Ⅲ 視覚障害
第1章 視覚障害
第1節 教育課程の編成 1 教育課程編成の基本的な考え方 ⑴ 視覚障害教育の基本 特別支援学校(視覚障害)は教育基本法 第1条に示されているように「人格の完成」 をめざし、学校教育法第 72 条「障害によ る学習上または生活上の困難を克服し、自 立を図るために必要な知識技能を授けるこ とを目的」に、視覚に障害のある幼児児童 生徒に対し教育を行うほか、幼稚園、小学 校、中学校、高等学校、他の特別支援学校 等の要請に応じて、教育上特別の支援を必 要とする幼児児童生徒の教育に関し必要な 助言又は援助を行っている。 ① 対象となる幼児児童生徒 特別支援学校(視覚障害) 弱視特別支援学級 通級による指導 ※『埼玉県就学事務手続実施要項(平成 21 年9月1日版)』参照 ② 視覚障害の特徴と基本的な考え方 ア 視覚の果たす役割 人間は、光、色、形、大・小、距離と方 向、遠近関係などを含め、外界からの情報 の 80%以上を、視覚によって獲得してい るといわれている。感覚の中でも、視覚の 果たす役割には大きなものがある。 <育ちの中での視覚> 乳幼児は、自分にとって意味のある特定 の人(母親など)を、視覚を通して認知し、 表情や身振りなどで交流しながら、情緒的 に安定した行動の拠点をつくり、新しい世 界を探求する気持ちを育て、自分の世界を 広げていく。 ○新生児 人やものを見るときに、全身の筋肉に力 を入れながら見ている。そこでは全身の筋 肉の緊張と弛緩が繰り返されている。 ○生後3、4ヶ月 「見る」ことに方向性がついてくる。心 の動く方向に眼が動く。 ○生後5、6ヶ月 「見て移動する」ことが行われる。「見る」 ことが、運動の方向性を規定していく。例 えば、伝い歩きの子どもは、まず動く方向 をみて、それから手を出し、足が動き出す。 生後6ヶ月ごろになると、子どもは目の前 の、手が届く範囲のものとしっかり関わり がもてるようになる。例えば、積み木を見 て「おや何だろう」と手を出し、つかむこ とができてくる。そして、持った積み木を 見たりなめたりしながら、大きさや材質な どを確認し、離す。この「見るー手をのば すーつかむー確認するー離す」という行為 をまとめていく上で、「見る」ということ が重要な役割を果たす。また、模倣など、 視覚経験の拡大は、基本的な生活習慣の獲 得をうながし、言語・認識活動の発達を促 進するうえで大きな役割を果たしている。 さらに、ものへの注視、追視など視覚的集 中力は、運動器官の発達にともなって、自 分のまわりの空間を定位し、移動行動を起 こす原動力をつくり出している。 ○幼児期 幼児期は遊びや生活経験の中で、歩行をⅢ 障害種別における教育課程の編成
○両眼の視力がおおむね0. 3未満の人、ま たはそれ以上の人でも、医師の診断により 特別支援学校(視覚障害)での教育をうけ ることが適切と判断された人。 ○視力以外の視機能障害が高度な人のうち、 拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図 形が見えないか、非常に見えにくい人。 ○拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図 形が見えにくい人。 ○拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図 形が見えにくい人で、通常の学級での学 習に参加でき、一部特別な指導を必要と する人。はじめとする粗大運動、目と手の協応、指 先の巧緻性、コミュニケーション能力、こ とば・認識などを発達させていく。また、 視力が著しく発達する時期でもある。その ためこの時期に視覚に障害があると、視力 そのものが発達しないばかりか、直接触れ たり、経験したこと以外のものを理解する のが難しくなる。また、人の表情が読み取 りにくいことから、コミュニケーションに 影響を及ぼす場合がある。幼児自身が自分 の見え方を自覚できず、また、学童期とは 異なり、系統立てて教わるものではなく、 自ら見て学ぶ時期でもあるため、視覚情報 の有無が発達に及ぼす影響は大きいといえ る。さらに見えにくいことで一つ一つを確 かめる行動が繰り返され、落ち着きがない と思われる場合や、逆に視覚情報が入らな いので一つの行動をいつまでも続けてしま い、興味・関心が広がらないと思われる場 合がある。遠くのものを指さして示すこと ができず、ことばの獲得が不十分な場合が ある。そのため他の障害があるのではと疑 われる可能性がある。 ○学童期 小学生になると机に座り、常に一定の距 離から黒板を見ることになる。自分の見え やすい距離であれば問題はないが、座る場 所によっては、黒板が光って見えにくかっ たり、板書の字が小さかったり、画数が多 くなると読みにくくなる。板書の内容がわ からずに授業が終わってしまう可能性があ る。一斉授業では、細かい部分や気になっ た部分を見たくてもじっくり見ることがで きず、学習そのものの理解が難しいばかり か、学習意欲がわかず、学習が遅れる場合 がある。低学年のうちに必要な援助は何か、 どうすれば自分が勉強しやすくなるのかを 身につけていくことが大事である。できれ ば入学前に、補助具や拡大教材や読みやす いポイント数等がわかると安心して勉強に 臨める。 運動では、特にボール運動のように空中 を移動してくるものや、跳び箱のように一 瞬で動きが終わってしまい、飛んでいる時 の姿勢に触れるのが難しいものは、苦手意 識を持ちやすくなる。理科の実験ではグ ループ学習になると、準備から片付けまで の一連の作業を分担され自分の作業しかわ からない場合がある。危険だからと顔を近 づけられず、よく見えずに終わってしまう ことがある。できれば全工程を一人で行え るとよい。 中学年以上になり、抽象的な思考を必要 とする段階になると、見て、触れて実感で きないものを、ことばだけの理解ではな く、概念をどのように形成するかが大切と なる。そのためには、実際にたくさんのも のに触れ、経験する活動を行い、ことばと 具体物の一致、基本的な概念と具体的なも のの理解を深めておく必要がある。 さらに高学年では自分の障害についての 理解が問題となる。本人だけでなく、保護 者や兄弟姉妹を含め、家族、学校の理解と 協力が望まれる。周囲の人が本人の見え方 をシミュレーションし、多少なりとも大変 さを共有できれば、メンタルな面での支援 が可能となる。自我を形成し自己肯定をし ていくには家族を含めた人間関係、人と人 の信頼関係が何よりも必要である。 イ 視覚からくる基本的な制限 ア 3つの制限 視覚からくる制限として、ローウェン フェルド(Lowenfeld.B)は、次の3つを 指摘している。 ① 知識の獲得や経験を広げていくうえで 制限がある。視覚から入ってくる情報は、 わたしたちが得る全情報の80%を占め るともいわれている。例えば、対象物が あまりにも大きすぎたり小さすぎたりす るもの。遠くにあって触れないもの。壊 れやすいもの。変化しやすいもの。触れ ると危険なもの。色の認知。 ② 体を動かすこと、動きまわること、歩 くことに制限をうける。例えば、歩行す る力、自分のまわりの空間的時間的環境
