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土木学会構造工学論文集(2019.3)

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構造工学論文集Vol.65A(2019 年 3 月) 土木学会

CLT 床版を用いた小規模橋梁の補修設計と施工

Design and repairing of short span bridge using cross laminated timber slabs 豊田淳*,佐々木貴信†,荒木昇吾**,林知行***,有山裕亮****,後藤文彦*****

Atsushi Toyoda, Takanobu Sasaki, Shogo Araki, Yusuke Ariyama, Humihiko Gotou

*工修,サンコーコンサルタント(株),東日本支社(〒136-8522 東京都江東区亀戸 1-8-9) †博(工),秋田県立大学教授,木材高度加工研究所(〒016-0876 秋田県能代市海詠坂 11-1) **博(工),服部エンジニア(株)(〒420-0053 静岡市葵区弥勒 2-2-12) ***農博,秋田県立大学教授,木材高度加工研究所(〒016-0876 秋田県能代市海詠坂 11-1) ****工修,リテックエンジニアリング(株),技術本部(〒107-0052 東京都港区赤坂 6-4-2) *****博(工),秋田大学教授,大学院理工学研究科(〒010-8502 秋田市手形学園町 1-1)

Cross laminated timber (CLT) is a new type of engineered wood panel consist of several layers of structural lumber boards stacked crosswise at 90° angles and glued together on their faces. It is possible to produce CLT panels of 3 m wide, 12 m long, and 270 mm thick. CLT is light-weight material which the unit weight of CLT made of Japanese cedar is about 1/6 of reinforced concrete, therefore it's has advantage in terms of the transport and construction works. The authors consider using CLT elements for bridge deck replacement instead of a concrete deck slab. The overview of the design and construction of the bridge deck replacement of an existing bridge using CLT srlabs is reported herein.

Key Words: cross laminated timber, bridge repair, bridge deck replacement キーワード:直交集成板(CLT),橋梁補修,床版取替 1.はじめに 戦後に植林されたわが国の人工林は伐採時期を迎えて いるが,国産材の自給率は未だ3 割程度であり,人工林 の蓄積量は年々増え続けている.政府は2025 年までに木 材自給率を 50%までに回復させることを目標としてい るが1),木材需要の拡大のためには,住宅向けの建築用 材などの従来用途以外への新たな用途開発や木材利用を 促す施策が求められている.「公共建築物等における木材 の利用の促進に関する法律」(2010 年制定)では公共建 築物等を対象として,国が率先して木材利用に取り組む 基本方針が示されている2).近年,公共建築物の木造化 が進んでいる背景にはこうした動きがある.この法律に は,木材を利用したガードレール,高速道路の遮音壁な どの道路施設の設置に関する条文があり,土木分野にお ける木材利用も新規需要の一つとして期待されている. このような背景の下,筆者らは中高層の大規模な木造 建築物を実現するために近年注目されている新しい木質 材料である直交集成板(Cross Laminated Timber,以下, CLT と称す)に着目し,橋梁の床版用途としての CLT の 有効性について検討を行っている 3).ここでは,秋田県 内の農道に架かる小規模橋梁を対象に施工された CLT を床版に用いた補修工事の概要について報告する. 1.1 直交集成板(CLT) 建築構造材として一般的な構造用集成材(Glued Laminated Timber)は,厚さ 30mm 程度の木材の挽き板(ラ ミナ)を,繊維方向が平行になるように積層接着して製 造される木質材料(写真-1)であり,この構造用集成材 を桁やアーチ部材に用いた木橋が全国に建設されている. これに対し直交集成板(Cross Laminated Timber,以下 CLT と記す)は図-1 に示すようにラミナを層毎に横並びに して,各層の繊維方向が直交するように積層接着した新 しい木質材料であり,コンクリートスラブのような厚み のある大きな板を製造することができる(写真-2).CLT は1990 年代にオーストリアで開発・実用化され,欧州や † 連絡著者 / Corresponding author E-mail: [email protected]

