天然ガス(LNG)の価格形成に関する考察
著者
木船 久雄
雑誌名
名古屋学院大学論集 社会科学篇
巻
39
号
4
ページ
39-60
発行年
2003-03-31
URL
http://doi.org/10.15012/00000810
名古屋学院大学論集 社 会科 学篇 第39巻 第4号 (2003年 3月)
天然 ガス
(LNG)の
価格形成 に関す る考察
木
船
久
雄
は じめ に ア ジアは もとりよ り,世
界的 に天然ガス消費 が拡大 している。天然ガスは,化
石燃料 の中で は相対的にク リー ンな燃料であるため,そ
の導 入拡大 はC02排
出量削減の具体的方策 となる。 わが国では,1969年
に天然ガスを液化天然ガ ス(LNG)と
して初めて輸入 した。それ以来, 石油 に代わ るク リー ンで安定供給が可能なエネ ル ギー として,天
然ガス利用 は着実 に拡大 して きた。1980年代 において,わ
が国のLNG輸
入 は世 界のLNG貿
易 の8割
を 占め,独
占的 なLNG消
費国 として位置付 け られた。しか し,そ れが 逆 に,LNG市
場 を特 異 な もの に して し まったことも否めない。つ ま り,資
源の無 い 日 本 に とっては,ア
ジア近隣諸国か ら輸入 され るLNGは
安定供給が担保 され る有 り難 いエネル ギー源であ り,価
格 は二次的 な交渉要素で しか なか ったのである。 しか し,国
際的 なLNG市
場 はここ数年で大 き く変化 しつつ ある。市場参加者 は大幅 に数 を 増 し,既
存のプ レイヤーが抱 える市場特 性 も変 化 して きた。具体 的な参加者 をみると,需
要サ イ ドでは,
日本以外 に韓国 。台湾 。中国 といっ たアジアの新興消費国が登場 して きた し,ア
メ リカや欧州諸国での輸入拡大 も見 られる。一方, 供 給サ イ ドで は,中
東や ア フ リカ諸国 か らのLNG輸
出が急拡大 している。既存プ レイヤー である日本国内のLNGユ
ーザーは,電
力会社 や都市ガス会社であるが,彼
らの抱 える事業I興 境 も規制緩和 とともに一気 に変化 している。つ ま り,安
定イ難 合を錦 の御旗 に地域独 占が認め ら れていた立場か ら,市
場競争 に晒 され生 き残 り をかけた コス トダウンが至上命題 とな る事業環 境 に組み込 まれた。 それゆえ,現
在 そ して今後のLNG価
格形成 に関す る土俵 は,従
来 とは大 き く異なって きて いると言わざるを得ない。本稿 では,こ
れ までLNGの
価格形成 に用 い られて きた価格 フ ォー ミュラーに注 目し,そ
の推移 と傾向,問
題点 を 指摘 す る。 そ して,今
後のLNG価
格 のあ り方 について展望す る。なお,本
稿 の構成 は,最
初 に内外のエネルギー市場 におけるLNGの
位置 付 けを行った後,LNG価
格の実績,価 格 フォー ミュラーの推計,そ
の考察 と続 く。1.天
然 ガスの位 置付 け1.1.LNGの
導入 わが国 に最 初 のLNG船
が 入港 したの は, 1969年 11月 の こ とである。これは,東 京電力 と 東 京ガスが共 同で購 入 した米 国 ア ラスカ産 のLNGで
あ り,第
1船
は東京ガスの根岸工場 に 受 け入れ られた。 アラスカLNGプ
ロジェク ト の契約ベース供給量 (平年度ベ ース)は
,両
社 で96万
トンで あ るが,同
年 に輸 入 され た量 は 16万 トンであった。 次 いで1972年 12月 に は,ブ
ル ネ イか らのLNG第
1船
が大阪ガス泉北工場 に着岸 し,翌
73年
に同国のLNGが
東京 ガ スお よび東 京電 力に供給 された。ブルネイのLNGプ
ロジェク卜はわが 国で は第
2番
目の もの で あった もの の,平
年供給量が514万
トンと,典
型的 な大規 模LNGプ
ロジェク トの口高矢 となった。 これ に 続 くLNGプ
ロジェク トは,い
ずれ も巨額 な投 資資金 を擁 した大規模 な ものである。ブルネイLNG以
降では,UAE(ア
ブ ダビ),イ ン ドネシ アI,マ
レーシア(サラワク),イ ン ドネシア(バ ダック増量,ア
ル ン増量,バ
ダ ックIV),オース トラ リア,マ
レーシアII,カタール,オ
マー ン と続 いて現在 にいたる (一時,ア
ル ジェ リアか らの輸 入 も行 っている)。 その結果,2000年
度のLNG輸
入量 は 5,360 万 トンに達 した (契約ベースで5,340万 トン)。 こうした推移は,図
1-1に示 されている。1.2.一
次エネルギー供給 に占める割合 一 方,国
内の天然 ガス生産 は1960年代 か ら 今 日にいた るまで,ほ
ぼ200万
トン(LNG換
算①)前
後 で推移 して きた。2000年
度のそれは174万
トンである。 輸 入LNGと
国産天然ガスの両者 を足 して, わが国の一次エネルギー総供給 における天然ガ ス比率 をみてみ よう。LNGが
導 入 された 1969 年 度 の天 然 ガ ス比 率 はわ ず か1.0%で
あった が,1979年
度 には5%を
越 え,1989年
度 には10%に
達 した。 そ して2000年
度 の そ れ は,13.2%で
ある (図1-2参
照)。 天然ガス供給量 に占め る国産天然ガスはわず か3%程
度 しか無 いか ら,残りの97%は
海外か らLNGと
して輸入 されている。1.3.世
界のLNG
一方,世
界全体 のLNG貿
易か らみれば,
日 本の輸入量 はその過半 を占めている(1999年)。 これは,欧
米 の天然 ガス供給が主 としてパ イプ ランを通 じて行われ るためである。 これに対 し て,四
方 を海 で囲 まれ,産
ガス国か ら物理的に 遠隔地 にあるわが国では,天
然ガス輸送 には, ガスを一旦液化 してか ら運搬す る方法が寸采用 さ れた。それがLNGで
ある。 しか し,LNG貿
易 は 日本か ら始 まったか と いえば,そ
うではない。世界で最初のLNGプ
ロジェク トはアル ジェ リアが英国 と結んだ契約 で あ り,1964年
か らLNG貿
易 が行 われ た。 ヨー ロッパの天然ガス供給 ソース としてのアル ジェ リアは,
ヨー ロッパ大陸 とは地 中海 をはさ んで対峙 してい るため,パ
イプ ラ ンに比べ てLNG方
式が経済的 に優れていた。アル ジェ リ 60 50 40 30 20 ︲0 120 100 80 60 40 20 0 ■口■ 国内生産 IE==コアルジェリア E==コ アメリカ SSS'UAE 医v凶ブルネイ │ロココカタール E=コオーストラリア EEコマレーシア ロロロインドネシア …0-輸入LNG比率 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 図1-1
わ が 国 のLNG輸
入 の推 移 (資料)財
務省 『 日本貿易月表』か ら作成 博 = = 日 = 天然ガス総供給 に占める輸入LNGの割合(%,右軸)(単位:石油換算百万トン) 天然 ガス
(LNG)の
価格形 成 に関す る考察 (単位:%) 600 500 400 300 200 100 0 9 1 18 15 121Eロコ 水 力 zZZ石油 巨コ 台 湾 E=ヨフランス 多%Z韓国 匡 =1日本 -0-日本 の割 合 E=コ天 然 ガス loo :■■■イギリス E置コイタリア 80 1s、国ァメリカ │ヽRヽベルギー 60 匡 =コスペィン 石 炭 合 . の 歩 然 天0
1965 70 75 85 90 95 2000 図1-2
わが国の一次エネルギー供給 と天然ガスの割合 (資料)資
源エネルギー庁/EDMC『
総合工不ルギー統計』 (単位:LNG百万 トン) (単位:%) 40 20 0 1964 1969 1974 1979 1984 1989 1994 1999 図1-3
‐世界のLNG貿
易 (資料)日 本 :財 務省『日本貿易月表』,米
国:DOE/EIA,4″ηπα′E″瑠り,R′υグ′ω,韓
