「認知症ケア専門職者が抱く、感情規則の傾向」
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(2) 認知症ケア専門職者が抱く感情規則の傾向 窪. 内. 敏. 子. Trend of feeling rule of staff to perform dementia care Toshiko Kubouchi 要 旨 :【 研 究 目 的 】認 知 症 ケ ア 専 門 職 者 が 、ど の よ う な 感 情 規 則 を 抱 く 傾 向にあるのかについて、質問紙を用いた調査から、結果を分析し現状を 明 ら か に す る こ と で あ る 。【 研 究 方 法 】・ 研 究 対 象 者 : 指 定 認 知 症 対 応 型 共同生活介護(以下グループホーム)で、実際に利用者の介護にあたっ て い る 職 員 。・ デ ー タ 収 集 ・ 分 析 : 質 問 紙 を 用 い た 自 記 式 郵 送 式 の 横 断 調 査による。 【 倫 理 的 配 慮 】関 西 福 祉 科 学 大 学 に 研 究 倫 理 申 請 し 承 認 を 得 た ( 承 認 番 号 1 3 - 5 7 )。 【 結 果 】① 認 知 症 ケ ア 専 門 職 者 の 感 情 規 則 の 多 く は 、 一定していない。②多くの認知症ケア専門職者は、ケアの評価が個人の 主 観 に 委 ね ら れ る も の を 感 情 規 則 に し て い る 。 ③「 主 任 ・ リ ー ダ ー 」 「そ の 他 の 資 格( お そ ら く 介 護 支 援 専 門 員 )」 「認知症介護実践者研修修了者」 の認知症ケア専門職者は、認知症ケアの感情規則を多くもっている。④ ③ に 次 い で「 無 資 格 」の 人 や 、 「 4 0 歳 以 上 」の 人 も 感 情 規 則 を 多 く も つ 。 ⑤認知症ケア専門職者が感情労働を行うことで、認知症の方にどのよう な 感 情 変 化 を 求 め る か に つ い て は 、 Person centered care の 考 え 方 と 乖 離は少ない。⑥感情労働については、どちらかというと「負」のイメー ジ を も た れ て い る 。【 考 察 】・ ケ ア の 評 価 が 個 人 の 主 観 に 委 ね ら れ る も の を感情規則にしている研究対象者が多く、認知症ケアの標準化が具体化 されない原因の一つだと考えられる。今後も、事例を丁寧に分析し、主 観 的 な か か わ り か ら 、普 遍 性 の あ る ケ ア に 転 換 し て い く 必 要 が あ る 。 ・職 場環境の整備や、特に管理的立場の職員の理解を、認知症ケア専門職者 は求めており、感情労働を適切に評価してくれる上司と、スタッフの中 で 勤 務 す る こ と が 、認 知 症 ケ ア の 充 実 に つ な が る の で は な い か と 考 え る 。 Key words:認 知 症 ケ ア 専 門 職 者 感情規則. 認知症ケア. 感情労働. 感情管理.
(3) Ⅰ.はじめに 2 0 0 3 年 に 報 告 さ れ た「 2 0 1 5 年 の 高 齢 者 介 護 ~ 高 齢 者 の 尊 厳 を 支 え る ケ アの確立に向けて~」は、認知症ケアを「尊厳を保持することから始ま り、高齢者介護の全てに通じるものである」とし、それまでの「拘束」 から「尊厳を支える」対応にパラダイムシフトする必要があることを示 唆 し た 。そ し て 、 認 知 症 ケ ア の 切 り 札 と し て 登 場 し た「 グ ル ー プ ホ ー ム 」 を中心として、さかんに研究者や関係機関などが、認知症ケアに関する 研 究 や 試 み が 行 わ れ て き た が 、2 0 1 3 年 に 報 告 さ れ た 高 齢 者 事 業 所 従 事 者 の虐待は、特別養護老人ホームに次いで 2 番目に多く発生し、虐待数は 年々増加していると発表されている。つまり、日本の認知症ケアの現状 は、国の活発な取り組みに反し、実践現場では、認知症高齢者を客体化 した対応が、未だに残っているというアンバランスが発生していると考 えられる。 ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 1 ) は「 認 知 症 ケ ア で は 、支 援 す る 側 が 、 支 援 さ れ る者を支配してしまう関係に陥りやすく、認知症の人の『尊厳』が脅か されるリスクも高い。そのため、認知症ケアに携わる専門職の倫理や人 間観の熟成が重要である」と述べている。しかし、実際に認知症の方に かかわっている認知症ケア専門職者が、どのような倫理感と熟成された 人間性をもち、認知症の方とかかわっているのかを確認された研究は皆 無である。 「 感 情 労 働 」 の 研 究 者 で あ る 社 会 学 者 の Hochschild2 ) は 、 労 働 の 種 類によって暗黙のルール(感情規則)があると述べており、感情規則と は、専門職者の理想的な姿を示し「倫理感と熟成された人間性」に通じ ると考えられる。本調査研究は、グループホームの介護職員を対象にア ンケート調査を行い、認知症ケアの専門職者が抱いている感情規則は、 どのようなものなのかを明らかにするものである。本調査結果を得るこ とで、認知症ケアの標準化に関する試みの一助になると考える。 Ⅱ . 感 情 労 働 に つ い て (感 情 管 理 と 感 情 規 則 ) 感 情 労 働 ( Emotional Labour) と は 、 社 会 学 者 Hochschild に よ り 提 唱 さ れ た 概 念 で あ る 。 Hochschild は 、 感 情 労 働 を 「 公 的 に 観 察 可 能 な 表 情 と、身体的表現を作るために行う感情の管理」3)と定義し、肉体労働、 頭脳労働と並ぶ第三の労働形態として「感情労働」を位置付け、対人サ ービス労働に従事する労働者たちが、自分の感情をかなり深いレベルで.
