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脳卒中片麻痺患者の視覚性立ち直り反応と歩行能力

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(1)

理学 療法学 第

18

巻第

4

号 

413

419

頁 (

1991

年)

報    告

脳卒 中片麻痺患者

視覚性

歩行能力

吉 元 洋 

* * 要旨  脳卒 中片麻痺 患 者

86

例に対し, 椅座 位にお ける視覚性立 ち直り反 応 を姿勢反射機構検査に基づき測 定 し

歩 行 能 力 との関 連 性にっいて検 討 した

  視 覚 性 立 ち直 り反 応の得 点と性 差

発 症 時 年 齢

病 型 及び評 価 まで の期 間との聞に は有 意な差 異 を認 めな か

た が

麻 輝 側と非 麻 痺 側との比 較では有 意な差 異を認め た (X3

34

542:p

O.

oel

歩 行 能 力との比較で は

麻 痺側 (r

≡− 0.

6113

非麻痺側 (r

=− O.

6127

)ともに有 意な相関 関係 (p<

0.

001

) を認め る と と もに

歩 行 自立群の右麻 痺と 左麻 痺の比較で は右 麻 痺の症 例に

おい て視 覚 性立 ち直 り反 応 の得 点が有 意に高くな ること を認め た (κ』

7.

868

:p<

O,

05

)。 キ

ド:脳卒 中 視覚性立ち直り反 応

歩行 は じ め に  人間に お け る身体のき は種々 の受 容 器によ るフ ィ

ドバ ッ ク回 路を形 成し な が ら発達し

そ れ ぞ れの運動に 適 し た調 節 系が合 目的的に作 用して行わ れ る。 その な か で も特に視覚か らの情報

身体のきにきな役割を 演 じて いる。 視 覚 系の発 達は早期からは じ まる が出生時 で は ま だ完全な状態で は なく

精巧な視覚 系の発達は生 後

6

歳 頃 まで続 く と報 告 されて いる1>。 また視 覚 は単に 知 覚と しての作 用だけで は な く

手と眼の協 調 性や頭 部 調 節に も大 きな影 響 を及ぼす 受 容 器であると と もに効 果 器として の側面も有して い る。  視 覚の関与する姿勢調 節 機 能 として視覚性立ち直り反 応 (

Optical

 

Righting

 

Reactions

:以下

ORR

と略す)

が あ る。

ORR

は頭 部に作用 する姿勢反射の

つ で あ る が

こ のに頭 部に作用するものと して迷路性 頭の立 ち 直り反 応が あ り

本 反 応を基 盤 に して ORR が発 達 す る2) 。 Bobath ヨ) は

眼 を利用して の姿勢の方 向づ け は

Walking

 abilities and  optical  righting  reactions  in   hemiplegic patients

鹿 児 島大 学 医療 技 術 短 期 大 学 部

  Yoichi Yoshimoしo

 RPT :Department  of Physical Ther

  apy

 Kagoshima University School of Allied Medicai   Sciences   (受付日1990年9月1日/受 理日1990年11月8[]) 人間の運動反 応の うちでも有力な要素で あるとして い る。  姿勢の反射 性調節に関与する機能を

般に姿勢反射と 呼んで い るDが, 中島 5> に よ ると姿勢反射の 範囲を明確に 定め たもの は な く

姿勢反 応と呼ぶほ う が適切なもの も あ ると報 告 し て い る

いずれに して も多くの姿 勢 反 射は 発達に伴い整理

統合さ れ る た め, 正常な発達を遂げた 健常者の身体運 動は正常姿勢反射機構に よ り

協調性の あ る多 様な姿 勢運 動パ タ

ンが保障さ れ る6) 。 その た め 脳 卒 中な どの中枢神経 障 害におい ては

これ らの正 常 姿 勢反射活動が阻害さ れた状 態になるた め陽性徴 候や陰性 徴 候7 )な どが 出 現 し

正常な身 体運 動 を行 うことが困難 になる

そ の ため臨 床におい て は

これらの徴 候 を抑 制 した り促 通 した り して訓 練 を行 っ てい るのが 現 状である。  視覚を介 して の運動療 法は, 理 学 療 法 分野で 日常的に 利 用されており