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写真-1 湾曲集成材の製造 挽き板(ラミナ) 製品の完成 各層を直交させて 積層接着する 挽き板を並べる 圧締 圧締 圧締 図-1 CLTの製造 写真-2 大板のスギCLT(t150×b2450×L3450mm) 北米,オーストラリアに広く普及している.壁や床材と してCLT を使った構造は箱を積み上げるイメージで,短 い工期で中高層の木造建築物を建設することができるの が特徴である(写真-3).わが国でも国産材の需要拡大 につながるとCLT への期待が高まっている.2013 年に CLT の製品規格となる JAS(日本農林規格)4)が制定さ れ,2016 年には CLT の基準強度などに関する建築基準 法告示が異例の早さで制定されるなど,国を挙げてCLT の普及に向けた取り組みがなされている. 写真-3 CLTを用いた13階建てのアパート (2017年,カナダ・ケベックシティ) 写真-4 CLT床版を用いた林道橋(秋田県仙北市) 1.2 床版材料としての CLT の可能性 国内メーカーが製造する CLT のサイズは様々である が,最大で幅3m,長さ 12m,厚さ 270mm の製品が製造 可能である5).わが国ではCLT に関する技術開発は殆ど が建築構造を対象としているが,この材料の大きさを考 えれば土木分野での活用も考えられる.また,国産材の CLT にはスギやヒノキ,カラマツのラミナが使用されて いるため,単位体積重量はコンクリートの1/6~1/4 程度 と軽量であり,この軽さもまた土木用途を考えた場合の メリットとなり得る. CLT を床版材料として利用する上で懸念されるのは, 活荷重の繰り返しによる疲労や木材の腐朽による劣化で ある.前者については,CLT 床版の曲げ疲労試験や輪荷 重走行試験を繰り返し行い,十分な疲労耐久性を有する ことを確認している6).後者については,防腐薬剤を注 入するような従来の化学的処理ではなく,CLT 全体を FRP シートでラッピングしたり,ポリマーセメントでコ ーティングする物理的な処理で,防水・防腐効果を得る 方法を検討している7).これらの成果を実証するため, 2017 年 3 月に秋田県内に CLT 床版を用いた林道橋(橋 長7m,幅員 3.5m,設計荷重 140kN)が試験的に施工さ れた(写真-4)8).床版材の4 体の CLT(長さ 3.7m,幅 1.7m,厚さ 180mm)には,それぞれラッピングやコーテ ィングなど異なる防水・防腐処理を施し,供用環境下で の耐久性能を比較検証している.

