史料館の「企画展」のこと
経済学部附属史料館長 青柳 周一
8 9
滋 賀 大 学
滋 賀 大 学
の
の
い ま
い ま
経済学部附属史料館では、県内各地に伝来した古文書をはじ
めとする歴史資料の保存・公開と研究を行っています。史料館が
現在収蔵している古文書は、約17万6,000点に達します。
歴史資料は、地域の記憶と記録が刻み込まれた貴重な遺産で
あり、所蔵者の方々が現在まで大切に守り伝えてきたものです。
だからこそ、研究者や大学だけで独占するのではなく、広く人び
との間で共有されなければなりません。そこで史料館では、収蔵
する歴史資料を万全な体制で保存すると共に、原則的に全て一
般公開しています。公開の方法は、史料館2階の閲覧室で歴史資
料を手に取って、閲覧していただくことが中心ですが、展示活動
を通じた公開にも力を入れています。
史料館は1階が展示室になっています。展示には、水∼金曜の
開館時間中に見学していただける常設展(近江商人の商業用具
や古文書、また近江
の村々での生活用
具・農 具 などを 展
示)と、毎年春と秋
に1ケ月ほどの期間
で、毎回テーマを変
えて開催する企画
展とがあります。こ
こでは、最近の企画
展をいくつかご紹
介しましょう。
史料館での事業の大きな柱の一つとして、近江商人および近江
系企業に関する歴史資料の調査・研究と公開があります。近年の
主な調査・研究対象の一つであったのが、伊藤忠商事株式会社と
丸紅株式会社の創業家に伝わった「伊藤忠兵衛家文書」でした。
伊藤忠兵衛家文書は、平成15年夏に豊郷町の伊藤忠兵衛家
旧宅(現伊藤忠兵衛記念館)で発見されました。史料館では、伊
藤家のご高配を得てこれをお預かりし、翌年から1点ずつ整理
してデータを取り、仮目録を作成するといった作業に取りかかり
ました。そして25年春、ようやくその総数が約5万点に達するこ
とが判明しました。かなり大規模な史料群であり、全点を一般公
開できるまでにはもうしばらく時間が必要です。
こうした作業の中間報告として、史料公開のために開催したの
が、平成20年企画展「地商いから商社へ―伊藤長兵衛家・忠兵
衛家文書にみる―」と、この26年度企画展です。企画担当者は共
に経済学部の宇佐美英機先生(当時は史料館長)でした。26年
度企画展では、伊藤忠兵衛家文書14点と共に、平成22年に伊藤
忠商事と丸紅よりお預かりした企業史資料も合わせて展示しま
したが、これらも目下史料館で目録を作成中です。
秋季企画展では、毎回関連講演会を開催しています。この時
の講師は、宇佐美先生に加
えて、丸紅(株)農産ユニット
ディレクター・農産部長である
近藤孔明氏と、伊藤忠商事
OBで(株)スーパーレックス
取締役副社長の松林彰次郎
氏でした(役職名は当時のも
の)。講演会には企画展を共
催した市場史研究会の方々
も参加され、多くの来聴者で
にぎわいました。
史料館事業のもう一つの柱として、重要文化財「菅浦文書」の
調査・研究があります。史料館では平成24年度以来、科研費(基
盤研究B)「中・近世「菅浦文書」の総合的調査・公開と共同研究
―中・近世村落像の再検討」による菅浦文書の共同研究を行っ
てきました。(今年度より基盤研究Aとして継続中)
共同研究のメンバーは、代表の青柳と、研究分担者である
宇佐美先生、本学教育学部の宇佐見隆之先生、さらに滋賀県
立大学の水野章二先生・東幸代先生、琵琶湖博物館学芸員の
橋本道範氏です。それに協力者として史料館職員と、京都大学
院生や滋賀県立大院生(当時)にも加わってもらいました。27
年度の春・秋の展示は、この共同研究の成果公表の一環とし
て計画したものです。あわせて、史料館棟が竣工して20周年を
迎えることも記念していました。
春季展示は、江戸時代の菅浦村で作成され、保管されていた
史料群である「菅浦共有文書(近世分)」によって構成しました。
菅浦は中世惣村としてのイメージが非常に強い(中学・高校の日
本史の教科書にも出てきます)こともあって、「江戸時代の菅浦
村の展示は珍しい」と、菅浦在住の方がわざわざ観覧に来てくだ
さいました。企画担当者として、これは嬉しいことでした。
秋の特別展では、中世の菅浦の歴史に正面から取り組みまし