特に座 位

立 位におけるバ ン ス訓 練 や歩 行 訓 練な どは そ の代 表 的なもの である。 そ の ため視 覚 を入 力とする姿 勢 反 射にっ い て評 価 することは

機 能 障 害に留 ま らず

ADL

な どの能 力 面にっ いての評 価にも 役 立つ

 姿勢反 射 を 利 用 した評価は

小児の運 動 発 達検査や評 価 法と して広く利用 さ れて いるT)8)

し か し成 人について は Bobath の価 法が あ るもの の評価項目が多く

熟練

(2)

414 理学 療法学 第 18 巻第 4 号 と経験に も とつ いたセ ラ ピス トで ない と

やりこなすに は困難な側面を有して い る7〕 。 その ため臨床 的に は

特 定の姿 勢 反 射のみにつ い て検 討 してい るのが 現 状であ る鋤 。 しか し身体の動きは種々 の姿 勢反射が複雑に絡 み合っ て い ることが予測される ため

特定の姿勢反射の みにっ い てじ ること は早 計である が

そ れ ぞ れの運 動 に最 も関 係 して いる姿 勢 反 射につ い て評 価 す れ ば

程度 障害を把握 すること も可能にな る。   筆 者は姿 勢反射によ る評価 と して

  カ ナダの

Chedo −

ke

 

McMaster

 

Hospita1

Postural

 

Reflex

 

Mecha −

nism  

Testingii

)12) 姿勢反 射 機 構 検査 :以 下

PRMT

と 略 す)に よ り脳 卒巾患者を評 価 し

本検査 法のや 歩行能力との連性にっ いて報告して い るt3

16)。

 

今回

 

pRMT の検 査項目の

っ で ある ORR に着 目 し

椅 座 位における

ORR

と歩 行 能 力との関 連 性にっ い て討した の で報 告 する

 座 位 保 持 が監 視レベ

可 能 な脳 卒 中 片麻痺患 者 86 (男性 59

女 性 27)例を対象と し

そ の内 訳は脳出 血 28

脳 梗 塞 54

その他4例であり

右麻 痺46

左 麻 痺40 例で あ る。 発 症時の年 齢は 15

83歳 平均

61.

9

発 症か ら評 価 まで の期 間は 1

156 ヵ月 平 均 34

8 ヵ月 であり

発 症 から1 年未満 46例

1年以 上40 例で あ る

1 

視 覚 性 立ち直り反応の判 定 基準 方 法  評 価項 目は

ORR

, 下 肢ブル ン ス トロ

ム ス テ

ジ (以下 BS と略す) 及 び歩 行 能 力で あ り

歩 行 能力にっ い て は 自立 歩 行

監視 歩行

介 助 歩 行 及び歩 行 不 能の

4

段 階で判 定す る。  

ORR

の検査肢 位は図

1

に示 すご とく足部が床に接 地 しない高 さの検 査 台 を 用い

手に よ る支持を防ぐため腕 組み位を保 持さ る

検 者は被 験 者の正 面に椅 座 位を保 持 し, 購幹の動 きを教え た後に実 行 させ る。 驅 幹の動 きは 頭 部 (下 顎 部 )が

骨 盤の支 持 面 (ス ク リ

ン ト

ンで 示 す )より外に出る まで側 方に傾 けさ せ

もし支 持 面 外 ま でけなけれ ば口答 指 示や介助してう。 検査の順序 は まず 非 麻 痺 側につい て検 査し

次に麻 痺側を行う

 

ORR

判定基準を 以 下に示す。   正 常 な調 節 (

3

点 ) :  正常な タ イ ミングと協調性とによ り頭部が骨 盤の 支持 面 外に出る まで輻幹を傾け

かっ も との正中位に戻るこ と が可能  部 分的 な調節 (

2

点 ) :  頭 部を支持面外までけ ること はで き る が

タ イ ミン グ や協調性が悪か

たり, 正中 位まで戻れ ない場合  促通刺激に反 応あ り (

1

点):  随 意的に頭 部を支持面 外まで傾 けること がで き ない

他動的に頭部が支 持面 外まで移動するように介 助

そ の後 介 助なしで正中位 まで立 ち直 れ る場 合   促 通 刺 激に反 応な し (0点 ) :   他 動 的に頭 部 を支 持 面 外 まで傾 け る と

