 移 家庭用都市ガス原単位は,月別家庭用都市ガス需要 量 を 月 別 需 要 家 数 で 割 る こ と に よ り 推 定 し た . こ の 推 定により,都市ガスの普及世帯あたりの月別使用パタ ーンが得られる.家庭用都市ガスの主たる用途は,厨 房,給湯ならびに暖房であり,電力の場合と同様月別 使用パターンから各使用目的別需要原単位に分解でき ると期待できる.しかしどの月においても給湯分ある いは厨房分の特定化ができず,使用目的別への分解は 困 難 で あ っ た . そ こ で 年 間 の 原 単 位 を 夏 期 分 ( 5 月 ∼ 10月)と冬期分(11月∼4月)とに分け,気温や冬期 の暖房分の影響を考慮した分析を行うこととした. 図−2は,1972∼1980年の京阪神地区家庭用都市ガス 原 単 位 平 均 値 の 推 移 を 示 し た も の で あ る . 平 均 値 は 1972年のおよそ3.8×106kcal/世帯・年から1980年の およそ4.1×106kcal/世帯・年へと増加傾向にあるもの *大阪大学工学部電気工学教室助教授 〒565吹H」市山田丘2−1 **大阪大学工学部電気工学教室 ***大阪大学工学部電気工学教室教授 (註)本研究会第5回研究発表会(61/4/23)にて講淡 原稿受理(61/8/4)

(2)

