1
モバイルマルチメディアサービスにおける
ネットワーク制御と伝送,
及びその標準化の意義に関する研究
Studies on Network Control and Transmission
for Mobile Multimedia Services, and
their Standardization Impact
2008 年2月
中
村 寛
2
モバイルマルチメディアサービスにおける
ネットワーク制御と伝送,
及びその標準化の意義に関する研究
Studies on Network Control and Transmission
for Mobile Multimedia Services, and
their Standardization Impact
2008 年2月
早稲田大学大学院国際情報通信研究科
国際情報通信学専攻 情報通信網応用工学研究Ⅱ
3 U
第 1 章
U U序論
U...1
U 1.1U U研究の背景U... 1 U 1.2U U研究の目的・及び構成U... 4 U第 2 章
U U加入者系信号方式
U...7
U 2.1U U背景・狙いU... 7 U 2.2U U移動通信における制御チャネル構造U...10 U 2.3U U加入者系LAYER 3 信号の分割と構成法U...13 U 2.4U ULAYER 3 信号数削減のためのLAYER 3 相乗り機能U...16 U 2.5U U移動通信システムにおける呼制御信号方式設計条件U...18 U 2.6U UCC信号設計法U...22 U 2.6.1U UCC信号設計(1)~メッセージ設計法~U...22 U 2.6.2U UCC信号設計(2)~情報要素設計法~U...26 U 2.7U U結言U...37 U第 3 章
U U呼処理制御方式
U...39
U 3.1U U背景・狙いU...39 U 3.2U U移動通信の高度化に対する呼処理制御方式への要求条件U...41 U 3.2.1U Uユーザ数の増加に伴う制御エリアの狭小化と交換局間ハンドオーバの増加U41 U 3.2.2U Uサービス・機能の高度化・多様化による呼制御の複雑化U...43 U 3.3U U交換局間ハンドオーバ方式(加入者線延長方式)U...45 U 3.3.1U Uチャネル切替方式の分類U...45 U 3.3.2U U加入者線延長方式U...49 U 3.3.3U U加入者線延長方式を実現するためのソフトウェア構成(IOT分離方式)U51 U 3.4U U非電話制御方式U...53 U 3.4.1U U高能率音声符号化方式U...53 U 3.4.2U Uファクシミリ・モデム通信テレサービスU... 54 U 3.4.3U UDTMF音伝送U... 55 U 3.5U U結言U... 574
第 4 章
サービス制御方式 ...58
4.1 背景・狙い...58 4.2 移動通信におけるサービス制御機能...59 4.2.1 移動通信におけるサービス制御の実例...59 4.3 移動通信網アーキテクチャ...62 4.3.1 機能モデル...62 4.3.2 物理ノード構成とネットワークアーキテクチャ...64 4.4 M-SCP 構成法 ...67 4.4.1 M-SCP における網制御機能分類 ...67 4.4.2 M-SCP における機能配備法 ...68 4.4.3 M-SCP におけるソフトウェア構成法...71 4.5 汎用装置によるリアルタイム処理方式...72 4.5.1 汎用装置の高度化...72 4.5.2 専用装置と汎用装置の技術的相違点...74 4.5.3 M-SCP のプログラムタスクの分類 ...75 4.5.4 汎用装置によるリアルタイム性保証技術...77 4.5.5 汎用装置によるリアルタイム性保証技術の検証...80 4.6 結言...85第 5 章
モバイル ATM 方式 ...86
5.1 背景・狙い...86 5.2 移動通信システムにおける要求条件...87 5.2.1 移動通信マルチメディア化...87 5.2.2 VOX(VOICE OPERATED TRANSMISSION) 制御...90 5.2.3 CDMA におけるダイバーシティハンドオーバ制御 ...92 5.3 モバイルネットワークのマイグレーションシナリオ...94 5.3.1 モバイルマルチメディアサービスの発展...94 5.3.2 モバイルネットワークへのATM 導入フェーズ...96 5.4 移動通信ATM 適用時の課題~低ビットレート音声伝送~ ... 100 5.5 ATM セル多重化方式... 102 5.6 レイヤード・セル方式... 105 5.6.1 レイヤード・セル構成法... 105 5.6.2 レイヤード・セル構成による多重度比較... 1085 5.6.3 レイヤード・セルによる伝送効率評価... 112 5.7 レイヤード・セル用ATMADAPTATION LAYER (AAL) ... 116 5.7.1 ショートセル制御(CONVERGENCE SUB-LAYER:CS)... 117 5.7.2 ATM 多重・分離制御(SEGMENTATION AND SEPARATION SUB-LAYER:SAR)... 120 5.8 結言... 123
第 6 章 移動通信システムにおける標準化の意義と
研究開発への活用 ...125
6.1 背景・狙い... 125 6.2 移動通信システムの発展... 126 6.3 標準化時間の推移とその短縮化施策の解析... 128 6.3.1 世代毎の移動通信システムの標準化の目的... 128 6.3.2 1G,2G における標準化時間長期化と要因解析 ... 130 6.4 3G における標準化プロセス... 133 6.4.1 システム提案の選択条件の明確化とファミリーコンセプト... 133 6.4.2 グローバル標準化のためのITU の役割と課題 ... 135 6.4.3 パートナーシッププロジェクトによる迅速な規格作成... 135 6.5 標準化の意義... 139 6.5.1 機能及びサービスの側面からの意義... 139 6.5.2 移動通信システム開発の側面からの意義... 141 6.6 次世代移動通信システムに向けた研究と標準化... 151 6.7 結言... 154第 7 章
結論 ...155
1
第1章
0B序論
1.1
6B研究の背景
1864 年にマックスウェルが「力学的電磁界理論」において電波の存在を予言し,1888 年にヘルツにより電波を発生・検出しマックスウェル理論を実証し,無線通信が誕生した. 無線通信はその名の通り,通信線を持たずに通信が可能なことから,いち早く移動するユ ーザに対する通信方式として利用された.一例として,1905 年に日本海軍が日ロ戦争にお いて,哨戒艇「信濃丸」から旗艦「三笠」に対してモールス通信で敵艦バルチック艦隊発 見を打電したことが記録されているD 1 D.本論文では,このような移動するユーザに対する通 信システムを広義の移動通信システムと定義する.広義の移動通信システムには,利用さ れる場所に応じて,前述のような海上で船舶等が利用する海上移動通信システムに加え, 陸上で運輸・物流・車両運行等に利用される陸上移動通信システム,航空機等の通信に用 いる航空移動通信システムに分類される.さらに,利用形態に応じて,特定の用途に利用 される専用移動通信システム,一般公衆が利用する公衆移動通信システムに分類される. 公衆移動通信システムの歴史は,1949 年に米国のセントルイスで世界最初の公衆自動車 電話サービスがトランシーバーと同様の単信方式でサービスが開始されたことに始まるD 2 DD 3 D. その後,1964 年に現在の携帯電話システムと同様のダイヤル自動交換,複信方式を採用し たAMTS方式が導入され,日本でも,1979 年にダイヤル自動交換,多チャネル切替,小 無線ゾーン構成を特徴とする自動車電話方式が電電公社によりサービスを開始したD 4 D.