国・台湾・アルジェリアーイタ リア・オース トラリアースペイン :BP,4″ π%α′S″誂″ “ ′ R′υグ′ω,そ の他 :CPDP/Pο わ た。他に資源エネルギー庁『資源エネルギー関係資料』(平 成元年3月)を参照 した。 (注)LNGlト
ン=1,400m3=49,500f3換 算。 アは,そ の翌年 にフランスヘ,さ らに1970年か らアメ リカ,1974年
か らイタ リアお よびスペイ ンヘ とLNG供
給 を行 って きた。 しか し,そ
の後,北
海で原油や天然 ガスの生 産 が は じま る と,英
国 は ア ル ジェ リア 産 のLNG輸
入 をカ ッ トし,
また80年
代 にガス・バ ブル を迎 えたアメ リカ も一時,LNG輸
入 を中 断 した。欧米 では,
自国に化石燃料資源が乏 し くアフ リカ大陸 に近 いフランスやイタ リア,ス
ペ インが安定的にLNG輸
入 を行 っている。た だ し,こ
こ数年天然ガス不足が喧伝 され るアメ リカ も,ア
ル ジェ リアか らのLNG輸
入 を再 開 した。 ア ジアに目を転 じれば,韓
国が1986年か ら, 台湾 も1990年か らLNG輸
入 を開始 して い る。輸 入相手先は,韓国はイン ドネ シア,マレー シア,ブ
ルネイ,オ
ース トラ リアであ り,台
湾 はイン ドネシア とマ レーシアである。 さらに今 日本 の割 合(%,右軸)後 は
,イ
ン ドや 中国がオース トラ リアお よびイ ン ドネシアか らのLNG輸
入 を計画 している。 こうした経緯 をた どり,世
界のLNG貿
易 に 占め るわが国の割合 は,1980年
代央 に75%を
占めた後,徐
々に低下 して きた。1999年のそれ は61%で
あ り,韓
国(14%),フ
ランス(8%),
台湾(5%),ス
ペイ ン(4%)が
続 いている。1.4.LNG需
要の構成 わが国においてLNGは
,若
千量が鉄鋼業で 消費 され るものの,ほ
ぼ全量が電気事業 と都市 ガス事業で使われ る。電気事業では発電用燃料 として,都
市ガス事業では都市ガス原料 として 用 い られ る。2000年
度のLNG消
費の内訳 は, 7割が電気事業者, 3割
力渚F市ガス事業者であ る (図1-4参
照)。(1)電
気事業 におけるLNG
電気 事業 にお け るLNGは
,次
の よ うな メ リッ トか ら利用が進め られて きた。それ らは, ①燃料資源 としての天然ガスの供給安定性が高 いこと (賦存地域は中東に集中することな く世 界各地にわた り,埋蔵量 も石油を上回ること), ②電源多様化に資すること,③
環境負荷の軽減 に資すること (燃焼時における硫黄酸化物や窒 (単位:LNG百万 トン) 素酸化物,二
酸化炭素など環境汚染物質の排出 量を著 しく減少できる),④ガスタービンと蒸気 タービンを併用するコンバイン ド・サイクルを 用いることによって発電効率を大幅に改善でき ること,⑤
同発電方式は,電
力需要の負荷変動 に対する出力調整が容易で負荷追従性 に優れて いること,⑥
LNG契
約は20∼30年
と長期 に わたるため燃料の安定供給が確 保 されること, などである。LNG火
力の第一号は,1970年
4月に完成 し た東京電力南横浜火力であ り,大
規模なLNG
火力 としては 1974年 か ら運転を開始 した東京 電力の袖 ヶ浦発電所の第一号機がある。9電
力会社の発電電力量に占めるLNG火
力 の割合は,1977年
に10%を
占め,第二次石油危 機後の 1980年 には20%に
達 した。80年
代央か らは20%台
後半に,そ して 1999年 には30%を
越えるまでに至った (図 1-5参 照)。(2)都
市ガス事業におけるLNG
一方,都
市ガス事業におけるLNG導
入のメ リットは,上
の電気事業で確認 した項 目のほか に,次
のような需給両面に関するものがある。 供給面におけるメ リッ トは,①
製造 。供給設備 のコンパク ト化が可能になること,②
ガス化率 (単 位:%) 80 園困目工 業 用 燃 料 70 1ZZ勿都 市 ガス 原 料 用 65 匡 =コ電 力 発 電 60 燃 料 60 50 40 30 20 10 0 551_。_電 力割合│ 50ヒ___」
1969 72 75 78 81 84 87 90 93 96 99 図1-4 LNGの
需要用途 (資料)資源工不ルギー庁/EDMC F総合エネルギー統計』,経
済産業省 『エネル ギー生産・需給統計年報』天然 ガス
(LNG)の
価格形 成 に関す る考察 (単位:%) (単位 :10億kWh) (ガス製造のために投入 した原料に対する販売 可能なガス製品の比率,歩
どまり)の
向上,③
熱量アップによって導管やホルダー設備の有効 利用が可能,な
どがある。 また需要面における それは,④
安全1生の向L,⑤
機器の高度化,⑥
高カロリー・高圧力に伴 う新規需要 。大 口需要 の開拓,⑦
LNGの
冷孝新│1用に伴 う関連事業の 拡大などである。 大手都市ガス会社による原料のLNG化
は, 東京ガス (1969年),大
阪ガス (1972年),そ
し て東邦ガス (1977年)と続 き,現
在では中小の 地方都市ガス事業者にまで拡大 している。これ と軌 を一にして,販
売ガスの熱量変換事業 (高 熱量化)も進められてきた。また,1979年
には, 産業用の大 口需要 家 を対象 に した「産 業 用LNG制
度」が設けられた(2)。 これは,石
油系燃 料か ら都市ガスヘの燃料転換 を通 じて,LNG
利用の促進 を日的 とするものであった。本制度 は,わ
が国のエネルギー政策における天然ガス 利用促進を明示的に支:援する仕組みとして位置 付けられ,エ
ネルギー転換のための助成制度 も 用意された(3)。 都市ガス原料に占めるLNG比
率は,1969年
LNG火力の割合(%.右輌) ヽ 、ヽ ヽ 40日 ■■ 原 子 力 30 田田 石 炭 匡コ 石 油 20 磁 勿 水 力 10‐E==]LNG .― LNG割合 0 1965 70 75 80 85 90 95 図1-5
九 電 力会 社 の 電源構 成 (資料)経済産業省『電力需給の概要』,『電力調査統計 月報』,電
気事業連合会 『電気 事業便覧』 の2%が
,10年
後 には43%,20年
後の1989年 が67%,そ
して30年
後の1999年には81%に
達 してい る (図 1-6参照)。2.LNG価
格 の推移 と価格 交渉2.1.LNG価
格 の推移(1)輸
入平均価格2000年
度の 日本着のLNG価
格 は,1ト
ンあ た り251ドルであった。これを原油換算す ると 28.4ド ル/バレル(4)とな り,こ の価格は同年の 原油CIF価
格の 28.3ド ル/バレル とほぼ等 し い。これは偶然か,あ
るいは必然であろうか。 それを検証するためには, これまでのLNG価
格の推移を確認 してお く必要があるだろう。 導入初年度である 1969年 の価格 は,
トン当 た り27.4ド ルであった(図2-1参
照)。 それが, 第一次石油危機の 1974年 には 67ド ル と2倍
強に跳ね上が り,第
二次石油危機後の 1981年 にはピークの 313ド ル となった。原油価格が暴 落 した 1980年 代央では,LNG価
格の底値 は 1988年 の 157ド ルである。その後は,1999年
ま で 200ド ル弱の価格水準が続 いていた。 しか(単位 :%) 90 1 300 250 200 150 100 50 0 75 60 45 30 15 ■■■そ の他 │ E=コ国 産 天 然 ガス│ 田回]石炭 系 ガス 滋〃Z石油 系 ガス 匡 =コLNG ―O―LNG割合 _引ローオマーン ー0-インドネシア │―■―カタール ■X■オーストラリア │―毯=アラブ首長国連邦 .-0-マレーシア │-0… ブルネイ
│
│ │
│―モト‐アメリカ│
1965 70 75 80 85 90 95 図1-6
都 市 ガスの原料構 成 (資料)0日
本ガス協会 『ガス事業便覧』 (単位:名目,ドル/ト ン) 1969 72 75 78 81 84 87 90 93 96 99 図2-l LNG価
格 の推 移 (資料)財