Ⅲ 視覚障害 を把握し、認識する力が要求される。 ③ 人や物や環境とのかかわりの中で、自 分自身をコントロールしたり、環境を変 えていく、「関係把握」のうえで制限を 受けることがある。例えば、視覚障害の ために、視覚的な環境からの分離によっ て、情報獲得の機会を失うと同時に、顔 の表情や身振り、人間関係など、社会的 関係や態度に影響を与える。人に対し て、依存的になり、消極的な行動になる といった心理的葛藤を生むという二重の 問題を抱えることになる。 <発達上のつまずきを取り除く> これらの制限は、程度の差こそあれ、全 盲児も弱視児にもあてはまる。これらの障 害からくる制限が、それぞれの発達段階に おいて、獲得しなければならない手だてを 欠いたまま、障害は重度化、固定化されて いる現実がある。特に、知的障害や肢体不 自由などの障害が重複した子どもたちにつ いては、問題はさらに複雑になる。子育て の面でも教育活動をすすめるうえでも、視 覚障害が発達に及ぼす問題を的確に把握 し、発達上のつまずきを取り除いていく取 り組みが重要になってくるのである。 イ 視覚障害が発達に及ぼす影響 ○生活リズムの問題 視覚障害がある乳児の場合、光や身体活 動その他の要因によって、睡眠と覚醒のリ ズムを整えることが難しいと言われてい る。睡眠は、外部からの過剰な刺激や身体 の緊張から子どもを解放し、覚醒時には快 適な条件の中で、外部刺激に慣れていき、 驚きや怖さから開放される。この睡眠と覚 醒のリズムを整えることで、緊張と弛緩を 繰り返し、子ども自身が内部刺激を感受し て自己リズムを獲得していく。視覚障害の 子どもは、視覚的な刺激が入りにくく、「見 る」という行為が弱いので、新生児の時か ら緊張する場面が乏しく、筋肉が「低緊張」 になりやすいと言われている。 ○感覚のアンバランス 視覚障害児には、例えば皮膚感覚でも体 の中に敏感な部分と鈍感な部分があるな ど、感覚のアンバランスな子どもが多いよ うである。また、聴覚、触覚、味覚、臭覚 などの感覚的なアンバランスがあると、な かなか自分の身体のイメージがつきにくい と言われている。また、外部からの刺激に 対して、見て確かめたり、さまざま感覚を 統合して確かめることができずに、なかな か「慣れる」ということができにくい状態 にある。 ○外の世界を受け止める力が弱く、恐怖感 がある 視覚で世界を連続的につなげて見ること ができない視覚障害児の場合、自分のまわ りの世界が、「点」のようにバラバラになっ てとらえられていることがある。ちょっと 姿勢を変えたりすると、今までとはまった く違った世界がとびこんでくるので、驚い たり、怖くなってしまう。こういうところ からも環境や人に慣れにくい状況や恐怖感 がでてきてしまう。そして、他の人からの 働きかけを拒否したり、じっとしているほ うが安心なので、あまり動きたくなくなっ てしまうのである。 ○動きの方向性を獲得しにくい 視覚障害児の場合、身体を前後に揺すっ たり、目の前で手を細かく動かしたり、眼 押えをしたり、さまざまな自己刺激行動、 常同行動がよく見られる。また、同じ場所 でグルグル回ったりする子どももいる。視 覚以外の感覚では、音にしても一定の配慮 をしなければ、「動きの方向性」が充分に 育たない。その結果、自分の世界に閉じこ もってしまうことがよくある。 ○ものに関わるリーチングの弱さ 視覚障害児は、ものに手をのばすリーチ ングの弱さが指摘されている。「見て手を のばす」という活動に代わる活動が保障さ れないで、ややもすると、手や気持ちが内 向きになっており、「視覚優位」「聴覚優位」 の状態があり、触ることが嫌いな子どもが いる。ものを「つかむ」ことの次に、それ
を「確かめる」活動の弱さも指摘されてい る。 ○人間関係の輪を広げ、ことば・認識の力 を豊かに 視覚障害児は、「快の情動」の発達が遅 れていると言われる。また、人間関係や物 との関係といった「関係」の弱さが指摘さ れている。また、喃語の段階から、なかな かことばの獲得に進めない子どもたちがい る。ことばの獲得の中核となる象徴機能の 形成や模倣活動も困難を伴う。子どもたち のなかに「快い気持ち」を育て、「子どもー 大人―もの(事象)」といった三項関係を 豊かにしていく課題がある。 ウ 制約を取り除くものとして 見えにくさからくる学習上の制約を取り 除くには、その見え方に応じた環境設定を 工夫する必要がある。環境設定をするもの の一つとして、さまざまな教材・教具およ び機器類が開発されている。ここでは、主 に弱視児が効率よく学習できる補助具とし て使用されているものを紹介する。 学習等の補助具 ※機器名等、使用目的、 使用方法、その他の順で記述。 【拡大読書器】 【書見台】 【レンズ】 <手持ち式レンズの例> ・教科書、本、その他の見たいものを拡大 して見る。 ・モニターの下にある台の上に置き、自分 の見やすい大きさに拡大できる。 ・白黒反転、地の字などの色を自分の見や すいものに変えることができる。 ・拡大したまま字を書くこともできる。 ・教科書や本などを置いて読む。または ノートなどに書く際に使用する。 ・台に角度がついているため、画面に顔を 近づけても姿勢が丸くならずにすむ。ま た、机に伏す形にならないため、明かり を遮ることがない。場合によっては台の 上部にライトを取り付けが可能で、手元 を明るくすることができる。 ・教科書や本、新聞、その他手元で見たい ・タイプは様々であり、モニターもテレビ だけでなく、パソコンに接続できるもの がある。また、そのままパソコンに画像 を取る込めるものがある。 ・カメラ式になっているもので、手元と黒 板と両方をみることができるタイプがあ る。 ・日常生活用品として申請できるが、次に 購入するまでに7年は新規にできない。 一般的なものは 198,000 円である。
