一 般 演 題 〈研 究 〉 一 般 演 題 〈研 究 〉妊 産婦 と家 族(II)
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夫 の育児協 力に対す る妻 の満足度
富士吉田市立看護専門学校 ○竹 田 礼 子 〃 安 藤 正 子 山梨厚生病院 高 野 一 城 I緒 言 核 家族 の増 加 や職 業 を持 つ女 性 の増 加 な ど社 会 や 人 々 の意 識 の 変化 に伴 い 、 男性 が 家 事 や 育 児 に参 加 す る機 会 が 増 え て い る。 父親 と育 児 に関 す る研 究 は、 川 井 が 「黎 明期 にあ る」1) と述 べ て い る よ うに まだ 少 な い。 先行 研 究 で は夫 の育 児動 機 や 育 児参 加 の現 状 とそ の要 因等 の研 究が 主 と して 多 く、 妻 自身 が 現状 を どの よ うに受 け止 めて い る か の研 究 は 少 な い。 そ こで 本研 究 で は 、妻 が育 児 に も慣 れ 、 夫 の協 力 を必 要 とす る時 期 で あ る6ヶ 月 児 をも つ夫 婦 を対 象 と した 。 夫の 育 児 参加 に対 して 妻 が どれ だ け満足 して い るか、 また妻 の 満足 度 は 夫 の どの よ うな行 動 に よ り満 た され て い るのか を明 らか にす る こ とに よ り、 子育 て の社 会 的 支援 の発 展 に資 す る こ と を 目的 とす る。 II方 法 Y県O病 院、Y病 院 にお い て 平成12年7月 ∼8月 に6ヶ 月児 健 康審 査 を受 診 した乳 児 の 両親 で本研 究 の承 諾 を得 られ た 計37組 を対 象 と した 。 先行 研 究 を参 考 に独 自に作 成 した 質 問紙 を配 布 し、 後 日郵送 にて 返送 。回 収数18組 、 回収 率47.3%。 III結 果 1.背 景 初 産婦7組 、経 産婦11組 で あ り平 均 年 齢 は妻32.2歳 、夫35.1歳 で あ った。初 産婦 の 同居 は 14.2%で 経 産 婦 の 同居 は90.9%で あ った。 子 どもの 数 は1子 目7人 、2子 目4人 、3子 目5 人、4子 目2人 で あ った。 2.育 児 の協 力期 待 者 と実 際 の協 力 者 初 産 婦 で は全 員 が 夫 を育 児 協 力 者 と して期 待 し、85%の 夫は 育 児 を 実際 に協 力 して い た。経 産婦 で は、81.8%が 夫 を 育児 協 力 者 と して 期 待 して い るが 、45.4%の 夫 しか育 児 を実 際 に 協 力 して い なか った 。 又、 同居 の 両親 や 上 の子 が 育 児 を協 力 して い た。 3.育 児 協 力 の 要 求度(身 体 的サ ポ ー ト) 育 児 内 容は オ ム ツ 交換 、 調 乳 、授 乳 、 沐浴 、 あ や す、 夜 間 の育 児 の6項 目 と した。 初 産婦 で は 夫 へ の育 児 協 力 の要 求 度 が高 い もで も28.5%の オ ム ヅ交換 な どの4項 目で あ っ た。6項 目 すべ て で70%以 上 が 要 求 して いな か っ た。経 産婦 で は夫 へ の 育 児協 力 の 要 求度 が高 い もの は 186 日本 助 産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3)夫の育児協力に対する妻の満足度 沐浴 の72.6%、 あや すの63.5%で あ った。全て の項 目で経産婦 の要求度 は高 い が、夫 自身の 育児 協力 は全 て の項 目で経 産 婦の夫 は低か った。 4.精 神 的 サ ポー ト 妻 の話 を傾 聴 して い る夫は初 産婦 、経 産婦 とも100%で あ るが 、夫 が傾聴 してい る と答 え た 初産 婦は100%、 経 産婦 は81.7%で あ った。