• 検索結果がありません。

エコロジーとエコ・フィロソフィ 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "エコロジーとエコ・フィロソフィ 利用統計を見る"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

エコロジーとエコ・フィロソフィ

著者名(日)

竹村 牧男

雑誌名

「エコ・フィロソフィ」研究

1

ページ

13-26

発行年

2007-03

URL

http://doi.org/10.34428/00003370

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

エ コ ロ ジ ー と エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ

東 洋 大 学 文 学 部

竹 村 牧 男

「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」 研 究 第 1 号

Eco-Philosophy Vol.1

東 洋 大 学 「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」

学 際 研 究 イ ニ シ ア テ ィ ブ 2 0 0 7 年 3 月

(3)

13

エ コ ロ ジ ー と エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ

文 学 部 竹 村 牧 男 1 、 エ コ と は 何 か 最 近 、 エ コ の 語 を 冠 し た 言 葉 が よ く 使 わ れ る 。 そ れ は 、 往 々 、 環 境 に や さ し い 、 有 害 物 質 を 排 出 す る の が 少 な い タ イ プ で あ っ た り 、省 エ ネ タ イ プ の 表 示 で あ っ た り す る 。し か し 、 も と も と エ コ と い う 言 葉 は 、 ど の よ う な 意 味 を 持 つ 言 葉 な の で あ ろ う か 。 ま ず 、 エ コ ロ ジ ー の 語 に 関 し て 、 ロ デ リ ッ ク ・ F ・ ナ ッ シ ュ の 『 自 然 の 権 利—環 境 倫 理 の 文 明 史 』は 、次 の よ う に 説 明 し て い る 。「 ギ リ シ ア 語 で 家 を 意 味 す る〈 オ イ コ ス 〉(Oikos) が 、「 エ コ ノ ミ ク ス 」(Economics)と「 エ コ ロ ジ ー 」(Ecology)の 語 源 で あ る 。歴 史 的 経 過 の の ち 、こ の 意 味 は 家 自 体 か ら 家 に 含 ま れ る も の で 、つ ま り 、生 活 共 同 体( コ ミ ュ ニ テ ィ )、 あ る い は 家 庭 の こ と を 指 す よ う に な っ た 。 前 述 の 二 つ の 概 念 の う ち 、 古 い ほ う の 概 念 で あ る 「 エ コ ノ ミ ク ス 」 は 、 共 同 体 が 時 間 、 労 働 、 物 的 資 源 を ど の よ う に 管 理 す る か と い う 研 究 に 関 す る も の で あ る 。 ド イ ツ の 進 化 論 者 、 エ ル ン ス ト ・ ヘ ッ ケ ル は1866 年 、「 エ コ ロ ギ ー 」( 生 態 学 ―Ökologie) と いう 新 語 を 造 っ た 。 現 在 の 綴 りは 1890 年 代 、 ヨ ー ロ ッパ の 植 物 学 者 た ち の す ぐ れ た 生 態 学 的 な モ ノ グ ラ フ の な か で 初 め て 使 わ れ た も の で あ る 。 そ の 頃 ま で に は エ コ ロ ジ ー( 生 態 学 )は 、有 機 体( い か な る 種 類 も 含 め て )が 相 互 に 、あ る い は 、 環 境 全 体 と 、ど の よ う に 作 用 し あ う か と い う 研 究 を 意 味 す る よ う に な っ て い た 。当 初 か ら 、 こ の 概 念 は 共 同 体 体 系 (communities systems)、 そ し て 全 体 (wholes) に 関 係 し て い た ので あ る 。」( ロ デ リ ッ ク ・ F ・ ナ ッ シ ュ 著 『 自 然 の 権 利—環 境 倫 理 の 文 明 論 』 松 野 弘 訳 、 TBS ブ リ タ ニ カ 、1993 年 117 頁 、 以 下 、『 権 利』 と 略 称 ) ま た 、今 道 友 信 は 、『 エ コ エ テ ィ カ ― 生 圏 倫 理 学 入 門 』に お い て 、エ コ に つ い て 次 の よ う に 解 説 し て い る 。「 も と も と エ コ (eco) は 、 ギ リ シ ア 語 の オ イ コ ス を 音 写 し た ラ テ ン 語 で す 。 ギ リ シ ア 語 の オ イ コ ス は 、 狭 義 に は 「 家 」 を 意 味 し ま す が 、 広 義 に は 生 息 地 、 生 息 圏 を 意 味 し ま す 。 わ れ わ れ は こ こ で 、 そ の 広 義 の 意 味 に と り ま す 。 で す か ら 、 エ コ エ テ ィ カ と い え ば 、 生 圏 道 徳 学 ま た は 生 圏 倫 理 学 と 訳 す 習 慣 に な っ て い ま す 。」「 で す か ら 、 エ コ エ テ ィ カ は 、 家 の 倫 理 や 国 家 の 倫 理 な ど で は な く 、 科 学 技 術 を 環 境 と す る 現 代 世 界 の 倫 理 の 意 味 で 、 人 類 の 生 息 圏 全 体 に わ た る 倫 理 学 と い う 意 味 で す 。」( 今 道 友 信 『 エ コ エ テ ィ カ ― ― 生 圏 倫 理 学 入 門 』、 講 談 社 学 術 文 庫 、1990 年 、18~19 頁 ) と す れ ば 、 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ は 、 さ し づ め 、 生 圏 思 想 、 生 圏 哲 学 と い う こ と に な ろ う か 。 そ れ は 、 人 間 の 生 息 圏 全 体 に つ い て の 洞 察 と 展 望 と を 含 む も の で あ る 。 ま た 、 時 に 環 境 哲 学 と も 訳 さ れ て い る こ と も 、 事 実 で あ る 。 キ ー ワ ー ド ; デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー 、ア ル ネ ・ ネ ス 、エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 、 ヘ ン リ ッ ク ・ ス コ リ モ フ ス キ ー 、 自 然 観

(4)

2 、 エ コ ロ ジ ー と エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ そ の エ コ に 、 フ ィ ロ ソ フ ィ を 付 し た 「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」 の 語 は 、 す で に 先 人 に よ っ て 提 唱 さ れ て い る 。 同 じ く 『 自 然 の 権 利 』 に よ る と 、 次 の よ う に あ る 。 「 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー は ジ ョ ー ジ ・ セ ッ シ ョ ン ズ が す で に 指 摘 し た よ う に 、 ノ ル ウ ェ ー 人 の 思 想 に 負 う と こ ろ が 大 き い 。早 く は1941 年 、ピ ー タ ー・ザ プ フェ が 人 間 ― 環 境 関 係 に 関 し て 非 人 間 中 心 主 義 的 な 理 論 の 枠 組 み を つ く り 、 そ れ を 「 バ イ オ ソ フ ィ ( 生 命 的 な 叡 智 )」(biosophy) と 呼 ん だ 。1974 年 に は も う一 人 の ノ ル ウ ェ ー 人 シグ ム ン ド ・ ク ヴ ァ ロ イ が 、『 ノ ー ス ・ ア メ リ カ ン ・ レ ビ ュ ー 』(North American Review) 誌 の 記 事 で 「 エ コ フ ィロ ソ フ ィ( 環 境 哲 学 、あ る い は 、生 態 学 的 哲 学 )」(ecophilosophy)と い う 概 念 を生 み 出 し た 。 し か し そ れ は 結 局 、 ア ル ネ ・ ネ ス の 造 語 で あ る 「 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー 」 に 組 み 入 れ ら れ た の で あ る 。 ネ ス は ま た 、生 態 学 者 と 哲 学 者 は そ れ ぞ れ 英 知 を 集 め て 、「 エ コ ソ フ ィ( 生 態 学 的 な 叡 智 )」 と い う 新 し い 学 問 分 野 を つ く る べ き で あ る と 考 え て い た 。」(『 権 利 』 289~290 頁 ) こ こ に 、 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ と は 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー の こ と で も あ る と 同 時 に 、 逆 に デ ィ ー プ・エ コ ロ ジ ー と は 、単 な る 科 学 と し て の 生 態 学 に と ど ま ら な い 、倫 理・生 き 方 ・ 自 己 存 在 理 解 を 含 む 、 哲 学 と し て の エ コ ロ ジ ー で あ る こ と も 知 ら れ る で あ ろ う 。 な お 、 河 野 勝 彦 は 、「 ア ル ネ・ネ ス は 、 デ ィ ー プ・エ コ ロ ジ ー は 、倫 理 、道 徳 で あ る よ り も 、 ま ず 存 在 論 、哲 学 で あ っ て 、倫 理 は そ こ か ら 導 出 さ れ る も の と 見 て い る 。 し た が っ て 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー は 、 一 つ の 哲 学 = エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ (ecophilosophy) で あ り 、 シ ャ ロ ウ ・ エ コ ロ ジ ー が 何 ら の 哲 学 や 宗 教 的 な 基 礎 も も た な い の に 対 し 、 一 つ の 哲 学 に も と づ い て い る ゆ え に 「 デ ィ ー プ 」 と 標 榜 す る こ と が で き る と 言 う の で あ る 。 そ の 哲 学 の 中 心 概 念 は 、「 自 己 実 現(self-realization)」で あ る」と 説 い て い る( 河 野 勝 彦「 環 境 哲 学 の 構 築 に 向 け て 」『 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー の 現 在 ― ― 自 然 と 人 間 の 対 立 を こ え て 』尾 関 周 二 編 、大 月 書 店 、2001 年 、90~91 頁 、 以 下 、『 現 在 』 と 略 称 ) 3 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー を め ぐ っ て エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ は 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー と ほ ぼ 同 義 で あ る と 見 な さ れ る 場 合 も あ る の で あ っ た 。 で は 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー と は 、 ど の よ う な も の な の で あ ろ う か 。 元 来 、 エ コ ロ ジ ー そ の も の は 、 ふ つ う 「 生 態 学 」 で あ り 、 そ れ は 主 と し て 地 理 学 ・ 動 物 学 ・ 植 物 学 ・ 生 物 学 の 言 葉 だ と い う 。 ド イ ツ の ヘ ッ ケ ル と い う 学 者 が 、 生 物 地 理 学 の 必 要 上 作 っ た 語Ökologie が も と であ る と い う (『 権 利 』 117 頁 )。 結 局 、 生 態 圏 の 実 情 を究 明 す る も の で あ っ た ろ う 。 し か し 今 日 で は 、 す で に エ コ ロ ジ ー そ の も の が 自 然 環 境 の 存 在 様 態 に 根 ざ し た 人 間 の 生 き 方 を も 含 む も の と な っ て き て い る 。 こ こ に 、 環 境 倫 理 学 と の 接 点 も あ る 。 と い う の も 、 生 物 学 ・ 生 態 学 の 事 実 認 識 を ふ ま え て 、 人 間 の 倫 理 が お の ず か ら 形 成 さ れ る と い う 考 え 方 が 、 最 近 と み に 勢 い を ま し て き て い る か ら で あ る 。 こ の な か 、 自 然 を 制 御 し 、 人 間 の 物 質 的 利 益 に 役 立 て る こ と を 、 し か も 長 期 的 需 要 と い う 視 点 か ら 考 え よ う と す