Ⅲ 視覚障害 <置き型式レンズの例> 【単眼鏡】 ③ 教育の特色 特別支援学校(視覚障害)に在籍する幼 児児童生徒は、視覚による学習ができない か又は視覚による学習に困難を伴う幼児児 童生徒である。近年、視覚障害に知的障害 等を伴う重複の幼児児童生徒も増加してい る。 ア 盲教育・弱視教育 視覚障害教育の方法は、視覚の状態に よって決定され、視覚に頼る教育が可能か どうかより「盲教育」(見えない)と「弱 視教育」(見えにくい)に分けることがで きる。この両者は、日常の学習場面におい ては混在している場合が多い。 盲教育と弱視教育の指導法上の特殊性 は、主として次の点にある。 盲教育の学習は墨字に代る媒体として点 字を用いる。点字の教科書を用い、主とし て触覚や聴覚などの視覚以外の感覚を活用 して、視覚にたよらない学習をおこなう。 弱視教育は、「文字の拡大」や弱視レン ズなどの光学器具の活用により、拡大教科 書や普通文字の教科書を用い、主として視 覚を活用して学習を行う。また、必要に応 じ、聴覚などの視覚以外の感覚も活用する。 感覚障害というとらえ方そして、これまで の「弱視」というくくりに入らない「視力 の弱い子ども」というように、視覚に何ら かの問題があるために学習上の課題を抱え ている子どもというとらえ方が必要になっ ている。 イ 重複障害教育 視覚障害のある重複障害児の併せ有する 障害は聴覚障害、病弱、肢体不自由、知的 障害など様々である。重複障害教育は個々 の心身の状況を出発点として、一人一人に 合った教育を工夫し、実践することが大切 である。教育内容は自立活動の内容を主と して実態に応じ各教科等の内容を取り入れ て行う。視覚が発達に及ぼす影響は大きく、 外界へむけた自発的な行動をおこす意欲も ・置き型式もある。こちらは紙面に置いて 自分が動いて焦点を合わせる。ドーム状 や棒状など様々な形がある。 ・携帯式は多くのものがレンズが2枚に なっており、重ねることで倍率が変わる。 ・遠くのものをみる際に使用する。 双眼鏡や望遠鏡と同じような仕組みであ る。 ・レンズの倍率は様々であるが、4倍、6 倍、8倍などがある。 ・教室内では黒板の文字を見る等で使用する。 ・最近は遠近両用のタイプがある。 ものをすぐに見るときに使用する。 ・様々なタイプのものがある。 ・手持ち式は、レンズを持って見る。倍率 やレンズの形は様々である。 レンズそのものを目に着けるようにし、 画面を移動させて焦点を合わせる。レン ズの度数で大体の距離がわかる。ライト 付きのものがあるが、眼疾によっては眩 しさがある。ライトの色も白色や電球色 等様々である。
視覚による部分が大きい。そのため、視覚 に障害のある重複障害児にとっては保有す る感覚を活用して外界に向けた主体的・能 動的な活動ができ、見通しを持った行動が できるような条件づくりや、援助を考える ことが必要である。また、様々な角度から 幼児児童生徒の発達支援をおこなえるよう 医師や専門機関との連携が不可欠である。 ウ 早期教育及び超早期教育 これまで、「早期教育」の必要性から幼 稚部が設置され3・4・5歳児が認可となっ た。人間関係を基礎基本におき、生活や遊 びを通して個々の全体的な発達を促す教育 を行っている。幼稚園教育要領および特別 支援学校幼稚部教育要領に則り、集団活動 や個々に応じた活動など環境を設定しなが ら取り組んでいる。そして「早期発見、早 期教育」の重要性が実践の中で確認された。 さらに現在では、超早期教育と言われ、 生後まもなくからの教育の重要性がいわれ るようになっている。その理由としては、 「視力は生後1.5ヶ月頃から急速に発達し ていくが、その発達は生まれてから様々な ものをみることで起こり、生後3ヶ月から 1歳6ヶ月ころまでにピークがあり、その 後徐々に発達は少なくなり8歳頃には停止 し視機能は完成するといわれている。」と 解明され、眼科医からも早期からのケアが 求められているからである。 見ることは、笑顔を向け合う人との関係 づくり、何だろうという興味・関心、やっ てみたいという意欲、行きたいという移動・ 運動の力、集中してものの変化を楽しむな どさまざまな発達を促すものである。この ように適切な視覚への配慮は、視力の発達 だけにとどまらず、子どもの全体発達その ものに影響を及ぼしている。そのことから も、乳幼児支援と子育てにかかわる保護者 支援とが必要であり、教育相談は幼稚部入 学前の早期から、特に超早期の0歳児から の相談が重要になっている。 エ 教育相談 特別支援学校小学部・中学部学習指導要 領第1章第2節第4⒃で「小学校又は中学 校等の要請により、障害のある児童・生徒 又は当該児童もしくは生徒の教育を担当す る教師等に対して必要な助言又は援助を 行ったり、地域の実態や家庭の要請等によ り保護者に対して教育相談を行ったりする など、各学校の教師の専門性や施設・設備 を生かした地域における特別支援教育セン ターとしての役割を果たすように努めるこ と。その際、学校として組織的に取り組む ことができるよう校内体制を整備するとと もに、他の特別支援学校や小学校又は中学 校等との連携を図ること。」とあり、幼稚 部および高等部でも同様の内容が示されて いる。 これまでも、校内の教育実践を基本に、 校内の相談支援部を中心に視覚障害のセン ター的な役割を担ってきた。具体的には以 下のようなものがある。 ア 視覚障害から生じる日常生活や学習上 の困難に対して、その困難の改善や克服 を幼児児童生徒に直接的に支援する。 イ 視覚障害の特性や日常生活や学習上の 困難さについて、保護者に理解してもら うと同時に、改善等の相談およびアドバ イスを行う支援をする。 ウ 家族関係、特に安定した親子関係が築 けるような心理的な支援を行う。 エ 地域で生活および学習する幼児児童生 徒および視覚障害者に応じて必要な情報 を提供し、地域での視覚障害児者の理解 および啓発に関する支援を行う。 オ 保育園、幼稚園、通園施設、学級およ び、学校で過ごす視覚障害幼児児童生徒 にかかわる教職員に対して、専門的なア ドバイスや相談を行うことで、間接的な 支援を行う。 カ サマースクールや地域での相談を定期 的に実施し、点在する視覚障害児者のピ アカウンセリングや、保護者同士の情報 交換を支援する。