務省『日本貿易月表』 400 350 300 250 200 ︲50 ︲00 50 ア し,2000年
になると,石
油 をは じめ として世界 の化石燃料市場 はタイ ト化 し,価格 は高騰す る。LNG価
格 も例外 で はな く,前
年 を4割
近 く上 回 る水準 とな り,前
述 の251ドル となって い る。(2)輸
出国別LNG価
格 さらに,輸
出国別のLNG価
格 を上辟交してみ ると,次
の ような傾向が市雀認で きる (図2-2参
照)。 第1は,新
規プ ロジェク トのLNG価
格 は, 常に相対的 に高 い価格で導入 されて来たことで ある。新規LNGソ
ースが導入 され る初年度 目 につ い て 注 目す れ ば,当
該 プ ロ ジェク トのLNG価
格 は既存LNGプ
ロジェク トの価格 に 比べ て割高な傾向 にある。これは,1970年
代,80年
代 を通 じて,ま
た1990年代 の新 規 プ ロ ジェク トについて も同様である。 この原因が何 に由来す るのかは不明だが,一
般 にプ ロジェク トの立 ち上 げ時 期 には,早
期 に固定費の回収 を 目 して,高
めの価格設定 を行 う傾向があるのか もしれない。 第2に,1990年
代 で導 入 されているLNGプ
ロジェク トの価格 は相対的 に高めで あ るこ と だ。具体的には,オ
マー ン,オ
ース トラ リアや ●騒
ヨ E 天然 ガス(LNG)の
価格形成 に関す る考察 (単位:平均100に対する比率) 140 130 120 110 100 90 80 70 60 1969 72 75 78 81 84 87 90 93 96 99 引日―オマーン ー0-インドネシア …+… カタール …※―オーストラリア ー UAE ―o― マレーシア ー0-ブルネイ ー日…アメリカ │ ―●…アルジェリア 四半期)の値であること,な
どだ。①FOB価
格 を用いることは,原
油タンカーに比べてLNG
船のフレイ トが高いために,そ
の分LNG力
浩1 高になる。②LNG価
格を当期の原油価格に リ ンクさせ ることは,原
油価格が上昇 してゆ く局 面では,他
国のLNG価
格上昇に先駆けて,イ
ン ドネシア産LNG価
格が上昇する。下降局面 で もイン ドネシアLNGが
最 も早 く反応するこ とになるが,1980年
代央以降では上昇局面の方 カテロ対的に長い。(3)エ
ネルギー相対価格LNG価
格は,導
入当初か ら原油価格 を意識 して決め られたものであった。 しか し,過
去の 価格推移を見れば必ず しも原油等価が保たれて いたわけではない。それどころか,原
油等価の 水準にあることは極めて異例のことである。 日本が輸 入する主要な化石燃料について,百
万BTUあ
た りで各々の価格 をプ ロットす る と図2-3が
得 られる。また同図には,LNGと
原 油 との相対価格比 も示 されている。この図から, 他燃料 との比較 において,LNG価
格は次の よ 図2-2
輸 入LNG価
格 の相 対 比 率 (資料)財
務省 『 日本貿易 月表』 (注)グラフ上の値 は,輸
入平均LNG価
格 を 100と した ときの輸 出国別のLNG価
格 の比 率 カタールか らのLNG価
格 は,そ
れ以前 に導入 されて きたブルネイやマ レーシアに比べれば, 明 らかに割高である。 これは,新
規LNGプ
ロ ジェク トになればなるほど,採
掘条件 として厳 しいガス田の開発 に向かわ ざるを得 ないため に,限
界費用が高 くなるこ とを示 しているので あろ う。既 に,LNGの
製造装置に関す る技術 は 成熟 し,規
模 の経済 も現 れて きているはずであ る。 しか し,天
然ガス開発に関わる探鉱,採
掘,LNG基
地へ の運搬 といった費用が嵩む傾向 に ある。 第3には,イ
ン ドネシアのLNGプ
ロジェク トは,導
入後 の経 過時間 は長 い ものの,他
のLNGプ
ロジェク トに比べて割高である。 この 理 由は,イ
ン ドネシアLNGの
価格 フ ォー ミュ ラーに由来すると考えられる。つまり,①
イン ドネシア産のLNG価
格が依拠す る原油価格 は,日本着CIF価
格でな くイン ドネシアの輸出FOB価
格 を用いていること(この改定は1980 年代半ばに行われた),さらに② リンク対象の原 油価格の値は,前
期の ものではな く同時期 (同うな傾向があることが分か る。 第1に
,LNG価
格 は,原 油価格 と同様 な上下 運動 を示 して きた ものの,そ
の振幅は相対的 に 小 さい こ とで あ る。各エ ネル ギーにつ いて, 1970年以降の価格変動率 (前年比)を
み ると, その単純 平均 は原油が14.3%で
あ るの に対 し て, LPGは 12.6%, LNGが
9.9%,一
般炭 は4.0%で
あ る。一般炭の価格変動率が最 も小 さい ものの,LNGも
原油や石油製品 に比べ れば価 格 は相対的 に安定 していた,
とい うことがで き る。 第2に,LNG価
格 は,原 油価格が高騰 してい た時期 (1973年か ら1984年まで)に
は,原
油 に対 し相対的 に割安であったことだ。その反対 に,原
油価格が低 下傾向 をた どる時期や安定 し てい る時期 (1972年以前,お
よび1985年以降 か ら現在 まで)においては,LNGは
原油 に比べ て常に割高であった。過去30年
余 を通 してみ れば,割
高な時期 は全体の3分
の2で
あ り,圧
任│1自勺0こ‐長:い。 こうした傾向があるの は,LNG価
格 の決 め 方 に由来 している。つ まり,LNG価
格の先行指 標 は原油価格 であ り,1970年
代 には上昇す る原 油価格の後追 いでLNG価
格が設定 されていた ため,価
格の上昇 局面 では必ずLNGが
原油の それ を下回っていた(5)。 また,原 油価格が安値 に 安定 して しまった1980年代央 か らは,産
ガス 国の要請 に従 いLNGの
価格 フ ォー ミュラーの 見 直 しが逐 次行 われ て来 た。価格 フォー ミュ ラーの見直 し交渉 におけるパ ワーバ ランスは, どち らか と言 えば産ガス国の方が強 く,産
ガス 国が不利益 を被 らない形 で改定が行われて きた 感 は否めない。 2.2。 日本向けLNG価
格 フォー ミュラー(1)価
格 フ ォー ミュラーの概念 契約 に盛 られ るLNG価
格 フ ォー ミュラーの 詳細 は,売 買取引の 当事者だけに しか解 らない。 しか し,お
よそ次の ようなフォー ミュラーが存 在す るこ とが知 られている。 (1)y=α +bχ
(LNG/原油価格比率:対原油=100) 一く汁―LPG I
(単位:ドル/百万BTU) 1965 70 75 80 85 90 95 図2-3
エ ネル ギー の相 対価 格 (資料)財
務省 『 日本貿易月表』 (注)各
エ ネル ギー とも日本着CIF価格 180 160 140 120 100 80 60 40 20 ―{}―LNG
-0-原
油 ―査―C重油 ―●―一般炭 ――――LNG/原│ 油比 2000天然 ガス
(LNG)の
価格形 成 に関す る考察yは
LNGの
熱量 当た り価格 で あ り,Xは
同 じく原油価格である。定数の αは,安
定的 に 資本費 を回収す るための値であ り,ι は原油価 格 にスライ ドさせ る係数 となる。 この関係 を図 で示せば,次
の図2-4になる。LNG導
入初期 における価格設定において, 参考 とすべ き価格指標 は原油価格であった。 こ れは極めて 自然 なこ とである。LNGは
限界的 なエ ネル ギー源 で あ り,そ
の市場 は未成熟 で あった。なにより,原
油 は天然 ガスに とって最 大の競合相手であった。 また,LNGプ
ロジェク トは初期の設備投資 が膨大であるため,安
定 した投資回収の術 を模 索せ ざるを得 ない。LNG価
格 の全て を原油価 格 にスライ ドさせ ていた ら,原
油価格の水準が 高い間は良いが,安
値 に転 じた場合 には資本回 収が危 うくなる。そのため,固
定費回収 を目的 とした定数 αが設定 され,同
