受理日:2016 年 11 月 20 日 GPI 標準化委員会 Fig.2 原料ガラス繊維 Fig 13 Vis ual inspection Fig.1 グラスマット
辰巳泰我
1・王振洪
1・田村進一
1,2・西野義則
1,3 1株式会社 NBL 研究所
3大阪大学産業科学研究所
3NBL マテリアル株式会社
Study of mat sizing agent of glass fiber
1st Report: Basic Properties of Olfine
Taiga TATSUMI
1, ZhenHong WANG
1, Shinichi TAMURA
1,2, Yoshinori NISHINO
1,3 1NBL Technovator Co., Ltd.
2ISIR, Osaka University
3NBL Material Co., Ltd.
Abstract: This research is a report on research results on the surface activity and coupling effect of the sizing
agent used for sizing materials of glass fiber mats. It is turned out that the effect of using an olefin surfactant as a CSM convergence aid for producing the effect of minimizing the amount of vat binder necessary for CSM forming is that the necessary binder amount can be drastically reduced to a maximum of 1/5.
Keywords: nonionic surfactant, sizing agent, static surface tension, dynamic surface tension, wettability, defoaming properties
キーワード: 非イオン界面活性剤、サイジング剤、静的表面張力、動的表面張力、濡れ性、消泡性 1. 緒言 本研究は、ガラス繊維マットのサイジング材料に用いる集 束剤の界面活性とカップリング効果に関する研究成果につ いての報告である。 Fig. 1 はガラス繊維マットの製品である。一般にガラス繊 維を切断して平面に分散、バインダーで繊維交点を接合し て成るガラス繊維マット、Chopped Strand Mat(CSM)は Fig2 に 示 す マ ル チ エ ン ド ロ ー ビ ン グ と 呼 ば れ る 13 ミ クロン 100~200 本のフィラメントを 2400tex(400g/km)集束したガラス 繊維(束)を約 50mm に切断し て、Fig. 1 に示す 100~800g/㎡ のマットを成形する。この CSM は不飽和ポリエステルなどマト リックス樹脂の含浸によりバイ ンダーが溶解して、ガラス繊 維が分散することで強化繊維 内在の粘土層を形成して樹脂 を硬化一体化することで FRP (Fiber Reinforced Plastic)が できる。すなわち、ガラス繊維 を仮接着して樹脂の硬化に 悪影響しないマットバインダ ーをガラス繊維接点に集束さ せて繊維表面に濡れ性を与 える機能を持つ収束助剤が必要である。これには、Fig. 3 の ガラス繊維接点に有効にバインダーを集束させて、ガラス繊 維束の表面を結束させるための収束効果を得る必要と、反 対にマットとしての柔軟性を損ねないよう繊維間の交点以外 は可能な限り繊維間を接合接着してはならない機能も必要 とされる。同時に効率的な接合接着はガラス繊維束表面を 内部に侵入せずに覆う繊維束間の接合である。さらに、マト リックス樹脂に容易に溶解し樹脂の性能を阻害しないこと、 一方、マトリックスとガラス繊維のカップリング効果を得るため に加水分解されたシランカップリング剤が付着するガラス繊 維束を構成するサイジング剤の機能をも妨害してはならない。 すなわち、CSM の性能評価を示す Fig.4[1]の必要性能を保 証して、CSM 成形に必要な高価な副原料マットバインダー 量を最小として、FRP 品質に悪影響がないマットバインダー の接合効果を最大にする CSM 収束助剤(界面活性剤)の 適用研究を行った結果、CSM 生産に必要なバインダー量を、 Fig. 3 マット(ガラス繊維接点接合)[1]
