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細胞膜機能学研究室(研究室紹介) 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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著者

藤沢 誠

著者別名

Fujisawa Makoto

雑誌名

生命科学

2009

ページ

227-232

発行年

2010-03-31

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000109/

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   細胞膜機能学研究室   (第28研究室 藤津 誠 助教) Laboratory ofFunctionalBiomembranology はじめに  すべての細胞は細胞膜に包まれており、 細胞膜を通して栄養物やミネラル、老廃 物や毒物を選択的に運ぶことで細胞内の 環境を一定に維持して生きている。当研 究室では、細胞膜中に存在する物質輸送 の「関所」ともいうべき、「輸送体」と呼 ばれるタンパク質の機能を分子レベルで 調べている。生物が生きていく上で極め て重要なATPという化合物も水素イオン (以下プロトンもしくはHつの輸送体の1 つによって作られている。 研究内容 細菌の環境適応機構としてのイオン輸送 体の役割とその作用機序の解明  カリウムイオン(に)やナトリウムイオ ン(Nよ)などのミネラルは核酸やタンパ ク質の構造に影響を与える要素であり、 細胞内のイオン濃度は輸送体によって適 切に維持されている。一般に、これらの イオンは細胞の内外で濃度に差かおる。 細胞はこのようなイオンの濃度差を利用 して、細胞内への糖やアミノ酸などの栄 養素の取り込み、細胞外への老廃物や毒 物の排出、神経伝達、ATP合成などを行 っている。当研究室では生物の持つ様々 なイオン輸送体を分子レベルで解析して いる。  生物は1次能動輸送体、2次能動輸送 研究室紹介 体、受動輸送体という3種類の輸送体を 駆使して、細胞内のイオン濃度を調節し ている。2次能動輸送体は、機能や構造 がより単純な受動輸送体から進化したも のであると考えられている。当研究室で は大腸菌と枯草菌において、2次能動輸 送体であるKソH゛アンチポーターと受動 輸送体であるにチャネルの中間的な性質 を示すタンパク質を世界で初めて発見し た。現在、これらのタンパク質の分子レ ベルでの作用機序の解明を試みている。 この研究により、イオン輸送体の進化の 過程や物質輸送におけるイオンの共役機 構の解明、さらには心不整脈やてんか ん、慢性疼痛などのイオン輸送体の関 与する様々な病気の治療法の確立にも役 立つことが期待できる。  また、地球上には様々な極限環境下で 生育できる微生物が数多く存在する。こ のような極限環境微生物は、細胞内外の 境界である細胞膜の機能をそれぞれの環 境に特化させて生きていることが予想さ れる。当研究室では、pH 9. 0以上のアル カリpHで至適生育を示す好アルカリ性 細菌の細胞膜の機能を調べてきた。一般 に、好アルカリ性細菌は生育にNがを要 求するものが多い。これは、アルカジ環 境において細胞内を酸性化するために NaソH゛アンチポーターを利用しているこ と、また、好中性細菌が栄養素の取り込

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みやべん毛の回転運動などに利用してい るプロトン(Hつの流入エネルギー(プロ トン駆動力)が好アルカリ性細菌におい ては貧弱であるため、代わりにNがの流 入エネルギー(ナトリウム駆動力)を利用 していることが原因である。当研究室で は、Nがに非依存的な好アルカジ性細菌の 自然界からのスクリーニングを試み、こ れまでに複数の菌株の単離に成功してい る。これらの菌株の解析によって、生物 の環境適応機構の多榛匪の解明が期待で きる。また、それらの細菌が持つ特殊な イオン輸送システムを利用することで、 リチウムイオンなどのレアメタルの回収 技術の開発も期待できる。  好アルカリ性細菌では、Bad五/us pseudo万rmus 0F4株がモデル生物として よく研究されている。且 pseudofirmus 0F4株はプロトン駆動力の弱いアルカリ 環境下で、ナトリウム駆動力を用いてア ミノ酸の取り込みやべん毛の回転運動を 行っている。それにもかかわらず、この 細菌は酸化的リン酸化によって、プロト ン駆動力を利用してATPを合成する。一 般に、酸化的リン酸化では呼吸鎖複合体 によって形成されたプロトン駆動力を用 いて、FiF√ATP合成酵素がADPとリン酸 からATPを合成する。当研究室では、好 アルカリ性細菌のF,F。-ATP合成酵素がど のようにアルカリ環境という低プロトン 駆動力の環境下でATPを合成しているの かを遺伝子工学的手法を用いて解析して いる。好アルカリ性細菌のF,F。-ATP合成 酵素には好アルカリ性細菌にのみよく保 存されているアミノ酸残基やモチーフが ある。これらのアミノ酸を部位特異的変 異の導入によって様々なアミノ酸に置換 し、その役割を調べている。 FiF。-ATP合 成酵素は生物が持つ世界最小の回転する 分子モーターであり、本研究によって、 低プロトン駆動力で回転するナノマシー ンとしての利用が期待できる。 1。大腸菌と枯草菌で見つかった新規2 成分KソH゛アンチポーターの作用機序の 解明  細菌の↓価カチオン/プロトンアンチポ ーターはNよやぐを細胞外に排出し、H゛を 取り込むことで、細胞内に蓄積すると毒 性を示すカチオンヘの耐性や細胞内pHの 維持に寄与する。細菌の↓価カチオン/プ ロトンアンチポーターファミリーは多数 存在し、NhaA、NhaB、NhaC、NhaD、CPA1、 CPA2、CPA3ファミリーなどに分類されて いる。このうちのCPA2ファミリーに属す る大腸菌のKefCと枯草菌のYhaUという 膜タンパク質は単独ではにチャネルとし て機能するが、それぞれ親水性タンパク 質であるKefFおよびYhaTと共発現した とき、Kソ圧アンチポート活性を示すこと を見出した。このことから、KefFとKefC、 YhaTとYhaUが相互作用することで、K゛ チャネルからKソH+アンチポーターへと機 能が変わることが示唆された(図1)。その 後2009年にはスコットランドのIan Boothらにより、KefFとKefCのC末端側

