新入生の大学以前の情報教育に関する調査と新一般情報教育
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(2) らに、教科内容は『情報A』、『情報B』、『情報C』のいずれかを選択することになっている。この ようにばらつきの多い教育を受けた高校生が、来年度から入学してくることになる。また、中学 校ではすでに 1992 年から『技術家庭科』で選択として情報教育が導入され、さらに 2002 年度よ り技術家庭科で『情報基礎』が必須となっている。このような学校での授業に加えて、家庭での パソコンやインターネットの普及も急速に増えている。これらのことから、入学してくる学生は 年々コンピュータとの関わりが増えてきていると考えられる。しかし一方では、パソコンは使っ ているものの基礎的な概念の理解が乏しかったり、正しくタイピングが出来なかったりする学生 も多い。これらのことから、3 年前より経済学部入学生全員にアンケート調査を行うことにした。 これらの調査結果を基に、情報入門教育の見直しを毎年行っている。本稿では、3 年間の調査結 果および毎年改定を行っているコンピュータ入門の授業内容と問題点について述べる。. 2. 調査の目的 アンケート内容は、1)大学入学以前にどんな情報基礎教育を受けたか、2)プログラミング教 育を受けたか、3)現在どの程度コンピュータが使えるか、4)タイピングがどの程度できるか、5) 今後コンピュータについてどのようなことを勉強したいか、6)自宅のパソコンの状況、7)パソ コンのタイプ、8)パソコンの利用経験、9)パソコンの利用頻度、10)パソコンの利用目的、11) インターネットの接続形態、12)パソコン購入予定、13)携帯電話の利用状況、である。経年変 化をみるため 2003 年度から調査内容は変えていないが、2003 年度に作成した内容で不要になっ た項目や、新しく追加すべき項目もでてきている。 これらのアンケートを行った目的は、ここ数年で学生のコンピュータ利用環境が急速に変化し ており、中学校の家庭科でも「情報基礎」が導入されているので、学生が大学入学以前にどのよ うなことを学習済みで、どのようなスキルを持っているかを知るためである。また、携帯電話の 普及に伴って、パソコンの利用から携帯電話の利用にどのように移行しているかを調査するため である。これらの調査結果から、コンピュータ入門でどのような点を補強しなければならないか が分かる。. 3. 調査結果 2003 年度新入生 776 名と 2004 年度新入生 817 名、および 2005 年度新入生 360 名に対して、入 学式直後のクラスガイダンスでアンケート調査を行った。2003 年度と 2004 年度は入学式直後の クラスガイダンスでアンケート調査を行っているため、ほぼ全員から回答を得ることができた。 しかし 2005 年度に関しては、入学式直後のクラスガイダンスでアンケートを配布したものの、時 間の関係で回収は各学生が教務課の窓口に持参することになったため、新入生 867 名中回収率は 41.5%と半数以下となった。3 年目は全数調査ではないので、比較が正確ではなくなっている。 大学でコンピュータ入門の教育を考える場合、受け入れた学生が大学以前にどのようなことを 学んできているかが重要となる。学んできた内容は、各大学によって差異があるのかも知れない。 最初に、大学以前の学習経験の結果を表 1 に示す。. −50−.