(4) 管理することを余儀なくされ、それがストレスになっていることを明ら かにした。感情労働は「①対面あるいは声による顧客との接触がある。 ②顧客に何らかの感情変化を起こさせなければならない。③雇用者は研 修 や 管 理 体 制 を 通 じ て 、 労 働 者 の 感 情 活 動 を あ る 程 度 支 配 す る 。」 4 ) と いう 3 点を特徴としている。認知症ケアの専門職者の実際から、この特 徴を考えると①認知症高齢者との直接的なかかわりがある②認知症の方 が納得し、自発的に行動に移れるようにうまく働きかける③職場の理念 や、認知症に関する研修があり、ケアの質の向上を目指していると言う ことができ、認知症ケアの専門職者は、感情労働者であると言えるだろ う 。 Hochschild は 、 感 情 労 働 を 行 う 労 働 者 が 、 自 ら 抱 い た り 、 表 出 し た りする感情は、ある社会的状況においてそれに適合するように操作して い る と 述 べ 、こ の 感 情 の コ ン ト ロ ー ル を「 感 情 管 理( E m o t i o n m a n a g e m e n t )」 と言い、その際、自分の感情をどのように管理・コントロールするかは 暗黙のルールがあり、そのルールに則って、感情労働者は自分の感情を マネジメントしようとする。この暗黙のルールのことを「感情規則」 ( Feeling Rule) と 言 い 「 特 定 の 状 況 に お い て 、 特 定 の 心 理 状 態 に な る こ と 」 4)と 定 義 さ れ て い る 。 こ の 感 情 規 則 は 、 社 会 規 範 や そ の 労 働 に 期 待される役割などによって決定され、一つの集団の維持や、人間関係を 円滑に行うために機能している。例えば、看護師では「どんな患者に対 応しても驚かない」 「 冷 静 で い る 」 な ど が あ り 、感 情 規 則 は 、感 情 管 理 を 行う際の基準となり、感情労働の基本概念であると考えられる。 Ⅲ.研究目的と方法 認知症ケア専門職者が、どのような感情規則を抱く傾向にあるのかに ついて、アンケートを用いてデータ収集を行い、結果を分析し現状を明 らかにする。本研究は、選択した標本を対象とし、質問紙を用いた自記 式郵送式の横断調査である。筆者の先行研究により明らかになった「認 知 症 ケ ア 専 門 職 が 抱 く 感 情 規 則 の 種 類 」 5 ) に つ い て 、得 ら れ た 結 果 を 原 案とし作成したアンケート用いて調査する。 1.研 究 対 象 者 グループホームで、実際に利用者の介護にあたっている職員 2.研 究 対 象 者 の 選 定 全 国 の グ ル ー プ ホ ー ム ( WAM NET に 掲 載 中 ) か ら ラ ン ダ ム に 事 業 所 を 選.
(5) 択し、その施設長に 5 名の職員を紹介していただく。特定非営利活動法 人 全 国 認 知 症 グ ル ー プ ホ ー ム 協 会 6 ) は 、現 在 、全 国 の グ ル ー プ ホ ー ム の 数 は 1 万 事 業 所 を 超 え た と 報 告 し 、1 事 業 所 あ た り 約 1 3 人 の 常 勤 換 算 職 員が平均して勤務していると述べられ、グループホームで働く介護職員 は 約 13 万 人 に 達 す る と 考 え て よ い 。 従 っ て 、 95% の 信 頼 度 で 、 10 万 人 の サ ン プ ル 数 と し て 、ス タ ー ジ ェ ス の 公 式 に あ て は め 計 算 す る と 、1 , 0 5 6 人のアンケートが必要となる。 3.デ ー タ 収 集 質 問 紙 を 用 い た 調 査 研 究 ( 表 1、 2) 4.分 析 ( 1 )分 析 対 象 項 目 で あ る「 設 置 主 体 」 「地方」 「年齢」 「性別」 「勤務形態」 「 職 位 」「 資 格 」「 研 修 」「 認 知 症 ケ ア の 年 数 」 に つ い て 集 計 し 、「 認 知 症 ケア専門職が抱く感情規則の種類」と比較し検討を行う。 ( 2) 記 述 質 問 は 、 同 義 語 を 集 計 し グ ラ フ 化 す る 。 ( 3) 自 由 記 述 は 、 類 似 す る も の を カ テ ゴ リ ー 化 し 内 容 の 分 類 を 行 う 。 5.調 査 期 間 2014 年 5 月 ~ 9 月 6.倫 理 的 配 慮 関 西 福 祉 科 学 大 学 に 研 究 倫 理 申 請 し 承 認 を 得 た ( 承 認 番 号 1 3 - 5 7 )。 倫理内容は以下のとおりである。 ( 1) 研 究 対 象 者 個 人 の 人 権 擁 護 ①研究の参加は自由意思で、回答が返信されたもののみを研究対象と する。 ②回答の返信がされなくても、個人に不利益を被ることはないことの 保障。 ③個人情報保護の確約。 ④得られたデータは、分析し研究結果がまとまり 5 年保管後消去する ことの保障。 ⑤研究結果の公表と、その際の匿名性の保障。 ⑥得られたデータを本研究目的以外に使用しないことの確約。 ⑦グループホームの施設長は、研究対象者へ回答内容や返信に対する 強制をかけないことのお願い。.
(6) ( 2) 研 究 対 象 者 と な る 者 に 理 解 求 め 同 意 を 得 る 方 法 上記①~⑥を含む研究の主旨内容を、説明した文書を質問紙と共に郵送 し、回答が返信されたもののみ、同意されたものとみなす。⑦について は、研究対象者の施設長に研究の主旨内容の説明と、質問内容を示し、 スタッフの紹介のみをお願いする文書をグループホームあての郵送物に 同封する。 表 1. 質問紙1.
(7) 表 2. 質問紙 2.
(8) Ⅳ.結果 1.デ ー タ 収 集 WAM NET に 掲 載 中 の グ ル ー プ ホ ー ム か ら ラ ン ダ ム に 400 ヵ 所 の 事 業 所 を 選 択 し 、そ の 施 設 長 に 5 名 の 職 員 を 紹 介 し て い た だ く 旨 の 依 頼 を 行 い 、 2,000 人 分 の ア ン ケ ー ト を 郵 送 し た が 、 回 収 は 700 人 分 に 留 ま り 、 再 度 200 ヵ 所 ( 計 600 ヵ 所 ) の 事 業 所 を ラ ン ダ ム に 選 択 し 1,000 人 分 の ア ン ケ ー ト を 追 加 で 郵 送 し た 。 そ の 結 果 、 合 計 1,107 人 分 の ア ン ケ ー ト が 回 収 で き た ( 回 収 率 37% ) た め 、 こ の ア ン ケ ー ト 結 果 を 研 究 対 象 と す る 。 2. 分 析 結 果 ( 1 ) 分 析 対 象 者 の 属 性 は 以 下 の と お り で あ っ た ( 図 1 )。.
(9) (3)あなたは 回答数. 比率. ①男性. 223. 20.14%. ②女性. 878. 79.31%. 無回答. 6. 0.54%. 合計. 0.5%. 20.1% ①男性. 1107. ②女性 無回答. 79.3%. (4)あなたの年齢 回答数. 比率. ①20歳以下~20歳代. 165. 14.91%. ②30歳代. 224. 20.23%. ③40歳代. 250. 22.58%. ④50歳代. 295. 26.65%. ⑤60歳以上. 172. 15.54%. 1. 0.09%. 無回答 合計. 0.1% 14.9%. 15.5%. ①20歳以下~20歳代 ②30歳代 ③40歳代. 20.2%. 26.6%. ④50歳代 ⑤60歳以上 無回答. 22.6%. 1107. 0.5% (5)あなたは 回答数. 比率. 19.2%. ①常勤職員. 890. 80.40%. ①常勤職員. ②非常勤職員. 212. 19.15%. ②非常勤職員. 5. 0.45%. 無回答 合計. 無回答. 80.4%. 1107. (6)あなたは 回答数. 比率. ①主任. 139. 12.56%. ②リーダー. 136. 12.29%. ③一般職員. 775. 70.01%. 57. 5.15%. 無回答. 5.1% 12.6% ①主任. 12.3%. ②リーダー ③一般職員. 合計. 1107. 無回答. 70.0%.