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2.対象橋梁 対象橋梁は,1990年に河川改修に伴い架設された橋長 10m,有効幅員3mの農道橋であり,農地所有者以外の一 般車の通行はない橋梁である.改修前の本橋は,形鋼 (H-500×200×10×16)の4主桁が約1m間隔で並んでお り,床版として3.6mのクリの角材(t90×b240mm)が橋 軸方向に敷並べられただけの簡易な構造であった(写真 -5).本橋は,架設後25年以上を経過してクリの床版の 腐朽による劣化が進行し床版補修の必要があったため, 管理者である秋田県仙北地域振興局によりCLTを用いた 床版取替え工事が検討された.ここでは,補修工事に用 いたCLT床版の設計および施工の概要について述べる. 2.1 設計計算 (1) 設計条件 本橋は,既設床版(クリ材:90mm)を撤去し,CLT 床版に取り替える.床版厚の増加や,アスファルト舗装 の敷設による死荷重の増加が予想されたことから,設計 照査は,CLT床版と既設主桁について実施する. 本橋の設計条件は,以下の①から⑦のとおりである. また,計算モデルを図-2に示す. ①設計対象車両は4t車とする.活荷重は,車両質量40kN を前軸:後軸=1:4に配分し,前軸重8kN,後軸重32kN とする.なお,輪重は軸重の1/2に設定する. ②CLT床版の設計曲げモーメントは,道路橋示方書9)に示 されるRC床版(連続版:A活荷重)の設計曲げモーメン トの式に,①の後輪重16kNを代入して算出する. ③橋軸方向の死荷重曲げモーメントは,ポアソン効果の 影響が小さく,一般に無視していること9)CLT床版の 自重も小さいことから,RC床版と同様に考慮しない. ④CLT床版は,異等級構成の5層5プライ(Mx60-5-5)4) のスギCLTを用いる.曲げ強度は,CLT関連告示等解 説書10)に示される算出方法に準じ,強軸方向の曲げ強Fbs=10.4N/mm2,弱軸方向の曲げ強度fbw=2.0N/mm2 算定した. ⑤CLT床版は,床版支間方向(橋軸直角方向)を強軸方 向,床版支間直角方向(橋軸方向)を弱軸方向とする. また,図-3に示すように,母材(ラミナ)の厚さは 24mmとし,床版厚を120mmとする.強軸および弱軸 方向の許容曲げ応力度σbsaとσbwaは,表-1に示すように, ④の曲げ強度に1.1/3を乗じた値に10),さらに含水率影 響係数11)を乗じ,σbsa=3.2N/mm2σbwa=0.6N/mm2とした. ⑥せん断に対しては,上記と同様の条件で設計したCLT 床版の輪荷重載荷試験2)において,安全であることが 確認されたことや,RC床版においても曲げで決定した 厚さを有する床版は,十分安全と評価されていること から9),ここでは照査を省略する. ⑦既設主桁の照査における支間長は,支点位置が明らか でないことから,桁長(L=9.57m)を用いる.また, 写真-5 改修前の農道橋(秋田県大仙市) 120 3@1070=3210 120 200 50 0 150 有効幅員 3300 150 橋梁全幅 3600 150 150 アスファルト舗装 t=50mm CLT床版 t=120mm 既設主桁 H形鋼 図-2 計算モデル 24 24 24 24 床版支間方向 床版支間直角方向 (橋軸直角方向) (橋軸方向) 12 0 12 0 E0=3000N/mm2 Fb0=19.5N/mm2 E0=6000N/mm2 Fb0=27.0N/mm2 E0=3000N/mm2 Fb0=19.5N/mm2 計算上は無視 計算上は無視 計算上は無視 計算上は無視 計算上は無視 図-3 CLT床版の構成(5層5プライ) 表-1 CLT床版の許容曲げ応力度 方向 床版支間方向 床版支間直角方向 曲げ強度 10.4 N/mm2 2.0 N/mm2 Fb×1.1/3 3.8 N/mm2 0.7 N/mm2 含水率影響係数 0.85 0.85 許容曲げ応力度 3.2 N/mm2 0.6 N/mm2 照査断面力は,1-0法で算出する. (2) 計算結果 1) CLT 床版の設計 前項の条件に基づくCLT床版の照査結果を表-2に示 す.CLT床版の設計曲げモーメントは,床版支間方向が MS=2.33kN・m/m,床版支間直角方向がMW=1.51kN・m/m と算出される.表-2に示すように許容値を満足している ものの,床版支間直角方向(橋軸方向)の強度性能が劣

