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行動活性化パラダイムに基づいた行動選択に対する脳機能予測モデル

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-20 160

-行動活性化パラダイムに基づいた行動選択に対する脳機能予測モデル

○横山 仁史、高垣 耕企、岡田 剛、高村 真広、市川 奈穂、香川 芙美、森 麻子、神人 蘭、岡 本 泰昌 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 【目的】 行動活性化におけるうつ病の行動モデルでは,正の 強化を受ける機会の減少とともに,嫌悪的状況の受動 的回避の増加が説明されている。実際に,生活の中で 報酬を受ける経験の程度はうつ病診断を満たす以前か ら減少しているのに加え,回避行動の頻度はうつ病で 顕著に増加することが示されている(Takagaki et al., 2014)。回避行動を標的とする場合には特にクラ イエントの価値を明確にし,価値に沿った具体的目標 を設定することが重要である。つまり単に楽しい活動 を選択するのではなく,長期的に達成したい目標に向 けて今の行動を選択する必要があるが,そういった行 動選択に関する神経基盤の検討は十分に行われていな い。行動活性化における行動変容パターンをよく反映 しうるものとして遅延報酬割引課題がある。しかしな がら,従来の遅延報酬割引課題では実験状況下での遅 延時間が実質的な割引に結びつきにくく,ある程度の 試行数が経過すると被験者の選択が一様に長期報酬に 偏りやすい点や,短期的なコストが伴うことなく長期 報酬を得られる点などから,行動活性化における行動 モデルを十分に反映できているとはいいがたい。そこ で本研究では,行動活性化の行動モデルに基づいた行 動選択課題を作成し,課題遂行時の脳活動をfMRIを用 いて撮像したうえで,選択時の脳活動データを用いた 行動予測モデルの作成を試みた。 【方法】 健常大学生17名(平均年齢17.7±2.4歳)を対象に 行動選択課題をfMRI内で実施させた。行動選択課題で は獲得報酬量を最大化させることを“価値”と明示し た上で,被験者に長期大報酬または短期小報酬いずれ かの報酬獲得行動を選択させた。長期大報酬を選んだ 際には獲得まで時間を要し,かつ,努力行動が求めら れ,一定時間遂行できた場合に最も大きい報酬が与え られた。さらに前の選択結果によって次の行動選択率 が変わるように短期小報酬を選択した場合には次試行 における報酬提示量が減額され,長期大報酬を選択し た場合には増額された。行動活性および回避行動の頻 度はBADS(高垣ら, 2013)を用いて測定した。得られ たfMRIデータから246個の脳領域における行動選択時 の時系列ポイントごとの信号値を抽出し,その70%を トレーニングデータ,30%をテストデータとしてL1正 則化によるサポートベクター分類アルゴリズムに よって行動選択結果に対する予測モデルを学習させ, その分類精度を検証した。なお,本研究は広島大学倫 理員会によって承認されたプロトコールに従い実施さ れた。 【結果】 行動選択と行動活性の頻度との関連を検討した結 果,多少の努力を要したとしても長期的な大きい報酬 を選択する者ほど行動活性の程度が高いことが示され た(r=0.64)。また,本研究の対象者は回避行動の頻 度(平均13.35点)が健常者を対象とした先行研究(17 〜18点;山本ら(2013)・高垣ら(2016))と比べても 少なく,行動選択の結果と回避行動の頻度は有意な相 関を示さなかった(r=0.20)。行動選択時の脳活動に よる予測モデルの学習では,246領域中 6 領域(内側 前頭前野,楔前部,右上側頭回,両側中前頭回,視覚 野)が行動選択の予測に有用である可能性が示され, テストデータにおける分類精度は78%であった。 【考察】 本研究で作成した行動選択課題はうつ病の行動モデ ルに基づいて行動活性の程度を説明しうる課題である ことが示された。回避行動に関しては有意な関連を示 さなかったが,対象者の回避行動が極端に少なかった ことから適切な対象者を選定し再度検討する必要があ るといえる。本課題における行動選択の結果は選択時 の脳活動から十分に予測可能であることが示され,デ フォルトモードネットワークを主とした脳領域(内側 前頭前野,楔前部,右上側頭回など)が行動選択時に 活動するほど短期報酬を選択し,自己制御に関する脳 領域(両側中前頭回など)が活動するほど長期報酬を 選択していることが明らかになった。行動活性化の神 経基盤に関する我々のこれまでの検討においても,デ フォルトモードネットワーク(Yokoyama et al., 2018)および,自己制御に関連する脳領域(Shiota et al., 2017)の関連が示されている。さらに報酬課 題を用いた場合であっても,行動活性化は線条体など の報酬回路よりもむしろ報酬や罰を予期する際の制御 性の脳領域の活動を向上させることも明らかになって いる(Mori et al, 2016)。本研究においても報酬選 択時の報酬回路の活動は行動選択の結果を弁別する力 を持たず,むしろ長期報酬の選択に関して課題遂行に 抑制的に働く脳領域が活性化しないことや自己制御機 能を有する脳領域が活性化することが十分な説明力を

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-20 161 -有することが示された。本研究は行動活性化における 行動モデルの生物学的根拠を補完し,価値に沿った行 動を選択するためには単に報酬感受性を増加させるの ではなく,行動プランを立て即時的な報酬反応を制御 しながら長期的に達成したい目標に向けて行動を選択 する必要があることを脳科学から支持する結果を示し たと言える。

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