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食品真菌とその検査 Part 2

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JSM Mycotoxins is issued twice a year, one volume a year, by the Japanese Society of

Mycotoxicology and the purpose of the journal is to publish results and technical

information regarding mycotoxins. JSM Mycotoxins publishes Reviews, original results

(Research Papers, Technical Notes, Notes, and Letters), Proceedings of special lectures,

symposia, and workshops of the meeting of Japanese Society of Mycotoxicology

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Japanese Society of Mycotoxicology

(http://www.jsmyco.org/MYCONTENTS/Eng/index_eng.html)

O O O O O OMe H H O O OH OH O OH O O O OH N H COOH O O O Cl OH

Food fungi and its inspection Part2

Yoshitsugu Sugiura

JSM Mycotoxins, 71(1):25-32 (2021)

http://doi.org/10.2520/myco.71-1-2

(2)

セミナー

www.jstage.jst.go.jp/browse/myco/-char/ja/

食品真菌とその検査

Part 2

杉浦 義紹

1 1元神戸市環境保健研究所(〒191-0033 東京都日野市百草882-1-402) キーワード 検索表;不完全菌類;分生子形成 様式;ペニシリウム属 連絡先 杉浦 義紹,〒191-0033 東京都 日野市百草882-1-402 電子メール:[email protected] (2021年1月28日受付) 要旨  食品由来の真菌を学ぶ学生と初心者のために,不完全菌類の同定に必 要な分生子形成様式の種類と特徴,ペニシリウム属菌の特徴,ならびに 菌種同定に有効な検索表の使い方などを解説いたします.

はじめに

 食品真菌を同定する時にその真菌がどのグループ に属しているかを見極める必要がある.食品汚染と なるカビは接合菌類,子のう菌類,担子菌類と不完 全菌類に属す.この不完全菌類は菌が不完全な生物 という意味ではなく,有性世代が明らかでないた め,その所属が不完全という意味である.子のう菌 類(亜門)には,図1で示すように 1. 半子のう菌類 (細胞内に子のう胞子を形成),2. 不整子のう菌類 (裸子のう殻または閉子のう殻を形成),3. 核菌類 (子のう殻を形成;子のうは1膜),4. 盤菌類(子のう 盤を形成;子のうは1膜),5. 小房子のう菌類(子座 を形成;子のうは2膜)の異なる5つの菌類(綱)に分 けられる.  食品汚染に関係する子のう菌類は半子のう菌類 (Debaryomyces,Saccharomycesなどの酵母),不 図1 子のう菌の5つの型 整子のう菌類(Aspergillus,Penicilliumの有性世代 Eurotium(閉子のう殻),Talaromyces(裸子のう殻) など)と核菌類(Fusariumの有性世代Gibberella, Nectriaなど)に属す.  食品汚染で目にする真菌は無性世代(不完全菌) であることが多い.そのため,分生子(増殖細胞の 無性世代の名称)の形成様式に基づいて真菌の属を 特定する. 分生子の形成様式の種類  不完全菌類の分生子の形成様式は以下に示すと おり,分節型,アレウロ型,出芽型,シンポジオ型, フィアロ型,ポロ型が主要な様式である.それ以外 にバソジック型があるが,始めに挙げた6つの型が 重要な分生子形成様式で,それぞれの型を顕微鏡下 で識別できることが不完全菌類の同定には必要で ある.この6つの様式は栄養菌糸型(Thallic)(a,b) と出芽型(Blastic)(c∼f)の2つにまとめられる. a)分節型︓菌糸に隔壁が入って小細胞(分生子)に分 かれる. 図2 分節型分生子 Geotrichum,Moniliellaなど