本論 文では,このような公衆移動通信システムを,狭義の移動通信システムと定義し,以下で は単に移動通信システムと呼称する場合は,公衆移動通信システムを指す. その後の四半世紀を経過し,移動通信システムはいまや「ケータイ」と呼ばれ我々の日 常生活において無くてはならない情報ツールとして進化してきた.2007 年 8 月末において, 日本における「ケータイ」ユーザ数は,98,877,700 人D 5 Dであり,これは日本の人口(12, 777 万人 2007 年 8 月推計D 6 D)の約77%に普及していることを示している.このような急 速なユーザの増加とともに,携帯電話の利用形態も大きく変化してきた.サービス当初は ごく一部の限られたユーザが移動中の電話連絡手段として利用することがほとんどであっ たが,現在では,誰もが電話や電子メールによる通信を楽しみ,インターネットアクセス により様々な情報を入手する手段として利用されるようになっているD 7 D. このような携帯電話の急速な増加と利用形態の変化は,様々な新たな要求条件を移動通 信システムに求めてきた. 一つの要求条件は,ユーザの急増に対応するためのネットワーク制御方式のスケーラビ リティである.電話網としてのスケーラビリティは既に固定網において解決されていた. 移動通信ネットワークは,固定網の機能に加え,移動通信システム固有の必須機能として2 ユーザの移動を逐次追跡して通信を継続する追跡交換接続を同時多重処理するための効率 的なネットワーク制御方式の実現が必要とされてきた. 一方,固定電話網では,1980 年代に入ると音声電話通信に加えファクシミリによる画像 通信が普及しはじめた.また,パーソナルコンピュータ(PC)の普及に伴い,モデムを用 いたパソコン通信が急速に普及した.固定通信網では,これらの通信を効率的かつ高速に 提供するために,電話とファクシミリなどの非電話サービスやデータ通信を統合的に提供 する通信網として,ISDN(Integrated Services Digital Network)が研究開発され,1988 年に NTT により商用サービスが開始された.一方,移動通信網においても,固定通信網と同様 に電話のみならずファクシミリやモデム通信といった非電話通信を,携帯電話を通して「い つでも」「どこでも」実現したいとの要求が強くなってきた. さらに電話サービスも単なる通話サービスのみならず,コールウェイティング,3者通 話.転送電話等のネットワーク付加サービスにより,より便利な利用をしたいというユー ザの要求が高まってきた.固定網では ISDN において通話チャネルと分離した制御チャネ ルを通して,ネットワークと端末間で高度なサービス制御を実現するためのユーザ・網信 号方式が規定された.またネットワークサービスを柔軟かつ多様に提供するために,サー ビス制御機能をコンポーネント化し,交換機能と連携させる IN(Intelligent Network)が研 究開発された.移動通信システムにおいても,固定網と同様の高度なネットワーク付加サ ービスを実現することに加え,移動性等を考慮した移動通信網に固有なサービス制御機能 による移動通信ネットワークサービスの実現が求められた. 1980 年代後半に入ると,固定通信網においてインターネットが普及しはじめた.まず, 1984 年に日本において JUNET(Japan University NETwork)が設立し,日本国内の学術機 関のコンピュータを相互接続したコンピュータ・ネットワークが完成し,日本においてイ ンターネットが開始された.その後 1988 年に WIDE プロジェクト(Widely Integrated Distributed Environment)が発足し,日本におけるインターネット研究が加速した.1991 年 に JUNET から JNIC(現在の JPNIC:JaPan Network Information Center)に DNS 等の管理を 移行し日本におけるインターネット管理環境が整備された.合わせてパソコンにおいて, 1995 年に TCP/IP プロトコルを標準搭載した Windows95 が登場すると,一般ユーザへイン ターネットが普及していった.さらに,2000 年に入り,既存のアナログ電話回線にデジタ ル信号を多重化して伝送する ADSL(Asymmetric Subscriber Line)が低価格で高速なインタ ーネットアクセス方式としてサービスを開始したことから,インターネットへのアクセス 環境が整い,急速にインターネットが普及した.ユーザは自宅のパソコンを通して,メー ルの送受信や WEB アクセスを手軽に利用するようになった.これらの便利さは,固定通 信網を利用するだけでは,オフィスや家庭のディスクからのみ実現可能であり,ユーザの 生活行動において充分なインターネットアクセス環境を実現できないという課題がクロー ズアップされてきた.移動通信の「いつでも」「どこでも」利用できるメリットを生かし て,移動通信システムを通してメールやWEBアクセスを実現することが要望された.
3 さらに,社会のグローバル化とともに,ユーザの行動範囲は国内から国際社会に大きく 広がっている.このようなグローバル指向のユーザは,世界中の「どこでも」電話やイン ターネットアクセスができる環境を望むようになってきた.それまでの移動通信システム は,国内あるいは地域的にに標準化された規格に基づき,国内あるいは地域内では携帯電 話端末を持ち歩くことで「いつでも」「どこでも」電話が利用可能な環境を提供してきた. さらにその範囲を広げ,海外においても「いつでも」「どこでも」通信できるシステムの 実現が求められた. また,これまで述べてきたとおり,移動通信システムの高度化がますます進むにつれ, 移動通信システム自身の構造も複雑になってきている.システム開発には膨大な研究開発 リソースの投入が必要になってきており,従来のように1社がそれらを全て開発すること がだんだん困難になってきた.このような複雑・膨大なシステムを効率的に複数社が協力 あるいは分担して開発する手法が必要となってきている.
4
1.2
7B研究の目的・及び構成
本研究は,移動通信システムの加入者及び利用形態の拡大期において,それらを実現す るために必要なネットワーク制御技術の確立することを目的とする. ネットワーク制御技術に求められる要求条件は,研究の背景において示したように,① 加入者の急激な増加に対し,移動通信ネットワーク制御を効率化しスケーラビリティを保 証すること,②ネットワークサービスの広がりに対し,信号方式やサービス制御方式を拡 張し柔軟なネットワークサービスを提供できるようにすること,③移動通信が電話サービ スから電子メールやWEB アクセス等のマルチメディアが進展することに対し,多様なト ラフィックを効率的に伝送可能なネットワーク構造とネットワーク伝送方式を実現するこ と,④社会のグローバル化に対応するため,世界共通な通信システムを実現すること,さ らには,⑤ユーザの急増やサービスの拡張によるシステムの複雑化に対して,システム開 発を効率的に実現するため手法を確立すること,である. 本論文は,これら5つの技術課題を解決するネットワーク制御技術を確立した著者の一 連の研究成果をまとめた物であり,以下に各章の概要を述べる. 第1章は序論である. 第2章では,移動通信システムにおいて.数kbit/s 程度の加入者系制御チャネルを通し て伝送される加入者系信号方式において,サービスの拡張性と伝送効率の効率性を両立さ せる信号方式の構成法について述べる.