• 検索結果がありません。

ITIL実践における改善活動を通じたモチベーション向上推進に関する事例研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ITIL実践における改善活動を通じたモチベーション向上推進に関する事例研究"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-IS-142 No.4 2017/12/2. ITIL 実践における改善活動を通じた モチベーション向上推進に関する事例研究. 角田仁†1 概要:近年,企業情報システムのシステム運用の分野において ITIL は事実上の世界標準になっている.しかしながら, ITIL 実践(導入,定着,改善)にはいくつかの課題があり,その一つがシステム運用部門メンバーのモチベーション の維持・向上である.以上の背景・課題から「ITIL 実践のためにモチベーション向上策を実施して,その有効性を確 認すること」が本研究の目的である.本研究では,その課題解決のための手法を提案する.その手法には 2 つの特徴 がある.一つ目が改善活動の活用であり,二つ目が最新のワークモチベーション理論の適用である.本研究では,そ の手法を実際に適用した事例を報告し,手法の有効性を確認するとともに,分析を通じて得た考察を述べる. キーワード:企業情報システム,ITIL,ワークモチベーション理論,改善活動. 1. はじめに. する研究のテーマは,主に CSF(Criteria Success Factor) , 成 果 ( Benefits ), 導 入 の 動 機 ( Motives ), 実 施 状 況. 企業情報システムのシステム運用の分野では,近年益々. (Implementation status)の 4 つである.そのうち CSF に関. 高い品質が求められている.そのため各企業の IT 部門では. する研究が最も盛んであり,次に成果(Benefits)に関する. ITIL(Information Technology Infrastructure Library)[1]を導. 研究が多い.これは,CSF を活用してどのように ITIL の導. 入してシステム運用の品質向上等を図っている.ITIL は. 入・定着・改善を図るのか,ITIL 実践によりどのような成果. 1989 年にイギリス政府が公表したシステム運用における. を生み出すのか,という命題に対する関心の高さを表わし. ベストプラクティスであり,現在では事実上のデファクト. ている.本研究で取り扱うモチベーション向上は ITIL の. スタンダードになっている.しかしながら,ITIL 実践は難. CSF の一つであるが,ITIL には重要性だけが説かれ,どう. 易度が高く,いくつかの課題がある.その課題の一つが企. やってモチベーションを向上させるかまで記載されていな. 業のシステム運用部門のメンバーのモチベーションの向上. い.本研究はその課題を解決するための方策を提案するも. である.システム運用は定例業務が多いために日々の作業. のである.. が惰性化する傾向があり,メンバーのモチベーションの維. 2.2 ワークモチベーション理論. 持が難しいからである[2].. モチベーションに関する研究の歴史は古く,心理学や教. 以上の背景・課題から「ITIL 実践のためにモチベーショ. 育学や経営学など様々な分野で研究されている.そのうち. ン向上策を実施して,その有効性を確認すること」が本研. 仕事(職場)に関するものはワークモチベーションと呼ば. 究の目的である.本研究はその目的のためにワークモチベ. れている.Barrick 他[4]はワークモチベーションの標準的な. ーション理論を用いた改善活動を提案する.具体的には,. 定義に基づき,3 つの側面を測定することを視野に入れて,. ワークモチベーション理論の 4 つの分類(達成志向,競争. それを測定するためのスケールを 2002 年に提案している.. 志向,協力志向,学習志向)を用いたモチベーション向上. 具体的には,ワークモチベーションを自らの職務を完遂し. 策を検討し,改善活動の一環としてそれらを実施する.. ようとする達成志向モチベーション,同僚よりも高いレベ. 本研究では,その手法を適用したある企業(以下,A 社. ルで職務を遂行しようとする競争志向モチベーション,同. と呼ぶ)のシステム運用部門の事例を報告し,手法の有効. 僚と協力しようとする協力志向モチベーションの 3 つに分. 性を確認するとともに,分析を通じて得た考察を述べる.. 類している.さらに池田他[5]は Barrick 他の理論を発展さ. 本研究は,アカデミックにはワークモチベーション理論の. せる形で,3 つの側面に学習志向を加えた 4 つの側面での. 実践データの蓄積に貢献し,実務的には ITIL 実践の方法を. 測定を提案している.学習志向とは,職務に取り組むこと. 提案することで各社のシステム運用部門にとって有用であ. で自分にとって有意義な知識や経験が得られるとする側面. ると考える.. である.本研究では,近年のワークモチベーションの概念. 2. 関連研究. と定義に準拠した池田他の枠組みをベースに提案内容を検. 2.1 ITIL 実践の CSF 近年発表された文献レビュー[3]によると,ITIL 実践に関. 討する.. 3. 提案内容 本研究では,企業のシステム運用部門メンバーのモチベ. †1 筑波大学大学院ビジネス科学研究科 Graduate School of Business Sciences, University of Tsukuba. ⓒ2017 Information Processing Society of Japan. ーション向上を目的として,ワークモチベーション理論を. 1.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2017-IS-142 No.4 2017/12/2. 適用した改善活動の推進を提案する.この提案の特徴は,. したろころで,システム運用部門の社員全員に対してアン. 改善活動の利用とワークモチベーション理論の適用の 2 点. ケート調査を実施した.質問項目は達成志向・競争志向・. である.両者は実践の視点が異なっている.改善活動の利. 協力志向・学習志向の 4 つの分類に対して各 3 項目の全 12. 用は施策をどのようにして実践するかという提案の HOW. 項目とした.回答も池田他を参考にリッカートスケールの. にあたる.一方,ワークモチベーション理論の適用は施策. 