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県オリジナルアジサイ品種を核とした鉢花経営支援

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Academic year: 2021

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1 産地の概況,背景  景気低迷により,鉢花需要が減退し販売価格が低 迷する一方,燃油・資材価格の上昇により生産コス トが増大し,鉢花経営は年々厳しさを増していた.  そこで,当技術普及部では,県内で生産額の減少 が著しい春季品目の再構築を図るため,2005 年から 「アジサイの新規導入による鉢花経営モデルの確立」 を課題に掲げ,現地支援の取り組みを開始した.併 せて,有利販売を見据え,研究部門においてもアジ サイの新品種育成に着手した.  2010 年には当センター育成品種第 1 号‘万華鏡’ の生産販売の受け皿となる「島根県アジサイ研究会」 (以下,研究会)が会員 6 名で設立され,鉢花では 全国的にもほとんど事例のない「生産管理技術の共 有化」と「共同販売」に取り組み,2005 年にゼロか らスタートしたアジサイの生産額は 2013 年には 4,200 万円を超えるまでに成長した.  技術普及部では,新たなオリジナル品種の導入支 援とともに,生産者の増加に伴う「品質の平準化」 と「組織体制の強化」を図り,さらなる生産拡大と 鉢花経営の安定化に向けた取り組みを展開した. 2 現地活動の取り組み 1)新規オリジナル品種‘銀河’の戦略的投入  ‘万華鏡’に続く,県オリジナル品種‘銀河’を 2016 年に初出荷した.その投入に当たっては,事前 にプロモーション活動としてジャパンフラワーセレ クションなど,国内の新品種コンテストへ出品して, 客観的な商品性の評価を受けた.  ‘銀河’は,ジャパンフラワーセレクションで「日 本フラワー・オブ・ザ・イヤー2016」,新花コンテ ストで「園芸文化協会長賞」,F & G ジャパンセレ クションで「グランプリ」と,いずれも最高賞を受 賞し,史上初の 3 冠を達成した品種となった(第 1 図).  新品種コンテストでのプロモーションが功を奏 し,‘銀河’への問い合わせも多数寄せられ,‘万華鏡’ とともに,‘銀河’のもつオリジナル品種としての 高い商品性そのものが「営業の核」となり,研究会 での全量契約販売の基盤を支えている. 2)管理技術の確立と新規生産者の技術習得  県オリジナル品種の生産管理技術の確立に向けて は,栽培マニュアルを作成し,品種ごとの栽培管理 基準を研究会に示している.併せて,現地巡回指導 により,生育データや管理温度等に基づき適正な生 育量への誘導や開花時期の調整等,研究部門(育種・ 栽培)と普及部門が常に連携して,安定生産に向け て対応に当たっている.  また,‘万華鏡’と‘銀河’は栽培条件の僅かな 差で発色が異なる繊細さを備えた品種で,均一な花 色の発現や生育の調整が難しく,商品化率も決して 高くはない等の課題も抱えている.そこで,研究会 新近畿中国四国農業研究 2 83-85,(2019) 〔普及活動レポート〕

県オリジナルアジサイ品種を核とした鉢花経営支援

石井満彦

島根県農業技術センター技術普及部花き技術普及課 第 1 図 島根県オリジナルアジサイ‘銀河’