加入者系信号方式は,固定網におけるISDNと の相互接続性やサービス共用性の観点から,ISDNユーザ・網信号方式との共通性を持 たせつつ,移動通信サービス特有な呼制御・サービス制御方式への拡張を行わなければな らない.さらに,呼制御信号に加え,加入者系信号方式では,移動通信に固有な制御信号 である移動制御,無線制御信号が存在する.一方,これらの信号全てをISDNに比べ1 /10程度の速度である制御チャネルを通して,伝送しなければならないため,加入者系 信号方式設計においては,信号数や信号長を極力少なくする信号設計法が必要となる.そ こで,第2章では,呼制御,位置制御,無線制御といった3つの加入者系信号を重畳して 一つの無線信号に相乗りすることにより,信号数を削減する「Layer3 相乗り機能」を提 案する.また,その効果を標準的な呼接続例により定量評価する.さらに,第2章では, 移動通信に固有な呼制御やサービス制御を示し,呼処理信号数や信号量を削減するための 「CC 信号設計法」を提案すし,信号数と信号量の削減効果を定量評価する. 第3章では,加入者が急増し,ネットワーク付加サービスが多様化した移動通信システ ムにおいて,ユーザの移動に追従する追跡交換方式を効率的に実現するための移動通信ネ ットワーク構成法について述べる.加入者の増加に伴い,一つの交換局が制御するエリア の大きさは相対的に小さくなるため,交換局をまたがったユーザの移動が増加する.また,5 ネットワーク付加サービスの多様化に伴い,交換局の呼制御は複雑化する.よって,ユー ザの移動に伴い呼制御をその都度交換局間で持ち回る従来の追跡交換方式では,制御量が 膨大化しスケーラビリティが損なわれる.そこで第3章では,ユーザが移動しても呼制御 を実行する交換機を固定化し,加入者回線だけをユーザの移動とともに引き回す「加入者 線延長方式」を提案する.さらに,「加入者線延長方式」を実現するための交換機システム 構成法を提案する.さらに,第3章では,移動通信システムにおいてファクシミリ,モデ ム通信やプッシュボタン信号のような音声以外の通信を実現するための網制御方式を提案 する.移動通信システムでは,周波数の有効利用の観点から,音声は高能率音声符号化さ れて伝送する.高能率音声符号化では,非電話通信で利用される音響信号を歪み無く伝送 することができないため,そのままでは移動通信システムにおいて非電話通信はできない. そこで,第3章では,移動通信システムにおいて非電話通信を実現するための「非電話ア ダプタ」制御方式を提案し,制御シーケンスを示す. 第4章では,移動通信システムにおいて,移動通信固有なネットワーク付加サービスを 解析するとともに,移動通信サービス制御機能のネットワーク内配備法と移動通信サービ ス制御ノードの構成法を提案する. まず,本章では固定網におけるサービス制御機能に対して,移動通信網に固有なネット ワーク付加サービスを明示し,移動通信サービス制御機能を定義する.次に,移動通信ネ ットワークにおいてサービス制御機能の機能配備法として,加入者交換機と統合する方式 と,加入者交換機とサービス制御機能を分離する方式を提示し,それぞれが制御すべき対 象の違いから,サービス制御機能を「M-SCP:Mobile Service Control Point」として分 離する方式適していることを解析する.次に,M-SCP の構成法として,制御対象である ユーザ制御を一つのノードにおいて総括できることから,一つのM-SCP に全てのサービ ス制御機能を用意し,収容するユーザ数により分散させる「負荷分散配備法」を提案する. さらに,第4章では,このようなM-SCP を,ハードウェアの発展が速い汎用プロセッサ と汎用OS を用いたシステムで構築するためのシステム構築法を提案する.特に,M-SCP においてデータ参照等のトランザクションをリアルタイムに処理して返送することが,呼 処理の遅延に影響することから,リアルタイム性の確保が重要な課題であることを解析す る.次に,汎用プロセッサと汎用OS を用いたシステムにおいて,リアルタイム性を阻害 する要因を解析し,リアルタイム処理を可能とするプログラミ構成法を提案する.また, 提案したプログラム構成法に基づくリアルタイム性保証をコンピュータシミュレーション 及び実測により検証し,提案構成法の優位性を証明する.汎用プロセッサと汎用OS を用 いてサービス制御ノードのリアルタイム性を実現したのは本研究が始めてである. 第5章では,移動通信が電話サービスから電子メールや WEB アクセス等のマルチメデ ィアが進展することに対し,多様なトラフィックを効率的に伝送可能なネットワーク構造 とネットワーク伝送方式を提案する.まず,移動通信におけるマルチメディア化の広がり と特徴を解析する.特に,音声通信において,移動機のバッテリー時間を長時間化するた
6 めに,無音時に信号を伝達しない無音圧縮技術が適用されることを解析し,マルチメディ ア通信のみならず音声通信においても,統計多重効果が適用できることを示す.次に,無 線伝送方式の一つであるCDMA(Code Division Multiple Access)方式において,周波数 の有効利用及び通信品質の向上を目指して,複数の無線基地局が携帯端末と通信を行う, ダイバーシティ技術が用いられることにより,移動通信ネットワークにおいて基地局まで のアクセス回線が複数必要となり,移動通信ネットワークにおいてアクセス回線の効率化 が重要になることを解析し,統計多重効果が適用できるATM 伝送方式が移動通信ネット ワークにも適していることを解析する.次に,移動通信システムにATM を適用する利点 は,無音圧縮された音声伝送と,マルチメディア伝送の2つであることを解析し,移動通 信ネットワークにATM を導入するシナリオを提案する.一方,移動通信システムに ATM を導入する場合,高能率符号化された音声を伝送するためには,標準ATM セルの 48Byte ペイロードを満たすためには,非常に長い遅延が生じ,遅延をある程度に抑えるためには, ペイロードの一部にしか音声データを重畳できないため,伝送効率が低下するという,伝 送効率と伝送遅延にトレードオフの関係があることを解析する.伝送遅延を実効的な遅延 に抑えつつ伝送効率を向上させる手法として,レイヤード・セル方式を提案し,コンピュ ータシミュレーションにより,伝送効率の向上を証明する.さらに,レイヤード・セル方 式の分解,組み立てのための構成法を提案する.このように,超低ビットレート情報をATM により伝送するためのATM 構成法は本研究が初めての提案である. 第6章では,社会のグローバル化に対応するため,世界共通な通信システムを実現する ために,国際標準化が必要であることを解析するとともに,国際標準化を市場のスピード にマッチするように迅速に行うための標準化手法を提案する.まず,従来の移動通信シス テム標準化の状況を解析し,それぞれの世代における要求条件と標準化手法の関連を解析 する.次に,それらの解析結果から,今後の移動通信システムの国際標準化に対して必要 な標準化手法を提案する.また,第6章では,システム開発を効率的に実現するために, 標準化が果たす役割と意義を解析する.まず,移動通信システムの規格量の変化から,移 動通信システムの複雑さ急速に増大していることを解析する.本解析では,規格量の変化 をシステム状態遷移モデルにおける状態数と比例することに着目し,システムに必要な総 ソフトウェア量は状態遷移量に比例すると仮定し解析モデルを構築する.本モデルを基に, 大規模なソフトウェア量を持つシステム開発を開発量最少で開発するために,共通仕様部 分と個別仕様部分に分離し,共通仕様部分と個別仕様部分の開発量の最適な分配法を解析 的に導出する.このようなソフトウェア開発量解析は本研究が初めての試みである. 第7章は本論文の結論であり,本論文の研究成果を要約するとともに,今後の課題につ いても簡単に述べる.