Vo1.8No.3(1987) 287 のその伸び率は小さい.夏期分は年間のおよそ40%, 冬期分は60%を占めているが,冬期分の毎年の変動は

夏期分のそれに比べてかなり大きい.年間平均値は,

家計調査に基づく推計結果[5]と比較してかなり大き

いが,その差は年々小さくなっている塗) 図-3は,1972年から1980年までの都市ガス普及世帯 あたりの原単位の分布の推移を,各年度ごとに各地区 内では原単位が一定であるとみなし,頻度分布で表わ したものである.各年度において棒グラフの下の数字 は,原単位が同一の範囲に入る都市ガス普及世帯数を 表わしている.図-3から家庭用都市ガス原単位は各年 度とも3.0∼6.0×106kcal/世帯・年の範囲にあること, また分布の中心が年々原単位の高い方へ移行している ことがわかる. 3.家庭用都市ガス原単位の決定メカニズム と説明変数 家庭用都市ガス需要がいかなる因果律によって決定 されるかについては種々の見方があるが,現在までの ところ都市ガスの使用目的は厨房,給湯および暖房で あることを考慮し,図-4のような決定メカニズムを考 えて,分析の基礎とした.図-4の各要素に関する地区 別の統計データが存在するかどうかが問題であるが, データの存在を考慮して表1に示した項目を説明変数 としてとりあげた.都市化の指標としてとりあげた説 明変数は都市ガス需要原単位の地区差を表わす要因と して考えたものである.密度を表わすための土地面積 注)[5]における結果は都市ガス普及世帯あたりではないので, 都市ガス+LPGの世帯あたり平均値とを比較した. ノ . . ' リ W 、 ’ 1 Ⅱ ! ! 0 W , ! . . . . ! Ⅱ 、 ! 0 M ” /・‘,'ウ0m00、01.0 ………On00…_….010.9…‐…_、Ⅱ’ゥ….……….ここ二一___---‐ ノ ノ 、 Ⅱ 0 1 ノ ゥ 0 1 1 1 . … Ⅷ 0 0 1 . … ノ ノ ノノリ19,0ノ010,1ノロ,ノ006090ノノ。。I0ノノ 1980ノ....I川,,…・‘08'’0Ⅱ'’'90',ノ’00‘,ノ…・’ 「ノー.ノノ0180ノノ.、イ00110ノ0Ⅱ0§01W,0ⅡIノノi・・ノノ イ ノ . … c O I 8 I O I O I 0 ノ ノ j ノ 〃 _ . ’ 0 1 0 0 , ' 1 1 0 ! ノ ィ f ノ.…………ノ8M、!…・…〃1001…_…ノOII『、…….『………….ノ………….ノ ノ ノ 9 Ⅱ 0 0 ノ . 、 ノ U O Ⅱ 0 0 ノ 0 Ⅱ ” ノ . . . . ノ ノ 1979/._...…イ。Ⅱ100Ⅱ010卯00ノD1IO1ノォー。/0ノノ’Ⅱ1''011!‘18,,『'19''ノ'Ⅱ'1ノ"..' ノ/_./ノ・・イ0$Ⅱ0ノ0Ⅱ00‘IⅡ0I/O0Wノサ1Wノノー・ノィ 0 1 1 1 0 Ⅷ ’ 0 ノノノノ ノ サ O I O ド 0 Ⅱ ’ 0 , ノ … . j J ノ ノ………一.ノ01101……っノ0Ⅱ,!-.……ノ.』..ノ6−……j…一…◇…/…………-ノ ノ ノ 9 1 0 0 0 … . 、 Ⅱ 0 0 ● 0 1 1 0 0 ノ ノ ノ 1978/,::i;..l.;ll::'{i;I::III:''W:'''::;;;」.…・イ ノOOWノ.、ノリ0810ノ0IOOOOIWlcIIOIノ0100ノ』ノ・・ノI ノ 0 $ 0 0 0 0 Ⅱ 0 0 ノ ノ イ ノ 0 Ⅱ 0 0 0 1 1 0 6 1 … 。 ノ ノ イ ノ・…………IDⅡ‘!…….ノ0Ⅱ0!…….〃..i,….…f………….』.…………ノ ノ ' 0 Ⅱ 0 9 ノ 『 Ⅱ 0 0 〃 1 1 0 0 ノ ィ ノ....j,IIp0ノ,Ⅱ,,..!,‘'0111..°,ノィ 1977ノイ.‘ノ,ノ100‘‘ノ‘11.,#.・ノ''Ⅱ‘‘ノノ・・ノ‘ノ’・“イ ノ,OIOノ!...,Ⅱ'ノィ…・UW,Ⅱ‘,,00,ノノ,110ノクノ・'ノノ ノ j 、 , ' 0 ノ . 、 卵 0 0 1 8 9 ノ ィ − ノ ィ 0 Ⅱ 0 0 . 0 1 1 0 0 0 1 0 0 0 ノ ノ !………….1081,,…・…1011,,.……此1,,.……!…で一一つ…:……….… ノ , ダ o I 1 0 Q ノ Q 8 9 o O ノ 8 1 1 0 0 ノ ノ イ ノ … . J O O 1 0 9 … . 0 1 1 0 0 ノ 0 6 1 , 0 ノ , … J ・ ・ ・ . ノ 1976ノ’..',′・0'‘,ノ.、ノ''01‘,ィ’01‘,ノ1,.'’’ノ..'‘ノ ノ’00,ノ….0810ノ0810001Wィ0010ノノ0110ノノ08Wノ ノ イ . 、 ノ ゙ 0 1 1 1 0 ノ ノ I ノ ノ 0 1 1 . 0 O I I サ 0 ノ , . - - . ノ ノ ノ ノー…………ノ0Ⅱ00…….抑11”-……J・ノ.、ノリ….…ノ………・…ノ…・………ノ ノ 0 1 1 1 , ノ 0 Ⅱ 0 ’ ノ 0 8 1 ’ 0 ノ ノ ノ 1975,''::i;-1.IIIII'::i;IIIII''IIII:/'::;;!'....!ノ ノ0Ⅱ0ノノ.."010010Ⅱ,06100ノノ08WノoⅡ。ノノノ.●ノノ ノ , l I o O O m , 0 ノ ノ ノ ノ ノ ‘ . 0 9 0 9 , Ⅱ . , ノ … . タ P ノ 年度,ノ,1,,‘,‘‘,‘,,‘Ⅱ,,,,’ノー.………−ノ091,!_……ノ0Ⅱ00…….〃-.ノ,.……J---=二言=・ノ。ニーニーー……ノ ノ . . . . J 0 n 0 0 ノ 0 Ⅱ ’ 0 ノ 0 , 1 , 0 イ ノ ノ 1974ノ’..I‘・…‘11,,..“.Ⅱ',ノ!Ⅱ.‘ノ…・ィ.・・・I ノ001サノノ.、ノ008W’.、ノ90111ノイ0808ノノノ。,ノノノー.ノノ ノ , Ⅱ 1 9 ! Ⅱ ’ 0 ノ ノ ノ ノ ノ 0 Ⅱ 0 1 0 Ⅱ 1 ノ 。 . . 。 ’ / ノ ノ….………ノ,ⅡⅡ0−.…ノ,Ⅱ11….…ノ./,oノ!….…ノ.…………ノ…….……ノ / ノ 0 Ⅱ ’ U ノ イ Ⅱ ' 0 ノ 0 冊 サ 、 ノ ノ ノ ノ.…...・01100ノ0Ⅱ00ノIIUDOノ・ロ.・ノノ l973rノ.、ノ,’..'‘'Ⅱ'’・・・・‘'''’’’01‘’ノノ・・ノノ“・・ ノ0Ⅱ,ノ0Ⅱ0006Wノー.ノ、‘IDVJDOW/Ⅷ0ノノ/●●ノノ ノ Ⅷ ' 0 0 8 1 0 0 ノ J ノ 0 1 1 0 0 0 棚 0 0 ノ ノ ノ 0 ノ….………;000!!…….ノDIIOp…….ノ….………J……-……….…I j ノ 0 0 0 0 0 ノ O 0 I f P ノ . . . . ノ ノ 1972/,::;;,':III:/;IIII,'{li;'I/,::7;,'..", ノ リ Ⅱ ワ ノ ノ リ 1 W ノ 0 8 W ノ , 0 0 , ノ ド 伽 0 イ ノ ノ . . ノ ノ (口内の数字は普及 ノノノノイ