(10) (7)あなたの資格は(※複数回答可) 回答数 ①介護福祉士. 623. ②社会福祉士. 比率. 24. 1.65% 33.31%. 60. 4.12%. 1. 0.07%. ⑥無資格. 81. 5.56%. ⑦その他. 182. 12.50%. ④看護師・准看護師 ⑤PT・OT・ST. 合計. 200. 600. 800. 1456. (8)あなたは. 3.8% 回答数. 比率. ①認知症介護実践者研修受講済. 517. 46.70%. ②受講していない. 548. 49.50%. 42. 3.79%. 無回答 合計. 400. 42.79%. 485. ③ヘルパー. 0. ①認知症介護実践者研修 受講済. 46.7%. ②受講していない. 49.5%. 1107. 無回答. (9)あなたは、現在の職場に勤務されてどのくらいですか 回答数. 比率. ①1年未満. 115. 10.39%. ②1~5年. 541. 48.87%. ③6~10年. 329. 29.72%. ④11~15年. 85. 7.68%. ⑤16~20年. 27. 2.44%. 2.4%. 0.8%. 7.7%. 10.4%. 0.1% ①1年未満 ②1~5年. ⑥20年以上. 9. 0.81%. 無回答. 1. 0.09%. ③6~10年 ④11~15年. 29.7%. ⑤16~20年. 48.9%. ⑥20年以上 無回答. 合計. 1107. (10)あなたは、現在の職場に勤務される以前に認知症の方の介護の経験がありますか(家族の介護は除きます) 回答数 ①なし ②1年未満. 比率. 573. 51.76%. 73. 6.59%. ③1~5年. 240. 21.68%. ④6~10年. 132. 11.92%. ⑤11~15年. 43. 3.88%. ⑥16~20年. 27. 2.44%. ⑦20年以上 無回答 合計. 17. 1.54%. 2. 0.18%. 3.9%. 2.4%. 1.5%. 0.2% ①なし ②1年未満. 11.9%. ③1~5年 ④6~10年. 51.8%. 21.7%. ⑤11~15年 ⑥16~20年 ⑦20年以上. 6.6%. 無回答. 1107. 図 1. 分析対象者の属性.
(11) ( 2) 分 析 対 象 者 の 属 性 と 「 認 知 症 ケ ア 専 門 職 が 抱 く 感 情 規 則 の 種 類 」 の比較 ①質問項目すべてに○印を記入した回答者 「認知症ケア専門職が抱く感情規則の種類」の質問項目すべてに○印 を 記 入 し た 回 答 者 は 、 1,107 人 中 28 人 ( 2.5% ) で あ っ た 。 ②分析対象者全員の回答集計結果 分析対象者全員と、 「 認 知 症 ケ ア 専 門 職 が 抱 く 感 情 規 則 の 種 類 」の 質 問 項 目 ○ 印 記 入 数 の 割 合 は 以 下 の と お り で あ る ( 図 2 )。. ⑳家族に客観的な… ⑲納得できる方法… ⑱興味を引く知識… ⑰分析しながら… ⑯特別ではなく… ⑮親しみやすい… ⑭ちょっとした気持ちの変化を… ⑬リロケーションダメージを… ⑫BPSDの発生原因を… ⑪自分のケアを振り返り… ⑩ひとりで抱え込まず… ⑨混乱しても… ⑧仕事の最優先は… ⑦自己決定できる… ⑥自分に置き換えて… ⑤急がせたり先回りせず… ④偏見をもたず… ③リラックスできる… ②できないことだけを… ①この人はすごい…. 37.76% 46.34% 15.90% 27.46% 54.56% 67.12% 58.08% 19.87% 37.31% 42.46% 76.33% 49.05% 53.48% 56.46% 47.52% 64.86% 61.16% 69.02% 58.36% 20.23%. 図 2. 分析対象者全員のクロス集計結果. 「認知症ケア専門職が抱く感情規則の種類」として、○印の記入数が最 も多い質問項目は「⑩認知症の方の対応をひとりで抱えこまず、チーム で か か わ る こ と が で き る 」 の 76% で あ り 、 反 対 に 少 な い 質 問 項 目 は「 ⑱ 対 象 の 興 味 を 惹 く 知 識 を 豊 富 に も っ て い る 」 の 16% で あ っ た 。 ② ③ ④ ⑤ ⑦ ⑧ ⑩ ⑭ ⑮ ⑯ の 1 0 項 目 は 、5 0 % 以 上 の 回 答 者 が ○ 印 を 記 入 し ていた。.
(12) ③各属性と「認知症ケア専門職が抱く感情規則の種類」の集計結果 「認知症ケア専門職が抱く感情規則の種類」の質問項目の○印記入数 と各属性の、クロス集計およびノンパラメトリック検定を行った。検定 に は 、統 計 ソ フ ト S P S S 2 0 を 用 い χ 二 乗 検 定 で 自 由 度 1 、有 意 水 準 は 0 . 0 5 とした。その結果は以下のとおりである。 ③-1地方別 地方別で①~⑳全ての回答数に対しχ二乗検定を用いて検定を行った 結果、どの質問項目にも、地方による有意差は認められなかった(p< 0 . 0 5 )。 ③-2設置主体別 設置主体別別で①~⑳全ての回答数に対しχ二乗検定を用いて検定を 行った結果「⑯認知症ケアは特別ではなく、当たり前のかかわりだと考 え て い る 」に お い て 有 意 差 が 認 め ら れ た( p < 0 . 0 5 )。こ の 質 問 項 目 に 対 して、残差分析を行ったところ○印記入数が、社会福祉法人、株式・有 限会社、その他の設置主体に多いと考えられる結果が得られた。 ③-3 男女別 男女別で①~⑳全ての回答数に対しχ二乗検定を用いて検定を行った 結 果「 ② 認 知 症 の 方 の 、で き な い こ と だ け を さ り げ な く 支 援 す る 」 「⑤認 知 症 の 方 の 行 動 を 急 が せ た り 、先 回 り せ ず 待 て る 」 「⑩認知症の方の対応 を ひ と り で 抱 え こ ま ず 、チ ー ム で か か わ る こ と が で き る 」 「⑭認知症の方 の ち ょ っ と し た 気 持 ち の 変 化 を 察 知 し 、直 感 で 気 配 り で き る 」 「⑯認知症 ケ ア は 特 別 で は な く 、当 た り 前 の か か わ り だ と 考 え て い る 」 「⑱対象の興 味を惹く知識を豊富にもっている」の質問項目において有意差が認めら れ た( p < 0 . 0 5 )。そ の 中 で「 ⑱ 対 象 の 興 味 を 惹 く 知 識 を 豊 富 に も っ て い る」のみ、男性が質問項目に○印記入数が多く、他の質問項目は女性が 多かった。 ③-4 年齢別 年齢別で①~⑳全ての回答数に対し、χ二乗検定を用いて検定を行い ( p < 0 . 0 5 )、有 意 差 の み ら れ た 質 問 項 目 に 対 し て 残 差 分 析 を 行 っ た 結 果 「 ① 『 こ の 人 は す ご い 』 と 思 い な が ら か か わ れ る 」 は 、 40 歳 代 「 ⑥ 認 知 症 の 方 の 状 況 を 、自 分 に 置 き か え て 考 え る こ と が で き る 」は 、 20 歳 以 下 ~ 2 0 歳 代 、4 0 歳 代「 ⑩ 認 知 症 の 方 の 対 応 を ひ と り で 抱 え こ ま ず 、チ ー ム.
