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スウェーデン・トッメリラコミューンにおける中央子ども健康チームの取り組み

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【要約】 本研究は、スウェーデンにおける子ども 健康チームの取り組みを、資源の少ない小規模自 治体に注目して、フィールド調査及び関連文献の 検討から分析することを目的とした。スウェーデ ンにおいては、いじめや精神的不安定等子どもの 多様な問題に対応する子ども健康チームの設置が 求められている。しかし小規模自治体であるトッ メリラコミューンは各学校の規模も小さく、自校 での子ども健康チーム設置が困難であった。その ためコミューンとして中央子ども健康チームを整 備して、コミューンが雇用した専門家の巡回訪問 で各学校における支援を提供していた。具体的に は、コミューンとして学校心理士や学校福祉士 等、必要な専門家を雇用して学校兼任配置した り、支援の申請や分析・介入方法を自治体で共有 したり、重篤な課題に関しては医療や福祉局、警 察などと連携したりすることで、多方面からの子 どもの支援体制を構築していた。 【キーワード】 スウェーデン、子どもの健康、中 央子ども健康チーム 1.問題の所在 近年 OECD は Well-being に注目した議論に着 手しており OECD は、QOL の一つとして教育が 幸福感向上にかかわると指摘する1。スウェーデ ンにおいては Well-being(Välmående)は子ども の健康(Elevhälsa)との関連で言及される。例 えば 2000 年以降では、2001 年に「健康と学習及 び安心」について政府で検討している2。政府公 式報告書(SOU)をみると、2016 年にユニセフ の子どもの権利条約のスウェーデン法への影響に ついて3、2016 年に読字、書字、算数 / 数学にお ける子どもの学習保障尺度4が示され、それらの 検討過程において子どもの健康に言及している。 2017 年には、政府による義務教育段階としての 基礎学校の子どもを対象とした最低限の学力保障 に関する通知5の際にも子どもの健康の重要性が 指摘されている。他にも学校庁(Skolverket)と 社会庁(Socialstyrelsen)が共同で子ども健康指 導を公表している6 4 年に 1 回全国の学校を視察して教育の質を評 価する学校視察官(Skolinspektor)による報告 書(Skolinspektionens kvalitetsrapport)7や 学 校 庁提案8でも、子どもの健康を保障するための学 校における付加的調整(Extra anpassningar)や 支援的介入(Stödinsatser)9について言及してい る。そしてスウェーデンコミューン・ランスティ ング連盟(Sveriges Kommuner och Landsting) もインクルーシブ教育を念頭に多様な形態が保障 されるべきことを指摘し、その促進要因の一つと して子ども健康チームを位置づけている10。ちなみ に Kommun はスウェーデンの基礎自治体であ り、本稿ではコミューンと表記する。 学校法でも学校における子どもの健康保障が規 定されており11、保健医療法(Hälso- och sjukvårds- lagen 2017:30)にも子どもの心身の健康が言及 されている。そのため、各学校には子どもの身体 的、精神的健康状態を維持するために、子どもの 問題を多方面からの検討する子ども健康チーム