そのま ま倒 れ て し ま う場合 結 果   歩 行 能 力 は 自 立 歩 行 39 (45

3%)

監 視 歩 行 27 (31

4% )

介 助 歩 行 11 (12

8% )

及 び 歩 行 不 能 9 (10

5% ) 例である

 BS はステ

1

;1  (1

2% )

且;2 (2

3% )

皿 ; 39 (45

3%)

IV; 6 (7

0%)

  V 18 〔20

9%)

  VI

20

23.

3

% )例で ある

 

ORR

は麻痺 側及び非麻痺側ごと に得点が算出さ れ る ため

それぞれの分 布は図

2

に示すごと くである

麻 痺 側にっ いて は正常な調節

25

29.

1

%) 例 部分的調節 46 (53

4%) 例

促 通 刺 激に反 応あ り12 (14

0%) 例及 び促 通 刺 激に反 応 な し3 (3

5%) 例である

  非 麻 痺 側で は正 常な調節が 63 (73

2%) 例と多 数を占

(3)

脳 卒 中 片 麻 痺 患 者の視 覚 性 立 ち直り反応と歩行能力

415

麻 痺 側 正

節 4

節 反 応 あ り   (1点)  反 応 なし   (0点 ) 非 麻 痺 側 図

2 

視覚 性立 ち直り反 応の麻 痺 側

非麻痺側 別症例数 め 部分 的調節 18 (20

9%)例

反 応 あり5 (5

9% ) 例で反 応な しの 症例は認めなかっ た

 な お両側と も正常な調節は

25

例 (

29,

1

%) で, その 内

18

例 (

72

%)が自立歩行

他は全て監視 歩行で あ る。  

ORR

と性 差

病 型

発 症 時 年 齢 (表

1−

a

 

b,

  c) 及 び発 症か ら評 価まで の期 間   (表

2 −

a) との比較で は カ イ自乗 検 定におい て有 意な差 異 を 認め な かっ た

 

ORR

と左右麻痺側との比較で は

表 2

b に示 すごと く麻痺 側間に は有意 差を認めな か っ た が

非 麻 痺 側 との 問に は有意な差異を認め た (X2

=41.

379

p

0.

001

)。  

ORR

と麻痺側

非麻痺{則との比 較で は

表 2

c に示 すごとくX2

 

34.

542

と な

有意 な差異を認めた (p<

0.

001

)。  

ORR

BS

との 比較で は

3

すごとくス テ

ジが 高 くな るに従い

ORR

も正 常な調節が 可能とな り

相 関 係 数 r

0

6523 (p< 0

001)で有 意な相 関 関 係を認 め た。   ORR と歩 行 能 力との比 較で は

4

に示 すご と く麻 痺 側 及 び非 麻 痺 側 と もに有 意な相 関 関 係を認め た (麻痺 側 r

=−

0

6113 :pく 0

001

非 麻 痺 側 r

=−

O

6127 :p

O.

OOI

)。 考 察 図 1に示 し たORR の検 査 法 は嫗 幹の バ ン ス能 力を 評 価した り

輻 幹の連 動 能 力を同上させるた めの訓 練法 と して 日常よく用い られて い る

しか しこ の動きに

ど の よ う な姿 勢 反 射や姿 勢の調 節メ カ ニ ムが関 与 して い る か につ いての報 告は ない

しか し表 在 及 び深部知覚や 視覚 及び迷路な ど か らの刺激が, 効果器との間で複雑な フィ

ドバ ッ ク 回路を 形 成 して いるこ と が 推 測 さ れ るが

そのな かで も視覚や迷路の果たす役割が大き いの ではな いか と考 え る。 そのた め今 回は視 覚によ る姿 勢 調 節機能      

t

と して ORR に着 目し

歩 行 能 力との関 連性につ い て検 討し た。   今 回の結 果か らORR と性 差

病 型

発 症 時年 齢 及び 評 価 までの期 間 との間に有 意な差 異を認め な かっ た が (表 1

a b  c 表 2

a)