時 に原油価格 に依 存す るパ ラメータ ろが用意 された。 しか し,原
油価格 と熱量等価 である45°線 と の交点(E)をどの辺 りにす るかは,極
めて難 し い問題である。 この交点 は,産
ガス国か らすれ ば,い
わば,予
想 (あるいは 目標)原
油価格水 準 とも言 えよう。y=α
+ιXで
示 さ れ るLNG価
格 フ ォー ミュラーは,供
給国に とっては価格の下支 えに 寄与す るものであったが,一
方の消費国に とっ て もメ リッ トがあった。なぜ な ら,原
油価格が 急騰局面(図上の交点Eよ
りも右 に位置す る場 ´へ)を
迎 えて も, この方式 によってLNG価
格 は相対的に廉価 に維持 され るため,購
入燃料の 価格安定が担保 され る と考 え られ るか らで あ る。 とりわけ,三
度の石油危機 を経験す る過程 や その直後では,将
来の原油価格 は一本調子 に 上昇 してゆ くもの と想定 されていたため,こ
の 方式 は大 いに歓迎 された と言えるであろう。 し か し,言
うまで もな くこのフ ォー ミュラーに従 う限 り,原 油価格が 目標水準 よりも安い場合(交 点Eよ
りも左 に位置す る場合)に
は,LNGは
原油 に比べ て割高なエネルギー となる。(2)LNG市
場の変化 と価格交渉 時間の経過 とともに,LNG価
格 を設定す る ための前提 となる市場条件 は変化 して くる。実 際,価
格 フ ォー ミュラー を設定 した当初の思惑 とその後の市場の姿は様相 を異 えている。 この 市場環境の変化は,①
LNG市
場の成熟。拡大, ②競合燃料の原油価格市場の変化,
といった動 きを背景 としてお り,価
格フォー ミュラーの変 更にも大 きな影響を及ぼ してきた。 ①のLNG市
場の成熟。拡大について言えば, 需給双方での展開がある。需要サイ ドを見れば, アジアのLNG輸
入国は日本だけではな く,韓
国や台湾 といった新興国が登場 してきた。一方, 供給サイ ドでは,初
期のアラスカやインドネシ アに留 まらず,オ
ース トラリアや中東諸国にお けるLNGの
開発輸入 も有望なプロジェク トに なった。つまり,消
費者 。生産者双方における 市場参加者の数の拡大が,LNG市
場 を徐々に 成熟化 させ,石
油 とは異なった独 自の市場 とし て認知 されるようになってきている。 ︵ 一 e ∽ 壼 3 Ю 総 .P ヽ日 ミ 給 ︶ 華 暉 O Z コ イ ン 夕 を ノ=α +らχ `′ 訂│″″ 僣ノ 原 油 価 格 (S/MBTUあるい は$ん1) 0 図2-4 LNG価
格 フ ォー ミュラーの概:念また
,②
原油価格の変化がLNG価
格に及ぼ した影響は甚大である。導入か ら間 もない1970 年代は二度の石油危機 を経験 し,原
油価格は一 方的な上昇基調であった。 このため,こ
の時期 におけるLNG価
格 は,原
油価格の上昇率 に100%ス
ライ ドさせ ることが産ガス国にとって は好 ましいことであった(つまり,定
数 αを無 視 して,原
油スライ ドの係数 ろを1近
くに引 き 上げる)。 もちろん,そ れは消費国にとっては望 ましいことではない。 日本 を合む彼 らにとって 望 ましいことは,LNG価
格が原油価格 よりも 割安であり続けることである。 さらに,1980年
代央に入ると原油価格は暴落 し,長
期に安値が嚇:く 状況を迎える。その状況 下で70年
代の価格 フォー ミュラー (原油価格 に100%依
存 させ る方式;原油へのスライ ド係 数bを 1近
くにしてお くこと)を 糸倒寺すること は,逆
に,産
ガス国にとっては都合が悪い。な ぜなら,原
油価格の低下 と同一歩調でLNG価
格 を値下げ し続ければ,固
定費の回収が危ぶま れる事態 となるか らだ。そのため,価
格フォー ミュラーの再検討は,産
ガス国にとって死活間 題 となった。(3)価
格交渉に関する議論 こうした時代 とともに変化 した価格交渉に関 する記述には,次
のような ものがある。 ① 1980年 代初頭 原油価格が最高値 をつけていた時期 (1981 年)に
おけるLNG価
格に関する議論は,次
の ようなものであった。 「LNG価
格は,第
一次石油危機以降,ほ
ぼ原 油価格上昇のあとを追 う形で引 き上げられてき た…。従来は当初取 り決めたベース価格に対す る価格上乗せ部分のみをその都度石油価格に リ ンクして動かす というのが普通であった。 とこ ろが,最
近 になって産 ガス国側 か らFOBや
CIFに
おける原油価格 とLNG,天
然ガス価格 を等価 にさせ ようとい う主張が 目立 ちつつあ る(6)。」 また,「1980年 のOPECア
ルジェリア総会で は,LNG価
格 を熱量等価で原油 とFOBで
等 価 にすべ きであるという決定がなされ,その後,LNG価
格は急騰 し,さ
らに産ガス国の品質プ レミアムの要求 も強 く,LNG価
格が他のエネ ルギー源 と上麟交して割高な水準で推移 してゆ く ことは避けられなぃ(7)」 , としてぃる。 1981年 には,UAE(ア
プダビ)のLNG価
格 は,マーバ ン原油 とCIF等
価 となっていた し, イン ドネシアLNGに
ついて も表 2-1に 不す ような原油価格 との運動方式が採用 され るに 至った(8)。 こうした価格に関する議論を要約すれば,二
度の石油危機 を経験 し,石
油価格が高水準 に あった時期において,産
ガス国はLNG価
格 を 原油に100%依
存させ る方式を明 らかに求めて いた,
ということになる。 ② 1980年 代央 そ して,国
際エネルギー市場がだぶ付いてい 表2-1 1980年代初頭 の改定LNGフ
ォー ミュラー (イ ン ドネ シア)1.FOBベ
ース価格 (1973年12月時点1.29ドル/100万BTU)を
次の要素で運動させる ①インドネシア原油平均FOBの
変動×90%
②固定アップ率(3%/年
)×10%
2.運
賃は実コス トを上乗せ (出所)日本石油株式会社 『石油便覧 1982』 p.485天然 ガス
(LNG)の
価格形成 に関す る考察 た1980年代央 で は,次
の ような記述 を確認す るこ とがで きる。「原油のGSPに
リンク した契 約が,こ配的である現在のLNG価
格決定フ ォー ミュラーは,ス
ポ ッ ト取 り引 きやネ ッ トバ ック 取 り引 きの増加 によって,GSPが
形骸化 してい る現状 には適合 しない…。・…最近の契約交渉で は天然ガスの世界的供給過剰傾 向 を背景 に し て,テ
イク・ オア 。ペ イ条項 お よび価格条件 を 見直 し,
よ り弾力的な運用 を図 る機運が出て き ている(9)。」 価格 フ ォー ミュラーに直接触れた文面 は登場 しないが,産
ガス国 と消費国 との間のバーゲニ ング・パ ワーが徐 々に消費国側 に向いているこ とが分 る。しか し,LNG価
格 に関す る限 り,消
費国側 が大 きなメ リッ トを得 た状況ではなか っ た (詳しくは後述)。 ③ 1990年代 また1990年
代 に入 ると,LNGの
供給サ イ ド か ら,LNG価
格 を上方修正す るための二つの 提案が行われ るようになった(10)。 新規LNGフ
° ロジェク トの投資額 は,170億
ドル とも300億
ドル とも言われ る巨大 な ものである。LNGの
販売価格が1バ
レル あた り20ドル前後の原油 価格 に リンク して いたの で は,こ
う したプ ロ ジェク トをとて も採算ベースに乗せ ることはで きない。そ うした判断 を行 った供給側の提案が, 次の二つである。 一つ は,LNG価
格 を原油価格 との リンクか らはず して,コ
ス トベースで設定 しようという ものであった。例 えば,実
現 には至 らなか った ものの,イ
ン ドネシアのナツナ・ プ ロジェク ト では,コ
ス トベースの価格提案 を基 に,需
要家 探 しが行われていた とい う。その価格水準 は, 原油価格 を大 きく上 回るものであったか ら,消
費国 には到底受 け入れ ることがで きるような代 物 ではなかった。 もう一つは,需