(5)

る 功 利 主 義 (Utilitarianism) 的 な、 も し く は 人 間 中心 主 義( Anthropocentrism) 的 な 環 境 主 義(Environmentalism)に 対 し て 、自 然 の 根 源 的 な 価 値 を 訴 え る 自 然保 護 思 想( conservation) が 唱 え ら れ る よ う に な る 。 そ の 際 、 自 然 の 権 利 の 問 題 も 多 く 語 ら れ る よ う に な っ た 。 ロ デ リ ッ ク ・ F ・ ナ ッ シ ュ は 、『 自 然 の 権 利 』 に お い て 、「 自 然 を 囲 い 込 ん だ り 、 自 然 を 切 り 裂 い た り す る こ と(Impoundments and clearcuts)は 、人 々 が 自 然 を 体 験 し 、楽 し む 権利( the rights of people to experience and enjoy nature)だ け で な く 、 自 然 自 身 の 権利 ( the rights of nature itself)を 侵 害す る こ と に な る と 彼 ら は 主 張し た の で あ っ た。こ の よ う な 変 化 は、部 分 的 に は 、 ① 生 態 学 が 科 学 と し て 確 立 さ れ た こ と (the rise of the science of ecology)、 さ ら に 、 ② 生 態 学 が 広 汎 な 一 般 大 衆 の 熱 意 に 受 け 入 れ ら れ た こ と な ど で 説 明 す る こ と が で き る 。 生 物 学 的 共 同 体 に 新 し い 意 味 を も っ た 概 念 を つ く り 出 す こ と に よ っ て 、 生 態 学 は ま た 、 道 徳 的 共 同 体 の 新 た な 基 盤 作 り (a new basis for moral community) を 示 唆 す る も の とな っ た 」 と ま と め て い る 。(『 権 利 』13 頁)。 そ う し た な か 、 今 日 、 特 に デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー な る も の が 唱 え ら れ る に 至 っ た の で あ っ た 。 こ れ に 対 す る の は 、 シ ャ ロ ウ ・ エ コ ロ ジ ー で あ る 。 後 者 は 、 人 間 の た め の エ コ ロ ジ ー で あ る の に 対 し 、前 者 は 自 然 の た め の エ コ ロ ジ ー と い え よ う 。自 然 の 保 全(conservation) と 保 護 (preservation) の 対 立に 対 応 す る 。 こ のデ ィ ー プ・ エ コ ロ ジ ー は 、 さき の 、 自 然 の 権 利 を 大 い に 主 張 す る 流 れ と 、 傾 向 を 等 し く し た も の と い え よ う 。 ア ル ネ・ネ ス は 、「 シ ャ ロ ウ・エ コ ロ ジ ー 運 動 と 長 期 的 視 野 に 立 っ た デ ィ ー プ・エ コ ロ ジ ー 運 動 」(The Shallow and the Deep, Long-Range Ecological Movement, 1973) に お いて 、 彼 の 主 唱 す る デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー の 7 つ の 特 性 を あ げ て い る 。 以 下 、 そ の 要 点 で あ る 。 ① 環 境 の な か に 個 々 の 独 立 し た 人 間 が 存 在 し て い る と い う よ う な 原 子 論 的 な 見 方 で は な く 、世 界 と い う も の を 、網 の 目 の ご と く 、相 互 に 連 関 し た 個 々 の 要 素 の 連 続 体 と し て 関 係 論 的 に 、 ま た 全 体 論 的 に と ら え よ う と す る 。 ② 人 間 中 心 主 義で は な く 、生 命 圏 平 等 主 義(biospherical egalitarianism)の 立 場 を とる 。 ③ 生 命 の 多 様 性(diversity)と 共 生 ( symbiosis) を も と め る 。 ④ 平 等 主 義 と いう 原 則 か ら 反 階 級 制 度 の 姿 勢( anti-class posture)を 貫 く。南 北 間 の 経 済 格 差 の 問 題 を も 含 め た 人 間 社 会 に お け る 一 切 の 差 別 や 抑 圧 に 反 対 す る 。( こ の 点 で は 、 ソ ー シ ャ ル ・ エ コ ロ ジ ー と も 共 闘 で き る 。) ⑤ 環 境 汚 染 や 資源 枯 渇 に 対 す る 闘 い を 支 持 する 。こ の 点 で は 、シ ャ ロ ウ・エ コ ロジ ー と も 協 力 で き る 。 ⑥ 混 乱 ( complication) と は 区 別 さ れ た 意 味 で の 複雑 性 ( complexity) を 重 要 視 する 。 こ れ は 人 間 社 会 に お け る 断 片 化 さ れ 単 純 化 さ れ た 労 働 よ り も 、人 間 が 全 人 格 を 傾 け て 能 動 的 に 協 同 で き る よ う な 分 業 を 支 持 す る こ と に つ な が る 。 ⑦ 地 方 自 治 と 分権 化 を 支 持 す る 。こ の 点 で 、エ コ・リ ー ジ ョ ナ リ ズ ムと も 提 携 す る こ と が で き る 。 ( 小 坂 国 継 『 環 境 倫 理 学 ノ ー ト ― ― 比 較 思 想 的 考 察 』、 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 、2003 年 、 160∼ 161 頁 、 以 下 、『 ノ ー ト 』 と 略称 ) 「 シ ャ ロ ウ ・ エ コ ロ ジ ー 運 動 と 長 期 的 視 野 に 立 っ た デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー 運 動 」 を 書 い

(6)

た お よ そ10 年後 、ネ ス は ア メ リ カ の ジ ョ ー ジ・セ ッ シ ョ ン ズ(George Sessions)と 共 同 で 、 8 ヶ 条 か ら な る デ ィ ー プ・エ コ ロ ジ ー 運 動 の 原 則 を ま と め た 。通 常 、「 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 原 則 」 と 呼 ば れ て い る も の で あ る 。 1 . 地 球 上 に お ける 人 間 と 他 の 生 命 の 幸 福 と 繁栄 は 、そ れ 自 体 の 価 値( 本 質 的 な 価 値 、 固 有 の 価 値 )を も っ て い る 。そ し て 、こ れ ら の 価 値 は 、人 間 以 外 の 世 界 が 人 間 の 目 的 に と っ て 有 し て い る 有 用 性 と は 無 関 係 で あ る 。 2 . 生 命 の 豊 か さと 多 様 性 は こ れ ら の 価 値 の 実現 に 寄 与 す る し 、ま た そ れ は そ れ 自 身 で 価 値 を 有 し て い る 。 3 . 人 間 は 不 可 欠の 必 要 を 充 足 す る た め 以 外 に、こ の 生 命 の 豊 か さ や 多様 性 を 損 な う 権 利 を も っ て い な い 。 4 . 人 間 生 命 と 文化 の 繁 栄 と 、人 口 の 大 幅 な 減 少 と は 矛 盾 し な い 。人 間 以 外 の 生 命が 繁 栄 す る た め に は 、 人 間 の 数 が 大 幅 に 減 少 す る こ と が 必 要 で あ る 。 5 . 今 日 に お け る自 然 界 に 対 す る 人 間 の 干 渉 は行 き 過 ぎ て お り 、し か も そ の 状 況 は 急 速 に 悪 化 し て い る 。 6 . そ れ だ か ら、経 済 的、技 術 的 、イ デオ ロ ギ ー 的 な 基 本 構 造 に 影 響 をお よ ぼ す よ う な 政 策 の 変 更 が な さ れ な け れ ば な ら な い 。こ の よ う な 変 更 の 結 果 も た ら さ れ る 状 況 は 今 日 と は 非 常 に 違 っ た も の に な る で あ ろ う 。 7 . イ デ オ ロ ギ ー的 変 革 は 、生 活 水 準 の 不 断 の 向 上 へ の 執 着 を 捨 て 、生 活 の 質 を 評価 す る こ と ( 固 有 の 価 値 の な か で 生 き る こ と ) が そ の 主 た る 内 容 で あ る 。「 大 き い こ と 」 と 「 偉 大 で あ る こ と 」 の 違 い が 深 い 次 元 で 自 覚 さ れ る で あ ろ う 。 8 . 以 上 の 項 目 に同 意 す る 人 は 、必要 な 変 革 を 実 現 す る た め、直 接 、間 接 に 努力 す る 義 務 を 負 う 。