妻へ の理解 度 は、初産 婦 では妻 、夫 と もに100% であ るが経 産婦 で は夫90.8%に 対 し妻 は81.7%で あ っ た。夫の 育児協 力 の満足度 は初産 婦で は100%に 対 し、経 産婦 で は72.6%で あ った。育 児協 力 を行 ってい る夫で も妻 の話 を傾 聴 し 理 解す るな どの精神 的 サポー トが低 い場 合は 妻 の満足度 は低 く、逆 に育 児協 力 を行 って い な い夫 で も妻 の精 神的 サ ポー トが高 い場合 は妻 の満足 度は 高か った。 表1.夫は 話 を傾 聴 してくれ ているか 表2.妻の ことを理 解 して くれ ているか 表3.妻の話を傾聴しているか 表4.妻を理 解 してい るか 表5.育児に対する 妻 自身の満足度 IV考 察 育児 の協力 者 につ いて は、初 産婦 で は全 員が夫 を挙げ 、実際 の協 力者 も夫が85%と 高 い こ とは、双 方の 両親 と別 居 して いるた め、必 然的 に協力 者 は夫 しか いな い状 況 であ り、 夫 自身 も積極 的 に協 力 して い ると考 え られ る。経産 婦で は夫へ の期待 は高 い ものの 、実際 の協 力 者 は 同居 してい る両親 や上 の子 どもであ る。夫 以外 に実際 に協 力 して くれ る人 がい るに もか か わ らず、 夫へ の協力期 待 が高 い こ とは、 子 ど もは 自分達 の手 で育て た い とい う思 いや 両親 と は意見 が合 わ ない こ とや 妻の苦 労 を理 解 して も らいた い とい う思い か らで は ないか と考 え る。 この ため、育 児協 力 の要 求度 で も初 産婦 は現状 以上 の要 求は少 ない のに対 して、経 産婦 で は 沐浴 とあや すに 関 して夫 自身 も70%協 力 してい る と答 えてい るに もかかわ らず、妻 もも っと 協 力 してほ しい と要 求 してい る。育児 協 力に対 す る満 足度 は、 身体 的サポ ー トと精神 的 サ ポ ー トの両 方が 満 たさ れ るこ とで 満足度 は たか くな る。又 、身体的サポー トよ りも精神的サポ ー トが満 た され る こ とで も満足度 は高 くな る。 妻 と夫 に傾聴 と理解 度 に対 す るズ レがあ る こ とも満足度 を低 めてい る因子 と考え る。 V結 論 夫 の育児協 力 に対 し初 産婦 では100%、 経 産婦 では72.6%が 満足 して い る。満 足度 に影 響 して いる因子 は実 際 の育 児協 力であ る身体 的 サポ ー トよ り精神 的 サポー トが大 き く影響 して いる。 VI文 献 1) 川井 尚: 特別報告 育児における父親の役割, 小児保健研究, 第51巻, 第6号, 1992 日本 助産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 187
一般 演 題 〈研究 〉 一般 演 題 〈研 究 〉 妊 産婦 と家族(II)
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育児生活肯定感尺度 の低得点者事例 の検討
元賛育会病院助産婦学校 ○志 村 千 鶴 子 都立保健科学大学 島 田 真 理 恵 愛知県立看護大学 高 橋 弘 子 東京女子医科大学第2病院 遠 藤 優 子 都立保健科学大学 恵 美 須 文 枝 都立保健科学大学 長 岡 由紀 子 東京女子医科大学第2病 院 森 朋 子 I緒 書 研 究 者 らは 、 これ ま で 出産 後 の母 親 の 育 児 生 活 肯 定 感 を測 定 す る尺 度 の 開 発 を行 っ て きた 。 作 成 した 尺 度 の 信 頼 性 と妥 当 性 を確 認 す る 為 に は 、 統 計 的 な 視 点 か ら観 察 す る こ と と同 時 に 、 母 親 の 実 際 の 生 活 と測 定値 が どの よ うに 関 連 して い るか を 確 認 して ゆ く こ と が必 要 で あ る。 