要家サ イ ドに立 ち,競
合エネ ル ギー・ システム との上辟交か らLNG価
格 を設 定 しようとい う議論である。それは,石
炭 な ど の競合燃料 システムに対 してLNGシ
ステムが 持つ様 々なメ リッ トを価格プ レミアム として反 映 させ た上 で,価
格 を決 め ようとい う試みであ る。例 えば,石
炭火力に比べてLNGコ
ンバ イ ン ド・サイクル は,発
電効率が著 しく高 く (例 えば,石
炭火力の35%に
対 して50%),環
境対 策費用 も小額 で済 む。さらに,LNG火
力の資本 費は石炭火力のそれ よ りも安い。 こう した点 を 加味すれば,LNG価
格 は,従
来の原油 リンクの 価 格 フ ォー ミュラー以 上 に高 い もの で あって も,需
要端では十分経済性 がある,
とい う主張 だ(n)。 この ような主張は,LNG開
発を進める国際 石油メジャーズや産ガス国から出されたもので ある。 コス トベースやプ レミアムを加味 してLNG価
格 を設定 しようという提案は,長
引 く 安値原油の呪縛か らLNG価
格 を切 り離そうと する,供
給側の窮状 を反映 したものであった。 2。3.代
替エネルギー等価の意味LNG価
格が競合エネルギー・システムに対 するプ レミアムを考慮 して設定されるべ きだ と いう主張は,至
極当然 とも考えられる。長期的 なスパ ンをとり,市場が完全に競争的であれば, 財価格 には一物一価が成 り立つはずである。LNGが
他の燃料 に比べて割高であって も,市
場での利用が拡大 しているのであれば,他
財に 比べてLNGを
利用する経済的メ リットが存在 するか らに他ならない。 しか し,こ
のような考え方はコンセプ トとし ては明瞭であるものの,実
際 にはそれを価格 フォー ミュラー として用いることは,そ
う容易 ではない。例えば,原
油 との等価 を考えた場合で も,等価計算にはい くつ ものフェーズがある。 先にみた①輸出国における輸出原油 との
FOB
等価,②日本着のCIFベ
ースでみた原油等価, ③ユーザーの炉前で測る (国内搬送費などを合 めた)原
油等価,
さらに④競合エネルギー・ シ ステムとの等価(プレミアムを含む),な
ど様々 である。 1990年 代 に見 られたユーザーが用いるエネ ルギー・システムを考慮 して,LNGプ
レミアム を価格に繁栄 させ るという方法について も,計
算前提に用いる諸元にコンセンサスを得 ること は難 しい。それは,個
別ユーザーが掴別の事情 を抱えていて,そ
の一般化が喫任しいためだ。例 えば,LNGコ
ンバイン ド・サイクル発電の資本 費を欧米 と比べれば,
日本のそれは欧米のそれ の2倍
である(12)。 日本国内において,電
力会社 が抱える新規サイ トの建設費についても,そ
の 振れ幅は大 きい。資本財に関 して国境の壁は相 対的に小さいはずであるものの,現
実には,大
きな差異が生 じている。 さらに,LNGフ
°レミアムをどこまで考慮す るかによって,計
算結果は相当異なって くる。 例 えば,考
慮すべ きLNGプ
レミアムとして石 油代替 としてのナ ショナルセ キュ リティもあ る,
といった議論さえでて くる。こうした考え 方 は,1990年
代 に流 布 した「統合 資源計 画(Integrated Recource Planning)」 の考え方
をベースにしている(13)。 いずれに して も
,LNGプ
レミアムの範囲を どこまでにするか,そ
の価値評価 を行 うための 前提諸元にどのような値 をどうとるか,は
議論 が多ぃ(14)。 また,そ
れを踏 まえた価格交渉にし て も,
どこまで考慮するかは結局のところ,売
り手 と買い手の力関係次第,
となって しまうの である。3.価
格 フ ォー ミュラーの推 定3.1.推
定の方法 これ まで述べて きた ように,過
去 お よび現在 もLNG価
格 には「LNG価
格 フ ォー ミュラー」 が存在 している。二つの係数 αと らは,どの よ うな値 を採 って来たのであろ うか。実際の係数 は,LNGを
売買 してい る当事者 に しか解 らな いが,こ
こでは,実
績 データを もとに統計的手 法 を用 いて,そ
の推計 を行ってみ る。 推計 に用いたデータは,日本着CIFベ
ースのLNGと
原油の年度価格データである。推計期 間 を約10年 と し,期
間 をず ら しなが らパ ラ メータ αと みの変化 をみてゆ く。推計 された式 の適合度やパ ラメータに関す る検定値 について は フ生ppendix lこ一覧 し′こ。 既 に見 て きた ように,個
別LNGプ
ロジェク トにおける交渉 では,
リンク対象の原油価格 は 産ガス国が輸I出す る原油 のFOB価
格 をベース に していた り,四
半期前の原油価格の値が1来用 され るケースがあった りと,細
部 においては年 度 のCIFベ
ースデータは必ず しも実態 を反映 していないか もしれない。 しか し,お
よその傾 向 は年度のCIFデ
ータに よって も把握 が可能 と考 えられる。 1980年代以降,推 計 されたLNG価
格 フ ォー ミュラーでは,い ずれ も「LNG=原
油等価線(先 の図2-4における45°線)」との交点(同交点E)
は,バ
レル 当た り20ドル ∼30ドルの範囲 にあ る。 こうしたブ レイク・ イープ ン・ ポイン トの 位置(交点E)は
,LNGの
価格交渉 に直接携 わ る関係者 との ヒア リングか らも支持 されて い る。それゆえ,統
計的 に推計 された以下の価格 フ ォー ミュラーは,か
な りの確度で現実のそれ を表現 してい ると考 えて良いだろ う。天然 ガス
(LNG)の
価格形 成 に関す る考察3.2.価
格 フォー ミュラーの変化 横軸 に原油価格,縦
軸 にLNG価
格 をとり, 推計 された価格 フォー ミュラーを図に示す と, 次の図3-1が
得 られ る。 図 に示 され るように,原
油価格 の40ドル水 準 に対 して最 も安 い価格 フ ォー ミュラー を示 し ているのが,〈1969-1975〉 年で推計 されたライ ンである。 当時の原油価格水準 はバ レル 当た り 10ドル を下 回って い た た め,45°線 (原油=
LNG等
価線)との交点は7ドル前後であった。 それが,1970年
代 の第一次石油危機 を経 て原 油高価格時代 を迎 えると,徐
々に傾 き(ι の値) に修正が加 え られ,LNG価
格 をよ り強 く原油 価格の変動 に追随 させ ようとしていること力ヽ売 み取れる。図では,そ
の傾向を「① 1970年 代: 傾 き(b)の
上方修正」 として示 している。 しか し,1980年
代に入 り,原
油価格が暴落 と 安値で低迷する時代 を迎えると,切片の高さ(定 数の α)を 引き上げなが ら,傾
き (b)を 緩やか にする方向に向かう。産ガス国にとっては,低
迷する原油価格に100%依
存することな く,固
定費回収 のため に定数 αの引 き上 げ を狙 った 価格交渉 であったのであろ う。これ を図では「② 1980年代 :切 片 (α)の
上方修正 と傾 き(b)の
下方修正」 とい う表現 で示 した。 しか し,こ
う した傾向は〈1986-1995〉年の推計(つま り,1990
年前後)で
終焉す る。 この期間以降は,徐
々に ではあるが原油価格 は緩やかに上昇 してい く。 そ して現在 にいたる過程では,係
数の αと み の値 は,再
び,切
片 を下方 に修正 し,傾
きを原 油価格 に依存 させ る方向に向かってい る。 それ を図中では「1990年代 :切 片 (α)の
下方修正 と傾 き(ι)の上方修正」として示 した動 きであ る。つ ま り,現
在 は原油価格の水準が徐 々に上 昇 して きているため に,原
油 スライ ドの割合 を 高め る方向でLNG価
格が決 め られているよう に見 える。3.3.原
油価格水準 と価格 フォー ミュラー 上 で指摘 したように,原
油価格の水準やその 価格動向 は,LNGの