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り,床版の断面は,この方向で決定されている. しかし,道路橋示方書に示される設計曲げモーメント の算出式は,二辺支持の等方性無限版の解析結果を基に 規定されており,厳密には,直交異方性版であるCLT床 版への適用はできない.直交異方性を考慮した場合は, 剛性の高い床版支間方向の負担が増加することも考えら れる.ただし,床版支間方向の応答レベルは,表-2に示 すように,許容値の30%程度と余裕があることから,道 路橋示方書の算出式を用いることに,特に差し支えはな いと思われる. 一方,CLT床版はプレキャスト部材であり,本橋の場 合は製作・運搬の都合上,橋軸方向の連続性が断たれる. 連続性が断たれた床版端部の主鉄筋方向(ここではCLT 床版の強軸方向である床版支間方向)には,一般に中間 部の2倍の曲げモーメントが作用すると考えられている 9).このため,RC床版では,十分な剛性を有する端横桁 等で支持する,または,中間部の床版の2倍の鉄筋量を配 置するといった対応がなされる. ここで,本橋(既設橋)は,その構造上の制約から, 剛性の高い端横桁を配置することはできない.また,CLT 床版では,RC床版のような断面内部の対処はできない. しかし,前述のように,床版支間方向の応答レベルには 余裕があることから,応答値が2倍に,加えて,直交異方 性版としての影響が危険側に生じたとしても,許容値内 に収まると判断した. また,木質材料の許容応力度は,破壊試験から得られ た強度に,各種の耐力調整係数を乗じることで設定する. この調整係数のひとつに,荷重継続期間影響係数があり, その値は,長期(50年)1.10,中長期(3ヶ月)1.43,中 短期(3日)1.60,短期(10分)2.00とされている12).鋼 やコンクリートと異なり,時間軸を視野に入れた許容値 の設定が可能となる特徴がある. 表-1に示したCLT床版の許容曲げ応力度は,「長期」 として設定しているが,死活荷重時の許容応力度は,本 橋に常時輪荷重が作用する状況が想定しがたいことを踏 まえれば,「短期」として捉えても実用上の問題はない. この場合,許容応力度は,1.82倍(2.00/1.10)となること から,等方性や異方性といった,断面力を算出する際の 解析モデルの違いやそれによって生じる影響,連続性が 断たれる床版端部の問題等に対しても,概ね安全と評価 できる. これらの影響や問題は,今後の検討により明らかにす べきであるが,本橋では特に,連続性が断たれ,断面力 が大きくなることが予想される床版端部の安全性に配慮 し,図-4に示す構造を採用した.桁端部の床版は,受台 上まで延長し,十分に支持させている.また,中間部の 床版端部には,床版の支持と車両走行時の段差防止とし て,CT形鋼を補助横構として配置している.なお,この 補助横構は,床版支間1.07mを支間とする単純梁として 捉え,その支間中央に後輪重が作用するものとして照査 表-2 CLT床版の曲げ照査結果 方向 床版支間方向 床版支間直角方向 応答値 1.0 N/mm2 0.6 N/mm2 許容値 3.2 N/mm2 0.6 N/mm2 応答値 / 許容値 31% 100% 主桁 主桁 受台 床版 床版 床版 スペーサー ゴム板 橋軸方向 (桁端部床版端部) (中間部床版端部) 補助横構 図-4 床版端部の処理方法 表-3 主桁の照査結果 照査内容 曲げ せん断 活荷重たわみ 応答値 54.3 N/mm2 5.8 N/mm2 3.9 mm 許容値 140.0 N/mm2 80.0 N/mm2 16.0 mm し て い る .曲 げ 引 張 に関 す るCT 形鋼の応答値は 124N/mm2であり,許容値140N/mm2を満足している. 以上により,設計計算上の観点からは,CLT床版の実 橋への適用に,問題はないものと判断した. 2) 既設主桁の照査 既設主桁は,主桁とCLT床版,橋面舗装の死荷重と活 荷重を考慮し,1-0法を用いて照査した.表-3に示すよ うに,曲げとせん断,たわみに共通し,許容値を満足し ている.このため,CLT床版への取替えに関し,既設主 桁への影響はないと評価できる.なお,既設主桁の応力 的な余裕が大きいが,これは,設計計算によらず,竣工 時に入手可能であった材料,または,何らかの都合で入 手できた材料を用いたのではないかと推察する. 2.2 実施工時の対応 (1) CLT の二次接合 設計時のCLT床版は,図-5に示すように,幅(橋軸方 向長さ)1990mmのCLT版を,橋軸方向に5枚敷並べる予 定であった.ただし,今回のCLTを製造した秋田県内の 工場の製造可能寸法の都合により,写真-6に示すように, 分割製作したCLT部材を,二次接合し,接合部を炭素繊 維シートで補強する仕様に変更した. CLT同士の二次接合方法は,図-6に示すように,弱軸 方向の片側端部が凹凸形状になるように製作したCLT版 を,エポキシ樹脂系接着剤を充填した凹凸部に互いに嵌 め込むことで一体化する工法である13).ボルト等の接合