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26 杉浦 義紹 b)アレウロ型︓細胞の先端が小細胞(分生子)として 離脱する.離脱した分生子の基部側が平らになるタ イプが多く(図3a左),アレウロ型と判断する指標と なる.  さらに小細胞が形成され,離脱する.繰り返される と環紋(annellation)が先端に認められる(図3b左). c)出芽型︓先端部から小細胞が生まれ,その小細胞 から新たな小細胞が順次生みだされ,先端にある分 生子が新しい小細胞である. d)シンポジオ型︓小細胞を生みながらジグザグに糸 状細胞(分生子柄)が伸長する. e)フィアロ型︓先端細胞の内側に小細胞が形成され て内部から外へ小細胞(分生子)が順次生みだされ, 分生子は塊になったり,数珠状に連鎖したりする. f)ポロ型︓先端細胞の内側に細胞が形成されて内部 から外へ小細胞(分生子)が生みだされるが,同じ場 所だけでなく,別の場所からも同じ様式で小細胞が 生み出される. 菌種同定における検索表の見方  生物の同定書を見ると必ずその生物を同定するため に形態学的な特徴に基づいた検索表(identification key)が示されている.検索表は初学者と上級者はほ とんど使用しないと言われている.その理由は初学 者には検索表の使い方がわからず,上級者は検索表 に頼ることなく同定できるためである.しかし,検 索表が全く使えないとどんな属や種の生物か特定 できないためそれ以上先に進むことができない.本 稿では初学者が検索表を使って菌種の同定ができ ることを目的とする.特に同定が難しいとされるぺ ニシリウム属を中心に検索表の使い方を説明する.  ペニシリウム属菌種は食物や食品から出現する ばかりでなく,植物の病原菌としても知られてい る.また,動物や人に病気を起こす病原性の強い菌 種は少なく,多くは日和見感染が原因となる.  ペニシリウム属同定の難しさはペニシラスの構 造が単純な種と複雑で顕微鏡下で構造をどう判断 すればよいのか戸惑う種があることに起因してい る.図8にPenicillium属の形態的特徴を示すが,単 純なペニシラスと複雑なペニシラス構造があり,各 名称を併せて示す.

 Raper & Thomの A manual of the Penicillia (1949)が有名なぺニシリウムの同定書であるが,菌種 特有のコロニーの特徴(velvety,lanose,funiculose, fasciculate)を見極められないと使いこなせないので 図3a アレウロ型分生子 Chrysosporium,Epicoccumなど 図3b アレウロ型分生子 Scopulariopsis,Trichotheciumなど 図4 出芽型分生子 Aureobasidium,Botrytis,Cladosporiumなど 図5 シンポジオ型分生子 Beauveria,Dactylaria,Rhinocladiellaなど 図6 フィアロ型分生子 Aspergillus,Fusarium,Myrothecium, Penicillium,Stachybotrysなど

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図7 ポロ型分生子 Alternaria,Curvularia,Drechsleraなど 図8 Penicillium属の形態的特徴 stipe:柄,rami:枝,ramuli:小枝,metulae:メトレ, phialides:フィアライド,conidia:分生子 (菌学用語集(日本菌学会編より) 初学者には扱いにくい同定書である.一方,Pitt & Hocking Fungi and Food Spoilage 3rd ed(2009) によるPenicillium属の同定は指定された培地(CYA, MEA,G25N)に菌を接種して25 C,37 Cで7日間 培養してコロニーの直径を測定する.  菌種によっては4 Cで7日間CYA培地で培養や25 C で7日間CSN培地で培養が必要となる.しかし,そ れらの結果に基づいて検索表から菌種を同定するこ とができる.もちろん誤同定をする場合もあるが, 間違った場合もその種に近い菌種が示される.それ ゆえ,初学者にとって使いやすいぺニシリウム同定 法である.

 Pitt & Hocking(2009)のPenicillium同定はペ ニ シ ラ ス の 構 造 でAspergilloides,Furcatum,

Penicillium,Biverticilliumの4つのsubgenusに分 けている.それぞれのsubgenusは形態的特徴から さらにsectionに分けられるが,この4つのsubgenus グ ル ー プ を 見 分 け る こ と が 大 切 で あ る. な お,