Ⅲ 視覚障害 キ 視覚障害について関係機関や一般への 理解啓発を行う。 ク 地域で生活する視覚障害児者に対し、 関係機関等とのコーディネートをする。 特別支援学校(視覚障害)の教育相談は、 幼稚部から専攻科という年齢差だけでな く、発達面、学習面、生活面、職業・進路 といった相談の内容についても多種多様で ある。幼稚部も3歳からではなく、0歳児 からの相談であり、障害への対応だけでな く子育て支援も兼ねている。さらに特別支 援学校(視覚障害)は県内に一つしかない ために、様々な理由で特別支援学校(視覚 障害)に来ることが困難な場合があり、要 請に応じて地域での相談を行っている。近 年、地域でのニーズが増えていると同時に、 より専門的な内容が求められている。その 意味では校内での教育実践を充実させなが ら、地域への相談や関係機関との連携等、 相談の果たす役割は大きく、視覚障害教育 のセンター的な機能をさらに充実させてい く必要がある。 オ 進路指導・職業教育 進路指導においては、多様な障害の状態 にあった、個に応じた指導を進めることが 必要であることから、多様な進路先が必要 になる。視覚障害に対する理解啓発を求め ることと同時に進路指導を進めなければな らない状況である。 また今日キャリア教育ということが叫ば れ、激しい社会の変化に対応していく能力、 主体的に自己の進路を選択・決定できる能 力、社会人・職業人として自立していくこ とができるようにする教育が大切である。 特別支援学校(視覚障害)の高等部普通 科で取り組んできた産業現場等における実 習は、自分で実際に職場での仕事を体験す ることによって、自分をみつめ自分で進路 先を選択・決定していくことに大きく貢献 している。 特別支援学校(視覚障害)の高等部普通 科の進路先は大きく5つの方向に分かれ る。作業所等に入所する福祉的就労、そし て企業就労、職業訓練施設への入所、視覚 障害者対象のコースが設置されている大学 進学、理療関係への進学である。 特別支援学校(視覚障害)では生徒が進 路を決定していくにあたり、生徒本人の希 望を最も重視しているが、本人の適性や保 護者の希望なども考えながら指導してい る。 高等部普通科を卒業して、そのまま企業 に就職する生徒は少ないが、将来、社会人・ 職業人として自立していくことを視野に入 れた指導も重視している。 視覚障害者が自立する道として、理療の 道は大きな柱になっている。特別支援学校 (視覚障害)には高等部普通科卒業後の職 業教育の課程として専攻科理療科・保健理 療科が設置されている。埼玉県には他に理 療を学ぶところとして、熊谷理療技術高等 特別支援学校(視覚障害)と国立障害者リ ハビリテーションセンターがある。国家資 格を取得して、専門性を身につけた職業に つくという点では、視覚障害者にとって中 心的な職業になっている。 もう少し学力をつければ、専攻科への道 が開ける生徒などもおり、一層の社会参加 の促進と職域の拡大のために、生徒の実態 の多様化に対応する学科については今後検 討すべき課題になっている。 今後、キャリア教育という観点からの生 徒が主体的に進路を選択・決定できる力を つけさせることや社会人・職業人として自 立できるようにする進路指導、職業教育が 重要である。 視覚障害者の職業教育としては、あん摩・ マッサージ・指圧師、はり師、きゆう師(以 下、「あはき師」と略す。)の養成が歴史と 実績があり、特別支援学校(視覚障害)に おいても高校卒業者を対象に、高等部専攻 科において行っている。高等部専攻科には、 「理療科」(あん摩マッサージ指圧師・はり 師・きゆう師養成課程)と「保健理療科」(あ
ん摩マッサージ指圧師養成課程)の2学科 があり、ともに3年間の修業年限で養成を 行っている。課程修了時には、あん摩マッ サージ指圧師・はり師・きゆう師国家試験 の受験資格が得られる。また、免許取得後 は、特別養護老人ホーム等の介護保険施設 や整形外科医院等の医療機関、治療院など への就職、治療院開業、進学などの進路が 可能となる。 近年、医学・医療の進歩はめざましく、 また、あはき業界への晴眼業者の進出が著 しい中で、視覚障害を有していても専門医 療職として、患者の信頼と期待に応えてあ はき業に従事し続けるためには、卒後・生 涯研修が不可欠となっている。このような 状況の中で、特別支援学校(視覚障害)の 教員と卒業生の有志で、あはきに関する研 修会を定期的に行っている。この取り組み は、今後、一層の体制整備と充実が求めら れている。 ⑵ 教育課程編成の原則 教育課程編成は教育基本法及び学校教育 法その他の法令並びに学習指導要領の示 すところによる。特別支援学校(視覚障 害)では近年の児童生徒数の減少、障害の 重複化、多様化という現状を踏まえ、幼児 児童生徒の障害の状態及び発達の段階や特 性等、並びに地域や学校の実態を考慮した 教育課程の編成ができるよう学校教育法施 行規則及び学習指導要領に示された教育課 程編成の取扱いに関する各種の規定につい て、全教師が共通理解を図る必要がある。 ① 視覚障害からくる制限を考慮する 視覚障害のある幼児児童生徒の指導にあ たって、視覚情報が人間の発達においてと ても重要な要素であることを理解した上 で、それぞれの見え方の状況や生活上学習 上への影響と課題をつかみ、取り巻く環境 全体にはたらきかけていくことが求められ る。 ② 地域や学校の実態を考慮する 特別支援学校(視覚障害)における教育 活動を効果的に展開するためには、学校の おかれた地域社会の実情や諸条件及び学校 そのものの実態を的確に把握し、教育計画 等に反映されなければならない。特別支援 学校(視覚障害)には次のような特徴があ る。 ア 幼児児童生徒が県下全域から集まる。 イ 幼稚部から専攻科まで在籍する幼児児 童生徒の年齢は3歳から 50 歳代まで非 常に幅が広い。 ウ 寄宿舎で生活する児童生徒が多い。体 験入舎や教育的入舎などを通して自立等 に向けた寄宿舎の役割は非常に大きい。 エ 眼科相談、義眼相談、ロービジョン相 談が定期的に実施されている。 オ 視覚障害教育のセンター的機能を担っ ている。 教育課程の編成に際しては、このように 地域や学校のもつ状況や特徴を把握し、こ れらがもたらす課題を整理して、効果的に 教育活動を展開するために十分考慮する必 要がある。 ⑶ 障害の状態に応じた教育課程の考え方 特別支援学校(視覚障害)では幼児児童 生徒の実態が多様で個人差が大きいことを 考慮して、必要に応じて教育課程編成の取 扱いに基づき、適切な教育課程を編成する ことができる。次の4つの基本的な教育課 程の類型を参考にしながら、幼児児童生徒 一人一人の障害の状態に応じた適切な教育 課程を編成することが大切である。 ① 幼稚園・小学校・中学校・高等学校に 準ずる教育課程 当該学年の各教科の目標及び内容に準 ずる学習をする。 ② 下学年又は下学部に準ずる教育課程 当該学年の各教科の目標及び内容の全 部又は一部を下学年又は下学部の各教科 の目標及び内容の全部又は一部に替えて 学習する。