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1990 10 1990 10 1990 10 1990 10 1990 9990 1990 10 1990 10 1990 10 1990 10 1990 9990 接合箇所 CFシート補強 (設 計 時) (施 工 時) 図-5 CLT床版の割付図(橋梁側面図) 写真-6 二次接合前の状況 図-6 接合部の状況 具が不要であり,構造的にシンプルである,ボルト孔内 の滞水による腐朽の懸念がないといった利点が多く,橋 梁のように,大板が必要となる場合には,特に適した工 法と思われる. 二次接合したCLT床版は,強軸方向(床版支間方向: 橋軸直角方向)については,通常の材と同等の曲げ性能 が得られると考えられるが,弱軸方向(床版支間直角方 向:橋軸方向)については,ラミナの連続性が断たれる ことから,その影響を確認しなければならない.また, その影響により性能低下が生じる場合には,何らかの補 強も必要となる.このため筆者らは,写真-7に示すよう に,弱軸方向に対する曲げ試験を別に実施した14) (2) 曲げ試験の概要 曲げ試験に用いたCLTは,厚さ120mm,5層5プライの スギCLTであり,CLTを構成するスギラミナの寸法は厚 写真-7 接合性能の確認試験 CF400 CF800 Control FRP1200 図-7 供試体と補強方法 さ24mm,幅100mmである.写真-6に示したように二次 接合したCLTの大板を4分割した供試体を用いた(図-7). 供試体No.1とNo.2はそれぞれ,接合線を中心に400mmと 800mmの範囲の引張側に炭素繊維シート(CFシート,三 菱ケミカルインフラテック(株)製リペラーク30)を貼り付けて 補強している.No.4は,1200mmの範囲をFRPシート(積 水化学工業(株)製紫外線硬化型構造物防食被覆シート: PPS)で補強したものである.No.3は補強効果の確認用 であり,他の供試体のように,補強は行っていない. 曲げ試験はCLT同士の接合部が支間長L=1900mmの中 央に配置されるようにして中央集中載荷方式で行い,支 間中央の鉛直変位を測定した(写真-7). (3)曲げ試験結果 図-8および表-4に,曲げ試験結果を示す.なお,曲 げ強度fbは補強材料の厚みを考慮せず,コントロールと 同じ厚さh=120mmとした断面係数Z=bh2/6 を用いて fb=PmaxL/4Zから算出した.ここで,補強材料の厚みはFRP シートが1mm,炭素繊維シートが0.167mm(含浸接着樹 脂0.8kg/m2の厚みを除く)であった.曲げヤング係数Eb も同様に補強前の断面寸法を用いて算出した.コントロ ールに対して補強した場合には,ヤング係数で1.1~1.4 倍,曲げ強度で3.0~4.6倍であった(表-4).以上より, シート材貼付による厚み増加の影響を廃しても補強の効 果は明らかであった. コントロールとなる接合部の補強をしていないNo.3の 接合部

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0 10 20 30 40 50 60 0 20 40 60 Lo ad  ( kN ) Midspan deflection  (mm) CF800 CF400 FRP1200 Control 図-8 曲げ試験時の荷重変位関係 表-4 二次接合・補強したCLT版の曲げ性能 No 補強 b (mm) Pmax (kN) fb (MPa) Eb (GPa) 補強効果 fb Eb 1 CF400 862 35.0 7.6 1.91 3.0 1.3 2 CF800 870 52.5 11.4 2.18 4.6 1.4 3 なし 864 11.4 2.5 1.52 1.0 1.0 4 FRP1200 870 34.3 7.4 1.73 3.0 1.1 表-5 二次接合・補強CLT床版の曲げ照査結果 方向 床版支間方向 床版支間直角方向 応答値 1.0 N/mm2 0.6 N/mm2 許容値 3.2 N/mm2 2.4 N/mm2 応答値 / 許容値 31% 25% 曲げ強度は2.5N/mm2であり,表-1に示した床版支間直 角方向(弱軸方向)の曲げ強度2.0N/mm2と同等である. 他の供試体では,補強範囲や補強材料による違いはある ものの,十分な補強効果が得られている. (3) 本橋の対応 前項に示した曲げ試験の結果からは,二次接合した場 合でも曲げ性能は低下せず,本橋への適用の際にも,特 に補強は必要ないと判断できる.ただし,表-2に示した ように,床版支間直角方向(弱軸方向:橋軸方向)には 余裕がないこと,概ね安全と評価しながらも,異方性版 としての影響が明らかでないこと,接合性能の長期的な 安全性が現段階では確認できないこと,そして,実橋へ の適用と安全性の観点から,二次接合して製作するCLT 床版の接合中心から500mm幅をCFシートで補強するこ ととした. 表-5は,二次接合・補強CLT床版を用いた場合の照査 結果である.この際の許容曲げ応力度は,実際にはCFシ ートの補強範囲が500mmであるものの,安全側として, 写真-8 炭素繊維シートによる補強 写真-9 ポリマーセメントによる防水処理 写真-10 表面保護材の塗布 表-4に示した供試体No.1の曲げ強度7.6N/mm2を用いて, 表-1と同様の手順で算出した.応答レベルは両方向とも に余裕があり,十分な耐荷性が確保できている. 3.CLT 床版の製作と施工 3.1 CLT 床版の製作 床版に用いたスギCLT版は秋田県内のCLT工場で製造 された幅1m,長さ3.5m,厚さ120mmのCLT同士を,前述 の方法で二次接着することで幅2m,長さ3.5mのサイズに 大板化した.また,前述の接合部の曲げ強度試験結果を