価格 フ ォー ミュラーに変 化 を もた らして きた。 この関係 をさらに明確 に LNG価格($ん1) 図3-1
推計 され たLNG価
格 フ ォー ミュラー (注)図
上の最 も大い線が「原油=LNG等
価線 (45°線)」 を示す。 ③ 1990年 代 切片(α)の下方 修正 と傾 き(b) の上方修正 ①1970年 代 傾 き(b)の上方修 正 ②1980年代 切 片(α)の上 方 修 正 と傾 き(b) の 下方 修 正 原 油 価 格($′bl) 10 15 20 35捉えるために
,図 3-1で
示 した切片 αと傾 きb の変化 を,原
油価格水準 との関係から捉え直 し てみる。それを示 したものが,図
3-2で
ある。LNGの
導入初期において,LNG価
格フォー ミュラーが持 つ切片の高 さ(α)は
2ド ル/バレ ル,原
油価格に対するスライ ド係数(傾き ι)は0.6程
度であった。それが,1970年
代の原油価 格の高騰 とともに,原
油価格へ依存を高め,係
数bは
1.0まで上昇 してゆ く。この時点で,ほ
ぼLNG価
格は100%原
油価格の変化に追随す るフォー ミュラーが形成 される。その頂点は, 推計期間 〈1976-1985〉 年の値である (1980年 前後)。 しか し,そ
の後,原
油価格の低迷 とともに, 切片 αの高 さは上昇 し,逆
に原油スライ ドの係 数 みは低下する。この傾向は,原
油価格が低下 傾向を示す 1980年 代お よび 1990年 前後半 ま で持続 される。 ピークは推計期間 く1986-1995〉 年であ り,切
片 αは 12ド ル/バレル,傾
き らは0.4近
くまで低下 している。 ところが,国
際石油市場のタイ ト化にともな αの値:切片の高 さ(Sんι) い原油価格が徐 々に上昇 局面 を迎 える1990年 代後半 になると,切
片 αの高 さは低下 し,逆
に 原油価格へのスライ ド係数(傾き b)は 上昇 している。最新時点の推計では
,αは
7.1ドル
/バレ
ル
,らは 0.73で ある。
3.4.価
格 フォー ミュラーか ら見 た価格 変化 の 要因分析 上 では,価
格 フ ォー ミュラーに用い られて き た係数 αと みの変化の過程 を見て きた。こうし た係数の変化 を手がか りに して,実
際のLNG
価格 の変化 をい くつかの要素 に分解す るこ とが で きる。具体的には
,①
固定費要因
(上記価格フォー
ミュラーの係数 αを示す
),②
スライ ド係数要
因
(同,係
数 わを示す
),③
原油価格要因
(同,Xを
示す
)の3要 因に分けて
,変
動 した価格分
を検討 してみる
(15)。これをまとめたものが
,図
3-3で ある。
らの値 :傾きの大 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 ‐4 原油価格(S/bのo 10 20
図3-2
原 油価 格 水 準 と係 数aと bの関係 (注)く 〉内の値 は,推
計期間 を示す。横軸の原油価格 は推計期 間の平均値。 ‐1995〕> <クの高さ> <
1980‐ 1969-1974)> く( 1976-1985,> 10 <らの傾き>
く(1976-1985〕 > 1980-1989 > -1974 原油価格(Sんθ) 30天然 ガス
(LNG)の
価格形 成 に関す る考察 4。今後の
LNG価
格 のあ り方
4.1.フ
ォー ミュラー改定の背景(1)原
油 に比べ て割高なLNG
パ ラメータ αと みを変化 させ て きた こ とに よ り,結局の ところ,LNGが
原油 に比べ て割安 な状況(LNG価
格が原油=LNG等
価線の交点Eよ
りも右側 に位置す る状況)が
顕在化す るこ とは,1970年
代 を除けば,極 めて稀有であった。 繰 り返 す が, y=α
+ιχ とい う価 格 フォー ミュラーを用 いるこ とは,LNGが
原油 よ りも 割安 になる可能性 を保証 した ものである。 しか し現実には,そ
れ に近い状況が生 じると,産
ガ ス国の要請に従 って価格 フォー ミュラーの変更 が行 われた。そのため,1980年
代 以 降で は,LNG価
格 は恒 常的 に原油 に比べ て割高な燃料 であ り続けて きた。 なぜ,産
ガス国は,彼
らの都合の良いようにLNG価
格 フ ォー ミュラー を変更す るこ とがで きたのだろ うか。言い換 えれば,な
ぜ,消
費国 は常に割高なLNGを
購入せ ざるを得 なか った のであろうか。とりわけ,1980年
代央以降にお いては,国
際エネル ギー市場 は全面的 にグラ ッ ドな状況 にあ り,そ
れ は天然ガス市場 も例外で はなかった。そ して,消
費国が価格交渉のバ ー ゲニ ング・パ ワーを持 つ こ とがで きた時期 で あった。に も関わ らず,価 格交渉のイニシアテ ィ ブは,
どうして産ガス国側 にあったのであろう か。その理 由は,LNGが
持 つ特異 な市場構造に 求め る しかない。(2)LNGの
市場構造 と価格 上 で上 げた問いの答 えを先取 りすれば,LNG
市場が「競争無 き市場」であったためであろう。 つまり,需
要サイ ドを見れば,① LNGの
世界 最大の消費国が 日本であったこと,②
日本にお ける具体的なユーザーは,電
力や都市ガスとい う地域独 占が保証 された公益事業であったこ と,③
公益事業の料金は総括原価方式がす采用さ れてお り,燃
料価格は全て適正なコス トとして 料金に転嫁できたこと,な
どである。一方,イ共 の 図3-3 LNG価
格 変化 の要 因分 析 (注)横軸 で示 され る年度表示 は,α お よび みを推計 した際 に用いた推計期間の期間央の年度。 同様 に,実績LNG価
格の値 は当該単独年の値 ではな く,推計期間の平均値 である。価格変化実 績 について も同 じである。 スライド係数要 因(△b) 実績LNG価格(右軸→) ____1998 原 油価格 要 因 (△χ) 固定費要 因(△ク)給サ イ ドを見れば
,④
主要なLNG輸
出国はイ ン ドネシア,マ
レーシア,ブ
ル ネイ といった 日 本 に とってはかけが えの無 い友好的 なア ジア諸 国であった。 三度の石油危機 を経て,
日本のエネル ギー政 策 は天然ガス(LNG)を
原子力 と同様 に,脱
石 油 を実現す る代表的なエネル ギー源 として位置 付 けて きた。そのため,天
然 ガスの安定供給 は, 何 よ りも優先 され る社会的土壌があった。 さら に,実
際のLNG購
入者である電気事業者や都 市ガス事業者 にとって,燃
料 コス トは無条件 に 料金原価 に組 み込む ことがで きる「適正」 コス トであ る。そのため,本
来的 に雌雄 を決す るよ うな価格交渉 を行 うインセ ンテ ィブは存在 しな か った と考 えられ る。加 えて,電
気事業者が用 いる天然ガス仕様の コンバ イン ド発電や都市ガ ス事業者が商品提供す るコー ジェネ レーシ ョン は,発
電効率が高 く,環
境 対策費用 も相対的 に 小 さい。それゆえ,LNGが
原油 より多少割高で あって も,エ
ン ドユースでの経済性 は確保 され るといった事情 も働 いたのであろう。 さらに,ア ジアを中心 としたLNG輸
出国は, 脱 中東 を探 る日本 に とっては, まさにあ りがた い近場の供給国であった。 とりわけイン ドネシ アは,
日本のODA資
金 を最 も傾注 してい る相 手であ る。 こう した諸国 と長期的な友好 関係 を 保 とうとすれば,何
が何で も価本割直下げを実現 させ ような どという意識 は,到 底わいてこない。 原油 との比車交において, LNG価
格力淋目対的 に安価 になるチャンスは確かに存在 した。 しか し,上
の ような事情 によって,消
費国である日 本が産 ガス国の意向に沿 う形で,適
宜,フ
ォー ミュラー改定 を受 け入れて きた と考 えられ る。4.2.産
ガス国に とっての価格 フォー ミュラー 価格 フ ォー ミュラーは,結
局,産
ガス国の為 の もので しかなかった,の
ではないか。フォー ミュラー上の係数 αおよび みは,原油価格の水 準を呪みなが ら,適