そ こで 今 回 は 、 特 に 得 点 の 低 い 母 親 に つ い て 、 出 産 後1ヶ 月 、2ヶ 月 及 び3ヶ 月 の 測 定 値 に 照 ら して 、 そ の 事 例 の 生 活 を詳 し く確 認 す る こ と と した 。 II研 究 方 法 使 用 した 尺 度 は 、 親 と して の 自信 の5項 目、 自 己 肯 定 感 の7項 目、 生 活 適 応 の 5項 目、夫 に 対 す る認 識 の2項目 か らな る計19項 目の5段 階 尺 度 で 合 計 得 点 は95点 とな る。 産 褥1ヶ 月 時 点 で こ の 尺 度 に 著 し く低 得 点 を示 し、 半 構 成 型 面 接 に 対 して 本 人 の 了 解 が 得 ら れ た4事 例 を今 回 の 分 析 対 象 と した。 面 接 は1時 間 を 目安 と し、 そ れ 以 上 の 場 合 は 確 認 を し て 続 行 した。 面 接 は許 可 を得 て テ ー プ 録 音 し、 逐 語 再 生 して 複 数 の研 究 者 で検 討 した。 III結果Tさ ん は 、1ヶ 月 か ら3ヶ 月 の合 計 得 点 に は あ ま り変化 が な い。 産 後 は1週 間 実 家 に帰 り、 そ の後 の1週 間 は 自宅 で夫 が よ く手伝 っ て くれ た。 以 後 は 一 人 で 家 事 、 育児 を行 っ て い る。 2ヶ 月 目の 生 活 適 応 の得 点 が低 くな っ て い るが 、3ヶ 月 目に は 上 昇 が み られ る。 親 と して の 自 信 に は変 化 が な く、 自己 肯 定感 は 生 活 の 適 応 と共 に上 昇 して き て い る。 夫 に 対 して は 、 以 前 よ りも育児 に 関心 を持 たな くな っ た こ とへ の 不満 を表 出 して い る。Kさ ん は 、合 計 得 点が 最 初 か ら 顕 著 に低 い。 出 産 が 非 常 に 苦痛 で あ っ た こ と を訴 え 、 ま た子 供 に 対 す る接 触 を好 ん で い な い。 子 供 を抱 く こ と を あ ま りせ ず 、 泣 きや ま ない とき は子 供 を お い て 外 出 した りす る。 母 親 に な り た くな い 面 もみ られ 、現 在 の状 況 を を 受 け入 れ られ な い。 産 後1ヶ 月 頃 か ら妊 娠 前 の テ ニ ス仲 間 との 活 動 を 始 め 、 友 人 との外 食 の機 会 な どに も子 供 をつ れ て 出 か け 、 そ の 場 で 子 供 が 泣 い て も 自分 の 時 間 を 大 事 に して い た。 夫 に つ い て は ま め に子 供 の 世 話 す る 人 と認 識 して い るが 、育 児 を 手伝 うこ と を今 以 上 に期 待 して い る。Mさ ん は 、 産 まれ た ば か りの 子供 を 世 話 す る のは今 回 が 初 めて で あ る うえ 、退 院 後 に 第1子 が 入 院 して付 き 添 った り、家 族 全 員 が風 邪 を引 い た こ とで か な り大 変 だ った 。 親 が 手伝 っ て くれ て 、2ヶ 月 頃 に は 少 し落 ち っ い た 。 しか し、 その後 に 母 乳 が で な くな っ た り、 下 の 子 が 抱 っ こ して歩 か な い と泣 きや ま な く な っ た りが 大 変 に な っ て い る。 親 に子 供 を預 け て 買 い物 や 飲 み に行 っ た りして も、 す ぐに 呼 び 戻 され る こ とに満 足 し 188 日本 助産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3)育児生活肯定感尺度の低得点者事例の検討 て い な い。 二 人 の 子 供 の 世 話 と家 事 が 追 い つ か ず 、 夕 方 に な る と度 々爆 発 した。 