subgenus Biverticilliumはone fungus one name (1菌種1学名)によりPenicillium属からTalaromyces 属(Penicilliumの有性世代名の一つ)へ名称変更さ れた. (1)Subgenus Aspergilloides  図9の よ う にstipeの 先 端 に フ ィ ア ラ イ ド (phialides)のみのペニシラスを形成する単輪生 (monoverticillate)である.まれにstipeの途中で 1ヶ所分枝する形態を示す菌種がある.分枝のすぐ 下に隔壁が入った場合には分枝はメトレのように 見えるが,二輪生(biverticillate)ではなく,あく までも単輪生である.このグループには図9左のよ うにstipeの先端が膨らまない(nonversiculate) タイプ(Section Exilicaulis)と図9右のようにstipe の先端が膨らんでAspergillusの頂のうのような 形 状(vesiculate)に な って い るタイプ(Section Aspergilloides)の2種類がある.  カビ毒シトレオビリジンを産生するP. citreonigrum は左側のタイプに属する. (2)Subgenus Furcatum  図10の よ う にstipeの 先 が 分 枝 し て メ ト レ (metulae)とフィアライドが形成され,左右非対称 (asymmetry)の二輪生である.メトレとフィアライ ドの長さを比べるとメトレの方がフィアライドよ り長い.図10左のようにメトレが極端に長いタイプ (Section Divaricatum)と図10右 の よ う に ほ ぼ った長さのメトレが形成されるタイプ(Section Furcatum)の2種類がある.なお,後者のタイプの 中にはペニシラスが左右対称の二輪生が観察される 菌種(P. citrinumなど)があるので,観察の際には メトレとフィアライドの長さの差に留意すること.  カビ毒シトリニンを産生するP. citrinumは図10 右のタイプに属する. (3)Subgenus Penicillium  図11のようにstipeの先が分枝してラミ(rami), メ ト レ, フ ィ ア ラ イ ド を 形 成 す る 三 輪 生 (terverticillate)が主要なペニシラスであるが, 図8右のようにラミ,ラムリ(ramuli),メトレ,フィ アライドが形成される四輪生(quaterverticillate) が混在する菌種も存在する.最もPenicilliumらし いペニシラス構造を有しているが,同定が一番難し いグループである.  カビ毒パツリンを産生するP. expansum,オクラ トキシンを産生するP. verrucosumはこのグループ に属する.

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28 杉浦 義紹 図9 単輪生 図10 非対称の二輪生 図11 三輪生 図12 対称の二輪生 (4)Subgenus Biverticillium  図12のようにstipeの先が分枝してメトレとフィ アライドが形成されている二輪生であるが,ごく まれに三輪生が存在する菌種もある.Subgenus Furcatumに似ているが,メトレとフィアライド の長さがほぼ同じ長さで,ペニシラスが左右対称 (symmetry)のグループである.   カ ビ 毒 ル テ オ ス カ イ リ ン な ど を 産 生 す る P. islandicum( 現 在 の 分 類 で はTalaromyces islandicus)はこのグループに属する.  以下にグループを見分けるための検索表を示す ので,上記の説明と検索表を確認して下さい. グループ(subgenus)分類の検索表

1 a) Penicilli monoverticillate or with only a minor propotion bearing metulae

   ペニシラスは単輪生,あるいはごく少数なが ら分枝(メトレ)の形成がある

Subgenus Aspergilloides

 b) Penicilli commonly biverticillate or more complex

   ペニシラスは通常二輪生,あるいは三輪生, 四輪生である

2    2 a) Penicilli predominantly biverticillate or

irregularly monoverticillate and biverticillate; colonies on G25N rarely exceeding 18 mm diam

   ペニシラスは主に二輪生,あるいはまれに単 綸生と二輪生が混在する;G25N培地上のコ ロニーサイズはまれに18 mmを超える

3   

 b) Penicilli predominantly terverticillate; cononies on G25N rarely less than 18 mm diam

   ペニシラスは主に三輪生;G25N培地上のコ ロニーサイズはまれに18 mm以下である

Subgenus Penicillium 3 a) Penicilli biverticillate or much less often,

terverticillate; ratio of metula to phialide length near one; colonies on G25N less than 10 mm diam    ペニシラスは二輪生,ごくまれに三輪生;フィ アライドに対するメトレの長さの比率はほぼ 1である;G25N培地上のコロニーサイズは10 mm以下である Subgenus Biverticillium