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世帯数(×103)を表わす) 3 . 0 3 . 5 4 . 0 4 . 5 5 . 0 5 . 5 家庭用都市ガス原単位(xlOskcaI/世帯・年)

鋸鰯︾ 世帯 住宅 図−4家庭用都市ガス需要の決定メカニズム .(−はマイナスの影響を示す) 図−3家庭用都市ガス原単位の頻度分布の推移 (京阪神地区,1972∼1980)

表1家庭用都市ガス原単位の分析に用いた説明変数

・可住地面積=1976年度の土地面積メツシユデータの統計より森林,荒地,湖沼,河川地A

および海浜を除いたもの[1] ・住宅地面積および業務商業地面積は[1]における推定値 [1]:(財)大阪科学技術センター,日本アイ・ビー・エム(株), パートナーシッププログラム地域エネルギーシステム研究報告書Vol、1,1984.9 *製造業管理部門を含む − 7 1 − 所得 ・世帯あたり所得:(「個人所得指標」の1人あたり所得)×(人口)/(普通世帯). ・CPIにより実質化(1980年価格) 価格 、家庭用都市ガス価格:[1]より.CPIにより実質化(1980年価維) 気 温 、冷房度日:府県統計書の月別平均気温より。限界温度22℃ ・暖房度日:府県統計書の月別平均気温より。限界温度14℃ 住宅 関連 ・世帯あたり室数:国勢調査の「普通世帯における平均室数 .世帯あたり畳数:国勢調査の「普通世帯における平均畳数 ・世帯人員:(人口)/(普通世帯数) JJ

(3)