夫 は 一 人 目の 時 は力 を合 わ せ て 何 で も一 緒 にや った の に、 二 人目 は そ れ 以 上 に大 変 だ か ら も っ と手 伝 って ほ しい と思 うが 、 や っ て くれ な い。Sさ ん は、 最初 は上 の 子 に どの よ うに接 して 良い か 分 か らず 混 乱 が続 い た。1ヶ 月 後 か らは 混 合 栄養 か ら母 乳 栄養 の み に な って 、 子 供 へ の 愛 着 は 強 く感 じて い る。 産 後 は 自宅 に 退院 した の で 、 夫 が1週 間 休 ん で 家 事 をや って くれ たが 、 そ の 後 は一 人 で 上 の 子 に悩 ま され た り、家 事 の や りく りが で きず 、 毎 日親 子3人 で 泣 い て い た。 下 の 子 の 首 が 座 って か らは 、 上 の子 との 生 活 に も慣 れ て 安 定 し始 め た。 職 場 か ら仕 事 へ の 復 帰 を 期 待 され て い るが 、保 育 園 に預 け るめ どが立 たな い のが 最 近 の悩 み で あ る。 夫 は初 めだ け休 ん で くれ た が 、 仕事 が忙 し くて 土 日 も不 在 が ち で 、母 子 家庭 状 態 で あ る と言 って い る。 IV考 察 い ず れ の事 例 も予 測 しな い子 供 の 泣 きや 、 出 産 後 の 自分 の 自 由 な 時 間 が な くな っ た こ と、 子 供 との 生 活 の 変 化 に 強 くに 戸 惑 い 、 ま た 、 特 に経 産 婦 の 場合 は 、 上 の 子 供 との 関係 にス トレス を感 じる こ とや 育 児 負 担 の 増加 が 、得 点 の 低 さに 関 連 して い る よ うで あ っ た 。 V結 論 全 て の 低 得 点 者 が 、 面 接 結 果 で は 、尺 度 の カ テ ゴ リー 毎 の 肯 定 的 現 象 よ り も否 定 的 現象 を多 く表 出 し、 子 供 を 育 て る 生 活 の 喜 びや 楽 しみ を感 じて い る様 子 が 少 な か っ た。 こ の こ とか ら 、低 得 点 を反 映 す る 母 親 の 、 実 際 の生 活 状 況 を推 測 す る こ とが で き た 。 表1事 例の 得点 変化 と関略 VI文 献1, 島 田真 理 恵 ・他 産 褥 育児 生 活 肯定 感 を測定 す る尺度 改訂 の 試 み 第5回 東 京 保 健 科 学学 会 学 術集 会2001.1 日本 助 産学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 189
一船 演 題 〈研 究 〉 妊 産 婦 と家 族(II)
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未 婚 の 母 を と りま く家 族 関 係
-妊
娠から育児期において-横須賀共済病院 ○岡 村 暢 子 掛川市立総合病院 宮 田 涼 子 聖隷学園浜松衛生短期大学専攻科 佐 々木 百 合 子 I緒 言 わが 国 で は婚 姻 届 を重視 す る傾 向 が あ り、 出 産 は婚 姻 を前 提 とす る もの との社 会 規範 意識 が強 い。 しか し、 実際 に は、離 婚 後 の母 子 世 帯 と と もに 、未 婚 の母 世 帯 数 も年 々増 加 して い る現 実 が あ る。 従 来 の家族 観 を前 提 と した 規範 意 識 の な かで 生 活 す る未 婚 の母 子 世 帯 は 、離 婚 後 の母 子 世 帯 とは別 に考 え られ 、や や もす る と異端 視 され る傾 向 に あ り、有 形 無形 の偏 見 や 差 別 に さ ら され や す い ので は な いか と考 えた。 そ こで 今 回 、 未 婚 の 母 とな っ た女 性 を取 り ま く家 族 関係 に意 識 を お いて 、 そ の実 情 につ い て 調査 を行 った 。 