(13) で か か わ る こ と が で き る 」は 、 40 歳 代 に ○ 印 記 入 数 が 、他 の 年 齢 層 に 比 べ 多 い と 考 え ら れ る 結 果 が 得 ら れ た 。 加 え て 、 以 上 の 項 目 す べ て に 、 50 歳 代 、60 歳 以 上 の ○ 印 記 入 数 が 、他 の 年 齢 層 に 比 べ 多 い と 考 え ら れ る 結 果 も 得 ら れ た 。ま た 、 「 ⑧ 仕 事 の 最 優 先 は 、認 知 症 の 方 と の か か わ り だ と 考 え て い る 」「 ⑨ 認 知 症 の 方 が 混 乱 し て も 、 わ ず ら わ し く 思 わ な い 」「 ⑯ 認 知 症 ケ ア は 特 別 で は な く 、当 た り 前 の か か わ り だ と 考 え て い る 」 「⑳家 族 に 客 観 的 な 助 言 が で き る 」の 項 目 は 、5 0 歳 代 、6 0 歳 以 上 の ○ 印 記 入 数 が、他の年齢層に比べ多いと考えられる結果が得られ「⑫BPSDの発 生 原 因 を 、 疾 患 を 含 め た 多 方 面 か ら 推 測 で き る 」 は 、 30 歳 代 、 40 歳 代 、 6 0 歳 以 上 の ○ 印 記 入 数 が 、他 の 年 齢 層 に 比 べ 多 い と 考 え ら れ る 結 果 が 得 られた。 ③-5 雇用形態別 雇用形態(常勤・非常勤)別で①~⑳全ての回答数に対しχ二乗検定 を用いて検定を行った結果「⑫BPSDの発生原因を、疾患を含めた多 方面から推測できる」 「 ⑰ 認 知 症 状 を 、分 析 し な が ら か か わ る の が 楽 し い 」 「⑳家族に客観的な助言ができる」の質問項目において有意差が認めら れ た ( p < 0 . 0 5 )。 ③-6 役職別 役職(主任・リーダー・一般職員)別で、①~⑳全ての回答数に対し χ二乗検定を用いて検定を行った結果「⑥認知症の方の状況を、自分に 置きかえて考えることができる」 「 ⑧ 仕 事 の 最 優 先 は 、認 知 症 の 方 と の か かわりだと考えている」 「 ⑪ 日 々 の 業 務 に 流 さ れ そ う な と き に 、自 分 の ケ アを振り返り律することができる」 「 ⑫ B P S D の 発 生 原 因 を 、疾 患 を 含 めた多方面から推測できる」 「⑬認知症の方のリロケーションダメージを、 最小限にする工夫ができる」 「⑭認知症の方のちょっとした気持ちの変化 を 察 知 し 、直 感 で 気 配 り で き る 」 「 ⑰ 認 知 症 状 を 、分 析 し な が ら か か わ る の が 楽 し い 」「 ⑱ 対 象 の 興 味 を 惹 く 知 識 を 豊 富 に も っ て い る 」「 ⑳ 家 族 に 客観的な助言ができる」の質問項目において有意差が認められた(p< 0 . 0 5 )。有 意 差 の 認 め ら れ た 質 問 項 目 に 対 し て 残 差 分 析 を 行 っ た 結 果 、す べての項目において、○印記入数が、一般職員に比べ主任・リーダーに 多いと考えられる結果が得られた ③-7 資格別 P T・ O T・ S T の 回 答 者 は 1 名 だ っ た た め 集 計 か ら 除 外 し た 。 資 格 別 で ①.
(14) ~ ⑳ 全 て の 回 答 数 に 対 し 、 χ 二 乗 検 定 を 用 い て 検 定 を 行 い ( p < 0 . 0 5 )、 有意差の認められた質問項目に対して残差分析を行った結果「②認知症 の方の、できないことだけをさりげなく支援する」は、看護「③認知症 の方がリラックスできるようにかかわれる」は、無資格「⑤認知症の方 の行動を急がせたり、先回りせず待てる」は、ヘルパー「⑥認知症の方 の 状 況 を 、自 分 に 置 き か え て 考 え る こ と が で き る 」は 、そ の 他 の 資 格「 ⑦ 認 知 症 の 方 が 自 己 決 定 で き る よ う に 、認 知 症 の 人 本 人 に 確 認 を す る 」は 、 社会福祉士、無資格「⑧仕事の最優先は、認知症の方とのかかわりだと 考 え て い る 」「 ⑨ 認 知 症 の 方 が 混 乱 し て も 、 わ ず ら わ し く 思 わ な い 」 は 、 その他の資格「⑫BPSDの発生原因を、疾患を含めた多方面から推測 できる」社会福祉士、ヘルパー、無資格、その他の資格「⑬認知症の方 のリロケーションダメージを、最小限にする工夫ができる」その他の資 格「⑭認知症の方のちょっとした気持ちの変化を察知し、直感で気配り できる」は、無資格、その他の資格「⑰認知症状を、分析しながらかか わ る の が 楽 し い 」 は 、 社 会 福 祉 士 、 ヘ ル パ ー 、 無 資 格 、「 ⑱ 対 象 の 興 味 を 惹く知識を豊富にもっている」は、介護福祉士、その他の資格「⑲認知 症 の 方 が 、納 得 で き る よ う な 方 法 を 提 供 す る 」は 、ヘ ル パ ー 、無 資 格「 ⑳ 家族に客観的な助言ができる」は、看護、無資格、その他の資格に○印 記入数が、他の職種に比べ多いと考えられる結果が得られた。 ③-8研修受講別 研修受講(認知症介護実践者研修受講・受講していない)別で①~⑳ 全ての回答数に対しχ二乗検定を用いて検定を行った結果「②認知症の 方 の 、で き な い こ と だ け を さ り げ な く 支 援 す る 」 「⑥認知症の方の状況を、 自分に置きかえて考えることができる」 「⑪日々の業務に流されそうなと き に 、 自 分 の ケ ア を 振 り 返 り 律 す る こ と が で き る 」「 ⑫ B P S D の 発 生 原 因 を 、疾 患 を 含 め た 多 方 面 か ら 推 測 で き る 」 「⑬認知症の方のリロケーショ ン ダ メ ー ジ を 、最 小 限 に す る 工 夫 が で き る 」 「⑭認知症の方のちょっとし た 気 持 ち の 変 化 を 察 知 し 、直 感 で 気 配 り で き る 」 「⑱対象の興味を惹く知 識を豊富にもっている」 「 ⑳ 家 族 に 客 観 的 な 助 言 が で き る 」の 質 問 項 目 に お い て 有 意 差 が 認 め ら れ た ( p < 0 . 0 5 )。 ③-9 現在の職場での経験年数別 現在の職場での経験年数別で①~⑳全ての回答数に対し、χ二乗検定 を 用 い て 検 定 を 行 い( p < 0 . 0 5 )、有 意 差 の 認 め ら れ た 質 問 項 目 に 残 差 分 析を行った結果「⑫BPSDの発生原因を、疾患を含めた多方面から推.