宜,産
ガス国の意向に沿っ た形で調整 されてきた。この調整過程は,LNG
価格 を「目標 とする原油価格」並の水準に保つ ことであったといえる。ここで言う「目標 とす る原油価格」の水準 とは,実
際の原油価格のこ とではな く,価
格フォー ミュラー算式 と「LNG
価格=原
油価格等価」の45°線 との交点Eの
こ とである。y=α
+ろχ とい うフォー ミュラーは,結
果 的には,産
ガス国の都合の良い方向で修正 され 続け,消
費国である日本の利益 (原油 よりも安 価なエネルギー源)は
顕在化 しなかった。これ が高いす ぎであるならば,少
な くとも,1980年
代以降は,事
実そうであった。 原油を生産 し,同
時に天然ガスも生産 してい る産ガス国にとって,1980年
代以降のLNG価
格 フォー ミュラーは,減
少 す る原 油 収 入 をLNG取
り引 きで補填す るための手段だったの ではないか。価格交渉においては,「目標 とする 原油価格 (45°線 との交点E)」 が前提 として存 在 し,そ
れに見合 うLNG価
格の水準が常に意 識 されてきたに違いない。現実には,産
ガス国 の思惑以上に原油市場は軟調で,原
油価格は安 値で推移 した。その結果,LNG価
格は恒常的に 原油価格 より割高な もの となったのか もしれな い。 しか し,そ
のLNGの
割高さが,産
ガス国 であり,か
つ産油国である彼 らの目減 りした原 油収入を補填 し続けていたのであろう。 次 に示す図 4-1は,前
章で推計 された価格 フォー ミュラーの係数 αと らの軌跡,お
よび 「日標 とする原油価格 (45°線 との交点E)」 を 与えたとき,そ
れを実現するための係数 αと み の組み合わせ を示 したものである。つまり,E=
15ド ルか ら始 まりE=35ド
ルの 5つ の線は,1970年 代 :石 油高価格 時代に志 向 され た領域 原油 依 存 大 固定費大 固定費小 1980年 代 :石 油低価格時 代 に志 向 原 油 依 存 小 (1998) の -0:2-=15ド ル
E
天然 ガス(LNG)の
価格形成 に関す る考察 らの係数 「目;標とする原油価格」がバ レルあた り15ド ルか ら35ド ル までの範囲において,各
々のE
を実現す るための αと らの組 み合 わせ をプ ロットした ものである。 これを見 ると,1980年
代以降の期間で推計 さ れた αと らの軌跡 は,E=25ド
ルのラインに 極めてうまく重な り合っている。これは,1980
年代以降の価格フォー ミュラーにおいて「目標 とする原油価格」が 25ド ル/バレルであったこ とを物語る。そのための係数 αと らの組み合わ せは,図
の「E=25ド
ル」ライン上に無限に存 在 しているが,そ
の選択 としては次のような傾 向を示 した。 それは,「目標 とする原油価格」水準に対 して, 実勢の原油価格が安い時 には,固
定費の係数 (α)を引き上げ 原油価格が上昇する局面では スライ ド係数(b)を引 き上げる。このような対 E=35ドル E‐30ド ル │ =25ド ル-5 0 5 10
α
の潔数
(切片
):S/b`20 図4-1
目標 とす る原油価格水準 と係数 α,ら の組 み合 わせ (注1)日 標 とする原油価格水準 (E)を 与えたとき,係
数 αと bの 組み合わせ は,次
の ように求めることができる。価格フォー ミュラーはy=α+ιχ であるか ら,y=Xが
等 価価格で,こ れを目標原油価格 とすれば,係
数 αと ろには,次
の関係が成 り立つ。y=
χ であるか らX=α
十 "亀 その条件下の αと らは,X=α
/(1=わ )。 χ=一定(E)で あ れば,α とιは,α=(1-ι)E, b=1-(α/E)(注
2)図
中の「E=15ド
ル,E=20ド
ル,E=25ド
ル…」のEは
「目標 とする原油価 格 (45°線 との交点E)」 水準 を示す。 また,「推計 された αとらの軌跡」曲線の上 に表示 した( )内
の値は,推
計期間央の年度を示す。 応であった と言 えよう。係数 αと みの組み合わ せ は,LNG価
格の決定 において,固 定費依存 を 高めた り,原
油ス ライ ド依存 を高めた りとい う ポー トフ ォリオを産ガス国に与 えた ような もの である。そ してそれは,結
果 として産 ガス国側 の利益 を保証 したに過 ぎない。4.3.価
格 フォー ミュラーの功罪 仮 に,上
で み て きた ような価格 フォー ミュ ラーに依存 しないで,原
油価格 に100%依
存 じ た価格体系でLNGを
輸 入 していた ら,
どうで あったのだろ うか。これは,LNGの
価格安定化 な ど意識せず に,LNG価
格 は原油 と熱量等価 であった場合,
とい う仮定である。 わが国がLNG輸
入 を開始 した1969年か ら2000年
までの累積輸入金額 は,約 1,510億 ドル (実績推定)で
ある(図4-2参
照)。 これに対 して
,LNGを
原油 と熱量等価 で輸 入 した と仮 定 した場合 の それ は,1,430億
ドル と計 算 され る(16)。 この計算結果か らすれば,
日本 はLNG
価格 にy=α
+ろχ とい うフォー ミュラーを適 用 して きたこ とによって,約
80億
ドル(約1兆
円)の
所得 を産 ガス国に移転 させ て きた と言 う こ とがで きる。 価格 フ ォー ミュラーは,確
かに価格の変重妍辰 幅 を弱め る形 で機能 していた。 しか し一方で,LNG価
格 は原油 よ りも安 い時 もあれば,高
い ときもある,といった可能性 は,1980年
代以降, 可能性だけを担保 したに過 ぎず,現
実 にはそ う ではなかった。価格の安定化 という目的は達成 されたが,そ
れ は高値での安定化 という意味 し か もち得なかった と言って よいだろう。産ガス 国へ所得移転 を して きた約1兆
円の輸 入金額 は,そ
の保険代金であった と言 えるのか もしれ ない。4.4.消
費国の主権回復 これまで述べて きたように,LNG価
格およ 各年の輸入金額 (百万 ドル) 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 びその価格 フォー ミュラーは,産
ガス国の利益 優 先 で設定 され て きた ように見 え る。既 に,LNG市
場 は,日 本が独 占的な買い手で,供給国 も一握 りの産ガス国に限 られ るとい う,か
つて の ような構図 とは様相 を異 に している。アジア 市場では,韓
国 。台湾・中国・イ ン ドとLNGの
消費市場が拡大 し,供給国 も中東産油国 を合め, 拡大の方向にある。こう した現状 を踏 まえると,LNGの
価格設定 において,新
たな展開が あっ て もおか しくない。 その際,LNGの
消費大国である日本 として は次の ような姿勢で臨む ことを提案 したい。 第1には, これ までの ような価格 フ ォー ミュ ラー を破棄す る:党1吾で望むことである。既 に見 て きたように, この価格 フォー ミュラーは消費 国側 の ため に あ る もの で はな い。 フ ォー ミュ ラーに則せ ば,LNG価
格が原油価格 に比べ て 相対的 に安 くな る局面 もある,とい うわけだが, 事実上,そ
の可能性 は反故 にされて きた。原油 価格並 に価格変化が起 こって も,そ
れは決 して 長期的に不利益 を被 るものではない。 1969年以降の累積輸入金額(百万ドル) 160,000 140,000 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 1969 1974 1979 1984 1989 1994 1999 図4-2
わ が 国 のLNG輸
入金 額 (注)各年輸 入金額お よび累積輸 入金額 ともに,「原油等価の場合」とは,LNG価
格が輸 入原 油価格 と熱量等価 であった場合の想定値。ただ し,LNGの
輸 入量 は実績値 と同量 と仮定 した。 累積輸入金額(実績,右軸) 累積輸入金額(原油等価の場合,右軸) 各年輸入金額(原油等価の場合,左軸) (実績 ,左 軸)天然 ガス
