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「DX推進指標」の構造的側面に関わる妥当性評価

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Academic year: 2021

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(1)1D2-2. 経営情報学会2020年全国研究発表大会 2020年11月7日(土)~11月8日(日) オンライン開催. 「DX 推進指標」の構造的側面に関わる妥当性評価 Validity Evaluation from the Structural Aspect of DX Promotion Index 野中 誠(東洋大学) 要旨:本稿では,IPA が収集した「DX 推進指標」に関する 293 社の自己診断データを用いて,同指標の構 造的側面の妥当性評価を行った結果を報告する。DX 推進指標の元々の構造による確認的因子分析の結果,構 造的側面での妥当性が確認できた。探索的因子分析の結果,経営と IT システムに関わる指標が互いに区別さ れた 2 因子モデルと,同モデルの経営に関わる指標群が 3 つの因子に分かれた 4 因子モデルが得られた。4 因子モデルに基づいて確認的因子分析を行った結果,構造的側面での妥当性が確認できた。この結果から, DX 推進指標は元々の構造においても妥当であるが,4 因子モデルとして再整理できる可能性が示唆された。. Abstract: This paper reports the results of a structural validity evaluation of the "DX Promotion Index" using the 293 self-diagnosed data collected by the Information-technology Promotion Agency, Japan. As a result of confirmatory factor analysis, the structural validity of the DX Promotion Index in its original structure has confirmed. As a result of exploratory factor analysis, a two-factor model was derived in which the indices related to management and those related to IT systems were distinguished. In addition, a four-factor model was derived in which the indices related to the management of the two-factor model was divided into three. The structural validity of the four-factor model was also confirmed. This study showed the possibility of re-organizing the DX Promotion Index as a four-factor model. 1. はじめに. ために必要なアクションを取るための自己診断指標. 現在,我が国においてデジタルトランスフォーメ. である(経済産業省,2019) 。DX 推進指標は定性指. ーション(DX)に関わるさまざまな政策が実施され. 標と定量指標から構成されている。定性指標は,図. ている。その一つに,経済産業省が 2019 年 9 月に. 1 左に示した DX 推進のための経営のあり方や仕組. 取りまとめた「DX 推進指標」 (経済産業省,2019). みに関する指標群と,図 1 右に示した DX を実現す. がある。2020 年度より企業の DX を促進するため. る上で基盤となる IT システムの構築に関する指標. の認定制度(経済産業省,2020)が開始される中で,. 群で構成されている。これらはさらに,図 1 の階層. DX 推進指標のような DX 促進の道標となる指標の. 構造に従って下位の指標群へと展開される。. 意義はさらに高まるものと考えられる。. それぞれの指標にはクエスチョンが設定されてい. DX 推進指標は諸外国の関連指標などを参考にし. る。DX 推進のための経営のあり方や仕組みに関す. ながら有識者の議論を経て作成されたものであり,. るキークエスチョンは 7 個,サブクエスチョンは 12. 内容的側面での妥当性は一定程度保たれているもの. 個である。また,DX を実現する上で基盤となる IT. と考えられる。ここで,妥当性を構成する要素は,. システムの構築に関するキークエスチョンとサブク. 内容的側面のほかにも構造的側面など複数ある(村. エスチョンはそれぞれ 2 個と 14 個である。 そして,. 山,2012) 。DX 推進指標の妥当性をさまざまな側面. それぞれの指標に関わる成熟度レベルが,表 1 に示. から評価することが DX 推進指標の有用性を高め,. した 6 段階の順序尺度に基づいて評定される。. ひいては我が国における DX のより効率的かつ効果 的な促進につながるものと期待される。 本稿では,IPA が収集した DX 推進指標の定性指 標に関する自己診断データを用いて,DX 推進指標 の構造的側面に関わる妥当性評価を行った結果を報 告する。. 2. DX 推進指標 DX 推進指標は,自社の DX に関する取組みの現. 図 1 DX 推進指標(定性指標)の構成. 状を把握し,目標とする状態とのギャップを埋める. (経済産業省[2019] ). 105.