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参考に,引張側となる床版裏面の二次接着部分の500mm 区間を2.2(2)で示した曲げ試験に用いたものと同様の CFシートで補強することとした(写真-8). CLT版を所定の寸法に仕上げた後,床版の防水加工と してポリマーセメント系の防水材((株)アイゾールテクニ カ製スプレダムS-1)を2mm厚に塗布し,さらに表面保護材 (同社製アイゾールEX)を塗布して5枚のCLT床版を製作 した(写真-9,写真-10).なお,防水層の厚み2mmは 規定塗布量である1.2kg/m22層重ね塗りすることで得 られる膜厚である.幅員の両端部に設置するCLTの地覆 (150×150mm)も同様の防水材および表面保護材を塗 布した.なお,アスファルト舗装が敷設される床版上面 には表面保護材の塗布は行っていない. 3.2 架設 架設工事では,CLT床版の設置の前に写真-11に示し たようにCLTを支持させる補助横構としてのCT形鋼(CT 118×176×3600)を主桁上面に現場溶接した(写真-11). 床版の架設は13t吊りのラフテレーンクレーンを用い て行った(写真-12).CLT床版には予め幅員端部の地覆 を取り付けた状態で架設したが,この状態での床版1枚あ たりの重量は約400kgであった.なお,床版に用いた5枚 のCLTの防水処理の前後における重量は表-6のようで あった. CLT床版の固定は床版の側面に取り付けた金物を介し てCT鋼と連結することで行った(写真-13).このとき, CT鋼の厚み分の桁上面と床版下面の隙間には硬質ゴム のスペーサーを敷設することで調整した.同様にして,5 枚のCLT床版を順に架設し,作業は1日で終了した. 後日,アスファルト舗装を行い完成した農道橋を写真 -14に示す.舗装材には一般的なアスファルト舗装を用 いた.CLTはラミナを直交させて製造するため,木材の 乾湿繰り返しによる寸法変化の影響を受けにくく寸法安 定性に優れていると言われている.また,本橋の場合CLT 全体を防水加工しているためさらに寸法変化は少ないと 考えられるが,まだ使用実績が少ないないことから,本 橋では,CLT版の継ぎ目箇所の舗装にひび割れが発生す る可能性も考慮して,舗装面にCLT版の継ぎ目に沿って 誘発目地を施工した(写真-15). 4. おわりに 本報では,小規模な農道橋の床版取替え工事において CLT床版を用いた設計および試験施工の概要について報 告した.本研究で得られた知見を以下に示す. ① 対象車両を4tとして設計したスギCLT床版の厚さは 120mmであり,CLT床版は,床版支間方向(橋軸直 角方向)を強軸方向,床版支間直角方向(橋軸方向) を弱軸方向とした.このとき,算出したCLTの橋軸 および弱軸方向の許容曲げ応力度は,それぞれ 表-6 CLT の防水処理前後における重量測定結果 No. 処理前重量(kg) 処理後重量(kg) 重量差(kg) 1 328 357 29 2 327 356 29 3 325 359 34 4 328 361 33 5 322 356 34 写真-11 CT形鋼とスペーサーの設置 写真-12 CLT床版の架設 写真-13 CLT 床版の固定 σbsa=3.2N/mm2σbwa=0.6N/mm2であり,床版の断面は 曲げ性能が劣る床版支間直角方向(橋軸方向)で,