B. Devall and G. Sessions, Deep Ecology, Gibbs Smith, Pub., 1985, p.70) こ こ に 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー の 基 本 的 な 性 格 が 示 さ れ て い る 。 さ ら に ア ル ネ・ネ ス は 、自 己 の 拡 大 が お の ず か ら の 愛 他 の 実 践 に つ な が る と い っ て い る 。 次 の よ う で あ る 。 「 生 物 と 風 土 と は 二 つ の 事 物 な の で は な い 。 同 様 に 一 個 の 人 間 は 、 人 間 が 全 体 の 場 の な か で の 関 係 的 な 接 合 点 で あ る 、 と い う 意 味 で は 、 自 然 の 一 部 に な っ て い る 。 一 体 化 の 過 程 と は 、 こ の 接 合 点 を 定 め て い る 諸 関 係 が 拡 大 し て 、 ま す ま す 多 く の も の を 含 む 過 程 で あ る 。 自 己 (self)が 自 己(Self)に 向 かっ て 成 長 す る 。」( ア ル ネ ・ネ ス 著 、斎 藤 直 輔 ・関 龍 美 訳『 デ ィ ー プ・エ コ ロ ジ ー と は 何 か ― ― エ コ ロ ジ ー・共 同 体・ラ イ フ ス タ イ ル 』、ヴ ァ リ エ 叢 書 4 、 文 化 書 房 博 文 社 、1997 年 、92 頁 、 以 下 、『 デ ィ ー プ ・エ コ ロ ジ ー 』 と 略 称 ) 「 私 た ち と 他 の 存 在 者 と の 連 帯 に つ い て 私 た ち が も っ と 理 解 す る に つ れ 、一 体 化 は 進 み 、 私 た ち は も っ と 配 慮 す る よ う に な る 。 こ れ に よ り 、 他 の 存 在 の 幸 福 を 喜 び 、 彼 ら に 危 害 が ふ り か か っ た 場 合 に 悲 し む よ う に な る 道 が 開 か れ る 。 私 た ち は 私 た ち 自 身 に と っ て 最 善 で あ る も の を 求 め る 。 し か し 自 己 の 拡 張 を 通 じ て 、 私 自 身 に と っ て の 最 善 が ま た 他 の 存 在 に と っ て の 最 善 に も な っ て い る 。〈 自 分 自 身 の も の で あ る ― 自 分 自 身 の も の で は な い 〉の 区 別 は 、 文 法 上 残 る だ け で 、 感 情 の 面 で は な く な る 。」(『 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー 』279 頁 )

(7)

17

こ の よ う に 、 ア ル ネ ・ ネ ス は 、 自 我 (ego)・ 自 己 ( self)・ 自 己 ( Self: 深 遠 に し て 包 括 的 な エ コ ロ ジ ー 的 自 己 ) と 自 己 了 解 が 拡 大 し 、 そ の 自 然 と 一 体 で あ る 自 己 の 了 解 は 、 お の ず か ら あ ら ゆ る 存 在 の 自 己 実 現 を 喜 ぶ 生 き 方 を 実 現 し て い く と い う 。い ま だ 抽 象 的 で あ り 、 ま た 人 間 は 無 明 ・ 煩 悩 も か か え て い る が ゆ え に 、 そ う し た 自 己 了 解 が 直 ち に 愛 他 の 十 全 な 実 践 を も た ら す と も 言 え な い で あ ろ う が 、 私 は 、 基 本 的 に は 、 こ の よ う な 立 場 を 支 持 し た い 。 そ れ は 、 具 体 的 ・ 数 値 的 な 行 動 の 基 準 、 指 針 を た だ ち に も た ら す も の で は な い と し て も 、 ラ イ フ ス タ イ ル の も っ と も 根 本 に あ る べ き も の で あ ろ う 。 と こ ろ で 、 こ う し た デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー に 対 し て は 、 批 判 も あ る 。 た と え ば 、 ソ ー シ ャ ル・エ コ ロ ジ ー と い わ れ る も の が あ り 、次 の よ う に 主 張 す る 。「 今 日 の 環 境 危 機 の 根 本 に は 「 人 間 に よ る 自 然 支 配 」 と い う 、 人 間 と 自 然 を 切 り 離 し 自 然 を 人 間 に よ る 支 配 の 対 象 と 見 な す 近 代 以 来 の 二 元 論 が あ る が 、こ の 自 然 支 配 の 考 え は 、「 人 間 に よ る 人 間 の 支 配 」と い う 人 間 社 会 の 現 実 に 源 泉 が あ り 、 し た が っ て エ コ ロ ジ カ ル な 危 機 の 根 本 に あ る 自 然 支 配 の 二 元 論 の 克 服 は 、 人 間 社 会 に お け る 階 級 構 造 や 年 齢 、 ジ ェ ン ダ ー 、 人 種 、 身 体 的 条 件 の 差 異 に よ る ヒ エ ラ ル キ ー 構 造 の 廃 棄 に よ っ て は じ め て 可 能 と な る と い う の が 、ブ ク チ ン の「 ソ ー シ ャ ル ・ エ コ ロ ジ ー 」 の 主 張 で あ る 。 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー の よ う に 、 社 会 的 な 視 覚 を 欠 き 、「 反 エ コ ロ ジ カ ル な 社 会 の 不 正 を 道 徳 化 し 個 人 的 な 生 活 や 態 度 の 変 更 を 強 調 す る と 、 そ れ だ け 、社 会 的 な 行 動 に 対 す る 必 要 性 を 曖 昧 に し て し ま う 」こ と に な る と 言 う の で あ る 。 こ の よ う に 、ソ ー シ ャ ル・エ コ ロ ジ ー は 、「 エ コ ロ ジ カ ル な 危 機 を 、一 般 化 さ れ た 人 間 中 心 主 義 に で は な く 、 資 本 主 義 に お い て 最 も 有 害 な 形 で 存 在 し 、 国 家 的 な 社 会 主 義 に お い て も 存 在 す る 権 威 主 義 的 な 社 会 構 造 の 結 果 と し て 説 明 す る 。 自 然 の 無 法 な 破 壊 は 、 特 権 的 な ヒ エ ラ ル キ ー 的 な シ ス テ ム の な か で 働 く 歪 ん だ 社 会 的 な 関 係 を 反 映 し て い る 」 と 言 っ て 、 ヒ エ ラ ル キ ー の な い 社 会 、 人 間 に よ る 人 間 の 支 配 と い う 構 造 の な い 社 会 の 実 現 な し に は 、 人 間 に よ る 支 配 、 自 然 の 抑 圧 と い う 関 係 は な く な ら な い と 見 る 。」(『 現 在 』92∼93 頁) ま た 、 加 藤 尚 武 は 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー の 立 場 に つ い て 、「 人 間 以 外 の 生 命 体 の 繁 栄 、 す な わ ち 豊 富 さ と 多 様 性 は 、 内 在 的 な 価 値 を 持 つ 。 不 可 欠 の 必 要 を 満 た す 場 合 を 除 い て 、 人 間 は こ う し た 豊 富 さ と 多 様 性 を 減 ら す い か な る 権 利 も も た な い 」 と い う も の だ が 、 こ こ で「 不 可 欠 の 必 要 」の 中 身 が 決 め ら れ て い な い の で 、こ の 文 章 は 全 体 と し て 、「 自 然 は 美 し い 。 必 要 も な い の に 利 用 す る な 」 と い う 常 識 を 述 べ て い る に 過 ぎ な い 、 と し て い る 。 さ ら に 、「 デ ィ ー プ・エ コ ロ ジ ー は 趣 味 的 な 人 間 中 心 主 義 批 判 に 過 ぎ な い と い う 評 価 が 定 着 し つ つ あ る 」 と い い 、「「 不 可 欠 の 必 要 」 と は ま ず 持 続 可 能 性 の 確 保 で あ る 」 と も 指 摘 し て い る ( 加 藤 尚 武『 新・環 境 倫 理 学 の す す め 』、丸 善 ラ イ ブ ラ リ ー 、2005、66∼67 頁 、以 下 、『 新 ・ 環 境 倫 理 学 』 と 略 称 )。 ま た 、「 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー と は 、 お お よ そ の 所 で は 、 人 間 の た め の 自 然 保 護 で は な く て 自 己 目 的 と し て の 自 然 保 護 を 主 張 す る 立 場 で 、 経 済 開 発 と 自 然 保 護 の 両 立 を 拒 絶 す る 立 場 と 考 え て お い て い い だ ろ う 」( 加 藤 尚 武『 現 代 を 読 み 解 く 倫 理 学 』、 丸 善 ラ イ ブ ラ リ ー 、1996 年 、 169 頁 )「 自 然の 生 命 の 内 在 的 な 価 値を 認 め る の に 、 人 は デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ス ト に な る 必 然 性 は な い 。 そ の 方 向 を さ ら に 強 化 す る た め に デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー が 有 益 で あ る と い う 主 張 で す ら 支 持 で き な い 」( 同 書182 頁 ) た だ し 、 谷 本 光 男 は 、 ネ ス が 、 狭 い 自 我 か ら 自 然 や 他 者 と 一 体 化 し た 拡 大 さ れ た 自 己 の 立 場 に 立 つ こ と に よ っ て 、 お の ず か ら 環 境 保 護 に 取 り 組 む と 主 張 し て い る こ と に 対 し 、 こ

(8)