右 麻 痺と左麻 痺の非 麻 痺 側 間と麻 痺 側

非 麻 痺 側 間の比 較で は有 意 差を認め た (表

2−

a

, b

こと に より

 

ORR

は前述の要 因より も麻痺 の程 度に関 係が あ ること が示 唆さ れ る。 その ため ORR と

BS

と を比較する と, ス テ

ジ が高 くな る に従い

ORR

得点も高く な り驅幹調節 能 力が有 意に向 上 し

正 常な調節が可能な症例が増加 してい る (表

3

)。  次に

ORR

と歩 行 能 力との比較では両側と も同程度の 有 意な逆 相 関を認め たことに より (表

4

歩行能力を 向上さ せ る た めには単に

のみの驅幹 調節だけで は な く

両側の調節能力が向上 する必要がある

ORR 得 点 の麻 痺側と非麻痺側との関係は図 3にすご とく

非 麻

(4)

416

理 学 療 法学  第

18

巻第

4

号 表 1  結 果  a

視 覚性立ち直り反 応と性 差 表 2 結 果   a

視覚性 立ちり反 応と評価 期間 正常な調 節 部 分 的 調 応 あり 反 応なし   3点      2点     1点    0点 正 常な調 節 部 分 的 調 節 反 応あ り 反応な し   3点     2点     1点    O点      麻 痺側 男   性      非麻痺 側       麻 痺 側 女   性     非 麻 痺側 649Q

ー 4     1

D315 311 6269 り 2010 1 未 1 以 年 麻痺側 満 非 麻 痺 側 年 麻 痺 側 上 非 麻 痺 側 2330 1

δ 13 729

り り

ll 5174 2D10 麻痺 側 :xz

3375;p

33

73 非麻 痺 側 :X2

2

Q54;p

35

82 麻痺{副:X2

1

688;p

6397 非 麻 痺 側 :X:

3

541 ;p

17

02

b .

視覚性立ち直り反応と左 右 麻 痺 側

b ,

視覚 性立ち直り反 応と病型 正常な調節 部分的調節 反応 あり 反応 な し   3点      2点     ]点    0点 正常な調節 部分 的調 節 反 応 あり 反 応な し   3点      2点     1点   O点       麻 痺 側 脳 出血      非麻痺側       麻 痺 側 脳梗塞      非麻痺側       麻 痺 側 その他       非 麻 痺 側 698113   114 57

コ ー 20 1     2t 526211 201000      麻痺側 右麻痺     非麻痺 側       麻 痺 側 左麻 痺      非麻痺側 74009 13   2 08

ρ

OQ

2   2 735 ワ

2010 麻 痺 {則:X2

3

527;p

74

04 ヲ旨麻 痺 狽ll:xP

 

4

264;p

37

15  麻痺偵叮:X2

4

292;p

23

17 *非麻痺側:X2

4L379 ;p<0

OOI c

視 覚 性 立 ち 直反 応 と麻 痺

非麻痺 側 正 常 な調 部 分 的 調 節 反 応あり  反 応な し        2点        1点        0点   3点 C

視 覚 性 立ち直 り反 応と発症時年齢 正常な調節 部分的調節 反応あり 反応な し   3点      2点     1点    Q点 麻 痺側 非 麻 痺 側 5DO26 6841 2

bl 30 xE

34

542;pく O

OOI 50歳 麻 痺 側  未 満 非麻 痺側       麻 痺 側 50歳代      非麻痺側      麻輝 側 60歳代       非 麻痺 側      麻輝側 70歳 代      非麻痺側 80歳  麻 痺 側  以上 非 麻 痺 側 7099693302   1  

 

 

1

 

 

1  

 

1 31L3673532     1

 

 

 

1

 

 