I エネルギー・資源 288 大幅に異なっていると考えられたため,以下で述べる 重回帰分析の対象からは除外した.また大阪市内と京 都市内の数地区も業務商業に極端に特化しているため, 分析の対象から除外した.分析の対象となったデータ 数(標本数)は437である.推計はすべて対数線形モ デルにより行った. のデータは,1976年度の土地面積メッシュデータから 整備した. 冷房度日および暖房度日のデータは,近畿地域およ そ120箇所の気象観測地点から,該当する地区の気温 を最もよく表わしていると判断できる地点を選び,そ の月別平均気温より作成した. 表2は,これらの説明変数の値の分布の推移を表わ すデータを示したものである.世帯人員および都市化 の指数については,データの観察期間中大きな経年的 変化がなかったといえる注)表3は説明変数間の相関 係数である.データは1972∼1980年,取り上げた地区 は都市ガスの普及率が50%以上の地区である.家庭用 都市ガス需要のデータは都市ガス普及世帯あたりで, 本来普及率とは関係ないとも考えられるが,これらの 地区は後でふれるように,その使用形態が他の地区と 4.家庭用都市ガス原単位の重回帰分析 4.1所得弾力性と価格弾力性 所得項および価格項より構成される通常のフロー型 需要モデルにより所得弾力性および価格弾力性を推計 した結果を表4に示す.家庭用都市ガスの用途の主な ものに給湯があり,水温の影響があると考えたため, 夏期分については水温の高低の指数として冷房度日を, 冬期分については同じく暖房度日をそれぞれ説明変数 に加えた.表4から所得項が有意であるが,価格項の 符号条件がプラスとなって整合的でないことがわかる. 所得項についても,夏期と冬期とを比較すると,冬期 分には暖房分が含まれているはずであり,灯油など他 のエネルギー種との代替が容易である部分があるため, そのような代替性の少ない夏期分に比べて,弾力性が 高いと考えられるが,得られた結果は逆となっている. 決定係数も低く,得られた推計式が有意であるとはい えない.冷房度日および暖房度日については符号条件 が整合的で,一応有意である.

表5はlag変数を導入した場合のいわゆる短期弾力

性を求めた結果を示す.表5においては表4とは逆に 所得弾力性が有意でなく,価格弾力性が有意となって いる.夏期分,冬期分ともにlag変数による説明力が

強く,いわゆる調整速度(1-d,但しdはlag変数

注)世帯所得(実質値)について,1972年の値が1980年を 上まわっており,家計調査とはこの点異なっているが,表 2の値は表1の定義に従って整備したデータから算出した もので,計算上の誤りではないと考えている. 表2家庭用都市ガス原単位説明変数の推移

762 0 65 188 6.2 0.86 0.33 54.9 0.11 9624 .057 2500 10.6 305 1008 24.5 4.4 3.8 51.4 0.20 4364 .036 表3説明変数間の相関係数 (都市ガス普及率50%未満および大阪・京都の都心部6地区を除く) 世 帯 人 員 畳 数 室 数 人 口 密 度 住 宅 地 密 度 従 業 者 密 度 業 務 商 業 地 雷 度 世帯人員 畳 数 室 数 人口密度 住宅地密度 従業者密度 業務商業地密度 1.00 0.56 0.66 -0.68 -0.73 0.58 -0.68 叩卯閖昭幅弱 ●●●●●●100000 −一一一 0784806645 ●●●。● 10000 −一一一 1.00 0.98 0.66 0.80 1.00 0.61 0.77 1.00 0.97 1.00 表4所得弾力性と価格弾力性の推計 ・対数型線形モデル。<>内はt値を示す。1972∼1980年度のデータ・標本数437 所 得 価 格 冷 房 度 日 暖 房 度 日 定 数 項 決定係数 家庭用都市ガス 原単位夏期分 0.51940.1774-0.0528-3.8471 <21.64>〈4.58>〈-3.19>〈-13.10> 0.5811 家庭用都市ガス 原単位冬期分 0.41470.23020.1280-3.8030 <21.68>〈7.98>〈5.67>〈-19.45> 0.6044

(4)

VOl.8No.3(1987) 289 表5所得弾力性と価格弾力性の推計(短期) 所 得 価 格 冷 房 度 日 暖 房 度 日 ラ グ 変 数 定 数 項 決定係数 家庭用都市ガス 原単位夏期分 -0.0037-0.1720-0.06280.92650.8752 <-0.35><-13.05><-12.78><66.10>〈8.12> 0.9685 家庭用都市ガス 原単位冬期分 0.0191-0.09060.07360.8960-0.3204 <1.41>〈-5.93>〈7.18>〈40.53>〈-2.64> 0.9285 ・対数型線形モデル。<>内はt値を示す

の係数)はそれぞれ0.0735および0.1040で両者ともに

小さいが,夏期分の方が冬期分よりもやや小さくなっ

ている.夏期分は厨房,給湯分が主で,他のエネルギ

ー種との代替可能性が冬期分よりも小さいためである

と考えられる.

lag変数の導入により所得項が有意でなくなったのは,

需要原単位の地区による差がlag変数により説明され

たことと,需要原単位の伸びがデータ観測期間中(1972 ∼1980)緩慢であったことによるものと考えられる.