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ランディング班」,「トレーサビリティ・検査員班」 の 3 つの専門班を設置し,会員はいずれかの班に属 し,役割と責任を受け持つ体制が 2016 年から始動 した.  専門班の運営は,各班のリーダーが統率している が,技術普及部はリーダー会議に参画して,各リー ダーへの助言や資料作成のサポートなど,研究会の 自主的活動に向けて誘導を図っている.  専門班の設置後は,栽培マニュアルの改訂作業, 各品種の出荷規格や商品性の検討などは研究会が主 体的に担うようになり,2017 年から出荷前の段階で 出荷規格・選別基準を各会員が相互に確認する「検 査員制度」が導入され,研究会の共同販売における 商品の均一化が促されている. 4)次期投入品種の特性把握と現地実証  研究部門(育種)と連携し,次期投入品種(島系 hyd 矮 08-01)の現地実証ほを設置し,各地域での 生育状況と生育特性の把握に努めている.  併せて,主要出荷市場との情報交換会や商談会等 において,次期投入品種の求評を受けながら,商品 コンセプト(ターゲット・サイズ・草姿・出荷期など) についてアジサイプロジェクト等で検討し,2020 年 の初出荷に向けた商品づくりをすすめている. 3 普及活動の成果 1)アジサイの生産拡大  県オリジナル品種の投入以降,アジサイの生産は 全体での取り組みとして全会員によって比較試験区 を設定し,また生育確認用の調査株を設置するなど, 組織的に課題解決を図る体制をとっている.  そして,研究会全会員のほ場を巡回する現地検討 会をほぼ毎月開催し,ステージ毎に生育状況と管理 情報を各会員と県関係機関が共有する場を設けてい る(第 2 図).この現地検討会での情報交換そのも のが「会員相互のレベルアップ」,「新規会員の早期 技術習得」の役割を担っており,研究会での商品性 の平準化を促している. 3)生産販売体制の強化  新たにアジサイ栽培に参入する会員も増え,研究 会の会員も 2015 年には 12 名となったが,品質管理 だけではなく,共同販売に対する取り組み意識向上 も促す必要に迫られた.  そこで,研究会に「技術マニュアル班」,「規格ブ 第 2 図 ステージ毎に開催する現地検討会 142,000 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 H18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 出 荷 額 千 円 出 荷 量 千 鉢 一般品種 銀河 万華鏡 出荷額 第 3 図 島根県アジサイ生産の推移 新近畿中国四国農業研究 第 2 号(2019) 84

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2018 年 1 月,島根県農業技術センターが公設機関と しては初めて「日本フラワービジネス大賞 2017(育 種・生産部門)」を受賞した(第 4 図). 4 今後の課題・展開方向  アジサイ県オリジナル品種‘万華鏡’と‘銀河’ の商品性は年々向上しているものの,規格品率の低 い会員の出荷率の改善が課題であり,生産管理技術 の支援を継続するとともに,今年研究会に加入した 会員 4 名に対する早期技術習得支援もすすめていく 必要がある.  また,2020 年産から市場投入する新品種の生育特 性に応じた管理技術や商品コンセプト等について研 究会と日々協議を重ね,常に魅力ある商品を提供す る活気ある産地・組織となるように支援していく.  さらに,アジサイだけでなく,鉢花経営全体の安 定化に向け,もう一つの基幹品目であるシクラメン の再構築を図るため,技術普及部では 2017 年から 先進農業者と連携して「シクラメン再生塾」を立ち 上げ,40 歳代以下の若手鉢花生産者の育成にも取り 組んでおり,春のアジサイ,冬のシクラメンの両輪 が回るよう,今後も鉢花経営の安定化を推進してい く. 右肩上がりで増加し,2018 年産において出荷量は 10 万鉢を超え,出荷額も 1 億 4,200 万円まで増加し た.その出荷額のうち,県オリジナル品種‘万華鏡’ と‘銀河’が 9 割以上を占め,アジサイ生産の核と なり産地拡大を牽引している(第 3 図).  また,研究会には,本年新たに 4 名の会員が加わ ることになり,今後更なる生産の増加が見込まれて いる. 2)品質の安定化と平準化  オリジナル品種の課題である,発色の安定化と草 姿改善に向けた栽培管理技術の共有と出荷前の選別 強化により,出荷販売先からの商品に対するクレー ム数は年々減少している.特に,2013 年以降に参入 した新規会員 6 名は,いずれも注文予定数量を確保 するなど,研究会設立時の会員とほぼ同等の技術水 準にまでレベルアップした.今年,2018 年産販売後 の主要出荷市場との情報交換会でも研究会の生産販 売の取り組みに対して高い評価を得ることとなっ た. 3)生産者・組織の変化  「他にはない商品性を持った県オリジナル品種」 と「鉢花では全国でもほとんどない生産管理技術の 共有と共同販売体制」は,研究会にとって販売面で 大きなアドバンテージとなっている.  各専門班活動等を通じ,組織としての方向性や ルールづくりを各会員が検討する中で,個別経営で は出来ない販売体制や目的を共有した組織での取り 組みは,個で完結してきた鉢物生産者の意識を変え つつある. 4)産地づくりに対する外部評価  島根県農業技術センターで育成した県オリジナル 品種の市場性と商品性の高さと,その有望な品種を 起爆剤としたゼロからの産地づくりが評価され, 第 4 図 日本フラワービジネス大賞 2017 受賞 85 石井:県オリジナルアジサイ品種を核とした経営支援

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