管理工学に於ける人工知能の応用について
大 崎 紘 一 1,緒 言 管理工学は,労働力を中心にした大量生産方式における生産性向上のために 広範囲に使用され,その成果は周知の事実である(1,2)。そして最近では,自 動機械,ロボットなどにより構成されたFA, CIM等の多種少量生産方式の生 産システムに対する設計,管理にも重要な役割を果たしている(3)。 ところで,知識工学の発展により,問題の知識的表現として,ルール型モデ ルとしてのプロダクションルール,述語論理,そして手続型モデルとしてのフ レームモデルが開発されており,非数値の問題の内容表現には,極めて有効で あることが示されている(4)。また,知識表現された内容を知識型言語(Lisp, Prolog)により表現することにより,特定分野のエキスパートシステムを開 発することができる。 著者らは,管理工学に於ける問題を知識表現するための管理用フレームモ デル(5),ジョブ・ショップ型加工工程のスケジューリング手法の知識表現 法(6),FA型組立支援エキスパートシステムの開発などの研究を行ってい る(7)。 本報文では,管理工学の問題に対する管理用フレームモデルの特徴について 述べることにする。 II.管理用フレームモデルについて 管理工学に於ける問題は,生産の3要素(人,物資金)+情報で示される とされている。ところで,ここでの情報の内容は,主として数値的なもの,すなわちデータベース的な考え方が一般的であり,情報を出すための仕組み,構 造,規則などについては,数値処理できないためにほとんど取り扱われていな い。 そこで,管理工学的問題の構造を示すために,知識工学に於ける知識の表現 法の一つであるM.Minsky(4)のフレーム概念を基本にして,著者の提案 している管理用フレームモデル(5)について述べる。 このフレームモデルは,3つのフレームで構成される。すなわち,問題の構 成要素,及びそれらの間から生じる関係,及び要素・関係を使用して目的達成 のための過程をそれぞれ別々に次の様に示すことにする。 (1)事実フレーム 問題を構成する基本要素,人,物(ロボット,設備,材料,製品,搬送車な ど),コストを含むフレームである。人,物については,集団としての表示で あり,それらの内で特に明記する必要のあるものは別枠で示してもよい。 (2) 関{系フレーム 基本要素内の関係,要素間の関係に関する事象を示すフレームである。 人に関しては,人の問の関係を示すのが組織図であり,会社,部,課,係, 組などで示される。また,製品の部品展開は,一つの基本要素内の関係に関す る事象であり,部品展開も関係フレームに含まれる。 作業は,材料,部品と人,または機械の間の関係で生じるものであり,関係 フレームの一つの事象である。 以上のような種々の関係の内で,次の推論に必要な事象,及びその内容を示 す。 (3)推論フレーム 関係フレームの事象を導くために使用する手法,手順,規則などをまとめて 示すフレームである。例えば,作業に関してみると,方法研究(OPC, FPC, アローダイアグラム),時間研究での時間計算法,標準時間測定のためのPTS 法などがそれぞれ規則となる。 知識工学に於て,規則は,
(イ)if条件then結論 (ロ)述語論理 の 計算式 のいずれかで表現する。 if・thenにより規則を表現したものが,プロダクションシステムである。 if・ thenは,従来の手続型言語(BASIC, FORTRAN)の命令にも含まれてい るため,知識型言語(Lisp)とともに最も広く使用されている。 著者は,論語(8)の内容を知識表現することを試みており,その内でif−then で示される2つの例を次に示している。 (i)子日,質勝文蒲田。文勝質期史。文質彬彬,然後君子。 if質勝文 then 野(粗雑). if文勝質 then 史(飾り物). if文質彬彬 then 君子. 輔 孔子日,待於君子,有三徳。言追及之痛言,謂之躁。 際及之而不言,謂之穏。未見顔色而言,謂之暫。 if言偏右回而言 then 躁(あせり). if言及之而不言 then 穏(相手に通じない). if未見顔色直言 then 啓(目が見えない). 述語論理は,規則を表現するのセこ使用するものであり,知識型言語(Prolog) (9)を構成している。 特に,規則間の関係を明確にする必要のある問題の表現には適している。ま た,組合せの問題,整数値のみを取り扱う問題についても有効である。 その際,規則間の関係を示すのに,述語論理の言語(Prolog)で使用してい るもののうち,次のような記号を使用すると便利である。 (の 等号(:一) 等号の右辺が成立すれぽ:,左辺が成立する。 F,: 一 F, (ll)AND(コンマ,)