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親水性領域の融合タンパク質の立体構造 が解明され、KefCのC末端側親水性領域 とKefFの相互作用のモデルが提案されて いる。 しかしながら、ネイティブな状態 のタンパク質間での相互作用は検出され ていない。また、YhaUはC末端側に親水 性領域を持っていないため、YhaT-YhaU システムはKefF-KefCシステムとは異な る相互作用メカニズムを持っていること が示唆される。  当研究室では、枯草菌のYhaTとYhaU にそれぞれペプチドタグを付与し、プル ダウンアッセイとブルーネイティブ電気 泳動法によってYhaTとYhaUの相互作用 の検出に成功した。この研究の成果は 2010年度第33回日本分子生物学会年 会・第83回日本生化学会大会合同大会 (神戸)'、第8回国際シンポジウム「バイ オ科学とナノテクノロジーの融合に向け て」(東洋大学、白山キャンパス)2で発表 した。 I 2次能動輸送体| l Si'"^に K白 ト  外T

に言薦正二

十干

寸言

図1.親水性タンパク質によって機能を 変える2成分KソF『アンチポーターのモデ ル膜タンパク質であるKefCやYhaUは単 独でぐチャネルとして機能するが(右)、 親水性タンパク質であるKe汗やYhaTと 共発現するとKソH゛アンチポーターとして 機能する(左)。 研究室紹介 2。新規イオン依存特性を持つ好アルカ 引生細菌のスクリーニングとその生理的 性質の検討  好アルカジ性細菌は、Nよを利用して、 細胞内を酸性化し、栄養素の取り込みや 毒物の排出、べん毛の回転などを行って いる。  当研究室では、新規アルカリ環境適応 機構を探索する目的で、N引こ非依存的な 好アルカリ性細菌の自然界からのスクリ ーニングを試み、これまでに50 以上の菌 株の単離に成功した([図2]。(2009年度 卒業研究 神山卓也、野田和也)。現在、 これらの細菌の生育におけるイオン特異 性などの詳細について解析している (2010年度卒業研究渡辺真名斗)。この研 究により、生物の持つ環境適応機構の多 様性の解明が期待できる。また、このよ うな細菌が持つ特殊なイオン輸送システ ムを利用することで、リチウムイオンな どのレアメタルの回収技術の開発も期待 できる。  この研究の成果の一部は2009年度第 10回極限環境微生物学会年会(明治大学、 駿河台キャンパス)'、2010年度第11回 極限環境微生物学会年会(京都大学化学 研究所、宇治黄頻プラザ)"で発表した。 また、好アルカリ性細菌の工業的利用に 関する総説をEnviron. Tec加回.誌に、真 正細菌と古細菌の細胞内pHホメオスタシ スに関する総説をAdv. Microb. Physiol. 誌にそれぞれ報告した1, 2.

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図2. Nよを含むMYE培地では0F4株もKU50 株も生育できた。一方、Nよの代わ引こLド を含む培地では、0F4株は生育できないが、 自然界から新規にスクジーニングした KU50株は生育できた。