(3) 表1. 大学以前の学習経験. (複数回答あり、2003 年度回答数 776 人、2004 年度回答数 817 人、2005 年度回答数 360 人に対する比率) していな. インター. ワープ. 年度. 表計算 い. ネット. 画像. HP作. データベ. プログラ. 作成. 成. ース. ミング. メール. 作曲. ロ. 2003 年. 48.3. 31.7. 30.3. 21.6. 12.4. 9.9. 6.8. 4.6. 4.5. 1.7. 2004 年. 41.9. 40.6. 28.5. 23.6. 20.9. 13.3. 11.5. 5.4. 4.5. 2.4. 2005 年. 40.6. 46.9. 28.1. 23.6. 17.8. 11.9. 13.1. 5.3. 5. 1.7. 表 1 からも分かるように、大学以前にコンピュータの何らかのことを学習していない人の割合 は 2003 年度から 2004 年度にかけて減少し、さらに 2005 年度も減少している。学習経験で特に 目立つのは、インターネットに関する学習経験が年々増加していることである。これは、教科の 中で調べ学習としてインターネットを利用していることが多いと思われる。ホームページ作成を 習った学生も増えてきており、その関連として画像作成も増えている。しかし全体の割合として は、それ程多くない。一方、ワープロや表計算やデータベースの学習は毎年それ程変化がなく、 ワープロは全体の 3 割弱、表計算は 2 割強、データベースは 5%程度である。プログラミングに 関しては 2003 年度も 2004 年度も 4.5%と同じ状況であり、2005 年度は微増している。またメー ルに関しては、パソコンメールを利用することが少なくなったためか 2005 年度は減少している。 次に、どのようなプログラミング言語の学習経験があるかについて、表 2 に示す。 表2 年度. していない. BASIC. プログラミング言語学習経験. COBOL. VB. アセンブラ. FORTRAN. CASL. C. Java. Perl. 2003 年. 86.6. 5.9. 3.4. 1.7. 1.2. 0.6. 0.6. 0.5. 0.5. 0.1. 2004 年. 86.9. 4.8. 3.5. 1.8. 1.2. 1.5. 1.1. 1.0. 0.7. 0.4. 2005 年. 89.7. 3.3. 6.7. 2.8. 0.6. 0.8. 0.6. 0.3. 0.8. 0.3. 表 2 からも分かるように、プログラミング言語としては、BASIC と COBOL が比較的多い。 2005 年度は BASIC が減った分、VB が増えている。他の言語については1%程度で、プログラ ミング言語を教える先生もソフトウェアもあまり整備されていない状況が分かる。 次に、学校での学習経験以外に学校と家庭での経験をふまえて、新入生が現在どのようなこと が出来るかを調査した。現在できることを、表 3 に示す。 表3 インター. メー. ワープ. 年賀状作. 現在できること できな. デジカメ取. 画像作. 年度. 動画取り HP 作成. ネット. ル. ロ. 成. い. り込み. 成. 作曲 込み. 2003 年. 66.2. 35.7. 31.7. 23.2. 12.9. 10.3. 7.1. 6.1. 5.4. 1.7. 2004 年. 78.9. 43.9. 33.3. 26.3. 12.9. 14.0. 10.4. 6.4. 11.5. 1.8. 2005 年. 75.8. 44.4. 40.4. 27.5. 13.6. 18.1. 11.4. 6.4. 10.3. 1.1. −51−.
(4) 表 1 と表 3 を比較すると、インターネットは学校で学習していないが使える学生が多いことが 分かる。また、年賀状作成をコンピュータで行っている学生も 3 割近くいる。さらに、デジタル カメラの取り込みを行ったことのある学生は、年々増えており、2 割強の学生は経験がある。学 校でコンピュータについて学習していないと答えた学生は 40%以上いるのに、コンピュータを使 えないと答えている学生は僅か 13%であることは注目すべき点である。 一方プログラミングに関しては、現在プログラム作成できる言語は表 2 と表 4 を比較して分か るように、学校で学習した割合よりも減少している。これは、プログラミングを学習してもその 後にプログラミングの機会がないことを示している。しかも、年々プログラミングができないと 答えている学生が増えている。 表4 年度. できない. 現在プログラム作成できる言語. Basic. COBOL. FORTRAN. VB. Java. C. Perl. CASL. アセンブラ. 2003 年. 91.1. 2.3. 1.9. 1.4. 0.6. 0.6. 0.3. 0.3. 0.1. 0.1. 2004 年. 91.3. 1.6. 2.3. 2.8. 1.1. 0.4. 0.6. 0.2. 1.2. 0.2. 2005 年. 93.6. 0.8. 3.3. 2.2. 1.7. 0.6. 0.6. 0.3. 0.6. 0. 次に表 5 に、タイピング速度に関する結果を示す。 表5 年度. タイピング速度. できない. ゆっくりできる. 見ないでできる. 速い. とても速い. 2003 年. 31.1. 57.3. 7.3. 3.6. 0.4. 2004 年. 28.4. 56.3. 10.0. 3.4. 1.0. 2005 年. 23.1. 58.6. 8.6. 6.1. 1.1. 表 5 から、タイピングはできない学生は年々減少しているが、8 割以上の学生は実用になる程 のスピードでタイピングは出来ないことが分かる。 今後学習したい内容については、表 6 に示す。 表6. 今後学習したいこと. インターネ 年度. HP. プログラミン DB. 画像作. 表計算. ット. 音声作 メール. グ. ワープロ. 3D. 成. 成. 2003 年. 47.0. 42.5. 42.4. 41.0. 35.6. 33.2. 28.9. 28.6. 20.9. 18.3. 2004 年. 41.7. 32.4. 45.7. 42.0. 42.2. 26.9. 24.5. 28.3. 23.1. 17.5. 2005 年. 41.7. 28.3. 47.8. 47.5. 49.4. 30.3. 19.7. 36.1. 21.7. 18.9. 表 6 から分かるように、大学で学びたい内容として、ホームページ作成やインターネット利用、 メールは減少傾向にあるが、プログラミングやデータベースや表計算は増加傾向にあることが分 −52−.