II方法 対 象;婚 姻 関係 が ない ま ま妊 娠 ・出 産 し、調 査 時 現 在 未婚 母 子 世 帯 と して 生 活 して お り、生 計 の全 て 、 あ るい は ほ とん どに つ いて 自活 して い る女 性8名 方 法:質 問紙 法 及 び 面接 法 III結果 調 査 期 間:平 成8年 ∼12年 調 査 対 象 者:8名(調 査 時 年 齢31∼40歳)対 象 者 出産 年齢 は平 均32.1歳 。8名 中6名 は妊 娠 を知 った と きにはrう れ しい 」 と思 っ た が 、全 員 が 、 今 後 の 生 活や 、子 育 て につ い て 「不 安 だ った 」 と答 えて い る。 さ ら に うち7名 は 実際 妊 娠 中 は 、 「つ らか っ た」と話 して い る。8名 の うち7名 はパ ー トナ ー に確 定 後 す ぐに妊 娠 を 告 げ て い るが 、パ ー トナ ー は 、一 様 に 「驚 いて 」 「人 工 妊娠 中絶 を勧 め」て い る。パ ー トナ ー との 関 係 で は全 事 例 とも 「相 手 は私 と結 婚 で き ない 立 場 に あ る」 と答 えて お り、何 度 か の話 し合 い の後 、対 象者 が 自 ら決断 す る形 で 、 出産 を選 択 して い た。 妊 娠 の継 続 中 に話 し合 い を重 ね 、 妊娠 中か ら協 力 を約 束 したパ ー トナ ー は3名 。 出 産後 子 供 と面 会 をす る 、 問題 が 生 じた とき の相 談相 手 に な っ て くれ る4名 、養 育費 を出 して い る3名 、認 知 して い る3名 で あ っ た。 こ れ らの 全 て 、す な わ ち社 会 的 に 基 本的 な 父親 役 割 と して 考 え られ る 「認 知 」 し、 「養 育 費 」を 負担 し、 「子供 との 面 会」 を行 って い るパ ー トナ ー は1名 で あ っ た。 対 象者 の 家族 、す な わ ち父 母 き ょ うだ いに は 妊 娠 中 に話 した6名 、 出 産 後 に 話 した が2名 で 、最 初 は ほ とん どの家 族 が 自分 の娘 ・き ょ うだ い が 「未 婚 で母 に な る」 こ と を受 容 で きな い で いた。 対 象 の家族 に とって 、 一般 的 な祉 会 風 潮 に 対 す る理 解 とは別 に 、 自分 の 娘 が 「未 婚 の母 」 に な るこ とは 受容 しに くい。 対象 が 、学 業 成績 が よ く、期 待 を持 って 大 学 な どの高 等教 育 を受 け させ た親 ほ ど、現実 を受 け入 れ が た く、 特 に 父親 に そ の傾 向 が 強 く見 られ て い 190 日本 助 産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3)未婚 の母を とりまく家族関係 た。対 象 の 平均 年 齢 か ら して 、そ の親 世 代 は特 に 「家 族 」の概 念 は 「夫 婦 を 中心 と し、親 子、 兄弟 な どの 近親 の血 縁 者 を構 成 す る相 互 の愛 情 と信 頼 の 絆 で 結 ば れ た 小集 団 」 で あ り、 夫婦 でな い もの の 子供 の 存在 その もの が 反社 会 規 範 的 に思 え る。 ま してや わ が家 族間 に そ の よ う な こ との 存在 を認 知 して ゆ くこ とは 大変 な葛 藤 を生 じさせ て い る。 そ の こ とは 、対 象 に とっ て家族 ゆえ の期 待 へ の裏 切 りや 、 思 い もよ らな か っ た両親 の反 応 に深 く傷 つ け られ た の は事 実で あ った。 さ らに 、 この こ とが きっ か けで 、 家族 と絶 縁 して い る事例 もあ る。 しか し、現 在 、生活 上 の 、特 に育 児 上 で 半数 の もの が家族 か らの支 援 を受 け て い る。 