た。実際の展示では、「菅浦の生活空間と生業」、「菅浦と浅井
氏」、「菅浦文書の花押と略押」、「湖(うみ)と山の権利をめぐっ
て」という4つのコーナーを設けましたが、これは共同研究メン
バーとの議論を経て決定したものです。さらに展示する史料21
点の選定から、展示史料の解
読文の校訂、展示図録や展示
史料の説明用キャプションの
原稿執筆などといった一連の
準備作業も、全てメンバーで
分担しました。
関連講演会の講師は、長年
菅浦文書研究に携わってこら
れた長浜市長浜城歴史博物館
長の太田浩司氏にお願いしま
した。この時には、共同研究メ
ンバーをパネラーとするシンポジウムも実施しました。来聴者数
は116人で、史料館の講演会では過去最多の人数でした。
春季展示は『しがだい』の表紙も飾っている琉球貿易図屏風を
中心に据えて、「琉球貿易図屏風と琉球使節の「江戸上り」」とい
うテーマで、5月16日∼6月10日に開催しました(表紙の解説が
19ページにありますので、ご参照ください)。ご観覧いただいた
方々に、改めてお礼申し上げます。
また、今年は東日本大震災から5年目という節目の年に当たり
ます。そこで秋の企画展では、東北地方での近江商人の活動に
関する史料を展示して、東北地方と滋賀県との歴史的なつなが
りを考える予定です。これからも、さまざまな種類の、多彩な内容
を持つ歴史資料の公開を進めるために、展示企画を考案して参
ります。ぜひ史料館の企画展へ足をお運びください !
企画展のギャラリートークの様子
(23年度企画展「江戸時代の近江を旅する」)
26年度企画展図録(表紙)
27年度企画展図録(表紙)
26年度企画展「伊藤忠兵衛家・長兵衛家同族事業経営の沿革」
27年度シンポジウムの様子
27年度特別展「重要文化財菅浦文書を読む」
今年の企画展について
平成26年度企画展「総合研究棟〈士魂商才館〉開館記念
伊藤忠兵衛家・長兵衛家同族事業経営の沿革
∼地商いから商社へ その2∼」
平成27年度春季展示「江戸時代の村に生きる
―菅浦共有文書から」および
特別展「重要文化財菅浦文書を読み解く」
史料館の「企画展」のこと
経済学部附属史料館長 青柳 周一
8 9
滋 賀 大 学
滋 賀 大 学
の
の
い ま
い ま
経済学部附属史料館では、県内各地に伝来した古文書をはじ
めとする歴史資料の保存・公開と研究を行っています。史料館が
現在収蔵している古文書は、約17万6,000点に達します。
歴史資料は、地域の記憶と記録が刻み込まれた貴重な遺産で
あり、所蔵者の方々が現在まで大切に守り伝えてきたものです。
だからこそ、研究者や大学だけで独占するのではなく、広く人び
との間で共有されなければなりません。そこで史料館では、収蔵
する歴史資料を万全な体制で保存すると共に、原則的に全て一
般公開しています。公開の方法は、史料館2階の閲覧室で歴史資
料を手に取って、閲覧していただくことが中心ですが、展示活動
を通じた公開にも力を入れています。
史料館は1階が展示室になっています。展示には、水∼金曜の
開館時間中に見学していただける常設展(近江商人の商業用具
や古文書、また近江
の村々での生活用
具・農 具 などを 展
示)と、毎年春と秋
に1ケ月ほどの期間
で、毎回テーマを変
えて開催する企画
展とがあります。こ
こでは、最近の企画
展をいくつかご紹
介しましょう。
史料館での事業の大きな柱の一つとして、近江商人および近江
系企業に関する歴史資料の調査・研究と公開があります。近年の
主な調査・研究対象の一つであったのが、伊藤忠商事株式会社と
丸紅株式会社の創業家に伝わった「伊藤忠兵衛家文書」でした。
伊藤忠兵衛家文書は、平成15年夏に豊郷町の伊藤忠兵衛家
旧宅(現伊藤忠兵衛記念館)で発見されました。史料館では、伊
藤家のご高配を得てこれをお預かりし、翌年から1点ずつ整理
してデータを取り、仮目録を作成するといった作業に取りかかり
ました。そして25年春、ようやくその総数が約5万点に達するこ
とが判明しました。かなり大規模な史料群であり、全点を一般公
開できるまでにはもうしばらく時間が必要です。
こうした作業の中間報告として、史料公開のために開催したの
