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MPS法を用いた東日本大震災の津波による福島第一原子力発電所1号機タービン建屋の浸水解析Inundation Analysis in the Turbine Building of Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station Unit 1 by the Tsunami of Great East Japan Earthquake Using MPS Method

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Academic year: 2021

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hp150189 「京」一般利用 K General Use

MPS 法を用いた東日本大震災の津波による福島第一原子力発電所 1 号機

タービン建屋の浸水解析

Inundation Analysis in the Turbine Building of Fukushima Dai-ichi Nuclear Power

Station Unit 1 by the Tsunami of Great East Japan Earthquake Using MPS Method

室谷浩平 荻野正雄 塩谷隆二 Kohei Murotani Masao Ogino Ryuji Shioya

東京大学 名古屋大学 東洋大学 The University of Tokyo Nagoya University Toyo University

要旨 本研究では,福島第一原子力発電所 1 号機タービン建屋の浸水過程を再現するために,MPS 陽 解法を用いた 3 段階のズームアップ津波解析手法を開発した.本津波解析手法により,東日本大 震災による津波で浸水した同建屋内部の浸水過程を確認することが可能となった. キーワード:MPS 法,津波,浸水,福島第一原子力発電所 Abstract

In this research, we have developed the zoom up tsunami analysis method by three analyses stages using the Explicit Moving Particle Simulation method, for inundation process of turbine building of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Unit 1 to be realized. By this tsunami analysis method, we have been able to confirm the inundation process by tsunami of the Great East Japan Earthquake for the building mentioned above.

Keywords: MPS method, Tsunami, Inundation, Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station

© 2017 Research Organization for Information Science and Technology All rights reserved. Received: 20 January 2017

Accepted: 25 September 2017 Available online: 12 October 2017

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1. 研究の背景と目的 原子力規制委員会は,平成 25 年 3 月 27 日から「東京電力福島第一原子力発電所における事故 の分析に係る検討会」を立ち上げ,国会[1],政府[2],東電[3]等の事故調査報告書を踏まえつつ, 技術的な側面から,必要な知見を安全規制に取り入れていくことが重要であると,宣言した.規 制委員会は,今後の安全規制に反映するために技術的に解明すべき点の一つとして,国会事故調 が今後の課題とした事項の「1 号機 A 系の非常用交流電源喪失が津波到着前に生じた可能性があ る」という点に注目していた. 国会事故調報告書では,津波第 1 波は 15 時 27 分ごろ,第 2 波は 15 時 35 分ごろとし,国会事 故調は 1 号機A系の非常用交流電源停止時刻が 15 時 35 分か 36 分としていため,1 号機 A 系の 非常用交流電源喪失は,津波によるものではない可能性があるとしていた.この事案は,原子力 規制委員会の「東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会」[4]で再検討さ れ,平成 25 年 8 月 30 日の第 3 回会合で,東電が新たな観測データを提出した.この観測データ によって,1 号機A系の非常用交流電源喪失は第 2 波後に停止したことが判明し,平成 26 年 7 月 18 日の第 6 回会合では,現地調査により,配電盤(M/C1)は地震による損傷が原因ではなく, 津波による浸水によって電源喪失の発生が確認されたことが報告された.1 号機 A 系の非常用交 流電源喪失の原因が,地震か津波かの論争の決着に,東日本大震災発生から 3 年半を要した. その後,規制委員会では,大物搬入口から流入した津波は,先にA系の M/C1C に到達し,そ の後,常用系 MCC を回り込んでB系の M/C1D に到達したとの結論に至った.現地調査の結果, M/C1D は,M/C1C よりも大物搬入口から遠く奥まった場所に位置し,大物搬入口側から直接浸 水しづらい配置となっていた.また,浸水跡の高さは,M/C1C の約 1.0m に対して,M/C1D は約 0.9m であることが確認されている. 本研究は,各事故調の報告書と規制委員会の報告書を元に,1 号機A系の非常用交流電源喪失 の原因となった 1 号機タービン建屋の浸水過程を再現する手法を開発することで,今後の沿岸構 造物の津波による浸水被害を軽減するための検討材料の一つとなることを目的とする. 2. 計算モデル 本研究では,津波が地上構造物へ及ぼす影響を解析するために,図 1 のように,解析領域の解 像度を 3 段階に分けて解析を行う.第 1 の解析では,震源で発生する津波波源から沿岸部までの 1,000km 四方の広範囲の津波伝播計算を,2 次元の浅水波解析により行う.第 2 の解析では,沿 岸部に押し寄せた津波が地上へ遡上し,第 3 の解析では,市街地の地上構造物が浸水する.第 2 と第 3 の解析では,遡上解析や地上構造物の浸水解析が容易に行うことができる MPS 陽解法を 用いて計算を行う.MPS 陽解法は,粒子法の一種であり,解析領域に比例する粒子数を必要とす るため,第 2 の解析では,2km×4km の中規模な範囲で解析を行い,第 3 の解析では,107m×128m の範囲で解析を行う.