表4では決定係数が低く,表5ではlag変数の説明

力がほとんどを占めており,通常のフロー型需要モデ ルでは地区別家庭用都市ガス需要原単位の説明が十分 できないことがわかる.これは地区により消費性向に 固有の差があること,および都市ガス使用機器のスト ックがより直接的に都市ガス需要原単位に影響を及ぼ しているためであると推察される.以下でこれらの点 を考慮した需要関数の推計を行った結果を述べる. 4.2都市化の指標による推計 地区による消費性向の差を表わす指標として,常住 人口密度,業務商業従業者密度,用途別土地利用密度, 年齢別人口比などが考えられる.密度の計算の際に, 分母にいかなる用途の土地利用データを用いるかによ って,様々な密度が定義できるが,表1に掲げたもの は,予備的な分析の結果比較的良好な結果を与えた指 標である. 推計の結果を表6に示す.まず夏期分,冬期分とも ・1972∼1980年度のデータ・標本数437 に所得項が有意,また冬期分において,暖房度日が有 意である.しかし,価格項は夏期分,冬期分ともに符 号がプラスであり,都市化の指標として採用した常住 人口密度および業務商業従業者密度については夏期分 ではt値は高いものの符号については実状と相反し, 冬期分ではt値が低い.これらのことから,これらの 推計式はいずれも有意とはいえず,都市化の指標だけ で都市ガス需要原単位関数を推計することは困難であ ることがわかる. 4.3ストックに関する指標による推計

前節までの分析結果から,都市ガス需要原単位関数

の推計には都市ガス使用機器のストックに関するデー

タが必要であることがわかる.しかし,これらのデー

タはないのが現状である.そこで,ストックと関係が

深いと考えられる世帯人員や住宅床面積を説明変数に

とり入れて需要原単位関数の推計を行った結果を表7 に示す.図-5に家庭用都市ガス原単位と住宅床面積を

表わす畳数との散布図を示す.この図からわかるよう

に両者の相関は高い.

まず世帯人員を説明変数に取り入れた(1)式および(3)

式では,夏期分,冬期分ともに価格項がプラスとなり,

これらの式は整合的でない注)つぎに夏期分について

は,所得,価格,冷房度日および畳数を説明変数とした

注)都市ガス価格の係数が多くの場合正となったが,結果的 にみて,地区の差が十分説明できていない場合であると思 われる.

表6所得弾力性と価格弾力性の推計(都市化の指標による調整)

所 得 価 格 冷 房 度 日 人 口 密 度 従 業 者 密 度 定 数 項

決定係数 家庭用都市ガス 0.39310.1913-0.0026-0.1085-2.7080 0.7063 原単位夏期分 <17.73>〈5.89>〈-0.18>〈-13.57><−10.41> 0.43090.2065-0.0132-0.0693-3.2062 0.6516 <18.05>〈5.82><-0.84>〈-9.35>〈−11.58> 所 得 価 格 暖 房 度 日 人 口 密 度 従 業 者 密 度 定 数 項 決 定 係 数 家庭用都市ガス 0.38930.22890.1049-0.0225-3.3409 0.6117 原 単 位 冬 期 分 <18.57><8.00>〈4.40>〈-2.86>〈−13.23> 0.43670.22710.14940.0175-4.1796 0.6106 <21.03>〈7.92>〈6.26>〈2.62><−17.31> ・対数型線形モデル。<>内はt値を示す。1972∼1980年度のデータ・標本数437 − 7 3 −

(5)