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【研究ノート】

スウェーデン・トッメリラコミューンにおける

中央子ども健康チームの取り組み

是永かな子・石田 祥代

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(Elevhälsoteam)を設置することが求められてい る。子ども健康チームには学校内外の学習、健 康・医療、福祉にかかわる担当者が参加し、子ど もにかかわる様々な問題に対して支援を具体化す る役割を担う。チームによる会議開催頻度は、週 に 1 回から隔週 1 回、月に 1 回など学校によって 異なるが、学校長や学校心理士(Skolpsykolog)、 学校看護師(Skolsköterska)、学校福祉士(Skolku-rator)などが参加して、子どものいじめや不登 校などの問題について協議する。スウェーデンは 地方分権が進み、教育実践は地域によって異なる ため、特定の地域に着目したフィールド調査に基 づいてその現状を分析することが有用である。著 者らはこれまでスウェーデン第二の都市イェーテ ボリコミューンや教育資源が潤沢なパティレコミ ューンに注目し、各学校に子ども健康チームが設 置されている事例を調査してきた。またスウェー デンで十三番目の人口規模を有するボロースコミ ューンでは大規模学校に子ども健康チームを設置 し、近隣の小規模学校を巡回支援する方法を用い ていた。しかし比較的小規模なコミューンでは、 子ども健康チームのような機関設置が困難ではな いかと予想し、本稿ではスウェーデンの比較的小 規模なコミューンに焦点をあて、子ども健康チー ムの具体的な取り組みとその役割、課題を明らか にすることを目的とした。 2.研究の目的と方法 本研究は、スウェーデンにおける子ども健康チ ームの取り組みをトッメリラ(Tomelilla)コミ ューンを通して具体的に示すことを目的とする。 トッメリラコミューンは後述するように比較的小 規模な自治体で、大規模自治体に比べ教育予算や 各学校の資源が少ないと予想される。そのため今 回のフィールド調査では、各学校において子ども 健康チーム設置が困難な場合に、いかに子どもを 支援しているかに関しても聞き取りとその分析を 行った。 研究の方法は、フィールド調査及び文献研究と する。調査は子ども教育当局事務所内で 2018 年 9 月 13 日に実施し、対象はトッメリラコミュー

ン の 子 ど も 教 育 当 局(Barn- och utbildnings-verksamheten)内中央子ども健康チーム主任 (Verksamhetschef Centrala barn- och elevhäl-san)1 人、中央子ども健康チーム特別教育家 (Specialpedagog)1 人であった。コミューンの 教育概要を聞いた後、子どもの問題にいかなる支 援を行っているのかについて回答を求め、関連す る実践内容について尋ねた。子どもの問題とは具 体的にはいじめ、暴力・けんか、長期欠席、怠 惰・素行不良・非行・犯罪、アルコール・薬物使 用、教職員へのクレーム、進路希望と現況とのマ ッチングであった。その上で、調査時に提供され た資料及びコミューン公刊資料、公式 Web サイ トの情報も検討した。 倫理的配慮として、調査対象者に対して、調査 の最初に研究の目的と調査項目を伝えた。その上 で、調査の実施と結果の公表について同意を得た ことを付記しておく。 3.トッメリラコミューンの概要 ト ッ メ リ ラ コ ミ ュ ー ン は ス コ ー ネ レ ー ン (Skåne län)に位置しており、1866 年にイスタ ッド・エスロブ(Ystad-Eslöv)路線が開通して 以来、鉄道輸送の発展とともに栄えてきた12。人 口 は 13,557 人(2018 年 ) で 290 コ ミ ュ ー ン 中 170 位13、面積は 397,4km² で全国 214 位である14 中心地に人口の大半の約 7,000 人が住んでいる。 基礎学校に就学する子どもの数は約 1,200 人、就 学前教育機関就学児数は約 600 人である15。近年 スウェーデンにおいては移民対応が課題になって いるが、トッメリラコミューンでは外国の背景を もつ人(保護者が外国生まれもしくは本人が外国 生まれ)の人口は、1,707 人(人口の 13%、2015 年)である16 まず、表 1 に中央子ども健康チームを構成す るトッメリラコミューン子ども教育当局の構成員 及びコミューン内の学校の概要を示す17 学校概要に示されるように学校規模が小さい場 合、学校看護師と学校福祉士は複数の学校を担当 する18。例えば 1 人の学校看護師は Odenslunds 校と Smedstorps 校、Tryde 私立学校 3 校を巡回