Fig.5 サーフィノール[2] (2,4,7,9-tetramethyl-5-decyne-4,7-diol) Fig.7 最大泡圧法の原理[2] 製品 (g/m2 ) Pw450# Em450# 製品引張強度(kg/100mm) 14< 6< 曲げ剛性(mm/125mm片持) 20> 60> 曲げ剛性(mm/250mm ) 80> 製品 (g/m2 ) Pw450# Em450# 含浸時間(秒) 10> 10> 10分垂直樹脂分離(mm/100mm) 3> 10> スチレン溶解時間(分/100mm・100g) 0.5~1 0.5~1 Pw450# Em450# 透明 半透明 none 5> 5> 15> 10> 30> 95℃100hr、変色・強度劣化(%) 95℃500hr、変色・強度劣化(%) 95℃1000hr、変色・強度劣化(%) 製品 (g/m2 ) 30~35wt%Mat,FRP成形 Fig.6 サーフィノール(アセチレングリコール)と 一般界面活性剤との物性比較[2] 品質低下を最小限に保ちつつパウダーマットバインダーの 必要量に比べて最大1/5に激減させる柔軟性を持つマット の成形に成功した。 2.使用した収束助剤の特徴 使用した収束助剤(以下、オルフィンと呼ぶ)は、エマルジ ョン型のマットバインダーではマットバインダー乳化の為の 界 面 活 性 剤 を 多 く 含 む 。 さ ら に 、 原 料 ガラス繊 維フ ィラメントに使 用されるサイ ジングを溶解せず、加水分解シランカップリング剤や他の収 束剤も溶解しない。すなわち、マット加工に必要なエマルジ ョンバインダーの新たに加わる界面活性剤がすでに付着す るフィラメント収束剤を溶解などして、その効果を妨げてない のは Fig. 5 に示すサーフィノールであると考えた。 更に FRP 成形時にはスチレンモノマーによってカップリング剤を 除いて全て溶解、マトリックス樹脂に回収される必要がある。 この目的には、ガラス繊維とマトリックス樹脂サーフィノール 界面活性剤(日信化学工業製品名“オルフィン”、アセチレ ングリコール)を応用した助剤が適する。サーフィノールは Fig. 5 に示すように、左右対称の構造をした非イオン界面活 性剤で、「泡の立ちにくい濡れ剤」として各方面の水系材料 に応用されている。環境問題がクローズアップされはじめ、 各種材料の水系化が推進されている状況下では、サーフィ ノール(Surfynol)の機能が適する。濡れ・消泡・さらには分散 の用途においても目的に合致する。分子構造として非常に 安定したグリコールで、分子量も小さく、表面張力を大きく下 げる効果があり、適応材料の幅が広く、また、塗料材料に応 用した際は、焼き付け工程を経ることによって塗膜に残らな いというメリットがあると報告されている。このように多機能な サーフィノール界面活性剤を配合し、様々な用途に幅広い 使用をされているのがオルフィンである[2]。 3. オルフィンの特徴 (最大泡圧法による表面張力の測定) Fig. 6 に示すように、オルフィンは①動的表面張力を下げ る②起泡最大泡圧法 は、Fig.7 に示した原 理のもとで、Fig. 8 に示す測定機器を用 いて行った[3]。特性 を抑制する(消泡性を 上げる)機能を有する。 Fig.4 CSM の仕様(例 450#)
受理日:2016 年 11 月 20 日 GPI 標準化委員会 発生速度をアップした。