(2) 経営情報学会2020年全国研究発表大会 2020年11月7日(土)~11月8日(日) オンライン開催. 表 1 DX 推進指標の成熟度レベル. たあとの 293 社のデータ2)である。回答企業の業種. (情報処理推進機構[2020]を元に筆者作成). は 16 業種と多岐にわたっており,製造業(機器)が 23.2%ともっとも多く,次いで製造業(素材)が.   成熟度レベル. 特性. レベル0. 未着手. 経営者は無関心か,関心があっても 具体的な取組に至っていない. レベル1. 一部での散発的実施. 全社戦略が明確でない中,部門単位で の試行・実施にとどまっている. レベル2. 一部での戦略的実施. 全社戦略に基づく一部での推進. レベル3. 全社戦略に基づく. 全社戦略に基づく部門横断的推進. も多く, 次いで 1,000 人以上 3,000 人未満が 20.4%,. 定量的な指標などによる持続的な実施. 100 人以上 300 人未満が 17.6%であった。. 19.5%,情報通信業が 11.6%,卸売業・小売業が 10.9%,サービス業が 7.5%であった。企業規模で は 20 人未満の企業から 3,000 人以上の企業まで幅 広く分布しており,3,000 人以上が 31.5%ともっと. 部門横断的推進 レベル4. 全社戦略に基づく 持続的実施. レベル5. グローバル市場に. デジタル企業として,グローバル競争. おけるデジタル企業. を勝ち抜くことのできるレベル. 各指標における成熟度は,0 から 5 までの 6 段階 で測定される。各指標の平均値と標準偏差を表 2 に 示す。なお,図 1 左に示されていた「KPI」 , 「評価」 ,. IPA は 272 社の企業が DX 推進指標に基づいて自. 「投資意思決定,予算配分」の 3 指標はフロアー効. 己診断した結果を公表している(情報処理推進機構, 2020)。各企業の成熟度レベルの平均値は全体で. 果が生じていたため,表 2 では除外している。これ らの 3 指標は以降の分析においても対象外とする。. 1.45 であり, 「一部での散発的実施」と「一部での. また,指標同士の相関係数はおよそ 0.3 から 0.7 の. 戦略的実施」の中間である。一方,DX の取組みが先. 範囲であり,いずれも正の相関があった。. 行している 13 社の平均値は 3.40 であり, 「全社戦 略に基づく部門横断的推進」と「全社戦略に基づく. 4.2 理論モデルの確認的因子分析. 持続的実施」の中間である。また,大企業に比べて. 因子分析に適切したデータであるかを確認するた. 中小企業の方が成熟度の平均値が低い。. め,Kaiser-Meyer-Olkin (KMO) 測度を求める。そ の結果, 全体指標は 0.97, 個別指標は 0.92 から 0.98. 3. 分析方法. の範囲であった。この結果から,分析対象データは. 本稿では,IPA が収集した自己診断結果(情報処. 因子分析を行うのに適していると判断する。. 理推進機構,2020)のうち,定性指標データを利用. DX 推進指標の理論モデルについて確認的因子分. 1) する 。まず,DX 推進指標の構造的側面の妥当性を. 析を行う。DX 推進指標は,No.6「人材育成・確保」. 評価するために,DX 推進指標の元々の構造モデル. などのように,一つのキークエスチョンの下に複数. (理論モデルと呼ぶ)について確認的因子分析を行. のサブクエスチョンが構成されているものがある。. う。続いて,これとは異なる構造の可能性を探るた. ここでは,これらは一つの因子に対応しているもの. めに探索的因子分析を行う。そして,探索的因子分. と想定し,キークエスチョンとサブクエスチョンを. 析の結果に基づいて得られたモデル(導出モデルと. 同列のものとして扱う。そして,No.1 から No.7 ま. 呼ぶ)について確認的因子分析を行い,理論モデル. でを「経営」 ,No.8 および No.9 を「IT システム」. との比較を行う。これらの結果から,DX 推進指標の. という上位概念の下位にそれぞれ位置づける。. 構造的側面に関する妥当性を総合的に評価する。. 各因子の信頼性分析としてクロンバックのαを求 めた結果, 「マインドセット,企業文化」が 0.906,. 4. 分析結果. 「推進・サポート体制」が 0.894, 「人材育成・確保」. 4.1 データの概要. が 0.928, 「事業への落とし込み」が 0.890, 「ビジ. 分析対象は,IPA においてスクリーニングを終え. ョン実現の基盤としての IT システムの構築」が. 1). 2). 個別企業の特定につながるような情報をすべて除外し た上で,IPA より自己診断データの提供を受けた。. 情報処理推進機構(2020)において分析された 272 社 よりも,データ受領時には回答企業数が増えていた。. 106.