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訪問する。1 人の学校福祉士は Odenslunds 校と Smedstorps 校 を 巡 回 訪 問 す る。 大 規 模 校 の Lindesborgs 校と Kastanje 校にはそれぞれ 1 人 の学校看護師と学校福祉士が配置されている。 子ども教育当局の構成員が中央子ども健康チー ムのメンバーとなり、各学校を支援する。表 2 に 示されるように中央子ども健康チームに参画する 各専門家に期待される役割は以下である19 スウェーデンには養護教諭制度がないため、学 校看護師が子どもの医療的支援を行う。学校心理 士は主に個別対応、学校福祉士は主に集団対応を 行う。特別教員(Speciallärere)は、主に直接子 どもに指導する教授者の役割を担う。よって子ど もの困難性の分析ともに指導法の具体化や環境整 備等、子どもの学習に注目した指導・支援を行 う。一方特別教育家(Specialpegagog)は、学校 長に対する子どもの学習環境整備の提言等学校組 織への助言者としての役割、通常学級教員に対す る子どもの支援方法の助言、巡回指導、保護者と の相談等の役割、教育診断・評価の役割を担う。 他にもリソース教員や教育コーチが学習支援を行 い、言語発達には言語聴覚士が介入する。中央子 表 1 子ども教育当局構成員及びコミューン内の学校概要 ・子ども教育当局の構成員について   子ども教育当局主任 1 人、学校心理士 1 人、言語聴覚士(Logoped)1 人、学校看護師 4 人(各学校におけ る訪問支援実施)、学校福祉士 4 人(各学校における訪問支援実施)、特別教育家 4 人(内 2 人は学校担当、 内 2 人は就学前教育機関担当)、学校医 1 人、学校医や学校看護師と協力して医療事務管理を行う職務とし ての医療活動主任(Verksamhetschef för elevhälsans medicinska insats)1人、リソース教員(Resurspedagog) 3 人、教育コーチ(Pedagogiska tränare、スウェーデン語 2 人、算数 2 人)、である。 ・トッメリラコミューンの学校概要   トッメリラコミューンには 0 学年から 6 学年までの子どもが通う学校として以下の 5 校がある。① Smedstorps 学校(過疎地)、② Odenslunds 学校(過疎地)、③ Brösarps 学校(過疎地)、④ Lindesborgs 学校、 ⑤ Byavångs 学校(0 学年から 6 学年までの知的障害特別学校 Grundsärskola も併設)。他に Tryde 私立学 校(Friskola)がある。   トッメリラコミューンの 7 学年から 9 学年までの子どもが通う学校としては Kastanje 学校(7 学年から 9 学年の知的障害特別学校も併設)がある。 出典: フィールド調査及びトメリッラコミューン公式 Website、教育活動 https://www.tomelilla.se/kommun-politik/kommunens-organisation/forvaltning-och-namnder/barn-och-utbildning/(2018 年 11 月 20 日参照). 表 2 中央子ども健康チームの専門家の役割 ・ 学校看護師は、子どもの健康活動において医学的な知識を提供する。学校医も子どもの健康活動における医 学的介入を行う。 ・ 学校心理士は、就学前教育機関、基礎学校、知的障害基礎学校の子どもに対応する。主に心理的調査、個別 対応、個々の子どもや保護者との面談が含まれる。 ・ 学校福祉士は、心理社会的知識領域に関与し、集団レベルでの予防的活動において特に重要な役割を果たす。 学校福祉士は、他の子ども健康チームの専門家と同様に、子どもの困難さの背景にある原因を明らかにする ための検討に貢献する。学校福祉士の検討は問題が学校関連であるのか、家族関連であるのか、個人の問題 であるかを明らかにする。 ・ 特別教育に関しては、特別教育家や特別教員が担当する。彼らは教育評価と教育措置の分析と分析の結果に 対して特別な責任を負う。コミューン立学校には特別教育家や特別教員が配置されている。中央子ども健康 チームには特別教育家が配置されている。 ・ リソース教員は、トッメリラコミューンの中央子ども健康チームに配置されている。中央子ども健康チーム において、子どもの学習環境における支援的介入に貢献する教育専門家である。 ・ 教育コーチも、中央子ども健康チームの一員である。彼らは、低学年におけるスウェーデン語と算数におけ る子どもの発達と学習において特別な役割を担っている。 ・ 言語聴覚士は、言語の脆弱性 / 言語障害の分野における知識提供と対応に貢献する。主に就学前教育機関と 就学前学級、基礎学校第 1 学年を対象とする。 出典:Tomelilla kommun, Barn-och elevhälsoplan, s. 4.