(15) 測できる」 「 ⑭ 認 知 症 の 方 の ち ょ っ と し た 気 持 ち の 変 化 を 察 知 し 、直 感 で 気配りできる」 「 ⑳ 家 族 に 客 観 的 な 助 言 が で き る 」は 、経 験 年 数 6 年 以 上 に ○ 印 記 入 数 が 、1 年 未 満 お よ び 1 ~ 5 年 に 比 べ 多 い と 考 え ら れ る 結 果 が 得られた。 ③ - 10 認 知 症 専 門 職 者 と し て の 経 験 年 数 別 認知症専門職者としての経験年数別で①~⑳全ての回答数に対し、χ 二 乗 検 定 を 用 い て 検 定 を 行 い( p < 0 . 0 5 )、有 意 差 の 認 め ら れ た 質 問 項 目 に残差分析を行った結果「③認知症の方がリラックスできるようにかか われる」は、介護経験なし、介護経験 1 年未満「⑳家族に客観的な助言 が で き る 」は 、介 護 経 験 1 ~ 5 年 に ○ 印 記 入 数 が 多 い と 考 え ら れ る 結 果 が 得られ、また、以上の 2 項目に加え「⑫BPSDの発生原因を、疾患を 含めた多方面から推測できる」 「 ⑰ 認 知 症 状 を 、分 析 し な が ら か か わ る の が楽しい」の質問項目も 6 年以上の介護経験者に、○印記入数が多いと 考えられる結果が得られた。 ( 3 )「 認 知 症 の 方 の 感 情 変 化 」 の 回 答 集 計 アンケート項目 3 の記述による回答を、内容が同じもしくは類似した 回答を一つのカテゴリーにコーディングし集計したところ「安心して過 ごしてほしい」 「笑って過ごしてほしい」 「穏やかに過ごしてほしい」 「楽 し く 過 ご し て ほ し い 」「 落 ち つ い て 過 ご し て ほ し い 」「 信 頼 し て ほ し い 」 「 自 分 ら し く 過 ご し て ほ し い 」「 お 互 い に 理 解 し て 過 ご し て ほ し い 」「 そ の 他 」 の カ テ ゴ リ ー に 分 類 さ れ 以 下 の 結 果 が 得 ら れ た ( 表 3 、 図 3 )。 表 3. 「認知症の方の感情変化」の回答集計表.
(16) 図 3. 「認知症の方の感情変化」の回答グラフ. ( 4) 自 由 記 述 の 集 計 結 果 ア ン ケ ー ト 項 目 4 の 記 述 に よ る 回 答 か ら 、 無 回 答 ・ 無 効 回 答 526 人 を 除 き 、 581 人 の 記 述 を 対 象 に 、 文 中 か ら 一 つ の 意 味 を も つ テ ク ス ト に 分 類 し た と こ ろ 、 753 の テ ク ス ト と な っ た 。 そ の 中 で 、 同 じ も し く は 類 似 し た テ ク ス ト を 、一 つ の カ テ ゴ リ ー に コ ー デ ィ ン グ し 、集 計 し た と こ ろ 、 「 ス ト レ ス ・ 苦 痛 で あ る 」「 チ ー ム ケ ア ・ 上 司 の 理 解 が 必 要 」「 給 料 ・ 仕 事と割り切る」 「 自 然 で い い( 感 情 労 働 は 不 必 要 )」 「ゆとりがほしい」 「自 分 の 感 情 が 相 手 に 反 映 す る 」「 専 門 職 者 も 人 間 だ 」「 難 し い ・ 大 変 ・ で き な い 」「 自 己 覚 知 が 必 要 」「 自 分 の 成 長 ・ 勉 強 に な る 」「( 仕 事 以 外 の ) ス トレス解消が必要」 「無理をしない」 「 楽 し い・や り が い が あ る 」 「経験が 必 要 」 の カ テ ゴ リ ー に 分 類 さ れ 以 下 の 結 果 が 得 ら れ た ( 表 4 、 図 4 )。 表 4. 自由記述の集計表 回答数. 比率. ストレス・苦痛である. 179. 23.77%. チームケア・上司の理解が必要. 115. 15.27%. 給料・仕事と割り切る. 57. 7.57%. 自然でいい(感情労働は不必要). 51. 6.77%. ゆとりがほしい. 23. 3.05%. 自分の感情が相手に反映する. 27. 3.59%. 専門職者も人間だ. 47. 6.24%. 109 11. 14.48% 1.46%. 自分の成長・勉強になる. 26. 3.45%. (仕事以外の)ストレス解消が必要. 55. 7.30%. 無理をしない. 21. 2.79%. 楽しい・やりがいがある. 27. 3.59%. 5. 0.66%. 難しい・大変・できない 自己覚知が必要. 経験が必要 合計. 753.
(17) 経験が必要 楽しい・やりがいがある 無理をしない. 0.66% 3.59% 2.79% 7.30%. (仕事以外の)ストレス解消が必要 自分の成長・勉強になる 自己覚知が必要. 3.45% 1.46% 14.48%. 難しい・大変・できない. 6.24%. 専門職者も人間だ 自分の感情が相手に反映する ゆとりがほしい. 3.59% 3.05% 6.77% 7.57%. 自然でいい(感情労働は不必要) 給料・仕事と割り切る. 15.27%. チームケア・上司の理解が必要. 23.77%. ストレス・苦痛である. 0.00%. 5.00%. 10.00%. 図 4. 15.00%. 20.00%. 25.00%. 自由記述の集計グラフ. Ⅴ.考察 ( 1 )「 認 知 症 ケ ア 専 門 職 が 抱 く 感 情 規 則 の 種 類 」 に つ い て ①質問項目すべてに○印を記入した回答者について 質 問 項 目 す べ て に ○ 印 を 記 入 し た 回 答 者 は 、1 , 1 0 7 人 中 2 8 人 名( 2 . 5 % ) と 少 数 で あ り 、属 性 に 特 色 が あ る と は 考 え ら れ な か っ た 。こ の こ と か ら 、 今 回 質 問 し た 、感 情 規 則 と 考 え ら れ る 2 0 項 目 す べ て を 、認 知 症 ケ ア の 専 門職者の感情規則と捉えている研究対象者はごく少数であり、多数の認 知症ケアの専門職者の抱く感情規則は、様々であると考えられた。感情 労 働 の 研 究 対 象 と し て 、よ く 看 護 師 が 例 に あ げ ら れ る が「 優 し い 」や「 冷 静 」、 「 厳 し い 」や「 真 面 目 」な ど 、様 々 な 種 類 の 感 情 規 則 を 個 々 に も ち 、 どれも看護師を象徴していると思われる。従って、認知症ケアの専門職 者の感情規則も、多くは個々それぞれのケア観によって一定していない ということがわかった。 ②分析対象者全員の回答の傾向について 分析対象者全員の、質問項目毎にみた○印記入数の割合には、大きな ば ら つ き が あ っ た 。 そ の た め 、 50% 以 上 の 分 析 対 象 者 が ○ 印 を 記 入 し た 質 問 項 目 は 表 5 、3 0 % ~ 4 9 % の 質 問 項 目 は 表 6 、2 9 % 以 下 の 質 問 項 目 は 表 7 に分類し考えてみた。.