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  b) Penicilli biverticilate or irregularly monoverticillate and biverticillate; ratio of metula to phialide length much greater than one; colonies on G25N more than 9 mm diam    ペニシラスは二輪生,あるいはまれに単綸生 と二輪生が混在する;フィアライドに対する メトレの長さの比率は1を超える;G25N培地 上のコロニーサイズは9 mm以上である Subgenus Furcatum

 Pitt & Hocking(2009)によればぺニシリウム属 はどのsubgenusに属するかの判断がつけば,各 subgenusの検索表を使って菌種の特定ができる. Subgenus Penicilliumの検索表を使って主要な菌 種の同定法を示す.Subgenus Penicilliumはsection として4つあり,カビ毒産生菌はsection Penicillium に属す.まずコロニーが白色あるいは淡い灰緑色で チーズに生えるP. camembertiの次の段階からの検 索表を示す.なお,1∼4の項に絞って解説する. Section Penicilliumの検索表

1 a) Colonies on CYA exceeding 30 mm diam --- 2

b) Colonies on CYA not exceeding 30 mm diam --- 10

2 a) Stipes on CYA and MEA smooth walled --- 3

b) Stipes commonly rough walled, especially on MEA --- 5

3 a)Conidia blue or blue green --- 4 b)Conidia green --- P. expansum

4 a) Exudate, soluble pigment and/or reverse in brown shades; reverse on CSN acid plus brown --- P. aurantiogriseum b) When colored, excudate, soluble pigment and/

or reverse yellow; reverse on CSN neutral to weakly acid --- P. chrysogenum 【解説】  上記の検索表はまず1ではCYA培地で25 C,7日 間培養した条件でコロニーサイズが30 mmを超え たか,超えていないかを問うている.  2ではstipeがCYAとMEA培地で滑面か,粗面か を問うている.a)の設問ではCYAとMEAの両方で 滑面であるとは聞いていない.この両者の培地で滑 面のstipeがあるかと問うているのである.もし両方 の培地でstipeが共に滑面であるかと問う場合は, Stipes on CYA and MEA both smooth walledと

検索表の文章は書かれる.初学者はここで間違え る.初学者はCYAとMEAの両方で滑面の条件が必 要と思ってしまう.生物には個体差があるので,両 方の場合もどちらか片方の場合も存在する.検索表 では詳しく説明できないので,検索表特有の表現を 理解する必要がある.次にb)の場合はMEA培地で は粗面のstipeが観察されるが,CYA培地では粗面 でなく滑面のstipeが観察されても構わない.ここで はcommonlyという言葉に惑わされて間違いを生じ やすい.  3は分生子の色調であるが,分生子の塊がある場 所での色調を問うているのであって,顕微鏡下で観 察される分生子の色を問うているのではない.  4はコロニーの表面に滲出した色素液が見られる かを問うているが,無い場合も想定した問いになっ ている.典型的なP. chrysogenumはコロニー上に 黄色の色素液があり,培地の裏面が黄色になるが, 例外もある.そのため,CSN培地による色調を確 認するような問いが追加されている.このCSN培 地はsection Penicilliumの同定には用いるが,それ 以外のsectionや他のsubgenusでは使用されない. また,P. aurantiogriseumはstipeが滑面だけでな く,粗面のstipeがCYA培地で認められることがあ る.そのため,2の設問で間違いやすい菌種である. なお,P. chrysogenumはCYAとMEA培地で共に stipeは滑面である.Section Penicilliumにはオク ラトキシン産生性のP. verrucosumと非産生性のP. viridicatumがあるが,形態的に両者は非常に良く 似ている.検索表ではこの両者は以下の問いで区別 される.

a) Colonies on CYA and MEA both exceeding 25 mm diam; reverse on CSN acid

--- P. viridicatum

b) Colonies on CYA and MEA not exceeding 25 mm diam; reverse on CSN neutral

--- P. verrucosum  検索表の文章を見れば,P. viridicatumはCYAと MEA培地でのコロニーサイズは共に25 mm以上に なる.しかし,P. verrucosumはCYAとMEA培地の どちらかが25 mmを超えないという意味で共に25 mmを超えないという問いではない(共に超えない 場合も含む).片方が25 mmを若干超えても構わな いので,必ずCYAとMEA培地でコロニーサイズを 計測する必要がある(菌株の個体差が原因).CSN培 地は判断に迷った時に培地裏面の色調が酸性(黄 色)か中性(変化なし)かで,どちらであるか判断す る際の材料を提供している.