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ども健康チームは、自治体の全ての就学前教育機 関や基礎学校を支援する。 子ども健康チームの役割は学校法に従い、以下 のように規定される20。子どもの健康チームに は、医学、心理、心理社会、特別教育の専門性が 含まれるべきである。子どもの健康チーム役割 は、教育目標を念頭に置いた子どもの成長促進の ために、教職員と協力して、子どもの健康の推進 と困難の予防を行うことである。それは学校環境 において困難を有する子どもに注意を払い、特定 することを意味する。よって期待される役割に は、学習上の問題やその他の困難の原因を見つけ 出すこと、検討すること、そして対策と調整に貢 献することが含まれる。この取り組みには、集団 や学級全体が含まれる場合もある。介入の最善の 結果を得るために、子ども健康チームは、困難と 解決策に関する専門家間の連携を確実に行うこと が期待されている。 また子ども健康チームは予防的活動も行う。訪 問時に提示されたトッメリラコミューンの子ども 健康計画(Tomelilla kommun, Barn- och elevhäl-soplan)には、「健康促進と予防的活動」として 以下のように記述されている。予防措置とは、不 健康の危険性を減らし、教育目標到達が困難にな ることを予防することである。予防措置の目的 は、保護要因を強化しながら、個人のリスク要因 を抑制したり、リスク要因の影響力を軽減したり することである。活動は、不健康の原因と教育目 標達成の困難さの要因に関する知識に基づいて行 われるべきである。既知のリスク要因は、学校に おける失敗経験(Skolmisslyckanden)、反社会的 行動、識字能力の欠如、保護者の養育能力の欠如 や障害(自閉症、言語障害、ディスレクシア、 ADHD/ADD)が含まれる。早期の効果的介入 は、保護要因に影響を与え、強化する可能性があ る。効果的な修学は、短期的及び長期的に最も重 要な保護要因の 1 つであることが証明されてい る。学校法は健康と学習の関係を強調している。 子どもの健康は学校の成果にとって非常に重要で ある。子どもは健康であると感じたら、子どもは 学ぶ。そして学ぶことによって子どもは健康にな る21と。このように、学習保障の基礎として子 どもの健康が位置付けられていた。 次に具体的な子どもの問題への対応に関する聞 き取り調査結果を示す。 4.子どもの問題対応に関する調査結果 4.1 いじめ等への対応 まずいじめ、暴力・けんか、長期欠席にいかに 対応するかについて聞いた。結果は以下である。 「いじめ」については、学校福祉士がかかわる。 現在いじめ対応策「サポートグループ」を試行中 である。「サポートグループ」とは、いじめられ た子どもを中心にして「サポーター」について話 す活動であり、その際には集団を用いる。いじめ られた子どもはまず大人との関係をつくり、その 後子ども間で信頼関係を構築する。少しずつ状況 を伝えたり、短時間でも話をしたりして、何がで きるかを集団として一緒に考える。集団として複 数人で話をする。教員も担任教員と校長など複数 でかかわる。必要な場合は家族療法を行ったりも する。 「暴力・けんか」の事例としては、自閉症の診 断のある子どもに小規模学級を試行していたが、 教員に対して暴力をふるったり、警察沙汰になっ たりして問題化したので、学校は 5 日の出席停止 にしたことがある。その後事例の子どもは「子ど も教育当局」に通学することになった。彼は、父 親と一緒にこの場所に通ってきていて、現在 2 週 目である。支援は長期化するであろう。医療的ケ アの必要性についてはまだわからないが、学級の 友達との関係も悪いため環境を変えた。今後他の 人とどのようにかかわっていくかも課題である。 「長期欠席」については、現在コミューンの学 校に登校できない子どもが 2 人いる。子ども教育 当局に通ってきている暴力問題を起こしてしまっ た子どもが 1 人、寄宿舎付きの私立学校に通って いる子どもが 1 人である。後者の子どもは保護者 も同意して私立学校に通っている。私立学校の寄 宿舎には 1 週間の内 6 日宿泊する。教職員が支援 しつつ、自立生活を送る。視覚的評価の活用等、 自閉症対応も可能な私立学校であり、TEACCH