Ⅲ 視覚障害 ③ 特別支援学校(知的障害)の教育課程 を取り入れた教育課程 各教科の目標及び内容の全部又は一部 を、当該教科に相当する特別支援学校(知 的障害)の各教科の目標及び内容の全部 又は一部に替えて学習する。 ④ 自立活動を主とする教育課程 各教科、道徳、外国語活動若しくは特 別活動の目標及び内容に関する事項の一 部又は各教科、外国語活動若しくは総合 的な学習の時間に替えて、自立活動を主 として指導を行うことができるものとす る。 小学部5年生対象に、上記の教育課程の 類型①~④に基づいた教育課程表を下記に 例示する。なお、「日常生活学習」「生活単 元学習」は、教科領域を合わせた指導形態 であり、「国語的活動」「算数的活動」等々 は、自立活動の内容である。
教育課程を特別支援学校(視覚障害)と してどのように捉え考えているのか、以下 に例を挙げながら実際の集団づくりについ ても説明する。 特別支援学校(視覚障害)小学部では、 学校教育目標に基づき、学部教育目標が設 定されている。そして設定された目標に対 し、小学部がめざしている<太陽のように、 明るくのびのび元気な子>を教え育てるた めの具体的方策が設けられている。 また、学部教育目標を目指し教育実践を 進めるため、特別支援学校(視覚障害)の 特性(少人数化、重複児の増加、見え方の 多様性等)を考慮した集団編成が行われて いる。 教科ごとに学習グループが編制される場 合がある。その特徴的なこととして、音楽・ 体育は小低小高の2つのグループで編制、 児童集会はすべての児童が参加できるよう に設定されている。学習活動により基礎グ ループをこえた一定の集団の方が子どもど うしの関わりがもて、学び合いが保障でき るため、このような集団づくりがされてい る。また、見え方の違いや、個別の課題、 障害の状況等により、学習グループを編制 し、指導の継続と授業の保障が行われてい る。 2 教育課程編成の実際 ⑴ 教育課程の編成 教育課程は、学校教育目標の実現を図る ための教育計画である。特に特別支援学 校(視覚障害)における教育課程は、幼稚 園・小学校・中学校・高等学校に準ずるこ とが原則であるが、近年重複障害学級対象 者として認定を受けている幼児児童生徒も 多く在籍しており、障害の状態に応じて、 弾力的な編成が必要である。さらに、視覚 障害児の場合は、全盲児か弱視児かによっ て、読み書きの状態に対する配慮が必要と なる。特に、幼児児童の場合は、十分な情 報伝達・情報受容の力が備わってはいない ことを考慮し、学習活動の中で必要な力を 高めることが求められる。 特別支援学校(視覚障害)の教育課程編 成は、前記「Ⅱ 教育課程の編成」による 手順をもとに、特に下記の点に留意する。 ア 学校教育目標や幼児児童生徒につけた い力をもとに、準ずる教育課程を基本に、 特別支援学校(視覚障害)としての基本 的な枠組みを作成する。 ・学習指導要領に示されている各教科・ 科目、道徳、特別活動、総合的な学習 の時間、外国語活動及び自立活動(以 小学部の集団編制 「編制の視点・留意点」 ・児童の実態を把握してつくること ・つけたい力を考慮すること ・発達年齢に応じた日課・教育内容・教 員配置を考慮すること 「基礎集団のとらえ方」 ・自分の力を発揮できる場 ・気持ちを出せる場 ・友だちとぶつかり合ったり、共感し合 える場 ・学習意欲を高める場
Ⅲ 視覚障害 下「各教科等」と呼ぶ。)の目標やね らいの実現に関して十分に配慮する。 イ 個別の教育支援プランや個別の観察に 基づき、一人一人の状況、特に読み書き の状態を把握する。 ・障害の状態に応じた指導内容の精選を 図る。 ・幼児児童生徒の実態に応じた教材の精 選を図る。 ・必要に応じて、下学年・下学部の指導 内容を設定する。 ウ 重複障害学級対象幼児児童生徒と認定 を受けている場合、その障害の状態を適 切に捉え、必要な教育課程を編成する。 ・知的障害を伴う場合、特別支援学校(知 的障害)の目標や内容をどのように取 り入れるかを判断する。 ・知的障害を伴わず、聴覚障害や肢体不 自由を伴う場合、特に読み書きの状況 や行動の状況を適切に捉え、準じた教 育課程をもとに実態に応じた指導精選 を図る。 ・他障害種の教育課程編成の手順等を参 考に、視覚障害に伴う生活上及び学習 上の困難の改善を図ることを念頭に置 いた編成を行う。 エ 年間指導計画を作成する。 ・授業時数や指導内容等をもとに、年間 指導計画を作成し、それをもとに個別 の指導計画に反映させ、個別の目標を 明確にする。 ・特に、自立活動に関する指導計画と他 の教科等の取組との関係を明確にし、 相互に関連する指導を実現させる。 ⑵ 各学部の教育課程編成の基本 ア 幼稚部 幼稚部の教育課程は、健康、人間関係、 環境、言葉、表現の5領域と、自立活動で 編成される。特に、5領域と自立活動は、 相互の関連を明確にすることが必要であ る。 幼児に関しては、発達段階をもとに、基 本的な生活習慣を身につけることと、障害 に対する認識が重要である。その上で、持 つことや触れることにより事物や感覚の認 識を養うとともに、他者との関係(精神的 関係や距離的関係も含む)の把握を高める ことが必要となる。 設定保育や自立活動、給食等の活動の時 間のメリハリをつけることともに、家庭と 一体となった指導を実践するために、家庭 との連携を図ることが必要である。 イ 小学部 小学部の教育課程は、各教科、道徳、特 別活動、総合的な活動の時間、外国語活動、 及び自立活動で編成される。特に、義務教 育として基本的な生活習慣を確立し、学習 することや人と関わることの楽しさや興 味・関心を高めることが必要である。 小学部では、教科に関する学習に伴って、 持っている視覚機能の維持・向上をはかる とともに、障害の状況に応じた読み書きに 関する力や歩行に関する力を高めることが 重要である。その意味で、自立活動の指導 計画と連携が必要となる。教科指導に関し ては、より日常生活との関連を図るととも に、道徳や特別活動、総合的な学習の時間 に関しては、そのねらいを明確にして、集 団と個の関係を確立させることが必要であ る。 また、障害が重複する場合、教科内容の 精選や特別支援学校(知的障害)の目標や 内容の取り入れ等に十分な意図と配慮をも たねばならない。さらに、教科等を合わせ て指導する場合、教育課程上の位置づけを 明確にする必要がある。例えば、「生活単 元学習」として買い物学習を行う場合、そ の内容に応じて「社会」「算数」「家庭」あ るいは「生活」等、関係する教科等におけ る単元として、学習項目や時間数を位置づ ける。 いずれにしろ、学習内容の確実な定着を 図るため、具体的な教材の活用やスパイラ ルな取組を心がけなければならない。