エネルギー・資源 ストック関連および都市化の指標による推計(世帯あたり) 290 表 7 ・対数型線形モデル。<>内はt値を示す。1972∼1980年度のデータ・標本数437 I2)式が,各説明変数のt値が高く,決定係数が0.8897 で有意な式として得られた. 冬期分については,畳数だけを取り入れた(4)式の場 合,(3)式よりも決定係数は高いが,価格および暖房度 日のt値が低い.そこで,都市化の指標を説明変数に 加えたところ,(5),(6)式に示すように業務商業従業者 密度および業務商業地密度がそれぞれ有意となり,そ れに伴なって価格および暖房度日のt値も高くなった. 決定係数は(5)式で0.8733であり,有意な原単位推計式 が得られたといえる. 表7で得られた結果について若干の考察を加えてお く.まず表7(2)式および(5)式において水温の代理変数 として考えた冷房度日および暖房度日は,ともに係数 そのものが小さいもののt値がかなり高く有意であり, 気温が給湯需要に影響を及ぼしていることがわかる. また表7で畳数の説明力は世帯人員より高いカミ,これ は都市ガス使用の主な目的である厨房機器および給湯 [IO6kcal/世帯.年] 2.0? 機器が個人あたりよりはむしろ住宅あたりの設備であ ること,床面積の大きな住宅ほど給湯機器の容量が大 きいであろうこと,などの理由によるものと考えられ る.次に業務商業従業者密度が冬期分で有意となった が,夏期分と冬期分の差は暖房分にあると考えてよく, したがって業務商業従業者密度は都市ガス暖房器具の ストックあるいは稼動率の地区差を説明していると解 釈することができる.すなわち業務商業の発達してい る地区ほど都市ガス暖房器具の保有率が高く,それに よる暖房が多く行われているものと推察される.常住 人口密度は業務商業従業者密度と同様の意味を持つと も考えられるが,結果的には係数が負となるため表7 では採用していない.また畳数のかわりに室数を説明 変数とすることもできるが,結果的には畳数の方が説 明力は高い. 表7(2)式および(5)式において所得項がともに有意で あるが,畳数がストックに強く関係した変数であるの [IO6kcal/世帯・年]

36i相関係数‘

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15 1 0 2 5 3 0 3 5 畳数[畳/世帯] (b)冬期分と畳数 )内は普及率50%以上の地区による相関係数)

8642

家庭用都市ガス夏期分原単位 四 函 。 且 n 回 垂 回 0 0 m 。 。 ■ q ③ 函 。 。 回 函 g o ■ロ 。。。 函 ロ 。 相 関 係 数 R=0.6473 (0.8874) ×普及率50%未満 4 0 4 5 ○普及率50%以上 │、01.−− ‐− −− 1 5 2 0 2 5 ・ 3 0 3 5 畳数[畳/世帯] 45 (a)夏期分と畳数 図−5家庭用都市ガス原単位の相関(1980年度,( 所 得 価 格 冷 房 度 日 世 帯 人 員 畳 数 定 数 項 決 定 係 数 家庭用都市ガス 原単位夏期分 (1) − (2) 0 . 3 8 9 3 0 . 3 3 1 2 - 0 . 0 0 0 6 0 . 8 6 2 5 - 4 . 5 6 5 7 < 1 7 . 1 2 > 〈 9 . 4 7 > 〈 - 0 . 0 4 > 〈 1 2 . 9 5 > 〈 - 1 7 . 8 6 > O b l 2 0 9 - 0 . 1 7 6 9 - 0 . 0 2 5 3 0 . 6 9 1 4 - 2 . 0 7 8 0 < 7 . 1 8 > 〈 - 7 . 9 1 > 〈 - 2 . 9 6 > 〈 3 4 . 7 6 > 〈 - 1 3 . 0 5 > 0.6983 0.8897 所 得 価 格 暖 房 度 日 世 帯 人 員 畳 数 従 業 者 密 度 業 務 商 業 地 定 数 項 密度 決定係数 家庭用都市ガス 原単位冬期分

③’㈹一⑤|⑥

0 . 3 9 5 4 0 . 2 5 0 6 0 . 1 1 0 0 0 . 1 3 1 7 - 3 . 7 3 7 6 < 1 8 . 5 4 > 〈 8 . 2 2 > 〈 4 . 5 4 > 〈 2 . 0 2 > 〈 - 1 8 . 9 2 > 0 . 1 5 8 5 - 0 . 0 0 2 6 0 . 0 2 4 0 0 . 4 7 3 7 - 1 . 9 1 6 8 < 8 . 4 5 > 〈 - 0 . 1 1 > 〈 1 . 4 1 > 〈 2 0 . 1 2 > 〈 - 1 1 . 3 4 > 0.1716-0.07950.07720.60610.0676-2.8426 <11.59>〈-4.11>〈5.58>〈29.89><16.24><-19.61> 0.1696-0.10210.07880.66310.0757-2.4651 <11.30>〈-5.10>〈5.60>〈29.64>〈15.65>〈-17.66> 0.6081 0.7958 0.8733 0.8698