(18) 表 5. 50% 以 上 の 分 析 対 象 者 が ○ 印 を 記 入 し た 質 問 項 目. ・認知症の方の、できないことだけをさりげなく支援する ・認知症の方がリラックスできるようにかかわれる ・認知症状に偏見をもたず、いつも平等である ・認知症の方の行動を急がせたり、先回りせず待てる ・認知症の方が自己決定できるように、認知症の人本人に確認をする ・仕事の最優先は、認知症の方とのかかわりだと考えている(災害など の例外を除く) ・認知症の方の対応をひとりで抱えこまず、チームでかかわることがで きる ・認知症の方のちょっとした気持ちの変化を察知し、直感で気配りで きる ・親しみやすい雰囲気がある ・認知症ケアは特別ではなく、当たり前のかかわりだと考えている 表 6. 30% ~ 49 以 上 の 分 析 対 象 者 が ○ 印 を 記 入 し た 質 問 項 目. ・認知症の方の状況を、自分に置きかえて考えることができる ・認知症の方が混乱しても、わずらわしく思わない ・日々の業務に流されそうなときに、自分のケアを振り返り律すること ができる ・認知症の方が、納得できるような方法を提供する ・家族に客観的な助言ができる 表 7. 29% 以 下 の 分 析 対 象 者 が ○ 印 を 記 入 し た 質 問 項 目. ・「 こ の 人 は す ご い 」 と 思 い な が ら か か わ れ る ・ BPSD の 発 生 原 因 を 、 疾 患 を 含 め た 多 方 面 か ら 推 測 で き る ・認知症の方のリロケーションダメージを、最小限にする工夫ができる ・認知症状を、分析しながらかかわるのが楽しい ・対象の興味を惹く知識を豊富にもっている 表 5 の項目は、認知症の方とのかかわりの場面で、認知症ケア専門職者 自身の主観で評価している項目だと考えられる。つまり、その時に、対 象となる認知症の方にかかわった認知症ケア専門職者の判断や考え方で、 ケアの方法が決定され、統一した方法が得られにくいのではないかと推 測する。対して表 6 の項目は、認知症の方の評価が得られやすく、かか.
(19) わ り の ア セ ス メ ン ト に 苦 慮 し た 場 合 の 、根 拠 と し て 活 用 で き る 。例 え ば 、 BPSD が 軽 減 し な い 認 知 症 の 方 の ア セ ス メ ン ト 時 に「 自 分 が さ れ て も 、あ のかかわりは不快だ」とか「忙しくて、頻繁に同じことを質問され、内 心はイライラしていた」などと評価がしやすい。また、認知症ケア専門 職 者 自 身 の か か わ り の 場 面 を 、カ ン フ ァ レ ン ス な ど で 他 の 職 員 が 共 有 し 、 個別的で統一した方法を得られるのではないかと考えられる。表 7 は、 認 知 症 の 方 の か か わ り の 工 夫 や 、BPSD の 発 生 原 因 の 推 測 、分 析 な ど を 行 い、認知症の方の興味を惹く知識を得るなどの項目である。これは、多 くの情報収集や、多職種の広い視点から、統一した方法が必要な項目だ と考えられ、まず、カンファレンスなどで、様々な、かかわりための方 法に対する意見を統一し、その結果の客観的評価を行が行える。また、 ひとりの認知症ケア専門職者の考え方ではなく、広い視点から、認知症 の方の「その人なり」の偉大さに触れ、見方・考え方が変わったり、自 身の対象の捉え方を超えた知識を得られるなど、認知症ケア専門職者自 身の人間の豊かさにつながっている項目だと考えられる。 この 3 つの表を比較すると、認知症ケア専門職者は、客観的評価が可 能 な 、 表 6、 表 7 の 項 目 よ り 、 表 5 の よ う に 、 認 知 症 ケ ア 専 門 職 者 の 主 観が評価材料となり、統一したケアの方法が得られにくい項目を、多く の認知症ケア専門職者が、感情規則にしていることがわかった。このこ とが、標準的な認知症ケアの具体的手段を見いだせない、原因のひとつ になっているのかもしれない。今後も、ひとつひとつの事例を丁寧に分 析し、主観的なかかわりから、普遍性のあるケアに転換していく必要が あると考えられる。 ③質問項目○印記入数と各属性の関係について 各々の属性の中で、地域別以外の全ての属性において質問項目○印記 入数に有意差が認められた。その中で、○記入数が 5 以上の属性を表 8 に示した。 表8. 5 つ以上有意差があった質問項目と属性 ( 50% 以 上 の 分 析 対 象 者 が ○ 印 を 記 入 し た 質 問 項 目 塗 り つ ぶ し ).
(20) 表 8 の中で、最も多く質問項目に有意差を認めた属性は「主任・リー ダー」と「その他の資格」の 9 項目で「その他の資格」については、お そらく介護支援専門員であると考えられる。次に、認知症介護実践者研 修 修 了 者 の 8 項 目 、 そ し て 「 無 資 格 」「 4 0 歳 代 以 上 」 の 7 項 目 と 続 い て いた。最も多く質問項目に有意差を認めた「主任・リーダー」は、施設 長などから、現場の管理的立場を担う人材として選ばれた職員であるた め、現場経験も豊富であり、ケアのセンスも備えているだろうと想像で きる。その上、研修などの参加をはじめとする、自己研鑚の場も多いの ではないかと考えられ、自己の認知症ケア観を振り返り、感情規則の確 立や確認を行える機会が多いのではないかと思われる。また、今回のア ンケートでは明らかにしていないが、 「 そ の 他 の 資 格 」が 介 護 支 援 専 門 員 であるならば、 「 複 数 の 資 格 を 有 し て い る 専 門 職 者 は 、多 く の 認 知 症 ケ ア の感情規則をもつ」といえる。そして、次の認知症介護実践者研修修了 者 も 、多 く の 質 問 項 目 で 有 意 差 を 認 め て お り 、 「認知症介護実践者研修修 了者は、多くの認知症ケアの感情規則をもつ」ともいうことができる。 この 3 属性は、全てを満たしている場合も多いと考えられる。つまり、 主任・リーダーであり、介護支援専門員の資格をもち、認知症介護実践 者研修を修了している専門職者でもあるだろう。したがって、単独の属 性であっても、3 属性を満たしていても、認知症ケアの感情規則を多く もっていると考えられる。ただ、この 3 属性は、表 8 の塗りつぶしの部 分に、有意差が少ない。そのため、客観的評価がしやすい項目に、感情 規 則 を も ち や す い 傾 向 に あ る 可 能 性 も 考 え ら れ 、認 知 症 の 方 の 人 間 性 に 、 視点を置きにくくなることが懸念される。逆に「無資格」の属性も 7 項 目と多くの質問項目に有意差を認めた。 「複数の資格を有している専門職 者 は 、多 く の 認 知 症 ケ ア の 感 情 規 則 を も つ 」と い う 考 察 と 反 対 に 、 「 福 祉・ 医療の有資格者でなくても、多くの認知症ケアの感情規則をもつ」とい うことが明らかとなった。これは、専門知識を前提として対象とかかわ るよりも、無資格であるという強みで、有資格者以前に、認知症の方と 人対人の関係を築けるのかもしれない。認知症ケア専門職者自身の成育 歴や、社会性、性格などによっても、感情規則が築かれていくのではな い か と 考 え る 。 そ し て 「 4 0 歳 以 上 」 の 属 性 も ま た 、「 無 資 格 」 と 同 様 に 7 項目の質問項目に有意差を認めた。このことから「人生経験を積みある 程度年齢を重ねた人が、認知症ケアの感情規則を多くもつ」ということ も考えられた。.