ウ 中学部 中学部の教育課程は、各教科、道徳、特 別活動、総合的な活動の時間、及び自立活 動で編成される。特に、思春期で自我が確 立される時期でもあり、障害に対する正し い認識を持つともに、自ら困難を改善する 意欲と知識を持てることが必要である。 中学部では、自ら考え行動し、自らの生 活の改善を図る意欲を高めることが必要で ある。そのためにも、各教科等における教 材の作成が重要である。日常的との関連を 明確にするとともに、自ら活用しようとす る意識を高めることが求められる。 さらに、点字を使用する生徒は、そのス キルを高め、積極的に活用を図り、点字を 使用しない生徒は、補助具等の活用等を図 り、適切な情報収集や判断を可能にしなけ ればならない。その上で、空間や場所の認 知をより高め、他者への表現手段の確立を 図ることが必要である。 中学部では、小学部の教育課程を十分に 理解した上で、生徒の発達段階を考慮した 教育課程の編成が必要である。また、小学 校からの就学者もいることを踏まえ、小学 校での学習状況について配慮することが求 められる。 エ 高等部普通科 高等部普通科の教育課程は、各教科・科 目、特別活動、総合的な活動の時間、及び自 立活動で編成され、教育活動全体において 道徳活動の充実を図ることとなっている。 高等部普通科の場合は、通常の教科学習 のみならず、移行支援を視野に職業体験を 活用しながら、生徒一人一人の可能性の追 求が不可欠である。自己実現が図れるよう な基礎学力の定着と体力の向上、社会性や 協調性を育む取組を行いながら、自己や障 害の状況に対して正しい認識と、主体的に 困難の改善が図れるような教育の充実が必 要である。 高等部普通科では、小学部及び中学部の 教育課程を十分に理解した上で、生徒の発 達段階を考慮した教育課程の編成が必要で ある。また、中学校からの入学者もいるこ とを踏まえ、中学校での学習状況について 配慮することが求められる。 オ 高等部専攻科 高等部専攻科の教育課程は、国家資格取 得のために「あんまマッサージ指圧師、は り師及びきゆう師に係る学校養成施設認定 規則」(文部科学省・厚生労働省共同省令) に基づくカリキュラム編成による各教科・ 科目で構成される。 健康の保持・増進、疾病の予防・治療等 に積極的に貢献できる、医療に関する知識 や技術の習得はもちろん、将来の職業生活 を見据えて豊かな人間性や教養を身につけ ることが求められる。さらに、卒業後は医 療現場での活躍を踏まえて、十分な臨床実 習が必要であり、そのために実習受入先の 開拓が重要である。 高等部専攻科では、高等学校や高等部の 卒業生のみならず、さまざまな社会経験を 経て入学する生徒が多数在籍している。そ のため、生徒一人一人の障害の状況や経過、 精神的なケアなどに関する配慮が特に必要 となる。 カ 寄宿舎との連携 寄宿舎教育は、教育課程に位置づけられ ているものではない。しかし、児童生徒の 居住地が広範囲に渡っており、家庭生活に 代わるものとして寄宿舎が生活上大きな役 割を果たす。 寄宿舎での生活の中で学ぶ基本的な生活 習慣や人間関係、特に異年齢集団による関 わり等は極めて重要なものがある。さらに、 各学部の教育課程の実施に際して、寄宿舎 と連携した取組は不可欠である。教科等の 学習の内容に関して寄宿舎が理解し、寄宿 舎での生活の中で学習内容を生かすことに よって、効果がさらに大きなものになる。 逆に、寄宿舎における生活に関する指導 の内容を各学部の教育課程上の自立活動に
Ⅲ 視覚障害 反映させることで、一体的な教育活動とな る。寄宿舎生に関しては、学校と家庭、寄 宿舎の三者が連携を深めることが必要であ る。 ⑶ 教育課程編成上の配慮事項 特別支援学校(視覚障害)では、幼児児 童生徒の障害の状態が多様化している。そ のため、視覚障害の種類、程度、発生時期、 視野、色覚異常、眼疾の進行度など視覚障 害に関する過去、現在、未来の掌握によっ て適正な視覚管理や教育環境の整備の基礎 資料を得ることが不可欠になっている。そ れらの把握によって、視覚障害の状態に即 した指導計画への反映を図らなければなら ない。また、障害の種類や特性等、視覚障 害の要因や眼疾患について医学面から正し く理解し、視覚障害や伴っている障害の状 態、その他障害の背景をなす諸要因を的確 に把握する必要がある。 したがって、幼児児童生徒の視力、眼疾、 障害の発生時期、障害の種類、特性など、 視覚障害や伴っている障害の状態を的確に 把握し、学年・学級の実態に応じた教育課 程を編成する必要がある。 ア 教育課程の編成にあたっては、指導内 容の系統性・発展性を踏まえ、生涯学習 の観点に立ち、生きる力の育成を目指し、 幼稚部、小学部、中学部、高等部教育の 一貫性に配慮するとともに、学部間の連 携を緊密にする必要がある。 イ 幼児児童生徒の情報受容の状況(聴覚、 触覚及び保有する視覚など)を適切に把 握し、的確な概念の形成を図ることを通 して、言葉を正しく理解し活用できるよ うにすること。特に、視覚的なイメージ を伴わないと理解が困難な事柄について も、言葉の意味や用法の指導等によって、 理解を促すようにする。 ウ 児童生徒の視覚障害の状態等に応じ て、点字または拡大文字による読み書き を系統的に指導し、習熟させるとともに、 点字を常用して学習する児童生徒に対し ても、漢字や漢語の理解を促すため、発 達の段階等に応じて適切な指導が行われ るようにする。 エ 触覚教材や拡大教材、音声教材等の活 用を図るとともに、視覚補助具やコン ピュータ等の情報機器などの活用を通し て、情報の収集や処理ができるようにす るなど、児童生徒の視覚障害の状態等を 考慮した指導方法を工夫する。 オ 幼児児童生徒の空間や時間の概念を育 成し、現在の状況や活動の過程等を的確 に把握できるよう配慮し、見通しをもっ て意欲的な学習活動を展開できるように する。 カ 幼児児童生徒の視覚障害の状態等に応 じ、指導内容を適切に精選する。 キ 障害が重複している幼児児童生徒の教 育課程の編成においては、その重複する 障害の種類・程度に応じた個別の対応が 必要である。 ク 小学部・中学部・高等部の一貫した教 育課程編成に「キャリア教育」の視点を 盛り込み、児童生徒の社会参加と社会的 自立を育む取組を行う。 ケ 指導計画作成にあたっては、次の事項 に配慮する。 ・幼児児童生徒の基本的生活習慣の確立 や社会的な生活経験の拡大を図る。 ・幼児児童生徒の少人数化を踏まえて、 学年・学級の構成を考慮し、教科の特 質と、幼児児童生徒の実態に即して集 団の編制と指導の組織を工夫する。 ・指導の効果を高めるため、全盲児、弱 視児及び重複障害児それぞれの特性に 応じて教材・教具の工夫改善を図る。 3 教育課程の評価と改善 教育課程の評価については、特に配慮が 求められる点についてのみ触れる。 ⑴ 教育課程の評価の観点と方法 ア 教育課程の評価の観点 ア 学校教育目標の実現に向けて、学校全
