Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
伝 統 的
工
芸
品
産 業 振 興 策
の
担
い
手
Torchbearers
ofTraditional
Crafts
ofJapan
佐
々木 千雅
子伝統 的
工芸品産業振興
協 会SASAKI
Chigako
The
Association
for
the
Promotion
ofTraditional
Craft
lndustries
1
.
捨て去られる衣 料 『「
捨て る1 」
技 術 」とい う本がベ ス トセ ラー
に なっ てい る。 あふ れ か えっ てい る ものを、一
度 捨て 去る こ と に よっ て本 当に必 要 な もの大 事な ものは何 か とい う価 値 観を磨き意識 的 な 生活 者に なろ うとい う提案である。処 理すべ きもの と してまず衣
料
があ げら れる。 い つ か 着 るか もしれない、
もっ たい ない とい う迷い を 脱 却 し て 処 分 してしまえばそこ に 自分の 暮ら しが見 えて くる という。
さて
、
ポロ布と して出 さ れ る 中 に 流行 りの ゆか た も含
まれ るようになっ た 。 夏の フ ァ ッ シ ョ ン として 色とりどりの大
量生産の浴 衣が、
ちょ うど水 着を 選 ぶ ような感 覚で若
い 女性に購
入 さ れるようになっ た こ と が背 景にある。 ゆ か た は かっ てもっ とも基 本 的 な衣 料だっ た。 何 度か洗い張 りを繰り返 し、寝
巻 きに な りオム ツ にな り雑 巾
になるまで とこ と ん使い切 っ たもの である。 布は貴 重品であり、
資 源 循 環型の効 率的 な消費
財で あっ た。
折 角 若い 人たちがゆか たに着 目し た今、
服 飾 文 化と して教育に 取 り入れ る こ と はでき ない だろ うか。一
反の布が少しの無駄 も な く一
枚の 着 物に構 成 さ れ てい くのは見 事である。 た も との丸み をつ け る知 恵な ど感動的ですらある。 こ うし た先 人の知 恵 を学びなが ら自分で縫っ た浴衣を まとっ た ら、
一
枚 の布
の循撮
に思い を は せる の で は な かろう
か。
2 .
使い 手を育
て るゆ か た は家 庭で仕立て、 着 方、 た た み方
、手
入 れ の仕 方まで きちん と伝えられてい たの はい つ 頃まで だっ たろ うか。 手作 りの 物 を大事
に使
い 込ん でい く と言 う
気 風が失わ れて久
しい。
安 価な大 量 生 産 品の普
及に よっ て伝 統 的工芸 品が次 第に衰
退 して きたの はあらがえない事実
である。伝 統 的工芸 品 産業を
存
続さ せ てい く に は作 り手の 後 継 者を確保・
育 成 する ことも大 切だ が、
産 業と し ての基 盤を守るには む しろ使い手の 後 継 者を育て て 需 要の拡 大を図る ことこそ急 務とい える。着
物
を含
め伝 統 的コ匚芸 品の使い 方、 手 入れの仕 方 な ど を伝え るの は本来 家庭の役 割だっ たが、
生活の 洋 風 化、
核家 族化の 進 行に ともない、
もはや十分な 伝 承を期待 する こ と は 難 しい状 況にある。
そこ で
、
作 り手と流 通が その役 割の一
端 を担い、
現代の生 活 様 式にあっ た使い 方の提案 を してい くこ とが求め ら れ てい る。 毎 年 春 先に開 催さ れ るテー
ブル ウェ ア フ ェ ス ティ バ ル も食 器を中心 と し た 工芸品の 紹 介と使い 方の 提 案 を、
消 費 者 参 加 型の テー
ブルコー
デ ィネ イ トの コ ンクー
ル とい っ た形で実
施し て成 果 をあ げてい る。一
般 消 費 者の ラ イフス タ イル に対 す る考 え方 や、
人気
商 品の 傾向な どを把 握 する好 機 なの で、
作 り手も 流 通 業 者も消 費 者動向
研 究の た め に見 学に訪れ、
連 日た くさ ん の来 場 者で 賑わ っ て い る。 工芸 品を取 り 入れた暮 らしに興 味を持ち購入意 欲のあ る 人々が ま だ ま だた くさんい る こと を実 証 してい る。 テー
ブル コー
ディ ネ イトで は、
こ こ数 年の傾 向と して季 節 感の表 現やエ ス ニ ッ ク 調 に代表
さ れ る異 国 情 緒に テー
マ を絞っ た出 品が 目立つ 。 小 道 具として は、
季節 感の 表現に は漆 器を中心 に した和風の器、
異
国1
青緒の演出には東 南ア ジアの 竹 細工や漆、
布 な どが 多 用 されて い る。 こ こで は、
「
和
風」
という
ス タ イル も、
もは や異 国 風と同 列に 日常 性を 越 え た情 趣と して捉 えら れ てい る。 わが国に は もともと舶 来 品 崇 拝の風 潮がある が、「
和 風 」という伝
統的 な意 匠 まで一
種の 異 国情 緒と して取りこんでい る 生活 意 識に接す る時、
伝 統 的工芸 品 産 業の新 しい 可能 性を 感じ る。ゆ か たに して も漆 器に して も
新
しい 世代
にとっ て は な じみの 薄い 新鮮 な領 域 なの である。18 sPECIAL IssUE OF JssD vol
.