の よ う な ネ ス の 思 想 に 全 面 的 に 賛 成 す る こ と は で き な い と し つ つ も 、「 し か し 、環 境 問 題 で 問 わ れ て い る の は 、 わ れ わ れ の 「 自 己 」 の あ り 方 で あ る と い う ネ ス の 指 摘 は 、 正 し い よ う に 思 わ れ る 。 お そ ら く 、 環 境 倫 理 学 の よ う に 新 し い 軌 範 を 持 ち 出 す だ け で は 、 わ れ わ れ が 環 境 を 守 る 行 動 を 取 る う え で 不 十 分 だ と 思 わ れ る か ら で あ る 。 い っ た い 、 わ れ わ れ は 何 者 な の か 、 自 然 の 一 部 で あ る わ れ わ れ と は 何 者 な の か 、 環 境 が 守 れ な い 「 自 己 」 と は い っ た い 何 者 な の か 、 そ う い う 問 い を 自 ら に 問 う こ と が 必 要 な の で は な い だ ろ う か 。 環 境 問 題 に お い て は 、 い か な る 経 済 シ ス テ ム を 構 築 す る か 、 合 意 形 成 の 仕 方 と し て ど の よ う な も の が あ り う る の か 、 ど の よ う な 軌 範 に 基 づ い て 行 為 す べ き か 、 と い っ た こ と は も ち ろ ん す べ て 重 要 な 問 題 で あ る が 、 そ れ ら 以 上 に 何 よ り も 「 自 己 の 」 あ り 方 が 問 わ れ て い る よ う に 思 わ れ る の で あ る 」と 述 べ て い る( 谷 本 光 男『 環 境 倫 理 の ラ デ ィ カ リ ズ ム 』、世 界 思 想 社 、2003 年 、233∼234 頁 )。 私 も こ の意 見 に 組 み す る 者 で あ る 。 4 、 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ の 用 例 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ は 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー に 吸 収 さ れ た と の 見 方 に ち な み 、 上 記 に は 主 に デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー を め ぐ る 議 論 を 見 た 、 次 に 、 む し ろ エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ の 語 が 用 い ら れ て い る 例 も あ り 、 そ の 例 に つ い て 見 て お き た い 。 前 述 の よ う に 、 ア ル ネ ・ ネ ス は 自 分 の 思 想 を エ コ ソ フ ィ と し て 語 り 、ecosophyT と し て 説 い た 。そ の T は 、ネ ス の 山 小 屋Tvergastein の 頭 文 字 を と っ た も ので 、ネ ス は 、各 人 は各 人 の エ コ ソ フ ィ を 持 つ べ き だ と 考 え て い た 。ecosophyT に つ い て は 、Ecolog y,Community and Lifstyle, Cambridge Univ. P r.,1989.に お い て 、詳 し く 述 べ ら れ て い ると い う(『 ノ ー ト 』第 5 章 「 環 境 と 共 生 」 注 9 参 照 )。 な お 、 小 坂 は ま た 、「 ∼ エ コ ロ ジ ー の 哲 学 と し て エ コ ソ フ ィ (ecosophy) と も 呼 ば れ る べ き も の で あ る 。 す な わ ち 、 生 態 学 的 な 調 和 な い し 均 衡 に か か わ る 哲 学 で あ る 」 と も 言 っ て い る (『 ノ ー ト 』140 頁 )。 間 瀬 啓 允 に は 、『 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ 提 唱 』( 法 蔵 館 、1991 年 )の 著 書 があ る 。間 瀬 啓 允は 、 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ を「 環 境 哲 学 」に ル ビ を 振 る し か た で 使 っ て お り(29 頁 等 )、「 要 す る に 環 境 問 題 を と り あ げ 、 そ こ に ま つ わ る 種 々 の 基 本 的 な 問 題 を 提 起 す る 哲 学 だ 、 と 私 な り に 定 義 を 与 え て い た 」(12 頁 )、「 私 自 身 の 問 題意 識 は 、 と く に 自 然 と人 間 の あ い だ に お け る 調 和 と い う 点 に あ る 。生 物 学 的 な 用 語 で い え ば 、「 エ コ シ ス テ ム に お け る 自 然 と 人 間 の 共 生 」 と い う こ と に な る だ ろ う 。 生 き て い る 大 き な 自 然 と 人 間 を 包 む 生 命 体 の 相 互 連 関 、 相 互 依 存 性 と い う こ と を 認 識 す る 有 機 体 論 的 な 哲 学 と い う も の が 、 こ れ ま で 以 上 に 強 く 求 め ら れ る こ と に な る で あ ろ う 、 と 私 は 思 う の で あ る 。 そ こ で 、 私 自 身 が ひ そ か に 目 論 む 環 境 哲 学 ( エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ) は 、 ひ と ま ず こ こ で は 、 自 然 に 対 す る 人 間 の 適 正 な 関 係 と 、 人 間 の 担 う べ き 責 任 を テ ー マ に し た 哲 学 で あ る と 言 っ て よ い か と 思 う 。 そ こ で の 主 要 な 課 題 は 、 第 一 に 、 自 然 と 人 間 を 二 元 論 的 に 理 解 し よ う と す る 立 場 に 対 し て 鋭 く 批 判 的 な 考 察 を 与 え る こ と で あ り 、 第 二 は 、 自 然 と 人 間 の あ い だ に 成 り 立 ち う る 倫 理 の 基 礎 づ け を 与 え る こ と で あ る 」(29∼30 頁 )、「 さ て 、 そ こ で 、エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ の 視点 か ら 眺 め て み る と 、 今 、 必 要 と さ れ て い る の は 、 次 の 三 点 で は な い か と 思 う の で あ る 。 第 一 は 、 自 然 を 支 配 す

(9)

19 る と い う 考 え を 捨 て て 、 自 然 と の 共 生 と い う 考 え 方 に 転 ず る こ と 。 第 二 は 、 自 然 に お け る 生 命 の 位 置 を 見 定 め て 、 全 体 に エ コ シ シ テ ム 的 な 考 え に 転 じ る こ と 。 そ し て 第 三 は 、 質 を 重 ん じ る 生 活 、 金 で は 買 え な い 非 物 質 的 な 価 値 を 尊 重 す る 生 活 に 転 じ る こ と で あ る 」(31 頁 )、 等 と 述 べ て い る 。 間 瀬 啓 允 は 、1996 年 に 『 エ コ ロ ジ ー と 宗 教 』を 著 し て い る が 、 ここ で も 、「 そ こ で 、 目 論 む 私 の 哲 学 、〈 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ 〉= 暮 ら し の な か の 哲 学 、の 観 点 か ら 眺 め て み る と 、い ま 必 要 と さ れ て い る の は 、次 の 三 点 に 要 約 で き る の で は な い か と 思 う 」( 間 瀬 啓 允『 エ コ ロ ジ ー と 宗 教 』「 叢 書 現 代 の 宗 教 」10、 岩 波書 店 、1996 年、99 頁 ) とい っ て 、 今 の 3 点 を あ げ て い る 。 な お 、 本 書 で は 、 与 え ら れ た タ イ ト ル を 尊 重 し た の か 、 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ の 語 は 、 あ ま り 使 っ て い な い 。 間 瀬 啓 允 は 、 そ の 後 、 ヘ ン リ ッ ク ・ ス コ リ モ フ ス キ ー 著 の 『 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ― ― 2 1 世 紀 文 明 哲 学 の 創 造 』 を 、 矢 嶋 直 規 と と も に 訳 出 し た ( 法 蔵 館 、1999 年 )。 そ の エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ と は 、 機 械 論 的 な 見 方 を 否 定 し た 、 分 析 的 ・ 経 験 的 な 世 界 理 解 の 限 界 に 挑 む 、 多 く の 社 会 的 ・ 倫 理 的 ・ エ コ ロ ジ ー 的 ・ 認 識 論 的 ・ 存 在 論 的 な 問 題 を 解 明 し う る よ う な 、 新 た な 概 念 的 ・ 哲 学 的 な 枠 組 を 生 み 出 そ う と し た も の で あ る 。 ヘ ン リ ッ ク ・ ス コ リ モ フ ス キ ー は 、 そ の 特 徴 に 、 現 代 哲 学 と 対 比 さ せ つ つ 、12 項 目 あ げ て い る 。そ れ ら 12 項 目 は 、 曼 荼 羅 の よ う に 円 環 的 に あ い 関 係 し あ っ て い る と 説 か れ て も い る 。以 下 、そ の12 項 目 を あ げ て み よ う ( 同 書56∼57 頁 の 図 を 参 照 の こ と)。 〈 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ 〉 〈 現 代 哲 学 〉 生 命 中 心 言 語 中 心 関 与 的 客 観 的 ( 離 脱 的 ) 霊 的 に 生 き て い る 霊 的 に 死 ん で い る 包 括 的 細 切 れ ( 分 析 的 ) 知 恵 を 追 求 す る 情 報 を 追 求 す る 環 境 や エ コ ロ ジ ー の 問 題 に 意 識 的 環 境 や エ コ ロ ジ ー の 問 題 に 忘 却 的 「 生 活 の 質 」 の 経 済 に 関 係 す る 物 質 的 進 歩 の 経 済 に 関 係 す る 政 治 に 目 を 向 け る 政 治 に 無 関 心 社 会 的 な 関 心 が 深 い 社 会 的 に 無 関 心 個 人 の 責 任 に つ い て 声 を あ げ る 個 人 の 責 任 に つ い て 押 し 黙 る 超 物 質 的 な 現 象 に 寛 容 超 物 質 的 な 現 象 に 非 寛 容 健 康 に 配 慮 す る 健 康 に 配 慮 し な い た だ し 、 私 の 見 た と こ ろ 、 理 論 の 統 一 的 な 体 系 性 や 具 体 的 な 主 張 に は 欠 け る よ う に 思 わ れ る 。 環 境 倫 理 学 ・ エ コ ロ ジ ー の 歴 史 に お い て も 、 ど れ ほ ど 重 視 さ れ た の か 、 今 の 私 に は 不 明 で あ る 。 ま た 、尾 関 周 二 編『 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー の 現 在 ― ― 自 然 と 人 間 の 対 立 を こ え て 』が 、2001 年 に 大 月 書 店 か ら 刊 行 さ れ て い る 。こ の 本 は 、『 環 境 哲 学 の 探 求 』( 大 月 書 店 、1996 年 )の 続 編 で 、そ れ は 、「 環 境 倫 理 学 の 個 々 の テ ー マ に 限 定 し た 問 題 を 議 論 す る 段 階 か ら 総 合 的 に

