平成 25 年 1 月 24 日に「平成 25 年度税制改正大綱」が発表されました。 昨年 8 月 10 日に成立した「税制抜本改革法」では、民主党、自民党、公明党の 3 党合意により 消費税増税の実施時期などが定められましたが、所得税および資産税(相続税・贈与税)について は平成 25 年度の税制改正に結論を先送りとしました。 相続税の増税はもともと平成 23 年度税制改正で実施される予定でしたが、震災や政治の影響 で実現できず、その後の紆余曲折を経て、今回の「税制改正大綱」に至っています。 自民党に政権が移り、平成 25 年度の税制改正で相続税、贈与税の改正がどのように決着する か注目してきましたが、結果としては、もともと予定されていた改正がほぼそのまま決定された印象 があります。 今月のharatax通信では、平成 25 年度税制改正大綱のうち、相続税、贈与税に関する内容 (事業承継税制を除く)に絞ってご紹介いたします。 1. 相続税、贈与税に関する改正の主な内容 (1) 相続税の課税ベースおよび税率構造 イ) 相続税の基礎控除 現行 改正案 5,000 万円+1,000 万円×法定相続人数 3,000 万円+600 万円×法定相続人数 ロ) 相続税の税率構造 現行 改正案 金 額 税 率 金 額 税 率 1,000 万円以下 10% 同 左 3,000 万円以下 15% 同 左 5,000 万円以下 20% 同 左 1 億円以下 30% 同 左 3 億円以下 40% 2 億円以下 40% 3 億円以下 45% 3 億円超 50% 6 億円以下 50% 6 億円超 55% この改正は、平成 27 年 4 月 1 日以後の相続または遺贈により取得する財産にかかる相 続税について適用します。 川崎市中原区小杉御殿町1-868 電話 044-271-6690 Fax044-271-6686 E-mail:[email protected] URL:http://www.haratax.jp
haratax 通信
相続税、贈与税に関する平成 25 年度税制改正大綱の内容
2013 年 1 月 28 日 第 53 号(2) 小規模宅地等の特例 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、 次の見直しを行いま す 。 イ) 特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積 現行 改正案 240 ㎡ 330 ㎡ ロ) 特例の対象と して選択する宅地等の全てが特定事業用等宅地等及び特定居住用 宅地等である場合には、 それぞれの適用対象面積まで適用可能とします 。 なお、 貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、 現行どおり、調整を行うこととします。 改正案 改正後は特定事業用の 400 ㎡と特定居住用の 330 ㎡の合計 730 ㎡までの 80% 減が可能 この改正は、平成 27 年 1 月 1 日以後の相続または遺贈により取得する財産にかかる相 続税について適用します。 (3) 暦年贈与の贈与税の税率構造 イ) 20歳以上の者が直系尊属から贈与を受ける場合 現行 改正案 金 額 税 率 金 額 税 率 200 万円以下 10% 同 左 300 万円以下 15% 400 万円以下 15% 400 万円以下 20% 600 万円以下 20% 600 万円以下 30% 1,000 万円以下 30% 1,000 万円以下 40% 1,500 万円以下 40% 3,000 万円以下 45% 1,000 万円超 50% 4,500 万円以下 50% 4,500 万円超 55% ロ) ①以外の場合 現行 改正案 金 額 税 率 金 額 税 率 200 万円以下 10% 同 左 300 万円以下 15% 同 左 400 万円以下 20% 同 左 600 万円以下 30% 同 左 1,000 万円以下 40% 同 左 1,500 万円以下 45% 1,000 万円超 50% 3,000 万円以下 50% 3,000 万円超 55% この改正は、平成 27 年 1 月 1 日以後の贈与により取得する財産にかかる贈与税について適 用します。
(4) 相続時精算課税の適用要件 受贈者の範囲に、20 歳以上である孫(現行 推定相続人のみ)を追加します。 贈与者の年齢要件を 60 歳以上(現行 65 歳以上)に引き下げます。 この改正は、平成 27 年 1 月 1 日以後の贈与により取得する財産にかかる贈与税について適 用します。 (5) 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 受贈者(30 歳未満の者に限る。)の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭等 を拠出し、金融機関(信託会社(信託銀行を含む。)、銀行等に信託等をした場合には、 信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者 1 人につき 1,500 万円(学 校等以外の者に支払われる金銭については、500 万円を限度とします。) までの金額に 相当する部分の価額については、平成 25 年 4 月 1 日から平成 27 年 12 月 31 日まで の間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととします。 (注) 教育資金とは、文部科学大臣が定める学校等に支払われる入学金その他の金銭等を いいます。 2. 相続税の改正について 今回の改正により、平成 27 年 1 月 1 日以後に発生した相続から相続税の最高税率が現 行の 50%から 55%に引き上げられ、基礎控除が 4 割圧縮されることになります。 お亡くなりになった方の相続財産の合計が 6 億円を超えると最高税率 55%が適用されると 誤解している方がいますが、相続税の税率は相続財産の合計額を法定相続分で分けた後の 金額に適用しますので、相続人が複数いる場合、相続財産が 10 億円程度では最高税率は 適用されません。今回の税率の引上げは一部の資産家には関係がありますが、一般的には それほど大きな影響がないと考えます。 一方で、基礎控除の圧縮は非常に多くの人に影響があります。 これまでの相続では 1 億円近くの財産を所有していても、小規模宅地等の特例などを適用 することなどで相続財産の価額が基礎控除の金額を下回り、結果として相続税が発生しない ことが少なくありませんでした。 そうしたなかで政府は、格差是正、再分配機能の観点から、今回の税制改正で基礎控除を 4 割圧縮することにしました。 相続税は相続財産の合計額が基礎控除を超えた部分の金額に税率を乗じて計算するた め、基礎控除の引下げにより、相続税がかかる人が大幅に増加することになります。 財務省の試算によると、亡くなった人のうち相続税のかかる人の割合(課税割合)が現状 4%のところ改正後は 1.5 倍にあたる 6%になると予想しています。この課税割合は全国平均 ですので、東京近郊ではさらに多くの人に相続税がかかることが予想されます。 この基礎控除の圧縮が実施されると、土地の評価が高い都会では影響が大きすぎるという ことで都市部選出の議員から反対意見が出ているという話がありましたが、結果としては、(2) の小規模宅地等の特例の限度面積を拡充したうえで、基礎控除の引下げは予定通り実施さ れることになりました。
3. 事例による相続税増税の確認 法定相続人が二人の場合、税制改正前は 7,000 万円まで相続財産を有していても相続税 がかかりませんが、税制改正後は 4,200 万円を超えると相続税がかかることになります。 4. 贈与税の改正について 相続税を増税する一方、若年層への資産移転を促す目的で贈与税は減税となります。 暦年贈与は、直系尊属から贈与を受ける場合(受贈者が 20 歳以上)に限り、贈与税の税 率構造が緩和されます。 相続時精算課税は、いままでは親から子に対する贈与だけが対象でしたが、改正後は祖 父母から孫への贈与も対象になります。 これまで子・孫に対して多額の贈与をしようとしても、贈与税が高くなるため、実行しづら かった面があります。改正後は贈与税の税率が緩和され、相続時精算課税の適用範囲が孫 にまで広がることで、子・孫に対して不動産や住宅取得資金など多額の贈与をする機会が増 える可能性があります。 また、教育資金に限り、一括で 30 歳未満の直系卑属に対しては 1,500 万円まで非課税で 贈与できる「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が設けられました。 計算例 相続財産 6,000万円(200㎡の自宅敷地(路線価20万円)4千万円、預金2千万円) 相続人 子2人(それぞれ親とは別居(別生計)) 税制改正前(平成 26 年 12 月 31 日までに相続発生) 課税財産 6,000 万円-基礎控除 7,000 万円=課税遺産総額 0 円 (基礎控除 5 千万円+1,000 万円×2) 課税財産が基礎控除を下回るため、相続税はかからない。 税制改正後(平成 27 年 1 月 1 日以後に相続発生) 課税財産 6,000 万円-基礎控除 4,200 万円=課税遺産総額 1,800 万円 (基礎控除 3 千万円+600 万円× 2) 法定 相続人 法定 相続分 相続分に応 じた金額 税率 相続分に応じた 税額 長男 1/2 900 万円 ×10% 90 万円 二男 1/2 900 万円 ×10% 90 万円 合計 1 1,800 万円 180 万円 ○180万円の相続税が発生
5. さいごに 私は政権が代わっても相続税の税率の引上げは避けられないと思っていましたが、基礎控 除の改正は非常に影響が大きいため、引下げ幅が少し緩和されるのではないかと考えてい ました。 実際には、予定通り基礎控除を 6 割に圧縮し、その代わりに小規模宅地等の特例(自宅敷 地に対する 80%減)の限度面積を 240 ㎡から 330 ㎡に拡大することで対応することにしまし た。 この小規模宅地等の特例は、そもそも親子が同居していない場合には原則として適用でき ません。仮に適用できる状況であったとしても、240 ㎡以上の敷地に自宅が建っている人にし か効果がない改正です。 このように、今回の小規模宅等の特例の改正は、基礎控除の圧縮により相続税がかかる 人が大幅に増えることに対して、ほとんど緩和の効果がないと考えます。 とはいえ、今回、税制改正大綱として発表されたということは、いろいろな意見や影響があ るとしても、現在の政治の状況から考えると、そのまま実現される可能性が高いと考えられま す。 今後は、ある程度財産のある方は当然に相続税の対象になりうる前提で相続の準備をしな ければならないということだと考えます。