7
第2章
1B加入者系信号方式
2.1
8B背景・狙い
1980 年代後半から 1990 年代にかけて,固定電話通信網では,ISDN(Integrated Service Digital Network)が開始されるとともに,ネットワークと電話端末間(ユーザ-網イン タフェース)の制御信号回線が高速化し,多様な呼制御が可能となり,コールウェイティ ングや転送電話といった電話サービスの高度化が進んだ. 一方,1979 年に自動車電話から始まった移動通信サービスは,1992 年にNTTから移動 通信部門が分離されると共に,新規参入事業者が事業を開始し,独占状態であった市場に 複数事業者による事業競争が始まった.競合事業者への差異化優位性を確保するために, サービス品質の向上はもとより,多様な付加サービスをサービス提供することが必要とさ れたD8D. 付加サービスとしては,コールウェイティングや三者通話といったISDNと同様の付加サ ービスを移動通信網において実現することが要求されたD9DD10DD11DD12DD13DD14DD15DD16D.さらに,移動通信 網の通信特性に合わせた付加サービスとして,ユーザが電波の届かないサービスエリア外 (圏外)に移動した場合に,ネットワークが着信電話を録音する留守番電話サービスや, 圏外時や無線回線の輻輳時に自動的に着信呼を転送する無線無応答時着信転送サービス や無線輻輳時着信転送サービス等といった移動通信特有の付加サービスを提供する必要 が強まった(表2.1.1). 付加サービスの提供は,移動通信事業者にとってユーザに対する通信サービスの価値を 高める手段であり,競合競争力の一つの源泉である.市場競争状況に応じて,タイムリー に新たな付加サービスを追加して提供することは,移動通信事業者にとって大きな事業メ リットである.サービスの拡張性に富んだ通信方式をもつネットワークシステムを構築す ることは事業的にも意義が大きい. さらに,競合事業者間の競争は料金の低減を促進し,結果として移動通信市場の急激な 拡大をもたらした.特に,それまではユーザにレンタル形式で提供されていた移動体端末 をユーザ買い取り制に改め,20万円程度の加入時保証料を順次低減し撤廃したことによ り,一気に加入障壁が取り除かれ,加入者の急増につながった(図.2.1.1)8 表2.1.1 付加サービス例
(CCITT I.250~7, ARIB RCR STD-27 より)
I.250シリーズ STD-27 I.250シリーズ STD-27 ダイレクト・ダイヤル・イン ○ ○ 会議通話 ○ ○ 複数加入者番号 ○ ○ 三者通話 ○ ○ 発信番号通知 ○ ○ 発信番号通知禁止 ○ ○ 閉域接続 ○ ○ 接続先番号表示 ○ ○ 私設番号計画 ○ ○ 接続先番号表示禁止 ○ ○ 悪意呼表示 ○ ○ クレジットカード通信 ○ ○ サブアドレス ○ ○ 課金情報通知 ○ ○ 着信課金 ○ ○ 通話中転送 ○ ○ フリーフォン - ○ 話中時着信転送 ○ ○ 加入者無応答時着信転送 ○ ○ ユーザ・ユーザ信号 ○ ○ 無条件着信転送 ○ ○ 加入者選択着信転送 ○ ○ 発信規制 - ○ 移動機無応答時着信転送 - ○ 着信規制 - ○ 移動加入者非登録時着信転送 - ○ 電波輻輳時着信転送 - ○ 着信接続とチャネル保留 - ○ 留守番電話 - ○ 代表 ○ ○ コールウェイティング ○ ○ 保留 ○ ○ 呼完了付加サービス 特定グループ付加サービス 発着信規制付加サービス その他の付加サービス 付加サービス名 付加サービス名 課金付加サービス 付加情報転送付加サービス 複数通話付加サービス 番号表示付加サービス 呼提供付加サービス
9 図2.1.1:1980 年代の移動通信加入者ののびグラフD17 (ドコモ関西HP Hhttp://www.docomo-kansai.co.jp/corporate/disclosure/share/mobile_graph.htmlHを基に作図) このように,移動通信網では急激なユーザの増加に対する大容量化と,固定通信網のサー ビス拡大に追従し,かつ移動通信ならではのサービス拡張のための高度化が同時に求めら れていた. 大容量化と高度化を同時に実現するために,従来のアナログ方式による移動通信システム をデジタル化が進められ,1993 年3月に首都圏にてPDC(Personal Digital Celluler)システ ムがサービス開始されたD18D. 本章では,PDCシステムにおいて,ISDNと同等なサービスや移動通信に特有の付加サー ビスを狭帯域な制御回線を通して制御する,ネットワークと移動通信端末間加入者系レイ ヤ3信号方式について,機能要求条件を示し信号設計を行うと共に,ISDN信号方式と比較 した信号効率性を解析する.2.2章では,移動通信システムにおける制御回線の特徴を 示し,加入者系信号方式設計の課題D19Dを示す.2.3章では,加入者系レイヤ3信号方式が, 無線回線制御,位置制御,呼制御の3つのコンポーネントに分離されることを示す.2. 4章では,ユーザサービス制御の中心となる呼制御信号方式の構成法について,機能拡張 性と効率性のトレードオフから設計法を示す. 0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000 400000 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 年 加入数
10
2.2
9B移動通信における制御チャネル構造
移動通信網のもう一つの特徴は,通信チャネルや制御チャネルの構造が固定通信網に比べ ると複雑かつ低速であることが挙げられる. ISDNの基本インタフェースでは 64kbit/sの通信チャネル(Bチャネル)が2チャネルと 16kbit/sの制御チャネル(Dチャネル)が1チャネルで構成されており,通信状態にかかわ らず構成が変化することは無いD20DD21D.(図2.2.1 (a)). 一方,移動通信網では,網と移動通信端末(以下,移動機と呼ぶ)間の通信路は,複数の 移動機が共用する.よって,通話チャネルは通信開始時に割り当てられ,通信終了時に解 放される.制御チャネルは,通話チャネルが割り当てられていない状態では,複数の移動 機が共通して利用する共通制御チャネルを通して移動機と網が通信を行い,通話チャネル が割り付けられた状態では,通話チャネルに付随した移動機毎に割り当てられた個別制御 チャネルを通して通信を行うD22D. 図2.2.1(b)はPDC におけるチャネル構成である. ISDN の通話チャネルに相当する情報チャネルは,1チャネルが通信時に移動機に割り付 けられ,通信速度は11.2kbit/s(フルレート)あるいは 5.6kbit/s(ハーフレート)である. 制御チャネルは,用途や移動機の通信状態により複数のチャネルが適宜利用される.複数 の移動機が共通して利用する共通アクセスチャネルには,基地局や無線エリア(セル)の 状況を通知する通知チャネルと,共通制御チャネルがある.さらに共通制御チャネルには, 移動機に着信を知らせる一斉呼出チャネルと,セル内の移動機が通話チャネル割当前に網 との間で制御信号を送受する個別セル用チャネルがある.付随制御チャネルには,移動機 が通話中に網との間で制御信号を送受する低速付随制御チャネルと,チャネル切替等で制 御信号を短時間で大量に網との間で送受する必要がある場合に,通話チャネルを一時的に 制御チャネルとして利用し通信速度を高速化する高速付随制御チャネルがある.(図2.2. 2) 通話中の呼制御に用いられる低速付随制御チャネルは,約1kbps 程度の速度である.ま た,共通アクセスチャネルにある通知チャネル,一斉呼出チャネル,個別セル用チャネル は,それぞれの制御チャネルに割り当てられる無線帯域を通信環境に合わせてフレキシブ ルに変更可能にしている.それら3つのチャネルの合計通信速度はおよそ10kbps であり, さらにこれらの制御チャネルは同一セル内の移動機が共通して利用するため,1移動機が 利用できる制御チャネル速度は低速付随制御チャネルの1kbps より遅くなる. このように,ISDN の D チャネルに比べると通信速度が遅いため,限られた通信速度にお いて十分な制御をおこなえるように効率的な信号方式が必要となる.11 (a)ISDN基本インターフェース チャネル構成12 (CCITT Recommendation Q.931 より)
制御チャネル
(CCH)
情報チャネル
(TCH)
通知チャネル(BCCH) 共通制御チャネル(CCCH) ユーザパケットチャネル(UPCH) 付随制御チャネル(ACCH) 一斉呼出チャネル(PCH) 個別セル用チャネル(SCCH) 低速ACCH(SACCH) 高速ACCH(FACCH) <共通アクセスチャネル> <個別アクセスチャネル>制御チャネル
(CCH)
情報チャネル
(TCH)
通知チャネル(BCCH) 共通制御チャネル(CCCH) ユーザパケットチャネル(UPCH) 付随制御チャネル(ACCH) 一斉呼出チャネル(PCH) 個別セル用チャネル(SCCH) 低速ACCH(SACCH) 高速ACCH(FACCH) <共通アクセスチャネル> <個別アクセスチャネル> ACCH : BCCH : CCCH : CCH : FACCH :Associate Control CHannel BroadCast CHanel Common Control CHannel Control CHannel
Fast Associate Control CHannel