最大泡圧法の長所は、泡の速度を変更することで動的 表面張力・静的表面張力両方を測定できることにある。 窒素吹き込みにより発生する泡によって急速に出来上 がってくる界面張力(Fig. 9)は、Du Nouy 法(Fig. 10)のよ うな静的な状態で測定界面張力値(Fig.11)と同様にはな らない[4]。 通常、動的表面張力は、Fig. 11 に示す静的表面張力と 比較して高くなる。実際の使用条件に近い状態の表面張 力は、動的表面張力のほうであり、 動的表面張力の制 御が重要である。 Fig. 12 は各種界面活性剤の動的表面張力を比較した ものである。オルフィン系はフッ素、シリコン系、サク シネート系と特性が異なり、動的表面張力が低い。 Fig.12 各種界面活性剤の比較(最大泡圧法による評価) 4. オルフィンの性能 4-1 濡れ性 オルフィンによる濡れ性改善の例を Fig.13 に示す。 Fig. 13 オルフィンによる濡れ性改善 (例:インクジェットインク) 左:一般的界面活性剤 右:オルフィン 接触角はオルフィン添加により小さくなった(球面に 近いほどより接触角が大きくなり、濡れ性は悪くなる。)。 すなわちサーフィノールが濡れ性の向上に寄与してい る。 Fig.14 はオルフィンによる水系樹脂の濡れ性を改 善した例を示す。 Fig.14 オルフィン添加による濡れ性改善効果 (左)オルフィン添加 (右)添加剤なし 添加剤なし(右)では樹脂ムラがひどかった(矢印部分)の と比較して、オルフィン添加時(左)は樹脂が全体に付着し て、非常に美しい仕上がりとなった。添加剤なしの場合、対 象物が濡れ性不足と考えられる。 4-2 消泡性 Fig. 15 に、オルフィンによる消泡性の改善結果について 示す。なお、顕微鏡写真中の白い線を 100μm (0.1 mm)と し、拡大率=100 倍とした。 Fig. 8 表面張力測 定装置(最大泡圧 法による)[2] Fig. 9 最大泡圧法による表 面張力測定評価(空気圧・表 面張力と時間の関係)[3] Fig. 10 表面張 力測定装置(Du Nouy 法による) Fig. 11 Du Nouy 法による法による 表面張力測定評価(応力-測定長 さから表面張力・ラメラ長を得る) [4]
Fig. 15(a)に一般的な界面活性剤を塗布したのが Fig. 15 (b)である。写真上だけでも、穴が大小数十か所みられた。 界面活性剤に起因する泡の影響と考えられる。一方、Fig. 15(c)では穴は確認できなかった。オルフィンに含まれる界 面活性剤サーフィノールは表面に残る泡を除去する(破泡 効果)だけでなく、内部にとどまる泡を除去する(抑泡効果) ため、たとえ界面活性剤以外に起因する気泡さえも積極的 に消し、その結果、紙の繊維の隙間が埋まり、ピンホール痕 のないきれいな表面が得られる。 オルフィン添加の有無による消泡性向上について、塗布 面をマイクロスコープで撮影した結果を Fig. 16 に示す。 Fig. 16 オルフィンの消泡性(左:ブランク、右:オルフィン 0.1%) オルフィンを添加した写真右は、オルフィンなしのよう写 真左の凸凹はみられず、均一分散面に仕上がることが分か った。なお、図中の縮尺は 1000μm =1 mm である。 5. オルフィン助剤使用の効果 5.1 マットバインダーの接着接合効果 Fig.17 は、ガラス繊維とマットバインダーの接着状態を示 す電子顕微鏡写真である。使用ガラス繊維は 11~13m 200 本のシランカップリング剤 0.1%とポリ酢酸ビニル(PVAc) 収束材約 0.4%が主体のサイジングされた 2400Tex マルチ エンド E-glass、50 ㎜カットロービングを用いたオリフィン助剤 を 1~3%添加した 20~30%含有マットバインダーエマルジ ョンの接着状態確認試験結果である。 Fig17 左は、ガラスフィラメント形成サイジング剤がエマル ジョンマットバインダーの界面活性剤による喪失がなく、繊 維表面に新たな粒子径のマットバインダーが付着している。 中央の写真は、マットバインダーは繊維間の隙間には多く 侵入せず、フィラメント結束効果を担っている。右写真は、マ ットバインダーの界面活性剤がフィラメント形成用のサイジン グ剤に対して不溶解であることを示している。 すなわち、オルフィンはマットバインダー収束助剤として 効果があることを示している。 Fig.15 紙繊維の電子顕微鏡写真 (a)左:ブランク (b)中:一般的界面活性剤を使用した場合 (c)右:オルフィンを使用した場合 Fig. 17 ガラス繊維とマットバインダーの接着状態を示す電子顕微鏡写真 (左) 繊維表面にマットバインダーが付着 (中央)バインダーによるフィラメント結束効果 (右)サイジング材を除去しない