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プログラム22を寄宿舎と学校双方で共有してい る。このように通常学校のみならず、私立学校と してのリソース学校(Resursskola)23を活用する 場合があり、その際には私立学校の教育をコミュ ーンが購入する対応になる。特別な学校としての リソース学校が私立学校であるのは、国がリソー ス学校の設置を停止したからである。それはイン クルーシブ教育を推進するという方向性である。 またサラマンカ声明の影響も受けている。公立学 校では支援が必要な子どもも受け入れ、ADHD や社会的情緒的問題がある場合には特別な教育の ための小集団(Särskilda undervisningsgrupper) を活用する。しかし、永続的な特別学級は設置し ない方針である。よって教育的支援として、小集 団を設置して集中的に、柔軟に支援を行いつつ、 徐々に支援を減らすことを考える。 子 ど も の 長 期 欠 席 の 以 前 の 事 例 と し て、 ADHD の診断があった 6 年生の子どもの場合、 コミューンの福祉局(Kommunens socialtjänst) と共同でトレーニングを行った。状況によっては 子ども若者精神科専門病院(Barn och Ungdom-spsykiatrin,以下 BUP)24とも連携する。家族支 援が必要であったり、家族が対応できずに子ども が一人で家にいたりすることもあるので、教育的 支援として特別教育家が訪問することもある。自 閉症の傾向が強い場合、福祉局のソーシャルワー カーであるソシオノーム(Socionom)の支援も 必要になる。 上記の聞き取り調査結果に関連して、ここでト ッメリラコミューンの子ども健康計画の内容につ いて検討する25 コミューンのみでは対応できない特別な支援が 必要な場合、国立特別教育庁(Specialpedagogis-ka skolmyndigheten, SPSM)26と連携する。国立 特別教育庁は利用可能な学習環境-学びのための ユニバーサルデザイン(Tillgänglig lärmiljö-Uni-versell design för lärande, UDL) と し て、 図 1 のような段階的支援を提案している27 左の三角から右の三角に移行することを目指 す。第一段階の指導を充実させることで、第二段 階の付加的調整や第三段階の特別な支援の必要性 を最小限に抑える環境を追求するのである。他に も子ども健康計画には、デジタル化を中心とした 教材開発活動 DATE28が紹介されている。DATE は国立特別教育庁と子ども健康チームの特別教育 家の援助を受けつつ、全ての子どもを対象に通常 学校で導入されている。 またコミューン立学校全校でディギリーズ (DigiLys)を使用している29 図 2 に示すディギリーズワークモデルは、学 校の組織的質追求活動の一部である。ディギリー ズにおいてテスト結果は、クラスの学習環境がど のように機能しているかを分析する際の教員の基 礎的情報になる。 4.2 子どもの怠惰等への対応 次に怠惰・素行不良・非行・犯罪、アルコール・ 図 1 利用可能な学習環境 出典: SPSM 公 式 Website,https://www.spsm.se/stodmaterial-extra-anpassningar/start/ fordjupning/tillganglig-larmiljo/(2018 年 11 月 20 日参照)