対 象者 が 現在 、生 活 上 で最 も困難 を感 じるの は 、 育児 と仕 事 との 両 立 で あ る。 特 に子 供 が 病気 の場 合 は、仕 事 を休 ま な くて は な らな いケ ー ス が ほ とん どで 、 そ の こ とを職 場 等 に理 解 して も ら うこ と と と もに 、そ の状 況 の と きの支 援者 の確 保 の 困難 さを話 す ケー スが 多 か った 。 IV考 察 対象 は 、特 に妊娠 中、 出産 まで の 限 定 され た 期間 の 中で 、 自分 の予 想 を は るか に 越 えて 、 自分 が 主体 的 に判 断 し、 決 定 し、 動 か な くて は な らない 事 柄 が 多 くあ った 。 そ の た め 特 に妊 娠 中につ いて の 辛か った 思 い 出が 多 い が 、一 つ 一つ 解 決 して きた。 その こ とをバ ネ に して 、 現在 の 生活 を維 持 して い る。 しか し、 あ る程度 予想 して い た が 、パ ー トナ ー の 反応 や 協 力 体 制 の実際 、 さ らに 、期 待 や 信頼 が 揺 らい だ 自分 の家 族 の 、反 応 や 態 度 の体 験 を通 して 、 今 後 の生 活 、特 に、社 会 が 自分 た ち母 子 を 「普 通 に受 け入 れ る」 こ とに漠 然 と した 不 安 、 プ レッ シャー を感 じて い る。 また 子供 の 病 気 や 、欠 勤 な どに よ る収入 減 な どの 出 来 事 が 生 じるた び にr不 安 感 が 強 くな る」 と表 現 して い た。 対 象 の8名 は 、 現在 、 固定 した 職業 が あ り、 自立 して生 活で き る力 を持 って い る と考 え られ るが 、現 実的 に、パ ー トナ ー か らの経 済 的 ・社 会 的 ・ 父親 役割 的 サ ポー トは得 られ る こ とが 少 な く、 そ の負 担 は 大 き い。 しか し、 た と え、 パ ー ト ナー や 家族 か ら十 分 な支援 が あ った と して も 、対 象 自身 が 、根 強 い 規 範 意 識 の 中 で 育 ま れ 教 育 され て きた 背 景 か ら生 じて い る不 安 は 、 なか な か拭 い 去 る こ とが で きな い で い る。 わだ か ま りは残 っ てい るが 、実 際 に 母 子で 生 活 を して ゆ く経 過 の 中で 「納 得 して い るわ け で はな い け ど娘 の 困 って い るの を見 て い られ な い」 親 の 気持 ち が具 体 的 な 支 援 と して行 動 化 してい た事 例 も見 られ て い た。現 実 の 生活 にお い て は、子 供 の父 親 で あ るパ ー トナ ー よ りも、 家族 、特 に母親 や姉 妹 は 、 は るか に 具 体的 な 「支援 者 」 で あ り、特 に子 ど もの養 育 に つ い て は 「信頼 す る相 談者 」 とな っ て い る と言 え よ う。 Vお わ りに 価 値 の多 様 化 ・自己 選択 ・自己決 定 そ して 自己責 任 が さ らに問 わ れ る現代 にお い て も 、長 い 文化 の 中で 培 われ た社 会 規範 は簡 単 に 転換 して は行 か ない。今 回 の調 査結 果 か ら も、「未 婚 の 母 」 あ るい は 「シ ングル マ ザー 」 と呼 ばれ る女性 や そ の 子 ど もが偏 見 や 差別」を 受 け る こ とが ない社 会 に な るに は まだ 時 間 が必 要 で あ る こ とが わか った。特 に、そ れ らか ら生 じ る困難 が 、 子 ど もに と って 「父 親 で あ る人 へ 」 で は な く、母 子 に直 接 降 りか か る事 が 多 い 現 実 が 明 らか にな った 。 対象 が母 子 を中 心 とす る こ との多 い助 産 婦 の 私 た ち 自身 、 この こ とを まず 認 識 す る必 要が あ る。 さ らに、 母 子 が規 範 の 枠 に閉 じ込 め られ る こ とが ない 様 、支 援 体 制 の 探 索 を 広 い視 野 で 行 って ゆ くた めの シ ステ ム の構 築 も重要 で あ る と考 え る。(文 献 省略) 日本 助産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3) 191