受理日:2016 年 11 月 20 日 GPI 標準化委員会 5.2 アクリル系エマルジョンバインダー使用の特性[4] Fig18 はマルチエンド 100 本と 200 本の 50 ㎜カットロービ ングを用いた、アクリル系エマルジョンにオルフィン助剤を加 えたマット強度と必要バインダー量の試験結果を示す。 必要なエマルジョンマットバインダー強度は 100 ㎜幅換算 で 5 ㎏である。また許容曲げ剛性は 125 ㎜長さのカンチレバ ー評価で 5 ㎝である。このバインダーによるオレフィン無添 加時の同一条件の標準添加量が 1.2%であった機械的強 度特性が、オレフィン添加により必要バインダー量が約 50% 低減する試験結果が得られたことを示している。 この結果は、最良の生産条件では必要強度と柔軟性が マルチエンド 100 本使用ではバインダー使用量が従来の 1.2%から 0.5%に、200 本で 1.4%が 0.6%のバインダー添加 量(乾燥重量比)に軽減できた。なお、PVAc 系の柔軟タイプ のエマルジョンバインダー使用では添加量は約 3.5%が標 準的である。 を 使 用 し た CSM に よ る FRP 成形品のガラス繊維 界面への影響を、成形品 の煮沸劣化試験[4]を行っ て比較した写真である。使 用樹脂は ISO 系ポリエステ ル樹脂で約 65%wt含有。 ガラス繊維界面に影響 しない VE 系パウダーバイ ンダー使用の CSM 並びに、 オルフィン無使用の中央と 比較して、右のオルフィン 使用は明らかに界面劣化が少なかった(白化度合いで判 定)。 すなわち、オルフィン助剤の使用は、ガラス繊維とのカッ プリング剤の効果の阻害が少ないことを示す。 6 まとめ 水溶性のエマルジョンマットバインダーは、PVAc・EVA・ア クリル・PET 系粒子をイオン系の界面活性剤で濃度 2.5%~ 8%に分散させた製品である。このバインダーを用いた CSM 製品は、通常 LOI が約 3.5%添加が必要で、高強度で柔軟 性の高いアクリル系を用いた場合も少なくとも 1.2%以上が 必要となり、さらにガラス繊維との界面劣化が生じて、エマル ジョンバインダーは柔軟性に優れるが白化が欠点とされて いる。本研究は非イオン性の界面活性剤のオルフィンを使 用することにより、この問題解決に効果を得たので、その成 Fig.18 アクリル系エマルジョンバインダー使用の特性(オルフィン助剤による効果)[5] Fig. 19 オルフィン使用の CSM 製品の耐食性評価結果
果を報告した。 1) フィラメント結束バインダー効果が評価できる強度 UP を確認した。 2) CSM 製品はガラス繊維界面劣化が改善されることを確 認した。 3) 消泡効果があり約 300%量のシャワーと余剰エマルジョ ンのバキューム時に発生する泡問題が解消した。 謝辞 本論文は、日信化学工業株式会社との過去に共同研究 により進めてきたガラス繊維用のエマルジョンバイン ダーおよび CSM 生産設備開発成果であり、報告機会が与 えられたことから、その成果を発表する。各位のご支援 に感謝する。 参考文献
[1] Taiga Tatsumi, ZhenHong Wang, Hiroyuki Doi, Shinichi Tamura, Yoshinori Nishino, "Analysis of autonomous concentration of mat binder particles to cross point of glass fiber bundles by electric field",
GPI Journal Vol. 2, No. 2, pp. 231-236 (2016).
[2] オ ル フ ィ ン カ タ ロ グ 、 日 信 化 学 工 業 株 式 会 社 (2016) [3] http://www.face-kyowa.co.jp/science/theory/what_s urface_tention/ [4] 青 木 健 二 、 塗 料 の 研 究 No. 156, pp. 26-31 (2014). [5] 辰巳泰我,王振洪,土井弘之,田村進一,西野義 則,"チョップドストランドマット製品の品質評価と試 験方法",GPI Journal Vol. 2, No. 2, pp. 223-226 (2016).