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薬物使用、教職員へのクレーム、進路希望と現況 とのマッチングについての回答を示す。 「怠惰・素行不良・非行・犯罪」に関しては、 ソシオノームと余暇教員(Fritidpegagog)が対 応する。彼女達は常に 2 人組で、フィールドアシ スタント(Fältassistent)30として行動する。彼女 達の所属はコミューンの福祉局である。35 時間 以内の勤務の中で夜の補導も行う。彼女達はいろ んな情報を持っている。状況によっては警察とも 連携して支援する。 「アルコール・薬物使用」については、フィー ルドアシスタントが担当する。ちなみにアルコー ルやタバコなどの指導は学校ではなく家族対応の 範疇である。 「教職員へのクレーム」については、毎学期子 どもを対象にアンケートを行っている。学習に関 しては「教員が助けてくれるか」などについて意 見聴取を行う。 「進路希望と現況とのマッチング」については、 専門職員としての修学・キャリア相談員(Studie- och yrkesvägledare, SYO, SYV/Syo-konsulent) がかかわる。例えば以前 ADHD と ASD の診断 のある子どもが弁護士なりたいという希望を示し たことがあった。しかし理想と現実に乖離があっ たため、他の職業の希望はないのか、弁護士にな るためには何が必要か、成績についてなど、長期 間に亘って話をしつつ、現実と折り合いをつけて いったことがあった。子どもの学年が上がるにつ れて修学・キャリア相談員の役割は大きくなる。 「子どもの精神的不安定」については、学校看 護師や学校福祉士がかかわる。精神的不安定にな るのは女子が多い。必要であれば病院としての BUP や福祉局にも連絡する。子ども健康チーム が直接精神的不安定な子どもにかかわる場合もあ るが、自傷や自殺などがかかわる場合は、心理、 社会福祉、医療、教育等多様な側面から支援す る。 以上の聞き取り調査結果に関連して、クレーム 対応としてのアンケートについてであるが、学校 視察官調査においても教員や保護者のみならず、 子どもに対しても聞き取りを行っており、子ども 自身の意見は重視されているようである。 また、トッメリラコミューンの子ども健康計画 には、子どもの精神的不安定に関して、主に 13 歳から 15 歳を対象とした精神的不健康状態を予 防するための認知行動介入である DISA プログラ ム31を活用すること、中央子どもの健康チーム には DISA を指導できる教職員がいることが示さ れている。DISA プログラムは脆弱な集団として の女子を対象とすることが多いが、男子にも適応 できる。スウェーデン国立ルンド大学医学部の博 士論文においても32、DISA プログラムの効果が 示されている。他にも低年齢の子どもには HASP ( 健 康 - 活 動 環 境 - 自 尊 心 - 達 成 Hälsa-Ar-betsmiljö-Självkänsla-Prestation) プ ロ グ ラ ム を 用いる33。HASP プログラムの目標は、子どもが 健康、活動環境、自尊心と達成の関係を理解する ことである。HASP プログラムは 1 年生、3 年 生、5 年生、7 年生を対象に行われる。HASP プ ログラムは、学習及びキャリア指導分野における 学校活動である。プログラムは学校看護師や学校 福祉士によって教示されるが、修学・キャリア相 談員も 1 年生、5 年生、7 年生の HASP プログラ ムに参加している。 図 2 ディギリーズワークモデル 出典: Elin Törner (2015) Utvärdering av DigiLys En modell för ständig utveckling av  lärmiljön, Psykisk hälsa barn och unga, s. 4.

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5.中央子ども健康チームの目標と申請方法 次に中央子ども健康チームの目標と活用方法に ついて確認する34。中央子ども健康チームは子ど も健康活動(Elevhälsoarbetet)が協力的か、子 ども健康活動は評価できる効果を提供している か、中央子ども健康チームが介入と成果を評価し ているか、子どもが健康活動に参画しているかに ついて、各学期フォローアップを行う。 図 3 に示されるようにすべての申請はトッメ リラコミューンのイントラネットである PMO 経 由で中央子ども健康チーム主任に送られる。学校 は、問題の特定や検討のための情報、全ての子ど もを対象に作成される個別発達計画(IUP)や付 加的に作成される対応プログラム(Åtgärdspro-gram)などへのアクセスが PMO から利用可能 であることを保障する。中央子ども健康チーム及 び関係者は PMO の文書システムを用いる。 申請内容の判断を行うのは、受理チームであ る。学際的専門家によって構成される受理チーム は、提出された申請書を評価する。チームには、 関係する就学前教育機関及び学校の教職員が招聘 されることがある。提供される支援は指導、助 言、コンサルテーション、相談、分析、開発活動 または特定の調査活動である。 特別支援が必要な子どもの就学前教育機関から 就学前学級(0 学年)への進級時には、可能な限 りスムーズな移行を目的として関係機関と中央子 ども健康チームによる連携会議が開催される。就 学前教育機関長は中央子ども健康チームに会議時 間を予約して、協議される子どもの保護者に連絡 する。記録は PMO に記載される。 6.中央子ども健康チームの支援手順 中央子ども健康チームの支援手続きは図 4 で ある。子どもが知識要件を満たしていないという リスクがある場合、付加的調整を行う。 付加的調整後もリスクが継続する場合は、関連 する原因を検討(Utredningar)する必要がある。 子どもが学校で学習や他の困難を抱えている場合 にも検討がなされる。校長は検討を担当する責任 図 3 支援活動のフローチャート 出典:Tomelilla kommun, Barn- och elevhälsoplan, s. 9. 図 4 子ども支援手続き 出典: Tomelilla kommun, Barn- och elevhälsoplan, s.  10.