(5) かる。また、ワープロも習ってはいるが、もっといろいろな機能を利用したいと考えている学生 が増えている。このように、ただアプリケーションソフトを簡単に利用するだけの授業では満足 できないことが分かる。 次に自宅でのコンピュータ保有について、表 7 に示す。 表7 年度. 自宅でのパソコン保有台数. 0台. 1台. 2台. 3台. 4台以上. 2003 年. 17.5. 63.8. 13.0. 3.0. 1.4. 2004 年. 12.2. 64.1. 16.6. 4.4. 1.8. 2005 年. 14.2. 61.9. 17.2. 3.3. 3.3. 表 4 からも分かるように、コンピュータを保有していない家庭は 15%ほどで、2台所有してい る家庭は増えており、4 台以上所有している家庭もある。この傾向は、ちょうどテレビの保有台 数の傾向に似ている。 このように自宅で所有しているパソコンのネットワーク接続状況を、表 8 に示す。 表8. 自宅でのネットワーク接続状況. 年度. なし. モデム、ISDN. ADSL. ケーブルTV. 携帯. 2003 年. 37.1. 22.6. 25.9. 9.0. 5.4. 2004 年. 27.3. 22.5. 35.7. 9.2. 5.3. 2005 年. 10.8. 23.3. 38.6. 8.9. 5. 表 8 からも分かるように、ネットワーク接続をしていない家庭は年々減少し 2005 年度で 1 割 強となっており、モデムや ISDN よりも ADSL などの高速回線でのインターネット接続が増えて いる。 以上の結果を踏まえて、コンピュータ入門のあり方について次に述べる。. 4. コンピュータ入門 本学の経済学部では情報教育委員会があり、毎年次年度のコンピュータ入門のシラバスの検討 および情報関連科目の検討を行なっている。コンピュータ入門は選択科目ではあるが、経済学科 9 クラスおよび経営学科 9 クラスに分けて 1 クラス約 50 人のクラス指定科目になっているため、 表9のようにほぼ全員が履修している。1 年生はクラス指定になっているが、単位を取得できな かった学生はいずれかのクラスに入ることになっている。. −53−.
(6) 表9. 2005 年度コンピュータ入門の受講生数. (クラス指定になっているが、科目履修の関係で他のクラスに移動している学生もいる。). 経済1. クラス. クラス受. 曜日. 受講者. 経営1. クラス. クラス受. 曜日時. 受講者. 年. 人数. 講者数. 時限. 総数. 年. 人数. 講者数. 限. 総数. 1組. 51. 50 水3. 59. 1組. 51. 46 月1. 50. 2組. 50. 49 月2. 49. 2組. 51. 50 水4. 51. 3組. 49. 49 月3. 52. 3組. 49. 46 水4. 46. 4組. 47. 45 月4. 48. 4組. 50. 48 火4. 48. 5組. 47. 47 金4. 49. 5組. 50. 49 木3. 52. 6組. 47. 34 金5. 37. 6組. 47. 46 木3. 51. 7組. 47. 46 火3. 47. 7組. 47. 46 木4. 48. 8組. 47. 44 水1. 48. 8組. 50. 49 木4. 50. 9組. 47. 47 水3. 53. 9組. 46. 45 金3. 52. コンピュータ入門は、高等学校までの学習経験がばらばらなため、2003 年度はアドバンスクラ スを2クラス設置した。しかし時間割の関係で、履修者は非常に少なかった。2) 次に 2003 年度、2004 年度および 2005 年度の授業内容を示す。 4.1. 2003 年度のシラバス. 【春学期】. 【秋学期】. ・ コンピュータの基礎. ・表計算ソフトの概説. ・ タイプソフトの利用. ・表計算応用. ・ 情報倫理. ・データベースの利用. ・ ネットワークの仕組み. ・プレゼンテーションソフトの利用. ・ 電子メール ・ ホームページの活用 ・ ワープロの利用 4.2. 2004 年度のシラバス. 2004 年度は 2003 年度に行ったアドバンスクラスの内容で、授業を実施することにした。この 内容は次のとおりである。 【春学期】. 【秋学期】. ・ コンピュータの基礎. ・表計算応用. ・ タイプソフトの利用. ・VB スクリプト. ・ 情報倫理. ・データベースの利用. ・ 電子メール ・ ホームページの活用. −54−.