 

1 21214 玉 3111 QO10100010 表

3

 視覚性 立 ち直り反 応 と ド肢ブル ン ス トロ

     ステ

ジ 正 常な調節  部 分 的 調 節   反 応 あり  反 応な し   3点      2点      1点      0点                     麻痒 但啀:xz

16

088p

18

73                     非 麻痺但1:X2

4

498;p

59

16 痺側の得 点が向 ヒすれば 麻 痺 側の それ も向上 するこ と を 示 して い る

 

(r

O

67589 :p〈 0

001)

その た め歩 行 能 力の向 上に は早期から出現す る非麻痺 側の

ORR

を利 用 し

非 麻 痺 側の身區幹 機 能を積 極 的に強 化 して い くことが 必 要である。 こ の こと が麻 痺 側 を含め た編 幹機能を向上 さ せ

歩 行 能 力の改 善にも役 立っ え る

 

軅幹運動の重要 性につ い て は諸 家6]17}]s} の報 告に も ある ご とく

種々 の動作の基本に な る た め運 動療法のな かに 積 極 的に取り人 れるべ きで ある。 しか し単に可 動 性のみ IH 皿 WVW QO ] 99Q42           1 OO49398    

2

Ql1000     1 111000 r

O

6523;p<0

001 に着 目 するだけで はな く正常な立 ち直りなど を考慮し

いわゆ る正常姿勢反射活動に基づ いた訓練を行 うこ と が 必要に な る。  沼 田ら]9)

失 行

失 認 を伴わ ない脳卒 中片麻 痺患者 の荷 重 分 布 を 右 片麻痺と左 片麻痺患者を比較し

左片 麻 痺で は左傾 斜に より右へ 有 意に偏位す る と し

左体 幹の 優 位 性にっ いて報告してい る。 さ らに森田 ら 20}重 心 動 揺 計に よ る分析で

右 片麻 痺 例は視 覚 系の影 響を大 き く

(5)

脳 卒 中片麻 痺患者の視覚性立 ち直り反 応と歩 行 能 力 417 麻 痺 側 3 2 1 00 r

0

67589 P 〈O

OO1 o  o  o   o o o   o  e  o   o o

 

 

o

 

 

e

 

 

o o

 

o

 

o

 

e

 

o O

 

 

O o

 

 

o ooo

 

 

o

 

 

o

 

 

o

 

 

e oOoo   

o

  o   

o

  oo

 

o O

 

o

 

e

 

e

 

ee   o  e  o 1 2 3 非 麻 痺 側 図

3

 

視覚 性立ち直り反 応の痺 側

麻 痺 側の比較

   

な お (○)は10症 例を示す 受 けること を報 告して い る。 今回の結果で は表 2

b 示すごと く麻 痺 側 間に は有 意 差を認め な いもの の

非 麻 痺側闇には有意な差 異を認め た。 し か し歩 行 能力 を自立 歩行群と非 自立 歩 行 群 (含 :監 視 介助及び歩行不 能 ) に分け右麻痺と左麻痺 を比 較 する と

5

に示 す ごと く 自立歩行 群で は右麻 痺 と左 麻 痺との間に有 意な差 異を 認 め

沼 田ら が報告 して い る よ う に左体幹の優 位 性が示 唆 さ れ た。

 

筆 者が電勁式バ ン ス ボ

ド に より健 常 成 人の 軈幹傾 斜反応を 測定 し た結 果で は

開 眼にお け る 1° / sec の 遅い傾斜刺激で は右方傾斜で頭 部 移 動 角が有 意に大きく

3 °

/sec の速い刺激では左右差 を認め な かっ た が

閉 眼 表4  視 覚 性 立ち直り反 応と歩 行 能 力  a

麻痺 自立歩行 監 視歩行  介 助 歩 行  歩行不能 正常な調 節:3点    18 部 分 的調 節 :2点     19 反応 あ り  ll点      2 反 応な し  :O点   Q 7820   1 0 Ω 021 O162 では開 眼に比較し傾斜速度に関係な く, 左 傾 斜におい て 有 意に頭 部 及 び体 幹の移 動 角が増加するこ とを報告して い る21 )