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30 杉浦 義紹  以上のように検索表で用いられている表現に慣 れれば間違わずに使用できるが,慣れないために選 択を誤る場合がある.困った時の最も良い処方箋は 迷った選択肢の両方を選んで,そのまま次の設問に 進んで選択に窮する問いに出くわせばその時点で 片方は消去される.ともに最後まで進んで該当する 菌種にたどり着いた場合には,菌種の形態が記載さ れた文を読んでどちらが観察結果に合致している かで判断すれば良い.なお,選ばれた菌種の形態が 共に合致しない場合もあるので,その際は観察結果 を見直し,再度検索表の文を吟味する必要がある.  これまでの経験から検索表で合致する菌種がな い場合はその検索表に掲載されていない菌種か,色 素産生能など化学的な形質を喪失しているなどイ レギュラーな菌種になっていることが多い.それは 環境中で生き残るため生物には必ず個体差がある ことに留意しなければならない.なお,検索表には 主要な菌種しか載せられないので,検索表で示され た菌種が実際の菌種の記載と完全に一致しないこ とがある.その場合は,示された菌種に近い形態を 有する類縁種を調べると良い.  検索表の利点は同定したい菌種が他の菌種とど の点が同じか,どこが違うのかを設問に答えながら 学ぶことができる.検索表はその菌種群をよく識る 研究者が系統だって作成したものなので,研究者が どの形態を重視したかがわかる楽しさもある.  今回参照したPitt & Hocking(2009)による食品 真菌の同定書にはAspergillus,Fusariumなどカビ 毒汚染で重要な菌種も記載されているので,同定の ために指定された培地を用いて指示された培養温 度,培養期間を守った上で,菌種同定を検索表から 実施して頂きたい.  指定の培地によるコロニーの特徴や形態的観察 に基づいたPitt & Hocking(2009)の同定法以外に

Aspergillusの分生子頭の特徴からどのグループ (群)に属するか識別する方法を紹介する.  Aspergillusの頂のうには分生子形成細胞である フィアライドのみが並んだ単列(uniseriate)の菌種 群,メトレがあり,その上にフィアライドが並んだ 二列(biseriate)の菌種群,さらに単列と二列が混在 する菌種群と大きく分けて3つのグループにまとめ られる.また,分生子を産生している分生子頭が放 射状,あるいは円柱状に見える種がある.さらに分 生子頭の色調もAspergillus属を分類するための基 準になる.これらの特徴をまとめると下表が作成で き,検索表としても使用できる. Aspergillus属の分生子頭による検索表 分生子形成細胞 分生子頭の特徴 分類群 単列 頂のうは棍棒形 A. clavatus群 その以外の頂のうの形 分生子頭は放射状,黄色の閉子のう殻を形成 A. glaucus群 分生子頭はゆるい円柱状,分生子は円筒形 A. restrictus群 分生子頭は円柱状 A. fumigatus群 単列と二列が 混在 分生子頭は球形で放射状 あるいはやや裂けた放射状 褐色∼黒色 A. niger群 白色∼クリーム色 A. candidus群 黄色∼黄褐色 A. ochraceus群 分生子頭は放射状あるいは やや円柱状に近い 黄緑色,分生子柄が粗面 A. flavus群 黄褐色,分生子柄が滑面 A. wentii群 二列 分生子頭が緑色 分生子頭は放射状,分生子柄は無色∼黄色 A. versicolor群 分生子頭はゆるい円柱状,閉子のう殻を形成, 分生子柄は褐色 A. nidulans群 分生子頭がその他の色 分生子頭は放射状,分生子は暗オリーブ色∼ 鈍褐色,分生子柄は褐色 A. ustus群 分生子頭はゆるい円柱状,分生子は白色∼淡黄色, 分生子柄は黄褐色∼黄色∼無色 A. flavipes群 分生子頭は円柱状,分生子はシナモン色∼橙褐色∼ 淡黄褐色,分生子柄は無色 A. terreus