一 般 演 題 〈研 究 〉 一般 演 題 〈研 究〉 妊 産 婦 と家 族(II)
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妊娠 末 期 か ら産後15週 の睡 眠 ・
覚 醒行 動 の継 続研 究
-手
首Actigraphと
睡 眠 日誌 の 比
較-九州大学医療技術短期大学部専攻科 ○新 小 田 春 美 東亜大学大学院 姜 曼 廷 島根県立看護短期大学 三 島 み ど り 睡眠 ・覚醒の客観的判定が可能なactigraphを 用 いて、出産前後の母親 の睡眠 ・覚醒行動 を継続的に検 討した 研究は少ない1∼2)。睡眠 日誌 は対象者 自身の過大評価 や過 小評価によるバイヤスが生 じる恐れが あ り、特に、産 褥 期は、夜間の頻回の中途 覚醒や疲労な どのため記憶 力の低下が指摘 されている。そ こで、本 研究では、分娩前 5週 から産後15週 にわたって連続 してactigraphで 産後の睡眠 ・覚醒行動 の変化を明 らかにす るとともに、非 妊産褥婦群と比較 し、出産や育児 による睡眠 ・覚醒行動への影響を明 らかに した。 II方 法 対象者はインフォーム ドコンセン トが得 られ た初 ・経産婦5名 づつの計10名 で、年齢29.5±2.2才 。全て満 期 産の経膣 分娩で、かつ母乳哺育であ り、夜間時 の授乳に責任 をもって いた。また既婚女性の中か ら年齢をマッ チ ング し、子供 を出産 した経験のあ る者5名 、それがない もの5名 の計10名(29.7±2.3才)を 無作為に抽出 し、対 照群 とした。対象者 には、妊娠34週 目か ら分娩 後15週 までの約22週 間にわたってactigrabhを 連続して測定す ると同時 に睡眠 日誌 も記入 してもらった。actigrabh(Ambulatory Monitoring Inc.)は 、睡眠 ・
覚醒 モー ド、すなわちZCM、 エポック時間1分 、増幅器設定18で 初期化 し、非利き腕 に装 着した睡眠 日誌は、 10分 毎の各種 生活 行動を、毎 日一定時刻に記 入しても らった。測定期間 の有効データ数は、延べ1,246日 であ った。各妊産婦のactigrabhお よび睡眠 日誌 か ら得 られ た睡眠 ・覚醒 行動は、各人の分娩 日(妊娠39∼41週)を 基準 とし、妊娠 未期(分 娩前5週 か ら分娩 前1週)、 産後1週 か ら5週(産 後前期)、産後6週 か ら10週(産 後 中期)お よび産後11週 から15週(産 後後期)の4つ の期間における平均 と標準偏差を求めた。対照群につい ては延べ140日 間の有効データが得 られた。actigraphの 活動量は、Coleら のアルゴ リズムを用 いて、解析ソ フ トactionwで 睡眠 ・覚醒判定 を行 った上で 、睡眠パラメー タを求 めた。統 計学検定は、最 初に、2つ の測定 法(actigraphと 睡眠 日誌)と4つ の妊娠 ・産後経過期(eessionと 記 す)を 独立変 数に、睡眠パ ラメー タを従 属変数 とす る繰 り返 しの2元 配 置分散分析とNewman-Keulsのposthoctestお こな った。posthoctestで は、 5%以 下 を有意な差 とした。妊産 婦群 の各経過週 と対照群の睡眠パ ラメー タを比較する時 には、対応のな いt検 定 を用 い、5%以 下 を有意な差 とした。 III結 果 図1に は 妊娠末期 、産後3期 および対照群にお ける睡眠パラメータの平均 と標準偏差を示 した。actigraphと 睡眠 日誌 で評価 した平均全睡眠時間 と睡眠 効率は、ほぼ同様な変 化を示 していた。po6thoctestの結果、対照群に 比 し、全 睡眠時間では産後の前期 と中期で有意 に短縮 し、睡眠 効率では4つ の時期 ともいずれ も有意に減 少して いた。Actigraphと睡眠 日誌 で評価 した中途 覚醒時間 について は、いずれ も産後 の前期で急激 に増加 し、 中期、後 192 日本 助 産 学 会 誌 第15巻 第3号(2002.3)