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図 1 3 段階のズームアップ解析の概略 3. 並列計算の方法と効果(性能) 本研究では,分散メモリ並列 MPS 陽解法を用いた[5].最初に全計算領域のバウンディングボ ックスを定め,このバウンディングボックスを立方体のバケットによって切り分ける.MPS 陽解 法では,ある粒子が 1 タイムステップで影響を及ぼす範囲が決められているので,バケットの一 辺の長さを影響範囲以上とする.全ての粒子は,このバケットに登録される.このバケットを用 いて,各ノードに含まれる粒子数が等しくなるように,バケットベースの領域分割を行う.領域 分割には,ParMETIS ライブラリを用いた.各ノード間の計算の整合性をとるために,各領域の 境界からバケット 1 つ分だけ領域を広げ,その広げられた領域に所属する粒子を各ノードに割り 当てる.このバケット 1 つ分だけ広げた領域(Halo と呼ぶ)内の粒子は,隣接間通信によって計 算の整合性が保たれる.本研究で開発されたプログラムは,LexADV_EMPS という名前で,2014 年 10 月にオープンソースソフトウェアとしてβ公開されており,MPS 陽解法を分散メモリ並列 化するために,領域分割機能,動的負荷分散機能,Halo 領域交換機能を提供している. 図 2 は,京での 10 億粒子モデルの LexADV_EMPS の 48 ノードを基準としたストロングスケ ーリングである.12,288 ノードまでは良好なスケーラビリティを実現できた.図 3 は,1,600 万 粒子モデルを 12 ノードで実行した場合の各演算の実行効率である.演算量の少ない標準的な MPS 法微分演算では 24%,演算量の多い高精度微分モデル[6]では 32%を達成することができた.

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図 2 京での LexADV_EMPS の並列効率 図 3 京での LexADV_EMPS の各演算の実行効率 4. 研究成果 図 4 は,地震発生から 2,100 秒後からの福島第一原子力発電所の津波遡上解析の結果である(カ ラーは速度を示しており,青 0m/s~赤 10m/s である).解析した範囲は,南北 3.2km,東西 3.6km である.粒子サイズを 1m とし,最大 2.5 憶粒子の解析となった.解析に 4,800 ノードを用いて, 1,800 秒間の解析に 40 時間かかった. 本解析では,東電報告書[3]の調査結果による浸水領域とほぼ同じ結果が得られた.原子力規制 委員会が公開した,東京電力福島第一原子力発電所事故の分析中間報告書では,1 号機タービン 建屋と同じ敷地高さ(O.P.+10m)にあるタービン建屋換気系排気筒の津波第 2 波による浸水発生時 刻を 15 時 35 分 38~55 秒とし,大規模に浸水した時刻を 15 時 36 分 24~41 秒としている.本解 析では,1 号機タービン建屋の大物搬入口付近に津波第 2 波による浸水が発生する時刻が 15 時 35 分 20 秒,大きく浸水する時刻が 15 時 35 分 50 秒であり,良い一致を達成することができた. (a) 130 s (+2,100 s) (b) 160 s (+2,100 s) (c) 800 s (+2,100 s) (d) 820 s (+2,100 s) 図 4 地震発生から 2,100 秒後からの福島第一原子力発電所の津波遡上解析の結果