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写真-14 改修後の橋梁 写真-15 舗装のひび割れ誘発目地 決定された. ② CLT工場の製造可能寸法の都合により,分割製作し たCLT部材を弱軸方向に二次接合し,接合部を炭素 繊維シートで補強した.補強範囲を変化させた曲げ 強度試験の結果,補強しない場合に比べて3.0~4.6 倍の補強効果が得られた.これにより,床版支間直 角方向(橋軸方向)の強度性能は,床版支間方向(橋 軸直角方向)と同等の耐荷性を有することが示され た. ③ CLT床版はプレキャスト部材であり,本橋の場合は 製作・運搬の都合上,橋軸方向の連続性が断たれ, 床版端部の断面力が大きくなることが予想された. したがって,床版端部の安全性に配慮し,桁端部の 床版は,受台上まで延長し十分に支持させ,中間部 の床版端部には,CT形鋼を補助横構として配置して 支持させることとした. ④ CLTの防腐および防水対策として,ポリマーセメン トによるコーティング加工を施した.加工後の重量 増加は1枚あたり30kg程度であった. ⑤ CLT床版の架設は13t吊りのラフテレーンクレーン を用いて行った.CLT床版には予め幅員端部の地覆 を取り付けた状態で架設したが,この状態での床1 枚あたりの重量は約400kgであった. 本橋の試験施工では,CLT床版の重量が軽量であるこ とから,材料の運搬・架設等のコストに優位性を見いだ すことができた.また,主桁や下部工の負担増の問題も ない. 今後は,防水処理したCLT床版の耐久性評価を行うと ともに,農地所有者の協力を得ながら定期的な載荷試験 等を行い,設計計算の妥当性の検証や,初期および経年 後の性能を評価する計画である. 謝辞 本研究は科学研究費補助金(2017 年度~2019 年度,基 盤研究(C)課題番号 17K06514)の補助の下に行った.研 究の実施にあたり秋田県仙北地域振興局建設部の皆様の ご協力に対し記して謝意を表す. 参考文献 1) 林野庁:平成 28 年度 森林・林業白書,2017.5 2) 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法 律,http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/index.html 3) 荒木昇吾, 佐々木貴信, 林知行:CLT を用いた既設 橋梁の床版取替えに関する一考察,土木学会第70 回 年次学術講演会,V-393, 2015. 4) 農林水産省:直交集成板の日本農林規格, 2013. 5) 一般社団法人日本 CLT 協会:http://clta.jp/clt/ 6) 有山祐亮,豊田淳,佐々木貴信,荒木昇吾,高海克彦: CLT を利用した床版の輪荷重載荷試験,木材利用研究 論文報告集15,pp.17-26, 2016. 7) 佐々木貴信,有山裕亮,荒木昇吾,豊田淳,山内秀文, 林知行:CLT 床版の耐久性付与技術の開発,木材利用 研究論文報告集16, pp.39-44, 2017. 8) 林知行,荒木昇吾,有山裕亮,豊田淳,高橋恵輔:CLT を床版に用いた林道橋の施工,土木学会第72 回年次 学術講演会,V-572, 2017. 9) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説,Ⅱ鋼橋編, pp.233-257,2012. 10)日本住宅木材技術センター:CLT 関連告示等解説書, pp.67-85,2016. 11)土木学会鋼構造委員会木橋技術小委員会:木橋技術の 手引き2005,p.87,2005. 12)日本建築学会:木質構造設計規準・同解説,2002. 13)山内秀文,林知行,足立幸司,佐々木貴信:特開 2017-119436,CLT 同士を接続可能とした CLT,2016. 14)佐々木貴信,林知行,山内秀文,足立幸司:CLT 同士 の二次接合による大板化と接合部強度,第68 回日本 木材学会大会(京都),D15-P-25,2018. (2018 年 9 月 21 日受付) (2019 年 2 月 1 日受理)

参照

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