が、平成20年企画展「地商いから商社へ―伊藤長兵衛家・忠兵
衛家文書にみる―」と、この26年度企画展です。企画担当者は共
に経済学部の宇佐美英機先生(当時は史料館長)でした。26年
度企画展では、伊藤忠兵衛家文書14点と共に、平成22年に伊藤
忠商事と丸紅よりお預かりした企業史資料も合わせて展示しま
したが、これらも目下史料館で目録を作成中です。
秋季企画展では、毎回関連講演会を開催しています。この時
の講師は、宇佐美先生に加
えて、丸紅(株)農産ユニット
ディレクター・農産部長である
近藤孔明氏と、伊藤忠商事
OBで(株)スーパーレックス
取締役副社長の松林彰次郎
氏でした(役職名は当時のも
の)。講演会には企画展を共
催した市場史研究会の方々
も参加され、多くの来聴者で
にぎわいました。
史料館事業のもう一つの柱として、重要文化財「菅浦文書」の
調査・研究があります。史料館では平成24年度以来、科研費(基
盤研究B)「中・近世「菅浦文書」の総合的調査・公開と共同研究
―中・近世村落像の再検討」による菅浦文書の共同研究を行っ
てきました。(今年度より基盤研究Aとして継続中)
共同研究のメンバーは、代表の青柳と、研究分担者である
宇佐美先生、本学教育学部の宇佐見隆之先生、さらに滋賀県
立大学の水野章二先生・東幸代先生、琵琶湖博物館学芸員の
橋本道範氏です。それに協力者として史料館職員と、京都大学
院生や滋賀県立大院生(当時)にも加わってもらいました。27
年度の春・秋の展示は、この共同研究の成果公表の一環とし
て計画したものです。あわせて、史料館棟が竣工して20周年を
迎えることも記念していました。
春季展示は、江戸時代の菅浦村で作成され、保管されていた
史料群である「菅浦共有文書(近世分)」によって構成しました。
菅浦は中世惣村としてのイメージが非常に強い(中学・高校の日
本史の教科書にも出てきます)こともあって、「江戸時代の菅浦
村の展示は珍しい」と、菅浦在住の方がわざわざ観覧に来てくだ
さいました。企画担当者として、これは嬉しいことでした。
秋の特別展では、中世の菅浦の歴史に正面から取り組みまし
た。実際の展示では、「菅浦の生活空間と生業」、「菅浦と浅井
氏」、「菅浦文書の花押と略押」、「湖(うみ)と山の権利をめぐっ
て」という4つのコーナーを設けましたが、これは共同研究メン
バーとの議論を経て決定したものです。さらに展示する史料21
点の選定から、展示史料の解
読文の校訂、展示図録や展示
史料の説明用キャプションの
原稿執筆などといった一連の
準備作業も、全てメンバーで
分担しました。
関連講演会の講師は、長年
菅浦文書研究に携わってこら
れた長浜市長浜城歴史博物館
長の太田浩司氏にお願いしま
した。この時には、共同研究メ
ンバーをパネラーとするシンポジウムも実施しました。来聴者数
は116人で、史料館の講演会では過去最多の人数でした。
春季展示は『しがだい』の表紙も飾っている琉球貿易図屏風を
中心に据えて、「琉球貿易図屏風と琉球使節の「江戸上り」」とい
うテーマで、5月16日∼6月10日に開催しました(表紙の解説が
19ページにありますので、ご参照ください)。ご観覧いただいた
方々に、改めてお礼申し上げます。
また、今年は東日本大震災から5年目という節目の年に当たり
ます。そこで秋の企画展では、東北地方での近江商人の活動に
関する史料を展示して、東北地方と滋賀県との歴史的なつなが
りを考える予定です。これからも、さまざまな種類の、多彩な内容
を持つ歴史資料の公開を進めるために、展示企画を考案して参
ります。ぜひ史料館の企画展へ足をお運びください !
企画展のギャラリートークの様子
(23年度企画展「江戸時代の近江を旅する」)
26年度企画展図録(表紙)
27年度企画展図録(表紙)
26年度企画展「伊藤忠兵衛家・長兵衛家同族事業経営の沿革」
27年度シンポジウムの様子
27年度特別展「重要文化財菅浦文書を読む」
今年の企画展について
平成26年度企画展「総合研究棟〈士魂商才館〉開館記念
伊藤忠兵衛家・長兵衛家同族事業経営の沿革
∼地商いから商社へ その2∼」
平成27年度春季展示「江戸時代の村に生きる
―菅浦共有文書から」および
特別展「重要文化財菅浦文書を読み解く」