PCH : SACCH : SCCH : TCH : UPCH : Paging CHannel
Slow Associate Control CHanel Signaling Control CHannel Traffic CHannel
User Packet CHannel ACCH :
BCCH : CCCH : CCH : FACCH :
Associate Control CHannel BroadCast CHanel Common Control CHannel Control CHannel
Fast Associate Control CHannel ACCH :
BCCH : CCCH : CCH : FACCH :
Associate Control CHannel BroadCast CHanel Common Control CHannel Control CHannel
Fast Associate Control CHannel
PCH : SACCH : SCCH : TCH : UPCH : Paging CHannel
Slow Associate Control CHanel Signaling Control CHannel Traffic CHannel
User Packet CHannel PCH : SACCH : SCCH : TCH : UPCH : Paging CHannel
Slow Associate Control CHanel Signaling Control CHannel Traffic CHannel
User Packet CHannel
(b)RCR STD-27 における制御/情報チャネル構成14 (RCR 標準 STD-27 より) 図2..2.1:ISDNと移動通信網におけるチャネル構成比較
制御チャネル
(D-CH)
通話チャネル
(B-CH #1)
通話チャネル
(B-CH #2)
制御チャネル
(D-CH)
通話チャネル
(B-CH #1)
通話チャネル
(B-CH #2)
12
移動機状態
網-移動機間制御チャネル 報知チャネル 一斉呼出チャネル 個別セル用チャネル 付随制御チャネル 制御情報(チャネル構造等)を報知する 網→移動機への一方向チャネル 複数セル(一斉呼出エリア)に一斉に転送する 網→移動機へのポイント・マルチポイント一方向チャネル 網が移動機の在圏セルを認識している場合に制御信号を転送する 網←→移動機のポイント・マルチポイント双方向チャネル 情報チャネルに付随し,制御信号を転送する 網←→移動機の双方向チャネル 通常は,情報チャネルと併設されるSACCHだが,情報チャネルを一時的 に停止して高速通信するFACCHも規定される 周辺セルサーチ 在圏セル決定 一斉呼出チャネルへ移行 着信(呼出)待機 着信 個別セル用チャネルへ移行 網-移動機間 制御信号送受 情報チャネル決定 付随制御チャネルへ移行 通話開始 制御信号送受 終話 一斉呼出チャネルへ移行 一斉呼出チャネル移動機状態
網-移動機間制御チャネル 報知チャネル 一斉呼出チャネル 個別セル用チャネル 付随制御チャネル 制御情報(チャネル構造等)を報知する 網→移動機への一方向チャネル 複数セル(一斉呼出エリア)に一斉に転送する 網→移動機へのポイント・マルチポイント一方向チャネル 網が移動機の在圏セルを認識している場合に制御信号を転送する 網←→移動機のポイント・マルチポイント双方向チャネル 情報チャネルに付随し,制御信号を転送する 網←→移動機の双方向チャネル 通常は,情報チャネルと併設されるSACCHだが,情報チャネルを一時的 に停止して高速通信するFACCHも規定される 周辺セルサーチ 在圏セル決定 一斉呼出チャネルへ移行 着信(呼出)待機 着信 個別セル用チャネルへ移行 網-移動機間 制御信号送受 情報チャネル決定 付随制御チャネルへ移行 通話開始 制御信号送受 終話 一斉呼出チャネルへ移行 一斉呼出チャネル 図2.2.2:RCR STD-27 における移動機状態と制御チャネル遷移 (RCR 標準 STD-27 を基に作図)13
2.3
10B加入者系Layer 3 信号の分割と構成法
移動通信システムの特徴は,無線リンクを通して,ユーザの移動を追跡しながら,通信 サービスを継続的に提供することである.移動機と移動通信網間で,これらのサービスを 提供するためには,次に示す制御が必要と考えられる. (1) 通話開始時に無線リンクを設定し,通話中は,ユーザや無線回線状態の変化に 対して通話品質の良好な無線リンク維持し,終話時に無線リンクを解放する機 能 (2) 移動通信サービスを提供するエリアを複数の位置登録エリアに分割し,ユーザ が異なる位置登録エリアに移動する度に位置情報を更新する機能(位置登録機 能).ユーザに着信がある場合は,位置登録エリア内に存在する複数の無線基地 局を通して移動機を呼び出し,移動機が応答することにより,実際に在圏する 無線基地局を特定する機能(一斉呼出).また,移動機が契約に基づく正当なも のであるかを確認する機能(認証). (3) ユーザが要求するサービス内容に応じて回線種別を指定して回線をルーティン グし設定し,終話時に回線を解放する機能.また,ユーザの要求に従って,各 種付加サービスを提供するための機能.これ以降,(1)の機能を無線制御(RT: Radio Transmission control),(2)を位置制 御(MM: Mobility Management),(3)を呼制御(CC: Call Control)と呼ぶ.RT,MM, CCD23Dは,どれ一つかけても移動通信サービスは提供され得ない基本機能であるD24DD25D. 第1世代移動通信システムでは,もっぱら音声電話サービスを提供するシステムであり, 制御機能はシンプルであり,RT,MM,CC は三位一体の信号方式として設計されていた. (図2.3.1) 図2.3.1:第1世代移動通信網における発信シーケンス例 (RCR 標準 STD-27 より) 移動機 基地局 交換局 発信 機体#,加入者#,ダイヤル# 通話チャネル指定 機体#,チャネル# 認証要求 認証応答 発信 機体#,加入者#,ダイヤル# 加入者データ要求 加入者データ応答 発信受付 ホームメモリ 中継接続開始 加入者チェック サービス・ダイヤル解析 通話チャネル捕捉 無線リンク要求 サービス要求 無線リンク割当 移動機正当性 チェック 移動機 基地局 交換局 発信 機体#,加入者#,ダイヤル# 通話チャネル指定 機体#,チャネル# 認証要求 認証応答 発信 機体#,加入者#,ダイヤル# 加入者データ要求 加入者データ応答 発信受付 ホームメモリ 中継接続開始 加入者チェック サービス・ダイヤル解析 通話チャネル捕捉 無線リンク要求 サービス要求 無線リンク割当 移動機正当性 チェック
14 一方,移動通信ユーザの増加に伴い,移動通信システムとして (1) 有限の無線周波数を効率よく利用するための無線制御方式の高度化 (2) 移動通信システムが不正な移動機により利用される不正利用の危険性が高くな ることから,それを防止するための認証機能の高度化 (3) 前節で述べた様に,サービス面では,サービス種別の多様化,サービス品質の向 上,及び,多様な付加サービスを迅速に提供するためのサービス制御機能の高度 化 が必要とされた. これらの機能高度化は,それぞれ独立に発展可能なものと考えられる.例えば,サービ ス品質の向上や付加サービスの提供は,無線周波数の効率化技術が進歩しなくても,必要 なだけの無線リソース(周波数帯域)が確保できれば提供可能である. むしろ,各機能の高度化は技術発展が進んだ部分から早期に市場に導入できるように, 各機能を独立に設計したほうが,市場の急速な拡大と事業者間競争の激化といった市場環 境には適合していると考えられる.例えば,認証機能の高度化は,通信の安全な提供のた めには欠かず,無線周波数の効率化技術や通信サービスの向上とは独立に早期に提供され るべき機能であり,必要に応じて技術革新すべき機能である.特に,サービス種別や付加 サービスを制御するCC は,他の機能と独立にすることで,機能拡張の影響範囲を CC 機 能に集中でき,柔軟な機能拡張性を担保できる. 図2.3.2は,CC/MM/RT の機能を第1世代システムのように統合的に配備した場合 と,それぞれを独立に配備した場合を模式的に示したものである. ネットワーク側では,RT は無線リンクを直接終端している基地局と移動機に主機能が配 備される.交換局に配備されるRT は,無線リンクの正常,異常といった呼接続の継続, 中断に関わるような状態通知を行う.一方,CC と MM は専ら交換局と移動機に配備され, 呼制御と位置登録や一斉呼び出し制御を行う. 図2.3.2(a)のように Layer 3 として統合的に CC/MM/RT を配備すると,基地局に おいてもCC/MM 相当の機能を終端して RT 相当機能と一緒に Layer 3 信号として再編集 する必要が生じる. そのため,もし付加サービス追加を行うために,CC 信号に情報要素を追加するといっ た変更を加えると,基地局のプログラムまで手を入れる必要が生じる. 図2.3.2(b)のように,Layer 3 を CC/MM/RT 毎に独立に配備すると,たとえば上 記のような付加サービス追加があっても,交換局と移動機間のみの機能拡張で実現でき, 基地局のプログラム変更は不要となる. このように,移動通信制御機能を CC/MM/RT の3機能に分割することにより,機能毎 の発展を迅速かつ柔軟に実現可能とできるメリットがある.