(7) ・ ワープロの利用 ・ 表計算ソフトの概説 ・ プレゼンテーションソフトの利用 ・. ネットワークの仕組み ここで、表計算ソフトとデータベースソフトの利用についての時間を多くしたのは、2002 年度. に経済学部教員対象に行なったアンケート調査の結果を考慮したものである。3) また、プログラミングの初歩として、VB スクリプトによるプログラミングを導入することに した。これは、自宅で課題作成する場合でも特別なソフトウェアが必要ないし、表計算ソフトの 応用として教育できるからである。 4.2. 2005 年度のシラバス. 【春学期】. 【秋学期】. ・ コンピュータの基礎. ・コンピュータ言語の文法. ・ タイプソフトの利用. ・アルゴリズム. ・ 情報倫理. ・簡単なプログラミング. ・ 電子メール ・ ホームページの活用 ・ ワープロの利用 ・ 表計算ソフトの概説 ・ プレゼンテーションソフトの利用 ・. ネットワークの仕組み. ・ 表計算応用 ・ VB スクリプト ・ データベースの利用 このように、2004 年度で 1 年間で行った内容を半年で行い、後の半年はプログラミングとアル ゴリズムの基礎を行うことになった。 コンピュータ入門は実技中心の科目であるため、今まで学生から人気のある科目であったが、 レベルを上げることで学生からの授業評価がどのように変化するかを今後調査しなければならな い。 5.. コンピュータ入門以外の科目. コンピュータ入門以外の科目として、表 10 のような科目がある。 表 10. コンピュータ入門以外の科目. 科目. 希望者. 定員. プログラミング論(火1・VB). 100名. 60名. プログラミング論(水3・VB). 96名. 60名. −55−.
(8) プログラミング論(水4・VB). 97名. 60名. マルチメディア論(水1). 152名. 60名. マルチメディア論(水 5). 97名. 60名. コンピュータネットワーク. 115名. 60名. プログラミング論(C). 46名. 60名. データベース論. 46名. 60名. 情報通信ネットワーク. 63名. 60名. コンピュータシミュレーション論. 55名. 60名. 情報検索論(水1). 61名. 54名. 情報検索論(水2). 38名. 54名. 情報と職業. 46名. 50名. アンケート調査結果からも明らかであるが、表 10 のように受講希望者数もプログラミング論や マルチメディア論が定員を大幅に超えていることが分かる。これらの科目をいくつか取得するこ とにより、「情報」の教員免許が取得できるように 2001 年度に免許申請を行っている。. 6. 今後の情報教育 数学のように小学校から系統だって教育されている科目ではなく、高等学校における『情報』 はまだ始まったばかりである。高等学校で『情報』を検討する段階で、『情報A』、『情報B』およ び『情報C』のいずれか1科目を必修とすると決まった。理科系、文科系の区別なく、全員がい ずれかを必須とするような科目は初めてである。しかも、中学校では高等学校の『情報』が始ま る1年前に技術家庭科で『情報基礎』が必須となっている。パソコンがどこの学校にも導入され、 しかもネットワーク接続され、その利用は広がっているが、体系だった教育はまだなされていな い。中学校でも高等学校でも大学でも実技主体の授業で、同じような内容のことが教えられてい るので、高等学校で学習内容を調査しても大学の調査結果と同じような結果が得られている。2) 今 後、コンピュータ入門として大学独自のカリキュラムを、毎年考えてゆかねばならない。そして、 専門としての情報科目に繋げ、『情報』教員が増えることを願っている. 参考文献 (1). 中野由章:近畿圏の高等学校における教科「情報」の現状と課題、情報処理学会、情報処理学会研究報 告、2005-CE-79、pp17-24、2005 年 4 月. (2)立田ルミ:コンピュータ入門受講生の入学以前の学習状況と今後の教育、文部科学省、情報処理教育研究集 会論文集 Pp798-801、2004 年 11 月 (3)立田ルミ:文科系大学における情報教育の現状と問題点、教育システム情報学会、第 29 回全国大会講演論 文集、Pp145-146、2004 年 8 月 (4)高橋参吉:今後の高等学校の教科「情報」および大学における情報教育を考える、教育システム情報学会、 第 29 回全国大会講演論文集、Pp504-504、2004 年 8 月. −56−.
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