(LNG)の
価格形成 に関す る考察 第2には,原
油市場の ように,ス
ポ ッ トや先 物 といった市場の創設 を進め ることである。そ れ に よって,真
のLNGの
市場価値が把握 で き る。また,こう した市場 を整備す ることにより, 価格 変動 リス ク をヘ ッジす るこ とも可能 とな る。世界的 に規制緩和が進 め られ,LNGユ
ー ザーであるかつての公益事業が市場原理 に身 を 委ね ざるを得 ない状 況では,LNG取
り引 きも 柔軟 な形態 にせ ざるを得ない。 この市場整備が 進めば,市
場でのLNG言
刊画が明示 され ること になるか ら,長
期契約 を元 にす るLNG契
約 に とって も,価 格交渉の材料 とす ることがで きる。 第3には,LNGの
プ レ ミアム評価 に関す る 研究 をさらに進 め るこ とである。プ レミアム評 価 は,
自ず と個 々のユーザーにとって違 った も のになる。それは,電
力向けのLNGと
都市ガ ス原料 とのそれでは,明 らかに異なるであろう。 しか し,規
制緩和 によって徐 々に電力会社や都 市ガス会社 といった垣根が低 くなって きている 現状 を考慮すれば,そ
して電力や都市ガスのエ ン ドユーザーの視点 に立てば,重
要 なの はエネ ル ギー・ システム全体 にかか るコス トである。 そのため,評
価 の視点 は,電
気事業者の ような エネルギー転換事業でのプ レミアム評価ではな く,あ
くまで もエ ン ドユーザーか ら見た価値が 重要 になって くるだろう。 言 うまで も無 く,そ
こには環境対策費用 も関 わって くる。環境対策費用 に深 く立 ち入れば立 ち入 るほど,ユ
ーザー特 性や工場が立地す る地 域の環境規制が コス トを決め る大 きな要素 とな り,一
般化 はい よいよ難 しくなって くるのか も しれない。しか し,こう した視点が重要 になる。 その取 っ掛か りは,か
つて国際石油市場で形成 された,市
場 ご とのネ ッ トバ ック価値 というも のが参考 になるか もしれない。 第4には,ア
ジア市場以外での天然ガス価格 の検討 を進め る必要がある。市場の特 性や市場 形成の歴史的な違いか ら,現
実の財価格 は,必
ず しも一物一価 とはなっていない。アジア市場 における天然ガス価格が不当に高い というので あれば,そ
うでない市場か ら教訓 を学ぶ必要が ある。天然ガス価格 を安 くす るための,あ
るい は消費国にとって価格交渉 を有利 に導 くための 取引材料 は何 なのか。それはアジアには無 くて, 他の市場 にはあるのか。他の市場 にあるのであ れ│よ それ をアジアで もアナ ロジー として使 う こ とがで きるのか。そ うした検討が必要である。 お わ りに 本稿 では,LNG価
格 お よび その価格 フ ォー ミュラーを中心 に,LNG市
場 の変化 を検 討 し て きた。得 られた主要な結論 は,以
下であ る。 第1に , これ まで用い られて きたLNGの
価 格 フ ォー ミュラーは,産
ガス国 。消費国の双方 に とってメ リッ トがある方式であった筈だが, 実際には,産
ガス国に味方 した方式であった。 それは,産
ガス国の意向に合わせ てフ ォー ミュ ラーに用い られている係数 α(固定費の係数)お よび ι(原油へのス ライ ド係数)が変更 され る形 で実現 されて きた。 第2に,価
格 フ ォー ミュラーの調整 において 係数 αと みの用 い方は,次の ような傾向があっ た。原油価格が上昇局面では係数 ろが,原
油価 格が下降や低位 にある局面では,係
数 αが主 に 調整のための道具 として用 い られて きた。 第3に,1980年
代以降,産 ガス国に とって「 目 標 とす る原油価オ各」はほぼ25ドル/バ レル (原 油換算)で
あ り,実
勢の原油価格 はそれ以下で 推移 したため に,LNG価
格 は原油 に比べて常 に割高で推移 していた。 第4に,仮 に価格 フ ォー ミュラー を適用せず,江
LNG価
格が原油等価 で あった とすれば,日
本 のLNG輸
入代金は約1兆
円ほ ど少 な くて済 ん だ。これは,LNGの
価格安定化のための保険代 金 とも解釈で きるが,結
:果的 には,価
格安定 は 「高値安定」 を担保 したに過 ぎない。 第5に
,LNGの
価格 フォー ミュラーが相対 的に産ガス国に有利に調整 されてきたのは,ア
ジアのLNG市
場の特異な構造が原因であった と考えられる。その構造 とは,需
要サイ ドでは, 支配的な消費国が少資源国の 日本であ り,そ
の 実際のユーザーは,燃
米羽面格を引 き下げるイン センティブを持たない公益事業であったこと, 供給サイ ドではアジアの友好国が主要なLNG
輸出国であったこと,で
ある。 既に,ア
ジアのLNG市
場は徐々に変化 して きているし,
日本のLNGユ
ーザーの事業環境 も大 きく変わってきた。こうした事情を考慮す れば,今
後のLNG価
格のあ り方は,従
来の方 式を踏襲すべ きではない。消費国側の立場か ら すれば,次のような点を再考 して,将来のLNG
価格の決定に関与すべ きである。それ らは,①
これ までの価格 フォー ミュラーを破棄す るこ と,② LNGの
スポット市場や先物市場の創設 を進 め る こ と,③
エ ン ドユーザーか らみ たLNGプ
レミアム評価の研究 を進めること,そ
の前段階としてLNGの
ネットバ ック価値の評 価を確立すること,④
アジア市場以外の天然ガ ス価格形成メカニズムの検討を行 うこと,で
あ る。21世
紀 の前半は,そ ら く天然 ガスの時代 とな るのであろ う。そ うであれば,わ
が国に とってLNG市
場 は これ まで以上 に重要 な もの とな る。その際,LNG価
格 に対す る交渉 力の有無 は,国
民経済的な課題である。研究者に とって も,上
で述べ た ような視点にたつLNG市
場の 分析 は一段 と重要な課題である。 (1)国産天然ガスの熱量:9,800 kca1/m3,LNGの 熱量 :13,000 kca1/kgで 換算 (2)「産業用LNG」 の契約名称は,1988年1月か ら 「高負荷中圧専用需給契約」 と変更 されているが, ここでは導入当初の名称を用いた。 (3)エネルギー政策上の契機は,総
合工不ルギー調査 会・需給部会 (1979)の 答申,制度支援のための法 制度は,1980年の「石油代替工不ルギーの開発およ び導入の促進 に関する法律(代替エネルギー法)」に よる。 (4)原油のオ本量::9,250 kca1/L lバ レル=0.15897 kLで換算 (5)その後,イン ドネンアは,当期LNG価
格は当期 原油価格に リンクさせ る方式 を採用 した。 (6)安田 (1982)p.139 (7)日本石,由 ,株式会社 (1982)pp.484-485 (8)日オヾラ百,由 ,株式会オ土(1982), p.485 (9)谷川 (1986),p.248 (10 1990年 代初頭の国際LNG市
場に関す る議論 は, 末次 (1994)を 参照 した。 (H)例えば,フランスの石油会社 トールは,1993年時 点の11本市場において,LNG価
格が百万BTUあ
た り5ド ル(原油換算 29ド ル/バレル)で も,LNG
コンバイン ドサイクル発電は石炭火力と同コス トに なると試算 した。末次(1994),p.321。 1993年 実績 のLNG価
格は百万BTUあ
た り3.4ド ル(=原油 換算 19.7ド ル/バレル)であった。 (10欧州 では 700ド ル/kW,日
本 では 1,500ド ル/kW程
度 とされる。木:次 (1994), pp.319-321(13)統合資源言十画(Integrated Recourse Planning)
は,電力会社等の施設計画を作成する際に,環境や 社会への影響 (費用)も加味 して行 うべ きだとする 考え方。考慮すべ き項 目として,'以゛+選択における ナショナルセキュリテ ィ等 も含め られた。 (10 日本市場 の最終需要家 をベースに した