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図 5,6,7 は,地震発生から 2,900 秒後からの福島第一原子力発電所 1 号機タービン建屋の津 波浸水解析の結果である(カラーは速度を示しており,青 0m/s~赤 10m/s であり,白は渦度が大 きい所である).解析した範囲は,南北 107m,東西 128m である.粒子サイズを 0.1m とし,最大 1.3 憶粒子の解析となった.解析に 4,800 ノードを用いて,200 秒間の解析に 60 時間かかった. 本解析では,第 3 の解析の開始時刻を 15 時 35 分 20 秒とし,津波の最大の侵入経路と予想さ れている大物搬入口を解析開始から 40 秒後の 15 時 36 分 00 秒に削除することで,1 号機タービ ン建屋内部へ津波が侵入する現象を模擬した.津波の建屋内部への侵入時刻を解析開始後 40 秒 後と設定したのは,大物搬入口にかかる水圧が津波の衝突により最大になる時刻であるからであ る.図 6 は,1 号機タービン建屋地上一階部分に当たる O.P.+9m~14m の流体粒子を可視化した ものであり,図 7 は,1 号機タービン建屋地下一階部分に当たる O.P.+0m~8m の流体粒子を可視 化したものである.図 6(b)からは,非常用交流電源喪失の原因となった配電盤(M/C1)が,大物 搬入口から津波が侵入してから 10 秒以内に浸水したことが分かる.図 7(c)からは,大物搬入口か ら最も遠い位置にあるB系の非常用交流電源が浸水するまでに,70 秒かかることが分かる.図 6 と図 7 を比べると,地上一階と地下一階では,地上一階の方が津波の侵入速度が速いことが分か る.図 8 は,各事故調の報告書と規制委員会の報告書を元にした観測結果と解析結果のイベント 発生時刻を比較した結果である.図 8 の観測結果と解析結果のイベント発生時刻を比較した結果, 良い一致を達成することができた. これまでは,第 2 と第 3 の解析を行うために,2 週間から 1 ヶ月程度の計算時間を要していた. 今回,京コンピュータの計算能力を利用することで,第 2 の解析で 40 時間,第 3 の解析で 60 時 間という実用的な計算時間で解析ができるようになり,様々なシナリオを試すことができるよう になった. (a) 重要機器の位置 (b) 40 s (+2,900 s) (c) 50 s (+2,900 s) (d) 60 s (+2,900 s) 図 5 福島第一原子力発電所 1 号機タービン建屋の津波浸水解析の結果

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(a) 重要機器の位置 (b) 50 s (+2,900 s) (c) 70 s (+2,900 s) 図 6 福島第一原子力発電所 1 号機タービン建屋地上一階の津波浸水解析の結果 (a) 重要機器の位置 (b) 70 s (+2,900 s) (c) 110 s (+2,900 s) 図 7 福島第一原子力発電所 1 号機タービン建屋地下一階の津波浸水解析の結果 図 8 福島第一原子力発電所の浸水解析における観測結果と解析結果のイベント発生時刻の比較

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5. まとめと今後の課題 本研究では,福島第一原子力発電所 1 号機タービン建屋の浸水過程を再現するために,3 段階 のズームアップ津波解析手法を開発した.本手法の開発により,沿岸部に建築された地上構造物 の津波による構造健全性の評価を実施できるようになった. オリジナルの MPS 法は,圧力ポアソン方程式を解く半陰的解法(MPS 半陰解法)である.MPS 半陰解法は,MPS 陽解法に比べて精度は良いが,計算時間が多くかかることが知られている.我々 の研究グループでは,分散メモリ並列計算向けの MPS 半陰解法は現在開発中であるため,本研 究では MPS 陽解法を用いた.今後は,精度の面で優位な MPS 半陰解法の検証とチューニングを 十分に行い,MPS 陽解法から移行を進めていく予定である. 参考文献 [1] 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調),報告書,2012 年 7 月 5 日. [2] 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調),最終報告書,2012 年 7 月 23 日. [3] 東京電力株式会社,福島原子力事故調査報告書,2012 年 6 月 20 日. [4] 原子力規制委員会: 東京電力福島第一原子力発電所 事故の分析中間報告書,原子力規制委員 会,2014 年 10 月 8 日.

[5] K. Murotani, S. Koshizuka, T. Tamai, K. Shibata, N. Mitsume, S. Yoshimura, S. Tanaka, K. Hasegawa, E. Nagai, T. Fujisawa: Development of Hierarchical Domain Decomposition Explicit MPS Method and Application to Large-scale Tsunami Analysis with Floating Objects, JASSE, pp.16-35, 2014. [6] T. Tamai, and S. Koshizuka, Least squares moving particle semi-implicit method, Computational

図 1 3 段階のズームアップ解析の概略 3. 並列計算の方法と効果(性能) 本研究では,分散メモリ並列 MPS 陽解法を用いた [5] .最初に全計算領域のバウンディングボ ックスを定め,このバウンディングボックスを立方体のバケットによって切り分ける. MPS 陽解 法では,ある粒子が 1 タイムステップで影響を及ぼす範囲が決められているので,バケットの一 辺の長さを影響範囲以上とする.全ての粒子は,このバケットに登録される.このバケットを用 いて,各ノードに含まれる粒子数が等しくなるように,バケットベー
図 5 , 6 , 7 は,地震発生から 2,900 秒後からの福島第一原子力発電所 1 号機タービン建屋の津 波浸水解析の結果である(カラーは速度を示しており,青 0m/s ~赤 10m/s であり,白は渦度が大 きい所である) .解析した範囲は,南北 107m,東西 128m である.粒子サイズを 0.1m とし,最大 1.3 憶粒子の解析となった.解析に 4,800 ノードを用いて, 200 秒間の解析に 60 時間かかった. 本解析では,第 3 の解析の開始時刻を 15 時 35 分 20 秒とし,

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