15 CC + MM + RT
移動機
基地局
交換局
CC + MM + RT CC + MM + (RT) CC + MM + RT移動機
基地局
交換局
CC + MM + RT CC + MM + (RT) (a)CC/MM/RT 統合による機能配置CC
MM
RT
RT
CC
MM
(RT)
移動機
基地局
交換局
CC
MM
RT
CC
MM
RT
RT
CC
MM
(RT)
CC
MM
(RT)
移動機
基地局
交換局
(b)CC/MM/RT 分離による機能配置 図2.3.2: Layer 3 機能配備法(H. Nakamura, K. Yamamoto, M. Yabusaki, ”Call Control Protocol for Digital Cellular Radio Interface”, Vehicular Technology Society 42nd VTS Conference, Frontiers of Technology Conference,
16
2.4
11BLayer 3 信号数削減のためのLayer 3 相乗り機能
反面,移動通信制御機能を分割すると,移動機-網間の制御信号は機能毎に編集せるた め,従来の一体方式に比べ信号数が増加することが想定される.2.2章で述べた様に, 移動通信網の網-移動機間制御信号チャネルは狭帯域であることから,制御信号数は極力 少なくすることが必要であるD26D. 信号数削減のために,独立な3つのLayer 3 機能(CC/MM/RT)と Layer 2 の間に,同 時期に発生するLayer 3 信号を一つの Layer 2 フレームに相乗りさせる,「Layer 3 相乗り 機能」を設け,Layer 3 機能の独立性と,信号数の削減を両立させる構造を提案する.(図 2.4.1) また,実際の通信制御においてLayer 3 相乗り機能による効果を移動機からの発信シー ケンスを例に図2.4.2に示す.図2.4.2の実線は発信制御が正常に動作した場合 の信号シーケンス(正常シーケンス)であり,波線は網側の判断ポイントにおいて異常が 発生した場合のリソース解放を示す信号シーケンス(異常シーケンス)である.各シーケ ンスにおいて()内にLayer 3 信号を記述した図である.発信から通話中までの正常シー ケンスにおいて,Layer 3 信号は,11 個の信号要素により制御されているが,それらのう ち発信無線状態報告(RT)と呼設定(CC)が Layer 3 相乗り機能により1つの Layer 2 信号に重畳される.これにより,制御信号数は10/11(約 91%)に削減可能である.また, 異常シーケンス時には,速やかな回線解放が必要であり,信号数削減が重要である.ここ でも,移動局解放(RT)と解放完了(CC)信号が重畳され,信号数削減を果たしている.RT
MM
CC
Layer 3 相乗り機能
Layer 2
Layer 1
RT
MM
CC
Layer 3 相乗り機能
Layer 2
Layer 1
図2.4.1:Layer 3 相乗り機能の追加(H. Nakamura, K. Yamamoto, M. Yabusaki, ”Call Control Protocol for Digital Cellular Radio Interface”, Vehicular Technology Society 42nd VTS Conference, Frontiers of Technology Conference,
17
移動機
網
(発信無線状態報告,-, 呼設定) 呼設定情報 (移動局解放,-, 解放完了) OK NG (-,-,呼設定受付) (-,認証要求,-) (-,認証応答,-) 認証結果 (移動局解放,-, -) NG (レベル測定要求,-, -) (レベル測定応答,-, -) 結果 (移動局解放,-, -) NG 情報チャネル無し 中継回線 (-,-,切断) 無し (-,-,解放) (移動局解放,-, 解放完了) (無線チャネル指定, -,-) あり OK OK (-,-,呼出) (-,-,応答) (-,-,応答確認)通信
(RT,MM,CC) 正常シーケンス 異常シーケンス移動機
網
(発信無線状態報告,-, 呼設定) 呼設定情報 (移動局解放,-, 解放完了) OK NG (-,-,呼設定受付) (-,認証要求,-) (-,認証応答,-) 認証結果 (移動局解放,-, -) NG (レベル測定要求,-, -) (レベル測定応答,-, -) 結果 (移動局解放,-, -) NG 情報チャネル無し 中継回線 (-,-,切断) 無し (-,-,解放) (移動局解放,-, 解放完了) (無線チャネル指定, -,-) あり OK OK (-,-,呼出) (-,-,応答) (-,-,応答確認)通信
(RT,MM,CC)移動機
網
(発信無線状態報告,-, 呼設定) 呼設定情報 (移動局解放,-, 解放完了) OK NG (-,-,呼設定受付) (-,認証要求,-) (-,認証応答,-) 認証結果 (移動局解放,-, -) NG (レベル測定要求,-, -) (レベル測定応答,-, -) 結果 (移動局解放,-, -) NG 情報チャネル無し 中継回線 (-,-,切断) 無し (-,-,解放) (移動局解放,-, 解放完了) (無線チャネル指定, -,-) あり OK OK (-,-,呼出) (-,-,応答) (-,-,応答確認)通信
(RT,MM,CC) 正常シーケンス 異常シーケンス 図2.4.2:相乗り機能の効果例(発信シーケンス) (RCR 標準 STD-27 より)18
2.5
12B移動通信システムにおける呼制御信号方式設計条件
第2世代移動通信システムの設計の柱は,加入者増大に対するシステム容量の拡大と, 固定通信網(特に ISDN)のサービス高度化に歩調を合わせた機能及びサービスの高度化 であったことを述べた. 本節では,PDC 方式におけるサービス及び機能の高度化に最も直接的に資する呼制御信 号方式(CC 信号方式)の設計にあたって,考慮すべき設計条件を考察する. 移動通信システムの普及に伴い,より使い勝手のよい携帯電話を求めている.その要求 に応えるために,CC 信号方式は,提供できるサービスが多く,将来の機能拡張性に富み, 固定網との相互接続性が担保された物であることが望まれる.また,移動通信システムは, 固定通信システム(特に ISDN)と比べ下記に示す4点の設計上の考慮点が存在すること が考察される. ① 2.2 章で述べたように,移動機の通信状態により制御チャネルが変化し,それぞれの 制御チャネルがISDN に比べ 1/10 ほど低速である.よって,接続に要する制御信号 伝送によって生じる接続遅延等を最小限にするために,信号方式の汎用性や拡張性 を考慮しつつ信号長や信号数を最小化する必要がある. ② 情報チャネルの通信速度の違いにより,提供される伝達サービスが異なる.ISDN では,主に,音声,64kbps 非制限デジタル,64k×N チャネル,3.1kHz オーディ オ等が規定されている.移動システムでは,無線区間の伝送容量が制限される.急 激な加入者増加に対応するために,個々の通信の通信速度を極力小さくし,収容数 を増大させる必要性から,音声符号は高能率圧縮符号化し,非制限デジタル通信も ISDN より速度を小さく制限せざるを得ない.よって,伝達サービスは,低速度符 号化音声と,低速度非制限デジタルとして提供する必要がある. さらに,移動通信網では低速度音声符号化を適用しているため,音声帯域保証がで きない.よってファックス通信やモデム通信といった音声帯域を用いたインバンド サービスをテレサービスとして提供する必要がある.(表2.5.1) これらの移動通信特有なサービスを規定するよう信号方式の拡張が必要である. ③ 端末収容形態の違いにより,端末収容のフレキシビリティ要求条件が異なる.ISDN では網終端装置配下にバス接続により端末がソケットを通して任意に接続可能な収 容形態である.