(3) 経営情報学会2020年全国研究発表大会 2020年11月7日(土)~11月8日(日) オンライン開催. 表 2 探索的因子分析の結果 No. 1 2 3. 4 4-1 5 5-1 5-2 6 6-1 6-2 6-3 7. 7-1 7-2 7-3 8 8-1 8-2 8-3 8-4 8-5 8-6 8-7 8-8 9 9-1 9-2 9-3 9-4 9-5. 指標 DX推進のための経営のあり方,仕組み. 平均値 標準偏差. 2因子モデル 経営. ビジョン 経営トップのコミットメント. 1.47 1.62. 1.22 1.23. 0.825 0.730. マインドセット,企業文化 体制. 1.35 1.30. 1.20 1.20. 0.704 0.764. 仕組み. 推進・サポート体制 推進体制 外部との連携. 人材育成・確保 事業部門における人材 技術を支える人材 人材の融合. 事業への落とし込み. 戦略とバリューマップ バリューチェーンワイド 持続力. DXを推進する上で基盤となるITシステムの構築. 1.61. 1.24 1.45 1.49 1.18 1.04 1.17 1.09 1.58 1.18 1.09 1.52. 1.24. 1.11 1.21 1.03 1.02 0.97 0.99 1.03 1.21 1.17 0.99 1.18. ITシステム. 4因子モデル DXガバナンス 企業文化 人材育成 ITシステム 0.714 0.608. 0.843. 0.580. 0.851 0.777. 0.500 0.590. 0.836. 0.577. 0.866 0.802 0.785 0.812 0.783. 0.821. 0.770. 0.854. 0.752 0.622. 0.904 0.784. 0.606 0.676 0.677 0.480. 0.654 0.617. ビジョンの実現の基盤としてのITシステムの構築 データ活用. 1.46 1.49. 0.94 1.00. 0.577 0.817. 0.533 0.756. 全体最適 IT資産の分析・評価. 1.66 1.87. 0.96 1.16. 0.748 0.830. 0.681 0.772. スピード・アジリティ. 廃棄 競争領域の特定. 非競争領域の標準化・共通化 ロードマップ ガバナンス・体制 体制 人材確保. 事業部門のオーナーシップ. データ活用の人材連携 プライバシー,データセキュリティ. 9-6 IT投資の評価 注)因子負荷量が0.3未満のものは非表示としている。. 1.34. 1.40 1.27 1.33 1.82 1.56 1.44 1.83 1.45 1.74 2.19 1.34. 0.92. 0.718. 1.01 0.96. 0.682 0.582. 1.10. 0.709. 1.10 1.03 1.12 1.02 1.17 0.92 1.18 1.28. 0.663. 0.642 0.535. 0.305. 0.655. 0.691 0.734. 0.466. 0.625 0.655. 0.659 0.735. 0.598 0.696. 0.314 0.758 0.460 0.453. 0.331 0.344. 0.689 0.472 0.422. 0.917, 「ガバナンス・体制」が 0.880 であった。ク. お,因子は相互に相関関係にあると考えられること. ロンバックのαは一般に 0.7 以上であれば十分な信. から,回転方法としてオブリミン回転を適用する。. 頼性があるとみなされる。いずれの因子においても. 表 2 に,2 因子モデルおよび 4 因子モデルの探索. この基準を満たしており,下位尺度の信頼性は十分. 的因子分析の結果を示す。2 因子モデルの累積寄与. である。また,理論モデルについての確認的因子分. 率は 0.586 であり,データ全体のばらつきを十分に. 析の結果,CFI が 0.942,RMSEA が 0.058 であっ. 説明できている。No.9-3「事業部門のオーナーシッ. た。 一般に, 適合度の良いモデルは CFI が 0.9 以上,. プ」を除き,指標群は図 1 左の経営側と図 1 右の IT. RMSEA が 0.05 未満であることが望ましいとされ. システム側に分かれた。これら 2 因子間の相関係数. ていることから,DX 推進指標の理論モデルは構造. は 0.779 であり,強い相関が見られた。. 的側面においておおむね妥当であるといえる。. 4 因子モデルの累積寄与率は 0.634 であり,デー タ全体のばらつきを十分に説明できている。IT シス. 4.3 探索的因子分析. テムの指標群は,No.8-6 と No.9-5 を除いて一つの. 探索的因子分析を行うにあたっては,因子数を決. 因子に集約された。一方,経営に関わる指標群は三. める必要がある。スクリーテストおよび平行テスト. つの因子に分かれたが,キークエスチョンとサブク. では 2 因子,MAP 基準では 2 因子,BIC 基準では. エスチョンの組が分離したものはなかった。これら. 4 因子が候補として示された。この結果に基づき,. の因子を,それぞれ「DX ガバナンス」 , 「企業文化」 ,. 2 因子と 4 因子のそれぞれのモデルを検討する。な. 「人材育成」と名付けた。. 107.