(6)

VOl.8No.3(1987) 291 の分析結果と類似する. 冬期分の推計式,すなわち表7(5)式は,KEL/FLA およびFLA/Hについては夏期と同様であるが,IURB については所得のほかに業務商業従業者密度を加えて 暖房機器の保有率あるいは稼動率の地区差を説明した 式であると考えられる. 以上のように表7で得られた推計式は,(1)式のよう なモデルで考えても大きな矛盾はなく,家庭用都市ガ ス需要構造を表わす式として妥当であろう. 最後に都市ガス普及率の影響について調べた結果を 表8に示す.表8は,夏期分および冬期分についてそ れぞれ表7(2)式および(5)式と同一の説明変数を用いて 推計したときの決定係数の値を,都市ガス普及率をパ ラメータとして求めたものである.これから,都市ガ ス普及率が30%以下の地区では,家庭用都市ガスの使 われ方が他の地区とやや異なっているものと思われる. 図-6に表7(2)式および(5)式による年間の家庭用都市 ガス原単位の推定値と実續植の散布図を示す. 表 8 都 市 ガ ス 普 及 率 の 影 響 で,いわゆる所得弾力性とは異なると考えるのが自然 であろう.表5の結果で所得項が全く有意でないこと を考慮すると,ここでの所得項は主として地区差を説 明しているものと解釈することができる.この項はま た都市ガス使用機器の容量あるいはその稼動率を表わ していると考えることもできよう.夏期と冬期の係数 を比較すると,冬期の値が0.1716と夏期の0.1209より 大となっているが,これは節4.1の他のエネルギー種 との代替性から考えて妥当であろう.価格に対する係 数も冬期が大きいと思われるが結果は逆となっており 妥当性にやや疑問が残る. 一般にエネルギー需要は(稼動率)×(技術効率)× (エネルギー使用機器ストック)により表わされる. このことに基づいた次のモデルにより,表7の分析結 果を考察してみよう.

D/H=kP"DD'(KEL/FLA)rllURBr2(FLA/H)r

(1) た だ し D / H : 世 帯 あ た り エ ネ ル ギ ー 需 要 P : エ ネ ル ギ ー 価 格 D D : 冷 房 度 日 あ る い は 暖 房 度 日 K E L : エ ネ ル ギ ー 使 用 機 器 の ス ト ッ ク F L A : 住 宅 床 面 積 IURB:都市化の指標 H : 世 帯 数 k,cz,6,r,,乃,γ:定数 一は近畿全域の平均値を示す. この式では技術効率を一定とし,PおよびDDは稼 動率,あとの3項は世帯あたりの実質的なエネルギー 使用機器のストックが,ある平均的な床面積あたりの ストックに都市化の指標を乗じさらに世帯あたり床面 積を乗じることにより得られるものと仮定して導いた ものである[4]・ 夏期分の推計式,すなわち表7(2)式は上述の(1)式に おいてIURBに所得,FLA/Hに畳数をとったものと *業務商業に特化した大阪および京都の都心部 [IO6kcal/世帯・年] I 5.51 河

0505054433

家庭用都市ガス原単位実績値

〃 リ マ ノ

aUG0古BbUaO■96日●■日日■■8.0.0凸U■■eG809■8■0■OG■■9,.BOU■8白Ⅱ。’■I■Ⅱ ’’ 2.51 J:0 3 . 0 3 . 5 4 . 5 5 . 0 5 . 5 家庭用都市ガス原単位の推定値 図−6家庭用都市ガス原単位推定式の検証 (都市ガス普及率50%未満および大阪・京都の都心部 6地区を除く) みなすことができる.KEL/FLAに直接相当するデー タは存在しないためその影響は計測できない.しかし (2)式の決定係数がかなり高いため,この変数の影響は 小さく,KEL/FLAはほぼ一定に推移したものと解釈 することができよう注)この点は家庭用電力の暖房分 注)文献[6]によると,都市ガス普及世帯におけるコンロの 普及率は100%,大中小湯沸器の普及率は95.6%,風呂の 普及率は74.7%(以上1979年末,近畿地域)で,ガス事 業便覧の家庭用ガス機器普及計画(全国5社)によると, これらの普及率の経年変化は小さい.しかしここで述べた ことは,分析結果からの単なる推察である. 5 . む す び