また,端末はソケットの挿抜により移動可能である.これは,自宅 やオフィスにおいて端末を自由に配置可能とするために想定された要求条件に基づ く形態である. 一方,移動通信システムでは,端末の主体は基本的に移動機自体であり,音声通信 は移動機により提供される.ファクシミリ通信やパソコン通信を移動通信システム を通して外出先でも利用したいとの要求条件から,携帯電話にファクシミリやパソ コンのモデム音をデジタル化して伝送する非電話アダプタを介したファクシミリや19 パソコンを接続する形態が考えられる.この場合でも,移動しながら複数のファク シミリやパソコンを接続する利用形態は考えづらいため,端末に接続可能なファク シミリかパソコンは1台のみに限定することは妥当である. このことから,端末識別や呼識別については,Q.931 に比べ縮退が可能であると考 えられる. ④ サービス機能の配置は,端末側と網側のどちらにどの程度機能を持たせるかという 点は,従来から機能自体の高度化過程において,端末と網それぞれの高度化の用意 性や経済性を考慮しつつ決定されてきた.機能配備の柔軟性について,移動通信シ ステムではISDNに比べ制限が生じると考えられる. 常に端末と網が有線回線を通して接続されているISDNでは,サービス制御機能を端 末側に配置しても,網側に配置しても実行機会を逸することはない.よって,機能 配備の効率性等から配置場所を決定できる.例えば,コールウェイティングや着信 転送機能は網側に制御機能を配備することで,占有通話路の最小化を図っている. 留守番電話は電話端末との一体化により,量産効果によりユーザが気軽に設置でき る価格を実現している.また,着信転送等のサービス起動リガの多くはユーザ起動 によっている. 一方移動通信システムでは,無線回線を通して網と移動機が接続されているため, 移動機が常に網と接続されているとは限らず,サービス制御機能を端末側に配置す ると,実行機会を逸することがある.例えば,基地局からの電波が届かない場所(圏 外)に移動機が移動した場合や,そもそも移動機の電源を切っている場合や,バッ テリが無くなってしまった場合である.このように,移動機と網の接続性が保証で きない移動通信システムでは,サービス機能は多くを網側に設置せざるを得ない. 網側設置としている端的な例は留守番電話機能である.携帯電話はユーザが携帯す ることが多いため,基本的にユーザが「留守」になることは少ない.しかし,移動 機が圏外に移動した場合や,電源を切っている場合に,留守番電話機能が最も効果 的に利用されうる.よって,移動通信システムでは留守番電話機能を網側に設置し, 移動機が圏外や電源が切れている場合に,メッセージを録音するように機能配備す ることが必要となる.同様に,着信転送の起動トリガも,ユーザ起動だけではなく, 圏外や電源が切れている場合にも網が設定された接続先に呼を転送する機能を網が 配備することも特徴的である. このことから,網側にサービス制御を配備可能とするサービス制御や信号方式設計 が必要であるD27D.
20 表2.5.1:ISDN 及び PDC における伝達サービス,及びテレサービス例 (CCITT Recomendation Q.931,RCR 標準 STD-27 より) 伝達サービス 伝達サービス名 Q.931 RCR STD-27 サービス概要 音声 ○ 3.1kHzオーディオ ○ 制限デジタル ○ 11.2kbps音声 ○ 音声通信の伝達機能を提供.フルレート音声符号 化を行う. ビット透過性は保証されない 5.6kbps音声 ○ 音声通信の伝達機能を提供.ハーフレート音声符 号化を行う. ビット透過性は保証されない 8kbps非制限デジタル ○ 8kbpsの伝送レートの移動局ユーザ端末とISDN端 末との8kbpsサブレーとを用いた通信を可能とする 64kbps非制限デジタル ○ ○ 8kbpsの伝送レートの移動局ユーザ端末とISDN端 末との通信を可能とする 11.2kbps音声/データ切り 換えサービス ○ 通信設定後ユーザ希望により11.2kbps音声と 11.2kbpsデータを適宜切り換える 5.6kbps音声/データ切り換 えサービス ○ 通信設定後ユーザ希望により5.6kbps音声と 11.2kbpsデータを適宜切り換える 11.2kbps音声/8kbps非制限 デジタル切り換えサービス ○ 通信設定後ユーザ希望により11.2kbps音声と8kbps 非制限デジタルを適宜切り換える 5.6kbps音声/8kbps非制限 デジタル切り換えサービス ○ 通信設定後ユーザ希望により5.6kbps音声と8kbps 非制限デジタルを適宜切り換える テレサービス テレサービス名 Q.931 RCR STD-27 サービス概要 G3ファクシミリ ○ G3ファクシミリ通信を可能とする G4ファクシミリ ○ G4ファクシミリ通信を可能とする ビデオテックス ○ キャプテン方式による画像情報伝送サービスを可 能とする JUST-PC ○ 郵政省推奨方式によるパソコン間データ通信を可 能とする JUST-MHS ○ 郵政省推奨方式によるメッセージハンドリングサー ビスを可能とする モデム ○ モデム(V.42 Annex)を用いたパソコン間データ通信 を可能とする ショートメッセージ ○ メッセージを単一あるいは同報し,受信確認を送信 者に通知するサービス 自動車位置情報サービス ○ ユーザ要求により指定された移動局の位置情報を 通知するサービス
21
網終端
装置
端末1
端末2
端末n
ソケット
端末 抜き出し端末1
端末 差し込み端末移動
網終端
装置
端末1
端末2
端末n
ソケット
端末 抜き出し端末1
端末 差し込み端末移動
• 複数の端末がバス上に接続 • 端末はソケットにより通信中でも挿抜が可能 (a)ISDN における端末収容形態OR
非電話アダプタ
OR
非電話アダプタ
• 端末は基本的には移動機単独(電話) • 非電話アダプタを移動機に接続することにより,パソコンやファクシミリ等 による非電話通信が可能 (b)移動通信システムにおける端末収容形態 図2.5.1:ISDN と移動通信システムにおける端末収容形態比較 ((a) CCITT Recomendation Q.931 より,(b) 本論文オリジナル)22
2.6
13BCC信号設計法
2.5 章の考察を踏まえると,CC 信号方式の設計条件は,以下の5点に集約できる. (1) 提供できるサービスが多く,将来の機能拡張性に富み,固定網との相互接 続性が担保された物であること (2) 制御チャネルの伝送速度が低速であることから,信号方式の汎用性や拡張 性を考慮しつつ信号長や信号数を最小化すること (3) 移動機の利用形態や構造を踏まえると,ファクシミリやパソコン等を外付 けできる構造が妥当であり,ISDN ほどの端末や呼識別に柔軟性は不要で あること (4) 情報チャネルの伝送速度に見合った伝達サービスや,多くのテレサービス を提供可能とするように信号方式を設計すること (5) 移動機が圏外の場合や電源断を考慮し,一部のサービス制御は網側に機能 を配備することが必要であること. (1)の条件を満たす信号方式として,サービスの拡張性に優れISDN の呼制御信号方 式である ISDN ユーザ・網信号方式(Q.931)が考えられる.CC 信号方式は,Q.931 を ベースとし,ISDN との相互接続性を担保することする. しかし,Q.931 は ISDN 網に特化した信号方式であるため,(2)~(5)の条件を満た すためにはメッセージや情報要素の変更が必要と考えられる.条件(2)及び(3)から 信号方式の簡素化を進めること,(4)及び(5)から移動通信特有機能実現に向けた信号 方式の拡張を進めること,の2つの相反する変更を要求条件に基づいて進めることが求め られる.本節では,CC 信号方式設計の具体案をメッセージレベルと情報要素レベル毎に 提案し,信号量削減効果を示す.2.6.1
14BCC信号設計(1)~メッセージ設計法~