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 上記の検索表の中で食品汚染真菌として乾物や 羊羹など水分活性(aw)が低い食品で見つかる代表 がAspergillus glaucus群である.以前は有性世代の 菌名であるEurotium属として知られていたが,一 菌種一学名によりAspergillus属の学名に統一され ている.A. glaucus群は無性世代の形態が非常によ く似ており,その形態観察から菌種を同定すること は難しい.しかし,子のう胞子の形状を観察するこ とで初学者にも容易に同定できる菌種である.真菌 汚染を受けた食品から高頻度で分離されるので検 索表とともに紹介する.   子 の う 胞 子 を 形 成 さ せ る た め に 好 乾 性 の AspergillusはCY20S培地(MY20,M40Y培地など も可)で培養する.通常14日目までの培養で閉子の う殻内に形成された子のう胞子が成熟するので顕 微鏡下,1,000倍で観察する.なお,E. herbariorum の子のう胞子の成熟には14日以上を要す. Eurotium属の検索表 1 a) 明瞭な隆起,あるいはつばのある子のう胞子    --- 2  b) 明瞭な隆起も,あるいはつばもない子のう胞子    --- 3 2 a) 閉子のう殻は黄色,分生子頭は緑色のコロ ニーで, 2本の顕著で,不規則な,幅広い,縦 方向の隆起がある粗面の子のう胞子(全長は 5µmを超えない)    --- E. amstelodami  b) 黄色から橙色の不稔菌糸のあるコロニーで, 縦方向に狭い2本のつばのある滑車のような 子のう胞子    --- E. chevalieri 3 a) 黄色または橙色の不稔菌糸があるコロニー で, 滑面で縦方向にうっすらと溝跡がある子 のう胞子    --- E. repens  b) 橙色から赤色,または赤褐色の菌糸のコロ ニーで,2本の低く,細かな粗面の隆起によっ て細いが明瞭な縦方向の溝がある子のう胞子    --- 4 4 a) 14日以内に成熟し,全長が6µmまでの子のう 胞子    --- E. rubrum  b) 通常14日以内に成熟しない,全長がしばしば 6µmを超える子のう胞子    --- E. herbariorum  検索表でEurotium属の同定を行ったあとは,下 記に示す現在の菌種名に変更して報告する必要が ある. 旧菌種名 現在の菌種名 E. amstelodamiA. amstelodami E. chevalieri A. chevalieri E. repensA. pseudoglaucus E. rubrumA. ruber E. herbariorumA. glaucus 【補足】  子のう胞子の成熟とは,閉子のう殻を軽くつぶし てプレパラートを作製した時に子のうから外へ出 た子のう胞子が多数観察される時で,子のう胞子が 子のうに入ったままの状態のみが観察される時は まだ未熟である.Eurotium属のカビはCYA,MEA 培地でもコロニーは小さくなるが,生育するので A. glaucus群の菌種を観察することはできる.一般 的にPDA培地をカビの培養に使用することが多い が,A. glaucus群の菌株によっては変異を起こして イレギュラーな形態を示すので,特に抗生物質を添 加しているPDA培地には注意すること.また,環境 中に存在するEurotium属はDG-18培地で分離する ことができる. スライド培養  真菌のうちカビなどの糸状菌の形態,特に分生子 形成様式を観察する場合や写真撮影をする場合に はスライド培養を行うとよい.図13のようにあらか じめガラスシャーレにろ紙を敷き,U字形のガラス 棒,スライドグラス,カバーグラスを入れて180 C, 30分間の乾熱滅菌を行う.