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者を指名する。検討は、学校における子どもの困 難の根本的な原因を分析し、子どもが必要とする 支援を学校が提供することを目指す。子どもの学 校全体の状況を定位して分析する必要がある場 合、より徹底的な検討が必要である。状況によっ ては、外部者が関与する検討も行う。検討は調査 (Kartläggning) と 教 育 的 評 価(Pedagogisk bedömning)の 2 つで構成される。 検討に関与する教員や他の専門家が、子どもの 特別支援の必要性についての共同 / 学際的分析を 行うことが重要である。図 5 に示されるように 子どもが特別支援を必要としている場合は、子ど もの支援の必要性に応じるために努力する必要が ある。付加的調整(Extra anpassningar)と特別 な支援(Särskilt stöd)の区別は、多くの場合配 慮の程度と期間による。付加的調整には、学校の 日程の計画と構成、追加的で明確な指示、他の方 法による説明、読み指導、特定の教材や設備及び 個々の特別教育の取り組みが含まれる。特別な支 援には、より広範で長期的な特別教育支援、個別 指導や小集団での指導が含まれる35 7.総合考察 トッメリラコミューンでは行政の中央に学校心 理士、言語聴覚士、特別教員、学校医、医療専門 家、リソース教員、教育コーチ、学校看護師、学 校福祉士からなる子ども健康チームを設置して、 コミューン内の学校を支援していた。また学校看 図 5 子ども支援のフローチャート 出典:Tomelilla kommun, Barn- och elevhälsoplan, s. 11.

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護師と学校福祉士は各学校に定期的な巡回訪問指 導も行っていた。 具体的な子どもの問題への対応として、いじめ については学校福祉士が対応していた。またサポ ーターグループという解決策に焦点を当てたいじ め対策プログラムを活用していた。暴力・けんか に関しては、環境を変えるために子ども教育当局 に通学する措置を行っている事例が紹介された。 そして子どもの長期欠席については私立学校への 通学など公立学校以外の選択肢を提示したり、公 立学校内に特別な教育のための小集団を編成した りしていた。また必要に応じて、福祉局のソシオ ノームとの連携、特別教育家による家庭訪問も行 っていた。 怠惰・素行不良・非行・犯罪、アルコール・薬 物使用に関しては、福祉局のフィールドアシスタ ントや必要であれば警察と連携する。教職員への クレームはアンケートによって集約し、進路希望 と現況とのマッチングは専門職員としての修学・ キャリア相談者が担当する。子どもの精神的不安 定は学校看護師や学校福祉士がかかわり、必要で あれば、BUP や福祉局にも連絡する。そして子 どもの健康状態維持のために複数の介入プログラ ムも活用していた。 このようにトッメリラコミューンでは、行政の 中央に専門家を雇用する中央子ども健康チームを 整備して、専門家を学校に巡回訪問させたり、支 援の申請や分析・介入方法を自治体で共有したり することを基礎に各学校を支援していた。その上 で、重篤な課題に関しては医療や福祉局、警察な どと連携することで、専門家が学際的にかかわる 子どもの支援体制をコミューンレベルで構築して いたことが明らかになった。しかしトッメリラコ ミューンが、全国的にみて特殊なのか、一般的な のかは不明である。今後も人口規模や教育資源の 多寡、コミューンの面積などに着目しつつ、全国 的な設置状況や形態について継続的な調査が求め られる。 【注】

1 OECD (2017) How’s Life? 2017 MEASURIG

WELL-BEING.

2 Prop. 2001/02: 183 Hälsa, lärande och trygghet. 3 SOU 2016: 19, Barnkonventionen blir svensk lag. 4 SOU 2016: 59, På goda grunder-en åtgärdsgaranti för

läsning, skrivning och matematik.

5 Kommittédirektivet 2017: 88: Bättre möjligheter för elever i de obligatoriska skolformerna att nå de kunskap-skrav som minst ska nås.

6 Skolverket och Socialstyrelsen (2016) Vägledning för elevhälsan.

7 Skolinspektionen (2016) Skolans arbete med extra an-passningar, Skolinspektionens kvalitetsrapport.

8 Skolverkets allmänna råd (2012) Att främja närvaro och uppmärksamma, utreda och åtgärda frånvaro i skolan., Skolverkets allmänna råd (2014) Arbete med extra anpassningar särskilt stöd och åtgärdsprogram. 9 Skolverket (2014) Stödinsatser i utbildningen.