(10)

一 つ の 環 境 哲 学 、 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー の 構 築 へ と 展 開 す る 必 要 性 が あ る 」 と い う 問 題 意 識 に 沿 っ た も の で 、特 に そ の 続 編 に あ た る 上 記『 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー の 現 在 』の 序 章 、「 環 境 倫 理 学 か ら エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー へ 」 に お い て は 、 編 者 に よ っ て 次 の よ う に 記 さ れ て い る 。 「 私 と し て は 、「 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー 」と い う 言 葉 は 、「 環 境 哲 学 」と い う 意 味 を 含 み つ つ 、 も う 少 し 広 い ニ ュ ア ン ス の あ る 良 い 言 葉 だ と 思 っ て い る だ け に 、 こ の 欠 落 ( 社 会 哲 学 的 視 点 が 全 く 欠 落 し て い る こ と ・ 筆 者 注 ) は 残 念 に 思 わ れ る の で あ る 。 本 書 の 著 者 た ち は 、 環 境 と 生 命 に 関 し て 哲 学 的 議 論 を 展 開 す る も の と し て の 「 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー 」 に は 、 社 会 哲 学 的 視 点 が 不 可 欠 で あ る と 考 え て お り 、 こ の 点 は ま た ス コ リ モ フ ス キ ー な ど 「 エ コ フ ィ ロ ソ フ ィ ー 」を 含 む 同 名 の 本 か ら 大 き く 区 別 さ れ る 点 で あ ろ う 。し た が っ て 、こ の 本 で は 、 倫 理 学 問 題 ( と く に 自 然 中 心 主 義 か 人 間 中 心 主 義 か を 巡 っ て の 論 点 ) と 社 会 哲 学 的 問 題 の 両 者 の つ な が り を 念 頭 に お き つ つ 種 々 の 仕 方 で 環 境 問 題 の 哲 学 的 諸 論 点 を 掘 り 下 げ る こ と を 試 み た 。」(『 現 在 』3 頁 )編 者 は 、倫 理 学 や 哲 学 は 環 境 問 題 の 解 決に 役 立 つ の か ま っ た く わ か ら な い と す る 環 境 政 策 ・ 環 境 経 済 の 研 究 者 の 意 見 に 対 し 、 環 境 問 題 に 対 し て は 、 倫 理 学 的 に 対 応 す る だ け で も 、 社 会 経 済 的 に 問 題 を 還 元 す る だ け で も 不 十 分 で 、 両 者 の 内 的 連 関 を 踏 ま え た 哲 学 的・総 合 的 な ア プ ロ ー チ が 重 要 で あ る と し 、上 述 の 二 極 化 の 状 況( 政 治 ・ 経 済 研 究 と 倫 理 ・ 思 想 研 究 の 乖 離 、 筆 者 注 ) に 対 し 哲 学 の 媒 介 の 有 効 性 を 訴 え て い る (4 頁 )。 ま た 、 同 書 中 の 自 身 の 論 文 に つ い て 、「 第 一 部 で の 人 間 中 心 主 義 と 自 然 中 心 主 義 を め ぐ る 論 争 の 意 味 を 問 う こ と を 通 じ て 第 二 部 の 社 会 の あ り 方 へ の 問 い か け へ と つ な げ る 。 環 境 倫 理 学 の 論 争 の 意 義 を 認 め つ つ も 、 そ の 背 景 に 人 間 と 自 然 、 事 実 と 価 値 の 二 元 論 と い う 近 代 の パ ラ ダ イ ム が あ り 、 こ の 対 立 の 倫 理 学 的 視 点 は 、 近 代 以 降 形 成 さ れ た 、 自 己 運 動 す る 経 済 ・ 政 治 シ ス テ ム と 生 命 的 自 然 ・ 生 活 世 界 の 対 立 と い う 社 会 哲 学 的 視 点 へ と 関 係 付 け ら れ な け れ ば な ら な い の で あ る 」 と い う こ と を 論 じ た も の と ま と め て い る (10 頁 )。 な お 、同 書 に 含 ま れ て い る 河 野 勝 彦「 環 境 哲 学 の 構 築 に む け て 」に は 、1995 年 に 出 た『 環 境 の 倫 理 学 』(The Ethics of Environment, Edited by Andrew Brennan, Aldersh o t, 1995)の 序 文 に お い て 、編 者 の ブ レ ナ ン が 、こ の 3 0 年 を 振 り 返 り 、「 過 去 二 十 年 ほ ど の 間 、議 論 は 自 然 物 の 内 的 価 値 ( そ れ が あ る と し た 場 合 ) の 問 題 や 、 人 間 が 自 然 の 一 部 か そ れ と も 自 然 か ら 切 り 離 さ れ て い る か ど う か 、 ま た 、 道 徳 的 に 尊 重 さ れ る 地 位 を も つ も の を 評 価 す る 際 に イ ン タ レ ス ト や 感 情 、 目 標 を 目 指 す 振 る 舞 い の 役 割 に 焦 点 が 合 わ さ れ て き た が 、 こ れ ら の 問 題 は 、 哲 学 や 世 界 観 を 構 成 す る 他 の 部 門 と の 結 合 を は か る こ と な し に は 充 分 に 扱 わ れ る こ と は で き な い 」 と 述 べ て 、 人 間 ・ 自 然 ・ 価 値 を リ ン ク す る 「 環 境 哲 学 」 の 必 要 を 説 い た と こ と が 紹 介 さ れ て い る 。 さ ら に ブ レ ナ ン 自 身 は 、 環 境 哲 学 ( エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ か ど う か は 不 明 ・ 筆 者 注 ) の 4 つ の 構 成 要 素 を 述 べ て い る こ と を 紹 介 し て い る 。 ① 自 然 と は 何 か、 自 然 は い か な る 種 類 の 対 象と 過 程 か ら な っ て い る かに つ い て の 理 論 、 ② 人 間 の 生 活 条 件 や そ れ が 直 面 す る 諸 問 題 な ど 、 人 間 の 生 活 に つ い て の 全 体 的 な 見 通 し を 与 え て く れ る 人 間 存 在 に つ い て の 理 論 、 ③ 上 記 二 つ の 点と 関 連 し た 価 値 論 お よ び 人 間の 行 為 の 評 価 に つ い て の説 明 、 ④ 全 体 的 な 理 論 の な か で な さ れ る 主 張 が 、 確 証 さ れ る に せ よ 排 除 さ れ る に せ よ 、 い か な る 基 準 に よ っ て テ ス ト さ れ る べ き で あ る か を 示 す 方 法 論 」(p.xvii)

(11)

21 で あ る 。河 野 勝 彦 に よ れ ば 、「 つ ま り 、ブ レ ナ ン の 考 え て い る 環 境 哲 学 は 、人 間 と は な ん で あ る か 、 自 然 と は な ん で あ る か を 明 ら か に し 、 両 者 に 関 係 す る 価 値 論 と そ の な か で の 人 間 の 行 為 の 評 価 基 準 を 確 立 す る こ と か ら な っ て い る と 見 ら れ る 。 ブ レ ナ ン は 、 こ れ ま で の 諸 議 論 は 、 上 記 の 四 つ の 構 成 要 素 を 断 片 的 に し か 対 象 と し て こ な か っ た が 、 今 や 総 合 的 な 理 論 構 築 が 求 め ら れ る と 言 う の で あ る 」 と い う (『 現 在 』87∼88 頁 ) 以 上 、 管 見 に と ま っ た 「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」 の 内 容 を あ げ て お い た 。 こ れ ま で の 歴 史 を 見 る と 、 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ は 、 エ コ ロ ジ ー を ふ ま え た 人 間 存 在 の 自 覚 お よ び 生 き 方 を 究 明 し 論 じ る も の と い え よ う 。そ れ は 、個 人 を 自 然 な い し 環 境 と の 相 関 関 係 の な か で 捉 え 、 ま た 未 来 の 人 間 と の 関 係 に お い て も 考 察 し 、 現 在 の 人 間 の あ る べ き 生 き 方 を 導 出 し よ う と す る も の と い え る か と 思 う 。 5 、 東 洋 大 学 に お け る 「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」 の 構 想 東 洋 大 学 で は 、 東 洋 大 学 「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」 学 際 研 究 イ ニ シ ア テ ィ ブ (TIEPh)を組 織 し て 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ 学 連 携 研 究 機 構 (IR3S)に 協 力 機 関 とし て 参 加 す る こ と に な っ た 。 そ こ で わ れ わ れ は 、 わ れ わ れ の め ざ す エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ の 構 想 を 、 ひ と ま ず ま と め て お く 必 要 が あ る 。 初 め に 、サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ と い う 言 葉 は 、1987 年 に 発 表 さ れ た 国連 の『 ブ ル ン トラ ン ド 委 員 会 報 告 書 』("Our Common Future" 邦 訳『 地 球 の 未 来 を 守 る た めに 』大 来 佐 武 郎 監 訳 、 福 武 書 院 、1987 年 )によ っ て 、確 立 さ れ た こ と にな っ て い る そ う で ある 。こ の 報 告 書 か ら 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ の 定 義 を 、 加 藤 尚 武 が 次 の よ う に 導 出 し て い る 。