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32 杉浦 義紹 䝇䝷䜲䝗䜾䝷䝇 ⳦䛾᥋✀䠄㻠䜿ᡤ䠅 ᇵ㣴ᐮኳᇵᆅ 䠄䝅䝱䞊䝺䛻㻝㻜㼙㼘䛾ᇵᆅ䜢ධ䜜䛶ᅛ໬䛧䛯䜒䛾䜢䜹䝑䝖䛧䛶౑䛖䠅 䜺䝷䝇Წ䠄㼁Ꮠᙧ䠅 䜹䝞䞊䜾䝷䝇 䜝⣬䠄⁛⳦Ỉ䜢ྵ䜐䠅 䜹䝞䞊䜾䝷䝇 図13 スライド培養  滅菌後,別のシャーレで作製した寒天平板から滅 菌したメスなどで1 cm角にカットしてスライドグ ラスに置き,寒天の4辺に菌を接種する.カバーグ ラスで寒天を被い,軽くピンセットで押さえる.滅 菌水5 ml程度をろ紙に注ぎ,25 Cで培養する.スラ イド培養では菌の生育が早いので3日目から生育状 況を確認し,分生子形成が確認(5日目あたり)され たら,カバーグラスを取って,新たなスライドグラ スに観察用の封入剤(ラクトフクシン液,コットン ブルー液など)を1滴垂らしたところにやや斜めに カバーグラスを当てて,静かに被せて封入する.ス ライドグラス上にある寒天は取り除き,中央に封入 剤を1滴垂らして,新しいカバーグラスで同様に菌 体全体を封入する.なお,勢いよくカバーグラスを 被せると空気が入るので丁寧に行うこと.また,ス ライド培養では1回の施行で2枚のプレパラートを 作製することができるので,2種類の異なる封入剤 で観察することが可能である.  真菌の観察には長時間観察しても眼が疲れにく い顕微鏡を用いて観察することを勧める.国産の顕 微鏡では高価な機種は解像度もよく,観察に適して いるが,廉価な機種はお勧めしない.ツァイスやラ イカなどの外国製の顕微鏡は廉価な機種でも国産 の同程度の機種より少し高いが,長時間観察する場 合は国産より優れていると個人的には感じている. その違いは接眼レンズのコーティングにある.外国 製の顕微鏡は眼の疲労の原因となる波長の光を カットしてくれるので,その顕微鏡で8時間以上観 察を続けても国産の製品とは眼の疲労度が異なる.  筆者がムギ赤かび病菌の子のう殻から子のうを 取り出し,スカーマン式マニュプレーターを用いて 8個の子のう胞子を子のうから1つずつ取り出して 分離培養した際には,1つの子のうからの分離処理 で約2時間を要したが,当時廉価なツァイス・イエ ナ製(旧東ドイツ)の顕微鏡で作業した方が国産の 顕微鏡で実施した時と比べて疲労度は明らかに少 なく,1日に3∼4回の単子のう胞子分離作業を実施 できた.なお,ツァイス・イエナ製顕微鏡の解像度 は国産の製品より劣っていたが,作業には支障はな かった.誤解がないように付け加えるが,国産の高 級顕微鏡は外国製高級顕微鏡と性能では優劣をつ けがいたい製品である.顕微鏡は単なる実験道具の 一つと思われがちであるが,観察や実験する目的に 合わせて慎重に選んで頂きたい.

引用文献

1) 土居祥兌:キノコ・カビの生態と観察 (1977),築地 書館株式会社,東京

2) Pitt, J.I., Hocking, A.D.: Fungi and Food Spoilage 3rd ed., (2009), Springer, NY

3) 長谷川武治編著:微生物の分類と同定<上> (1984), 株式会社 学会出版センター,東京

4) Petrni, L.E., Petrini, O.: Identifying Moulds a practical guide, (2013) J. Cramer, Stuttgart

5) Smith, G., Onions, A.H.S., Allsopp, D, Eggins, H.O.W.: Smith s Introduction to Industrial Mycology 7th ed., (1986), Edward Arnold, London

Food fungi and its inspection Part2

Yoshitsugu Sugiura1

1Former Kobe Institute of Health, 882-1-402 Mogusa, Hino-shi, Tokyo, 191-0033, Japan

For students and beginners who learn food-borne fungi, the article describes the conidial formation patterns of Fungi Imperfecti, morphological characteristics of genus Penicillium, and how to use food-borne fungal identification keys.

図 5 シンポジオ型分生子 Beauveria,Dactylaria,Rhinocladiellaなど
図 8  Penicillium 属の形態的特徴 stipe:柄,rami:枝,ramuli:小枝,metulae:メトレ,

参照

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