こ の よ うに躯幹 傾斜反応や立 ち直りの動 きに は

視 覚 か らの フ ィ

ドバ ッ ク が重要な役 割を有して い る こ とが 示 唆される

また渡辺12 )は立位姿 勢の調節は前庭 感 覚

視覚レ 体 性 感 覚の統 合 と発 育 段 階で の各反 射系の プ ロ ラ ミングとに よ り完 成 すると報 告して い る。

 ORR

は出生時

〜2

ヵ月に出 現し生 涯 持続する反応で あ り

そ の統 合 中 枢は視 覚が関与す る た め大脳皮 質

特 に後 頭 葉にある とす る報 告が多い2)3冫 。 しか し

Fioren−

tino2:〉 は その中枢を 中脳 レ ベ ル と し

田 幸ら24) 中脳動 物に おいて見られ る と報 告 して いる。 ま た中村ら 2fi> は サ ル の運動 野, 運動前野を 除 去 した高 位 除 脳 動物におい て も見 ら れ る と 述べ て いる

な お PRMT で は中脳レベ に分類さ れ てい る。

 

こ のように

ORR

の中枢につ い ては 両 者の説が ありど ち らが中枢であるか を結論づける こと 表 5 麻 痺 側と歩 行能力との較 r

=−

O

6113;p<0

001 正常な 謌節 部 分 的 調 節 反 応 あ り 反応な し       0点   3点      2点     1点

b

非麻 痺 側 自

 

立 右麻痺 歩 行 群 左麻痺 441  72 1 20 DO 自立歩行 監 視 歩行  介助 歩 行 歩 行不能 X2

7

868 :p< O

05 正常な調節:3点  35 部 分 的 調節:2    4 反 応 あ り  :1点     0 反応な し  :0点    0 3400 2

ρ

0320 06

00 正常な調節 部 分的調節 反 応 あり 反 応な し       0点   3点     2点    1点 非 自立 右 麻 痺 歩行群 左 麻 痺 34 工34 重 55 21 r

=−

O

6127;p〈O

OOI X2

0

492:p

092

(6)

418 理学療法学 第 18巻第 4 号 はで きな いが, 本反 磨に は そ れ だ け多くの要 因が関係し て い ることが示 唆され

今 後の研 究の成 果に期 待した い

 今 回, 椅座位におけ る

ORR

をPRMT の判定基準に よ り評価 し

歩行 能 力との関 連性につ い て検し た が

歩行に は姿 勢反射が単 独で作用 すること は なく種々の反 射

反応 が複 雑に絡み合っ て行わ れるた め

今 後その他 の姿 勢 反 射との関 連 性にっ い て も検討し たい。 ま   と  め  脳 卒中片麻痺患 者

86

例に対 し

姿 勢 反 射機構検査の なかの視覚性 立ち直り反 応に着 目し歩 行 能 力との関 連 性 につ いて検討し た結 果

以 下の結論を得た

  1

視覚性 立 ち 直 り反 応の得 点と性 差

発 症 時の年 齢

病型 及 び評 価までの 期 間 との間には有 意 な 差異を認 め な か っ た が

麻 痺側と非麻 痺側との比較で は有意に非麻痺 側の 得 点が高くな るこ とを認 め た (X!

34.

542p

0.

001

)。   2

視覚 性 立ち直り 反応と下肢ブル ン ス トロ

ス テ

ジ との比較では

得点が高くな るに従いス テ

ジも 有 意に高 くなる こと を認めた (r

 O

6523:

p

< 0

001)

 3

視 覚 性 立 ち 直 り反 応と歩 行 能 力との比 較で は

麻 痺 側 (r

=− 0.

6113

非 麻 痺 側 (r

=−

O

6127

ともに 歩 行 能 力が向上する に伴い得 点も有意に高 くなる こと を 認めた (p<

O.

OOI

。  4

視 覚 性 立 ち 直り反 応の麻 痺 側と非 麻 痺 側 得 点と の 間に は

有意 な相関 関 係 を 認めた (r

O

6759

p

O.