体で取り組むことができたか。 イ 幼稚部・小学部・中学部・高等部が相 互に関連し、一貫した教育課程が編成さ れ、見通しを持った指導や学習ができた か。 ウ 幼児児童生徒の障害の状況に十分に配 慮された教育課程が編成・実施されてい るか。 エ 指導目標が適切で、スパイラルな指導 であっても、幼児児童生徒の学習の深ま りや高まりが獲得できたか。 オ 各学部の校外行事のねらいが明確で、 組織的に取り組まれたか。 カ 幼児児童生徒や保護者、及び地域社会 の期待に応え得る教育課程となっている か。 キ 教育課程の実施に際して、医療機関等 との連携が十分図られたか。 ク 障害のある職員に配慮した全校的な取 組がなされたか。 イ 評価の方法に関する留意事項 ア 全教職員の共通理解が図られ、適切な 組織のもとで進めること。 イ 教育課程の評価を学校の年間計画の中 に位置づけ、計画的に進めること。 ウ 多面的で継続的、客観的な評価となる ようにすること。 エ 幼児児童生徒の学習に取り組む姿や変 容の状況、学習の成果など、多様な評価 資料を基に、教育活動の状況を把握する こと。 オ 保護者や地域による評価を生かすこ と。 カ 評価自体を平素から組織的に取り組む こと。 ⑵ 教育課程の改善 ア 改善の意義 教育課程の評価は、元来改善を目指して 行われるものである。現在のように、視覚 障害も多様化するとともに、重複化が進行 している中で、幼児児童生徒の実態も様々 であるから、従来以上に創意工夫が求めら れている。 教育課程の改善は、幼児児童生徒の障害 の状態や発達段階、及び地域や学校の実態 と照らし合わせながら、教育課程をより適 切なものに改めることである。この意味か らも、適切な評価資料をもとに、絶えず教 育課程を改善する基本的態度を持たなけれ ばならない。 イ 改善の方法 教育課程の改善の具体的な方法は、一般 的には次のような手順が考えられる。 ア 評価の資料を収集し、検討すること。 イ 学校教育目標に立ち返り、評価結果と の関連を検討すること。 ウ 整理した問題点を検討し、原因と背景 を明らかにすること。 エ 現行の教育課程の課題や問題点を分析 する。 オ 改善案をつくり、実施する。 各指導計画における指導目標の設定、指 導内容の配列や構成、予測される学習活動 などのように、比較的直ちに修正できるも のもあれば、人的、物的諸条件のように、 比較的長期の見通しのもとに改善を図らな ければならないものもある。また、個々の 部分修正にとどまるものもあれば、広範囲 の全体修正を必要とするものもある。さら に、学校内の教職員の努力によって改善で きるものもあれば、学校外へ働きかけるな どの改善の努力を必要とするものもある。 教育課程の改善は、それらのことを見定 め、常に課題となる点についての共通理解 を図っていくことが大切である。 第2節 指導計画の作成 1 指導計画の作成 指導計画は、各教科、道徳、特別活動、 自立活動及び総合的な学習の時間のそれぞ れについて、学年ごとあるいは学級ごとな どに、指導目標、指導内容、指導の順序、 指導方法、使用教材、指導の時間配当等を
Ⅲ 視覚障害 定めたより具体的な計画である。 指導計画には、年間指導計画から、学期 ごと、月ごと、週ごと、単位時間ごと、ある いは単元、題材、主題ごとの指導案に至るま で各種のものがある。幼児児童生徒の障害 の状態および発達段階や特性並びに地域や 学校の実態を十分考慮し、学校の創意工夫 を生かし、生きる力をはぐくむ特色ある学 校作りをめざし、全体として調和のとれた 具体的な指導計画を作成する必要がある。 ⑴ 教育目標との関連 学校の教育目標は、教育活動全体を通じ て達成すべき具体的実践目標である。した がって教育目標と各教科、道徳、特別活動、 自立活動及び総合的な学習の時間の目標と の関連を明確にし、両者を密接に関連付け て指導計画を作成する必要がある。 ⑵ 日課表の作成 日課表の作成に当たっては、幼児児童生 徒一人一人の障害と発達段階の多様性を踏 まえ、学部全体、学年集団、課題別学習グ ループ、個別の課題学習などそれぞれの学 習内容に応じて用意される必要がある。課 題別学習グループにおいては教科学習を主 体とする児童生徒、帯状日課を必要とする 幼児児童生徒、その中間的な日課を必要と する幼児児童生徒、さらには自立活動など 個別の課題に応じた日課を必要とする幼児 児童生徒ときわめて多様であることから、 一日の流れ、週の時間配分を考慮しながら バランスよく作成することが求められる。 ⑶ 年間指導計画の作成 年間指導計画は、各教科、道徳、特別活動、 自立活動及び総合的な学習の時間のそれぞ れについて作成されるものである。個々の 指導計画は、他の教育活動との関連や学年 間の関連を十分図るように作成される必要 がある。そのためには、それぞれの目標、 指導内容の関連を検討し、指導内容の不必 要な重複を避けたり、重要な指導内容が欠 落したりしないよう配慮するとともに、指 導の時期、時間配分、指導方法などに関し ても相互の関連を考慮した上で計画を立て ることが大切である。幼稚部から専攻科ま での幅広い学部からなる特別支援学校(視 覚障害)においては、学校全体の取り組み と学部独自の取り組みが有機的に展開され ることが望ましい。作成に当たっては、指 導目標や指導内容、指導する時期、時間配 分、指導方法などについて、それぞれの教 科間、学年相互間で検討するとともに、幼 稚部、小学部、中学部の課程を見通し、年 度ごとの引継ぎなどを十分に行うことが重 要である。上記をふまえ、系統的、発展的 な指導ができるようにするとともに、児童 の障害の状態及び発達段階や特性、地域や 学校の実態を考慮し、創意と工夫を生かし た学習を展開することが求められている。 また、常に子どもの実態に立ち返って検 討し直し、途中で変更しなければならない こともありうることをあらかじめ共通理解 としておくことも重要である。 ⑷ 個別の指導計画の作成 個別の指導計画は、自立活動及び重複障 害のある幼児児童生徒の指導に当たる場合 について、作成をしてきた。しかし、障害の 重度・重複化及び多様化の中で、より実態 に即した指導を充実させるために、すべて の幼児児童生徒に対して、各教科に関する 個別の指導計画を作成することとなった。 個別の指導計画を作成する前提として、 年間指導計画があることは言うまでもな い。年間指導計画の実施に際して、実態に 即した目標設定や活動のめあて、評価の規 準等が個別の指導計画で明確になっていな ければならない。 ア 自立活動 障害の重度・重複化に対応し、より効果 的に個に応じた指導を行うために、適切な 指導を進める必要がある。個別の指導計画 の作成に関しては、次のような手順がある。 ア 幼児児童生徒の実態を把握する。