Q.931 のメッセージは,呼処理及びサービス処理を広範囲に行うことができる汎用性を 持っており,移動通信システムに特有のサービス制御を行うために,新たな拡張は特に必 要としないと考えられる.しかし,汎用性が高いため,移動通信システムに特化した信号 方式を設計するにあたっては,利用されない機能や代替可能な機能等を実現するためのメ ッセージを多く含んでいると考えられる.メッセージの簡素化により移動機-網間の制御 信号数が削減できれば,呼制御に要する制御遅延時間を短縮可能である. この観点から,移動通信システムにおいて,特に必要としない機能を洗い出し,不要メ ッセージを削除し,信号手順を簡略化することを考察する.23 (1)移動通信システムに不要な機能 2.5章で述べた様に,Q.931 では自宅やオフィスにおいて,例えば部屋をまたがって 端末を自由に配置できるように,端末機器を網終端装置配下のバス上で自由に移動できる ことを要求条件としてあげている.そのため,通信中の端末機器の移動を実現するため, 通信を一時的に中断し,移動完了後再開させるためのメッセージ群が規定されている(再 開,再開確認,再開拒否,中断,中断確認,中断拒否メッセージ). 移動通信システムでは,移動機以外に移動機に接続されうる端末機器は,非電話アダプ タを経由してファクシミリやパソコン等が想定される.これらの機器は移動機と1対1に 固定的に接続されているが,移動機自体が移動可能なことから,通信中に機器を移動機か らはずして移動させる必要性が無い. よって,移動通信システムでは中断,再開手順のためのメッセージ群は不要と考えられ る.同様に,ユーザの中断状態を通知する「通知」メッセージ等も不要と考えられ,移動 通信用CC メッセージからは削除する. (2)信号手順の簡素化 ISDN ではサービスの拡張性や汎用性を重視し,付加サービスの手順は汎用的な機能手 順の組み合わせで実現されている.例えば,コールウェイティングや三者通話サービスで は,呼の接続,保留,切り換え,を個々の信号手順により実現している.そのため,動作 の汎用性は高いが,ユーザ-網間インタフェースの信号量は多くなっている. 移動通信システムでは,移動機-網間の信号量を削減することが重要なことから,これ らの機能を集約することを提案する.例えば,コールウェイティングでは,第2コールの 着信手順を受け付けることは,第1コールの保留を行うことがからなず伴うことから,第 2コールの接続と第1コールの保留を1つの手順のなかで行うようにし,信号数を削減す ることを提案する. 図2.6.1は,ISDN と移動通信における手順を比較したものである.2.6.1か らみてわかるとおり,ISDN ではコールウェイティングを開始するために 14 個の信号がユ ーザ-網間インタフェースで伝送されているが,CC 信号手順では,6 個の信号に縮退可能 である.信号数は約43%に削減されていることがわかる. 移動通信システムとISDN において共通に提供されている付加サービス移動機-網/ユ ーザ-網間インタフェースにおける信号数比較を表2.6.1に示す.付加サービス手順 により削減率は異なるが,平均して68.2%に信号量が縮退していることがわかる.
24 保留音 付加情報( CR1, FA[CW]) ユーザA 網 ユーザB ユーザC CR1:通信中 CR1:保留中 CR1:通信中, CR2:保留中 呼設定 呼設定(CR2) 呼出 呼出(CR2) 保留(CR1) 保留確認( CR1) 付加情報( CR1, FI) CR1:保留中 応答 応答(CR2) 応答確認( CR2) 付加情報( CR2, FI) 付加情報( CR2, FA[CW]) CR1:保留中 CR1:保留中, CR2:通信中 保留(CR2) 保留確認( CR2) 切替(CR1) 切替確認( CR1) 呼出音 保留音 コールウェイティンブトーン 保留音 付加情報( CR1, FA[CW]) ユーザA 網 ユーザB ユーザC CR1:通信中 CR1:保留中 CR1:通信中, CR2:保留中 呼設定 呼設定(CR2) 呼出 呼出(CR2) 応答 応答(CR2) 応答確認( CR2) 付加情報( CR2, FI) CR1:保留中 CR1:保留中, CR2:通信中 呼出音 保留音 (a) 移動通信システムにおけるシーケンス (b) ISDNにおけるシーケンス 保留音 付加情報( CR1, FA[CW]) ユーザA 網 ユーザB ユーザC CR1:通信中 CR1:保留中 CR1:通信中, CR2:保留中 呼設定 呼設定(CR2) 呼出 呼出(CR2) 保留(CR1) 保留確認( CR1) 付加情報( CR1, FI) CR1:保留中 応答 応答(CR2) 応答確認( CR2) 付加情報( CR2, FI) 付加情報( CR2, FA[CW]) CR1:保留中 CR1:保留中, CR2:通信中 保留(CR2) 保留確認( CR2) 切替(CR1) 切替確認( CR1) 呼出音 保留音 保留音 付加情報( CR1, FA[CW]) ユーザA 網 ユーザB ユーザC ユーザA 網 ユーザB ユーザC CR1:通信中 CR1:保留中 CR1:通信中, CR2:保留中 呼設定 呼設定(CR2) 呼出 呼出(CR2) 保留(CR1) 保留確認( CR1) 付加情報( CR1, FI) CR1:保留中 応答 応答(CR2) 応答確認( CR2) 付加情報( CR2, FI) CR1:保留中 応答 応答(CR2) 応答確認( CR2) 付加情報( CR2, FI) 付加情報( CR2, FA[CW]) CR1:保留中 CR1:保留中, CR2:通信中 保留(CR2) 保留確認( CR2) 切替(CR1) 切替確認( CR1) 付加情報( CR2, FA[CW]) CR1:保留中 CR1:保留中, CR2:通信中 保留(CR2) 保留確認( CR2) 切替(CR1) 切替確認( CR1) 呼出音 保留音 コールウェイティンブトーン 保留音 付加情報( CR1, FA[CW]) ユーザA 網 ユーザB ユーザC CR1:通信中 CR1:保留中 CR1:通信中, CR2:保留中 呼設定 呼設定(CR2) 呼出 呼出(CR2) 応答 応答(CR2) 応答確認( CR2) 付加情報( CR2, FI) CR1:保留中 CR1:保留中, CR2:通信中 呼出音 保留音 コールウェイティンブトーン 保留音 付加情報( CR1, FA[CW]) ユーザA 網 ユーザB ユーザC ユーザA 網 ユーザB ユーザC CR1:通信中 CR1:保留中 CR1:通信中, CR2:保留中 呼設定 呼設定(CR2) 呼出 呼出(CR2) 応答 応答(CR2) 応答確認( CR2) 付加情報( CR2, FI) CR1:保留中 CR1:保留中, CR2:通信中 呼出音 保留音 (a) 移動通信システムにおけるシーケンス (b) ISDNにおけるシーケンス 図2.6.1:移動通信システムとISDNにおけるコールウェイティングシーケンス比較D28 (技術参考資料 INS ネットサービスのインタフェース 第4分冊(レイヤ3回線交換付加サービス編) 発行 社団法人電気通信協会,編集 日本電信電話㈱ ISDN 推進部 1990 年,RCR 標準 STD-27 より)
25 表2.6.1:移動通信システムとISDN における付加サービスシーケンス信号数比較 (本論文オリジナル) 付加サービス Q.931 STD-27 縮退率 起動/切替手順 14 6 42.9% 呼切断解放手順 起動ユーザ先がけ 保留呼切断 4 3 75.0% 呼切断解放手順 起動ユーザ先がけ 通信中呼切断 8 6 75.0% 呼切断解放手順 相手ユーザ先がけ 保留呼切断 4 3 75.0% 呼切断解放手順 相手ユーザ先がけ 通信中呼切断 8 6 75.0% 着信転送 ユーザ選択着信転送 9 6 66.7% 通信中転送 16 14 87.5% 切替モードシーケンス 14 8 57.1% ミキシングモードシーケンス 11 8 72.7% 88 60 68.2% コールウェイティング 三者通話
26