① 持 続 可 能 的 な 開 発 と は 、 未 来 の 世 代 が 自 分 た ち 自 身 の 欲 求 を 満 た す た め の 能 力 を 減 少 さ せ な い よ う に (without compromising the ability of future generation) 現 在 の 世 代 の 欲 求 を み た す よ う な 開 発 で あ る 。 ② 持 続 的 な 開 発 は 、 地 球 上 の 生 命 を 支 え て い る シ ス テ ム ― ― 大 気 、 水 、 土 、 生 物 ― ― を 危 険 に さ ら す (endanger) も の で あ っ て は な ら な い 。 ③ 持 続 的 開 発 の た め に は 、 大 気 、 水 、 そ の 他 自 然 へ の 好 ま し く な い 影 響 を 最 小 限 に 抑 制 (minimized) し 、 生 態 系 の 全体 的 な 保 全 を 図 る こ と が 必 要 で あ る。 ④ 持 続 的 開 発 と は 、 天 然 資 源 の 開 発 、 投 資 の 方 向 、 技 術 開 発 の 方 向 付 け 、 制 度 の 改 革 が 一 つ に ま と ま り 、 現 在 及 び 将 来 の 人 間 の 欲 求 と 願 望 と を 高 め る (enhance both current and future potential) よ う に 変 化 し て いく 過 程 を 言 う 。

(『 新 ・ 環 境 倫 理 学 』19∼20 頁 ) ま た 、 ハ ー マ ン ・ デ イ リ ー ( Harman Daly) は 、「 持 続 可 能 な 開 発 」 に つ い て 、 次 の よ う に 言 っ て い る 。

① 再 生 可 能 資 源( 土 壌・水・森 林・魚 な ど )の 利 用 に 関 し て は、そ の 再 生 速 度 を 超 え て は な ら な い こ と 。

(12)

② 再 生 不 能 資 源( 化石 燃 料・鉱 石・深 層 地 下 水 な ど )の 利 用 に 関 し ては 、再 生 可 能 な 資 源 を 持 続 可 能 な ペ ー ス で 利 用 す る こ と で 代 替 で き る 速 度 を 超 え て は な ら な い こ と 。 ③ 汚 染 物・廃 棄 物 の 排出 に 関 し て は 、環 境 が そ れ を 吸 収・浄 化 す る こ と の でき る 速 度 を 超 え て は な ら な い こ と 。 ( 加 藤 尚 武 編 『 環 境 と 倫 理 ― ― 自 然 と 人 間 の 共 生 を 求 め て 』、 有 斐 閣 ア ル マ 、 1998 年 、 191∼ 2 頁 ) つ ま り 、 現 在 だ け で な く 、 未 来 世 代 の 人 間 の 欲 求 も が 満 た さ れ る よ う に 、 極 力 、 生 態 系 ( 自 然 シ ス テ ム ) に 悪 い 影 響 が 出 な い よ う に 努 力 し て い く と い う こ と で あ ろ う 。 そ の こ と を 、 地 球 ・ 社 会 シ ス テ ム と し て 実 現 し な け れ ば な ら な い と い う こ と で あ る 。 た だ し 、 や は り 社 会 シ ス テ ム 全 体 の 改 革 の た め に は 、 本 来 、 人 間 が 生 き る と い う こ と は ど う い う こ と な の か 、 そ の 自 覚 が 根 本 に な る と 思 わ れ る 。 地 球 の 総 体 か ら 、 個 人 の 生 き 方 が お の ず か ら 規 制 さ れ る と い う 方 面 と と も に 、 個 人 の 内 発 的 な 生 の 選 択 が 地 球 の 未 来 を 決 定 し て い く と い う こ と も あ る に 違 い な い 。 そ う だ と す れ ば 、 人 間 は 本 来 、 何 を め ざ し 、 何 を 求 め て 生 き る べ き な の か が 問 わ れ る べ き で あ ろ う 。 そ こ で 、 今 日 人 々 は 、 環 境 問 題 に 関 し 、 以 下 の よ う な 課 題 を 共 有 し て い る こ と に な る の で は な か ろ う か 。 ① 科 学 技 術 に よる 解 決 ( 省 エ ネ ・ 無 公 害 技 術等 の 開 発 ) ② 社 会 シ ス テ ムに よ る 解 決 ( 循 環 型 社 会 へ の移 行 ) ③ ラ イ フ ス タ イル の 転 換 に よ る 解 決 ( 人 間 の欲 望 の 抑 止 。 行 動 レ ベ ル) ④ 人 間 観 ・ 世 界観 に よ る 解 決 ( 生 き る 目 標 の自 覚 。 思 想 レ ベ ル ) お そ ら く 、 自 然 破 壊 を 導 い て き た 科 学 ・ 技 術 は 悪 で あ り 、 人 間 は そ れ を 捨 て て 古 代 の 生 活 に 戻 る べ き だ と い う 議 論 は で き な い 。 問 題 は 、 科 学 ・ 技 術 を ど の 方 向 で 用 い て い く か で あ り 、IR3S に お い て は 、こ れ ら を 、地 球 シ ス テ ム・ 社 会 シ ス テ ム・ 人 間 シ ス テ ム の 3 つ の シ ス テ ム の 問 題 と し て 把 握 し 、 そ の 再 編 ・ 統 合 に よ っ て 解 決 し よ う と し て い る 。 東 洋 大 学 は 、 主 に 人 文 ・ 社 会 分 野 か ら こ れ に 参 加 し て お り 、 他 機 関 の 種 々 の 研 究 と 連 携 し て い く と し て も 、 と り わ け 人 間 シ ス テ ム に か か わ る 領 域 で 貢 献 し て い く こ と に な る 。 そ の 際 、 新 し い 、 わ れ わ れ の め ざ す べ き エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ と は 、 概 略 、 ど の よ う な も の か に つ い て 、 私 な り に 検 討 し て み た い 。 そ も そ も 「 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ 学 」 に 対 す る 哲 学 ・ 思 想 的 研 究 分 野 の 課 題 と し て 、 一 般 的 に は 、「 環 境 倫 理 学 」(Environmental Ethics)の問 題 が 最 大 の 課 題 であ ろ う 。「 環 境 倫 理 学 」 が 扱 う 問 題 は 、 お お よ そ 3 点 に 集 約 さ れ る と い わ れ る 。 す な わ ち 、 ① 自 然 の 生 存 権の 問 題( 単 に 人 格 の み な ら ず 自 然物 も ま た 最 適 の 生 存へ の 権 利 を も つ )、 ② 世 代 間 倫 理 の問 題 ( 現 在 世 代 は 未 来 世 代 の生 存 と 幸 福 に 責 任 を も つ )、 ③ 地 球 全 体 主 義( 決 定 の 基 本 単 位 は 、 個 人 では な く て 地 球 生 態 系 そ のも の で あ る ) の 3 点 で あ る 。〔 加 藤 尚 武 氏 は ま た 、 ① 「 地 球 有 限 主 義 ― 外 部 経 済 の 内 部 化 」、 ② 「 世 代 間 倫 理 ― 通 時 的 責 任・持 続 可 能 性 の 導 入 」、③「 自 然 物 の 生 存 権 ― 究 極 の 法 益 の 拡 大 」と い う 仕 方 で 表 現 し て も い る ( 加 藤 尚 武 『 応 用 倫 理 学 入 門 ― 正 し い 合 意 形 成 の 仕 方 』、 晃 洋 書 房 、 2001 年 、64~70 頁 )。〕 エ コ ・ フ ィロ ソ フ ィ は 、 フ ィ ロ ソ フ ィ で あ る以 上 、 こ う し た 問 題に 対 し て 、 単 に 技 術 的 、 プ ラ グ マ テ ィ ッ ク に ア プ ロ ー チ す る の み で な く 、 人 間 存 在 や 自 然 存

(13)