近畿地域の地区別プーリングデータにより,家庭用

都市ガス原単位の分析を夏期分と冬期分について行っ − 7 5 − 都市ガス普及率 標本数 (120地区ぺース) 決定係数 表7(2)式の形 による推計(夏期分) 表7(5)式の形 による推計(冬期分) 1%以上の地区 30%以上の地区 50%以上の地区 50%以上(ただし 6地区域を除く) 687 567 491 437 0.66 0.81 0.84 0.89 0.64 0.80 0.83 0.87

(7)

292

た結果を述べた.得られた知見を要約すると以下のよ

うになる.

1)夏期分,冬期分ともに所得弾力性および価格弾力

性については,後者の符号がプラスになり,整合的な

結果は得られていない.地区差を説明するため,都市

化の指標を導入した場合でも同様で,価格項の符号に

整合性がない.

2)都市ガス使用機器の保有率,容量,稼動率に関係

すると思われる住宅関連指標を加えて推計した結果は

以下のとおりである./

イ)夏期分について:所得,都市ガス価格,冷房度日 および畳数を用いて決定係数0.89の推計式を得た.こ れらのうち畳数の説明力が最も強く,この変数は都市 ガス使用機器(たとえば給湯機あるいはガス風呂)の

保有水準あるいは容量を表わしていると推察される.

所得は稼動率または機器保有水準あるいは容量,価格

および冷房度日は主として稼動率を表わしているもの と考えられる.

ロ)冬期分について:所得,都市ガス価格,暖房度日,

畳数および業務商業従業者密度を用いて決定係数0.87 の推計式を得た.所得,都市ガス価格,暖房度日,お よび畳数は,夏期分に対するのと同様の作用をしてい ると考えられる.業務商業従業者密度は,冬期分と夏 期分の差,すなわち主に暖房分を説明していると考え られる.都市化の進んだ地区ほど都市ガスによる暖房 が多く行われていると推察される. 分析の結果から家庭用都市ガス需要原単位の増加要 因は主として住宅設備の充実化に伴なう都市ガス使用 機器の保有水準あるいは容量の増加であると考えられ る. I I エネルギー・資源 なお,使用目的別への分解が困難であったため,他 のエネルギー種との代替性についての議論が十分でな い.今後この点に焦点をあてた分析が重要となろう. 本研究は(財)大阪科学技術センターと日本アイ・ ビー・エム(株)が行ったパートナーシッププログラ ム「地域エネルギーシステム研究」において構築した 地域情報データベースを用いて行ったものである.同

プログラムにおいて熱心なご協力を頂いた関係諸氏に

感謝の意を表する.とくに青木淳氏は基礎データの整

備に尽力された.ここに謝意を表する. 参 考 文 献 1)辻,鈴木,青木,朴;近畿における家庭用エネルギー消 費原単位の分析,エネルギー・資源研究会第3回研究発表 会講演論文集NQ30,昭和59年4月 2)辻,鈴木,青木;地区別民生用エネルギー需要の分析 一近畿地域の例一,エネルギー・資源研究会第2回エネル ギーシステム・経済コンファレンス講演論文集Nu7-1,昭 和60年1月 3)(財)大阪科学技術センター,日本アイ・ビー・エム(株), パートナーショッププログラム地域エネルギーシステム研 究報告書,全3巻,昭和59年9月 4)辻,久保田,鈴木;近畿における地区別家庭用電力需要 原単位の分析,エネルギー・資源,Vol,7,No.6,1986 5)室田,中上,伊藤;家庭用エネルギー需要について,日 本経済研究,日本経済研究センター,1983 6)(財)日本エネルギー経済研究所,国民生活水準と民生用 エネルギー需要に関する調査研究,NRS-79.11昭和55 年9月

参照

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