イ 自立活動の6分野26項目から、必要 な項目を選定し、実態に即した指導の目 標と指導内容を明確にする。 ウ 視覚障害に関しては、点字の習得や歩 行の習得等の要素も大きい。 エ 「時間の指導」のみならず、全ての教 育活動で行う自立活動の指導において も、実施・評価・改善を図る。 イ 重複障害 重複障害のある幼児児童生徒は、一人一 人の障害の状態が多様であるとともに、一 人一人の発達の諸側面に不均衡が見られて いる。さらに、ここ数年知的障害はもとよ り、肢体不自由、病弱、聴覚障害など様々な 障害のある幼児児童生徒が増加している。 そのため、障害の状況に応じて、従来以上 に個に応じた指導が重視されてきている。 ア 幼児児童生徒の障害の状況の実態把握 イ 現在の力と今後高めたい力を把握し、 実態に即した指導目標を明確にする ウ スパイラルな指導の中でも、高まりを 的確に捉える エ 聴覚障害との重複の場合、自立活動と 連携し、コミュニケーション方法の確立 をもとにした計画を持つ。 ウ 各教科等 準ずる教育課程、もしくは下学年・下学 部対応の幼児児童生徒に関しては、各教科 の目標及び指導計画をもとに、視覚障害の 状況に応じた指導計画を作成する。 ア 学級ごとに共通する指導目標や指導内 容をもとに、一人一人に対する指導上の 配慮事項を明確にする。 イ 点字の使用か拡大文字の使用かによ る、学習形態への配慮や学習の成果を明 確にする。 ウ 一人一人の評価の観点を明確にし、学 習の結果による達成度を客観的に評価す る。 エ 学習結果の蓄積をもとに、適切な指導 内容を構築する。 ⑸ 学習指導案の作成 指導案の形式には一定のものはないが、 次のような項目をのせる必要がある。 ア 単元名(題材名) イ 単元(題材)設定の理由 ウ 目標 エ 児童生徒の実態 オ 指導計画 カ 本時の目標 キ 本時の展開 ク 評価 学習指導案作成に当たっては、教員の指 導観や、児童生徒、教材の認識の仕方が具 体的に示され、また、学習場面設定、児童 生徒の予想活動やそのことに関わる留意事 項なども書かれていることが望ましい。 2 指導計画作成上の配慮事項 埼玉県では、数年前から個別の教育支援 計画を作成することとし、大枠は県の基準 を使用するが、各学校の実情に応じて加筆 して作成している。幼児児童生徒の実態把 握をし、課題を明らかにすること、専門機 関との連携のツールにすること、生徒・保 護者の願いを受けとめ話し合いながら教育 に対する理解と合意を築き、子どもたち一 人一人を大切にする教育計画をつくり上げ ようとすることが大切である。 作成することに多くの時間を費やすので はなく、幼児児童生徒の実態を把握するこ とが教育実践のなかで子どもを深くとら え、子ども理解が深まるものとなるように していくべきである。そのためにも、教職 員集団での子ども論議や、子どもたちの集 団における授業づくりを大切にしていくこ とが必要である。そして、個別の指導計画 を子どもの実態に即しながら見直しをし、 実践を進める視点が大切である。 そのような中で、医療・福祉・労働・教 育の連携のツールとして、作成した計画の 活用が課題となっている。 特別支援学校(視覚障害)では、視覚に 障害のあることを的確に把握していくため
Ⅲ 視覚障害 にも「視覚障害に関わる障害の状況シート」 を独自に作成し、視覚障害の実態や補助具 の把握に努めている。 ⑴ 幼児児童生徒の実態把握 実態把握では、第1に幼児児童生徒の理 解に必要な客観的な情報を正確に集めるこ とが大切である。第2に生育歴や学習の状 態など、収集したさまざまな情報を総合し て、現時点での幼児児童生徒の全体像をま とめることが必要である。そして、一人一 人の教育課題を整理し導き出し、個別の指 導計画を立案し、教育課題の編成や学習グ ループの編制などをおこなう。したがって、 すべての教育活動は実態把握から始まる。 また、実態把握で収集する情報は個人情 報であり、必要のない情報は集めないこと が基本である。最も重要なのは、私たちが 何のためにその情報が必要なのかを保護者 に説明できること、そして保護者にそれを 充分に理解してもらうことである。 視覚障害に関わる障害の状況シート(必要ないものは削除、変更があった場合は追記。) 作成年月日( 年 月 日 記入者: )
Ⅲ 視覚障害 [表1]幼児児童生徒にかかわる基本的情報で把握する領域・内容の例 生育歴 出生時の状況、発達経過、その他の特記事項 家庭状況 家族構成、子どもの養育と地域生活に関連した事項 相談・教育歴 保育園・幼稚園、リハビリセンター等での相談・訓練 医療情報 医学的診断: 医療歴: これまでの診断・検査・治療の経過、手術歴、現在の利用医療機関、 眼鏡処方・補助具等に関する経過と現況、投薬の経過と現況 その他の医学的に留意が必要な事項の把握、身体障害者手帳の取 得状況 [表2]現在の実態で把握する領域・内容の例 家庭・地域生活情報 地域生活地図、日常生活スケジュール 障害及び健康の状態 現在の医療情報の収集、知能検査など諸検査の実施 学習能力 各教科の到達度、点字・歩行など自立活動領域の能力、発達検査・ 知能検査などの活用 生活・自立に関する 能力と意識 基本的生活習慣、学習・生活への意欲、安全の意識、活動への参 加と役割意識、障害の自己認識、余暇活動、職業に関数する意識・ 能力 [表3]重複障害児の実態把握の領域・内容の例 健康 呼吸や体温、生活リズム、発作の状況、口腔機能など 身辺自立 食事、衣服、衛生、排泄 視覚・聴覚 医療情報や学校での評価を総合した見え方・聞こえ方の状態 姿勢・粗大運動 座位や立位姿勢での体幹や全身の状態、移動能力、バランス、全 身の分離協応動作など 微細運動 掌握機能のレベル、押す・弾く・回す・抜くなどの手指技能 認知 空間認知、視覚認知、触覚認知、概念認知 言語 表出言語、理解言語、コミュニケーションスキル 対人関係 大人や子どもへの意識・関係、やり取り、集団参加、自己表現