ある規則が成立するためには,2つ以上の規則のすべてが成立する必要 がある場合である。 F:一Fb F,, F,, ・・・…, Fk (Ul)OR(セミコロン;) ある規則が成立するためには,2つ以上の規則の内いずれかが成立すれ ばよい場合である。 F,: 一 F,; F,; 一・・一 ; F, 111.実 例 生産の3要素の一つであるコストについて,管理用フレームモデルを構成し てみる。 (図1) (1)事実フレーム 生産の基本要素である人間,機械,材料,製品をフレームの基本要素とする。 (2)関係フレーム コストに関しては,基本的に人件費,機械費,材料費が考えられ,それらを 基本コストサブフレームで示す。 作業コストは,加工,検査,運搬,停滞,貯蔵コストに分けることにする。 製品コストは,製造コスト,間接コスト,顧客要求コストに分けて考えると ことにする。 組織コストに関しては,全社,部,課,係,組の各コスト分ける。 エネルギー関連コストとしては,電力,油,ガス,水,空気の各コストに分ける。 各コストの細目分類については,これ以外のものも考えられる。 (3) 推論フレーム このフレームにより,関係フレーム間の関係が示される。すなわち,会社に よって,コストの規則が異なる。 一つの例として,製品の製造コストを組織コストに関しては部毎に展開し, 部コストは作業コスト,作業コストは基本コストにより決める場合の規則は, 概略的には次のように示される。
窩混くームト映るK目 一区 .︵簗奨+選鰹+<︶ の嘱山里蝋と 。︵︹藝奨.選鰹.<︺︶︷K口粁欄∴︵懸邸課と︶颪緊∴K口線造 .︵当月+幾瞳+選姻+細隼+H農︶ の哨鴇 、︵[綴ぬ、幾祉、懸鍛.細意.H轟︺︶轟K“課と∴︵鴇︶ムK口簗騨 .︵鴇︶ムKロ蓬鎚一二賦緊山K口簗鎚 .辰黙山Kロ簗興∴ムK口姻騨 く!きト儒螺
山Kロ脈剰
ムKロ 蚤
ム KロK敏
ムKロ 更
んK口尺脚
ムKロ鋼認一讐ミ幹“ ゐ ゐ 山 山 ゐ ム K K K K K K 口 口 口 口 口 口 簗鎚 韓細 爺 継 瞳 曜 山 山 ム ム K K K昏
口 口 口 偶 ロ呂 鞭 蝋 臨鮪 隷 麟 誕 紐 ムKロ線葦 山KロH員震晶鄭
富最曜
安是趣
寅懸謹
んK口粁欄寵赴く
無翠塑
邸簗其
︿ームト駈毬マ墨
τ劃
冨墨
≦
くー二h蝋冊ただし,作業コストを構成する5つの作業要素に関するコストを作業コスト 規則で与えている。 製造コスト:一組織コスト規FJj. 組織コスト規則:一組織コスト(部). 組織コスト(部):一作業コスト(〔加工,検査,運搬,停滞,貯蔵〕), 部is(加工+検査+運搬+停滞+貯蔵). 作業コスト規則(作業要素):一基本コスト(〔人,機械,材料〕), 作業要素is(人+機械+材料). IV.結 論 管理用フレームモデルの使用により,管理的問題を知識表現可能となり,新 しい展開を望めるようになってきた。今まで,know−howと云われている部 分を明確にし,規則化することより,管理理論の新展開が益々盛んになってく るであろう。そして,理論整理と知識型言語による対応とがっき易いことから, 今後のプログラム開発は,この方向に進んでいくであろうこともうかがえる。 しかし,規則を自由に組み合わせて全く新しい推論を行う過程については,ま だ理論的に達成されていない部分があり,今後の人工知能・知識工学の分野の 発展が待たれる。 参 考 文 献 (1)EW. Taylor著,上野陽一訳,科学的管理法,産業能率短期大学出版部,1966 (2)大崎,他3名,生産システム技法,共立出版社,1981 (3)渡辺,産業用ロボットの技術,日刊工業新聞社,1979 (4) 上野,知識工学入門,オーム社,1985 (5)大崎,管理工学に於ける人工知能(AI)の応用, I Eレビュー, Voj.29, No.3, 1988, pp.12 (6)梶原,大崎,機械加工順序に基づく加工品のクラス分けを用いた知識言語展開に よるスケジューリング法,日本機械学会論文集C編54巻,505号,1988,pp.2233 (7)大崎,梶原,ロボットによる組立ラインのためのエキスパートシステム,第11回 ロボット及び応用システムシンポジウム,1988,pp.15 (8)村山,新編論語,PHP出版,1987 (9)柴山,他2名,Prolo9・KABA入門,岩波書店,1986