妊娠末期か ら産後15週の睡眠 ・覚醒行動の継続研究 後期の順 に暫時減少 して いた。対 照群 に比 して、中途 覚醒時間は4つ の全て のセ ッシ ョンで有意に増 加していた。Actigraphから 評価 した 中途覚醒時間 は、産 後の 中期 を除 いた全てのセ ッションで睡眠 日誌 よ り有意 に増大 して いた。actigraphで 評価 した昼 寝時間については、妊娠末期 が最 も多 く、 次いで産後前期、中期、後期の順 に減少す る傾向にあったが、対象群に比 して妊娠末 期と産後の前期のみ有 意 に多か った。睡眠 日誌による昼寝時間は、4つ のセ ッション ともactigraphよ りも少ない傾向 にあった が、両測定法で有意 な差 がみ られたの は妊 娠末期のみであった。 IV考 察 睡眠 日誌か らみた先行研 究では、出産後 の早い週ほ ど夜間 の睡眠が悪化 してい るこ とを指摘 していた2)。 本研究 のactigraph および睡眠 日誌 の結果 で も、分娩 後の1∼ 5週 目の夜間 睡眠の乱れが大きく、中期(6 ∼10週)、後期(11∼15週)の 順 に改善 し ていく傾向 にあった。 しか し、分娩 の後 期
Pre-D: Pre-delivery,Post-I: Postpartum 1 to 5 weeks , Pst-2: Postpartum 6-10weeks , Post-3: Postpartum 11 to 15weeks
* Significant difference from Actigraph at p<0
.05 Fig.1 Means and standard deviations of sleep variables for pregnant
women and non-pregnant group(controls) .
にあっても中途覚醒時間 は、対照群に比 して有意 に多い ことか らみ ると、分娩後10∼15週 にあって も、通常の 睡眠 ・覚醒 パター ンには復帰 していないものと推測 された。また、actigraphか らみた中途覚醒時間は、睡眠 日 誌よりも、 とくに産 後3期 とも増大 して いたことが特徴 であった。 これは、授乳な どの比較的長 い覚醒時間のみ が強く印象に残 り、短時間の覚醒が起床時 に思い出す ことが出来な いか、10分 刻みの睡眠 日誌では実際、中途覚 醒があっても記入を省いた ことによるもの と推測 され る。 V結 論 出産後の母親の睡眠 ・覚醒行動は、産後10週 以降、急速に改善す る傾向にあったが、非妊娠時 のレベル には まだ復帰 して いない。産 後の早い時期ほ ど全睡眠時間 は短縮 し、睡眠効率は悪化し、中途 覚醒時間が増大 してい たが、産後15週 に向けていずれの睡眠 パラメータとも改善 していく傾向にあ り、中途覚醒時間や睡眠効率は、 母親自身が主観的 に評価 したものよ りも産後 の全ての時期で実質的に悪化 していた。 VI文 献
1. Haiuchi S, Nishihaa K.: Analyses ofmoters' sleep logs in postpartum Periods. Psychiatry, and Clinical Neurosciences, 53,137-139,1999. 2 新小田春美, 松本一弥, 三島み どり: 妊産婦の睡眠 ・覚醒 行動の変化-妊 娠 末期から産後15週 までの初産婦と経産婦の比較
-, 看護科学学会 誌, 21(2), 141, 2001.