3. Bad jlus pseudof i r限us 0F4 株のATP 合成酵素の機能解析  R pseudofirmus 0F4株のような好アル カリ性バチルス属細菌のATP合成酵素の a−サブユニットには、外環境からの崖の 取り込み経路と推定される領域にリジン 残基が保存されている(図3)。瓦 pseudofirmus 0F4株ではヤサブユニット のN末端側から180番目のリジン残基(以 下aK180)がそれにあたり、好中性細菌の 瓦 colブの218番目のグリシン残基 (aG218)部位に相当する。これらはヤサブ ユニットの4番目の膜貫通ヘリックス (TMH4)に存在し、F,F。タイプのATP合成酵 素の機能に必須なaサブユニット中に保 存されたアルギニン残基ぐB. pseudofir-mus 0F4の諏172、E. coliのaR210)と同 一のヘリックスに存在する。このaK180 を他のアミノ酸(アラニン、グリシン、シ ステイン、ヒスチジン、アルギニン)に置 換した部位特異的変異株を作成し、その 変異型酵素の機能を調べたところ、誠180 の持つP凡がアルカリ環境下でのATP合成 酵素の機能に重要であることが明らかと なった。さらに、且 pseudofirmus 0F4 株のrサブユニット中に保存されている その他のアミノ酸に関しても、網羅的に 好中性細菌に見られるアミノ酸へと置換 し、その変異型酵素の性質を調べた。そ の結果、ヤサブユニット全体に渡って存 在する複数のアミノ酸がアルカリ環境下 でのATP合成に少しずつ寄与し、aK180 のような一部のアミノ酸がアルカリpHへ の適応に必須であることが明らかとなっ た。この研究の成果は2009年度第10回 極限環境微生物学会年会(明治大学、駿河 台キャンパス)で発表し5、Journal of Biological Chemistry詰に報告した3。ま た、クサブユニットにおける部位特異的 変異導入実験の結果をJournal of Bio一 logical Chemistry誌に、好アルカリ性細 菌のFiF。-ATP合成酵素に関する総説を Biochim Bi叩八ysかta誌にそれぞれ報告 した4凡 A AD   4) N B 図3. F,F。-ATP合成酵素とaサブユニッ ト中の変異導入箇所 (A)FiF。-ATP合成酵素のモデル 細胞膜中 のJサブユニットとcサブユニットを経

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由してH゛が細胞内に流入する。そのエネ ルギーを利用してATPが合成される。

㈲Jサブユニット中に導入したアミノ酸 置換部位円柱は膜貫通領域を示す。

 【原著論文】

1. Fujinami, S. and Fujisawa, M.:Industrial   applica且ons of alkaliphiles and their   enzymes 一 past, present and future.   Environ. Techno!., 8-9, 845-856, (20㈲ 2. Slonczewski, J. L., Fujisawa, M., Dopson,   M., and Krulwich, T. A.:Cytoplasmic pH   measurement and homeostasis in bacteria   and archaea. Adv. Microb. Physiol., 55,   1-79, (2009)

3. Fujisawa, M., Facke士mayer, 0. J., Liu, J.,   Krulwich, T. A., Hicks, D. B.: The ATP   synthase a-subunit of eχtreme alka-  liphiles is a distinct variant: muta-  tions in the critical alkaliphile-spec汀ic   residue Lys-180 and other residues that   support alka且phile oχidative phosphory-  lation. ノBiol. Ch皿, 285, 32105べ32115,   (2010)

4. Liu, J., Fujisawa, M., Hicks, D. B.,and   Krulwich, T. A.:Characterization of the   functionally cri且cal AXAXAXA and PXXEXXP   mo七汀s of the ATP synthase c-subunit from   an alkaliphilic Bacillus.工Bio工. Chem.,   284, 8714-8725, (2009)

5. Hicks, D. B., Liu, J。, Fujisawa, M., and   Krulwich, T. A.: FlFo-ATP synthases of   alkaliph且ic bacteria: ]essons 仕om

研究室紹介

their adaptations. Biochim. Biophys. Ada., 1797, 1362-1377,(2010)  【学会発表】 1.藤洋誠:CPA2ファミリーに属する2成  分KソH゛アンチポーターのサブユニッ   ト間の相互作用の検出第33回目本分  子生物学会年会・第83回日本生化学  会大会合同大会1P-13↓O(2010年12  月) 2. Makoto Fujisawa: Detection of the  interac廿on between membrane protein  YhaU and hydrophilic protein YhaT of  the 2一component に/l゛antiporter from  Bacillus subti石s. The gth工nterna- tional Symposium on Bioscience and  Nanotechnology. P一肌(Dec.2010) 3.野田和也、神山卓也、渡辺真名斗、藤  滓誠:好アルカリ性細菌Bacil詣s  pseudofirmus叩4株の生育におけるリ  チウムイオンの影響およびジチウム  イオンで生育する好アルカリ性細菌  の土壌からの単離・同定第10回極限  環境生物学会年会P-36 (2009年11  則 4.渡辺真名斗、藤洋誠:低濃度のナトリ  ウムイオン存在下で生育する好アル  カリ性細菌の単離とその生理的性質  第11回極限環境生物学会年会P-19  (2010年11月)

5.藤滓誠、David B. Hicks, Terry A.

 Krulwich:好アルカリ性細菌Badムノus

(7)

a−サブユニットに保存されている好 アルカリ性細菌に特有なアミノ酸残 基の網羅的な機能解析第10回極限環 境生物学会年会P-35 (2009年11月)

参照

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