OOI)。   5

歩 行自立群の左 片 麻痺と右 片 麻 痺 との比較では

有意に右 片麻 痺の得 点が高くなること を認めた (x2

7

868

:p<

0.

05

)o なお

本 論 文の要 旨は第 25回日本理学 療 法 士 学 会に おい て 口演 し た。 引 用文献 1)Farber SD : 〔平 山義人

他 監 訳 )

1

神経 系の リ

ビ リ テ

  ショ ン

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2)Barnes MR

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医歯薬 出版

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p60

4) 島村 宗 夫 :姿 勢 反 射の生 理

理 学 療 法

2 :85

92

1985

5) 中 島雅之輔:姿 勢 反 射の評 価と 応用

理学 療 法

2 :109

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 1985

6) 吉尾 雅 春

松田淳 子

山 崎 賢 治 :運 勤 機 能の評 価

1成    人 :脳 卒 中 片 麻 痺 患 者の運 動 機 能 評 価

PT ジャ

ナル

   23:349

356

 1989

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ショ ン医学 全 書5」    測 定と評 価

第2版

医 歯 薬 出版

1987

pp 329

394

   pp 4〔}8

420

8)

agti

」富 太 郎

川口幸 義 :リハ ビリテ

シ ョン診 断 学 (10)    

主と して姿 勢 反 応に基づ く脳 性 麻 痺の診察 法

一.

総 合リ    

 4 :827

838

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9)柳 沢   健:姿 勢 反 射と脳 卒 中 片 麻 痺

理 学 療 法

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   123

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奈 良   勲:運 動 失調

平 衡機 能の評    価

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   Assessment資料

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1978

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   ment  and Posture following Stroke

 Neurophysiology    and Treatment Prirlciples

 Oct 2

3

4

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他;脳卒 中に対す る姿勢反射機構検    査の紹 介

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4

1987

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一,

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他:脳卒中片 麻 痺患者に対す る姿 勢    反 射機 構 検査

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1989

/6吉元洋

:脳 卒 中 片 麻 痺 患 者の姿 勢 反 射 機 構 検 査と歩 行 能    力

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17)奈良 勲:片麻痺患者の歩 行 訓練

理学療法

1 :27

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18) 楠 和佐 子 :運 動 療 法にお ける体軸 回旋 運 動の意義 PT    ジャ

ナル

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正990

19) 沼田憲 治

川 名隆治

荻 原 昇

石 井 久 雄:左

右 麻 痺 患    者 間にお け る体 幹バ ン ス の差 異

理学療 法 学

15119

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1988

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緒方 甫

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総    f≒1)/丶

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22) 渡 辺   悟:立位 姿 勢の調 節 機 構

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 ppll2

114

(7)

E・avvEP

opltzzMfigdi

wt"ttth

t5

pt

lj

NJE

2:

tsfittE"

419

<Abstract>

Walking

Abilities

and

Optical

Righting

Reactions

in

Hemiplegic

Patients

Yoichi

YOSHIMOTO,

RPT

Dopt.

ofRhysical

TZeempy,Ktigoshima U)zivasity

School

ofAllied

Medical Sciences

In

86

patients with cerebral apopletic

hemiplegia,

Optical

Righting

Reactions

(ORR)

in

a sitting in chair

position

was measttred according tothe pestural reflex mechanism testingto

'

examine itscorrelation with walking ability.

'

No significant differencewas noted

between

scores of

ORR

and sex

difference,

age of onset,

morbid type or period up tothe evaluation, but comparison between the paralytic and non-paralytic sides revealed a significant

difference

by!=

34,542

:p <

O.OOI).

Comparison

with walk-ing ability revealed significant differences

(p

< O.OOD forboth the

paralytic

side

(r:=:

-

O.6113)

and non-paralytic side

(r=-

O.6127),

and comparison between right and lefthemiplegias inthe

walking, self--supporting group revealed significantly high scores

Cx:==

7.868:p < O.05)of ORR

for

the right hemiplegic cases.

参照

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