8 No.
2 2001 デザ イン学 研 究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
鼕
跳鞭
羹ゴ
雛
騨 翻 図1 岩 谷 堂 箪 笥噸
噸
ん、
ボラ ン テ ィ アと して給 食サー
ビスを する にも心 強 い小道具 で あ る。
料理を 引 き立て、
食 欲 を 亢進さ せ、
や さ しい感情を 引 き 出 し て く れ る。
こう し た 個 食の た めの 器は、
折 敷を あ し ら う と 立 派 な もてな し膳と もな る。
老人施 設であ れ、
ホー
ム パー
テ ィー
であ れ、
様々 なライフ シー
ン で活用 する こと が口∫能である。
高齢 化 社 会が進む中で、
生 き 生 きと健 康 的な老 後を楽しむ た め に、
使い こむ 程 に味わいを 増すi
:芸 品 と 付 き 合 うこ と が もっ と喧 伝 さ れて良い と お も う。
3 .
生 活 文 化の 再 構 築 「和1
の 中に 厂洋1
を取 りこんだ 時 代か ら、
「洋1
の 中に 「和」 の 味 付 けを楽 し むli
寺代が来て い る のか も しれ ない。
その格 好な例が岩 谷堂 箪笥 (図1
) といえ る。
和 室に も洋室に も映え る家 具と して人気を呼んで い る。
車箪笥、
階段箪 笥な ど形の 面 白さ で購入 した 後、
継 ぎ手、
金 具、
材 料の 厚 み な ど堅牢な造り と機 能 性に感 じ入っ て、
伝 統 的工 芸品へ の 信 頼に目覚 め る と い う若 者も少な くない。
応 量 器 (図2
)は寺で使わ れる食 器だ が、
自分な りの使 い 方 が 楽 し め る というのでロ ン グ セ ラー
の一
つ である。
食 事も 修行と さ れ る禅寺で長い 年月 を か けて完 成さ れ たそ の意 匠は、
三ツ椀やメ ン パ な どの 他の入 れ 子の器と比べ ても際立っ て い る。
収 納 ス ペー
ス の限られる都 [li
生 活者や、
持ち 物 にこだ わ る 個 性 派に人気 が ある。
お 弁 当 類 (図3
) も見 直さ れ てい る。
漆器 や 曲 げの 弁 当 箱 は 通 勤・
通学に は 使いづ らいが、
心遣いを 示す には格 好 な 器である。
老親へ 届け る お 弁 当 は も ち ろ4 .
情 報 化 時代の伝 統 産 業 と ころで、
これ から の老 年 世代を構 成す る のが50
代の いわ ゆ る 団塊の 世代で あ る。
圧 倒 的 な 活 力 で 時 代を リー
ド してき た彼らが、
新しい老年 期の ライフ ス タイル を 生 み出そ う と して い る。
大 量生産・
大 量 消 費を卒 業し、
自己の価 値 観を研 ぎ澄ますこ とによっ て、
独 自の 哲学 と高い 意 識を 持 つ に 至っ た 消費者 に とっ て、
伝統 的工 芸 品 は ま さ に 格 好の愛用品と な る筈であ る。
資 源 循 環 型の消 費 活 動、 インター
ネッ トを 使っ た 清 報 収 集、
彼ら を伝 統に回遊さ せ 次の世代へ の 継 承 を確 実に して い くためには、
作り手か らの発信が重 要であ る。
作り手と使い手の交 流の場を広 げ、
消 費 者の声を 反 映し た物 作り がなさ れると ともに、
歴 史 的 背景、 製 造一
r.
程、
特性な ど多 様な情 報の 発信に努 めるこ と。
伝 統的工芸 品産 業の こ れ か ら は、
情 報が左右 す るこ と と 思 われる。
ち なみに伝 統 的工 芸品産 業振 興 協 会で はバー
チャル モー
ル を立ち 上げ、
これ らの情 報 発信を 支援す る 準 備 を 進 めてい る とこ ろ であ る。
デ ザ イ ン学 研 究特集号 sPECIAL ISsUE oF JssD vot