5 件法とした.. の内容に関することであり,いわば提案の WHAT にあたる.. (2)結果. 以下に両者の詳細について述べる. 3.1 改善活動の利用. 対象者のうち,休暇・出張・社外等を除く 45 名から回答 を得た.45 名の内訳は,管理職が 13 名,担当者が 32 名で. 通常,改善活動とモチベーションの関係では, 「改善活. ある.モチベーション向上策の実施前後の平均点の差が統. 動を促すためにモチベーション向上を図ること」が一般的. 計的に有意か確かめるために t 検定(両側検定)を行った. である.しかしながら,本研究では,それとは逆に「モチ. ところ,4 つの分類全てで 1%以内の有意差があることを確. ベーション向上のために改善活動を利用すること」を提案. 認した.実施後の平均値は学習志向,協力志向,達成志向,. する.あえて極端に言えば,改善活動の成果(効率化など). 競争志向の順となった.学習志向については実施前後の平. を度外視しても,モチベーションさえ向上すれば,実践は. 均値と上昇値のいずれも高い数値を示しており,最も効果. 成功したと位置付ける.. 的であったことが分かった.次に高いのは協力志向であっ. 3.2 ワークモチベーション理論の適用. た.一方, 競争志向は平均値とその差の両方とも最も低い.. システム運用部門メンバーのモチベーション向上策の. 特に管理職では唯一,平均値の差に有意が認められなかっ. 内容を検討するにあたり,ワークモチベーション理論を活. た.以上からモチベーション向上策を検討する際には,学. 用する.具体的には池田他の理論を用いて,達成志向,競. 習志向や協力志向を促す内容にすると高い効果が見込める. 争志向,協力志向,学習志向の 4 つの観点から施策の検討. と推察される.. を行う.また,施策実施後のアンケート調査では,池田他 から提案されている質問項目を用いて評価を行う.池田他. 5. 今後の課題. の論文に 4 つの観点で各々9 個,合計で 36 個の質問項目が. アンケート調査を実施した 2017 年 9 月以降も改善活動は. 掲載されており,本研究ではそれらを参考にアンケート調. 続いており,10 月には新たなモチベーション向上策を実施. 査の質問項目を作成する.以上により,4 つの分類のうち. 予定している.ついては,それを実施後の 11 月にも 2 回目. どれに力点を置いて施策の内容を検討すべきか明らかにな. のアンケート調査を同じ質問項目で実施して,1 回目との. る.. 変化を分析するなど,事例の観察を継続的に続けていきた. 4. 事例への適用 4.1 モチベーション向上策の検討と実践 A 社のシステム運用部門では,2017 年 4 月に改善活動を. い.. 参考文献 [1] Office of Government Commerce (OGC): ITIL® 2011. 開始した.それを実施するにあたり最初にモチベーション. edition: Service Strategy, Service Design, Service Transition,. 向上策の内容について KJ 法を用いて検討した.KJ 法に参. Service Operation, Continual Service Improvement, TSO. 加したメンバーは,システム運用部門の管理職 2 名と担当 者 3 名の合計 5 名である.まず冒頭に KJ 法の手続きとワ ークモチベーション理論について確認を行い,その後は KJ 法に習熟したメンバーがファシリテータを担って施策の案 出を行った.検討は社内の会議室で 4 時間ほど実施した.. (2011). [2] 岡田英行:IT プロジェクトのメンタルヘルス問題への 脳科学からのアプローチ,プロジェクトマネジメント 学会誌,Vol.10 No.1,pp.9-14(2008) . [3] Iden,J., Eikebrokk,T.R.:. Implementing IT Service. 施策はワークモチベーション理論の 4 つの分類についてバ. Management: A systematic literature review, International. ランス良く案出した.それらのモチベーション向上策は順. Journal of Information Management, Vol.33, No.3,. 次実施された.. pp.512-523 (2013).. 4.2 評価 モチベーション向上策の評価のためにアンケート調査. [4] Barrick, M.R., Stewart, G.L., and Piotrowski, M.: Personality and job performance: test of the mediating effects of. を実施した.評価対象はワークモチベーション理論の 4 つ. motivation among sales representatives. Journal of Applied. の分類とし,モチベーション向上策の実施前後の意識の変. Psychology, Vol.87 No.1, pp.43-51 (2002).. 化を検証した. (1)方法 2017 年 9 月に,モチベーション向上策を 5.5 か月間実施. ⓒ2017 Information Processing Society of Japan. [5] 池田浩,森永雄太:我が国における他側面ワークモチ ベーション尺度の開発,産業・組織心理学研究,Vol.30 No.2,pp.171-186(2017) .. 2.

(3)

参照

関連したドキュメント

・ 継続企業の前提に関する事項について、重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認

システムであって、当該管理監督のための資源配分がなされ、適切に運用されるものをいう。ただ し、第 82 条において読み替えて準用する第 2 章から第

法制執務支援システム(データベース)のコンテンツの充実 平成 13

継続企業の前提に関する注記に記載されているとおり、会社は、×年4月1日から×年3月 31

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

単に,南北を指す磁石くらいはあったのではないかと思

平成 28 年度は、上記目的の達成に向けて、27 年度に取り組んでいない分野や特に重点を置

これまで、実態が把握できていなかった都内市街地における BVOC の放出実態を成分別 に推計し、 人為起源 VOC に対する BVOC