10 Sveriges Kommuner och Landsting, SKL (2017) Olika är normen ATT SKAPA INKLUDERANDE LÄR-MILJÖER I SKOLAN.

11 Skollagen (2010:800) 2 kap. 25§, 26§, 27§, 28 §. 12 トメリッラコミューン公式 Website, 鉄道 https://www.

tomelilla.se/bygga-bo-miljo/natur-och-friluftsliv/qr-kod-er/kronoskogen/jarnvagen/ (2018 年 11 月 20 日参照). 13 SCB, Folkmängd i riket, län och kommuner 31

decem-ber 2018 och befolkningsförändringar 1 oktodecem-ber–31 de-cember 2018

14 SCB, Land- och vattenarealer den 1 januari 2012, Kom-muner, län och riket Land and water areas 1 January 2012.

15 フィールド調査時の情報提供 .

16 Tomelilla kommun, https://sv.wikipedia.org/wiki/ Tomelilla_kommun(2018 年 11 月 20 日参照).

17 フィールド調査及びトメリッラコミューン公式 Website, 教育活動https://www.tomelilla.se/kommun-politik/ kommunens- organisation/ forvaltning-och-namnder/ barn-och-utbildning/(2018 年 11 月 20 日参照). 18 トメリッラコミューン公式 Website, 中央子ども健康チ

ーム https://www.tomelilla.se/vard-omsorg/familj-barn- och-ungdom/stod-till-barn-och-ungdom/elevhalsa/(2018 年 11 月 20 日参照).

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19 Tomelilla kommun, Barn- och elevhälsoplan, s.4. 20 ibid.s.4., Skollag 25 §.

21 op.cit.19, s.5.

22 TEACCH(Treatment and Education of Autistic and Comunication handicaped Children)とは、1960 年代よ りアメリカ・ノースカロライナ州で発展してきた自閉症 の人たちのための生活支援制度で、自閉症の人たちに彼 らを取り巻く環境の意味を伝え、意味のあるコミュニケ ーションをしながら、彼らとの共存世界を目指そうとす る プ ロ グ ラ ム で あ る。TEACCH プ ロ グ ラ ム 研 究 会 Website, http://www.teacchken.com/about/index.html (2018 年 11 月 20 日参照). 23 スコーネレーンには 2018 年 11 月時点で 24 校のリソー ス 学 校 が あ る。https://gulasidorna.eniro.se/hitta: resursskola/skåne+län(2018 年 11 月 20 日参照). 24 Barn- och ungdomspsykiatri i Skåne は 18 歳までの子ど

もを対象としており、緊急な場合は夕方、夜間、週末で も 対 応 す る。https://www.tomelilla.se/vard-omsorg/ akut-hjalp/(2018 年 11 月 20 日参照). 25 op.cit.19, s.6. 26 SPSM 公式 Website, https://www.spsm.se/(2018 年 11 月 20 日参照). 27 SPSM 公 式 Website, https://www.spsm.se/om-oss/ pressrum/pressmeddelanden/pressmeddelanden/oppet-hus-pa-temat-tillganglig-larmiljo/(2018 年 11 月 20 日 参 照). 28 SPSM, DATE, https://www.spsm.se/date-larmaterial (2018 年 11 月 20 日参照). 29 op.cit.19, s.6. 30 フィールドアシスタントは、ソーシャル・サービス法 (第 3 章第 1 章)に含まれるアウトリーチ・ソーシャル ワークの方法を用いる。フィールドアシスタントは、社 会的な問題を抱えている可能性のある若者に向けて、個 人レベル、集団レベル、構造レベルで働く。具体的に は、学校、レクリエーションセンター、街中などで若者 と良好な接触を確立することを目指す。

31 DISA プ ロ グ ラ ム Website, https://disa-metoden.com/ (2018 年 11 月 20 日参照).

32 Pernilla Garmy (2016) Hälsopromotion i skolan. Ut-värdering av DISA - ett program för att förebygga de-pressiva symtom hos ungdomar. Institutionen för klinis-ka vetensklinis-kaper, Malmö (In Lund University, Faculty of Medicine Doctoral Dissertation Series 2016: 12). 33 op.cit.19, s.6-7.

34 op.cit.19, s.7-9. 35 op.cit.19, s.10.

参照

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