(21) ( 2 )「 認 知 症 の 方 の 感 情 変 化 」 に つ い て T o m K i t w o o d 7 )の 提 唱 し た 、認 知 症 の 人 が も つ 中 心 と な る ニ ー ズ は「 愛 」 で あ り 、そ こ に 重 な り 合 う 5 つ の 大 き な ニ ー ズ は 、な ぐ さ め( く つ ろ ぎ )、 結びつき、共にいること、たずさわること、自分であること(同一性) で あ り 、 今 回 の 調 査 結 果 の 記 述 と の 乖 離 は 少 な い と 考 え ら れ る ( 表 9 )。 しかし、 「 役 割 を も っ て 社 会 に た ず さ わ っ て い る 」と い う「 た ず さ わ る こ と」についての感情変化は少ないと考えられる。グループホームは地域 密着サービスであるが、ホーム内でケアが完結することが多く、ホーム 内での入居者の役割はあるが、地域での役割などがなかなか確立されて いないと考えられる。また、入居者の高齢化、身体機能の変化により、 対象の役割がみつけにくく、安楽な生活を送ることにウエイトが置かれ やすくなっているのかもしれない。 表 9. 本 研 究 「 認 知 症 の 方 の 感 情 変 化 」 結 果 と Person centered care の 考 え 方 の 比 較. 本研究の結果 安心. 笑って. 穏やかに. Person centered care の 考 え 方 落ちつ. なぐさめ(くつろぎ). いて 自分らしく. 自分であること(同一性). 信頼. 結びつき. お互い理解して. たずさわること. 信頼. 共にいること. お互い理解して. ( 3 )「 自 分 の 感 情 を コ ン ト ロ ー ル し て グ ル ー プ ホ ー ム で 働 く こ と ( 自 由 記 述 )」 に つ い て 「 ス ト レ ス ・ 苦 痛 で あ る 」「 難 し い ・ 大 変 ・ で き な い 」 と い う カ テ ゴ リ ーが多くの割合を示し、感情労働は、認知症ケア専門職者に、どちらか というと「負」のイメージをもたれていると考えられる。また、感情労 働 に よ っ て 発 生 し た 苦 痛 を「 給 料 ・ 仕 事 と 割 り 切 る 」 「仕事以外のストレ ス解消が必要」 「 無 理 を し な い 」と い っ た 方 法 で 軽 減 し て い る こ と が わ か った。このことから、ストレスフルな仕事ではあるが「仕事中はなんと か頑張って感情コントロールし、プライベートでは仕事のことを考えな い 」と い っ た 認 知 症 専 門 職 者 が 多 い よ う に 感 じ ら れ る 。 「ゆとりがほしい」 「専門職者も人間だ」といったバーンアウト寸前のカテゴリーもあり、 感情労働における認知症ケア専門職者に対する何らかの支援が、早急に 必要であろう。そのような中「チームケア・上司の理解が必要」とする.
(22) カテゴリーが占める割合が多く、非常に過酷な感情労働を行っている認 知症ケア専門職者の尽力に関して、チーム員や上司の評価がないとやっ ていられないという気持ちがあると考えられる。入浴介助が早いや、食 事介助が上手いなど目に見えるかかわりは、よい評価を得やすいが、感 情労働のように目にみえにくいかかわりは評価が低い。そういった、金 銭面以外の職場環境や、特に管理的立場の職員の理解を、認知症ケア専 門職者は求めているといえる。 六 車 8 ) は 、老 人 ホ ー ム で 介 護 職 員 と し て 勤 務 し な が ら 、利 用 者 の イ ン タビューを行い、昔の民族事象をまとめている民族研究者だが、現場で の入居者とのかかわりが、驚きと、発見と、ワクワクした気持ちである と述べている。管理的立場の職員は、常に、認知症ケア専門職者の気持 ち を こ の よ う に 整 え る た め に 工 夫 を す べ き だ と 考 え る 。ま た 、武 井 9 ) は 『エモーショナルリテラシー』を育成することが必要であると述べてい る。 『 エ モ ー シ ョ ナ ル リ テ ラ シ ー 』と は『 感 情 に 振 り 回 さ れ る の で は な く 、 感 情 を 使 い こ な す 能 力 』と 定 義 さ れ て お り 、 『エモーショナルリテラシー』 を育成するには、ネガティブなイメージを解毒することが必要であり、 状況を解ってくれる人たちと共感しあいながら話をすることが、バーン アウトを防ぎ、エモーショナルリテラシーを育てるのだと言う。感情労 働 は 、過 酷 で あ る と い う カ テ ゴ リ ー の 割 合 が 多 い が 、 「 自 分 の 成 長・勉 強 に な る 」「 楽 し い ・ や り が い が あ る 」 と い う 前 向 き な カ テ ゴ リ ー も あ り 、 職場環境を整えながら、状況を話し合え、解ってくれるスタッフと共に 感情労働を行うことで、認知症ケアの充実につながるのではないかと考 える。 Ⅵ.. 結論・まとめ. 認知症ケア専門職者が、どのような感情規則を抱く傾向にあるのかに ついて、アンケートを用いてデータ収集を行い、結果を分析し考察を行 った結論を以下にまとめる。 ①認知症ケア専門職者の感情規則の多くは、それぞれの認知症ケア観 によって一定していない。 ②多くの認知症ケア専門職者は、ケアの評価が個人の主観に委ねられ るものを感情規則にしており、標準的な認知症ケアの具体的手段を見い だせない原因のひとつになっていると考えられ、今後も、ひとつひとつ のかかわりの事例を丁寧に分析し、普遍性のあるケアに転換する必要が 示唆された。.