23 在 の 存 在 論 的 な 構 造 の 究 明( 生 態 学 で も あ る )、要 は 自 然 と は 何 か 、人 間 と は い か な る 存 在 か 、 の 究 明 を ふ ま え て 、 そ こ か ら 考 察 し て い く も の で な け れ ば な ら な い 。 そ れ は 、 た と え ば 政 策 合 意 等 に た だ ち に 結 び つ く も の で は な い か も し れ な い が 、 そ の 自 覚 ・ 了 解 が あ っ て は じ め て 、 人 々 の 内 発 的 な 行 動 も 確 立 さ れ る と 考 え ら れ る か ら で あ る 。 従 来 、 環 境 問 題 を め ぐ る 哲 学 ・ 思 想 の 世 界 で は 、 キ リ ス ト 教 の 人 間 の 自 然 に 対 す る 優 位 の 思 想 が 告 発 さ れ 、 生 命 中 心 主 義 が 喧 伝 さ れ た り 、 キ リ ス ト 教 に お い て は 神 に よ る 管 理 委 託 ( ス チ ュ ワ ー ド シ ッ プ ) の 立 場 が 言 わ れ た り し た 。 そ こ で は 、 東 洋 の コ ス モ ロ ジ ー に 大 き な 期 待 が か け ら れ た り も し た の で あ っ た 。 し か し 、 東 洋 の 思 想 の 、 環 境 倫 理 学 等 の 文 脈 に お い て の 詳 細 な 検 討 は 、 い ま だ 専 門 家 に よ っ て 十 分 に な さ れ て お ら ず 、 学 問 的 な 究 明 が 遂 行 さ れ た と は 言 い が た い 。 こ こ に 、 も う 一 度 、 東 洋 の 人 間 観 ・ 世 界 観 を 掘 り 下 げ て 、 た と え ば 自 然 の 生 存 権 の 問 題 に 新 た な 光 を あ て る こ と の 可 能 性 は 、 十 分 あ る で あ ろ う 。 こ の 問 題 は 、 い っ て み れ ば 、 環 境 と の 共 生 を ど の よ う に 実 現 す る か の 思 想 的 基 盤 を 、 十 分 な 論 理 性 を も っ て 確 立 す る こ と で あ る 。 ま た 、 現 世 代 の 人 間 が 、 未 来 世 代 の 人 間 に 対 し て な ぜ 責 任 を 負 う の か に つ い て 、 そ の 論 理 を い か に 樹 立 す る の か に つ い て も 、 さ ま ざ ま に 論 じ ら れ て き た 。 互 恵 的 で は な い 、 一 方 的 な 関 係 に お い て 、 責 任 は ど う 発 生 す る の か と い う 問 題 で あ る 。 お そ ら く こ の 問 題 は 、 異 時 的 の み な ら ず 同 時 的 に も 、 見 知 ら ぬ 他 者 に 対 す る 関 係 は ど う あ る べ き な の か と い う 問 題 と 相 似 的 で も あ ろ う 。 こ れ は 、 人 間 と 人 間 の 共 生 の 問 題 と い え る 。 あ る い は 、 未 来 の 自 然 環 境 に 対 す る 責 任 の 問 題 も 含 ん で い る の か も し れ な い 。 今 の 問 題 は 、 純 粋 に 倫 理 学 的 問 題 で あ る と 同 時 に 、 そ も そ も 責 任 ・ 義 務 と い う 立 場 の み が 人 間 の 行 動 規 範 な の か 、 愛 や 慈 悲 の 思 想 は 無 力 な の か 、 と い う 議 論 を も 招 く と 思 わ れ る し 、 さ ら に 思 想 レ ベ ル で の 議 論 を 超 え て 、 行 動 や そ の 軌 範 に 対 す る 人 間 の 意 識 の 実 態 を 解 明 し 、 そ こ か ら 適 切 な 通 路 を 切 り 開 く こ と も 重 要 で あ ろ う 。 特 に 、 欧 米 で 環 境 倫 理 の 議 論 が 先 行 し て い る 状 況 に か ん が み 、 東 洋 の 思 想 的 遺 産 の 活 用 が 大 事 で あ る と と も に 、 ア ジ ア 各 国 住 民 の 現 実 を 映 す 意 識 調 査 は き わ め て 貴 重 な 資 料 と な る は ず で あ る 。 さ ら に 、 地 球 生 態 系 資 源 が 有 限 で 、 我 々 が こ の 制 約 の な か で 行 動 し な け れ ば な ら な い と き 、 今 日 の 社 会 シ ス テ ム の 改 修 案 を 構 想 し て い く 際 に 、 自 然 と の 調 和 を 重 視 し つ つ 生 活 し か つ 社 会 の 運 営 を 行 な っ て き た 伝 統 的 な 知 恵 を 顧 み る こ と は 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ の 実 現 に 大 き く 寄 与 す る に 違 い な い 。 そ の よ う に 、 個 々 の 問 題 の 対 症 療 法 を 積 み 重 ね る の で は な く 、 地 球 ・ 社 会 の シ ス テ ム の デ ザ イ ン を 、 伝 統 的 思 惟 方 法 を な ん ら か 加 味 し つ つ 哲 学 的 観 点 か ら 進 め る こ と は 、 時 代 の 緊 急 の 要 請 に 応 え る も の と 考 え る 。 な お 、 今 日 、 全 体 の 問 題 か ら 個 人 の 行 動 に 制 約 を 加 え る こ と が 重 要 だ と し て も 、 そ の 課 題 を 受 け 止 め 、 主 体 的 に 行 動 す る に は 、 全 体 と 個 人 の 間 の 関 係 に 対 す る 深 い 洞 察 と 了 解 が な け れ ば な ら な い 。 シ ス テ ム デ ザ イ ン を 構 想 す る に あ た っ て も 、 そ の 方 向 性 は 、 単 に 技 術 的 ・ プ ラ グ マ テ ィ ッ ク な 観 点 の み に よ っ て な さ れ る べ き で な く 、 人 間 と 自 然 と に 対 す る 深 い 理 解 を 根 底 に 持 た な け れ ば な ら な い 。 今 日 に お い て は 、 そ こ に 、 埋 も れ て い る 東 洋 の 思 想 の 再 検 討 が 配 慮 さ れ る べ き で あ る 。 こ う し て 、 わ れ わ れ の 東 洋 大 学 「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」 学 際 研 究 イ ニ シ ア テ ィ ブ に お い て は 、① 自 然 観 探 求 ユ ニ ッ ト( 仏 教 学 専 攻・中 国 哲 学 専 攻 )、② 価 値 意 識 調 査 ユ ニ ッ ト( 社

(14)

会 心 理 学 専 攻 )、 ③ 環 境 デ ザ イ ン ユ ニ ッ ト ( 哲 学 専 攻 )、 の 3 つ の 研 究 ユ ニ ッ ト を 置 き 、 各 ユ ニ ッ ト で は 、 順 に ① 自 然 と 人 間 に 関 す る 東 洋 の 知 と エ コ ロ ジ ー の 研 究 、 ② ア ジ ア 諸 地 域 に お け る サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ に 関 す る 価 値 意 識 の 究 明 、 ③ 環 境 倫 理 を 含 む 哲 学 的 環 境 デ ザ イ ン の 追 究 を 研 究 す る こ と に し て い る 。 そ れ ら は 、 期 せ ず し て 、 今 日 、 環 境 倫 理 学 上 の 問 題 と し て あ げ ら れ て い る 上 記 の 課 題 に 対 応 し た も の と な っ て も い る の で あ る 。 今 一 度 、 わ れ わ れ の エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ の 研 究 課 題 を あ げ れ ば 、 ① 自 然 観 ・ 人 間 観 の 新 た な 究 明 、 ② 価 値 意 識 の 解 明 、 ③ シ ス テ ム ・ デ ザ イ ン の 構 想 と な る が 、 ① と ② は 、 ③ の 基 盤 と な り 、 ② と ③ は 、 ① の 有 効 性 の 検 証 基 準 と な り 、 ③ と ① と を 、 ② が 効 果 的 に 結 び つ け る こ と に な る 。 ② の 解 釈 に ① が 有 効 に な り 、 ③ の 発 想 に ② が 修 正 を 加 え 、 ① の 観 点 に ③ が 光 を 当 て る 。三 者 は 有 機 的 関 連 を 持 ち つ つ 、全 体 と し て 、IR3S が 構 想 す る 人 間 シス テ ム の 改 編 に 貢 献 で き る エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ を 確 立 す る こ と を 目 標 と す る 。 し か も 、 東 洋 大 学 で は 、 従 来 、「 共 生 学 」 の 研 究 を 続 け て き た が 、「 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ 学 」 の 構 築 に 参 加 す る こ と に な っ て 、 そ の 「 共 生 学 」 を 基 盤 と し た 「 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ 学 」の 構 想 を 展 開 す る こ と と し 、そ の 思 想 的・学 問 的 営 為 に 対 し て 、「 エ コ・フ ィ ロ ソ フ ィ 」 と 名 づ け た の で あ っ た 。 で は 、 こ の 「 共 生 」 を 基 盤 と す る 立 場 と は 、 ど の よ う な も の と 考 え ら れ よ う か 。 ま ず 、「 共 生 」と い う こ と に つ い て 、た と え ば 人 間 と 人 間 と の 共 生 と は 、ど の 人 も 自 己 実 現 が 可 能 な 状 況 を め ざ す 中 で 、 自 立 し た 者 同 士 が し か も 連 帯 し て よ り よ い 社 会 を 追 求 し て い く こ と 、 と い え る か と 思 う 。 そ の 際 、 人 と 人 と が 対 立 し た 関 係 に 立 つ 場 合 も あ る か も し れ な い 。そ れ で も 、ど ち ら か が ど ち ら か を 一 方 的 に 支 配 し た り 抑 圧 し た り す る の で は な い 、 両 者 と も に 自 己 実 現 を 果 た す こ と が 可 能 な 関 係 の 創 造 が 望 ま れ る 。 こ こ に 、 共 生 の あ り か た が 実 現 す る こ と に な ろ う 。 環 境 と の 共 生 も 、 こ れ に な ぞ ら え て 理 解 す る こ と が で き る 。 環 境 と の 共 生 は 、 人 間 だ け が 生 き て 環 境 が 死 ぬ の で も な く 、 環 境 だ け が 生 き て 人 間 が 死 ぬ の で も な く 、 人 間 と 環 境 の 双 方 が 生 き る こ と あ る 。 そ の よ う な 関 係 を 構 築 し て い く こ と は 、 ど の よ う に し て 可 能 か が 問 わ れ て い る 。 そ れ は 、 人 間 中 心 主 義 と 生 命 中 心 主 義 と を ど の よ う に 調 和 さ せ る か の 問 題 で あ る と い え よ う 。 一 方 、 人 間 と 人 間 の 共 生 の 境 位 に お い て は 、 デ ィ ー プ ・ エ コ ロ ジ ー と ソ ー シ ャ ル ・ エ コ ロ ジ ー な い し 社 会 哲 学 を 調 和 さ せ る 視 点 を 見 出 す こ と が で き る の で は な い か 。 ま た 、 現 世 代 の 人 間 と 未 来 世 代 の 人 間 と の 共 生 と い う 観 点 か ら 、 世 代 間 倫 理 の 問 題 へ の 視 点 が 得 ら れ る で あ ろ う 。 さ ら に 、 人 間 と 人 間 の 共 生 、 人 間 と 環 境 の 共 生 全 体 を 見 わ た し て い く な か で 、 地 球 全 体 主 義 ( 決 定 の 基 本 単 位 は 、 個 人 で は な く て 地 球 生 態 系 そ の も の で あ る )の 問 題 を 考 え て い く こ と が で き る と 思 う 。と す れ ば 、「 共 生 」は 、環 境 倫 理 学 が 提 起 し て い る 諸 問 題 を 考 察 し て い く 際 の 、一 つ の 重 要 な 立 場 に な る と 考 え ら れ る の で あ る 。 そ も そ も 、 わ れ わ れ が サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ を 追 求 す る の は 、 な ぜ な の で あ ろ う か 。 そ れ は 、 未 来 の 他 者 も 人 間 と し て 豊 か な 生 活 を 送 る こ と が で き る よ う に と い う こ と が 、 最 大 の 課 題 と し て あ り 、 そ の 他 者 に 対 す る 責 任 を ま っ と う し て い く た め に 、 の は ず で あ る 。 し か し こ の こ と は 、 現 在 、 豊 か な 生 活 を し て い る 国 に お い て 、 そ の 国 の 未 来 の 国 民 の み が 豊 か さ を 持 続 で き る よ う に と い う こ と に は な り え な い 。 保 つ べ き 地 球 の 危 機 は 、 グ ロ ー バ ル な 規 模 に お い て あ り 、 豊 か さ を 持 続 す る た め に は 、 地 球 全 体 の 社 会 シ ス テ ム 等 の 改 編 な し に