(4) 経営情報学会2020年全国研究発表大会 2020年11月7日(土)~11月8日(日) オンライン開催. 4.4 導出モデルの確認的因子分析. ただし,これらの結果は分析対象のデータに依存. 4 因子モデルについて,Wolfinbarger, et., al.. している。今後,各企業の DX の成熟度が高まった. (2003)の方法に倣い,因子負荷量が 0.5 以上の指標. ときには,本稿とは異なる結果が得られる可能性が. を用いて下位尺度を再構成した導出モデルを定義し,. ある。このような検討を継続的に実施することで,. その構造的側面の妥当性を評価する。No.6-3,9-3,. 産業全体における DX 成熟度の向上に追随したモデ. 9-5,および 9-6 の因子負荷量が 0.5 未満であった. ルの評価と見直しが求められる。. ため,これらを除いたモデルとする。そして,DX ガ バナンス,企業文化,および人材育成の因子は「経. 6. おわりに. 営」という上位概念の下位に位置づける。. 本稿では,IPA が収集した DX 推進指標に関する. 四つの因子それぞれのクロンバックのαは,DX. 293 社の自己診断データを用いて,同指標の構造的. ガバナンスが 0.951,企業文化が 0.906,人材育成. 側面の妥当性評価を行った結果を述べた。今後は,. が 0.919,IT システムが 0.940 であった。いずれも. 構造的側面に加えて,一般化可能性や外的側面など. 下位尺度の信頼性は十分である。導出モデルの確認. 他の妥当性側面について評価するとともに,諸外国. 的因子分析の結果,CFI が 0.934,RMSEA が 0.066. で示された DX 成熟度モデルと比較するなど内容的. であったことから,4 因子で構成された導出モデル. 側面の妥当性評価を深めることが課題である。. の構造はおおむね妥当であるといえる。 謝辞 DX 推進指標データの利用にあたってご尽力 5. 考察. いただいた独立行政法人情報処理推進機構社会基盤. 理論モデルの確認的因子分析により,DX 推進指. センターの室脇慶彦氏と谷口俊一氏に謝意を示す。. 標の構造はおおむね妥当であることが示された。2 因子モデルの探索的因子分析において経営と IT シ. 参考文献. ステムが 1 指標を除いて漏れなく区別されたことは,. 経済産業省(2019) 「 『DX 推進指標』とそのガイダンス」. DX 推進指標の大枠の構造が適切であることを示唆. https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731. している。また,4 因子モデルにおいて,探索的因. 003/20190731003.html(2020 年 8 月 1 日参照).. 子分析の過程でキークエスチョンとサブクエスチョ. 経済産業省(2020)「『情報処理の促進に関する法律の一. ンの組が崩れることなく維持されたことも,DX 推. 部を改正する法律』 (令和元年法律第 67 号)が施行. 進指標の構造的な適切さを示唆している。. されました」https://www.meti.go.jp/press/2020/. 一方,4 因子モデルにより導出モデルを得た際に, No.6-3,No.9-3,No.9-5 および No.9-6 の因子負荷. 05/20200515001/20200515001.html(2020 年 6 月 30 日参照).. 量が 0.5 未満であった。このことから,これらの指. 情報処理推進機構(2020) 「DX 推進指標自己診断結果分. 標は他と独立したものとして位置づけてもよい可能. 析レポート」https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/. 性がある。特に,No.9-5「プライバシー,データセ. 20200528.html(2020 年 6 月 1 日参照).. キュリティ」は IT を活用したビジネスの基盤である. 中村陽人(2009) 「構成概念妥当性の検証方法に関する検. ことから,DX の成熟度とは異なる次元で捉えるべ. 討―弁別的証拠と法則的証拠を中心に―」 『横浜経営. き要素と位置づけてよい可能性がある。. 研究』30(1), 203-219.. 4 因子モデルは,DX 推進指標を一段抽象化したモ. 「妥当性概念の歴史的変遷と心理測定学的 村山航(2012). デルとして位置づけることができる。本研究では,. 観点からの考察」 『教育心理学年報』51, 118-130.. 経営に関する因子を DX ガバナンス,企業文化,人. Wolfinbarger, M., & Gilly, M. C. (2003). eTailQ:. 材育成の三つとしたが,特に DX ガバナンスの指標. dimensionalizing, measuring and predicting etail. 群は独立ではなく総合的に考慮するとよいだろう。. quality. Journal of retailing, 79(3), 183-198.. 108.

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