(23) ③ 「 主 任 ・ リ ー ダ ー 」「 そ の 他 の 資 格 ( お そ ら く 介 護 支 援 専 門 員 )」「 認 知症介護実践者研修修了者」の認知症ケア専門職者は、認知症ケアの感 情規則を多くもっているが、客観的評価ができやすいものに感情規則を もつ傾向にある。 ④ ③ に つ い で 、資 格 を 前 提 と し な い か か わ り を す る「 無 資 格 」の 人 や 、 あ る 程 度 年 齢 を 重 ね た 「 40 歳 以 上 」 の 人 も 感 情 規 則 を 多 く も つ 。 ⑤認知症ケア専門職者が感情労働を行うことで、認知症の方にどのよ う な 感 情 変 化 を 求 め る か に つ い て は 、 Person centered care の 考 え 方 と 乖離は少なかったが、 「 役 割 を も っ て 社 会 に た ず さ わ っ て い る 」と い う「 た ずさわること」についての感情変化を求める認知症ケア専門職者は少な い。 ⑥感情労働については、どちらかというと「負」のイメージをもたれ ており、金銭面以外の職場環境や、特に管理的立場の職員の理解を、認 知症ケア専門職者は求めている。職場環境を整えながら、状況を話し合 え、解ってくれるスタッフと共に感情労働を行うことで、認知症ケアの 充実につながるのではないか。 Ⅶ.. 今後の研究課題. 本調査研究のアンケートの質問項目の中で「認知症状を、分析しなが らかかわるのが楽しい」など「分析」か「楽しい」のどちらに重きをお いた質問なのか判断に困るものがあり、今後、できるだけ紙面上の説明 で、多くの研究協力者の理解がぶれないような質問項目を作成できるよ うにする必要がある。 また、今回は、グループホームに勤務する認知症ケア専門職者を研究 対象にアンケート調査を行った。そのためか「認知症の方の対応をひと りで抱えこまず、チームでかかわることができる」という項目が最も多 い感情規則であるという結果が得られた。しかし、ひとりでケアを任さ れる訪問系の認知症ケア専門職者であれば、抱く感情規則も違うもので あると考えられ、今後は、サービス提供事業所別に同様の調査が必要だ と思われる。 そして、客観的評価の難しい感情規則をもちながら、認知症の方とか かわりいかに適切に認知症の方の感情が変化するのかという質的な研究 を行い、認知症ケアの標準化につなげなければならない。 さらに、評価されにくい感情労働を、ポジティブに楽しく行えるよう な、職場環境作りの具体化など多くの取り組むべき課題が残された。.
(24) 参考・引用文献 1 ) ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 「( 認 知 症 を 有 す る 人 へ の 適 切 な 支 援 に 資 す る 認 知 症 ケアモデルの研究事業)認知症サービス提供の現場からみたケアモデル研究 会 報 告 書 」 2010 年 、 39 頁 。. 2) Hochschild, A.「 The Managed Heart-Commercialization of Human Feeling-」 1983 年 ( 石 川 准 ・ 室 伏 亜 紀 訳 『 管 理 さ れ る 心 -感 情 が 商 品 に な る と き - 』 世 界 思 想 社 、 2 0 0 0 年 。) 3 )榊 原 良 太「 感 情 労 働 研 究 の 概 念 と 感 情 労 働 法 力 の 概 念 規 定 の 見 直 し - 概念規定に起因する問題点の私的と新たな視点の提示―」 『東京大学大 学 院 教 育 学 研 究 科 紀 要 ( 5 1 )』 2 0 1 1 年 、 1 7 5 - 1 8 2 頁 。 4) 前 掲 3) 同 頁 。 5 )窪 内 敏 子「 認 知 症 ケ ア 専 門 職 者 の 感 情 労 働 に 関 す る 研 究 ― 認 知 症 ケ ア 専 門 職 者 が 抱 く 感 情 規 則 の 種 類 ― 」『 日 本 認 知 症 ケ ア 学 会 誌 第 1 5 回 日 本 認 知 症 ケ ア 学 会 大 会 抄 録 集 』 2014 年 、 219 頁 。 6 )特 定 非 営 利 活 動 法 人 全 国 認 知 症 グ ル ー プ ホ ー ム 協 会「 認 知 症 グ ル ー プ ホ ー ム の 実 態 調 査 事 業 報 告 書 」 2009 年 、 3 頁 、 71 頁 。 7) Tom Kitwood「 DEMENTIA RECON SIDERED the person comes first 」 1997 年(高橋誠一訳『認知症のパーソンセンタードケア. 新しいケアの文. 化 へ 』 筒 井 書 房 、 2 0 0 5 年 、 1 4 1 頁 。) 8) 六 車 由 美 『 驚 き の 介 護 民 俗 学 』 医 学 書 院 、 2012 年 9 )武 井 麻 子『 ひ と 相 手 の 仕 事 は な ぜ 疲 れ る の か ― 感 情 労 働 の 時 代 』大 和 書 房 、 2006 年 、 179-181 頁 。. ※ な お 、 本 調 査 研 究 は 、公 益 財 団 助 成 勇 美 記 念 財 団 2 0 1 3 年( 後 期 )一 般公募「在宅医療研究への助成」によって実施したものである。.
(25) 感. 想. 大 学 と い う 研 究 機 関 に 在 籍 し て 、ま だ 2 年 と い う 未 熟 な 研 究 者 で あ り 、 博士課程後期の学生でもある私は、論文作成と研究に追われるような毎 日でした。 ( 今 も ) 特 に 、博 士 課 程 で は 、 全 国 規 模 の 1 , 0 0 0 人 を 超 え る ア ンケート調査を行うことになり、研究費の捻出に苦慮していました。そ こで、貴財団が助成してくださることになり本当に感謝しています。助 成がなければ、本研究の結果が出せていたかどうか自信がありません。 ありがとうございました。 勇美財団の助成のよいところは、前期・後期があるところで、年 1 回 の チ ャ ン ス や 、も う 助 成 を し て い た だ け な く な る と い っ た 状 況 の 多 い 中 、 2 回も応募のチャンスがあるのは本当に助かります。そして、お願いと しては、私のように未熟な研究者であっても、できる限り門戸の広い助 成をお願いしたいと思います。ベテランの大学の先生たちは、うまく助 成金を調達されますが、初心者はコツもわからず、ただ無我夢中で応募 し て い ま す 。私 も 、貴 財 団 に 初 め て 助 成 金 の 応 募 を し 、選 ん で い た だ け 、 感動いたしました。今回、助成していただいた研究結果から、具体的な 結論を得ることができ、それを踏まえより深い研究につなげていける確 信がもてました。世に眠っている多くの研究者たちの、多くの知見獲得 のために、今後も助けていただけることを願っています。 今後、我が国は「地域包括システム」の下、病院の在院日数が益々減 ってくることでしょう。反対に、在宅でいかに療養するかという在宅ケ アの充実がもっと叫ばれてくるはずです。また、予防や疾患の早期発見 システムなども脚光をあびてきます。経験的に培われたケアを、客観的 に分析しながら、在宅ケアの質の高い標準化を目指していきたいと思っ ています。 また、応募できる年数になりましたら、新しい研究のために助成をお 願いすることかと思います。その時は、どうかよろしくお願いいたしま す。 2015 年 2 月 24 日 窪内敏子.
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