(15)

25 は あ り え な い 。 ま し て エ コ ロ ジ ー に お い て 他 者 に 対 す る 責 任 を 論 じ て 、 自 然 の 生 存 権 に 及 び 、 岩 石 等 に す ら そ の 権 利 を お よ ば せ る べ き だ と い う 議 論 が 行 な わ れ て い る 今 日 、 わ れ わ れ の 責 任 は 、 地 球 上 の あ ら ゆ る 他 者 に お よ ぶ こ と を 思 う べ き で あ る 。 し か も 社 会 的 な 歪 み は 、 も っ ぱ ら 弱 者 に お よ ぶ も の で あ る 。 こ の こ と に 対 し て の 責 任 を 思 う と き 、 そ の 弱 者 の 犠 牲 の う え に 豊 か さ を 謳 歌 し て き た 文 明 に 属 す る 者 は 、 そ の 贖 罪 の 実 践 を 真 剣 に 考 え る べ き で す ら あ る 。 ひ る が え っ て 今 日 の 同 時 代 の 他 者 に 対 す る 責 任 に 思 い を は せ る と き 、 社 会 的 な さ ま ざ ま な 歪 み に も 、当 然 、対 処 す べ き で あ る 。も し 今 日 の 豊 か さ と 貧 困 と の 格 差 を そ の ま ま に し 、 人 間 の 人 間 に 対 す る 一 方 的 な 支 配 を そ の ま ま に し 、 あ る い は む し ろ 拡 大 さ せ つ つ 、 た だ サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ の み を 追 求 す る と し た ら 、 そ れ は 地 球 の 存 続 以 上 の よ り 多 く の 問 題 を か か え た も の と な ろ う 。 こ の よ う に 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ を 追 求 す る 視 点 の な か に 、 そ も そ も 今 日 に お い て 、 グ ロ ー バ ル に も 地 域 的 に も 共 生 社 会 を 実 現 し て い く と い う 課 題 が お の ず か ら 見 え て く る 。 同 時 的 ・ 未 来 志 向 的 共 生 の 追 求 が 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ 学 の 根 本 課 題 と し て 浮 か び 上 が っ て く る の で あ る 。 お そ ら く 、 共 生 を 考 え る こ と は 、 今 、 貧 困 等 に 苦 し む 人 々 へ の 想 像 力 か ら 、 物 質 的 ( 量 的 ) 豊 か さ の 一 方 的 な 追 求 を 反 省 さ せ 、 深 刻 な 自 然 の 危 機 の 認 識 か ら 欲 望 や 便 利 さ の い た ず ら な 追 求 を 反 省 さ せ 、 お の ず か ら サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ の 実 現 に 寄 与 す る 方 向 に 向 か う で あ ろ う 。 こ う し て 、 そ の 共 生 へ の 視 点 、 共 生 の 実 現 へ の 努 力 な し に 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ の 達 成 は き わ め て 歪 ん だ も の と な る で あ ろ う 。 し た が っ て 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ 学 に 、 共 生 へ の 視 点 は 不 可 欠 な の で あ り 、 む し ろ そ れ は 根 本 に あ る べ き な の で あ る 。 以 上 、 我 々 の エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ の 基 本 的 な 考 え 方 を 記 し て み た 。 最 後 に も う 一 度 、 そ の 内 容 、 研 究 テ ー マ を 、 な る べ く 体 系 的 に あ げ て み る と 、 次 の よ う に な る 。 ① 自 然 と は 何 か 人 間 と は 何 か 。 ② 自 然 と 人 間 の関 係 は 、 本 来 、 ど の よ う で ある べ き か 。 ③ 人 間 と 自 然 の共 生 、 人 間 と 人 間 の 共 生 は 、本 来 、 ど の よ う に 実 現 すべ き か 。 ④ 共 生 を 展 望 した サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ の 実 現は ど の よ う に あ る べ き か。 ⑤ そ の よ う な 考察 の 中 で 、 人 間 の 行 動 規 範 (倫 理 ) は ど の よ う で あ るべ き か 。 ⑥ 人 間 の 意 識 の現 実 は 、 ど の よ う で あ る の か。 ⑦ 人 間 の 意 識 の変 革 や 社 会 シ ス テ ム の 変 革 はど の よ う に 構 想 さ れ る べき か 。 こ れ ら を 、 包 括 的 ・ 体 系 的 に 論 じ る も の と し て 、 わ れ わ れ の エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ を 構 築 し た い と 思 う 。 と も あ れ 、 環 境 倫 理 学 や エ コ ロ ジ ー が 提 起 し て い る 問 題 の す べ て が 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ に 直 結 し て い る と い う わ け で も な い に 違 い な い 。 一 方 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ の 問 題 は 、 技 術 や 政 策 等 を 含 む 広 範 な 問 題 を 擁 し て い て 、 よ り 幅 の 広 い 研 究 が 必 要 で あ る 。 し か し 、 そ こ に か か わ る 人 文 ・ 社 会 分 野 、 と り わ け 哲 学 ・ 思 想 の 課 題 と し て は 、 従 来 、 環 境 倫 理 学 や エ コ ロ ジ ー が 考 究 し て き た 諸 問 題 を 継 承 し て 、 そ れ ぞ れ の 主 張 の 有 効 性 と 限 界 、 現 実 性 と 非 現 実 性 等 を 検 証 し つ つ 、 さ ら に 新 た な 問 題 が あ れ ば そ の 問 題 に も 取 り 組 み 、 ど こ ま で も 深 く 人 間 と 自 然 の 存 在 構 造 に 根 差 し つ つ 、 サ ス テ イ ナ ビ リ テ ィ に 関 す る も っ と も 有 効 で

(16)

包 括 的 な 哲 学 ・ 思 想 を 確 立 し て い く こ と で あ ろ う 。 そ の 際 、 立 ち 遅 れ て い る 東 洋 思 想 の 本 格 的 な 再 検 討 は 急 務 で あ る 。

私 と し て は 、 現 時 点 に お い て は ひ と ま ず 以 上 の よ う な 観 点 か ら 、「 エ コ ・ フ ィ ロ ソ フ ィ 」 を 構 想 し た い と 念 願 し て い る と こ ろ で あ る 。

(17)

Summary

Ecology & Eco-Philosophy

TAKEMUR A Makio

This paper attempts to seek, as based on the name of our organization - the Transdiciplinary Initiative “Eco-Philosophy” at Toyo University - to investigate what sort of eco-philosophy currently exists and to examine what sort of eco-philosophy we should be aiming fo r.

Ascertaining firstly the meaning of eco, as based on the ancient Greek oikos (household or ecosphere), and next the science of ecology, we then undertook to pursue the process of constructing ecology as philosophy. Following on, without yet construing eco-philosophy itself, we undertook an examination using such concepts as the principles of the deep ecology movement (the platform principles), stemming from the 7 attributes and 8 fundamentals of the “deep ecology” advocated by the Norwegian philosopher Arne Næss, among others. Furthermore, we undertook an overview of the eco-philosophies proposed by Henryk Skolimowski, Hiromasa Mase, Shuji Ozeki, and Katsuhiko Kono, and introduced the characteristics of these.

Based on this work, it was seen that several principal issues can be indicated with regard to eco-philosophy for us at Toyo University: 1) What is nature, and what is humanity? 2) What sort of relationship should essentially exist between nature and humanity? 3) How should we seek to achieve co-existence of nature and humanity, or co-existence of human and human? 4) How should we seek to achieve a sustainability that hopes for this co-existence? 5) Within this sort of examination, what should the range of human behavior (ethics) be? 6) What is the reality of human consciousness? 7) How should the reform of human consciousness and the reform of social systems be conceptualized?

参照

関連したドキュメント

This paper presents an investigation into the mechanics of this specific problem and develops an analytical approach that accounts for the effects of geometrical and material data on

We study the classical invariant theory of the B´ ezoutiant R(A, B) of a pair of binary forms A, B.. We also describe a ‘generic reduc- tion formula’ which recovers B from R(A, B)

For X-valued vector functions the Dinculeanu integral with respect to a σ-additive scalar measure on P (see Note 1) is the same as the Bochner integral and hence the Dinculeanu

Topological conditions for the existence of a multisymplectic 3- form of type ω (or equivalently of a tangent structure) on a 6-dimensional vector bundle will be the subject of

for proving independence of certain conditions and constructing further examples by means of finite direct products in the main results of the paper... Validity of (J) follows

Keywords: probability inequalities; large deviations; Rademacher random variables; sums of independent random variables; Student’s test; self-normalized sums; Esscher–Cramér tilt

bridge UP, pp. The Movement of English Prose, Longmans. The Philosophy of Grammar. George Allen & Unwin. A Modem English Grammar on Historical Principles, Part IV.

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”